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特許7453297移動エントロピーを利用して道路渋滞の伝播遅延時間を予測する方法、コンピュータ装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】移動エントロピーを利用して道路渋滞の伝播遅延時間を予測する方法、コンピュータ装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G08G1/00 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022137509
(22)【出願日】2022-08-31
(65)【公開番号】P2023039418
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0119772
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505205812
【氏名又は名称】ネイバー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NAVER Corporation
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンイル
(72)【発明者】
【氏名】カク ジイン
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】タク ギョンウク
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-179348(JP,A)
【文献】特開2015-153133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置で実行される道路渋滞予測方法であって、
前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記道路渋滞予測方法は、
前記少なくとも1つのプロセッサ、与えられた2つの道路の速度データペアに対して移動エントロピー(transfer entropy)を利用した因果関係を分析する段階、および
前記少なくとも1つのプロセッサ、前記因果関係に対する分析結果に基づいて、前記2つの道路のうちの1つの道路の渋滞が他の道路に伝播する渋滞伝播遅延時間を予測する段階
を含
前記分析する段階は、
ブートストラップサンプリング方式を利用して各道路の速度時系列データからなる原本データペアから複数の類似データペアを生成する段階を含む、
道路渋滞予測方法。
【請求項2】
前記ブートストラップサンプリング方式は、マルコフ連鎖(Markov Chain)で適用可能なマルコフブートストラップサンプリング方式である、請求項1に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項3】
前記生成する段階は、
前記速度時系列データを趨勢(trend)データと残差(residual)データに分解する段階、
前記残差データをサンプリングすることによって新たな残差データを生成する段階、および
前記新たな残差データを前記趨勢データと加えて、前記速度時系列データと類似する新たな時系列データを生成する段階
を含む、請求項2に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項4】
前記分析する段階は、
非線形正規化によって前記類似データペアを前処理する段階
をさらに含む、請求項2に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項5】
前記分析する段階は、
速度分布の累積分布関数を利用して前記類似データペアを正規化する段階
をさらに含む、請求項2に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項6】
前記分析する段階は、
連続的なデータを離散データに変換するエンコードによって前記類似データペアを前処理する段階
をさらに含む、請求項2に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項7】
前記予測する段階は、
前記1つの道路の速度データと前記他の道路の速度データの時間間隔を、前記因果関係に基づいて予測する段階
を含む、請求項1に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項8】
前記予測する段階は、
前記類似データペアそれぞれに対して前記因果関係に基づいてデータ間の時間間隔を予測する段階、および
前記類似データペア全体の前記時間間隔に対する統計に基づいて前記渋滞伝播遅延時間を推定する段階
を含む、請求項2に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項9】
前記推定する段階は、
前記時間間隔に対する統計的推論によって前記類似データペアの予測値の平均と分散を算出する段階、および
前記平均は前記渋滞伝播遅延時間として利用し、前記分散は前記渋滞伝播遅延時間に対する信頼度として利用する段階
を含む、請求項8に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項10】
前記道路渋滞予測方法は、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記渋滞伝播遅延時間を利用して経路移動時間を予測するか迂回道路を決定する段階
をさらに含む、請求項1に記載の道路渋滞予測方法。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ装置によって実行されると、前記コンピュータ装置に、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の道路渋滞予測方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータ装置であって、
メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ
を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
与えられた2つの道路の速度データペアに対して移動エントロピーを利用した因果関係を分析する過程
前記因果関係に対する分析結果に基づいて、前記2つの道路のうちの1つの道路の渋滞が他の道路に伝播する渋滞伝播遅延時間を予測する過程、および
ブートストラップサンプリング方式を利用して各道路の速度時系列データからなる原本データペアから複数の類似データペアを生成する過程
を処理する、コンピュータ装置。
【請求項13】
前記ブートストラップサンプリング方式は、マルコフ連鎖(Markov Chain)で適用可能なマルコフブートストラップサンプリング方式である、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記速度時系列データを趨勢データと残差データに分解する過程、
前記残差データに対するサンプリングによって新たな残差データを生成する過程、および
前記新たな残差データを前記趨勢データと加えて、前記速度時系列データと類似の新たな時系列データを生成する過程
を処理する、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
非線形正規化によって前記類似データペアを前処理する過程
を処理する、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
速度分布の累積分布関数を利用して前記類似データペアを正規化する過程
を処理する、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
連続的なデータを離散データに変換するエンコードによって前記類似データペアを前処理する過程
を処理する、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記1つの道路の速度データと前記他の道路の速度データの時間間隔を前記因果関係に基づいて予測する過程
を処理する、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記類似データペアそれぞれに対して前記因果関係に基づいてデータ間の時間間隔を予測する過程、および
前記類似データペア全体の前記時間間隔に対する統計に基づいて前記渋滞伝播遅延時間を推定する過程
を処理する、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記時間間隔に対する統計的推論によって前記類似データペアの予測値の平均と分散を算出する過程、および
前記平均は前記渋滞伝播遅延時間として利用し、前記分散は前記渋滞伝播遅延時間に対する信頼度として利用する過程
を処理する、請求項19に記載のコンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明は、道路の渋滞を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路渋滞の発生とこれによる渋滞の伝播は、全世界のほとんどの大都市が抱えている交通問題の1つである。
【0003】
このような交通渋滞は、反復的に発生する混雑(recurrent congestion)と、事故や気象の悪化、集会などのアクシデント情報によって非反復的に発生する混雑(non-recurrent congestion)とに大別される。
【0004】
特定の道路の交通渋滞時点を予測する方式は、道路の収容可能な車両台数を基準とするのが一般的である。道路の収容可能な車両台数が定められており、収容可能な車両台数が限界に達した場合に該当の道路に渋滞状況が発生するようになるが、該当の道路の渋滞到達時点から車両の走行速度が急激に低下する。
【0005】
反復的な道路の渋滞到達時点は統計的に予測が可能であり、これを活用して交通渋滞状況や時点予測が可能となる。
【0006】
しかし、アクシデント情報によって非反復的に発生する交通混雑は、いつどこで起こるか予測することが不可能であるため、パターン分析や速度変化の予測に困難をきたしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
道路渋滞の伝播遅延時間を予測することができる定量的方法論を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コンピュータ装置で実行される道路渋滞予測方法であって、前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、前記道路渋滞予測方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、与えられた2つの道路の速度データペアに対して移動エントロピー(transfer entropy)を利用した因果関係を分析する段階、および前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記因果関係に対する分析結果に基づいて、前記2つの道路のうちの1つの道路の渋滞が他の道路に伝播する渋滞伝播遅延時間を予測する段階を含む、道路渋滞予測方法を提供する。
【0009】
一側面によると、前記分析する段階は、サンプリング方式によって、各道路の速度時系列データからなる原本データペアから複数の類似データペアを生成する段階を含んでよい。
【0010】
他の側面によると、前記生成する段階は、前記速度時系列データを趨勢(trend)データと残差(residual)データに分解する段階、前記残差データをサンプリングして新たな残差データを生成する段階、および前記新たな残差データを前記趨勢データと加えて、前記速度時系列データと類似する新たな時系列データを生成する段階を含んでよい。
【0011】
また他の側面によると、前記分析する段階は、非線形正規化によって前記類似データペアを前処理する段階をさらに含んでよい。
【0012】
また他の側面によると、前記分析する段階は、速度分布の累積分布関数を利用して前記類似データペアを正規化する段階をさらに含んでよい。
【0013】
また他の側面によると、前記分析する段階は、連続的なデータを離散データに変換するエンコードによって前記類似データペアを前処理する段階をさらに含んでよい。
【0014】
また他の側面によると、前記予測する段階は、前記1つの道路の速度データと前記他の道路の速度データの間の時間間隔を前記因果関係に基づいて予測する段階を含んでよい。
【0015】
また他の側面によると、前記予測する段階は、前記類似データペアそれぞれに対して前記因果関係に基づいてデータ間の時間間隔を予測する段階、および前記類似データペア全体の前記時間間隔に対する統計に基づいて前記渋滞伝播遅延時間を推定する段階を含んでよい。
【0016】
また他の側面によると、前記推定する段階は、前記時間間隔に対する統計的推論によって前記類似データペアの平均と分散を算出する段階、および前記平均は前記渋滞伝播遅延時間として利用し、前記分散は前記渋滞伝播遅延時間に対する信頼度として利用する段階を含んでよい。
【0017】
さらに他の側面によると、前記道路渋滞予測方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記渋滞伝播遅延時間を利用して経路移動時間を予測するか迂回道路を決定する段階をさらに含んでよい。
【0018】
前記道路渋滞予測方法を前記コンピュータ装置に実行させるためにコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される、コンピュータプログラムを提供する。
【0019】
コンピュータ装置であって、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、与えられた2つの道路の速度データペアに対して移動エントロピーを利用した因果関係を分析する過程、および前記因果関係に対する分析結果に基づいて、前記2つの道路のうちの1つの道路の渋滞が他の道路に伝播する渋滞伝播遅延時間を予測する過程を処理する、コンピュータ装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によると、移動エントロピーを利用して渋滞の開始点を基準に周辺道路の渋滞が始まる時点を予測することができ、交通事故や道路工事などの不規則的な状況において、アクシデント情報に関するデータがなくても、各道路間の因果関係を利用することで渋滞が伝播するパターンを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における、ネットワーク環境の例を示した図である。
図2】本発明の一実施形態における、コンピュータ装置の例を示したブロック図である。
図3】本発明の一実施形態における、道路ネットワークの例を示した図である。
図4】本発明の一実施形態における、コンピュータ装置が実行することのできる方法の例を示したフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態における、原本データから類似データを生成する過程を説明するための例示図である。
図6】本発明の一実施形態における、原本データから類似データを生成する過程を説明するための例示図である。
図7】本発明の一実施形態における、道路ネットワークの渋滞伝播遅延時間を予測する過程を説明するための例示図である。
図8】本発明の一実施形態における、道路ネットワークの渋滞伝播遅延時間を予測する過程を説明するための例示図である。
図9】本発明の一実施形態における、道路ネットワークの渋滞伝播遅延時間を予測する過程を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【0023】
本発明の実施形態は、道路渋滞を予測する技術に関する。
【0024】
本明細書で具体的に開示される事項を含む実施形態は、移動エントロピーを利用して道路渋滞の伝播遅延時間を予測することができる。これにより、経路移動時間をより正確に予測することができ、適切な状況で最適な迂回道路を決めることができる。
【0025】
本発明の実施形態に係る道路渋滞予測装置は、少なくとも1つのコンピュータ装置によって実現されてよく、本発明の実施形態に係る道路渋滞予測方法は、道路渋滞予測装置に含まれる少なくとも1つのコンピュータ装置によって実行されてよい。このとき、コンピュータ装置においては、本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムがインストールされて実行されてよく、コンピュータ装置は、実行されたコンピュータプログラムの制御にしたがって本発明の実施形態に係る道路渋滞予測方法を実行してよい。上述したコンピュータプログラムは、コンピュータ装置と結合して道路渋滞予測方法をコンピュータに実行させるためにコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態における、ネットワーク環境の例を示した図である。図1のネットワーク環境は、複数の電子機器110、120、130、140、複数のサーバ150、160、およびネットワーク170を含む例を示している。このような図1は、発明の説明のための一例に過ぎず、電子機器の数やサーバの数が図1のように限定されることはない。また、図1のネットワーク環境は、本実施形態に適用可能な環境の一例を説明したものに過ぎず、本実施形態に適用可能な環境が図1のネットワーク環境に限定されることはない。
【0027】
複数の電子機器110、120、130、140は、コンピュータ装置によって実現される固定端末や移動端末であってよい。複数の電子機器110、120、130、140の例としては、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーション、PC(personal computer)、ノート型PC、デジタル放送用端末、PDA(Personal Digital Assistant)、PMP(Portable Multimedia Player)、タブレットなどがある。一例として、図1では、電子機器110の例としてスマートフォンを示しているが、本発明の実施形態において、電子機器110は、実質的に無線または有線通信方式を利用し、ネットワーク170を介して他の電子機器120、130、140および/またはサーバ150、160と通信することができる多様な物理的なコンピュータ装置のうちの1つを意味してよい。
【0028】
通信方式が限定されることはなく、ネットワーク170が含むことのできる通信網(一例として、移動通信網、有線インターネット、無線インターネット、放送網)を利用する通信方式だけではなく、機器間の近距離無線通信が含まれてもよい。例えば、ネットワーク170は、PAN(personal area network)、LAN(local area network)、CAN(campus area network)、MAN(metropolitan area network)、WAN(wide area network)、BBN(broadband network)、インターネットなどのネットワークのうちの1つ以上の任意のネットワークを含んでよい。さらに、ネットワーク170は、バスネットワーク、スターネットワーク、リングネットワーク、メッシュネットワーク、スター-バスネットワーク、ツリーまたは階層的ネットワークなどを含むネットワークトポロジのうちの任意の1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されることはない。
【0029】
サーバ150、160それぞれは、複数の電子機器110、120、130、140とネットワーク170を介して通信して命令、コード、ファイル、コンテンツ、サービスなどを提供する1つ以上のコンピュータ装置によって実現されてよい。例えば、サーバ150は、ネットワーク170を介して接続した複数の電子機器110、120、130、140にサービス(一例として、ナビゲーションサービスなど)を提供するシステムであってよい。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態における、コンピュータ装置の例を示したブロック図である。上述した複数の電子機器110、120、130、140それぞれやサーバ150、160それぞれは、図2に示したコンピュータ装置200によって実現されてよい。
【0031】
このようなコンピュータ装置200は、図2に示すように、メモリ210、プロセッサ220、通信インタフェース230、および入力/出力インタフェース240を含んでよい。メモリ210は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)、およびディスクドライブのような永続的大容量記録装置を含んでよい。ここで、ROMやディスクドライブのような永続的大容量記録装置は、メモリ210とは区分される別の永続的記録装置としてコンピュータ装置200に含まれてもよい。また、メモリ210には、オペレーティングシステムと、少なくとも1つのプログラムコードが記録されてよい。このようなソフトウェア構成要素は、メモリ210とは別のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリ210にロードされてよい。このような別のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フロッピー(登録商標)ドライブ、ディスク、テープ、DVD/CD-ROMドライブ、メモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含んでよい。他の実施形態において、ソフトウェア構成要素は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体ではない通信インタフェース230を通じてメモリ210にロードされてもよい。例えば、ソフトウェア構成要素は、ネットワーク170を介して受信されるファイルによってインストールされるコンピュータプログラムに基づいてコンピュータ装置200のメモリ210にロードされてよい。
【0032】
プロセッサ220は、基本的な算術、ロジック、および入出力演算を実行することにより、コンピュータプログラムの命令を処理するように構成されてよい。命令は、メモリ210または通信インタフェース230によって、プロセッサ220に提供されてよい。例えば、プロセッサ220は、メモリ210のような記録装置に記録されたプログラムコードにしたがって受信される命令を実行するように構成されてよい。
【0033】
通信インタフェース230は、ネットワーク170を介してコンピュータ装置200が他の装置(一例として、上述した記録装置)と互いに通信するための機能を提供してよい。一例として、コンピュータ装置200のプロセッサ220がメモリ210のような記録装置に記録されたプログラムコードにしたがって生成した要求や命令、データ、ファイルなどが、通信インタフェース230の制御にしたがってネットワーク170を介して他の装置に伝達されてよい。これとは逆に、他の装置からの信号や命令、データ、ファイルなどが、ネットワーク170を経てコンピュータ装置200の通信インタフェース230を通じてコンピュータ装置200に受信されてよい。通信インタフェース230を通じて受信された信号や命令、データなどは、プロセッサ220やメモリ210に伝達されてよく、ファイルなどは、コンピュータ装置200がさらに含むことのできる記録媒体(上述した永続的記録装置)に記録されてよい。
【0034】
入力/出力インタフェース240は、入力/出力装置250とのインタフェースのための手段であってよい。例えば、入力装置は、マイク、キーボード、またはマウスなどの装置を含んでよく、出力装置は、ディスプレイ、スピーカのような装置を含んでよい。他の例として、入力/出力インタフェース240は、タッチスクリーンのように入力と出力のための機能が1つに統合された装置とのインタフェースのための手段であってもよい。入力/出力装置250は、コンピュータ装置200と1つの装置で構成されてもよい。
【0035】
また、他の実施形態において、コンピュータ装置200は、図2の構成要素よりも少ないか多くの構成要素を含んでもよい。しかし、大部分の従来技術的な構成要素を明確に図に示す必要はない。例えば、コンピュータ装置200は、上述した入力/出力装置250のうちの少なくとも一部を含むように実現されてもよいし、トランシーバ、データベースなどのような他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0036】
以下では、移動エントロピーを利用して道路渋滞の伝播遅延時間を予測する方法および装置の具体的な実施形態について説明する。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態における、道路ネットワークの一例を示した図である。
【0038】
一部の道路で交通渋滞(traffic congestion)が発生すれば、該当の道路の走行速度は急激に低下し、渋滞が発生した道路に進入する道路の交通量と速度にも影響を及ぼす。
【0039】
図3を参照すると、A道路で渋滞が発生した場合、時間の経過にともなってA道路に進入する他の道路のうちの少なくとも一部の道路にも渋滞が拡がり、交通渋滞の伝播(Traffic Congestion Propagation)が発生する。
【0040】
例えば、ナビゲーションサービスが、I、F、D、A道路を含む経路を推薦したと仮定する。時間の経過にともなってA道路の渋滞がD道路とF道路に伝播した場合、既存の経路を維持しようとすれば、該当の経路を走行する使用者の移動時間には大幅な遅延が発生する。
【0041】
ナビゲーションサービスが、渋滞伝播が発生する道路を予測して各道路の渋滞が始まる時点を把握することができれば、交通渋滞の伝播が予想されるD道路とF道路を迂回する最適経路(例えば、I、H、G、A道路を含む経路など)を使用者に推薦することができる。
【0042】
本実施形態では、交通混雑が発生したときに渋滞が周辺道路に伝播するパターンと各道路の渋滞開始時間を把握するために、移動エントロピー(transfer entropy:TE)を利用した分析技術を提案する。
【0043】
道路ネットワークで連結する道路は、互いに密接な連関性をもつ。例えば、A、B、C道路が順に連結していると仮定しよう。A道路で渋滞が発生すれば、車両の移動に制限が生じるようになり、連続してBとC道路でも車両の混雑が始まる。さらに、交通事故の処理完了または交通量の減少によってA道路の渋滞が解消され始めれば、BとC道路の渋滞も一定の時間が経過すれば次第に解消するようになる。
【0044】
本実施形態では、上述した例のように、隣接する道路の車両速度データには密接な連関性があるという仮定のもとにこれらの相関関係を分析し、特に因果関係を分析するために移動エントロピー概念を利用する。
【0045】
移動エントロピーは、情報理論から始まったエントロピー測定の手法であって、2つの変数の間の非線形的な因果関係を把握する接近法である。渋滞が発生したA道路と隣接するN道路の速度時系列データをそれぞれ変数XおよびYとするとき、移動エントロピーを利用して2つの変数の因果関係を定量的に示す。この方法を、時間遅延(Time Lag)を有するXとYに適用することにより、A道路とN道路の間にどれくらいの時間間隔を置いて渋滞が伝播するかを分析することができる。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態における、コンピュータ装置が実行することのできる方法の例を示したフローチャートである。
【0047】
本実施形態に係るコンピュータ装置200は、クライアントを対象に、クライアント上にインストールされた専用アプリケーションやコンピュータ装置200と関連するウェブ/モバイルサイトへの接続によってナビゲーションサービスを提供してよい。コンピュータ装置200には、コンピュータによって実現された道路渋滞予測装置が構成されてよい。
【0048】
コンピュータ装置200のプロセッサ220は、図4に係る道路渋滞予測方法を実行するための構成要素によって実現されてよい。実施形態によって、プロセッサ220の構成要素は、選択的にプロセッサ220に含まれても除外されてもよい。また、実施形態によって、プロセッサ220の構成要素は、プロセッサ220の機能の表現のために分離されても併合されてもよい。
【0049】
このようなプロセッサ220およびプロセッサ220の構成要素は、図4の道路渋滞予測方法に含まれる段階410~440を実行するようにコンピュータ装置200を制御してよい。例えば、プロセッサ220およびプロセッサ220の構成要素は、メモリ210が含むオペレーティングシステムのコードと、少なくとも1つのプログラムのコードとによる命令(instruction)を実行するように実現されてよい。
【0050】
ここで、プロセッサ220の構成要素は、コンピュータ装置200に記録されたプログラムコードが提供する命令にしたがってプロセッサ220によって実行される、互いに異なる機能(different functions)の表現であってよい。
【0051】
プロセッサ220は、コンピュータ装置200の制御と関連する命令がロードされたメモリ210から必要な命令を読み取ってよい。この場合、前記読み取られた命令は、プロセッサ220が以下で説明する段階410~440を実行するように制御するための命令を含んでよい。
【0052】
以下で説明する段階410~440は、図4に示したものとは異なる順序で実行されてもよいし、段階410~440のうちの一部が省略されたり追加の過程がさらに含まれたりしてもよい。
【0053】
図4を参照すると、段階410で、プロセッサ220は、与えられた速度データペアを利用して複数のサンプルデータペアを生成してよい。プロセッサ220は、経路に含まれた2つの道路の速度データからなる原本データペアから類似データペアを生成してよい。プロセッサ220は、コンピュータ装置200と連動可能なシステムやプラットフォームなどを利用して道路上の車両の実際の走行速度からサンプリングして原本データペアを取得してよい。
【0054】
交通事故や道路工事などのアクシデント情報は、ある地点で反復して発生するものでなく、発生時点も不規則的であることから、アクシデント時点に速度が急激に低下する渋滞パターンデータは多くない。さらに、移動エントロピーの値は、時系列データの長さやエンコード方法などの多様な変数に対して変動性が大きいため、1つのサンプルデータによって判断し難い場合が多い。このような問題を解決するために、本実施形態では、速度データそれぞれにサンプリングアルゴリズムを適用して生成されたサンプルを利用する。
【0055】
図5を参照すると、プロセッサ220は、サンプリングアルゴリズムの一例であるブートストラップサンプリング(bootstrap sampling)方式を利用して、A道路の速度データXとN道路の速度データYからなる原本データペア501から複数のサンプルデータペア502を生成する。
【0056】
ブートストラップサンプリング方式の1つであるマルコフブートストラップは、マルコフ連鎖(Markov Chain)で適用可能なブートストラップ方法である。長さがLであるマルコフ連鎖
【数1】

があるとき、マルコフ連鎖の遷移確率行列と分布を計算する。これに基づいて、長さがLである新たなブートストラップサンプルを生成することができる。
【0057】
マルコフブートストラップは、均一な正常分布時系列で主に使用するサンプリング方式である。交通混雑状況では、事故発生後に速度が急激に低下するデータを扱うようになる。車両速度が急激に低下する趨勢は渋滞状況において重要な情報となるため、本実施形態ではデータの趨勢をそのまま維持する新たな形態のサンプリング技術を提案する。
【0058】
プロセッサ220は、新たなサンプリング方法論として、長さLの渋滞速度データ
【数2】

を趨勢(trend:T)と残差(residual:R)に分解する。
【0059】
【数3】
【0060】
ここで、Xは、ある道路区間(road segment)に対して長さがLである速度時系列データを示す。プロセッサ220は、速度時系列データXを趨勢Tと残りの残差Rに分解する。
【0061】
趨勢はm車両移動平均を利用して求めることができ、数式(2)のように以前のm時点のデータ平均を示す。
【0062】
【数4】
【0063】
分解された残差データは、マルコフ性質を有すると仮定する。図6に示すように、残差Rにマルコフブートストラップを適用して新たなB個の残差R を生成する。次に、新たに生成された残差R を趨勢Tと加えてB個のリサンプリングデータX を生成し、これを交通渋滞の伝播遅延時間予測に活用する。
【0064】
【数5】
【0065】
ブートストラップサンプリング方式を説明したが、これに限定されてはならず、速度データXと類似する時系列データX を生成することができるリサンプリング方式であれば、いくらでも適用可能である。
【0066】
速度データYに対しても、上述と同じ方式によって速度データYと類似する時系列データY を生成することができる。
【0067】
再び図4を参照すると、段階420で、プロセッサ220は、非線形正規化によって、段階410で生成されたサンプルデータペアを前処理してよい。
【0068】
プロセッサ220は、データの前処理過程の1つとして非線形正規化過程を適用してよい。実際の走行速度や交通量データはノイズが極めて多く、移動エントロピー値はこのようなノイズに敏感に反応するため、各変数の間に相関関係が確実に存在する場合にも結果が適切に現れない場合がある。したがって、データ前処理によってノイズを減らせば、性能が大きく向上することを確認することができる。各道路の類型によって制限速度と平均走行速度は異なり、渋滞による速度減少の幅も異なるため、このような分布を一定にするための正規化過程が必要となる。
【0069】
一例として、プロセッサ220は、速度分布の累積分布関数を利用してサンプルデータペアを正規化してよい。
【0070】
【数6】
【0071】
ここで、X *(b)は段階410で生成された初期サンプルデータであり、F25,t,F50,t,F75,tそれぞれは、t時点までX *(b)の25%、50%、75%分位数の値である。Φ(・)は累積分布関数を示し、数式(4)によって計算された
【数7】

が正規化過程を経た最終サンプルデータを意味する。
【0072】
実施形態によっては、Z得点(z-score)やMin-Max正規化などの他の正規化技法を適用してもよい。
【0073】
データ前処理過程において、移動エントロピーを計算するためには、正規化の他にも連続的なデータを離散データに変換するエンコード過程が必要となる。例えば、プロセッサ220は、サンプルデータの分布に対して、5%、95%分位数を基準に、5%分位数よりも低い場合は0として、5%分位数と95%分位数の間の値は1として、95%分位数よりも大きい値は2として3段階のエンコードを進行する。
【0074】
段階430で、プロセッサ220は、前処理されたサンプルデータペアそれぞれに対して、移動エントロピーを利用した因果関係に基づいてデータ間の時間間隔を予測してよい。
【0075】
移動エントロピーは、シャノンエントロピー(Shannon entropy)に基づいて2つの離散変数の間で情報の流れ方向を測定して因果関係を分析する手法である。
【0076】
2つの時系列データX、Yがあるとき、移動エントロピーは、特定のt時点のY値がYの以前の値よりもXの以前の値によって説明がより適切になされるのであれば、XからY方向への因果関係があると判断する。言い換えれば、XからY方向への移動エントロピー値が大きければ、これはXからYに伝達される情報の流れが多いと見ることができ、したがって同一の方向に因果関係があると言うことができる。本実施形態では、ある道路から他の道路に渋滞が伝播する場合、2つの速度データに因果関係が存在するという仮定のもとに移動エントロピーを適用する。
【0077】
プロセッサ220は、道路渋滞の伝播遅延時間の予測に活用するために、特定の時間遅延(Time Lag)による移動エントロピーを測定する。例えば、事故が発生したA道路の速度データをXとし、A道路に進入するN道路の速度データをYとするとき、A道路の渋滞はN道路に伝播される様相を示す。したがって、A道路の速度が減少する時点から一定の時間間隔を置いてN道路の速度が減少し始める。プロセッサ220は、A道路の速度とN道路の速度の時間間隔を因果関係に基づいて予測して各流入道路の渋滞が始まる時点を推定し、最適経路探索などに活用する。
【0078】
プロセッサ220は、1~25分までの任意に定めた特定の時差(Time Lag)に対してXからYに向かう方向の移動エントロピーを計算した後、最も高いエントロピー値を有する時間間隔
【数8】
を求める。一例として、プロセッサ220は、少ないサンプルによる誤差を減らすために、基本移動エントロピーではなく有効移動エントロピー(Effective Transfer Entropy)を使用する。このためには、連続的な速度データを離散データにエンコードする過程が必要となる。一例として、プロセッサ220は、速度データの分布に対して5%、95%分位数を基準に3段階でエンコードを行う。エンコードされた速度データは、値によって0、1、または2で示された時系列データになる。このようにエンコードされたXとYをそれぞれJとIで表現し、数式(5)によってデータ間の時間間隔
【数9】
を求める。
【0079】
【数10】
【0080】
【数11】
は、段階420の前処理過程を経た速度データJとIがあるとき、JからI方向への因果関係がどのくらい大きいかを有効移動エントロピーを利用して求める数式である。ここで、uを1~25分まで変化させながらETEJ→Iを求めるようになるが、このとき、ETE値が最も大きいuを
【数12】
とする。
【数13】
が段階430の結果値となり、A道路からN道路に渋滞が伝播するとき、
【数14】
分の間隔を置いて渋滞伝播が発生したと解釈することができる。
【0081】
段階440で、プロセッサ220は、経路に含まれた2つの道路に対して生成された複数のサンプルデータペアを対象に、時間間隔に対する統計的推論を利用して2つの道路の渋滞伝播遅延時間を推定してよい。
【0082】
プロセッサ220は、サンプリングによって生成されたB個の時系列データペアに対して移動エントロピーを利用した予測過程を実行することにより、B個の予測値
【数15】
を生成してよい。段階410でB個のサンプルデータを生成することにより、それぞれのデータペアに対して移動エントロピーを利用した予測過程を経れば、サンプルデータペアの個数だけ(B個)予測値
【数16】
を得ることができる。各
【数17】
は1分~25分の値を有するようになり、この予測値を渋滞伝播遅延時間に対する分布として示す。この後、統計的推論を利用して該当のサンプルデータの平均
【数18】
と分散
【数19】
を求める。
【0083】
【数20】
【0084】
【数21】
【0085】
【数22】
【0086】
ここで、
【数23】
は予測値
【数24】
の平均を意味し、
【数25】
は予測値
【数26】
の分散を意味する。
【0087】
平均
【数27】
をA道路からN道路への渋滞伝播遅延時間として推定する。また、分散
【数28】
は、予測に対する信頼度として定義する。ブートストラップ分布の分散が小さい場合は、大部分のブートストラップサンプルにおいて
【数29】
のエントロピー値が極めて高く現れたということを意味し、この値には信頼性がない。一方、分散が極めて大きい場合には、すべての時間間隔に対してエントロピー値が同じように現れたため、A道路とN道路の因果関係が低いと解釈することができる。
【0088】
したがって、プロセッサ220は、与えられた時系列データペアからサンプリングによって多数の類似データペアを生成した後、正規化とエンコードによって離散データに変換することができ、類似データペアに対して移動エントロピーを計算した結果、移動エントロピー値が最も高い時間間隔を渋滞伝播遅延時間として推定する。
【0089】
要するに、プロセッサ220は、情報理論の1つである移動エントロピーを応用して2つの道路の因果関係を分析して、道路ネットワークの渋滞伝播パターンを把握することができる。また、プロセッサ220は、時間間隔に対する移動エントロピーを利用して渋滞が他の道路に伝播するまでにかかる遅延時間を予測することができ、予測結果に基づいて、ある道路で渋滞が始まったときに他の流入道路の渋滞開始時点を予測することができる。このとき、プロセッサ220は、データノイズの影響を取り除いて正確な情報伝達を分析するために非線形的なデータ正規化方法を利用してよく、速度時系列データの特性に適したサンプリング方式(一例として、ブートストラップサンプリングなど)を活用して遅延時間に対する統計的推定方法を適用してよい。
【0090】
図7~9は、本発明の一実施形態における、道路ネットワークの渋滞伝播遅延時間を予測する過程を説明するための例示図である。
【0091】
図7を参照すると、交通事故による渋滞状況において、事故道路Aを基準にB~Iまで8つの道路が存在し、A道路への流入可能な4つの経路が存在すると仮定する。
【0092】
渋滞が始まったA道路に対して、K-ホップまでの流入道路を含む部分グラフを生成する。各経路で順にK個の流入道路に対してA道路との因果関係を推定する。
【0093】
例えば、図8に示すように、4つの流入経路のうちでI、F、D、A道路を含む経路(K=3)において、D道路、F道路、I道路それぞれに対して移動エントロピーを利用してA道路との因果関係を推定してよい。
【0094】
2つの道路の速度データペアに対してサンプリングを行うため、図9に示すように、D道路、F道路、I道路それぞれに対して2つの道路の速度の時間間隔に対する分布を得ることができる。これに基づいて、例えば、D道路、F道路、I道路に対してそれぞれ8分、15分、20分という渋滞伝播遅延時間を予測することができる。言い換えれば、A道路の渋滞がD道路に伝播するまでにかかる時間は8分、F道路に伝播するまでにかかる時間は15分、I道路に伝播するまでにかかる時間は20分と推定することができる。
【0095】
深刻な交通混雑状況で渋滞の伝播パターンを把握することは、経路移動時間を予測し、可能な迂回経路を提供するのに必要となる極めて核心的な問題である。しかしながら、このような渋滞のパターンをモデリングすることは、時間による変化はもちろん、各道路の地理的な特性や天気などの多様な変数を考慮しなければならないため困難な問題である。さらに、ある道路で発生した交通渋滞は隣接する流入道路に伝播するため、時間、空間的情報をすべて含んだ渋滞の伝播予測モデルが必要となる。本実施形態では、渋滞が他の道路に伝播するパターンを分析し、このとき他の道路で渋滞が始まる時点を予測することができる。
【0096】
渋滞伝播の原因となるルート道路(root road)は、流入道路(inflow road)と線形的または非線形跡な因果関係があるという仮定のもとに移動エントロピーを利用することで、2つの道路の速度データの因果関係を定量的に表現することができる。
【0097】
2つの変数に特定の時差を与えて移動エントロピーを適用することにより、定量的に計算された値をそのまま利用するのではなく、因果関係が最も大きいと予想される遅延時差を分析することができる。
【0098】
渋滞道路を基準にK-ホップ内の流入道路を含む事故地域のネットワークを生成した後、すべてのK-ホップ内の流入道路をそれぞれ分析するため、道路ネットワークの地理的形態とは関係なく、すべての道路に対して渋滞伝播遅延時間を分析することができる。
【0099】
原本データから生成されたサンプルを利用した統計的推定により、遅延時間を定量的に予測することができる。このとき、統計的推定による平均は各流入道路に渋滞が伝播する遅延時刻を予測するのに使用され、分散は該当の統計的推定に対する信頼度として解釈することができる。また、速度時系列データに前処理過程として正規化を適用することにより、より正確な予測結果を得ることができる。
【0100】
本実施形態では、基本的な統計方法論と移動エントロピーを利用して渋滞開始点を基準にすべての周辺都への渋滞が始まる時点を予測することができる。これにより、ナビゲーションサービスでは、より正確な経路移動時間を予測することができ、適切な状況で最適な迂回道路を決定することができる。さらに、交通事故や道路工事などの不規則的なアクシデント状況において事故情報に関するデータがなくても、各道路間の因果関係だけで渋滞が伝播するパターンを把握することができる。
【0101】
上述した装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、および/またはハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素との組み合わせによって実現されてよい。例えば、実施形態で説明された装置および構成要素は、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、FPGA(field programmable gate array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令を実行して応答することができる様々な装置のように、1つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的コンピュータを利用して実現されてよい。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)およびOS上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行してよい。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答し、データにアクセスし、データを記録、操作、処理、および生成してもよい。理解の便宜のために、1つの処理装置が使用されるとして説明される場合もあるが、当業者であれば、処理装置が複数個の処理要素および/または複数種類の処理要素を含んでもよいことが理解できるであろう。例えば、処理装置は、複数個のプロセッサまたは1つのプロセッサおよび1つのコントローラを含んでよい。また、並列プロセッサのような、他の処理構成も可能である。
【0102】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含んでもよく、思うままに動作するように処理装置を構成したり、独立的または集合的に処理装置に命令したりしてよい。ソフトウェアおよび/またはデータは、処理装置に基づいて解釈されたり、処理装置に命令またはデータを提供したりするために、いかなる種類の機械、コンポーネント、物理装置、コンピュータ記録媒体または装置に具現化されてよい。ソフトウェアは、ネットワークによって接続されたコンピュータシステム上に分散され、分散された状態で記録されても実行されてもよい。ソフトウェアおよびデータは、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。
【0103】
実施形態に係る方法は、多様なコンピュータ手段によって実行可能なプログラム命令の形態で実現されてコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されてよい。ここで、媒体は、コンピュータ実行可能なプログラムを継続して記録するものであっても、実行またはダウンロードのために一時記録するものであってもよい。また、媒体は、単一または複数のハードウェアが結合した形態の多様な記録手段または格納手段であってよく、あるコンピュータシステムに直接接続する媒体に限定されることはなく、ネットワーク上に分散して存在するものであってもよい。媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROMおよびDVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどを含み、プログラム命令が記録されるように構成されたものであってよい。また、媒体の他の例として、アプリケーションを配布するアプリケーションストアやその他の多様なソフトウェアを供給または配布するサイト、サーバなどで管理する記録媒体または格納媒体が挙げられる。
【0104】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0105】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0106】
110、120、130、140:電子機器
150、160:サーバ
170:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9