IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ショット アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-ガラス・金属フィードスルー 図1
  • 特許-ガラス・金属フィードスルー 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ガラス・金属フィードスルー
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/02 20060101AFI20240312BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240312BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61L31/02
A61L31/14
A61N1/05
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022147063
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2021057500の分割
【原出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2022177163
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】10 2018 005 733.0
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031698(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19842943(DE,A1)
【文献】特許第7144566(JP,B2)
【文献】特許第6861765(JP,B2)
【文献】特表2006-528026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A61N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部導体、ガラス材料および内部導体からなり、前記内部導体が膨張係数α内部を有し、前記ガラスが膨張係数αガラスを有し、前記外部導体が膨張係数α外部を有するガラス・金属フィードスルーを有する部品であって、前記内部導体の膨張係数α内部が、前記ガラスの膨張係数αガラスよりも大きく、且つ前記外部導体の膨張係数α外部と、前記ガラスの膨張係数αガラスとの間の差が、20℃からガラス転移温度までの温度範囲で少なくとも2ppm/Kであり、且つ前記外部導体の膨張係数α外部が、前記ガラスの膨張係数αガラスよりも大きく、
前記外部導体と前記内部導体とは少なくともその表面領域において、アレルギーの可能性が低下された金属からなり、前記内部導体の膨張係数α内部が、前記ガラスの膨張係数αガラスの1.1倍よりも大きく、
前記内部導体および前記外部導体の熱膨張係数が、前記外部導体から前記ガラスへの正の接合圧力が存在し、そこから生じるガラスと内部導体との間の接合圧力が少なくとも30MPaであるように選択されることを特徴とする、前記部品。
【請求項2】
前記内部導体が、十分な溶接性を提供する金属から選択されることを特徴とする、請求項に記載の部品。
【請求項3】
前記内部導体および前記外部導体の膨張係数が、十分な封止性を提供するために十分な接合圧力がガラス上にもたらされるように選択され、前記十分な接合圧力に基づく十分な封止性が、1×10-8mbar l/秒を下回るヘリウムのリーク速度を有する気密性であることを特徴とする、請求項に記載の部品。
【請求項4】
前記内部導体の金属が、少なくとも表面領域において、人体または動物の体と接触するか、または細胞培養物と接触する場合、
・ フェライトステンレス鋼(AISI 4xx)
・ 白金
・ 白金/イリジウム
・ ニオブ
・ チタン
・ モリブデン
・ タングステン
並びにそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品。
【請求項5】
少なくとも前記表面領域における前記外部導体の金属が、
・ オーステナイト系ステンレス鋼AISI 3xx
・ フェライトステンレス鋼AISI 4xx
・ AISI 630
並びにそれらの組み合わせの群から選択される、請求項4に記載の部品。
【請求項6】
前記内部導体の膨張係数α内部が、4×αガラス~1.5×αガラスの範囲であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品。
【請求項7】
前記内部導体の膨張係数α内部が、αガラスの少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品。
【請求項8】
前記外部導体が、ニッケル不含の非腐食性の化学耐性の鋼からなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品。
【請求項9】
人体または動物の体に入れるか、または人体または動物の体に装着するように備えられているか、または生存する細胞を含有する細胞培養物と接触するように備えられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品。
【請求項10】
埋め込み可能な医療器具または装置内での請求項1からまでのいずれか1項に記載の部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部導体、ガラス材料および内部導体からなるガラス・金属フィードスルー、並びに医療器具および装置、殊に埋め込み可能な医療器具および装置におけるその使用、並びにかかるガラス・金属フィードスルーを有する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス・金属フィードスルーは、電気技術の種々の用途領域において用いられている。例えば、これらは電子機器およびセンサーにおける素子用のハウジング内に導電体を引き込むために使用される。これに関し、かかる部材はガラスと種々の金属材料との溶融接合部を有する。金属製の内部導体を、金属性の外部導体で取り囲まれているガラスまたはガラスセラミック材料内に封止することによって、ハウジング内への導体の気密性フィードスルーを提供できる。特殊なガラス・金属フィードスルーは、そのフィードスルー自体、もしくはそのフィードスルーの一部が人体と接触するようなフィードスルーである。かかるフィードスルーの場合、用いられる全ての構成要素の高い腐食耐性並びに良好な長期安定性が保証されることが重要である。殊に、そのようなフィードスルーは、アレルギー反応の発生を防ぐために、限定された量のみのNiを放出するべきである。これは、いわゆるニッケル放出の限界値についての規準に定義されている。これに関し、DIN EN1811およびDIN EN12472が参照される。
【0003】
ガラス・金属フィードスルーに際し、フィードスルー導体のための材料としては、主にFe-Ni-合金、Fe-Ni-Co-合金、Fe-Ni-Cr-合金が用いられる。この材料の利点は、熱膨張率が封止ガラスと良好に適合することである。ただし、これらの材料の全ては母材中に著しい割合のNiを有する。さらに、それらは、材料を腐食から保護するためにニッケルコーティングを有し、それがまた、望ましくない量のニッケルを放出する。
【0004】
Niの放出を防ぐために、従来技術においては、フィードスルー導体もしくは内部導体を十分な厚さの金層で覆って、ニッケルの侵入を低減させていた。ただし、これは、Niの漏洩を不十分にしか防止できないか、またはこれを達成するために2.5μmを上回る厚さの非常に厚いAu層が必要であるという欠点を有していた。
【0005】
被覆された導体を用いた解決策の代わりに、最も近い従来技術として、独国特許出願公開第19842943号明細書(DE19842943 A1)は、内部導体としてタンタルを使用するか、または代替的にニッケル不含の非腐食性フェライトステンレス鋼、例えばUS規格AISI446に準拠する鋼である、アルミニウム添加の非腐食性耐熱フェライトクロム鋼を使用する技術を提案している。フェライトステンレス鋼AISI446の膨張係数は、慣用のガラスよりもわずかに高いだけである。従って、内部導体が冷却の際にガラスよりも強く収縮し、ガラスとの界面が裂ける危険がある。独国特許出願公開第19842943号のさらなる欠点は、Ni不含の材料の選択肢が限定的であったことであり、なぜならフィードスルーの十分な封止性は、内部導体の膨張係数α内部がガラスの膨張係数αガラスよりも小さい場合にしかもたらされないからである。
【0006】
米国特許第3770568号明細書(US3770568 A)から、気密性のタンタル電解質コンデンサのために使用でき、且つガラス組成物中に有効なクロムの割合を有する、ガラス組成物が知られるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第19842943号明細書
【文献】米国特許第3770568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、内部導体のためのより広い材料の選択を可能にし、且つ密なフィードスルーを提供する、ガラス・金属フィードスルーを示すことである。
【0009】
殊に、内部導体は、一方では人体との接触に際してニッケルを放出せず、他方では十分な溶接性を提供することが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を全体として有するガラス・金属フィードスルーによって解決される。本発明の有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0011】
本発明によるガラス・金属フィードスルーは、内部導体の膨張係数α内部が、ガラスの膨張係数αガラスよりも大きく、且つ、外部導体の膨張係数α外部と、ガラスの膨張係数αガラスの間の差が、20℃からガラス転移温度までの温度範囲で少なくとも2ppm/K、好ましくは少なくとも4ppm/Kであり、且つ外部導体の膨張係数α外部が、ガラスの膨張係数αガラスよりも大きいことを特徴とする。
【0012】
外部導体がガラスに予め圧力をかけていることによって、ガラスも、ガラスと内部導体との界面に正の圧力(接合圧力)を及ぼすことが達成される。このことから、この圧力が信頼性高く結合部を封止して保つという利点がもたらされる。さらに、ガラス・金属フィードスルーの高さが低いことが達成され、これは、様々な用途分野、例えば患者のモニター装置またはレジャー分野でのアームバンド等に使用できる。
【0013】
内部導体としてのピンがガラスに対してより大きな膨張率に限定されていること、および外部導体がガラスに対して少なくとも2ppm/K大きい膨張率であることは、殊に10ppm/Kを上回る膨張率を有するピンについて、非常に高膨張性の材料の場合に特に効果的である。この範囲では、良好な封止ガラスがほとんど入手可能ではない。
【0014】
意外なことに、発明者らは例えば、10.5~20%の高いクロム割合を有するフェライトステンレス鋼、好ましくは15~17%のクロム割合を有するステンレス鋼、例えばフェライトステンレス鋼AISI 430の使用が可能であることを見出した。フェライトステンレス鋼の代替的に、他の材料、例えばモリブデン、タングステンまたは白金を使用することもできる。それらのさらなる材料もアレルギーの可能性が低い。これらの材料についても、膨張係数についての本発明による条件α内部>αガラス[式中、α内部は内部導体の膨張係数であり、αガラスはガラスの膨張係数である]が該当しなければならない。
【0015】
ただし、この鋼の使用に際し、11.6~11.5×10-6/Kを有するそれらの熱膨張係数α内部が、10.6~6.1×10-6/Kの範囲であるガラスの膨張係数αガラスより顕著に高いことが問題となる。意外なことに、本発明者らは、αガラスを上回るより大きな導体のα内部にもかかわらず、ガラス・金属フィードスルーの場合、十分な封止性をもたらすためには内部導体の熱膨張率が使用されるガラスの熱膨張率よりも高くてはならないと教示している従来技術に反して、α内部がαガラスよりも大きい場合であっても、外部導体からガラスに及ぼされる正の高い接合圧力がもたらされる場合、密なガラス封止(Einglasung)がもたらされることを見出した。さらなる調査が示しているとおり、接合圧力が正であるだけでは封止性のために充分ではなく、信頼性のあるガラス封止を達成するためには、30MPaを上回る、好ましくは50MPaを上回る、殊に100MPaを上回る接合圧力が達成されなければならない。
【0016】
そのような高い接合圧力は、αガラスがα内部より小さい場合、外部導体がガラスに十分に予め圧力をかける際にもたらされる。そのように生じるガラスと内部導体との間の接合圧力は、封止後にフィードスルーを冷却する際に設定される。この接合圧力が顕著に正、つまり30MPaを上回る、もしくは50MPaを上回る、殊に100MPaを上回っていれば、αガラスがα内部よりも小さいにも関わらず、ガラスと金属との間の移行部、つまりガラスから内部導体への移行部は閉じられたままであり、ひいては封止されている。接合圧力は、膨張率の差に直接的に依存する。さらに、本発明の形状の依存性も考えられる。接合圧力は表面圧力である。接合圧力は、第1の物体が第2の物体を押す、単位面積あたりの力を表す。
【0017】
必要な接合圧力をもたらすために、外部導体の膨張係数α外部とガラスの膨張係数との間の差は、少なくとも2ppm/K、好ましくは少なくとも4ppm/Kであり、ここで、前記膨張係数がガラスの膨張係数αガラスよりも大きい。特に好ましい実施態様において、内部導体のα内部は、内部導体の膨張係数α内部が、ガラスの膨張係数αガラスよりも1.1倍大きくなるように選択される。特に好ましい実施態様において、α内部は、1.1×αガラス~2×αガラスの範囲である。ガラス材料への外部導体の必要な圧力をもたらし、且つ封止性を確実にするために、外部導体はニッケル不含の非腐食性の化学耐性の鋼(ステンレス鋼)からなるものとする。必要な接合圧力をもたらすために、外部導体の膨張係数は、ガラスの膨張係数よりも大きい。
【0018】
特に好ましくは、外部導体はオーステナイト系ステンレス鋼、好ましくはステンレス鋼316Lであり、それは良好な溶接性と高い膨張係数を特徴とする。
【0019】
ニッケル不含のフェライトステンレス鋼の他に、殊に高いクロム割合を有し、その膨張係数α内部がガラス材料の膨張係数よりも大きい非硬化性のフェライトステンレス鋼も考えられ、その内部導体用にはモリブデンまたはタングステンまたは白金が使用される。好ましくは、前記膨張係数は、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも50MPa、殊に少なくとも100MPaの接合圧力が内部導体上でもたらされるように選択される。
【0020】
フィードスルーの他に、本発明は、埋め込み可能な医療器具または装置における本発明によるガラス・金属フィードスルーの使用、並びに、本発明によるガラス・金属フィードスルーを有する、人体または動物の体または生存する生物細胞を含有する細胞培養物中に入れることができるかまたはそれらに装着できる部品も提供し、ここで外部導体と内部導体とは少なくとも、稼働状態で人体または動物の体と接触する表面領域において、アレルギーの可能性が低下された金属からなる。好ましくは、外部導体も内部導体も、これらの金属からなる。
【0021】
内部導体の金属および外部導体の金属は、人体および動物の体、または細胞培養物と接触させることができ、ニッケルおよび/またはクロムを排出しないことを特徴とする。
【0022】
外部導体の金属および内部導体の金属が、少なくとも、稼働状態で人体または動物の体または細胞培養物の生物細胞と接触する表面領域で、ニッケル不含および/またはクロム不含の鋼からなることが好ましい。
【0023】
少なくとも、稼働状態で人体または動物の体、または細胞培養物の生物細胞と接触する表面領域における内部導体の金属として、フェライトステンレス鋼、並びに白金、白金/イリジウム、ニオブ、チタン、モリブデン、タングステン並びにそれらの組み合わせの群から選択される金属が特に適している。前記フェライトステンレス鋼は、AISI 4xxの品種、例えばAISI 430を含む。
【0024】
少なくとも、稼働状態において人体または動物の体、または細胞培養物の生物細胞と接触する表面領域における外部導体の金属は、好ましくは
AISI 316 L
AISI 430
AISI 630
並びにそれらの組み合わせの群から選択される。外部導体のためのさらなる材料は、オーステナイト系ステンレス鋼AISI 3xxもしくはフェライトステンレス鋼AISI4xxの群から選択できる。
【0025】
以下で本発明を図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の1つの実施態様の模式図である。
図2】(図2a、b)導体およびガラスの接合圧力の散布図である。
【実施例
【0027】
図1は、本発明の実施態様の断面の模式図を例示的に示す。図1に描かれるガラス・金属フィードスルーは、好ましくはアルミニウム製であってよいハウジング1を通じて、フィードスルー3がハウジング1の開口部5内にはめ込まれている。フィードスルー3は、は外部導体9内にはめ込まれているフィードスルー導体もしくは内部導体7を含む。外部導体9は基体と称することもでき、好ましくは高い熱膨張係数を有するオーステナイト系ステンレス鋼からなる。その外部導体は基体と称することもでき、好ましくは溶接によってハウジングと結合されている。内部導体またはフィードスルー導体7は外部導体内で中心になるようにガラス封止されている。これは、内部導体7が絶縁基体11内で外部導体9内部の空間を完全に充填することによって生じる。内部導体を封止するガラスは、好ましくは生体適合性ガラスである。
【0028】
図1には、フィードスルー導体7の直径d並びに開口部5のいわゆる穴径Dも示されている。
【0029】
本発明によれば、ガラスは膨張係数αガラスを有し、内部導体は膨張係数α内部を有し、外部導体は膨張係数α外部を有するものとする。その原料は、内部導体の膨張係数α内部がガラスの膨張係数αガラスよりも大きくなるように選択される。外部導体の膨張係数とガラスの膨張係数との間の差は、少なくとも2ppm/K、好ましくは少なくとも4ppm/Kである。外部導体の膨張係数α外部は、20℃から転移温度までの温度範囲で、膨張係数αガラスよりも大きい。これによって、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも50MPa、殊に少なくとも100MPaの接合圧力が内部導体上でもたらされる。
【0030】
本発明において必要とされるように、内部導体の膨張係数α内部がガラスの膨張係数αガラスよりも大きい場合、フィードスルーの十分な封止性をもたらすことが問題となる。そのような場合、十分な封止性は、即ち、外部導体がガラスへの十分に高い接合圧力を構築することができる場合にのみ確実になる。従来技術によるd/Dに依存する接合圧力を図2aに示し、ここではフィードスルー導体用の材料として、膨張係数αガラスの値をわずかに上回る7.3~6.6×10-61/Kのαを有し、本発明には含まれないコバールが使用された。ここで、dは導体の直径を示し、Dは開口部5の直径を示す。d/Dは導体の直径dと穴径Dとの間の比を示す。一般に、d/Dについての小さな値は、導体と開口部との間の大きな隙間を特徴とし、且つd/Dの大きな値は導体と開口部との間の小さな隙間を特徴とする。
【0031】
図2aによるフィードスルーはたしかに気密性ではあるが、コバール合金は高いニッケル割合を有するので、フィードスルー導体からニッケルが放出されかねないという欠点がある。
【0032】
従って、本発明によれば、コバールのフィードスルー導体が、ニッケルを放出しない材料によって置き換えられる。意外なことに、このために適した材料はフェライトのNi不含のステンレス鋼、殊にAISI430であることが判明した。しかしながら、Ni不含のフェライトステンレス鋼、例えばAISI430の欠点は、α内部が11.5×10-6-1であり、ひいてはガラス材料のαガラスの膨張係数を明らかに上回ることである。つまり、用いられるガラスの膨張係数αガラスは、6.1×10-6-1~10.6×10-6-1の範囲である。
【0033】
そのような状況下で、圧力に耐えるガラス封止を達成するためには、外部導体からもたらされる十分に高い接合圧力が構築されなければならない。
【0034】
図2bに、かかるフィードスルーについての接合圧力のd/D依存性を示す。
【0035】
図2bから明らかなとおり、フィードスルー部品用材料としてのAISI 430の使用について、特に外部導体がα外部18.3×10-6/Kを有するオーステナイト系ステンレス鋼からなる場合に、十分に高い接合圧力が生じる。かかる構成は、封止性を確実にするために十分に高い接合圧力を有する。かかる材料の組み合わせの接合圧力は、参照番号100および200で示されている。接合圧力は、より大きなd/D、つまり小さな隙間では、150MPaを上回る値に上昇する。
【0036】
曲線300および400は、AISI 430フィードスルー導体についての接合圧力を記載し、ここで、外部導体はAISI 430もしくはAISI 630であり、且つガラスは10.6×10-6の膨張係数を有し、ひいては外部導体およびフィードスルーの膨張係数の範囲内にある。従って、必要な接合圧力が構築され得ない。一般に、かかる材料の組み合わせは低い接合圧力を示す。曲線300および400は、前記直径比の影響はほとんどなく平坦に推移する。
【0037】
図2bによるグラフ「d/Dに対する接合圧力」における種々の曲線の材料を、以下の表に記載する:
【表1】
【0038】
ここで、曲線100、200の材料の組み合わせは特に高い接合圧力を有するので、フィードスルーの気密性がもたらされる。
【0039】
上記のガラス・金属フィードスルーは、埋め込み可能な医療器具または装置において使用できる。それらは経済的に製造可能であり、且つNiの放出が非常に少ないことを特徴とする。さらにそれらは、高い接合圧力に基づき、気密性、つまり1×10-8mbar l/秒を下回るヘリウムのリーク速度を有する。
図1
図2