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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】スクリュ圧縮機及び圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20240312BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20240312BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F04C29/04 C
F04C18/16 Q
F04C29/12 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022198001
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸治
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218931(JP,A)
【文献】特開2012-097645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16、18/52
F04C 23/00-29/12
F04C 2/08- 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、
スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、
前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、
対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、
前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、
前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え
前記軸受保持部及び前記本体部の少なくとも一方は、前記本体部の内周面に沿って周方向に延びる溝部を備え、
前記溝部によって前記加温流体流通路が区画される、スクリュ圧縮機。
【請求項2】
0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、
スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、
前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、
対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、
前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、
前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え、
前記加温流体流通路が、前記軸受部の中心軸を中心とした少なくとも180°以上の範囲に存在する、スクリュ圧縮機。
【請求項3】
0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、
スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、
前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、
対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、
前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、
前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え、
前記軸受保持部は、前記加温流体流通路に導入された加温流体を前記加温流体流通路から排出可能な排出路を備える、スクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記加温流体流通路に導入された加温流体を前記加温流体流通路から排出可能な排出路を備える、請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記スクリュロータと噛合する別のスクリュロータを有する第2のロータ部と、
前記別のスクリュロータの吸込側端部から延びる前記第2のロータ部の軸部を回転可能に支持する別の軸受部と、
を備え、
前記ケーシングは、
前記本体部の内側に配置されるとともに前記別の軸受部を内側に保持する別の軸受保持部と、
前記吸込み流路に存在する圧縮前の対象ガスから前記別の軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する第2の加温流体流通路と、を備える、請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項6】
請求項1、2又はに記載のスクリュ圧縮機と、
前記スクリュ圧縮機の前記ロータ部により圧縮された対象ガスから油を回収する油回収器と、
前記油回収器の油を前記ケーシングに導く油配管と、
前記ケーシング内に設けられ、前記油配管からの油を前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路と、
を備える、圧縮機ユニット。
【請求項7】
請求項1、2又はに記載のスクリュ圧縮機と、
前記スクリュ圧縮機の前記ロータ部により圧縮された吐出ガスの一部を前記スクリュ圧縮機の前記ケーシングに導くガス案内流路と、
前記ケーシング内に設けられ、前記ガス案内流路の吐出ガスを前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路と、
を備える、圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機及び圧縮機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内ではエネルギー産業の規制緩和が進み、二酸化炭素(CO2)排出係数が大きい石炭や石油から排出係数が小さいクリーンなエネルギーであるLNGへのシフトが進んでいる。また、近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。このようなLNGや水素ガスを圧縮するために用いられるスクリュ圧縮機が知られている。従来、スクリュ圧縮機にはロータを回転可能に支持するために軸受が設けられている。特許文献1では、スクリュ圧縮機において、ケーシング内に設けられた流路を通じて軸受に油を供給する構成が開示されている。
【0003】
なお、特許文献2は溶融樹脂の定量搬送用ギヤポンプを開示したものであるが、ギヤポンプにおいて、軸受を冷却するために、軸受の内周部材の外周面に蛇行状凹溝を設けることにより冷却媒体通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-211521号公報
【文献】特開2002-139063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、0℃未満の低温ガス、例えば液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)を圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。このため、圧縮機がそのまま低温ガスを吸入する構成を採用すると、それに適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。
【0006】
具体的には、低温ガスが存在する空間近くに配置される軸受に対して、低温ガスによる冷熱の影響を低減する対策が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、低温環境下において軸受部を適切に保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、を備える。前記ケーシングは、対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え、前記軸受保持部及び前記本体部の少なくとも一方は、前記本体部の内周面に沿って周方向に延びる溝部を備え、前記溝部によって前記加温流体流通路が区画される。
【0009】
本発明に係るスクリュ圧縮機では、低温環境下において、対象ガスの冷熱の影響による軸受部の支持機能の低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記軸受保持部及び前記本体部の少なくとも一方、前記本体部の内周面に沿って周方向に延びる溝部を備え、前記溝部によって前記加温流体流通路が区画されるため、加温流体流通路を作成しやすい構造となる。
【0011】
本発明に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、を備える。前記ケーシングは、対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え、前記加温流体流通路は、前記軸受部の中心軸を中心とした少なくとも180°以上の範囲に存在している。この態様では、低温環境下において、対象ガスの冷熱の影響による軸受部の支持機能の低下を抑制することができるだけでなく、加温流体流通路を流通する加温流体によって軸受部を適切に加温することができる。
【0012】
本発明に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、スクリュロータと、前記スクリュロータの吸込み側端部から延びる軸部と、を有するロータ部と、前記軸部を回転可能に支持する軸受部と、前記ロータ部及び前記軸受部を収容するケーシングと、を備える。前記ケーシングは、対象ガスの吸込み流路が形成される本体部と、前記本体部の内側に配置されるとともに前記軸受部を内側に保持する軸受保持部と、前記吸込み流路内に存在する圧縮前の対象ガスから前記軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路と、を備え、前記軸受保持部は、前記加温流体流通路に導入された加温流体を前記加温流体流通路から排出可能な排出路を備え。この態様では、低温環境下において、対象ガスの冷熱の影響による軸受部の支持機能の低下を抑制することができるだけでなく、常に新しい加温流体を供給し続けることができる。
【0013】
前記ケーシングは、前記加温流体流通路に導入された加温流体を前記加温流体流通路から排出可能な排出路を備えてもよい。この態様では、常に新しい加温流体を供給し続けることができる。
【0014】
前記スクリュ圧縮機は、前記スクリュロータと噛合する別のスクリュロータを有する第2のロータ部と、前記別のスクリュロータの吸込側端部から延びる前記第2のロータ部の軸部を回転可能に支持する別の軸受部と、を備えてもよい。この場合において、前記ケーシングは、前記本体部の内側に配置されるとともに前記別の軸受部を内側に保持する別の軸受保持部と、前記吸込み流路に存在する圧縮前の対象ガスから前記別の軸受部への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する第2の加温流体流通路と、を備えてもよい。
【0015】
この態様では、低温環境下において、対象ガスの冷熱の影響による軸受部の支持機能の低下を抑制することができる。
【0016】
本発明は、前記スクリュ圧縮機と、前記スクリュ圧縮機の前記ロータ部により圧縮された対象ガスから油を回収する油回収器と、前記油回収器の油を前記ケーシングに導く油配管と、前記ケーシング内に設けられ、前記油配管からの油を前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路と、を備える、圧縮機ユニットである。この圧縮機ユニットでは、対象ガスから回収された油が用いられるため、再利用可能な熱源として好適である。
【0017】
本発明は、前記スクリュ圧縮機と、前記スクリュ圧縮機の前記ロータ部により圧縮された吐出ガスの一部を前記スクリュ圧縮機の前記ケーシングに導くガス案内流路と、前記ケーシング内に設けられ、前記ガス案内流路の吐出ガスを前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路と、を備える、圧縮機ユニットである。この圧縮機ユニットでは、吐出ガスが用いられるため、適当な熱源として好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、低温環境下において軸受部を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るスクリュ圧縮機が設けられた圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の主要部を概略的に示す断面図である。
図3図2の一部を拡大して示す断面図である。
図4】溝部の変形例を示す図である。
図5】溝部の変形例を示す図である。
図6】排出路を説明するための図である。
図7】排出路の変形例を説明するための図である。
図8】第2実施形態に係るスクリュ圧縮機が設けられた圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
図9】第2実施形態に係るスクリュ圧縮機における排出路を説明するための図である。
図10】第2実施形態に係るスクリュ圧縮機における排出路の変形例を説明するための図である。
図11】その他の実施形態に係るスクリュ圧縮機の主要部を概略的に示す断面図である。
図12】その他の実施形態に係るスクリュ圧縮機の主要部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満の温度を有するガスである対象ガスを圧縮するために用いられる圧縮機である。対象ガスとしては、液化天然ガスのボイルオフガス、液体水素のボイルオフガス等が挙げられるが、これに限られない。スクリュ圧縮機は、図1に示す圧縮機ユニット10に設けられる。すなわち、圧縮機ユニット10は、給油式のスクリュ圧縮機12と、スクリュ圧縮機12から吐出された対象ガスから油を回収する油回収器14と、油回収器14に溜められた油をスクリュ圧縮機12に導く油配管15と、を備えている。油回収器14は、スクリュ圧縮機12のガス出口12aに繋がる吐出管16に設けられている。
【0022】
油配管15には、油回収機構18が設けられている。油回収機構18は、油回収器14内の油をスクリュ圧縮機12に向けて送り出すための油ポンプ18aと、油回収器14からの油を冷却する冷却器18bと、を備えている。油は冷却器18bで冷却されるが、冷却器18bを通過した油は、スクリュ圧縮機12に吸入される対象ガスの温度よりは高い温度を有する。なお、油回収機構18が省略され、油回収器14からの油が油ポンプ18a及び冷却器18bを経由することなくスクリュ圧縮機12に戻されてもよい。
【0023】
図2に示すように、スクリュ圧縮機12は、ロータ部(第1のロータ部21)と、第1のロータ部21の隣に配置された第2のロータ部22と、を備えている。第1のロータ部21は、スクリュロータ(第1スクリュロータ21a)と、第1スクリュロータ21aの一端部(吸込側端部)から延びる吸込側(後述する吸込み流路42が位置する側)の軸部である第1軸部21bと、第1スクリュロータ21aの他端部(吐出側端部)から延びる吐出側(後述する吐出流路が位置する側)の軸部である第1吐出側軸部21cと、を備えている。
【0024】
第2のロータ部22は、第1スクリュロータ21aに噛み合う別のスクリュロータ(第2スクリュロータ22a)と、第2スクリュロータ22aの一端部(吸込側端部)から延びる吸込側の別の軸部である第2軸部22bと、第2スクリュロータ22aの他端部(吐出側端部)から延びる吐出側の別の軸部である第2吐出側軸部22cと、を備えている。
【0025】
ケーシング30内において第1スクリュロータ21aの歯部の外面と第2スクリュロータ22aの歯部の外面とにより、対象ガスを圧縮するための圧縮室(図示省略)が区画されている。圧縮室は、第1スクリュロータ21a及び第2スクリュロータ22aの回転に伴って第1スクリュロータ21aの歯部と第2スクリュロータ22aの歯部との間の空間が閉じられることによって生ずる圧縮用空間である。圧縮室は、スクリュロータの回転位置に応じて、第1スクリュロータ21a及び第2スクリュロータ22aの軸方向一端部(吸込側端部)において開口し後述の吸込み流路42に連通した状態と、後述の吐出流路及び吸込み流路42から遮断された状態と、第1スクリュロータ21a及び第2スクリュロータ22aの軸方向他端部(吐出側端部)において開口して後述の吐出流路に連通した状態と、を有する。
【0026】
第2軸部22bは、第2スクリュロータ22aに対して軸方向の一端部側に位置しており、第1軸部21bに対して平行になるように第1軸部21bに隣接して配置されている。また、第2吐出側軸部22cは、第2スクリュロータ22aに対して軸方向の他端部側に位置しており、第2吐出側軸部22cに対して平行になるように第2軸部22bに隣接して配置されている。
【0027】
スクリュ圧縮機12は、軸受部(第1の軸受部25)と、これとは別の軸受部である第2の軸受部26と、第1ロータ部の第1スクリュロータ21aに対して後述する吐出流路が位置する側に配置された吐出側軸受部(第1の吐出側軸受部27)と、第2のロータ部22の第2スクリュロータ22aに対して後述する吐出流路が位置する側に配置された第2の吐出側軸受部28と、を備えている。第1の軸受部25は、円環状に形成されるとともに第1軸部21bを囲むように配置されている。第1の軸受部25は第1軸部21bを回転可能に支持する。第2の軸受部26は、円環状に形成されるとともに第2軸部22bを囲むように配置されている。第2の軸受部26は第2軸部22bを回転可能に支持する。第1の吐出側軸受部27は、円環状に形成されるとともに第1吐出側軸部21cを囲むように配置されている。第1の吐出側軸受部27は、第1吐出側軸部21cを回転可能に支持する。第2の吐出側軸受部28は、円環状に形成されるとともに第1吐出側軸部21cを囲むように配置されている。第2の吐出側軸受部28は、第1吐出側軸部21cを回転可能に支持する。
【0028】
スクリュ圧縮機12は、第1のロータ部21、第2のロータ部22、第1の軸受部25、第2の軸受部26、第1の吐出側軸受部27、第2の吐出側軸受部28を収容するケーシング30を備えている。ケーシング30は、第1構成部31と、第1構成部31とは別体の部材で構成された第2構成部32と、第1構成部31及び第2構成部32とは別体の部材で構成された第3構成部33と、を有する。
【0029】
第2構成部32は、第1スクリュロータ21a及び第2スクリュロータ22aを収容する部位である。第1構成部31は、軸方向において第1構成部31に隣接しており、第1軸部21b、第1の軸受部25、第2軸部22b及び第2の軸受部26を収容している。第3構成部33は、軸方向において第1構成部31とは反対側において第2構成部32に隣接しており、第1吐出側軸部21c、第2吐出側軸部22c、第1の吐出側軸受部27及び第2の吐出側軸受部28を収容している。第2構成部32及び第3構成部33のうち、少なくとも第3構成部33には、圧縮室から吐出された対象ガスを、ケーシング30に開口したガス出口12a(図1参照)に導く吐出流路(図示省略)が設けられている。
【0030】
図3にも示すように、第1構成部31は、第1の軸受部25を保持する軸受保持部(第1の軸受保持部35)と、第1の軸受保持部35とは別の部材で構成された軸受保持部であり且つ第2の軸受部26を保持する第2の軸受保持部36と、備えている。
【0031】
第1の軸受保持部35は、環状の第1の軸受部25を囲むようにして第1の軸受部25を保持しており、軸方向に延びる筒状の形状を有する筒状部(第1筒状部35a)と、第1筒状部35aにおける軸方向端部から内側に突出する環状の突出部(第1突出部35b)と、を有する。第1の軸受部25は、第1筒状部35aの内周面によって受けられている。
【0032】
第2の軸受保持部36は、環状の第2の軸受部26を囲むようにして第2の軸受部26を保持しており、軸方向に延びる筒状の形状を有する筒状部(第2筒状部36a)と、第2筒状部36aにおける軸方向端部から内側に突出する環状の突出部(第2突出部36b)と、を有する。第2の軸受部26は、第2筒状部36aの内周面によって受けられている。
【0033】
第1構成部31は、本体部37をさらに備えており、この本体部37には、第1の軸受保持部35及び第2の軸受保持部36が取り付けられる取付部38と、取付部38に対して離間しつつ取付部38を取り囲むよう配置される外壁部39と、取付部38及び外壁部39を互いに結合する結合部40と、が含まれている。取付部38と外壁部39との間には、取付部38を取り囲む環状の空間が形成され、この環状の空間が結合部40によって塞がれている。なお、取付部38、外壁部39及び結合部40は、一体的な部材によって形成されている。
【0034】
外壁部39は、取付部38から外側に離間した位置を軸方向に延びるとともに環状に形成されており、軸方向における外壁部39の一端側の端面39aは、第2構成部32に対向している。
【0035】
結合部40は、外壁部39の軸方向の他端側の端部から内側に曲がるように延びて、取付部38に又は取付部38から軸方向に延出された部位に繋がっている。
【0036】
外壁部39の一端側の端面39aは、第2構成部32における第1構成部31側の軸方向端面32aに接合されている。この第2構成部32の軸方向端面32aは、第1スクリュロータ21a及び第2スクリュロータ22aを取り囲む環状であり、外壁部39の一端側の端面39aは、第2構成部32の軸方向端面32aに対応する環状に形成されている。すなわち、第1構成部31は、第2構成部32に向けて開口した形状を有している。
【0037】
外壁部39と取付部38と結合部40とは、協同して、前記環状の空間からなる吸込み流路42を形成する。吸込み流路42は、ケーシング30の外面に開口するガス入口12b(図1参照)から圧縮室に至るまでの空間の少なくとも一部を構成し、ガス入口12bから流入した対象ガスは、吸込み流路42を通って圧縮室に流入する。すなわち、吸込み流路42には、圧縮室に吸い込まれる前の対象ガスが流通する。なお、吸込み流路42は、第1構成部31から第2構成部32に渡って形成されることもなる。つまり、吸込み流路42は、第1構成部31および第2構成部32のうち、少なくとも第1構成部31に形成されている。
【0038】
取付部38は、第1の軸受保持部35が内側に取り付けられる第1取付部38aと、第2の軸受保持部36が内側に取り付けられる第2取付部38bと、を含む。第1取付部38a及び第2取付部38bは、互いに隣り合うように配置されるとともに一体的に設けられている。
【0039】
第1取付部38aは筒状に形成されており、第1取付部38aの内周面には、第1の軸受保持部35の外周面が対向している。つまり、第1取付部38aの内側に第1の軸受保持部35が配置されており、この状態で、第1の軸受保持部35が第1取付部38aに取り付けられている。また第2取付部38bも筒状に形成されており、第2取付部38bの内周面には、第2の軸受保持部36の外周面が対向している。つまり、第2取付部38bの内側に第2の軸受保持部36が配置されており、この状態で、第2の軸受保持部36が第2取付部38bに取り付けられている。
【0040】
第1の軸受保持部35(第1筒状部35a)の外周面における軸方向の中間部分には、溝部44が形成されており、この溝部44の軸方向両側に位置する外周面部分は、第1取付部38aの内周面に接触している。したがって、溝部44においては、第1の軸受保持部35の外周面と第1取付部38aの内周面との間に空間が形成されている。この空間は、第1の軸受保持部35の外周面に沿って周方向に延びる空間であり、この空間には、圧縮前の対象ガスよりも高温の加温流体が流通する。すなわち、ケーシング30は、圧縮前の対象ガスから第1の軸受部25への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路45を備えている。加温流体流通路45は、吸込み流路42と第1の軸受部25との間に位置している。
【0041】
なお、溝部44は、第1の軸受保持部35の外周面に形成される構成に代え、図4に示すように第1取付部38aの内周面に形成されていてもよい。また、図5に示すように、溝部44は、第1の軸受保持部35の外周面に形成されるとともに第1取付部38aの内周面にも形成されていてもよい。また、加温流体流通路45は、第1の軸受保持部35及び第1取付部38aの少なくとも一方に形成された溝部によって区画される構成に限られない。たとえば、加温流体流通路45は、第1の軸受保持部35及び第1取付部38aの少なくとも一方の内部に形成された通路によって構成されてもよい。ただし、加温流体流通路45が溝部によって区画される場合には、加温流体流通路45を形成しやすくなる。
【0042】
図3に示すように、第2の軸受保持部36の外周面における軸方向の中間部分には、溝部(第2溝部46)が形成されており、この第2溝部46の軸方向両側に位置する外周面部分は、第2取付部38bの内周面に接触している。したがって、第2溝部46においては、第2の軸受保持部36の外周面と第2取付部38bの内周面との間に空間が形成されている。この空間は、第2の軸受保持部36の外周面に沿って周方向に延びる空間であり、この空間には、加温流体が流通する。すなわち、ケーシング30は、圧縮前の対象ガスから第2の軸受部26への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する第2の加温流体流通路47を備えている。
【0043】
なお、第2溝部46は、第2の軸受保持部36の外周面に形成される構成に代え、第2取付部38bの内周面に形成されていてもよい。また、第2溝部46は、第2の軸受保持部36の外周面に形成されるとともに第2取付部38bの内周面に形成されていてもよい。また、第2の加温流体流通路47は、第2の軸受保持部36及び第2取付部38bの少なくとも一方の内部に形成された通路によって構成されてもよい。
【0044】
加温流体流通路45には、ケーシング30内に設けられた内部導入路49が接続されている。ケーシング30には油配管15(図1)が接続されており、内部導入路49は、この油配管15に連通するとともに油配管15からの油を加温流体として加温流体流通路45に導く。加温流体流通路45は、接続路51を通して第2の加温流体流通路47と連通している。したがって、油配管15からの油は、内部導入路49、加温流体流通路45及び接続路51を通して第2の加温流体流通路47に導入される。
【0045】
なお、油配管15からの油が加温流体流通路45を経由して第2の加温流体流通路47に導入される構成に限られるものではない。たとえば、図略の第2内部導入路がケーシング30内に設けられるとともに、この第2内部導入路も油配管15に接続されていてもよい。この場合、油配管15からの油が、加温流体流通路45を経由することなく第2の加温流体流通路47に導入される。あるいは、内部導入路49が、油配管15からの油を第2の加温流体流通路47に導入させる導入路と、第2の加温流体流通路47及び加温流体流通路45を互いに接続する接続路51と、を含む構成であってもよい。この場合の内部導入路49は、第2の加温流体流通路47を経由して加温流体流通路45に油を導く。
【0046】
加温流体流通路45は、図6に示すように、第1の軸受保持部35の外周面において、その全周に亘って形成されている。ただし、この構成に限られるものではなく、図7に示すように、加温流体流通路45は、第1の軸受部25の中心軸25Cを中心とした少なくとも180°以上の範囲に存在していればよい。この場合、加温流体流通路45は、第1の軸受部25の周方向の一部において存在していないことになる。第2の加温流体流通路47も同様である。すなわち、第2の加温流体流通路47は、第2の軸受部26の中心軸を中心とした少なくとも180°以上の範囲に存在していればよく、第2の軸受保持部36の外周面において、その全周に亘って形成されていてもよい。
【0047】
図3にも示すように、第1の軸受保持部35は、加温流体流通路45に導入された加温流体を加温流体流通路45から排出可能な排出路53を備えている。排出路53は、一端部が加温流体流通路45に接続される一方で、他端部が第1の軸受保持部35における内面に開口している。この内面は、第1スクリュロータ21aの第1軸部21b(又は第1の軸受部25)に対向している。したがって、排出路53から排出される加温流体は、第1の軸受部25に供給可能となっている。つまり、油回収器14で回収された油は、第1の軸受部25に供給される前に、対象ガスの冷熱が第1の軸受部25に伝わるのを抑制するための保温源として用いられる。
【0048】
なお、排出路53は、一端部が第2の加温流体流通路47に接続される一方で、他端部が第2の軸受保持部36における内面に開口していてもよい。つまり、加温流体は、第2の軸受部26に供給可能となっていてもよい。また、排出路53による加温流体の排出先は、加温流体流通路45よりも低圧のところであれば、どこでもよい。たとえば、圧縮室で圧縮される前の対象ガスが存在する非圧縮空間、圧縮室、ケーシング30に接続された図略の外部配管等を排出先としてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、吸込み流路42内に存在する圧縮前の対象ガスから第1の軸受部25への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路45がケーシング30に設けられている。このため、低温環境下において、対象ガスの冷熱の影響による第1の軸受部25の支持機能の低下を抑制することができる。また、対象ガスが水素ガスのボイルオフガスである場合には、安定した水素ガスの回収のために有効となる。
【0050】
また、第1の軸受保持部35において、第1取付部38aの内周面に対向する面に溝部44が形成されており、この溝部44によって加温流体流通路45が区画されているため、加温流体流通路45を作成しやすい構造となっている。
【0051】
また、加温流体流通路45が、第1の軸受部25の中心軸25Cを中心とした180°以上の範囲に存在しているため、加温流体流通路45を流通する加温流体によって第1の軸受部25を適切に加温することができる。
【0052】
また、加温流体流通路45に排出路53が繋がっているため、常に新しい加温流体を供給し続けることができる。
【0053】
油を加温流体として加温流体流通路45及び第2の加温流体流通路47に導く手法は、圧縮室に給油しないで軸受等にのみ給油するスクリュ圧縮機12に適用されてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
第1実施形態では、スクリュ圧縮機12から吐出された対象ガスから分離された油を加温流体として用いられる。これに対し、第2実施形態では、図8に示すようにスクリュ圧縮機12から吐出された対象ガス自体が加温流体として用いられる。この場合、スクリュ圧縮機12は、圧縮室に給油しない構成とされてもよい。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
第2実施形態に係る圧縮機ユニット10は、吐出管16から分岐したガス案内流路55を備えている。ガス案内流路55は、スクリュ圧縮機12により圧縮された吐出ガスの一部をスクリュ圧縮機12のケーシング30に導く。
【0056】
内部導入路49は、ガス案内流路55に接続されており、ガス案内流路55の吐出ガスを加温流体として加温流体流通路45へと導く。
【0057】
なお、吐出ガスが加温流体流通路45を経由して第2の加温流体流通路47に導入される構成に限られるものではない。たとえば、図略の第2内部導入路がケーシング30内に設けられるとともに、この第2内部導入路もガス案内流路55に接続されていてもよい。この場合、ガス案内流路55からの吐出ガスが、加温流体流通路45を経由することなく第2の加温流体流通路47に導入される。あるいは、内部導入路49が、ガス案内流路55からの吐出ガスを第2の加温流体流通路47に導入させる導入路と、第2の加温流体流通路47及び加温流体流通路45を互いに接続する接続路51と、を含む構成であってもよい。この場合の内部導入路49は、第2の加温流体流通路47を経由して加温流体流通路45に加温流体を導く。
【0058】
排出路53は、図9に示すように、一端部が加温流体流通路45に接続される一方で、他端部がケーシング30内の所定の空間に開口している。この所定の空間は、たとえば、圧縮室であってもよく、あるいはケーシング30に接続された図略の配管であってもよい。また、図10に示すように、排出路53の他端部は、ケーシング30の外部に開口していてもよい。
【0059】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第1構成部31の本体部37において、取付部38と外壁部39と結合部40とが一体的に構成されているが、これに限られない。たとえば、図11に示すように、外壁部39と結合部40とが互いの別体の部材によって構成されていてもよい。図11では、結合部40が取付部38と一体的に構成されているが、結合部40は取付部38と別体の部材によって構成されてもよい。
【0061】
図11では、第1取付部38aと第2取付部38bとが一体ものとして構成されているが、これに限られない。たとえば、図12に示すように、第1取付部38aと第2取付部38bとが互いに別体の部材によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 :圧縮機ユニット
12 :スクリュ圧縮機
14 :油回収器
15 :油配管
21 :第1のロータ部
21a :第1スクリュロータ
21b :第1軸部
21c :第1吐出側軸部
22 :第2のロータ部
22a :第2スクリュロータ
22b :第2軸部
25 :第1の軸受部
25C :中心軸
26 :第2の軸受部
30 :ケーシング
35 :第1の軸受保持部
36 :第2の軸受保持部
37 :本体部
42 :吸込み流路
44 :溝部
45 :加温流体流通路
46 :第2溝部
47 :第2の加温流体流通路
49 :内部導入路
53 :排出路
55 :ガス案内流路
【要約】
【課題】低温環境下において軸受部を適切に保護する。
【解決手段】スクリュ圧縮機12は、0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、第1スクリュロータ21aと、第1スクリュロータ21aの吸込み側端部から延びる第1軸部21bと、を有する第1のロータ部21と、第1軸部21bを回転可能に支持する第1の軸受部25と、第1のロータ部21及び第1の軸受部25を収容するケーシング30と、を備える。ケーシング30は、対象ガスの吸込み流路42が形成される本体部37と、本体部37の内側に配置されるとともに、第1の軸受部25を内側に保持する第1の軸受保持部35と、吸込み流路42内に存在する圧縮前の対象ガスから第1の軸受部25への冷熱の影響を軽減する加温流体が流通する加温流体流通路45を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12