(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】レーザ放射用の変換装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/06 20060101AFI20240312BHJP
G02B 27/09 20060101ALI20240312BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20240312BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B3/06
G02B27/09
H01S5/02253
H01S5/22 610
(21)【出願番号】P 2022500731
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058186
(87)【国際公開番号】W WO2021004661
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】102019118443.6
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520335587
【氏名又は名称】リモ ディスプレイ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イワネンコ ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】グリム ビャチェスラフ
(72)【発明者】
【氏名】カリス ヘンニング
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-096092(JP,A)
【文献】特表2009-503596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 - 1/08
3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ放射(7)用の変換装置(1)であって、
第1の方向(x)に並んで配置されたシリンドリカルレンズ(3)の第1のアレイ(2)と、
前記第1の方向(x)に並んで配置されたシリンドリカルレンズ(5)の第2のアレイ(4)を備え、
前記変換装置(1)の動作中に、変換される前記レーザ放射(7)が最初に前記第1のアレイ(2)を通過し、次に前記第2のアレイ(4)を通過し、ここでそれぞれの場合において前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)の1つは、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)の1つに関連付けられて、テレスコープのアレイを生じるように規定されており、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)のシリンダ軸(6)と前記第1の方向(x)との間の角度(γ)は、45°より大きく、90°未満であり、
前記第1のアレイ(2)が、モノリシックな基板の一方の面に形成されており、前記第2のアレイ(4)が、前記基板の他方の面に形成されて
おり、
前記テレスコープの縮小係数(Γ)は、次を適用し得て、
Γ=F
3
/F
5
=R
3
/R
5
ここで、
F
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)の焦点距離であり、
F
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)の焦点距離であり、
R
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)の曲率半径であり、そして、
R
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)の曲率半径であり、
前記第1及び/又は第2のアレイ(2、4)の前記シリンドリカルレンズ(3、5)の前記シリンダ軸(6)と前記第1の方向(x)との間の角度は角度(γ)であり、次が適用される、
γ=arctan(√(Γ))ことを特徴とする、
変換装置(1)。
【請求項2】
前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)のシリンダ軸(6)が前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)のシリンダ軸(6)に平行であることを特徴とする、
請求項1に記載の変換装置(1)。
【請求項3】
前記第1及び/又は第2のアレイ(2、4)の前記シリンドリカルレンズ(3、5)の前記シリンダ軸(6)と前記第1の方向(x)との間の角度(γ)は、46°より大きく、60°未満であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の変換装置(1)。
【請求項4】
前記第1のアレイ(2)のすべてのシリンドリカルレンズ(3)が同じ焦点距離(F
3)及び/又は同じ曲率半径(R
3)を有すること、及び/又は、前記第2のアレイ(4)のすべてのシリンドリカルレンズ(5)が同じ焦点距離(F
5)及び/又は同じ曲率半径(R
5)を有することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の変換装置(1)。
【請求項5】
前記テレスコープの縮小係数(Γ)は、1.1~3の間であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の変換装置(1)。
【請求項6】
前記第1及び/又は前記第2のアレイ(2、4)の前記シリンドリカルレンズ(3、5)は、屈折レンズ又は屈折率分布型レンズであることを特徴とする、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の変換装置(1)。
【請求項7】
レーザ放射用の変換装置であって、
第1の方向に並んで配置されたシリンドリカルミラーの第1のアレイと、
前記第1の方向に並んで配置されたシリンドリカルミラーの第2のアレイを備え、
前記変換装置の動作中に、変換される前記レーザ放射が最初に前記第1のアレイによって反射され、次に前記第2のアレイによって反射され、ここでそれぞれの場合において前記第1のアレイの前記シリンドリカルミラーの1つは、前記第2のアレイの前記シリンドリカルミラーの1つに関係付けられて、テレスコープのアレイを生じるように規定されており、前記第1のアレイの前記シリンドリカルミラーのシリンダ軸と前記第1の方向との間の角度(γ)は、45°より大きく、90°未満であり、
前記第1のアレイが、モノリシックな基板の一方の面に形成されており、前記第2のアレイが、前記基板の他方の面に形成されて
おり、
前記テレスコープの縮小係数(Γ)は、次を適用し得て、
Γ=F
3
/F
5
=R
3
/R
5
ここで、
F
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルミラーの焦点距離であり、
F
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルミラーの焦点距離であり、
R
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルミラーの曲率半径であり、そして、
R
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルミラーの曲率半径であり、
前記第1及び/又は第2のアレイの前記シリンドリカルミラーのシリンダ軸と前記第1の方向との間の角度は角度(γ)であり、次が適用される、
γ=arctan(√(Γ))ことを特徴とする、
変換装置。
【請求項8】
レーザ装置であって、
前記レーザ装置の動作中にレーザ放射(7)を放出するレーザ光源(10)と、
前記レーザ光源(10)から放射される前記レーザ放射(7)用の変換装置(1)であって、第1の方向(x)に互いに隣り合って配置されたシリンドリカルレンズ(3)又はシリンドリカルミラーの第1のアレイ(2)と、前記第1の方向(x)に互いに隣り合って配置されたシリンドリカルレンズ(5)又はシリンドリカルミラーの第2のアレイ(4)を有し、それぞれの場合において前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)又はシリンドリカルミラーが、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)又は前記シリンドリカルミラーの1つに割り当てられて、前記第1のアレイ(2)のシリンドリカルレンズ(3)を通過する、又は前記第1のアレイの前記シリンドリカルミラーによって反射される前記レーザ放射(7)の部分ビーム(7a、7b、7c、7d)が、前記第2のアレイ(4)の前記関連するシリンドリカルレンズ(5)を少なくとも実質的に通過する、又は前記第2のアレイの前記シリンドリカルミラーによって少なくとも実質的に反射され、ここで前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)又は前記シリンドリカルミラー上のこの部分ビーム(7a、7b、7c、7d)の断面は、前記第2のアレイ(4)の前記関連するシリンドリカルレンズ(5)又は前記シリンドリカルミラー上の前記部分ビーム(7a、7b、7c、7d)の断面よりも大きい、請求項1~
7のいずれか一項に記載の変換装置(1)である、変換装置(1)と、を備え、
前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)又は前記シリンドリカルミラーの前記シリンダ軸(6)と前記第1の方向(x)との間の角度(γ)は、45°より大きく、90°未満であり、
前記第1のアレイ(2)が、モノリシックな基板の一方の面に形成されており、前記第2のアレイ(4)が、前記基板の他方の面に形成されて
おり、
前記テレスコープの縮小係数(Γ)は、次を適用し得て、
Γ=F
3
/F
5
=R
3
/R
5
ここで、
F
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)の前記焦点距離であり、
F
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)の前記焦点距離であり、
R
3
は、前記第1のアレイ(2)の前記シリンドリカルレンズ(3)の前記曲率半径であり、そして、
R
5
は、前記第2のアレイ(4)の前記シリンドリカルレンズ(5)の前記曲率半径であり、
前記第1及び/又は第2のアレイ(2、4)の前記シリンドリカルレンズ(3、5)の前記シリンダ軸(6)と前記第1の方向(x)との間の角度は角度(γ)であり、次が適用される、
γ=arctan(√(Γ))ことを特徴とする、
レーザ装置。
【請求項9】
前記レーザ光源(10)は、半導体レーザとして、互いに約200μmの距離に離隔された複数のエミッタを備えたレーザダイオードバーとして設計されることを特徴とする、
請求項
8に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記レーザ装置は、前記レーザ光源(10)と前記変換装置(1)との間に配置された少なくとも1つの速軸コリメートレンズ(11)を更に備え、前記速軸コリメートレンズ(11)は前記レーザ光源(10)によって発せられた前記レーザ放射(7)を前記第1の方向(x)に垂直な第2の方向(y)にコリメートすることを特徴とする、
請求項
8又は9に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記レーザ光源(10)は、前記レーザ放射(7)の伝播方向(z)に垂直な前記第1の方向(x)に関するビーム品質係数(M
x
2)が1より大きく、かつ前記伝播方向(z)に垂直であ
る第2の方向(y)に関するビーム品質係数(M
y
2)が1より大きい、マルチモードレーザ放射を放出し得て、前記変換装置(1)の前記アレイ(2、4)は、前記変換装置(1)に衝突する前記レーザ放射(7)が変換されて、前記レーザ放射(7)の前記ビーム品質係数(M
x
2)が前記第1の方向(x)に対して増加され、前記レーザ放射(7)の前記ビーム品質係数(M
y
2)が前記第
2の方向に対して減少されるように、前記レーザ装置内に設計され配置されていることを特徴とする、
請求項
8又は
9に記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記レーザ光源(10)は、Nd-YAGレーザ又はエキシマレーザ又は紫外線ダイオード励起固体(DPSS)レーザとして設計されることを特徴とする、
請求項
8、
10又は1
1のうちの一項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1、又は請求項10の前文に記載のレーザ放射用の変換装置と、請求項11の前文に記載のレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの製造のために、紫外線(UV)ダイオード励起固体(DPSS)レーザは、信頼性が高くメンテナンスの少ないレーザ源として最近確立されている。この点で、レーザリフトオフ(LLO)、例えば柔軟なOLEDディスプレイ、及びアニーリング(つまり、アモルファスシリコン層の結晶化)アプリケーション、例えばLTPS(低温ポリシリコン)薄膜トランジスタの製造が、これらのタイプのソースで対応され得る。これらのレーザは、別のソース、例えばエキシマレーザに比べてパルスエネルギーが低く、処理エリアに密に集束されたビームスポットを作成する必要が生じる。更に、被加工材の均一な照明のための均質な強度分布は、一貫した製品品質を達成するために必須である。
【0003】
特許文献1では、レーザ放射用のレーザ光源及び変換装置を備えたレーザ装置が開示されている。レーザ光源は、周波数2倍化Nd-YAGレーザとして、又はエキシマレーザとして形成され得る。レーザ光源から発せられるレーザ放射は、例えば、円形断面を有し、x方向及びy方向の両方でビーム品質係数Mx
2=My
2=4を有する。変換装置は、シリンドリカルレンズの2つのアレイからなり、これは一緒にテレスコープのアレイを形成する。シリンドリカルレンズのシリンダ軸は、シリンドリカルレンズが並んで配設される方向に対して45°の角度で傾斜される。この設計により、テレスコープを通過する部分ビームの断面がシリンドリカルレンズの軸に対して鏡像化されることを確実にする。このような設計によって達成され得ることは、一方向に関するビーム品質係数が大幅に減少され、1より大きくならないことであり、別の方向に関するビーム品質係数は、ビーム変換前の状態と比較して増加される。したがって、線に垂直な方向に関して約1のビーム品質係数の場合、長い焦点深度を有する非常に薄い線形プロファイルを得ることができる。この場合、線の長手方向の範囲に関するビーム品質係数が、同時に大幅に増加するという事実は、不利であるとは証明されず、それは線の長手方向に集束が望まれないか、又は高度な集束が望まれないためである。逆に、線の長手方向におけるビーム品質係数の増加の結果として、一般に、空間コヒーレンスと、それと共にこの方向の光干渉も大幅に減少される。
【0004】
このビーム変換方法は、レーザ放射を複数の部分ビームに分割することに基づく。分割プロセス中に、シャープな強度エッジが作成され、これは、ほとんどの場合、シリンドリカルレンズの間の中間ゾーンの照明を伴う。これらのゾーンでの光の傾斜は、望ましくないエネルギー損失につながり、これは、これらのエリアにおける表面とコーティングの品質と形状が技術的に制限されることが多く、十分に制御されていないためである。更に、ビーム変換装置は通常、十分にコリメートされた入射ビーム用のテレスコピックシステムとして設計される。しかし、これはほとんどの場合、一方向に対してのみ遂行される。別の方向に対して、入射ビームは顕著な発散を有する場合があり、これは、第2のアレイのレンズの過剰照明につながり、したがって、光の損失につながる場合がある。
【0005】
冒頭に記載したタイプの変換装置及びレーザ装置は、特許文献2から知られている。そこで記載されたレーザ装置は、レーザダイオードバーを含み、そのレーザ放射は光ファイバに結合される。レーザ装置は、変換装置を更に含み、それはシリンドリカルレンズの4つのアレイから構成される2つのモノリシックレンズテレスコープを含む。第1の2つのアレイは、レンズが第1の方向に対して45°に向けられ、縮小ケプラー式望遠鏡アレイを形成する。第3及び第4のアレイは、レンズが第1の方向に対して-45°に向けられ、縮小ガリレオ式望遠鏡アレイを形成する。これらの2つの交差したテレスコープは、シリンドリカルレンズの軸に対する入射ビームの断面を鏡像化し、同時に出口で断面を縮小する。サイズの縮小は、レーザダイオードバーの個々のエミッタによって発せられるレーザビームが重なるのを防ぐことが意図され、バー放射の集束を改善すると言われている。
【0006】
しかし、第1のケプラー式望遠鏡の後方のビームサイズは、一方向にのみ縮小される。垂直方向については、それらは更に拡張され、第2のガリレオ式望遠鏡アレイのシリンドリカルレンズを部分的に過剰照明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7782535号
【文献】欧州特許出願公開第1528425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある課題は、損失が低減される、上記のタイプの変換装置及びレーザ装置の作成である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、これは、請求項1又は請求項10の特徴を有する前述のタイプの変換装置と、請求項11の特徴を有する前述のタイプのレーザ装置とによって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関する。
【0010】
請求項1によると、第1のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸は、第1の方向と45°より大きく、90°未満の角度を囲むことが意図される。このように、レーザ放射が第2のアレイのシリンドリカルレンズと第2のアレイの隣接するレンズとの間の空間に当たるのを少なくとも部分的に防止することが可能である。
【0011】
第2のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸は、第1のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸と平行であると規定され得る。特に、第1及び/又は第2のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸は、第1の方向と46°より大きく、60°未満の角度を囲み得る。この角度範囲は、損失を回避するのに有利であることがわかる。
【0012】
第1のアレイのすべてのシリンドリカルレンズが同じ焦点距離及び/又は同じ曲率半径を有すること、及び/又は、第2のアレイのすべてのシリンドリカルレンズが同じ焦点距離及び/又は同じ曲率半径を有することが可能である。特に、第2のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離及び半径は、第1のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離及び半径とは異なる。
【0013】
テレスコープの縮小係数は1より大きく、特に1.1~3の間であると規定され得る。この範囲の縮小は、損失を回避するためにも有利であることが証明されている。
【0014】
特に、テレスコープの縮小係数Γは、次を適用し得る。
Γ=F3/F5=R3/R5
ここで、
F3は第1のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離であり、
F5は第2のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離であり、
R3は第1のアレイのシリンドリカルレンズの曲率半径であり、そして、
R5は第2のアレイのシリンドリカルレンズの曲率半径である。
【0015】
縮小を達成するために、第1のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離は、第2のアレイのシリンドリカルレンズの焦点距離よりも長くなるように選択される。
【0016】
第1及び/又は第2のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸は、以下が適用される第1の方向(x)と角度を囲むこともまた規定され得る。
γ=arctan(√(Γ))
【0017】
そのような設計は、対応して大きな縮小係数を備え、レーザ放射が第2のアレイのシリンドリカルレンズと隣接するレンズとの間の空間に、入口で完全にコリメートされていない光であっても当たらないことを確実にする。そのような損失低減変換は、同時に、レンズ頂点の軸に関してアレイレンズ対を通過するすべての部分ビームの断面のミラーリングを提供し得る。
【0018】
シリンドリカルレンズの第1及び第2のアレイが、1つの、特にモノリシックな基板の上に形成される可能性がある。これにより、変換装置のコンパクトで堅牢な設計が実現する。更に、シリンドリカルレンズのアレイ間の距離の調整は必要でない。
【0019】
代替的に、アレイはまた、異なる基板の上に形成され得る。個々のシリンドリカルレンズからアレイを組み立てることも可能である。そのような設計は、例えば、製造又は熱安定性に関して利点を提示し得る。
【0020】
第1及び/又は第2のアレイのシリンドリカルレンズは、屈折レンズ又は屈折率分布型レンズであることが規定され得る。代替的に、回折設計も考え得る。
【0021】
請求項10によると、第1のアレイのシリンドリカルミラーのシリンダ軸は、第1の方向と45°より大きく、90°未満の角度を囲むことが意図される。この代替設計では、2つのアレイは、シリンドリカルミラー、特に凹面シリンドリカルミラーをシリンドリカルレンズの代わりに含む。シリンドリカルミラーを用いたこの設計では、従属請求項2~9の特性が同様に実現され得る。
【0022】
請求項11によると、第1のアレイのシリンドリカルレンズのシリンダ軸は、第1の方向と45°より大きく、90°未満の角度を囲むことが意図される。特に、変換装置は、本発明による変換装置であり得る。
【0023】
レーザ光源は、半導体レーザとして、特にレーザダイオードバーとして、例えば、互いに約200μmの距離で離隔された複数のエミッタを備えるレーザダイオードバーとして設計される可能性がある。レーザ装置は、少なくとも1つの速軸コリメートレンズをレーザ光源と変換装置との間に配置して含むことが規定され得て、特に、ここで速軸コリメートレンズは、レーザ光源によって発せられたレーザ放射を、第1の方向に垂直な第2の方向にコリメートする。このようなレーザダイオードバーの場合、複数のエミッタの放射光場は対称化され得て、その集束性は、最小の光損失を備えた変換装置によって改善される。
【0024】
代替的に、レーザ光源は、レーザ放射の伝播方向に垂直な第1の方向に関するビーム品質係数が1より大きい、特に2より大きく、かつ第1の方向に垂直であり伝播方向に垂直である第2の方向に関するビーム品質係数が1より大きい、特に2より大きい、マルチモードレーザ放射を放出し得て、変換装置のアレイは、変換装置に衝突するレーザ放射が変換されて、レーザ放射のビーム品質係数が第1の方向に対して増加され、かつレーザ放射のビーム品質係数が第2の方向に対して減少されるように、レーザ装置内で設計され配置されている可能性がある。特に、レーザ光源は、Nd-YAGレーザ又はエキシマレーザ又はダイオード励起固体(DPSS)レーザ、例えば、紫外線DPSSレーザであり得る。また、このようなレーザ光源を用いて、ビーム成形損失は、変換装置によって減少され得る。
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図を参照して好ましい例示的な実施形態の以下の説明に基づいて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による変換装置の一実施形態の斜視図を示す。
【
図2】本発明によるレーザ装置の一実施形態の概略側面図を示す。
【
図4】概略的に示されたレーザ放射を備えた、本発明による変換装置の一実施形態の詳細の概略正面図を示す。
【
図6】概略的に示されたレーザ放射を備えた、本発明による変換装置の一実施形態の詳細の概略正面図を示す。
【
図7】概略的に示されたレーザ放射を備えた、本発明による変換装置の一実施形態の第1のアレイの詳細の正面図を示す。
【
図8】概略的に示されたレーザ放射を備えた、
図6による変換装置の第2のアレイの詳細の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、同一又は機能的に同一の部分には、同一の参照番号が付けられる。更に、デカルト座標系は、いくつかの図においてより良い方向付けのために挿入される。
【0027】
図1に示す本発明による変換装置1の実施形態は、第1の方向xに並んで配置されたシリンドリカルレンズ3の第1のアレイ2と、同じく第1の方向xに並んで配置されたシリンドリカルレンズ5の第2のアレイ4とを含む。アレイ2、4は、基板の表側と裏側に配置され、その結果、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3は第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5の反対側になる。ここで、シリンドリカルレンズ3、5は、基板の上にモノリシックに形成される。
【0028】
第1及び第2のアレイ2、4のシリンドリカルレンズ3、5はそれぞれ、それらのシリンダ軸6が、x方向と角度γを形成するように配向され(
図1を参照)、角度γは45°よりも大きく、特に46°~60°の間である。更に、第1のアレイ2のすべてのシリンドリカルレンズ4の焦点距離及び曲率半径は同じである。更に、第2のアレイ3のすべてのシリンドリカルレンズ5の焦点距離及び曲率半径も同じである。
【0029】
変換装置1の動作中に、変換されるレーザ放射は、最初に第1のアレイ2を通過し、次に第2のアレイ4を通過し、それによって、レーザ放射は、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3によって複数の部分ビームに分割されることが意図される。第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3を通過する部分ビームは、第2のアレイ4の反対側のシリンドリカルレンズ5を通過する。
【0030】
個々の部分ビームは、x方向に対して傾斜したシリンドリカルレンズ3、5によって変換され、変換装置1を通過した後にそれらの断面がシリンドリカルレンズ3、5の対応する頂点線8に対して、
図6に概略的に示されるよう鏡像化されて出現し、ここで入力ビームABCDは出力ビームA’B’C’D’に変換される。
【0031】
レーザ放射が、マルチモードレーザ放射であり、かつそのビーム品質係数Mx
2、My
2が第1の方向xと第2の方向yの両方に関して2より大きい場合、レーザ放射のビーム品質係数Mx
2が第1の方向xに対して増加され、レーザ放射のビーム品質係数My
2が第2の方向yに対して減少されるという変換によって達成され得る。そのようなレーザ放射のための典型的なレーザ光源は、例えば、Nd-YAGレーザ又はエキシマレーザ又は紫外線ダイオード励起固体(DPSS)レーザである。
【0032】
第1及び第2のアレイ2、4の対向するシリンドリカルレンズ3、5はそれぞれテレスコープ、特にケプラー式望遠鏡を形成する。テレスコープを形成する対向するシリンドリカルレンズ3、5の間の距離は、これらのレンズの焦点距離の合計に等しい。
【0033】
ここで、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3の焦点距離は、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5の焦点距離よりも長く、対向するシリンドリカルレンズ3、5によって形成されるテレスコープを縮小テレスコープにする。テレスコープの縮小係数Γは1より大きく、特に1.1~3の間である。
【0034】
図7は、シリンドリカルレンズ3の第1のアレイ2へのレーザ放射7の衝突を概略的に示し、ここでは、簡単にするために、4つのシリンドリカルレンズ3のみが示される。レーザ放射7は、細長い楕円形断面を有する。pを用いて、隣接するシリンドリカルレンズ3の頂点線8の距離がマークされる。レーザビーム7は、第1のアレイ2によって、複数の部分ビーム7a、7b、7c、7dに分割される。
【0035】
図8は、これらの部分ビーム7a、7b、7c、7dの、シリンドリカルレンズ5の第2のアレイ4への衝突を示す。部分ビーム7a、7b、7c、7dは、頂点線8に関して鏡像化され、縮小係数Γに応じてサイズが縮小されていることがわかる。この縮小は、部分ビーム7a、7b、7c、7dが、第2のアレイ4の個々のシリンドリカルレンズ5と隣接するレンズとの間の移行エリアに衝突しないという事実に寄与する。
【0036】
図4及び
図5は、レーザ放射の個々のビームが変換装置1によってどのように変換されるかを示す。テレスコープの1つは、概略的にのみ示される。シリンドリカルレンズ3、5は、明確にするために別個のレンズとして描かれる。しかし、
図1に示すように、モノリシック基板の入口面と出口面によって形成され得る。
【0037】
図5から、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3の焦点距離F
3は、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5の焦点距離F
5よりも長く、したがって、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3に光軸9から距離Hで入り、その後、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5を通過するビームは、光軸9から、より短い距離H’を有することがわかる。同じことが、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3に光軸9からより短い距離hで入るビームにも言える。
図5は、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5を通過した後、このビームが光軸9に対して更に短い距離h’を有することを示す。
図4は、これらの状態を正面図で示す。
【0038】
したがって、以下が適用される。
Γ=H/H’=h/h’=R3/R5=F3/F5[方程式1]
ここで、R3は、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3の半径であり、R5は、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5の半径である。シリンドリカルレンズ3、5の半径R3、R5は、異方性ビーム成形用の変換装置を使用してレーザ線を生成する場合、数ミリメートルになり得る。
【0039】
図4を使用して、角度γとテレスコープの縮小係数Γの関係が導出され得る。tan(γ)=√Γは、Γ>0の場合であることがわかる。これから、角度γについて次のようになる。
γ=arctan(√(Γ))[方程式2]
【0040】
方程式1と2を同時に満たすと、生じる部分ビーム断面のミラーリングがシリンドリカルレンズ3、5の頂点線8に関して提供される。
【0041】
図4から、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3上のxのx方向に延長を有するビームは、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5上のy’のy方向に延長を有することが更に導き出され得る(
図4を参照)。y’の場合、次のように適用される。
【数1】
【0042】
したがって、
図4から、第1のアレイ2のシリンドリカルレンズ3上のyのy方向に延長を有するビームは、第2のアレイ4のシリンドリカルレンズ5上のx’のx方向に延長を有することが更に導き出され得る(
図4を参照)。x’の場合、次のように適用される。
【数2】
【0043】
方程式から、変換装置の出力でのセグメントの高さと幅は、Γ>1の場合、tan(γ)倍減少することがわかる。
【0044】
これらの考察から、入射強度分布について変換装置の動作原理は、アフィン写像のコンテキストで説明されることもでき、次のプロパティを保持する。
1.共線性
2.平行度
3.凸集合
4.線に沿った長さの比率
5.重み付けされた点集合の重心
【0045】
変換装置のアフィン写像(affine map)は、画像空間ではF
ω(Γ)∈R
2、角度空間ではF
Θ(Γ)∈R
2で表され、次のようになる。
F
ω(Γ)=R(Γ)
T・S(Γ)・R(Γ)
F
Θ(Γ)=R(Γ)
T・S
-1(Γ)・R(Γ)[方程式5]
ここで、
【数3】
【0046】
ここで、S(Γ)∈R2は、y軸に関するスケーリング操作を表す。頂点線8に関するミラーリングとスケーリングには、基底の変換が必要であり、これは、よく知られている2D回転行列R(Γ)によって与えられる。更に、角度空間と画像空間のスケーリングは反転した動作を示すため、S(Γ)を反転する必要がある。
【0047】
簡単な計算の後、これは次のように変換される。
【数4】
【0048】
したがって、方程式(3)と(4)は、座標ベクトルに沿った入力ベクトルの特殊なケースであり、次によって得られる。
【数5】
【0049】
図2と
図3には、レーザダイオードバーをレーザ光源10として含むレーザ装置が示される。
図3による上面図では、このレーザダイオードバーの3つのエミッタのみが示される。例えば、レーザダイオードバーは、22個のエミッタと980nmの波長を有する高出力バーであり得る。個々のエミッタは、遅軸方向にそれぞれ130μmのサイズにすることができ、これは、示された例のx方向に対応する。個々のエミッタは、速軸方向にそれぞれ1.6μmのサイズにすることができ、これは、示された例のy方向に対応する。個々のエミッタは、遅軸方向又はx方向に200μmのピッチを有し得る。遅軸方向又はx方向の開口数は±4.25°であり得る。速軸方向又はy方向の開口数は±24.5°であり得る。
【0050】
レーザ装置は、速軸コリメートレンズ11をレーザ光源10と変換装置1との間に更に含む。速軸コリメートレンズ11は、個々のエミッタによって発せられたレーザ放射7をy方向又は速軸方向にコリメートする。例えば、速軸コリメートレンズ11は、0.16mmの焦点距離を有し得る。
【0051】
そのようなレーザダイオードバーと共に使用するために、変換装置1のシリンドリカルレンズ3、5の半径は、約0.2~1.5mmであり得る。
【0052】
変換装置1の説明された設計により、レーザ光源10としてレーザダイオードバーを使用する場合でさえ、レーザ放射を第2のアレイ4の隣接するシリンドリカルレンズ5の領域に衝突させないことによって損失を減らし得る。