(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】核酸-リン酸カルシウムナノ粒子複合体及び生物鉱化におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20240312BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240312BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20240312BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/87 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/36 100
A61L27/12
C07K14/78
C12N15/87 Z
(21)【出願番号】P 2022505251
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2020108009
(87)【国際公開番号】W WO2021196490
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】202010246314.5
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520087527
【氏名又は名称】中国人民解放軍第四軍医大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】牛 ▲麗▼娜
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 吉▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】焦 ▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 敏娟
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 雨▲軒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ ▲艦▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】万 千千
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ジン▼
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519052(JP,A)
【文献】特開2019-043798(JP,A)
【文献】特開2005-237632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103536965(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110628767(CN,A)
【文献】長澤寛道,バイオミネラリゼーションの科学,化学と生物,2004年,Vol. 42,pp. 340-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロキシアパタイト-コラーゲンの有機無機複合材料を調製するためのコラーゲン線維製品の鉱化のための鉱化剤の使用であって、
前記鉱化剤は、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子の静電吸着により形成された複合体を含み、
前記複合体において、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子は以下の順番:
核酸のリン酸基とナノ粒子のカルシウムイオンとの間の静電吸着、及び
遊離のリン酸イオンと核酸に吸着したカルシウムイオンのさらなる静電吸着、
で形成され、
前記鉱化剤において、カルシウムイオンの濃度は、2~5mMであり、リン酸イオンの濃度は、1~5mMであり、カルシウムイオンとリン酸イオンの濃度の比は、2:1~1:1であり、
前記核酸は、哺乳動物細胞の全DNA又は全RNAから単離され、
DNAの出発濃度は、70~250ug/mlであり、又は、RNAの出発濃度は、150~250ug/mlであり、
前記複合体の粒径は、40~100nmである、使用。
【請求項2】
前記鉱化剤が、核酸溶液、塩化カルシウム溶液及びリン酸水素二カリウム溶液を混合して形成される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
鉱化剤中のカルシウムイオンの濃度は、1.67~3.5mMであり、リン酸イオンの濃度は、1.0~2.1mMである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
鉱化剤中のカルシウムイオンとリン酸イオンの濃度の比は、1.67:1である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記複合体の粒径が、40~60nm又は60~100nmである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞は、骨細胞前駆細胞、前骨芽細胞、骨細胞、骨形成細胞、破骨細胞又は骨髄間葉系幹細胞である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
前記哺乳動物細胞は、破骨細胞である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項8】
前記哺乳動物細胞は、骨細胞である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
鉱化剤のpH値は、5.5~6.9である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項10】
鉱化剤のpH値は、6.0~6.5である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
鉱化剤が、液体形態、半固体形態、又は固体形態である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項12】
鉱化剤が、溶液、コロイド液、ゲル、又は粉末である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
鉱化剤が、凍結乾燥粉末である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
コラーゲン線維製品が骨修復材料から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項15】
コラーゲン線維製品がコラーゲン足場から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項16】
コラーゲン線維製品がコラーゲン膜及びコラーゲン線維シートから選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項17】
ハイドロキシアパタイト-コラーゲンの有機無機複合材料が、患者における骨関連疾患又は障害を治療し、又は骨の状態を改善するための医薬又は医療機器の製造に用いられる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項18】
鉱化剤が以下の方法:
(1)、好ましくは哺乳動物細胞から全DNA(各種のDNAを含む)又は全RNA(各種のRNAを含む)を抽
出して、核酸を得るステップと、
(2)、ステップ(1)で得られた核酸を塩化カルシウム溶液と混合するステップと、
(3)、ステップ(2)で得られた混合物にリン酸水素二カリウム溶液を添加することにより、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体を得るステップとを含む、ことを特徴とする方法により製造される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項19】
ステップ(1)で取得された核酸の出発濃度は、1500~2500ng/μlであり,核酸分子量が40kDaよりも大きい、請求項18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨組織工学の分野及び生体材料の分野に関し、具体的には、鉱化コラーゲン複合材料の製造及び使用を含む核酸-リン酸カルシウムナノ粒子複合体の生体模倣型鉱化における使用、及び核酸-リン酸カルシウム複合材料によって介在される遺伝子の高効率トランスフェクション及び伝達に関する。
【背景技術】
【0002】
人体骨組織は、重要な器官として、身体を機械的に支持し保護するだけでなく、体内のミネラル及び酸塩基平衡を維持することができる。しかしながら、腫瘍、創傷、炎症、外科的創面切除などが頻繁に発生するため、患者の骨損失及び骨欠損を引き起こし、さらに、生活の質を劇的に低下させる。したがって、骨組織欠損の修復は、目前に迫っている。現在、従来の自家骨、移植骨、異種骨などの移植技術には、依然として、例えば、二次的な傷害、免疫拒絶などの多くの無視できない問題及び欠陥が存在する。そのため、優れた生物学的及び力学的性能を有し、構造的に天然骨組織のミクロ及びマクロ構造を再現する生体模倣型鉱化人工骨修復材料を求めることは、骨欠損の臨床治療、骨修復の促進に重要な役割を果たすことができる。
【0003】
天然骨組織の階層的構造に基づいて、I型コラーゲン線維、水及びアパタイトは、骨組織の最も初期の3つの主要成分であると分析する。しかしながら、アパタイト結晶が堆積したI型コラーゲン線維は、骨の第2段の階層構造である。したがって、鉱化されたコラーゲン線維をインビトロで再現及び製造すれば、構造的及び性能に天然骨組織を高度に模倣することができ、高度に模倣された骨欠損修復材料である。
【0004】
I型コラーゲンのインビトロ生体模倣型鉱化は、生物鉱化研究分野の重点の1つである。天然の象牙質基質タンパク質、象牙質シアロリンタンパク質などの非コラーゲン性タンパク質は、より多くの負電荷を有する。したがって、酸性アミノ酸の特性を有し、水相中でヒドロキシアパタイトの核形成を防ぎ、即ち、核形成阻害剤として作用することができ、したがって、水溶液中で非晶質リン酸カルシウム(ACP)ナノ粒子を安定化することができる。その後に、ACPは、コラーゲン線維の孔領域にさらに浸透し、又は、コラーゲン線維の表面に堆積して、コラーゲン線維のの内外部の鉱化を実現する。しかしながら、天然の生体高分子タンパク質を取得しにくく、インビトロでの合成が複雑であり、価格が高いなどという欠陥は、その使用を制限する。したがって、非コラーゲン性タンパク質類似体、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸などのポリアニオン性のポリマーは、生体模倣型鉱化分野において多くの注目を集めている。しかしながら、これらの高分子電解質は、非常に強いアニオン性又はカチオン性を有するため、その残留物は、細胞リン脂質の加水分解、細胞小器官の損傷、さらに、細胞死を引き起こしやすい。そのため、インビボの応用において、生体適合性の問題を考慮する必要がある。そのため、良好な生体適合性を有し、便利に取得可能で、骨組織における骨形成促進タンパク質の高効率発現を促進する非コラーゲン性タンパク質類似体を選択し、且つインビトロにおけるコラーゲン線維の迅速な生体模倣型鉱化に適用することができ、それにより骨組織欠損修復材料を製造し、極めて大きな応用の将来性及び発展可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオテクノロジーの発展に伴い、RNA、DNAなどの遺伝情報を有する生体高分子は、沈殿法によって調製されたリン酸カルシウム粒子に付着することができる。しかしながら、該リン酸カルシウム複合体は、非晶質状態を呈するものではなく、生体模倣型鉱化の分野に適用することもできない。しかしながら、RNA及びDNAは、アニオン特性を有し、鉱物との間に天然の静電吸着力が存在し、且つ取得しやすい。製造方法を変えれば、コラーゲン線維の生体模倣型鉱化に応用し、新型骨材の開発に全く新しい考え方を提供することができる。
【0006】
従来技術の欠点又は不足に対して、本発明の目的は、核酸-ACPナノ粒子複合体を形成するために、核酸を利用してカルシウム及びリンを安定化させる、インビトロでの生体模倣型鉱化の概念をインビボでの骨再生誘導の探索に適用することを含む。本発明者らは、初めて、核酸-ACPナノ粒子でコラーゲンをを誘導して線維の内外部の鉱化を発生させると共に、RNA及びDNAの存在で、コラーゲン線維が迅速に鉱化される製造方法を提供する。したがって、ハイドロキシアパタイト-コラーゲンの有機無機複合材料を形成し、骨欠損を修復するための骨材料として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の採用する技術的解決手段は、以下を含む。
【0008】
本発明の第1の目的によれば、本発明は、それぞれRNA或DNAを利用してカルシウムリンを安定化し、それぞれ、RNA-ACP又はDNA-ACPナノ粒子複合体を形成する。主に、以下のステップを含む。
【0009】
(1)RNA-ACPナノ粒子を合成する。
【0010】
まず、マウスBMSCに対して、細胞初期接種密度が5*10^4個/cm2であり、骨形成誘導及び分化を7-28日間行い、Trizol法で細胞内の全RNAを抽出し、得られたRNAの出発濃度をマイクロプレートリーダーで検出し、濃度が約1500~2500ng/μlである。その後、鉱化溶液を調製し、高濃度及び低濃度の等体積の塩化カルシウム二水和物溶液及びリン酸水素二カリウム溶液をそれぞれ調製する。RNA中のリン酸基は、負に帯電しているため、静電吸引力により正に帯電しているカルシウムイオンと吸着することができる。そのため、RNAがまずカルシウムイオンと混合することは、混合物の安定性、及び混合物の吸着効率の向上に有利である。次に、リン酸イオンをさらに添加することは、RNAに吸着されたカルシウムイオンとの結合に有利であり、それにより、安定な非晶質リン酸カルシウム複合体を形成する。そのため、100μlのRNAと、450μlの高濃度、低濃度の塩化カルシウム二水和物溶液とを均一に混合した後、450μlの高濃度、低濃度のリン酸水素二カリウム溶液を、RNA-塩化カルシウム二水和物の混合液にゆっくりと滴下する。最終的に、2群の安定で且つ透明な高低濃度のRNA-ACPナノ粒子鉱化溶液を合成する。
【0011】
(2)DNA-ACPナノ粒子を合成する。
【0012】
DNA-ACPナノ粒子の合成ステップは、RNA-ACPナノ粒子の合成ステップと同じである。具体的には、Trizol法及びキット法で得られたDNAを抽出し、その濃度が700ng/μlよりも大きくしてもよい。その後に、鉱化溶液を調製し、150μlのDNAと、425μlの高濃度、低濃度の塩化カルシウム二水和物溶液とを均一に混合した後、425μlの高濃度、低濃度のリン酸水素二カリウム溶液を、DNA-塩化カルシウム二水和物の混合液にゆっくりと滴下する。2群の安定で透明な高濃度、低濃度のDNA-ACPナノ粒子鉱化溶液を合成する。
【0013】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)で、選択された細胞は、マウスBMSC又はMC3T3であってもよいが、他のタイプの細胞を排除しない。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)で、細胞の初期接種密度は、5*10^4から1*10^5個/cm2であり、初期培地は、α-MEM、10%のFBS、及び1%の二重抗体を用いて、プレーティング後に2日間培養し、BMSC細胞の状態が良好な場合に、骨形成誘導培地を交換し、2日毎に溶液を交換する。細胞の状態が良好で量が十分なである場合にのみ、抽出されたRNAの出発濃度は、1500ng/μlよりも高い。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)で、使用される骨形成誘導培地において、配合物として、α-MEM、10%のFBS、1%の二重抗体、0.1umol/lのデキサメタゾン、50mg/lのアスコルビン酸、10mmol/lのβ-グリセロ燐酸塩二ナトリウムを使用する。
【0016】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)で、骨形成誘導及び分化の日数は、7日-14日である。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)で、塩化カルシウム二水和物粉末の分子量は、147である。単一の高濃度塩化カルシウム二水和物溶液の濃度は、7mMであり、単一の低濃度塩化カルシウム二水和物溶液の濃度は、3.5mMである。リン酸水素二カリウム粉末の分子量は、174である。単一の高濃度リン酸水素二カリウム溶液の濃度は、4.2mMであり、単一の低濃度リン酸水素二カリウム溶液の濃度は、2.1mMである。
【0018】
好ましくは、ステップ(1)で、取得された核酸の出発濃度は、100~5000ng/μlであり、好ましい出発濃度は、500~5000ng/μlであり、より好ましい出発濃度は、1000~3000ng/μlであり、例えば、1500~2500ng/μlである。最終的に、RNA-ACP鉱化溶液では、RNAの作用濃度は、150ug/mlよりも大きくしてもよい。
【0019】
好ましくは、ステップ(2)では、得られた核酸の出発濃度は、100~5000ng/μlであり、好ましい出発濃度は、500~5000ng/μlであり、より好ましい出発濃度は、700~3000ng/μlであり、より好ましい出発濃度は、700~1500ng/μlであり、例えば、1000ng/μlである。最終的に、DNA-ACP鉱化溶液では、DNAの作用濃度は、150ug/mlよりも大きくしてもよい。
【0020】
好ましくは、ステップ(1)で、最終的な2群の高低濃度のRNA-ACP鉱化溶液は、pH値が約6.0~6.5であり、比較的に良好な安定性を有し、透明であり、沈殿がなく、4℃で3日間保存することができ、RNAが分解されない。
【0021】
好ましくは、ステップ(2)で、最終的な2群の高低濃度のDNA-ACP鉱化溶液は、pH値が約6.0~6.5であり、比較的に良好な安定性を有し、透明であり、沈殿がなく、4℃で長期間保存することができ、DNAが分解されない。
【0022】
好ましくは、ステップ(1)で、RNA-ACPナノ粒子は、平均粒径の範囲が40~60nmであり、非晶質状態の結晶形態で回折される。
【0023】
好ましくは、ステップ(2)で、DNA-ACPナノ粒子は、平均粒径の範囲が60~100nmであり、結晶が非晶質状態である。
【0024】
好ましくは、ステップ(1)及び(2)における高濃度のカルシウムリン鉱化溶液の最終濃度は、3.5:2.1mMであり、低濃度のカルシウムリン鉱化溶液の最終濃度は、1.67:1mMである。
【0025】
本発明の第2の目的によれば、本発明は、RNA-ACPナノ粒子及びDNA-ACPナノ粒子をそれぞれ利用してコラーゲン線維の内外部の鉱化を誘導する。主に、以下のステップを含む。
【0026】
(1)自己組織化コラーゲン線維を調製する。
【0027】
ラット尾腱に由来するコラーゲン/酢酸溶液(5mg/ml)に対して、正逆透析法で、37℃の環境でコラーゲン自己組織化を完了し、炭素担持支持膜の金属網に置く。架橋技術により、自己組織化コラーゲン線維の調製を完了する。
【0028】
(2)鉱化溶液-コラーゲンの鉱化方法
【0029】
前記核酸-ACPナノ粒子鉱化溶液を、EPチューブキャップ内に約450μl滴下し、均一な球形を形成する。その後、コラーゲン線維を担持したニッケル/金網の前面を鉱化溶液に接触させ、5日間鉱化する。
【0030】
好ましくは、ステップ(1)で、炭素担持支持膜の網に滴下し、該網は、ニッケル網及び金網であってもよい。銅網は、液滴の乾燥揮発過程において、不安定であり、実験結果に影響を与える可能性がある。
【0031】
好ましくは、ステップ(1)で、コラーゲンタンパク質溶液は、菌を生じやすいため、調製過程で、防菌に厳密に注意する。
【0032】
好ましくは、ステップ(1)で、選択された材料は、ラットのI型マウス尾腱由来のコラーゲン/酢酸溶液、自己組織化を完了したマウス尾腱、自己組織化を完了した3Dコラーゲン足場、コラーゲン膜、脱灰骨組織、脱灰象牙質シートなどであってもよい。
【0033】
好ましくは、ステップ(2)で、コラーゲン線維は、ニッケル/金網の正面に置く必要があり、鉱化過程で、コラーゲンが鉱化溶液に均一に接触する。
【0034】
本発明の第3の目的によれば、本発明の製造方法で得られるコラーゲン線維鉱化材料は、硬組織欠損修復材料とすることができ、且つそれを骨組織工学に応用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、他の非コラーゲン性タンパク質/非コラーゲン性タンパク質類似体の安定したリン酸カルシウムナノ粒子がコラーゲン線維のインビトロ生体模倣型鉱化を誘導することに比べ、以下の利点を有する。
【0036】
第一に、インビトロ生体模倣型鉱化の分野において、非コラーゲン性タンパク質/非コラーゲン性タンパク質類似体は、いずれもACPを安定化させ、且つACPをコラーゲン線維の内部に入るように誘導し、コラーゲン線維の内部の鉱化を完了する。しかしながら、非コラーゲン性タンパク質は、一般的に、組織又は細胞から直接抽出されにくく、且つインビトロ合成過程で操作が極めて煩雑であり、高価であり、後続の研究に不利である。したがって、ポリアニオン化合物又はポリカチオン化合物などの多くの非コラーゲン性タンパク質類似体が注目され、コラーゲンの生体模倣型線維の内部の鉱化を研究するために使用されている。しかしながら、コラーゲン線維骨格修復材料は、一定の機械的強度及び硬度を有することに加えて、良好な生体適合性、非毒性、及び低い免疫原性を有する必要がある。しかしながら、非コラーゲン性タンパク質類似体、例えば、ポリカチオンは、リン脂質膜の穿孔を引き起こし、細胞小器官の損傷を引き起こし、最後に細胞の死を引き起こし、より大きな毒性を有する。同時に、ポリアニオン中に遊離した大量の高濃度のカルボキシル基も、細胞に傷害を与えることができるため、その使用が制限される。例えば、RNA、DNAのような遺伝情報を有する生体高分子は、細胞自体に由来し、免疫原性が低く、毒性が低く、生体適合性に優れるなどという特徴を有するだけでなく、細胞トランスフェクションに広く応用され、且つ天然のタンパク質に比べて取得しやすく、アニオン特性を有し、カルシウムイオンとの間に天然の静電吸引力を生じることができる。そのため、それは、リン酸カルシウムの安定化剤及び線維の内部鉱化誘導剤として、応用上、優れた利点を有する。
【0037】
第二に、核酸-ACPは、コラーゲン線維の内外部の鉱化を実現し、ハイドロキシアパタイトは、コラーゲン線維内に規則的な堆積を実現するだけでなく、コラーゲン線維の表面に付着し、コラーゲン線維の内外部の同期鉱化を実現する。これは、さらに、天然骨組織の表面形状、組成成分、階層的ミクロ構造、機械的性能等の方面を模倣し、上記生体材料の全ての要件を満たす。したがって、理想的で、生体模倣型の骨欠損再生修復材料である。
【0038】
第三に、核酸-ACPでコラーゲン線維の内部の鉱化を誘導する効率が高く、周期が短く、5-6時間に広範囲の線維の内部の鉱化を完了することができ、鉱化コラーゲン材料の製造に迅速で効率的な特徴を有し、後期に臨床的転換を満たすことができる。
【0039】
第四に、核酸とコラーゲン線維との間に吸引力が存在し、コラーゲン、非コラーゲン性タンパク質(核酸)、ミネラルという3者の間の相互作用関係を高程度に模倣し、そのため、鉱化モードの生体模倣、インビボに実際のインビボのコラーゲン線維の内部の鉱化メカニズムを究明するために重要な考え方を提供する。
【0040】
第五に、核酸-ACPナノ粒子複合体では、RNA、DNA構造が安定し、長期間分解されにくい。そのため、骨形成促進表現の関連遺伝子を添加することができ、コラーゲン線維の生体模倣型鉱化を完了すると共に、細胞トランスフェクションを実現し、トランスフェクション効率を向上させ、骨欠損における骨形成促進タンパク質の発現を制御及び維持し、さらに、骨形成分化及び骨再生を促進する。そのため、核酸-ACPナノ粒子複合体で製造されたトランスフェクション-鉱化で二重調整されたコラーゲン複合足場は、欠損空間で足場の支持作用を果たし、欠損領域に良好な機械的性能を付与し、良好な細胞微小環境を作り、細胞の成長に有利であると共に、骨形成を促進する関連遺伝子を細胞の内部に持続的に送達することができる。したがって、骨疾患、骨損傷、骨損失及び骨障害の治療又は予防に広く活用することができ、骨再生、骨分化を誘導又は増強し、骨欠損の修復を促進することもできる。
【0041】
一態様では、本発明は、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体(「核酸-非晶質リン酸カルシウムナノ粒子複合体」、「RNA又はDNA-ACPナノ粒子複合体」、「核酸-ACPナノ粒子複合体」、「RNA/DNA-ACPナノ粒子複合体」、「RNA/DNA-ACPナノ粒子」又は「核酸-ACP」とも呼ばれ、これらは、互換的に使用されてもよい)に関する。一態様では、核酸は、静電吸着によって非晶質リン酸カルシウムナノ粒子と複合体を形成する。一態様では、本発明は、生体模倣型鉱化における生物鉱化剤とする前記複合体の使用に関する。例えば、前記複合体又は鉱化剤は、コラーゲン線維、例えば、骨、歯、又は象牙質のコラーゲン線維を鉱化するために使用される。前記骨又は歯は、患者の骨又は歯、又はインビトロの骨又は歯の材料であってもよい。一態様では、本発明の生物鉱化剤は、骨、歯、又は象牙質のコラーゲン線維を鉱化するための組成物などの組み合わせ形態であってもよい。
【0042】
一態様では、本発明は、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子で形成された複合体を含む生物鉱化剤に関する。複合体において、前記核酸は、静電吸着によって非晶質リン酸カルシウムナノ粒子と共に複合体を形成する。例えば、核酸のリン酸基とナノ粒子のカルシウムイオンとの間の静電吸着、及び遊離のリン酸イオンと核酸に吸着したカルシウムイオンのさらなる静電吸着により複合体を形成する。
【0043】
一態様では、本発明の生物鉱化剤は、核酸溶液、塩化カルシウム溶液、及びリン酸水素二カリウムの溶液を混合することによって形成される。
【0044】
本発明の生物鉱化剤において、カルシウムイオンの濃度は、0.1~100mMであり、好ましくは、0.5~50mMであり、より好ましくは、1~10mMであり、より好ましくは、2~5mMであり、より好ましくは、1.67~3.5mMである。例えば、カルシウムイオンの濃度は、1mM、1.2mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、3.5mM、又は7mMであってもよい。本発明の生物鉱化剤において、リン酸イオンの濃度は、0.1~100mMであり、好ましくは、0.2~50mMであり、好ましくは、0.5~10mMであり、より好ましくは、1~5mMであり、より好ましくは、1.0~2.1mMであってもよい。例えば、リン酸イオンの濃度は、0.5mM、0.6mM、0.8mM、1.0mM、1.2mM、1.5mM、2.1mM、又は、4.2mMであってもよい。これらの特徴は、本発明の生物鉱化剤の製造方法に適用される。
【0045】
本発明の生物鉱化剤において、カルシウムイオンとリン酸イオンの比は、10:1~1:5であり、好ましくは、5:1~1:3であり、好ましくは、3.5:1~1:1.25であり、より好ましくは、2:1~1:1であり、例えば、1.67:1である。例えば、カルシウムイオンとリン酸イオンの比は、10:1、8:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1.9:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.2:1、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.9、1:2、1:3又は1:4である。これらの特徴は、本発明の生物鉱化剤の製造方法に適用される。
【0046】
本発明の生物鉱化剤において、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体の粒径は、1~100nm、好ましくは、10~100nm、より好ましくは、20~100nm、例えば、40~60nm又は60~100nmである。例えば、粒径は、5nm、30nm、50nm、70nm、又は80nmであってもよい。これらの粒径範囲は、DNA又はRNAで形成される複合体に適用される。
【0047】
一態様では、本発明の前記核酸は、RNAであってもよい。一態様では、本発明の前記核酸は、DNAであってもよい。別の態様では、核酸は、哺乳動物細胞から単離された全DNA又は全RNA又はプラスミドDNAである。別の態様では、核酸は、骨形成分化を促進し及び/又は骨再生を促進する核酸を含む。一態様では、核酸は、miR-17-92、miR-26a又はmiR-148b又はBMP2-プラスミドDNAから選択される。この態様では、哺乳動物細胞は、骨細胞前駆細胞、前骨芽細胞(例えば、MC3T3)、骨髄間葉系幹細胞(例えば、BMSC)、骨細胞、骨形成細胞、骨芽細胞、破骨細胞から選択されてもよい。好ましくは、核酸は、前骨芽細胞系又は骨髄間葉系幹細胞系から単離された全DNA又は全RNAである。この態様では、哺乳動物細胞は、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、又はサルに由来する細胞であってもよい。一例では、哺乳動物細胞は、マウスの前骨芽細胞又はマウスの骨髄間葉系幹細胞である。プラスミドDNAは、大腸菌などの菌種に由来してもよい。
【0048】
本発明の生物鉱化剤において、核酸の作用濃度は、20~800ug/mlであり、より好ましくは、50~700ug/mlであり、より好ましくは、80~600ug/mlであり、好ましくは、100~500ug/mlであり、より好ましくは、150~300ug/mlであり、例えば、160~250ug/ml、又は、150ug/mlである。これらの核酸の濃度は、DNA又はRNAに適している。
【0049】
核酸の出発濃度は、100~5000ng/μlであり、好ましい出発濃度は、500~5000ng/μlであり、より好ましい出発濃度は、1000~3000ng/μlである。これらの核酸の濃度は、DNA又はRNAに適している。例えば、核酸の作用濃度は、好ましくは、70~150ug/ml(DNAに適する)であり、作業濃度は、好ましくは、150~250ug/ml(RNAに適している)である。本発明の生物鉱化剤において、生物鉱化剤のpHは、5.5~7であり、好ましくは、6.0~6.5である。pHは、例えば、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9である。
【0050】
一態様では、本発明の生物鉱化剤は、例えば、溶液又はコロイド液のような液体形態、ゲルなどの半固体形態、粉末又は凍結乾燥粉末のような固体形態であってもよい。本発明の生物鉱化剤は、好ましくは、液体形態であり、より好ましくは、溶液形態である。別の態様では、本発明の生物鉱化剤は、凍結乾燥粉末であってもよい。前記生物鉱化剤は、また、生理学的に許容される補助材料又は添加剤、好ましくは、コラーゲン線維の鉱化に寄与する補助材料又は添加剤を含んでもよい。液体形態では、前記生物鉱化剤は、水などの溶媒又は溶剤をさらに含んでもよい。これらの補助材料、添加剤又は溶媒は、当業者に周知である。
【0051】
一態様では、本発明は、本発明の生物鉱化剤を含み、又は本発明の生物鉱化剤で処理された鉱化されたコラーゲン線維製品に関する。鉱化されたコラーゲン線維製品は、例えば、患者へ埋め込むための医療機器であってもよい。一態様では、鉱化されたコラーゲン線維製品は、コラーゲン足場(又は3Dコラーゲン足場)、コラーゲン膜、コラーゲン線維シート(又は2Dコラーゲン足場)、脱灰骨組織、脱灰象牙質スライス、又はマウス尾部から選択されてもよいか、又はそれらを含んでもよい。一態様では、鉱化されたコラーゲン線維製品は、歯又は骨修復材料、歯又は骨足場材料、歯又は骨再生材料、又は歯又は骨埋め込み材料から選択される。
【0052】
一態様では、本発明の前記コラーゲン線維は、骨コラーゲン線維であり、好ましくは、I型コラーゲン線維である。一態様では、本発明の生物鉱化剤は、コラーゲン線維、例えば、コラーゲン線維を鉱化するために使用される。一態様では、本発明の生物鉱化剤は、コラーゲン線維製品を鉱化するために用いられる。鉱化プロセスは、患者のインビトロ又はインビボで行われてもよい。
【0053】
一態様では、患者は、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、又はサルであってもよく、好ましくは、ヒトである。
【0054】
一態様では、本発明は、患者の骨関連疾患又は障害を治療し、又は骨の状態を改善するための医薬又は医療機器の製造における、生物鉱化剤又は鉱化されたコラーゲン線維製品の使用に関する。別の態様では、本発明は、患者の骨関連疾患又は障害を治療し、又は骨の状態を改善するための生物鉱化剤又は鉱化されたコラーゲン線維製品に関する。別の態様では、本発明は、それを必要とする患者の骨関連疾患又は障害を治療し、又は骨の状態を改善する方法に関し、前記方法は、患者に、治療有効量の本発明の鉱化剤又は鉱化されたコラーゲン線維製品を投与することを含む。治療有効量は、実際の状況に応じて当業者によって決定されてもよい。
【0055】
一態様では、本発明で製造された医薬は、骨欠損又は骨損失を治療し、又は骨修復、骨分化又は骨再生を促進するために用いられる。別の態様では、本発明の生物鉱化剤又は鉱化されたコラーゲン線維製品は、骨欠損又は骨損失を治療し、又は骨修復、骨分化又は骨再生を促進するために用いられる。別の態様では、本発明は、それを必要とする患者の骨欠損又は骨損失を治療し、又は骨修復、骨分化又は骨再生を促進する方法に関し、前記方法は、患者に、治療有効量の本発明の生物鉱化剤又は鉱化されたコラーゲン線維製品を投与することを含む。
【0056】
一態様では、本発明は、患者のコラーゲン線維を鉱化するための医薬の製造における生物鉱化剤の使用に関する。別の態様では、本発明は、患者のコラーゲン線維を鉱化するための生物鉱化剤に関する。一態様では、本発明は、患者のコラーゲン線維を鉱化する方法に関し、前記方法は、患者に、治療有効量の本発明の鉱化剤を投与することを含む。
【0057】
一態様では、本発明は、生物鉱化剤を製造するための方法に関し、前記方法は、(1)、核酸を得るステップと、(2)、ステップ(1)で得られた核酸を塩化カルシウム溶液と混合するステップと、(3)、ステップ(2)で得られた混合物にリン酸水素二カリウム溶液を添加することにより、核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体を得るステップとを含む。該方法のステップ(1)では、全DNA又は全RNA又はプラスミドDNAを哺乳動物細胞から抽出することができる。一態様では、ステップ(1)で得られる核酸は、好ましい出発濃度が、700~1000ng/μl(DNA)、1500~2500ng/μl(RNA)である。例えば、核酸の出発濃度は、700ng/μl、1000ng/μl、1600ng/μl、1700ng/μl、1800ng/μl、1900ng/μl、2000ng/μl又は2500ng/μlであってもよい。一態様では、ステップ(1)で得られるRNAの出発濃度は、1400~2500ng/μlであり、好ましい出発濃度は、1500~2500ng/μlである。一態様では、ステップ(1)で得られるDNAの出発濃度は、700ng/μlより大きくしてもよく、1000ng/μlが最適である。前記方法では、ステップ(3)におけるカルシウムイオンの濃度は、1~10mMであり、好ましくは、2~5mMであり、より好ましくは、1.67~3.5mMである。前記方法では、ステップ(3)におけるリン酸イオンの濃度は、0.5~10mMであり、好ましくは、1~5mMであり、より好ましくは、1.0~2.1mMである。前記方法では、カルシウムイオンとリン酸イオンの比は、10:1~1:5であり、好ましくは、5:1~1:3であり、好ましくは、3.5:1~1:1.25であり、より好ましくは、2:1~1:1であり、好ましくは、5:3又は1.67:1である。
【0058】
一態様では、本発明は、コラーゲン線維の生体模倣型鉱化を誘導する方法に関する。別の態様では、本発明は、鉱化されたコラーゲン線維製品を製造する方法に関する。前記方法は、本発明の生物鉱化剤を、コラーゲン線維又はコラーゲン線維を含む製品と、例えば溶液中で接触させることを含む。この態様では、本発明の生物鉱化剤は、コラーゲン線維と溶液中で混合される。接触時間又は鉱化時間は、0.5時間を超えてもよく、例えば、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、又は少なくとも72時間であってもよい。接触時間又は鉱化時間は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間であってもよい。例えば、接触時間又は鉱化時間は、1~10日間であってもよく、好ましくは、2~8日間であり、より好ましくは、3~7日間であり、より好ましくは、4~6日間、例えば5日間である。一態様では、5時間接触した後に、完全な鉱化を実現する。一態様では、本発明は、RNAと非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体を製造する方法に関する。本発明の方法は、(1)、RNAを抽出するステップと、(2)、得られたRNAを塩化カルシウム溶液と混合するステップと、(3)、RNA-塩化カルシウム混合液をリン酸水素二カリウム溶液と混合することにより、RNA-ACP鉱化溶液を得るステップとを含んでもよい。一態様では、Trizol法でRNAを抽出する。抽出されたRNAの出発濃度は、1500~2500ng/μlであってもよい。一態様では、カルシウムイオンは、静電吸引力によってRNAの負に帯電したリン酸基に吸着される。一態様では、溶液中のリン酸は、RNA上のカルシウムイオンとさらに静電吸着される。得られたRNA-ACP鉱化溶液は、透明であってもよい。
【0059】
一態様では、RNA-ACP鉱化溶液中において、カルシウムイオン又はカルシウムの濃度は、1.67~3.5mMであり、リン酸イオン又はリン酸の濃度は、1.0~2.1mMである。一態様では、カルシウムイオンとリン酸イオンの比は、5:3又は1.67:1である。
【0060】
一態様では、抽出されたRNAは、哺乳動物細胞の全RNA、例えば、マウス前骨芽細胞系(MC3T3)又はマウス骨髄間葉系幹細胞系(BMSC)に由来する全RNAである。一態様では、RNAは、miR-17-92、miR-26a、miR-148bなどの、骨形成分化を促進し、及び/又は骨再生を促進するRNAを含む。
【0061】
一態様では、RNAの出発濃度は、1500~2500ng/μlである。最終的なRNA-ACP鉱化溶液では、RNAの作用濃度は、150~250ug/mlであってもよい。
【0062】
本発明のRNA-ACP鉱化溶液は、透明であり、沈殿がなく、4℃で三日間保存することができ、RNAは分解されず、比較的良好な安定性を有し、pH値は、約6.0~6.5である。
【0063】
一態様では、RNA-ACPナノ粒子は、粒径が40~60nmである。本発明のナノ粒子は、非晶質状態又は非晶形である。
【0064】
一態様では、本発明は、DNAと非晶質リン酸カルシウムナノ粒子とで形成された複合体を製造する方法に関する。本発明の方法は、(1)、DNAを抽出するステップと、(2)、得られたDNAを塩化カルシウム溶液と混合するステップと、(3)、DNA-塩化カルシウム混合液をリン酸水素二カリウム溶液と混合することにより、DNA-ACP鉱化溶液を得るステップとを含んでもよい。一態様では、Trizol法又はキット法でDNAを抽出する。抽出物のDNAの出発濃度は、700ng/μlよりも大きくしてもよい。一態様では、カルシウムイオンは、静電吸引力によってDNAの負に帯電したリン酸基に吸着される。一態様では、溶液中のリン酸は、DNA上のカルシウムイオンとさらに静電吸着される。得られたDNA-ACP鉱化溶液は、透明であってもよい。
【0065】
一態様では、DNA-ACP鉱化溶液では、カルシウムイオンの濃度は、1.67~3.5mMであり、リン酸イオンの濃度は、1.0~2.1mMである。一態様では、カルシウムイオンとリン酸イオンの比は、5:3又は1.67:1である。
【0066】
一態様では、抽出されたDNAは、哺乳動物細胞の全DNA又はプラスミドDNA、例えば、マウス前骨芽細胞系(MC3T3)又はマウス骨髄間葉系幹細胞系(BMSC)に由来する全DNA又は大腸菌プラスミドDNAである。一態様では、DNAは、骨形成分化を促進し、及び/又は骨再生を促進するDNAを含む。
【0067】
一態様では、DNAの最適な出発濃度は、1000ng/μlである。最終的なDNA-ACP鉱化溶液では、DNAの作用濃度は、150ug/mlよりも大きくしてもよい。
【0068】
本発明のDNA-ACP鉱化溶液は、透明であり、沈殿がなく、4℃で長期間保存することができ、DNAは分解されず、比較的良好な安定性を有し、pH値は、約6.0~6.5である。
【0069】
一態様では、DNA-ACPナノ粒子は、粒径が60~100nmである。本発明のナノ粒子は、非晶質状態又は非晶形で回折する。
【0070】
一態様では、本発明は、核酸-ACPナノ粒子を用いてコラーゲン線維の生体模倣型鉱化を誘導する方法に関する。前記方法は、コラーゲン線維を本発明の生物鉱化剤と接触させることを含んでもよい。一態様では、前記方法は、本発明の生物鉱化剤をコラーゲン線維と溶液中で混合することを含んでもよい。
【0071】
一態様では、鉱化可能なコラーゲン線維は、3Dコラーゲン足場、コラーゲン膜、2Dコラーゲン線維、脱灰骨組織、脱灰象牙質スライス、マウス尾部などを含む。
【0072】
一態様では、RNA又はDNA-ACPナノ粒子は、コラーゲンを媒介して急速な線維の内部の鉱化を発生させる。コラーゲンを3時間浸漬すれば、線維の内部の鉱化を観察することができる。6時間浸漬すると、大面積のコラーゲン線維の内部の鉱化を観察することができ、線維内の結晶は、コラーゲンC軸に沿って規則的に配列される。
【0073】
一態様では、鉱物(例えば、ナノ粒子)は、コラーゲン線維の表面及び内部に堆積して、コラーゲン線維の内部の鉱化及び線維の外部の鉱化を完了することができる。鉱化モードは、核酸とコラーゲン線維表面が接着及び/又は吸引を発生させることであってもよい。
【0074】
一態様では、核酸-ACPナノ粒子コラーゲンによって媒介される線維の内部及び線維の外部のコラーゲンを鉱化する。ミクロ構造において、本発明の鉱化コラーゲンは、マウスの大腿骨においてインビボで鉱化されたコラーゲン線維に非常に類似している。
【0075】
一態様では、RNA又はDNA-ACPナノ粒子は、コラーゲンを誘導して線維の内外部の鉱化を発生させる。鉱化コラーゲン複合材料は、骨欠損の修復、骨分化の促進及び骨再生の強化に用いることができる。
【0076】
一態様では、RNA又はDNA-ACPナノ粒子は、コラーゲンを誘導して生体模倣型鉱化を発生させると共に、骨形成促進表現の関連遺伝子の細胞内部への持続送達を可能にする。本発明の核酸と非晶質リン酸カルシウムナノ粒子との複合体は、RNA又はDNAの送達システムとして機能してもよい。前記送達システムは、細胞トランスフェクションに用いることができ、骨欠損における骨形成促進タンパク質の発現を制御及び維持し、さらに、骨形成分化及び骨再生を促進する。
【0077】
一態様では、RNA又はDNA-ACPナノ粒子複合体でトランスフェクション-鉱化で二重調整されたコラーゲン複合足場を製造する。本発明の製品、足場、又は複合体は、骨疾患、骨損傷、骨損失、及び骨障害を治療又は予防し、又は骨再生、骨分化を誘導又は強化し、骨欠損の修復を促進するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】低濃度でのRNA-ACPナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。a、右上隅には、RNA-ACPナノ粒子の制限視野電子回折像がある。c~f、それぞれ、酸素元素、カルシウム元素、リン元素、及び窒素元素の元素分布画像である。b、以上の4種類の元素の分布合成図である。
【
図2】低濃度でのリン酸カルシウムの電位及び粒径分布である。a、bは、それぞれ安定化剤が添加されない単純カルシウムリン混合液の電位状況及び粒径分布である。c、dは、RNA-ACP鉱化溶液の電位状況及び粒径分布である。e、fは、DNA-ACP鉱化溶液の電位状況及び粒径分布である。
【
図3】フーリエ変換赤外線分光図である。上から順に低濃度のハイドロキシアパタイト凍結乾燥粉末、低濃度のDNA-ACP凍結乾燥粉末及び低濃度のRNA-ACP凍結乾燥粉末の赤外線スペクトルである。
【
図4】コラーゲン線維の透過型電子顕微鏡画像である。a、コラーゲン線維は、低濃度のRNA-ACP鉱化溶液で5日間鉱化され、コラーゲン線維の内部及び外部の両方に鉱物が堆積する。b、コラーゲン線維は、低濃度のDNA-ACP鉱化溶液で5日間鉱化され、コラーゲン線維は、内外部の鉱化を完了する。
【
図5】コラーゲン線維足場の走査型電子顕微鏡画像である。a、4ヶ月齢のマウスの大腿骨における鉱化されたコラーゲン線維の表面トポグラフィーである。b、純粋なコラーゲン線維足場は、低濃度のRNA-ACP鉱化溶液で5日間鉱化された表面トポグラフィーである。コラーゲン線維の内部及び表面の両方に鉱物が堆積する
。
【
図6】低濃度のRNA-ACP鉱化溶液でコラーゲン線維を5時間鉱化した走査型電子顕微鏡画像である。a、暗視野で、コラーゲン線維の内部のリン酸カルシウムが規則的に堆積し、コラーゲン線維の内部の鉱化を完了する。b、左下隅には、リン酸カルシウムがコラーゲンのC軸に沿って整列したヒドロキシアパタイト結晶に変換されたことを示す制限視野電子回折像がある。c、dは、それぞれ、カルシウム元素及びリン元素の元素分布画像である。
【
図7】ルテニウムレッドで染色したコラーゲン線維の透過型電子顕微鏡画像である。a、純粋なコラーゲン線維を純粋なRNA(200ug/ml)と共に48時間インキュベートした後、洗浄し、ルテニウムレッドで染色する。b、純粋なコラーゲン線維を、酵素フリー水と共に48時間インキュベートした後、洗浄し、ルテニウムレッドで染色する。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は、細胞におけるアニオン性を有するRNA及びDNA生体高分子を抽出し、且つ生体模倣型鉱化技術をインビトロに応用することにより、リン酸カルシウム鉱物を安定化し、それにより核酸-ACPナノ粒子複合体を製造する。また、核酸は、コラーゲン線維の鉱化誘導剤として、ACPをそれぞれコラーゲン線維の内部に入れ、コラーゲン線維の間に沈積させ、それにより、コラーゲン線維の内外部の生体模倣型鉱化を完了する。次に、生体適合性に優れ、免疫原性が低く、鉱化速度が速く、機械的強度が高いハイドロキシアパタイト-コラーゲン有機/無機複合材料を製造し、それにより骨組織欠損修復に独特で効率的な解決手段を提供する。
【0080】
以下、発明者が提供する具体的な実施例であり、本発明の技術的解決手段をさらに説明する。
【実施例】
【0081】
実施例1:
【0082】
(1)マウスBMSC細胞をT75に接種し、初期プレーティング密度を5*10^4個/cm2とし、10%のFBSを含有するαMEM培地で2日間培養した。細胞状態が良好であり、且つ融合度が約70-80%であると、骨形成誘導培地に加え、2-3日ごとに液体を交換した。
【0083】
(2)骨形成誘導分化を7日間行った後、細胞の成長状態が良好である場合、Trizol法で細胞内の全RNAを抽出し、RNAが非常に分解されやすいため、低温で、氷上で行い、用いるツールに酵素処理が不要であるように注意する。最終的に得られたRNA沈殿を酵素フリー水で溶解した。
【0084】
(3)マイクロプレートリーダーを用いて各EPチューブにおけるRNA溶液の濃度を検出し、出発濃度が1500ng/μl以上であるRNA溶液を選択し、混合することにより、約1600~2500ng/μlの1mlの高濃度のRNA溶液を得た。
【0085】
(4)2本の15mlの遠心管に等量の酵素フリー水をそれぞれ添加し、塩化カルシウム二水和物粉末(分子量が147)でそれぞれ濃度が7mMと3.5mMのカルシウムイオン含有溶液を調製した。
【0086】
(5)2本の15mlの遠心管にそれぞれ等量の酵素フリー水を添加し、リン酸水素二カリウム粉末(分子量が174)でそれぞれ濃度が4.2mMと2.1mMのリン酸イオン含有溶液を調製した。本実験に用いられる試薬を調製するための溶液は、いずれも酵素フリー水であった。
【0087】
(6)100μlのRNAを7mMの塩化カルシウム二水和物(450μl)と混合し、次に、等体積の4.2mMのリン酸水素二カリウム(450μl)をゆっくりと滴下した。最終的なカルシウムリン濃度が3.5:2.1である高濃度のRNA-ACP鉱化溶液を調製した。同様に、100μlのRNAを、3.5mMの塩化カルシウム二水和物(450μl)と混合し、次に、等体積の2.1mMのリン酸水素二カリウム溶液(450μl)をゆっくりと滴下した。最終的なカルシウムリン濃度が約1.67:1である低濃度のRNA-ACP鉱化溶液を調製した。
【0088】
(7)ラットの尾腱に由来するコラーゲン/酢酸(8mg/mL)溶液を透析バッグに入れ、透析バッグを締めた。
【0089】
(8)リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)を外部に置いた。37℃の環境で、透析液を12時間ごとに交換した。
【0090】
(9)72h後に、コラーゲン線維の自己組織化を完了した後、自己組織化完了後のコラーゲン線維に対するリン酸イオンの影響を低減するために、PBS透析液を脱イオン水(pH7.4)に置き換え、逆透析を行った。
【0091】
(10)48h後、透析バッグにおけるコラーゲンタンパク質溶液(8mg/mL)の適量を、ピペットで400メッシュまで滴下して炭素支持膜のニッケル/金網に覆い、正面を上向きにし、室温で乾燥させた。
【0092】
(11)コラーゲン線維を、0.3Mの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)/0.06M及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)溶液で4時間架橋し、脱イオン水で3回洗浄した後、室温で乾燥させて使用に備えた。
【0093】
(12)前記核酸-ACPナノ粒子鉱化溶液を、EPチューブキャップ内に約450ul滴下し、均一な球形を形成した。
【0094】
(13)コラーゲン線維を置いたニッケル/金網の前面を鉱化溶液に接触させ、5日間鉱化した。
【0095】
好ましい解決手段において、選択された鉱化基質は、ラットのI型マウス尾腱に由来するコラーゲン/酢酸溶液、自己組織化を完了したマウス尾腱、自己組織化を完了した3Dコラーゲン足場、コラーゲン膜、脱灰骨組織、脱灰象牙質シートなどであってもよい。
【0096】
実施例2:
【0097】
該実施例と実施例1との相違点は、以下のとおりである。
【0098】
(1)Trizol法及びキット法を用いて細胞内の全DNAを抽出し、得られたDNAの出発濃度をマイクロプレートリーダーで検出し、その濃度は、700ng/μlよりも大きくしてもよい。
【0099】
(2)150μlのDNAを、425μlの高低濃度の塩化カルシウム二水和物溶液と均一に混合した後、425μlの高低濃度のリン酸水素二カリウム溶液をDNA-塩化カルシウム二水和物混合液にゆっくりと滴下した。2群の安定で透明な高低濃度のDNA-ACPナノ粒子鉱化溶液を合成した。後期に鉱化に用いた。
【0100】
実施例1、2の記載によれば、本発明の構築する核酸-ACPナノ粒子が、コラーゲン線維の生体模倣型鉱化を誘導することは、以下の利点を有する。
【0101】
図1に示すように、透過型電子顕微鏡の検出結果は、実施例1で構築されたリン酸カルシウム複合体の粒径は、比較的均一な球形であり、約50nmであることを示した(
図1のa)。制限視野電子回折結果は、リン酸カルシウムが非晶性、非晶質であることを示した(
図1のaの右上隅)。元素エネルギースペクトルの結果は、高電子密度粒子の主な組成成分が、酸素元素、カルシウム元素、リン元素、及び窒素元素であることを示した(
図1のc~f)。そのうち、元素複合図(
図1のb)は、窒素元素が他の元素分布に一致することを示した。窒素元素は、有機核酸にのみ存在するので、この方法では、RNAがカルシウムリン粒子の安定化に関与し、粒径がより均一なRNA-ACPナノ粒子を最終的に形成することができることを示した。
【0102】
図2に示すように、Zeta電位の結果は、いずれの安定化剤を添加しない純粋なカルシウムリン溶液(
図2のa)では、電位は、実質的に0であるが、RNA(150~250ug/ml)を安定化剤として添加するカルシウムリン溶液(
図2のc)では、その電位は、負であり、約-10mvであり、DNA(150ug/ml)を安定化剤として添加したカルシウムリン溶液(
図2のe)では、その電位が約-20mvであることを示した。これは、核酸が負に帯電しているので、核酸の存在で安定化されたACPナノ粒子複合体も負に帯電していることを示した。粒径の結果は、いずれの安定化剤を添加しない純粋なカルシウムリン溶液(
図2のb)では、カルシウムリン粒子の粒径が1ミクロンよりも大きいことを示し、これは、カルシウムリン粒子が沈殿した形態で溶液から直接分離されたことを示した。一方、DNA-ACPナノ粒子の粒径は、約60~100nm(
図2のf)であり、RNA-ACPナノ粒子の粒径は、より小さく、より均一であり、約40~60nmである(
図2のd)。これは、RNAもDNAもリン酸カルシウムの安定化に関与し、また、DNAが二本鎖構造であり、分子量も大きいため、空間的に示されたDNA-ACPナノ粒子の直径がRNA-ACPナノ粒子よりも僅かに大きいことを示した。
【0103】
図3に示すように、フーリエ変換赤外分光法による結果は、RNA-ACP及びDNA-ACPが、500cm
-1、600cm
-1、1000cm
-1にあり、いずれもO-P-Oリン酸化結合、リン酸の振動ピークを有することを示した。これは、RNA-ACP及びDNA-ACPの複合体にリン酸カルシウムが含まれていることを示した。また、RNAとDNAの特徴的な塩基、例えば、グアニン、アデニン、シトシンなどの振動ピークが変化せず、そのため、この2種類の複合体において、RNAとDNAの構造が破壊されず、依然として安定的に維持されることを示した。
【0104】
図4に示すように、透過型電子顕微鏡による結果(
図4のa~b)は、核酸-ACPが鉱化溶液として、ACPナノ粒子がコラーゲン線維の内部に入り、コラーゲン線維のC軸方向に沿ってさらに規則的に成長し、熱力学的に安定なハイドロキシアパタイトに最終的に変換され、コラーゲン線維の内部の鉱化を完了することを示した。また、カルシウムリンもコラーゲン線維間又はその表面に堆積することができ、各方向に沿って不規則的に成長して、最終的にコラーゲン線維の外部の鉱化を完了する。これは、核酸-ACPが、コラーゲン線維の内外部の鉱化を誘導する作用を有し、ミクロ構造で精巧な天然骨組織の鉱化コラーゲン特徴を模倣することができ、生体模倣骨修復材料の製造に確固たる基礎を定めることを示した。
【0105】
図5に示すように、走査型電子顕微鏡により、純粋なコラーゲン線維足場をRNA-ACPで5日間鉱化した場合(
図5のb)、コラーゲン線維足場の複数の部分の体積が膨張すると共に、膨張箇所の表面が滑らかではなく、既存の特徴的な横縞構造が覆われることを示した。線維の内外部の空間がいずれも無機鉱物によって占められ、コラーゲン線維の内外部が鉱化されることを示した。注目すべきことに、走査型電子顕微鏡により、天然マウスの大腿骨における鉱化コラーゲンの表面トポグラフィーも同様に粗く、表面がハイドロキシアパタイトで覆われていることを示した(
図5のa)。これは、RNA-ACP鉱化溶液によって誘導される鉱化コラーゲン線維のトポグラフィーによく一致する。これは、該実施例1及び2で使用された安定化剤、製造方法、鉱化過程がインビボの実際のコラーゲン線維の鉱化状況と比較して類似性を有し、そのため、鉱化モードから言えば、該材料の製造も生体模倣によって行われるであることを示した。
【0107】
図6に示すように、走査型電子顕微鏡による結果は、コラーゲン線維がRNA-ACP鉱化溶液だけに5時間接触すれば、大面積のコラーゲン線維の内部を鉱化することができることを示す(図6のa)。元素分布結果は、カルシウムリンがコラーゲン線維内に規則的に堆積することを示していると共に、制限視野電子回折結果は、コラーゲン線維の内部に堆積した鉱物が規則的なハイドロキシアパタイト結晶であることを示した。これは、RNAがカルシウムリン安定化剤及びコラーゲン線維誘導剤として、コラーゲン線維の広範囲の線維の内部の鉱化を迅速に誘導することができ、鉱化時間が極めて短く、効率が極めて高いことを示した。これは、骨修復材料の効率的な製造及び臨床的転換のために強力な支持を提供する。
【0108】
図7に示すように、純粋なコラーゲン線維を純粋なRNAと共に48時間インキュベートした後、洗浄及びルテニウムレッド染色を行い、透過型電子顕微鏡による結果は、高電子密度のRNA-ルテニウムレッド染色液は、コラーゲン線維に均一で大面積に吸着され(図7のa)、RNAとインキュベートしないコラーゲン線維群は、高電子密度の粒子がない(図7のb)ことを示した。これは、RNAとコラーゲンとの間に吸引力が存在することを示し、本特許に係る実験モデルの生体模倣をさらに検証し、実際のインビボのコラーゲン線維の内部の鉱化メカニズムを究明するために重要な考え方を提供する。
【0109】
以上の内容は、具体的な好ましい実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明したものであり、本発明の具体的な実施形態がこれに限定されると認定することができず、当業者にとって、本発明の概念から逸脱しない前提で、いくつかの簡単な推論又は置換を行うこともでき、いずれも本発明の特許請求の範囲によって決定された特許の保護範囲に属すると見なすべきである。