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特許7453365高純度のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】高純度のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/38 20060101AFI20240312BHJP
   C07C 311/08 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 303/44 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/352 20060101ALN20240312BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C07C303/38
C07C311/08
C07C303/44
A61K31/352
A61P29/00 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022526662
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020368
(87)【国際公開番号】W WO2021241725
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020093975
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】長遠 裕介
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-049778(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107021891(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109400507(CN,A)
【文献】特表2019-508390(JP,A)
【文献】特開昭63-313765(JP,A)
【文献】特表2013-520474(JP,A)
【文献】特表2009-506010(JP,A)
【文献】Inaba, T.; Tanaka, K.; Takeno, R.; Nagaki, H.; Toshida, C.; and Takano, S.,Synthesis and Antiinflammatory Activity of 7-Methanesulfonylamino-6-phenoxychromones. Antiarthritic Effect of the 3-Formylamino Compound (T-614) in Chronic Inflammatory Disease Models,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,日本,日本薬学会,2000年,第48巻、第1号,p. 131-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを溶媒としてのニトリル類又はエ-テル類の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホン酸無水物と反応させることを含む、N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
【請求項2】
塩基が、有機塩基である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホニルクロリドと反応させ、さらに、反応混合物に、クエンチ剤を加え、クエンチ処理し、ついで、溶媒の存在下、無機塩基の存在下又は不存在下、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと反応させ、N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドを晶析させるN-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
【請求項4】
クエンチ剤が、アルコ-ル類又はアミン類である請求項記載の製造方法。
【請求項5】
5-メトキシ-2-フェノキシアニリン及びメタンスルホニルクロリドを反応させる温度が0~50℃である請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
2-クロロ-5-メトキシニトロベンゼンを溶媒の存在下、塩基の存在下、フェノ-ルと反応させ、2-フェノキシ-5-メトキシニトロベンゼンを得、溶媒の存在下、触媒の存在下又は不存在下、還元し、5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを得、溶媒としてのニトリル類又はエ-テル類の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホン酸無水物と反応させることを特徴とする中間体の単離を行わないN-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
【請求項7】
2-クロロ-5-メトキシニトロベンゼンを溶媒の存在下、塩基の存在下、フェノ-ルと反応させ、2-フェノキシ-5-メトキシニトロベンゼンを得、溶媒の存在下、触媒の存在下又は不存在下、還元し、5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを得、溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホニルクロライドと反応させ、さらに、クエンチ剤を加え、クエンチ処理し、ついで、溶媒の存在下、無機塩基の存在下又は不存在下、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと反応させ、晶析させることを特徴とする中間体の単離を行わないN-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド(以下、化合物Aと称する。)の製造方法に関する。
また、本発明は、1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド(以下、化合物Bと称する。)の含有率が低減された化合物Aに関する。
【背景技術】
【0002】
イグラチモドは、優れた抗リウマチ治療剤として知られている。しかしながら、従来の製造方法で合成したイグラチモドは、微量ではあるが、N-(7-(クロロメチル)スルホンアミド)-4-オキソ-6-フェノキシ-4H-クロメン-3-イル)ホルムアミド(以下、化合物C)を不純物として含んでいる。
また、化合物Aは、イグラチモドの製造中間体として知られており(特許文献1)、たとえば、2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼンから製造される(非特許文献1)。イグラチモドは、化合物Aから製造される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-49778号公報
【文献】特開平5-97840号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(Chemical and Pharmaceutical Bulletin)第48巻、第1号、2000年、p.131-139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造中間体である化合物Aに含まれる不純物である化合物Bは、イグラチモドの製造工程で化合物Cとなり、不純物としてイグラチモドに含まれる。さらに、イグラチモドの製造工程で生成する化合物Bの反応生成物は、化合物Aから得られる反応生成物と物性が類似しており、イグラチモドの製造工程での除去が極めて困難である。
一方、イグラチモドは、医薬の原薬として用いられるため、より高い純度が望まれており、製造中間体として高純度の化合物Aを使用することが望まれている。
【0006】
本発明の課題は、高純度のイグラチモドの製造に使用される、高純度の化合物A及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下において、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、化合物Aの製造方法の改良により、2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼンを原料として化合物Bの含有率が低い化合物Aが高収率で得られることを見出した。
さらに、化合物Aの製造工程において、副生成物である化合物Bを分解する工程により、化合物Bの含有率が低い化合物Aが高収率で得られることを見出した。
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1]5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドと反応させることを含む、N-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
[2]メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドが、メタンスルホン酸無水物である[1]記載の製造方法。
[3]溶媒が、ニトリル類又はエーテル類である[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]塩基が、有機塩基である[1]~[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5]メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドが、メタンスルホニルクロリドである[1]記載の製造方法。
[6]さらに、反応混合物に、クエンチ剤を加え、クエンチ処理し、ついで、溶媒の存在下、無機塩基の存在下又は不存在下、有機塩基と反応させ、N-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドを晶析させる[5]記載の製造方法。
[7]クエンチ剤が、アルコール類又はアミン類である[5]又は[6]記載の製造方法。
[8]有機塩基が、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、トリエチルアミン及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンから選ばれる有機塩基である[5]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9]有機塩基が、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンである[5]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10]5-メトキシ-2-フェノキシアニリン及びメタンスルホニルクロリドを反応させる温度が0~50℃である[1]、[5]~[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼンを溶媒の存在下、塩基の存在下、フェノールと反応させ、2-フェノキシ―5-メトキシニトロベンゼンを得、溶媒の存在下、触媒の存在下又は不存在下、還元し、5-メトキシ-2-フェノキシアニリンを得、溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドと反応させることを特徴とする中間体の単離を行わないN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法。
[12]メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドが、メタンスルホン酸無水物である[11]記載の製造方法。
[13]メタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドが、メタンスルホニルクロリドである[11]記載の製造方法。
[14]さらに、クエンチ剤を加え、クエンチ処理し、ついで、溶媒の存在下、無機塩基の存在下又は不存在下、有機塩基と反応させ、晶析させる[13]記載の製造方法。
[15][1]~[14]のいずれか一項に記載の製造方法で製造された1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの含有率が30ppm以下であるN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド。
[16][1]~[14]のいずれか一項に記載の製造方法で製造された1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの含有率が10ppm未満であるN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド。
[17]1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの含有率が30ppm未満であるN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド。
[18]1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの含有率が10ppm未満であるN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、化合物Bの含有率が低減された化合物Aの製造方法として有用である。
さらに、本発明の化合物Bの含有率が低減された化合物Aは、高純度なイグラチモドの原薬の原料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明について詳細に説明する。
本明細書中に使用される%は、特に断らない限り、質量%を意味する。
【0011】
本明細書において、特にことわらない限り、各用語は、以下の意味を有する。
化合物A:N-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド
化合物B:1-クロロ-N-(5-メトキシ-2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド
化合物C:N-(7-(クロロメチル)スルホンアミド)-4-オキソ-6-フェノキシ-4H-クロメン-3-イル)ホルムアミド
イグラチモド:N-(7-メチルスルホンアミド)-4-オキソ-6-フェノキシ-4H-クロメン-3-イル)ホルムアミド
【0012】
脂肪族炭化水素類としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びデカヒドロナフタレンが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、たとえば、塩化メチレン、クロロホルム及びジクロロエタンが挙げられる。
アルコール類としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール及び2-メチル-2-プロパノールが挙げられる。
グリコール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコールが挙げられる。
エーテル類としては、たとえば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
【0013】
ケトン類としては、たとえば、アセトン、2-ブタノン及び4-メチル-2-ペンタノンが挙げられる。
エステル類としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルが挙げられる。
アミド類としては、たとえば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及び1-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
ニトリル類としては、たとえば、アセトニトリル及びプロピオニトリルが挙げられる。
スルホキシド類としては、たとえば、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、たとえば、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。
【0014】
次に本発明の化合物A及びその製造方法について説明する。
【0015】
[化合物Bの含有率が低減された化合物A]
本発明の製造方法により化合物Bの含有率が低減された化合物Aを製造することができる。たとえば、本発明の製造方法により化合物Bの含有率が10ppm未満である化合物Aを製造できる。化合物Bの含有率が低減された化合物Aとしては、化合物Bの含有率が30ppm以下であればよく、10ppm未満であることが好ましい。
さらに、化合物Bの含有率が低減された化合物Aを用いることにより化合物Cの含有率が低減されたイグラチモドを製造できる。
【0016】
次に本発明の製造法について説明する。
【化1】
【0017】
式[1]の化合物は、(1)溶媒の存在下、塩基の存在下、式[2]の化合物をフェノールと反応させ、式[3]の化合物を得、(2)溶媒の存在下、触媒の存在下又は不存在下、式[3]の化合物を還元し、式[4]の化合物を得、(3)溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、式[4]の化合物をメタンスルホン酸無水物又はメタンスルホニルクロリドと反応させることにより得ることができる。
本製造法で得られた式[3]及び式[4]の化合物は、単離してもよく、単離せずに次の工程に使用してもよい。
【0018】
[製造法1]
【化2】
【0019】
式[3]の化合物は、溶媒の存在下、塩基の存在下、式[2]の化合物をフェノールと反応させることにより製造することができる。
【0020】
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類、芳香族炭化水素類及び水などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アミド類及び芳香族炭化水素類が挙げられ、N,N-ジメチルアセトアミド及びトルエンがより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミド及びトルエンの混合溶媒がよりさらに好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[2]の化合物に対して1~100倍量(v/w)が好ましく、5~10倍量(v/w)がより好ましい。
【0021】
この反応において使用されるフェノールの使用量は、式[2]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましい。
【0022】
この反応において使用される塩基としては、たとえば、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基;ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムなどの無機塩基などが挙げられる。
好ましい塩基としては、無機塩基が挙げられ、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムがよりさらに好ましい。
塩基の使用量は、式[2]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましく、1~2倍モルがより好ましい。
この反応は、0~150℃、好ましくは、100~120℃で30分間~48時間、より好ましくは5~10時間実施すればよい。
【0023】
本製造法で得られた式[3]の化合物は、引き続き、単離せずに次の工程に使用することができる。
【0024】
[製造法2]
【化3】
【0025】
式[4]の化合物は、溶媒の存在下、触媒の存在下又は不存在下、還元剤の存在下、式[3]の化合物を還元することにより製造できる。還元反応としては、たとえば、金属触媒を用いる接触水素添加反応が挙げられる。
【0026】
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類、芳香族炭化水素類及び水などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、芳香族炭化水素類及びアルコール類が挙げられ、トルエン及び2-プロパノールがより好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[3]の化合物に対して1~100倍量(v/w)が好ましく、5~10倍量(v/w)がより好ましい。
【0027】
この反応に使用される触媒としては、たとえば、パラジウム-炭素及びパラジウム黒などの金属パラジウム;酸化パラジウム及び水酸化パラジウムなどのパラジウム塩;ラネーニッケルなどのニッケル金属ならびに酸化白金などの白金塩などが挙げられる。
触媒の使用量は、式[3]の化合物に対して0.001~5倍量(W/W)であればよく、0.01~1倍量(W/W)が好ましい。
【0028】
還元剤としては、たとえば、水素;ギ酸;ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム及びギ酸トリエチルアンモニウムなどのギ酸塩;シクロヘキセン;ならびにシクロヘキサジエンなどが挙げられる。還元剤の使用量は、式[3]の化合物に対して2~100倍モルであればよく、2~10倍モルが好ましい。
【0029】
この反応は、0~150℃、好ましくは、50~120℃、より好ましくは、70~80℃で30分間~48時間、好ましくは、2~12時間実施すればよい。
【0030】
本製造法で得られた式[4]の化合物は、引き続き、単離せずに次の工程に使用することができる。
【0031】
[製造法3A]
【化4】

式[1]の化合物は、溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、式[4]の化合物をメタンスルホン酸無水物と反応させることにより得ることができる。
得られた式[1]の化合物は、所望により晶析することができる。
【0032】
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類及び芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、ニトリル類及びエーテル類が挙げられ、アセトニトリルがより好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[4]の化合物に対して1~100倍量(v/w)が好ましく、1~10倍量(v/w)がより好ましい。
【0033】
この反応において使用されるメタンスルホン酸無水物の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましい。
【0034】
この反応において、所望により使用される塩基としては、たとえば、ピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基;ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムなどの無機塩基などが挙げられる。
好ましい塩基としては、有機塩基が挙げられ、ピリジン及び2-ピコリンがより好ましく、ピリジンがよりさらに好ましい。
所望により使用される塩基の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましく、1~2倍モルがより好ましい。
【0035】
この反応は、0~150℃、好ましくは、0~30℃、より好ましくは、0~10℃で30分間~48時間、好ましくは、1~10時間実施すればよい。
【0036】
得られた式[1]の化合物を所望により晶析する場合の晶析方法は、特に限定されないが、式[1]の化合物の溶液を調製後、溶媒の留去による晶析、溶媒の冷却による晶析及び貧溶媒添加による晶析などが挙げられ、溶媒の冷却による晶析が好ましい。
晶析で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類及び芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、芳香族炭化水素類及びアルコール類が挙げられ、トルエン及び2-プロパノールがより好ましく、トルエン及び2-プロパノールの混合溶媒がよりさらに好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[4]の化合物に対してトルエンが0.5~10倍量(v/w)が好ましく、1~3倍量(v/w)がより好ましい。また、2-プロパノールが0.5~10倍量(v/w)が好ましく、1~5倍量(v/w)がより好ましい。
トルエン及び2-プロパノールの体積比は、特に限定されないが、2-プロパノール/トルエンが1~5が好ましく、1~2がより好ましい。
【0037】
[製造法3B]
【化5】
【0038】
式[1]の化合物は、式[4]の化合物を溶媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、メタンスルホニルクロリドと反応させた後、クエンチ剤を加え、クエンチ処理し、ついで、溶媒の存在下、無機塩基の存在下又は不存在下、有機塩基と反応させ、晶析させることにより得ることができる。
得られた式[1]の化合物は、所望により晶析することができる。
【0039】
(1)メタンスルホニルクロリドとの反応工程
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類及び芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。好ましい溶媒としては、ニトリル類及びエーテル類が挙げられ、アセトニトリルがより好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[4]の化合物に対して1~100倍量(v/w)が好ましく、1~10倍量(v/w)がより好ましい。
【0040】
この反応において使用されるメタンスルホニルクロリドの使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましい。
【0041】
この反応において所望により使用される塩基としては、たとえば、ピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムなどの無機塩基などが挙げられる。好ましい塩基としては、有機塩基が挙げられ、ピリジン及び2-ピコリンがより好ましく、ピリジンがよりさらに好ましい。
所望により使用される塩基の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モル、好ましくは、1~10倍モル、より好ましくは、1~2倍モルであればよい。
【0042】
この反応は、0~150℃、好ましくは、0~50℃、より好ましくは、20~30℃で30分間~48時間、好ましくは、1~24時間実施すればよい。
【0043】
クエンチ処理において使用されるクエンチ剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び2-プロパノールなどのアルコール類、メチルアミン、エチルアミン、モルホリン及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類、アンモニアが挙げられる。
好ましいクエンチ剤としては、アルコール類及びアミン類が挙げられ、メタノール及びN,N-ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、N,N-ジイソプロピルエチルアミンがよりさらに好ましい。
クエンチ剤の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モル、好ましくは、1~10倍モル、より好ましくは、1~2倍モルであればよい。
【0044】
(2)有機塩基との反応工程
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類及び芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは、混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アミド類が挙げられ、N,N-ジメチルアセトアミドがより好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[4]の化合物に対して1~100倍量(v/w)が好ましく、1~10倍量(v/w)がより好ましい。
【0045】
この反応において使用される有機塩基としては、たとえば、ピリジン、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン及び4-メチルモルホリンなどが挙げられる。
好ましい有機塩基としては、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、トリエチルアミン及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられ、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンがより好ましい。
有機塩基の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モルであればよく、1~10倍モルが好ましく、1~2倍モルがより好ましい。
【0046】
この反応において、所望により使用される無機塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム及びリン酸水素二カリウムなどの無機塩基が挙げられる。
好ましい無機塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられ、炭酸カリウムがより好ましい。
無機塩基の使用量は、式[4]の化合物に対して1~100倍モル、好ましくは、1~10倍モル、より好ましくは1~2倍モルであればよい。
【0047】
この反応は、0~200℃、好ましくは、50~150℃、より好ましくは、70~100℃で30分間~48時間、好ましくは、5~24時間実施すればよい。
【0048】
得られた式[1]の化合物を所望により晶析する場合の晶析方法は、特に限定されないが、式[1]の化合物の溶液を調製後、溶媒の留去による晶析、溶媒の冷却による晶析及び貧溶媒添加による晶析などが挙げられ、溶媒の冷却による晶析が好ましい。
晶析で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類、スルホキシド類及び芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、芳香族炭化水素類及びアルコール類が挙げられ、トルエン及び2-プロパノールがより好ましく、トルエン及び2-プロパノールの混合溶媒がよりさらに好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、式[4]の化合物に対してトルエンが0.5~10倍量(v/w)が好ましく、1~3倍量(v/w)がより好ましい。また、2-プロパノールが0.5~10倍量(v/w)が好ましく、1~5倍量(v/w)がより好ましい。
トルエン及び2-プロパノールの体積比は、特に限定されないが、2-プロパノール/トルエンが1~5が好ましく、1~2がより好ましい。
【0049】
本製造法は、カラム精製が不要であり、危険な試薬を使用せず、2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼンから非単離で化合物Aを製造することも可能であり、収率が高く、生産性が極めて高い製造法である。
さらに、本製造法は、化合物Bの含有率が低く、純度が極めて高い化合物Aを製造することができ、安全性の観点からも極めて有用である。
【0050】
次に、本発明を試験例、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
高速液体クロマトグラフィー(LC-2010CHT、島津製作所)の測定条件を以下に示す。
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:230nm
カラム:TSKgel OSD-80T、粒子径5μm、内径4.6×長さ150mm
カラム温度:35℃
移動相:水/アセトニトリル/1 mol/L酢酸/1 mol/L 酢酸・トリエチルアミン溶液の混液(体積比99:90:10:1)
流量:1.0mL/分
【0052】
試験例1
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4及び比較例1で得られた化合物Aの純度及び化合物Aに含まれる化合物Bの含有率を測定した。
化合物Aの純度は、面積百分率法を用い、得られたピークの合計面積のうち化合物Aの面積の割合を用い、定量した。 化合物Bの含有率は、化合物A及び化合物Bの高速液体クロマトグラフィーで測定した結果の面積%を使用し、以下の式で求めた。
なお、化合物Aの保持時間は、10.4分、化合物Bの保持時間は、16.9分であった。
化合物Bの含有率(ppm)=(Ai/W)÷{(As/Ws)×10000}×106
Ws:化合物Bの秤取量(mg)
:化合物Aの秤取量(mg)
Ai:試料溶液中の化合物Bのピーク面積
As:化合物B溶液(0.1μg/mL)中の化合物Bピーク面積
結果を以下に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
つぎに、本発明を参考例及び実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
比較例1は、特許文献1の参考例5(2)に記載の製造法と同様にして実施した。
種晶は、特許文献1記載の方法と同様にして得られた結晶を使用した。
【0055】
実施例1
【化6】

(1)2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼン51.00g、フェノール38.38g、48%水酸化カリウム水溶液41.32g、N,N-ジメチルアセトアミド51mL及びトルエン255mLの混合物を窒素雰囲気下、還流するまで加熱し、同温度でディーン・スターク装置を用いて水を除去しながら9時間30分撹拌した。反応混合物を80℃に冷却し、水102mLを加え、60~80℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に水51mL及び48%水酸化カリウム水溶液41.32gを加え、60~80℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に2-プロパノール51mLを加え、20~30℃に冷却し、溶液を得た。
(2)トリエチルアミン48.15g及び2-プロパノール20mLの混合物を窒素雰囲気下、0~10℃に冷却し、ギ酸43.80gを50分間かけて滴下し、同温度で20分間撹拌し、ギ酸-トリエチルアミン溶液を得た。(1)で得られた溶液に2-プロパノール15.5mL及び5%パラジウム炭素2.55gを加え、窒素雰囲気下、75℃に加熱し、ギ酸-トリエチルアミン溶液を3時間かけて滴下し、70~80℃で2時間30分間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル102mLを添加し、35~45℃に冷却後、不溶物をろ去し、残渣を酢酸エチル51mL及び水153mLで洗浄した。ろ液及び洗浄液を併せ、40℃に加熱し、35~45℃で15分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、20~30℃に冷却後、5-メトキシ-2-フェノキシアニリンの懸濁液を得た。
(3) (2)で得られた懸濁液の19.6%を分取し、窒素雰囲気下、0~10℃に冷却し、ピリジン5.69gを加え、メタンスルホン酸無水物11.61g及びアセトニトリル20mLの混合溶液を1時間かけて滴下し、0~5℃で3時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル20mL及び水20mLを加え、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に酢酸エチル20mL及び水20mLを加え、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、2-プロパノール30mL及びトルエン14mLを加え、50~60℃に加熱し、析出した固体を溶解させた。反応混合物を45℃に冷却した後、種晶10mgを加え、40~45℃で30分間撹拌した。反応混合物を20~30℃に冷却した後、同温度で25分間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却した後、同温度で25分間撹拌した。反応混合物を-20~-10℃に冷却した後、同温度で1時間撹拌した。固形物をろ取し、2-プロパノール20mLで洗浄し、淡赤色固体のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド14.32gを得た。(収率92%)
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.94 (3H, s), 3.81 (3H, s), 6.66 (1H, dd, J=8.8, 2.8 Hz), 6.78 (1H, br s), 6.87-6.97(3H, m), 7.06-7.14 (1H, m), 7.25 (1H, d, J=2.8), 7.28-7.37 (2H, m).
【0056】
実施例2
【化7】

5-メトキシ-2-フェノキシアニリン0.50g及びアセトニトリル2.5mLの混合物を窒素雰囲気下、0~10℃に冷却し、ピリジン282μLを添加後、メタンスルホン酸無水物0.42gのアセトニトリル2.5mL溶液を滴下し、0~10℃で2時間40分間撹拌した。反応混合物にメタンスルホン酸無水物40mgを添加し、0~10℃で5時間20分間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル10mL及び10%塩化ナトリウム水10mLを加え、0~10℃で撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を水で洗浄後、減圧下で溶媒を留去し、2-プロパノール3mLを添加し、20~30℃で45分間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却した後、同温度で30分間撹拌した。固形物をろ取し、2-プロパノール1mLで2回洗浄し、白色固体のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド0.59gを得た。(収率87%)
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.94 (3H, s), 3.81 (3H, s), 6.66 (1H, dd, J=8.8, 2.8 Hz), 6.78 (1H, br s), 6.87-6.97(3H, m), 7.06-7.14 (1H, m), 7.25 (1H, d, J=2.8), 7.28-7.37 (2H, m).
【0057】
実施例3
【化8】

(1)2-クロロ―5-メトキシニトロベンゼン20.00g、フェノール15.05g、48%水酸化カリウム水溶液16.20g、N,N-ジメチルアセトアミド20mL及びトルエン100mLの混合物を窒素雰囲気下、還流するまで加熱し、同温度でディーン・スターク装置を用いて水を除去しながら9時間撹拌した。反応混合物を80℃に冷却し、水40mLを加え、60~80℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に水20mL及び48%水酸化カリウム水溶液16.20gを加え、60~80℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に2-プロパノール20mLを加え、溶液を得た。
(2)トリエチルアミン18.88g及び2-プロパノール10mLの混合物を窒素雰囲気下、0~10℃に冷却し、ギ酸17.18gを10分間かけて滴下し、同温度で15分間撹拌し、ギ酸-トリエチルアミン溶液を得た。(1)で得られた溶液に2-プロパノール10mL及び5%パラジウム炭素0.89gを加え、窒素雰囲気下、75℃に加熱し、ギ酸-トリエチルアミン溶液を1時間40分間かけて滴下し、70~80℃で3時間20分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、同温度にて一晩静置した。反応混合物を35~45℃に加熱した後、酢酸エチル40mLを添加し、不溶物をろ去し、残渣を酢酸エチル30mL及び水60mLで洗浄した。ろ液及び洗浄液を併せ、40℃に加熱し、35~45℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、20~30℃に冷却し、溶液を得た。
(3) (2)で得られた溶液にアセトニトリル80mL、ピリジン13.49gを加え、20~30℃でメタンスルホニルクロリド14.66gを15分間かけて滴下し、同温度で6時間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却し、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン16.34gを40分間かけて滴下し、0~10℃で1時間30分間撹拌し、同温度で一晩静置した。反応混合物に酢酸エチル200mL、10%塩化ナトリウム水溶液200mL及び濃塩酸30mLを加え、pHを1.05に調整後、15~25℃で30分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に10%塩化ナトリウム水溶液160mL及び濃塩酸0.5mLを加え、pHを1.33に調整後、15~25℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液200mLを加え、15~25℃で15分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液80mLを加え、15~25℃で50分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、N,N-ジメチルアセトアミド80mLを加え、減圧下で溶媒を留去した。反応混合物を20~30℃に冷却後、室温で一晩静置した。
(4) (3)で得られた反応混合物に炭酸カリウム14.74g、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン11.96g及びN,N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、85℃に加熱し、80~90℃で12時間撹拌した。反応混合物を20~30℃に冷却した後、室温下で一晩静置した。反応混合物に酢酸エチル200mL、10%塩化ナトリウム水溶液200mL及び濃塩酸40mLを加え、pHを1.17に調整後、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に10%塩化ナトリウム水溶液200mL及び濃塩酸2mLを加え、pHを1.08に調整後、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液200mLを加え、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に水200mLを加え、20~30℃で45分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、20~30℃に冷却した後、室温下で一晩静置した。反応混合物にトルエン40mL及び2-プロパノール60mLを加え、60℃に加温し、50~60℃で10分間撹拌し、析出した固体を溶解させた。反応混合物を50℃に冷却した後、種晶20mgを加え、40~50℃で1時間撹拌した。反応混合物を20~30℃に冷却した後、同温度で1時間30分間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却した後、同温度で2時間撹拌した。反応混合物を-25~-15℃に冷却した後、同温度で1時間撹拌した。固形物をろ取し、2-プロパノール40mLで洗浄し、淡赤色固体のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド29.32gを得た。(収率94%)
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.94 (3H, s), 3.81 (3H, s), 6.66 (1H, dd, J=8.8, 2.8 Hz), 6.78 (1H, br s), 6.87-6.97(3H, m), 7.06-7.14 (1H, m), 7.25 (1H, d, J=2.8), 7.28-7.37 (2H, m).
【0058】
実施例4
【化9】

(1)5-メトキシ-2-フェノキシアニリン0.50g、ピリジン301μL及びアセトニトリル2.5mLの混合物を窒素雰囲気下、20~30℃でメタンスルホニルクロリド216μLを添加し、同温度で17時間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却し、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン440μLを6分間かけて滴下し、0~10℃で2時間50分間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル5mL及び10%塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、6mol/L塩酸を用いてpHを0.75に調整し、20~30℃で20分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に10%塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、6mol/L塩酸を用いてpHを0.93に調整し、有機層を分取した。得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムを添加し、固形物を除去した。得られた溶液を減圧下で溶媒を留去し、溶液を得た。
(2) (1)で得られた溶液に、炭酸カリウム0.32g、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン0.13g、N,N-ジメチルアセトアミド3.4mLを加え、85℃に加熱し、85℃で12時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、室温下で一晩静置した。反応混合物に酢酸エチル5mL、10%塩化ナトリウム水溶液5mL及び6mol/L塩酸1.4mLを加え、pHを0.96に調整後、有機層を分取した。得られた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液及び5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムを添加し、固形物を除去した。得られた溶液を減圧下で溶媒を留去し、2-プロパノール3mLを加え、室温下で1時間20分間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却した後、同温度で撹拌した。固形物をろ取し、2-プロパノール1mLで3回洗浄し、白色固体のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド0.57gを得た。(収率84%)
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.94 (3H, s), 3.81 (3H, s), 6.66 (1H, dd, J=8.8, 2.8 Hz), 6.78 (1H, br s), 6.87-6.97(3H, m), 7.06-7.14 (1H, m), 7.25 (1H, d, J=2.8), 7.28-7.37 (2H, m).
【0059】
比較例1
【化10】

5-メトキシ-2-フェノキシアニリン10.00g、ピリジン16.61g及び塩化メチレン100mLの混合物を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、5~10℃でメタンスルホニルクロリド9.10gを10分間かけて滴下し、5~10℃で1時間30分間撹拌した。反応混合物を減圧下で溶媒を留去し、酢酸エチル100mL及び水50mLを加え、4mol/L塩酸を用いてpHを1.92に調整し、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に水50mLを加え、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に飽和塩化ナトリウム水50mLを加え、20~30℃で10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に無水硫酸マグネシウム10gを添加し、固形物を除去した。得られた溶液を減圧下で溶媒を留去し、室温下で一晩静置した。反応混合物に2-プロパノール50mLを添加し、60~80℃に加温し、固形物を溶解させた後に、20~30℃に冷却し、同温度で1時間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却した後、同温度で1時間20分間撹拌した。固形物をろ取し、2-プロパノール20mLで洗浄し、淡赤色固体のN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド13.05gを得た。(収率96%)
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.94 (3H, s), 3.81 (3H, s), 6.66 (1H, dd, J=8.8, 2.8 Hz), 6.78 (1H, br s), 6.87-6.97(3H, m), 7.06-7.14 (1H, m), 7.25 (1H, d, J=2.8), 7.28-7.37 (2H, m).
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製造方法は、不純物の含有率が低減されたN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドの製造方法として有用である。
さらに、本発明の不純物が低減されたN-(5-メトキシ―2-フェノキシフェニル)メタンスルホンアミドは、高純度なイグラチモドの原薬の原料として有用である。