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特許7453379方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法
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  • 特許-方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/00 20060101AFI20240312BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20240312BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20240312BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20240312BHJP
   C22C 38/60 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C23C22/00 A
C21D8/12 B
H01F1/147 183
C22C38/00 303U
C22C38/60
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022537374
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2020018617
(87)【国際公開番号】W WO2021125863
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172474
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ス
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン-ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヨン
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-061318(JP,A)
【文献】特開平05-290626(JP,A)
【文献】特開平07-310188(JP,A)
【文献】特開平08-035014(JP,A)
【文献】特開平09-041153(JP,A)
【文献】特表2019-505664(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117673(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0371576(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0083295(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103014285(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12
C21D 9/46
C22C 38/00
38/60
C23C 22/00 - 22/86
H01F 1/12 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物を含み、
前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上であり、
前記複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含む、ことを特徴とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項2】
前記複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gであり、平均粒径が1~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項3】
前記複合金属酸化物は、相対誘電率(Dielectric constant)値が1~30である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項4】
前記金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上である、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項5】
前記金属Mは、イオン半径が30~100pmである、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項6】
前記焼鈍分離剤組成物は、600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が10~900nmである、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項7】
方向性電磁鋼板基材の一面または両面に被膜が位置し、
前記被膜は、Mg:1~20重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなり、
前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である、ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項8】
前記被膜上に位置するセラミック層をさらに含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項9】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであり、セラミック層は厚さが0.5~5μmである、ことを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項10】
鋼スラブを準備する段階、
前記鋼スラブを加熱する段階、
前記加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、
前記1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および
前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記焼鈍分離剤は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物を含み、前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上であり、前記複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含む、ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物、および
ムライトを含み、
前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である、ことを特徴とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項12】
前記複合金属酸化物および前記ムライトの合計量100重量部に対して前記複合金属酸化物10~90重量部および前記ムライト10~90重量部を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項13】
前記複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gであり、平均粒径が1~500nmであり、
前記ムライトは、比表面積が5~350m/gであり、平均粒径が1~300nmである、ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項14】
前記金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上である、ことを特徴とする請求項11~請求項13のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項15】
方向性電磁鋼板基材の一面または両面に被膜が位置し、
前記被膜は、Mg:1~20重量%、Al:0.5~10重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなり、ムライトを5~45面積%含み、
前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である、ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項16】
前記被膜上に位置するセラミック層をさらに含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項17】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであり、前記セラミック層は厚さが0.5~5μmである、ことを特徴とする請求項16に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項18】
鋼スラブを準備する段階、
前記鋼スラブを加熱する段階、
前記加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、
前記1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および
前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記焼鈍分離剤は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物、およびムライトを含み、
前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である、ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。具体的に、複合金属酸化物を添加することによって、ベース被膜層の絶縁特性および方向性電磁鋼板の磁性を改善した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、方向性電磁鋼板とは、鋼板にSi成分を含有したものであり、結晶粒の方位が{110}<001>方向に整列した集合組織を有しており、圧延方向に極めて優れた磁気的特性を有する電磁鋼板をいう。
一般に知られた方向性電磁鋼板の場合、フォルステライト(Forsterite、MgSiO)系ベース被膜(ベースコーティング層)の上に絶縁層を形成し、このような絶縁層の熱膨張係数の差を利用して鋼板に引張応力を付与することによって、鉄損を改善し、磁気変形に起因した騒音減少効果を図っているが、最近、要求されている高級方向性電磁鋼板での特性水準を満足させるには限界がある。
【0003】
方向性電磁鋼板の電力損失を最小化するために、その表面に絶縁被膜を形成することが一般的であり、この時、絶縁被膜は、基本的に電気絶縁性が高く、素材との接着性に優れ、外観に欠陥がない均一な色を有さなければならない。これと共に、最近、変圧機騒音に対する国際規格強化および関連業界の競争深化によって、方向性電磁鋼板の絶縁被膜を騒音を低減するために、磁気変形(磁歪)現象に対する研究が必要であるのが実情である。具体的に、変圧機鉄芯で使用される電磁鋼板に磁場が印加されると収縮と膨張を繰り返して震え現象が誘発され、このような震えにより変圧機で振動と騒音が引き起こされる。一般に知られた方向性電磁鋼板の場合、鋼板およびフォルステライト(Forsterite)系ベース被膜の上に絶縁被膜を形成し、このような絶縁被膜の熱膨張係数の差を利用して鋼板に引張応力を付与することによって、鉄損を改善し、磁気変形に起因した騒音減少効果を図っているが、最近、要求されている高級方向性電磁鋼板での騒音水準を満足させるには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。具体的に、複合金属酸化物を添加することによって、ベース被膜層の絶縁特性および方向性電磁鋼板の磁性を改善した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物を含み、前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上であり、前記複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含む。
【0006】
前記複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gであり、平均粒径が1~500nmでありうる。
【0007】
前記複合金属酸化物は、相対誘電率(Dielectric constant)値が1~30でありうる。
【0008】
前記金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上でありうる。
【0009】
前記金属Mは、イオン半径が30~100pmでありうる。
【0010】
前記焼鈍分離剤組成物は、600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が10~900nmでありうる。
【0011】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板基材の一面または両面に被膜が位置することができる。
【0012】
前記被膜は、Mg:1~20重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなることができる。
【0013】
前記被膜上に位置するセラミック層をさらに含むことができる。
【0014】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであり、前記セラミック層は厚さが0.5~5μmでありうる。
【0015】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階、前記鋼スラブを加熱する段階、前記加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階、前記熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階、前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、前記1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、前記焼鈍分離剤は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物を含み、金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上であり、前記複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含む。
【0016】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物、およびムライトを含み、前記金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である。
【0017】
前記複合金属酸化物および前記ムライトの合計量100重量部に対して前記複合金属酸化物10~90重量部および前記ムライト10~90重量部を含むことができる。
【0018】
前記複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gであり、平均粒径が1~500nmであり、前記ムライトは、比表面積が5~350m/gであり、平均粒径が1~300nmでありうる。
【0019】
前記金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上でありうる。
【0020】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板基材の一面または両面にムライトを含む被膜が位置する。
【0021】
被膜は、Mg:1~20重量%、Al:0.5~10重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20%重量以下および残部Oおよび不可避な不純物からなり、ムライトを5~45面積%含むことができる。
【0022】
前記被膜上に形成されたセラミック層をさらに含むことができる。
【0023】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであり、前記セラミック層は厚さが0.5~5μmでありうる。
【0024】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階、前記鋼スラブを加熱する段階、前記加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階、前記熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階、前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、前記1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、前記焼鈍分離剤は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物、およびムライトを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤は、複合金属酸化物を添加することによって、ベース被膜層の絶縁特性を向上させることができる。また方向性電磁鋼板の磁性を改善することができる。
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤は、ベース被膜層の絶縁特性を向上させてベース被膜層上に位置するセラミック層の厚さを低減することができ、これによって方向性電磁鋼板の占積率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図である。
図2】本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用するが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用する。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
【0028】
ここで使用する専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用する単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用する「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0029】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは直ちに他の部分の上にあるか、またはその間に他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0030】
特に定義しなかったが、ここで使用する技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0031】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0032】
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0033】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤A
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、Mgおよび金属Mを含む複合金属酸化物を含み、金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上であり、複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含む。
【0034】
本発明の一実施形態において複合金属酸化物は、Mgと金属Mが化学的に結合した酸化物である。つまり、MgOのMg元素位置に金属Mが置換結合された化合物として、MgOと金属Mの酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合と区分される。複合金属化合物は、下記の[化1]のように表され得る。
[化1]
Mg1-X
この時、Xは、複合金属化合物内で金属Mの相対的量を示し、Xは5~95である。
【0035】
本発明の一実施形態で複合金属酸化物を含むことによって、MgOと金属Mの酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合に比べて金属Mを多量添加することができ、均一な被膜を形成する面で有利である。
【0036】
MgOと金属M酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合、M酸化物の添加量が制約的であり、被膜成分の不均一性を招いて均一な特性を付与することが困難な問題点がある。またM酸化物が過量で含まれる場合、水と混合時に粘度が急激に増加して時間の経過により固体化して作業が困難であり、作業が可能であっても被膜成分の不均一性を誘発して表面欠陥が発生する問題点がある。本実施形態で複合酸化物は、MgおよびM金属成分が原子単位で均一に分布しており、水と混合して製造時に粘度の経時変化が少なくて作業が容易であり、鋼板に塗布時に非常に均一な被膜を形成することができる。均一に形成された被膜は、幅方向および長さ方向に同一な磁気的特性と表面特性の付与が可能であり、表面が非常に美麗である。
【0037】
複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gでありうる。比表面積が過度に小さい場合、反応性が低下して不均一な被膜が形成される問題が発生することがある。比表面積が過度に大きい場合、水と混合して攪拌する場合、粘度が急激に増加して作業が困難な問題が発生することがある。より具体的に複合金属酸化物は比表面積が50~300m/gでありうる。
【0038】
複合金属酸化物の平均粒径は1~500nmでありうる。平均粒径が過度に小さい場合、複合金属酸化物間の凝集により焼鈍分離剤組成物の均一な塗布が難しいこともある。平均粒径が過度に大きい場合、ベース被膜の表面粗さが粗くなって表面欠陥が発生することがある。より具体的に複合金属酸化物の平均粒径は10~300nmでありうる。焼鈍分離剤が溶媒を含むスラリー形態で存在する場合、溶媒を100℃以下の温度で除去して測定した比表面積と平均粒径が前述した範囲でありうる。
【0039】
複合金属酸化物は、相対誘電率(Dielectric constant)値が1~30でありうる。複合金属酸化物の相対誘電率が過度に低い場合、複合酸化物内部に多数の気孔を含有しており、密着性が劣位にある問題が発生することがある。複合金属酸化物の相対誘電率が過度に高い場合、ベース被膜の絶縁特性の向上が不足することがある。より具体的に相対誘電率値は5~20でありうる。この時、相対誘電率は25℃1MHz条件で測定することができる。
【0040】
複合金属酸化物内でMgは、ベース被膜にMgを供給する役割を果たす。
複合金属酸化物内で金属Mは、磁性を向上させ、絶縁性を付与した役割を果たす。金属Mは、Mgと原子半径が類似し、電気陰性度が類似する元素が適切である。具体的に金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上でありうる。より具体的に金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上でありうる。
【0041】
複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部含む。
金属Mが過度に少なく含まれる場合、目的とするベース被膜の絶縁性向上が不足することがある。金属Mが過度に多く含まれる場合、Mgが相対的に少なくなって、密着性が劣位となる問題が発生することがある。より具体的に金属Mを60~80重量部およびMgを20~40重量部を含むことができる。
具体的に金属Mは、イオン半径が30~100pmでありうる。
【0042】
焼鈍分離剤組成物は、600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が10~900nmでありうる。平均結晶粒径が過度に小さい場合、粘度が急激に増加して量産適用が困難な問題がありうる。平均結晶粒径が過度に大きい場合、均一な被膜形成が困難な問題がありうる。より具体的に600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が100~750nmでありうる。
【0043】
複合金属酸化物の製造方法は特に制限されない。例えば、Mg前駆体および金属Mの前駆体が含まれている溶液に触媒を添加し、焼成工程を通じて製造することができる。または固体状態で混合された物質をミリングして製造することができる。または金属アルコキシドと水を反応させて加水分解および縮合反応により金属-酸素間の結合を形成して製造することができる。または高温、高圧下で金属塩が含まれている溶媒を加熱しながら溶解により溶媒内部に金属酸化粒子を形成および再結晶化により製造することができる。
【0044】
焼鈍分離剤組成物は、前述した複合金属酸化物以外に他の成分をさらに含むことができる。
一例として、MgOをさらに含むことができる。本発明の一実施形態で複合金属酸化物内のMgOを通じてMgを供給することができるため、MgOは微量含むことができる。MgOは前述した複合金属酸化物の製造過程中に未反応物で含まれ得る。具体的に焼鈍分離剤固形分100重量%に対して5重量%以下に含まれ得る。より具体的に1重量%以下に含まれ得る。
【0045】
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤組成物は、セラミック粉末を固形分100重量%に対して0.5~10重量%さらに含むことができる。セラミック粉末は、MnO、Al、SiO、TiOおよびZrOのうちで選択される1種以上を含むことができる。セラミック粉末を適正量さらに含む場合、形成される被膜の絶縁特性がより向上することができる。
【0046】
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤組成物は、Sb(SO、SrSO、BaSOまたはこれらの組み合わせを固形分100重量%に対して1~10重量%さらに含むことができる。Sb(SO、SrSO、BaSOまたはこれらの組み合わせを適正量さらに含むことによって、表面光沢に優れ、粗さが非常に美麗な方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0047】
焼鈍分離剤組成物は、固形物らの均一な分散および容易な塗布のために溶媒をさらに含むことができる。溶媒としては、水、アルコールなどを用いることができ、固形分100重量部に対して300~1000重量部を含むことができる。このように焼鈍分離剤組成物は、スラリー形態でありうる。
【0048】
方向性電磁鋼板A
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板100は、方向性電磁鋼板基材10の一面または両面に被膜層20が位置する。図1は本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図を示す。図1では方向性電磁鋼板基材10の上面に被膜層20が位置するものを示す。
【0049】
本発明の一実施形態で被膜20は被膜は、Mg:1~20重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなる。このような特性は、前述したように焼鈍分離剤組成物に複合金属酸化物を含むことによって発現する。複合金属酸化物でないMgOを含む場合、前述した金属Mの含有量を満足せず、適切な磁性向上および絶縁特性が現れない。または複合金属酸化物ではなく、MgOおよび金属Mの酸化物が別途の化合物として焼鈍分離剤に含まれる場合にも、金属Mを添加するに限界があり、前記特性が現れない。または複合金属酸化物内の金属Mが過度に少なく含まれる場合、MgOおよび金属Mの酸化物を別途に添加した場合と同様に、金属Mが過度に少なく、磁性向上および絶縁特性が現れない。
【0050】
被膜は、Mg:1~20重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなる。
Mgおよび金属Mは、複合金属酸化物内のMgおよび金属Mに由来する。
【0051】
金属Mが過度に少ない場合、金属Mの添加によるベース被膜の絶縁性向上効果を適切に得ることができない。金属Mが過度に多い場合、製造費用が増加して販売競争力が低下する問題が発生することがある。金属Mが2種以上の元素である場合、前述した含有量範囲は2種以上の元素の合計を意味する。より具体的に被膜20内の金属Mは17.5~35重量%でありうる。
【0052】
Si、Feは基材内に由来することができる。Oの場合、焼鈍分離剤成分に由来したり、熱処理過程で浸透することができる。その他の被膜20は、炭素(C)等の不純物成分からなることもできる。
【0053】
被膜20は、厚さが0.1~10μmでありうる。被膜20の厚さが過度に薄ければ、被膜張力付与能が低下して鉄損が劣位にある問題が生じることがある。被膜20の厚さが過度に厚ければ、点滴率が低下して変圧機特性が劣位にある問題点が起きることがある。したがって、被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的に被膜20の厚さは0.8~6μmでありうる。
【0054】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板100は、被膜20上に位置するセラミック層30をさらに含むことができる。図1では被膜20上にセラミック層30がさらに形成された一例を示す。
【0055】
セラミック層30の厚さは0.5~5μmでありうる。セラミック層30の厚さが過度に薄ければ、セラミック層30の絶縁効果が少なく現れる問題が生じることがある。セラミック層30の厚さが過度に厚ければ、セラミック層30の密着性が低くなり、剥離が起きることがある。したがって、セラミック層30の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的にセラミック層30の厚さは0.8~3.2μmでありうる。本発明の一実施形態で被膜20の絶縁特性が強化されて、セラミック層30の厚さを比較的に薄く構成することができる。
【0056】
セラミック層30は、セラミック粉末を含むことができる。セラミック粉末は、Al、SiO、TiO、ZrO、Al・TiO、Y、9Al・2B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちから選択される1種以上になり得る。セラミック粉末の粒径は2~900nmになり得る。セラミック粉末の粒径が過度に小さければ、セラミック層の形成が困難になり得る。セラミック粉末の粒径が過度に大きいと、表面粗さが粗くなって表面欠陥が発生することがある。したがってセラミック粉末の粒径を前述した範囲に調節することができる。
【0057】
セラミック粉末は、球状、板状型、および針状型を含む群より選択されたある一つ以上の形態でありうる。
【0058】
セラミック層30は、金属リン酸塩をさらに含むことができる。金属リン酸塩は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、AlおよびMnのうちで選択される1種以上を含むことができる。金属リン酸塩をさらに含む場合、セラミック層30の絶縁性がより向上する。
【0059】
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなることもある。
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなるものであり、金属水酸化物は、Ca(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、B(OH)、Co(OH)およびCr(OH)を含む群より選択された少なくとも1種以上でありうる。
【0060】
具体的に、前記金属水酸化物の金属原子は、リン酸のリンと置換反応して単一結合、二重結合、または三重結合を形成してなるものであり、未反応遊離リン酸(HPO)の量が25重量%以下である化合物からなるものでありうる。
【0061】
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなるものであり、リン酸に対する金属水酸化物の重量比率は1:100~40:100で表示されるものでありうる。
【0062】
金属水酸化物が過度に多く含まれる場合には化学的な反応が完結されず、沈殿物ができる問題が発生することがあり、金属水酸化物が過度に少なく含まれる場合には耐食性が劣位にある問題が発生することがあるため、前記のように範囲を限定することができる。
【0063】
本発明の一実施形態で方向性電磁鋼板基材10の成分とは関係なく焼鈍分離剤組成物および被膜20の効果が現れる。以下、補充的に方向性電磁鋼板基材10の成分について説明する。
【0064】
方向性電磁鋼板基材10は、シリコン(Si):2.8~4.5重量%、アルミニウム(Al):0.020~0.040重量%、マンガン(Mn):0.01~0.20重量%およびアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)またはこれらの組み合わせを0.01~0.15重量%含み、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなることができる。
【0065】
方向性電磁鋼板の製造方法A
図2は本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートを概略的に示す。図2の方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートは、単に本発明を例示するためものであり、本発明がここに限定されるのではない。したがって方向性電磁鋼板の製造方法は多様に変形することができる。
【0066】
図2に図示したように、方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階(S10)、鋼スラブを加熱する段階(S20)、加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階(S30)、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階(S40)、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階(S50)、1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階(S60)、および焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階(S70)を含む。これ以外に、方向性電磁鋼板の製造方法は他の段階をさらに含むことができる。
【0067】
まず、段階(S10)では、鋼スラブを準備する。鋼スラブの成分については前述した方向性電磁鋼板の成分について具体的に説明したため、重複する説明は省略する。
【0068】
次に段階(S20)では、鋼スラブを加熱する。この時、スラブ加熱は1,200℃下で低温スラブ法で加熱することができる。
【0069】
次に、段階(S30)では、加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する。段階(S30)以後、製造された熱延板を熱延焼鈍することができる。
【0070】
次に、段階(S40)では、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する。段階(S40)は冷間圧延を1回実施したり、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施することができる。
【0071】
次に、段階(S50)では、冷延板を1次再結晶焼鈍する。この時、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階は、冷延板を同時に脱炭焼鈍および窒化焼鈍する段階を含んだり、脱炭焼鈍以降、窒化焼鈍する段階を含むことができる。
【0072】
次に、段階(S60)では、1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤については具体的に前述したため、重複する説明は省略する。
【0073】
焼鈍分離剤の塗布量は1~20g/mになることができる。焼鈍分離剤の塗布量が過度に少なければ、被膜形成が円滑に行われないことがある。焼鈍分離剤の塗布量が過度に多ければ、2次再結晶に影響を与え得る。したがって焼鈍分離剤の塗布量を前述した範囲に調節することができる。
【0074】
次に、段階(S70)では、焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する。2次再結晶焼鈍する過程で被膜20を形成するようになる。
【0075】
2次再結晶焼鈍時、1次亀裂温度は650~750℃、2次亀裂温度は1100~1250℃とすることができる。昇温区間の温度区間では15℃/hr条件で統制することができる。また、気体雰囲気は1次亀裂段階までは20~30体積%の窒素および70~80体積%の水素を含む雰囲気で行うことができ、2次亀裂段階には100%水素雰囲気で15時間維持した後に炉冷(furnace cooling)することができる。前述した条件を通じて被膜20が円滑に形成され得る。
【0076】
段階(S70)以後にセラミック層30を形成する段階をさらに含むことができる。セラミック層30に対しても具体的に前述したので、重複する説明は省略する。セラミック層30を形成する方法として、被膜20上にセラミック粉末を噴射してセラミック層を形成することができる。具体的にプラズマスプレーコーティング(Plasmaspray)、高速火炎スプレーコーティング(High velocity oxy fuel)、エアゾールディポジション(Aerosoldeposition)、低温スプレーコーティング(Coldspray)の方法を適用することができる。より具体的に、Ar、H、N、またはHeを含むガスを20~300kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末を供給してセラミック層を形成するプラズマスプレーコーティング方法を使用することができる。また、プラズマスプレーコーティング方法として、Ar、H、N、またはHeを含むガスを20~300kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末および溶媒の混合物サスペンション形態に供給してセラミック層30を形成することができる。この時、溶媒は水またはアルコールになることができる。
【0077】
また、セラミック層30を形成する方法として、セラミック粉末および金属リン酸塩を含むセラミック層形成組成物を塗布してセラミック層を形成する方法を使用することができる。
セラミック層30形成以降、必要に応じて磁区微細化を行える。
【0078】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤B
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物はMgおよび金属Mを含む複合金属酸化物、およびムライトを含み、金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上である。
【0079】
本発明の一実施形態で複合金属酸化物は、Mgと金属Mが化学的に結合した酸化物である。つまり、MgOのMg元素位置に金属Mが置換結合された化合物として、MgOと金属Mの酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合と区分される。複合金属化合物は、下記の[化1]のように表示され得る。
[化1]
Mg1-X
この時、Xは複合金属化合物内で金属Mの相対的量を示し、Xは45~95である。
【0080】
本発明の一実施形態で複合金属酸化物を含むことによって、MgOと金属Mの酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合に比べて均一な被膜を形成する面で有利である。
【0081】
MgOと金属M酸化物がそれぞれ別途に焼鈍分離剤組成物に含まれる場合、M酸化物の添加量が制約的であり、被膜成分の不均一性を招いて均一な特性を付与するのが困難な問題点がある。またM酸化物が過剰で含まれる場合、水と混合時に粘度が急激に増加して時間が経過することによって固体化して作業が困難であり、作業が可能であっても被膜成分の不均一性を誘発して表面欠陥が発生される問題点がある。本実施形態で複合酸化物は、MgおよびM金属成分が原子単位で均一に分布しており、水と混合して製造時に粘度の経時変化が少なくて作業が容易であり、鋼板に塗布時に非常に均一な被膜を形成することができる。均一に形成された被膜は、幅方向および長さ方向に同一な磁気的特性と表面特性付与が可能であり、表面が非常に美麗である。
【0082】
複合金属酸化物は、比表面積が30~500m/gでありうる。比表面積が過度に小さい場合、反応性が低下して不均一な被膜が形成される問題が発生することがある。比表面積が過度に大きい場合、水と混合して攪拌する場合、粘度が急激に増加して作業が困難な問題が発生することがある。より具体的に複合金属酸化物は、比表面積が50~300m/gでありうる。
【0083】
複合金属酸化物の平均粒径は1~500nmでありうる。平均粒径が過度に小さい場合、複合金属酸化物間の凝集によって焼鈍分離剤組成物の均一な塗布が難しいこともある。平均粒径が過度に大きい場合、ベース被膜の表面粗さが粗くなって表面欠陥が発生することがある。より具体的に複合金属酸化物の平均粒径は10~300nmでありうる。焼鈍分離剤が溶媒を含むスラリー形態で存在する場合、溶媒を100℃以下の温度で除去して測定した比表面積と平均粒径が前述した範囲でありうる。
【0084】
複合金属酸化物は、相対誘電率(Dielectric constant)値が1~30でありうる。複合金属酸化物の相対誘電率が過度に低い場合、複合酸化物内部に多数の気孔を含有しており、密着性が劣位にある問題が発生することがある。複合金属酸化物の相対誘電率が過度に高い場合、ベース被膜の絶特性向上が不足することがある。より具体的に相対誘電率値は5~20でありうる。この時、相対誘電率は25℃1MHz条件で測定することができる。
【0085】
複合金属酸化物内でMgは、ベース被膜にMgを供給する役割を果たす。
複合金属酸化物内で金属Mは、磁性を向上し、絶縁性を付与した役割を果たす。金属Mは、Mgと原子半径が類似し、電気陰性度が類似の元素が適切である。具体的に金属Mは、Be、Ca、Ba、Sr、Sn、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの1種以上でありうる。より具体的に金属Mは、Co、NiおよびMnのうちの1種以上でありうる。
【0086】
複合金属酸化物中のMgおよび金属Mの合計量100重量部に対してMgを5~55重量部および金属Mを45~95重量部を含むことができる。前述した場合とは異なり、ムライトを含む実施形態ではムライトによって被膜の絶縁性が補強されるため、金属Mを比較的に少なく含むことも可能である。
【0087】
金属Mが過度に少なく含まれる場合、目的とするベース被膜の絶縁性向上が不足することがある。金属Mが過度に多く含まれる場合、Mgが相対的に少なくなって、密着性が劣位となる問題が発生することがある。より具体的に金属Mを45~95重量部およびMgを5~55重量部を含むことができる。
具体的に金属Mは、イオン半径が30~100pmでありうる。
【0088】
焼鈍分離剤組成物は、600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が10~900nmでありうる。平均結晶粒径が過度に小さい場合、粘度が急激に増加して量産適用が困難な問題がありうる。平均結晶粒径が過度に大きい場合、均一な被膜形成が困難な問題がありうる。より具体的に600℃、非酸化性雰囲気で熱処理した後、平均結晶粒径が100~750nmでありうる。
【0089】
複合金属酸化物の製造方法は特に制限されない。例えば、Mg前駆体および金属Mの前駆体が含まれている溶液に触媒を添加し、焼成工程を通じて製造することができる。または固体状態で混合された物質をミリングして製造することができる。または金属アルコキシドと水を反応させて加水分解および縮合反応によって金属-酸素間の結合を形成して製造することができる。または高温、高圧下に金属塩が含まれている溶媒を加熱しながら溶解によって溶媒内部に金属酸化粒子を形成および再結晶化によって製造することができる。
【0090】
複合金属酸化物は、複合金属酸化物およびムライトの合計量100重量部に対して10~90重量部およびムライト10~90重量部を含むことができる。複合金属酸化物が過度に少なく含まれる場合、複合金属酸化物のMg量が少なくなって密着性が劣位となる問題がありうる。複合金属酸化物が過度に多く含まれる場合、相対的にムライトの含有量が少なくなって被膜の絶縁性向上が不足することがある。より具体的に複合金属酸化物は、複合金属酸化物およびムライトの合計量100重量部に対して30~90重量部およびムライト10~70重量部を含むことができる。
【0091】
ムライトは、シリカとアルミナの間に安定して存在する唯一の化合物であり、3Al・2SiO組成からなっている。ムライトは、熱膨張率が小さくて5×10-6/℃)被膜張力付与による鉄損改善が容易である。また、ムライトは弾性率が比較的低いため、耐熱衝撃抵抗に優れている。またムライトは、絶縁性付与にも有利である。
【0092】
ムライトは、比表面積が5~350m/gであり、平均粒径が1~300nmでありうる。
比表面積が過度に小さい場合、反応性が低下して不均一な被膜が形成される問題が発生することがある。比表面積が過度に大きい場合、水と混合して攪拌する場合、粘度が急激に増加して作業が困難な問題が発生することがある。より具体的に複合金属酸化物は、比表面積が50~300m/gでありうる。
【0093】
平均粒径が過度に小さい場合、ムライト間の凝集によって焼鈍分離剤組成物の均一な塗布が難しいこともある。平均粒径が過度に大きい場合、ベース被膜の表面粗さが粗くなって表面欠陥が発生することがある。より具体的にムライトの平均粒径は10~300nmでありうる。焼鈍分離剤が溶媒を含むスラリー形態で存在する場合、溶媒を100℃以下の温度で除去して測定した比表面積と平均粒径が前述した範囲でありうる。
【0094】
焼鈍分離剤組成物は、前述した複合金属酸化物およびムライト以外に他の成分をさらに含むことができる。
一例として、水酸化金属をさらに含むことができる。水酸化金属は、ムライトの表面と化学反応を通じて表面性質を疎水性から親水性に変化させる役割を果たす。したがってムライトの分散性を画期的に向上させて均一な被膜を形成するのを助ける。また、水酸化金属は、融点が低下して2次再結晶焼鈍工程で被膜形成温度が低くなって良好な品質の表面特性を確保することができる。また、低い温度領域で生成された被膜は2次再結晶形成に決定的な影響を与えるAlN系インヒビタの分解を抑制する効果があり、優れた磁性品質を確保することができる。
【0095】
具体的に焼鈍分離剤の固形分100重量%に対して水酸化20重量%以下にさらに含むことができる。水酸化金属が過度に多く含まれる場合、金属成分が内部に拡散して膜を形成して不均一な被膜が形成される問題が発生することがある。
【0096】
この時、水酸化金属は、Ni(OH)、Co(OH)、Cu(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Pd(OH)、In(OH)、Bi(OH)およびSn(OH)のうちで選択される1種以上を含むことができる。
【0097】
一例として、MgOをさらに含むことができる。本発明の一実施形態で複合金属酸化物内のMgOを通じてMgを供給することができるため、MgOは、微量で含むことができる。MgOは、前述した複合金属酸化物の製造過程中の未反応物で含まれ得る。具体的に焼鈍分離剤固形分100重量%に対して5重量%以下で含まれ得る。より具体的に1重量%以下に含まれ得る。
【0098】
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤組成物は、セラミック粉末を固形分100重量%に対して0.5~10重量%さらに含むことができる。セラミック粉末は、MnO、Al、SiO、TiOおよびZrOのうちで選択される1種以上を含むことができる。セラミック粉末を適正量さらに含む場合、形成される被膜の絶縁特性がより向上することができる。
【0099】
本発明の一実施形態による焼鈍分離剤組成物は、Sb(SO、SrSO、BaSOまたはこれらの組み合わせを固形分100重量%に対して1~10重量%さらに含むことができる。Sb(SO、SrSO、BaSOまたはこれらの組み合わせを適正量さらに含むことによって、表面光沢に優れ、粗さが非常に美麗な方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0100】
焼鈍分離剤組成物は、固形物の均一な分散および容易な塗布のために溶媒をさらに含むことができる。溶媒としては、水、アルコールなどを用いることができ、固形分100重量部に対して300~1000重量部を含むことができる。このように焼鈍分離剤組成物はスラリー形態でありうる。
【0101】
方向性電磁鋼板B
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板100は、方向性電磁鋼板基材10の一面または両面に被膜層20が位置する。図1は本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図を示す。図1では方向性電磁鋼板基材10の上面に被膜層20が位置するものを示す。
【0102】
本発明の一実施形態で被膜20は、金属Mを15~45重量%含む。このような特性は前述したように焼鈍分離剤組成物に複合金属酸化物を含むことによって発現する。複合金属酸化物ではなく、MgOを含む場合、磁性向上および絶縁性特性が現れない。または複合金属酸化物ではなく、MgOおよび金属Mの酸化物が別途の化合物として焼鈍分離剤に含まれる場合、金属Mの添加量が制限されて前記特性が現れない。または複合金属酸化物内の金属Mが過度に少なく含まれる場合、磁性向上および絶縁性特性が現れない。
【0103】
また、被膜20は、ムライトを含む。被膜20内のムライトは、焼鈍分離剤組成物内のムライトに由来したものである。焼鈍分離剤にムライトではなく、Alなどのアルミニウム化合物を含む場合には、2次再結晶焼鈍の温度がムライトの生成温度より比較的低いため鋼板内のSiと結合して被膜20内にムライトが形成され得ない。
【0104】
被膜は、Mg:1~20重量%、Al:0.5~10重量%、金属M:15~45重量%、Si:15~50重量%、Fe:20重量%以下および残部Oおよび不可避な不純物からなることができる。
【0105】
Mgおよび金属Mは、複合金属酸化物内のMgおよび金属Mに由来する。
金属Mが過度に少ない場合、金属Mの添加によるベース被膜の絶縁性向上効果を適切に得ることができない。金属Mが過度に多い場合、製造費用が増加して販売競争力が低下される問題が発生することがある。金属Mが2種以上の元素である場合、前述した含有量範囲は2種以上の元素の合計を意味する。より具体的に被膜20内の金属Mは15~30重量%でありうる。
【0106】
被膜20は、Alを0.5~10重量%含むことができる。被膜20内のAl含有量が過度に少なければ方向性電磁鋼板の鉄損が劣位となることがある。被膜20内のAl含有量が過度に多ければ耐食性が劣位となることがある。したがって、前述した範囲でAlを含むことができる。Alは、前述した焼鈍分離剤組成物および方向性電磁鋼板基材10に由来することができる。
【0107】
Si、Feは、基材内に由来することができる。Oの場合、焼鈍分離剤成分に由来するか、熱処理過程で浸透され得る。その他の被膜20は、炭素(C)などの不純物成分をさらに含むこともできる。
【0108】
被膜20は、ムライトを5~45面積%含むことができる。焼鈍分離剤内のムライトは、被膜形成過程で一部は分解されずに残存して、凝集することがある。このムライトが一定面積を占有することがある。この時、面積は、圧延面(ND面)を基準とする。具体的にムライトを5~40面積%含むことができる。
【0109】
被膜20は、厚さが0.1~10μmでありうる。被膜20の厚さが過度に薄ければ、被膜張力付与能が低下して鉄損が劣位にある問題が生じることがある。被膜20の厚さが過度に厚ければ、点滴率が低下して変圧機特性が劣位にある問題点が生じることがある。したがって、被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的に被膜20の厚さは0.8~6μmでありうる。
【0110】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板100は、被膜20上に位置するセラミック層30をさらに含むことができる。図1では被膜20上にセラミック層30がさらに形成された一例を示す。
【0111】
セラミック層30の厚さは0.5~5μmでありうる。セラミック層30の厚さが過度に薄ければ、セラミック層30の絶縁効果が少なく現れる問題が生じることがある。セラミック層30の厚さが過度に厚ければ、セラミック層30の密着性が低くなり、剥離が起きることがある。したがって、セラミック層30の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的にセラミック層30の厚さは0.8~3.2μmでありうる。本発明の一実施形態で被膜20の絶縁特性が強化されて、セラミック層30の厚さを比較的に薄く構成することができる。
【0112】
セラミック層30は、セラミック粉末を含むことができる。セラミック粉末は、Al、SiO、TiO、ZrO、Al・TiO、Y、9Al・2B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちで選択される1種以上でありうる。セラミック粉末の粒径は2~900nmでありうる。セラミック粉末の粒径が過度に小さければ、セラミック層の形成が困難になることがある。セラミック粉末の粒径が過度に大きければ、表面粗さが粗くなって表面欠陥が発生することがある。したがって、セラミック粉末の粒径を前述した範囲に調節することができる。
【0113】
セラミック粉末は、球状、板状型、および針状型を含む群より選択されたいずれか一つ以上の形態でありうる。
【0114】
セラミック層30は、金属リン酸塩をさらに含むことができる。金属リン酸塩は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、AlおよびMnのうちで選択される1種以上を含むことができる。金属リン酸塩をさらに含む場合、セラミック層30の絶縁性がより向上する。
【0115】
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなるものでありうる。
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなるものであり、金属水酸化物は、Ca(OH)、Al(OH)、Mg(OH)、B(OH)、Co(OH)およびCr(OH)を含む群より選択された少なくとも1種以上であるものでありうる。
【0116】
具体的に、前記金属水酸化物の金属原子は、リン酸のリンと置換反応して単一結合、二重結合、または三重結合を形成してなるものであり、未反応遊離リン酸(HPO)の量が25重量%以下である化合物からなるものでありうる。
金属リン酸塩は、金属水酸化物およびリン酸(HPO)の化学的な反応による化合物からなるものであり、リン酸に対する金属水酸化物の重量比率は1:100~40:100で表示されるものでありうる。
【0117】
金属水酸化物が過度に多く含まれる場合には、化学的な反応が完結されず、沈殿物ができる問題が発生することがあり、金属水酸化物が過度に少なく含まれる場合には、耐食性が劣位にある問題が発生することがあるため、前記のように範囲を限定することができる。
【0118】
本発明の一実施形態で方向性電磁鋼板基材10の成分とは関係なく、焼鈍分離剤組成物および被膜20の効果が現れる。以下、補充的に方向性電磁鋼板基材10の成分について説明する。
【0119】
方向性電磁鋼板基材10は、シリコン(Si):2.8~4.5重量%、アルミニウム(Al):0.020~0.040重量%、マンガン(Mn):0.01~0.20重量%およびアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)またはこれらの組み合わせを0.01~0.15重量%含み、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなることができる。
【0120】
方向性電磁鋼板の製造方法B
図2は本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートを概略的に示す。図2の方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートは、単に本発明を例示するためのものであり、本発明がここに限定されるのではない。したがって、方向性電磁鋼板の製造方法を多様に変形することができる。
【0121】
図2に示したように、方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階(S10)、鋼スラブを加熱する段階(S20)、加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階(S30)、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階(S40)、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階(S50)、1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階(S60)、および焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階(S70)を含む。それ以外に、方向性電磁鋼板の製造方法は他の段階をさらに含むことができる。
【0122】
まず、段階(S10)では、鋼スラブを準備する。鋼スラブの成分については前述した方向性電磁鋼板の成分について具体的に説明したため、重複する説明は省略する。
【0123】
次に、段階(S20)では、鋼スラブを加熱する。この時、スラブ加熱は1,200℃下で低温スラブ法で加熱することができる。
【0124】
次に、段階(S30)では、加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する。段階(S30)以後、製造された熱延板を熱延焼鈍することができる。
【0125】
次に、段階(S40)では、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する。段階(S40)は冷間圧延を1回実施したり、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施することができる。
【0126】
次に、段階(S50)では、冷延板を1次再結晶焼鈍する。この時、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階は、冷延板を同時に脱炭焼鈍および窒化焼鈍する段階を含むか、脱炭焼鈍以降、窒化焼鈍する段階を含むことができる。
【0127】
次に、段階(S60)では、1次再結晶焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤については具体的に前述したため、重複する説明は省略する。
焼鈍分離剤の塗布量は1~20g/mでありうる。焼鈍分離剤の塗布量が過度に少なければ、被膜形成が円滑に行われないことがある。焼鈍分離剤の塗布量が過度に多ければ、2次再結晶に影響を与えることがある。したがって、焼鈍分離剤の塗布量を前述した範囲に調節することができる。
【0128】
次に、段階(S70)では、焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する。2次再結晶焼鈍する過程で被膜20を形成するようになる。
2次再結晶焼鈍時、1次亀裂温度は650~750℃、2次亀裂温度は1100~1250℃とすることができる。昇温区間の温度区間では15℃/hr条件で統制することができる。また、気体雰囲気は1次亀裂段階までは220~30体積%の窒素および70~80体積%の水素を含む雰囲気で行い、2次亀裂段階には100%水素雰囲気で15時間維持した後、炉冷(furnace cooling)することができる。前述した条件を通じて被膜20が円滑に形成され得る。
【0129】
段階(S70)の後にセラミック層30を形成する段階をさらに含むことができる。セラミック層30についても具体的に前述したため、重複する説明は省略する。セラミック層30を形成する方法として、被膜20上にセラミック粉末を噴射してセラミック層を形成することができる。具体的にプラズマスプレーコーティング(Plasma spray)、高速火炎スプレーコーティング(High velocity oxy fuel)、エアゾールディポジション(Aerosol deposition)、低温スプレーコーティング(Cold spray)の方法を適用することができる。より具体的に、Ar、H、N、またはHeを含むガスを20~300kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末を供給してセラミック層を形成するプラズマスプレーコーティング方法を使用することができる。また、プラズマスプレーコーティング方法として、Ar、H、N、またはHeを含むガスを20~300kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末および溶媒の混合物サスペンション形態で供給してセラミック層30を形成することができる。この時、溶媒は、水またはアルコールでありうる。
【0130】
また、セラミック層30を形成する方法として、セラミック粉末および金属リン酸塩を含むセラミック層形成組成物を塗布してセラミック層を形成する方法を使用することができる。
セラミック層30の形成後、必要に応じて磁区微細化を行うことができる。
【0131】
以下、実施形態を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施形態は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるのではない。
【0132】
製造例-複合金属酸化物の製造
マグネシウム前駆体としてMgCl、Niの前駆体としてNiClを前駆体内のMg:Niの重量を50:50で測量して、脱イオン水(DI water)に添加し、触媒としてNaOHを0.5mol添加して2時間攪拌した。その後、加熱し、水洗した。得られた粉末をフィルタリングし乾燥した。Ar雰囲気で60~1200℃に温度を変更しながら熱処理して複合金属酸化物を製造した。下記表1に熱処理温度条件に応じた複合金属酸化物の平均結晶粒径、比表面積、相対誘電率を表示した。
【表1】
【0133】
実施例1
シリコン(Si)を3.4重量%、アルミニウム(Al):0.03重量%、マンガン(Mn):0.05重量%、アンチモン(Sb)を0.04重量%およびスズ(Sn)を0.11重量%、炭素(C)を0.06重量%、窒素(N)を40重量ppm含み、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなるスラブを準備した。
【0134】
スラブを1150℃で220分間加熱した後、2.3mm厚さに熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板を1120℃まで加熱した後、920℃で95秒間維持した後、水で急冷して酸洗した後、0.23mm厚さに冷間圧延して、冷延板を製造した。
【0135】
冷延板を850℃に維持された炉(Furnace)内に投入した後、露点温度および酸化能を調節し、水素、窒素、およびアンモニア混合気体雰囲気で脱炭浸窒および1次再結晶焼鈍を同時に行って、脱炭浸窒焼鈍された鋼板を製造した。
【0136】
焼鈍分離剤組成物として下記表2に示した成分を蒸溜水と混合してスラリー形態で製造し、ロールを利用してスラリーを脱炭浸窒焼鈍された鋼板に塗布した後、2次再結晶焼鈍した。
【0137】
2次再結晶焼鈍時、1次亀裂温度は700℃、2次亀裂温度は1200℃とし、昇温区間の温度区間では15℃/hrとした。また、1200℃までは窒素50体積%および水素50体積%の混合気体雰囲気とし、1200℃到達した後には100体積%の水素気体雰囲気で20時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0138】
2次再結晶焼鈍を通じて製造された被膜をX-ray回折分析法(XRD)を利用して定量分析を行ってその結果を表3に示した。
また、被膜内の硬度(Hardness)およびヤング率(Modulus)を測定して下記表3に整理した。ナノインテンダー(Nano Indenter、モデル名PI-85、製造会社Hysitron)分析装備を利用して測定した。
また、被膜形成後、絶縁特性を測定して下記表4に示した。
【0139】
その後、アルゴン(Ar)ガスを250kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末として、TiOを供給して、最終焼鈍板表面に0.9μm厚さのセラミック層を形成した。
実施例および比較例で製造した方向性電磁鋼板を1.7T、50Hz条件で、磁気特性および鉄損特性を評価し、その結果を下記表4に示した。
【0140】
電磁鋼板の磁気特性は、W17/50とB8を使用して評価する。W17/50は、周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流で磁化させた時に現れる電力損失を意味する。ここで、Teslaは、単位面積当たりの磁束(flux)を意味する磁束密度の単位である。B8は、電磁鋼板周囲を巻き取った巻線に800A/mの電流量を流した時、電磁鋼板に流れる磁束密度値を示す。
【0141】
また、絶縁特性は、ASTM A717国際規格によりフランクリン(Franklin)測定器を活用してコーティング上部を測定した。
また、密着性は、試片を10~100mm円弧に接して180°曲げる時に被膜剥離がない最小円弧直径で示したものである。
【0142】
【表2】
【表3】
【表4】
【0143】
前記表2~表4に示すように、焼鈍分離剤内に適切な複合金属酸化物を添加した場合、磁性、絶縁性が向上し、密着性が良好であることを確認できる。反面、複合金属酸化物を添加しないか、複合金属酸化物内のMg、金属Mの比率が適切でない比較例1~4は、磁性、絶縁性が劣位にあることを確認できる。
【0144】
実施例2
シリコン(Si)を3.4重量%、アルミニウム(Al):0.03重量%、マンガン(Mn):0.05重量%、アンチモン(Sb)を0.04重量%およびスズ(Sn)を0.11重量%、炭素(C)を0.06重量%、窒素(N)を40重量ppm含み、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなるスラブを準備した。
【0145】
スラブを1150℃で220分間加熱した後、2.3mm厚さに熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板を1120℃まで加熱した後、920℃で95秒間維持した後、水に急冷して酸洗した後、0.20mm厚さに冷間圧延して、冷延板を製造した。
【0146】
冷延板を850℃に維持された炉(Furnace)内に投入した後、露点温度および酸化能を調節し、水素、窒素、およびアンモニア混合気体雰囲気で脱炭浸窒および1次再結晶焼鈍を同時に行って、脱炭浸窒焼鈍された鋼板を製造した。
【0147】
焼鈍分離剤組成物として下記表5に整理された成分を蒸溜水と混合してスラリー形態で製造し、ロールを利用してスラリーを脱炭浸窒焼鈍された鋼板に塗布した後、2次再結晶焼鈍した。
2次再結晶焼鈍時、1次亀裂温度は700℃、2次亀裂温度は1200℃とし、昇温区間の温度区間では15℃/hrとした。また、1200℃までは窒素50体積%および水素50体積%の混合気体雰囲気中とし、1200℃到達した後には100体積%の水素気体雰囲気で20時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0148】
2次再結晶焼鈍を通じて製造された被膜をX-ray回折分析法(XRD)を利用して定量分析を行ってその結果を表6に示した。
また、被膜内の硬度(Hardness)およびヤング率(Modulus)特性を測定して下記表6に整理した。
また、被膜形成後、絶縁特性を測定して下記表7に整理した。
【0149】
その後、アルゴン(Ar)ガスを250kWの出力でプラズマ化した熱源にセラミック粉末として、TiOを供給して、最終焼鈍板表面に0.9μm厚さのセラミック層を形成した。
【0150】
実施例および比較例で製造した方向性電磁鋼板を1.7T、50Hz条件で、磁気特性および騒音特性を評価し、その結果を下記表7に示した。
【0151】
電磁鋼板の磁気特性はW17/50とB8を使用して評価する。W17/50は、周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流で磁化させた時に現れる電力損失を意味する。ここで、Teslaは、単位面積当たりの磁束(flux)を意味する磁束密度の単位である。B8は、電磁鋼板周囲を巻き取った巻線に800A/mの電流量を流した時、電磁鋼板に流れる磁束密度値を示す。
また、絶縁特性は、ASTM A717国際規格によりフランクリン(Franklin)測定器を活用してコーティング上部を測定した。
また、密着性は、試片を10~100mm円弧に接して180°曲げる時に被膜剥離がない最小円弧直径で示した。
【0152】
【表5】
【表6】
【表7】
【0153】
前記表5~表7に示すように、焼鈍分離剤内に複合金属酸化物およびムライトを適切に添加した場合、磁性、絶縁性が向上し、密着性が良好であることを確認できる。反面、複合金属酸化物またはムライトを添加しない比較例5~8は、磁性、絶縁性が劣位にあることを確認できる。
【0154】
本発明は、前記実施形態に限定されるのではなく、異なる多様な形態で製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0155】
10 素地鋼板、
20 被膜層
30 セラミック層
100 方向性電磁鋼板
図1
図2