(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ボイラおよびボイラを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F22B 1/18 20060101AFI20240312BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240312BHJP
F22B 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F22B1/18 P
F23J15/00 G
F22B1/18 B
F22B9/00
(21)【出願番号】P 2022554669
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2021054378
(87)【国際公開番号】W WO2021180456
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ボーディル・モセカール・ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】ラース・スキュッテ・ヨルゲンセン
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特表昭59-501226(JP,A)
【文献】特開昭57-142402(JP,A)
【文献】特開2003-065521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180475(US,A1)
【文献】特開2014-016135(JP,A)
【文献】特開2001-324101(JP,A)
【文献】特開昭58-049801(JP,A)
【文献】特開2019-152369(JP,A)
【文献】特開2000-346328(JP,A)
【文献】特開昭60-023701(JP,A)
【文献】特開2012-052785(JP,A)
【文献】特開2006-112740(JP,A)
【文献】特開2007-232262(JP,A)
【文献】実開昭55-180143(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/18
F23J 15/00
F22B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を排気ガス(EG1、EG2)から媒体へと伝達するためのボイラ(2、56、58、62、70、112)であって、前記ボイラ(2、56、58、62、70、112)は、第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を受け入れるための排気ガス入口(26、94、130)と、前記第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を排出するための第1の排気ガス出口(28、96、132)と、前記第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を前記排気ガス入口(26、94、130)から前記第1の排気ガス出口(28、96、132)へと搬送するための手段(16、18、76、114)と、前記媒体を受け入れるための媒体入口(38、90、126)と、前記媒体を排出するための媒体出口(40、92、128)と、前記媒体を前記媒体入口(38、90、126)から前記媒体出口(40、92、128)へと搬送するための手段(12、82、122)とを備えるボイラにおいて、
前記第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を前記排気ガス入口(26、94、130)から前記第1の排気ガス出口(28、96、132)へと搬送するためのバイパス管(20、88、124)であって、前記ボイラ(2、56、58、62、70、112)の周囲壁(42、98、116)によって包囲されるバイパス管(20、88、124)と、前記バイパス管(20、88、124)を通る排気ガス流れを調節するために、前記バイパス管(20、88、124)を遮断または遮断解除するように構成されるバイパス調節器(44、100、134)と、前記バイパス管(20、88、124)の上流で第1の排気ガス圧力を測定するための第1の圧力センサ(52、108、142)と、前記第1の圧力センサ(52、108、142)および前記バイパス調節器(44、100、134)と通信しかつ前記第1の排気ガス圧力に応じて前記バイパス調節器(44、100、134)を制御するように構成される制御ユニット(50、106、140)と、をさらに備えることを特徴とするボイラ(2、56、58、62、70、112)。
【請求項2】
排気ガス(EG1)を前記排気ガス入口(26)から前記第1の排気ガス出口(28)へと搬送するための前記手段(18)は、管(18)の第1の束(16)を備え、前記媒体を前記媒体入口(38)から前記媒体出口(40)へと搬送するための前記手段(12)は、管(18)の前記第1の束(16)を包囲する前記ボイラ(2、56、58、62)の前記周囲壁(42)を備える、請求項1に記載のボイラ(2、56、58、62)。
【請求項3】
前記媒体を前記媒体入口(90、126)から前記媒体出口(92、128)へと搬送するための前記手段(82、122)は、1つ以上の管(82、122)を備え、排気ガス(EG1)を前記排気ガス入口(94、130)から前記第1の排気ガス出口(96、132)へと搬送するための前記手段(76、114)は、1つ以上の前記管(82、122)を包囲する前記ボイラ(70、112)の前記周囲壁(98、116)を備える、請求項1に記載のボイラ(70、112)。
【請求項4】
前記バイパス管(20、88、124)の下流で第2の排気ガス圧力を測定するための第2の圧力センサ(54、110、144)をさらに備え、前記制御ユニット(50、106、140)は、前記第2の圧力センサ(54、110、144)とさらに通信しかつ前記第2の排気ガス圧力にも応じて前記バイパス調節器(44、100、134)を制御するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のボイラ(2、58、62、70、112)。
【請求項5】
前記第2の圧力センサ(54、110、144)は、前記ボイラ(2、58、62、70、112)の前記第1の排気ガス出口(28、96、132)の上流に配置される、請求項4に記載のボイラ(2、58、62、70、112)。
【請求項6】
前記第1の圧力センサ(52、108、142)は、前記ボイラ(2、58、62、70、112)の前記排気ガス入口(26、94、130)の下流に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のボイラ(2、58、62、70、112)。
【請求項7】
前記第1の圧力センサ(52)は、前記ボイラ(56)の前に前記第1の排気ガス圧力を測定するために、前記ボイラ(56)の前記排気ガス入口(26)の上流に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のボイラ(56)。
【請求項8】
前記バイパス管(20、88、124)は、排気ガス(EG1)を受け入れるための排気ガス入口(48、104、138)と、排気ガス(EG1)を排出するための排気ガス出口(46、102、136)とを備え、前記バイパス調節器(44、100、134)は、前記バイパス管(20、88、124)を遮断するために、前記バイパス管(20、88、124)の前記排気ガス入口(48、104、138)および前記排気ガス出口(46、102、136)のうちの一方を覆うように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のボイラ(2、56、58、62、70、112)。
【請求項9】
前記バイパス管(20、88、124)の前記排気ガス入口(48、104、138)および前記排気ガス出口(46、102、136)のうちの他方が、常に開いているように構成される、請求項8に記載のボイラ(2、56、58、62、70、112)。
【請求項10】
前記バイパス調節器(44、100、134)は、前記バイパス管(20、88、124)を遮断するために、前記バイパス管(20、88、124)の前記排気ガス出口(46、102、136)を覆うように構成される、請求項8または9に記載のボイラ(2、56、58、62、70、112)。
【請求項11】
前記バイパス調節器(44、100、134)は、バタフライダンパ(44、100、134)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のボイラ(2、56、58、62、70、112)。
【請求項12】
前記媒体出口(40)から排出される蒸気の蒸気圧力を測定するための第3の圧力センサ(60)をさらに備え、前記制御ユニット(50)は、前記第3の圧力センサ(60)とさらに通信しかつ前記蒸気圧力にも応じて前記バイパス調節器(44)を制御するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のボイラ(58)。
【請求項13】
前記媒体出口(40)から排出される蒸気の廃棄のために、前記媒体出口(40)と連通している連結部(66)と、廃棄される蒸気の量を測定するように構成される蒸気流量計(68)とをさらに備え、前記制御ユニット(50)は、前記蒸気流量計(68)とさらに通信し、前記蒸気の量にも応じて前記バイパス調節器(44)を制御するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のボイラ(62)。
【請求項14】
第2の排気ガス供給源からの排気ガス(EG2)を排出するための第2の排気ガス出口(36)と、前記第2の排気ガス供給源からの排気ガス(EG2)を前記第2の排気ガス出口(36)へと搬送するための管(34)の第2の束(32)とをさらに備え、前記ボイラ(2、56、58、62)の前記周囲壁(42)は、管(34)の前記第2の束(32)を包囲する、請求項1から13のいずれか一項に記載のボイラ(2、56、58、62)。
【請求項15】
熱を排気ガス(EG1、EG2)から媒体へと伝達するためにボイラ(2、56、58、62、70、112)を動作させる方法であって、
第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を、前記ボイラ(2、56、58、62、70、112)の排気ガス入口(26、94、130)から第1の排気ガス出口(28、96、132)へと搬送するステップと、
前記媒体を、前記ボイラ(2、56、58、62、70、112)の媒体入口(38、90、126)から媒体出口(40、92、128)へと搬送するステップと
を含む、方法において、
前記ボイラ(2、56、58、62、70、112)のバイパス管(20、88、124)の上流で第1の排気ガス圧力を測定するステップであって、前記バイパス管(20、88、124)は、前記第1の外部排気ガス供給源(4)からの排気ガス(EG1)を前記排気ガス入口(26、94、130)から前記第1の排気ガス出口(28、96、132)へと搬送するように構成される、ステップと、
前記第1の排気ガス圧力に応じて、前記バイパス管(20、88、124)を通る排気ガス流れを調節するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記バイパス管(20、88、124)の下流で第2の排気ガス圧力を測定するステップと、
前記第2の排気ガス圧力にも応じて、前記バイパス管(20、88、124)を通る前記排気ガス流れを調節するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記媒体出口(40)から排出される蒸気の蒸気圧力を測定するステップと、
前記蒸気圧力にも応じて、前記バイパス管(20)を通る前記排気ガス流れを調節するステップと
をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記媒体出口(40)から排出された、廃棄される蒸気の量を測定するステップと、
前記蒸気の量にも応じて、前記バイパス管(20)を通る前記排気ガス流れを調節するステップと
をさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスから媒体へと熱を伝達するためのボイラと、その設計とに関する。本発明は、このようなボイラを動作させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラはよく知られており、多くの様々な熱交換用途で使用されている。例えば、ボイラは、エンジンによって生成された排気ガスから熱を回収するために、エンジンの形態で排気ガス供給源の後に配置され得る。このようなボイラは、熱回収ボイラとしばしば称される。このようなボイラでは、ボイラを通じて搬送される典型的には水である媒体は、ボイラを通じて搬送されるエンジン排気ガスからの熱を用いて加熱される。エンジンは、典型的には異なる負荷において動作させることができ、ボイラは、最大限のエンジン負荷、つまり、100%のエンジン負荷における動作を含め、あらゆるエンジン負荷での動作に対して通常は寸法決定されている。ボイラについての1つの寸法決定基準は、ボイラ排気ガス圧力降下である可能性があり、ボイラは、ボイラ排気ガス圧力降下が150mmWCを超えないように寸法決定され得る。典型的には、エンジン負荷がより大きくなると、ボイラ排気ガス圧力降下はより大きくなる。したがって、ボイラ排気ガス圧力降下は、典型的には最大エンジン負荷において最も大きくなる。しかしながら実際には、エンジンは、典型的には最大負荷において運転されず、最大負荷の55~85%において運転され、これは結果的に、150mmWCより相当に小さいボイラ排気ガス圧力降下をもたらす。その結果、ボイラはほとんどの場合において過大に寸法決定されことになり、これによってボイラを不必要に高価で嵩張らせている。さらに、多くの用途において、蒸気がボイラの動作の間に生成され、この蒸気は、必要とされる場合、様々な目的のために使用できる。しかしながら、典型的には最大エンジン負荷の間の場合であり得る、必要とされるよりも多くの蒸気が生成される場合に、蒸気は廃棄される必要がある。そのため、ボイラは、蒸気を廃棄するための機器に典型的には連結される。また、この機器は、あらゆるエンジン負荷における動作に対して通常は寸法決定され、そのため、ほとんどの場合において過大に寸法決定され、したがって不必要に高価で嵩張る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記の問題を少なくとも部分的に解決するボイラと、ボイラを動作させる方法とを提供することである。本発明の基本的な概念は、最大の排気ガス供給源負荷に対してではなく、設計負荷として知られている典型的な排気ガス供給源負荷に対して、ボイラの媒体および排気ガスを搬送する手段を寸法決定することであり、また、典型的な排気ガス供給源負荷を上回る動作から生じる過剰な排気ガスに対処するための専用の手段をボイラに提供することである。上記の目的を達成するためのボイラおよび方法は、添付の特許請求の範囲において定められており、以下において検討されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によるボイラは、排気ガスまたは煙道ガスから媒体へと熱を伝達するために構成される。ボイラは、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを受け入れるための排気ガス入口と、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを排出するための第1の排気ガス出口と、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口へと搬送するための手段とを備える。ボイラは、媒体を受け入れるための媒体入口と、媒体を排出するための媒体出口と、媒体を前記媒体入口から前記媒体出口へと搬送するための手段とをさらに備える。ボイラは、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口へと搬送するためのバイパス管をさらに備えることを特徴とする。バイパス管はボイラの周囲壁によって包囲される。さらに、ボイラは、バイパス管を通る排気ガス流れを調節するために、バイパス管を遮断または遮断解除するように構成されるバイパス調節器と、バイパス管の上流で第1の排気ガス圧力を測定するための第1の圧力センサとを備える。また、ボイラは、第1の圧力センサおよびバイパス調節器と通信し、前記第1の圧力に応じてバイパス調節器を制御するように構成される制御ユニットを備える。
【0005】
ボイラは、地上での用途、または水上での用途のために構成され得る。ボイラは、船などの移動する船舶に搭載されて設置され得る。
【0006】
加熱される媒体は、例えば水といった任意の適切な媒体であり得る。媒体は、そのボイラを通る道筋において、部分的または完全に、液相から気相になるなど、相を変えてもよいし変えなくてもよい。例えば、媒体入口は、例えば水の形態でといった、少なくとも部分的に液相で媒体を受け入れるように構成でき、媒体出口は、例えば蒸気の形態でといった、少なくとも部分的に気相で媒体を排出するように構成できる。
【0007】
第1の外部排気ガス供給源は、ディーゼルエンジンまたはタービンなど、任意の適切な種類のものであり得る。
【0008】
本明細書において、「入口から出口への搬送」および同様の表現は、「入口から出口への方向における搬送」を意味し、必ずしも入口から出口まで完全に搬送することを意味しない。したがって、排気ガスを搬送するための前記手段、媒体を搬送するための前記手段、および前記バイパス管は、それぞれの入口と出口との間で完全に延びている必要はない。
【0009】
バイパス管は、ボイラの周囲壁によって包囲されるため、ボイラの内部に配置され得る。このような内部バイパス管は、ボイラのコンパクトでコスト効率の良い設計を可能にすると共に、ボイラの前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口への間の比較的短い排気ガス経路を可能にすることができる。さらに、これは、ボイラを通じて流れる排気ガスに対して、比較的小さい圧力降下を可能にすることができる。さらに、このような内部バイパスは、以下においてさらに検討されているように、ボイラにおける比較的小さい熱応力と関連付けられ得る。さらに、このような内部バイパスは、機械的に単純でコンパクトで経済的なバイパス調節器の使用を可能にすることができる。
【0010】
周囲壁は、円形、楕円形、多角形、矩形などの断面を伴う管の形など、任意の適切な形を有し得る。周囲壁は、さらに、中実もしくは中空など、任意の適切な設計を有し得る、および/または、均一または不均一な厚さを有し得る。例として、周囲壁は、中実の壁部分を用いて連結されるいくつかの並列の管を備えるいわゆるパネル壁であってもよい。冷却媒体が、ボイラを通じて搬送される排気ガスを冷却するために、これらの管を通じて送り込まれ得る。
【0011】
ボイラの構成要素は、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、またはアルミニウムといった任意の適切な材料から作られ得る。
【0012】
バイパス管は、真っ直ぐまたは曲がっている、および、円形、楕円形、または多角形の断面を有するなど、任意の適切な設計を有し得る。
【0013】
先に述べたように、バイパス調節器は、バイパス管を遮断または遮断解除するように構成される。本明細書において、「遮断」は「完全に閉じている」ことを意味し、「遮断解除」は「完全または部分的に開いている」ことを意味する。
【0014】
本明細書で使用されているように、「上流」は、排気ガス流れの方向に関して、「前」を意味し、「下流」は、排気ガス流れの方向に関して、「後」を意味する。したがって、第1の圧力センサは、第1の外部排気ガス供給源とボイラのバイパス管との間のどこかに配置される。
【0015】
本明細書において使用されているように、「通信」および同様の言葉は、「直接的または間接的な通信」を意味する。通信は有線または無線であり得る。
【0016】
先に述べたように、制御ユニットは、前記第1の圧力に応じてバイパス調節器を制御するように構成される。第1の圧力は、バイパス調節器を制御するように制御ユニットによって使用される唯一の変数であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0017】
ボイラが寸法決定されるための第1の外部排気ガス供給源の典型的な負荷までの負荷において、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスは、排気ガスを搬送するための前記手段によって、ボイラを通じて送り込まれ得る。より大きな負荷において、第1の外部排気ガス供給源からの過剰な排気ガスは、バイパス管を介して、ボイラを通じて送り込まれ得る。第1の外部排気ガス供給源とボイラのバイパス管との間で測定される第1の排気ガス圧力は、第1の外部排気ガス供給源の負荷に応じている。前記第1の排気ガス圧力に応じてバイパス調節器を制御することで、バイパス管を通る排気ガス流れは最適化され得る。したがって、バイパス管の提供は、第1の外部排気ガス供給源の最大負荷の代わりに典型的な負荷に基づいて、ボイラの他の部分、およびそこに連結される任意の蒸気廃棄機器を寸法決定することを可能にし、これはコスト効率および空間効率が良い。
【0018】
ボイラは、排気ガスを前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口へと搬送するための前記手段が管の第1の束を備えるように構築されてもよい。さらに、媒体を前記媒体入口から前記媒体出口へと搬送するための前記手段は、管の前記第1の束を包囲するボイラの前記周囲壁を備えてもよい。
【0019】
管、バイパス管、および周囲壁は、ボイラの動作の間に本質的に同じ温度となるように同じ材料から作られてもよく、これは、ボイラにおいて比較的小さい熱応力を可能にすることができる。
【0020】
管は、真っ直ぐであるか、曲がっているか、または、コイル状もしくは螺旋状に成形されるなど、任意の適切な設計を有することができ、円形、楕円形、または多角形の断面を有することができ、管は互いと同様であっても異なってもよい。管には、螺旋フィン、プレートフィン、または任意の適切な設計のフィンなど、表面を拡大する要素が設けられてもよい。
【0021】
管の数は、2以上であってもよく、それらは、互いおよび/またはバイパス管に沿って延び、可能性として、互いおよび/またはバイパス管と平行にも延び得る。
【0022】
管の各々は、バイパス管の内容積より小さい内容積を有し得る。
【0023】
この実施形態によれば、排気ガスは、ボイラの前記周囲壁によって包囲される加熱される媒体によって囲まれる管において、ボイラを通じて送り込まれ、排気ガスと媒体との間の熱交換が管の壁を通じて行われる。このようなボイラは煙管ボイラと称され得る。第1の外部排気ガス供給源の最大負荷の代わりに典型的な負荷に対してこのような煙管ボイラを寸法決定するとき、管の数を少なくさせることができ、これは、バイパス管が存在するとしても、ボイラをより安価とさせ、必要な空間をより小さくさせる。管の数が少なくなったことは、管を通る排気ガスの速度の増加を意味し、これはさらに、排気ガスと媒体との間での熱伝達の効率の増加をもたらし、壁の内側における管への堆積物の形成の低減ももたらす。さらに、このような煙管ボイラの管は、第1の外部排気ガス供給源が大きな負荷で運転させられているとき、バイパス調節器を用いてバイパス管を通る排気ガス流れを素早く停止し、バイパス管を通る排気ガス流れを再び許可する前に管を通る排気ガス速度を少しの間だけ増加させて「吹き飛ばす」ことで、効率的に洗浄されてもよい。これは、排気ガスの波動を管に作り出すために、一回または繰り返して行われ得る。
【0024】
煙管ボイラとして設計される代わりに、ボイラは、媒体を前記媒体入口から前記媒体出口へと搬送するための前記手段が1つ以上の管を備えるように構築されてもよい。さらに、排気ガスを前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口へと搬送するための前記手段は、前記1つ以上の管を包囲するボイラの前記周囲壁を備えてもよい。
【0025】
また、これらの1つ以上の管は、真っ直ぐであるか、曲がっているか、または、コイル状もしくは螺旋状に成形されるなど、任意の適切な設計を有することができ、円形、楕円形、または多角形の断面を有することができ、互いと同様であっても異なってもよく、互いおよび/またはバイパス管に沿って延びてもよく、可能性として、同じく互いおよび/またはバイパス管と平行に延びてもよく、任意の適切な設計の表面を拡大する要素が設けられてもよい。
【0026】
この実施形態によれば、加熱される媒体は、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスによって囲まれる管において、ボイラを通じて送り込まれ、その排気ガスはボイラの前記周囲壁によって包囲され、排気ガスと媒体との間の熱交換が管の壁を通じて行われる。媒体が水である場合、このようなボイラは水管ボイラと称され得る。
【0027】
ボイラは、バイパス管の下流で第2の排気ガス圧力を測定するための第2の圧力センサをさらに備え得る。さらに、制御ユニットは、第2の圧力センサとさらに通信でき、前記第2の圧力にも応じてバイパス調節器を制御するように構成され得る。異なる外部因子が第1の圧力および第2の圧力に影響する可能性がある。第1の圧力と第2の圧力との両方に応じてバイパス調節器を制御することで、このような外部因子は「相殺」され、バイパス調節器は、ボイラにおける条件のみに応じて制御される。
【0028】
第1の圧力および第2の圧力は、バイパス調節器を制御するように制御ユニットによって使用される唯一の変数であってもよいし、そうでなくてもよい。例として、制御ユニットは、第1の圧力と第2の圧力との間の差に応じてバイパス調節器を制御するように構成され得る。
【0029】
第2の圧力センサは異なる位置にあってもよい。例えば、第2の圧力センサは、ボイラの第1の排気ガス出口の上流に、つまり、第1の排気ガス出口とバイパス管との間に、配置され得る。このような位置は、ボイラの一体化された構成要素としての第2の圧力センサの提供を容易にする。
【0030】
第1の圧力センサも異なる位置にあってもよい。例として、第1の圧力センサは、ボイラの排気ガス入口の下流に、つまり、排気ガス入口とバイパス管との間に、配置され得る。このような位置は、ボイラの一体化された構成要素としての第1の圧力センサの提供を容易にする。別の例として、第1の圧力センサは、ボイラの前に第1の排気ガス圧力を測定するためのボイラの排気ガス入口の上流に、つまり、第1の外部排気ガス供給源とボイラの排気ガス入口との間に、配置されてもよい。このような位置は、第1の排気ガス圧力のより正確な測定を可能にすることができ、エンジン背圧を直接的に測定することを可能にすることができる。
【0031】
バイパス管は、排気ガスを受け入れるための排気ガス入口と、排気ガスを排出するために排気ガス出口とを備え得る。さらに、バイパス調節器は、バイパス管を遮断するために、バイパス管の排気ガス入口および排気ガス出口のうちの一方を覆うように構成され得る。このようなバイパス調節器はバイパス管を外部から遮断することができ、これは、バイパス調節器の機械的に簡単で信頼できるアクセス可能な構造を可能にする。
【0032】
バイパス調節器は、バイパス管の排気ガス入口および排気ガス出口のうちの一方を覆うように構成され得るが、バイパス管の排気ガス入口および排気ガス出口のうちの他方は、常に開いているように構成され得る。これは、ボイラの比較的複雑でない設計と、バイパス管を通る排気ガス流れの依然として満足できる制御とを可能にすることができる。
【0033】
ある実施形態によれば、バイパス調節器は、バイパス管を遮断するために、バイパス管の排気ガス出口を覆うように構成される。この実施形態は、温度が典型的にはバイパス管の排気ガス入口ではなく排気ガス出口においてより低いため、バイパス調節器について比較的穏やかな環境を提供する。代替の実施形態では、バイパス調節器は代わりに、バイパス管を遮断するために、バイパス管の排気ガス入口を覆うように構成され得る。
【0034】
バイパス調節器は任意の適切な設計を有し得る。例として、バイパス調節器は、バイパス調節器の機械的に簡単で信頼できるアクセス可能な構造を可能にし得るバタフライダンパを備え得る。
【0035】
ボイラは、媒体出口から排出される蒸気の蒸気圧力を測定するための第3の圧力センサをさらに備えてもよい。さらに、制御ユニットは、第3の圧力センサとさらに通信でき、前記蒸気圧力にも応じてバイパス調節器を制御するように構成され得る。
【0036】
第1の圧力および蒸気圧力は、バイパス調節器を制御するように制御ユニットによって使用される唯一の変数であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0037】
ボイラによって生成され、媒体出口から排出される蒸気は、必要とされる場合、異なる目的のために使用され得る。生成されるが必要とされない蒸気は、以下において過剰な蒸気と称される。生成される蒸気の量は、バイパス管を通る排気ガス流れを調節することで調節できる。より具体的には、バイパス管を通る排気ガス流れを増加させることで、蒸気の生成は低下させられ得、バイパス管を通る排気ガス流れを低下させることで、蒸気の生成は増加させられ得る。生成される過剰な蒸気がより多くなると、前記蒸気圧力はより高くなる。前記蒸気圧力に応じてバイパス調節器を制御することで、蒸気の生成は実際の要求に適合させることができる。結果として、過剰な蒸気の生成を制限することができ、これはさらに、蒸気廃棄機器など、過度の蒸気を取り扱うための機器の規模を小さくすることを可能にする。
【0038】
ある実施形態によれば、ボイラは、前記媒体出口から排出される蒸気の廃棄のために、前記媒体出口と連通している連結部と、廃棄される蒸気の量を測定するように構成される蒸気流量計とをさらに備える。さらに、制御ユニットは、蒸気流量計と通信し、前記蒸気の量にも応じてバイパス調節器を制御するように構成される。
【0039】
第1の圧力、および蒸気流量計によって測定される蒸気の量は、バイパス調節器を制御するように制御ユニットによって使用される唯一の変数であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0040】
この実施形態によれば、上述したように蒸気圧力を測定すること、および、バイパス調節器を制御するためにそれを使用することの代わりに、またはこれらのことに加えて、廃棄される蒸気の量が測定され、バイパス調節器を制御するために使用される。
【0041】
ボイラは、第2の排気ガス供給源からの排気ガスを排出するための第2の排気ガス出口と、第2の排気ガス供給源からの排気ガスを前記第2の排気ガス出口へと搬送するための管の第2の束とをさらに備えてもよく、ボイラの前記周囲壁は管の前記第2の束を包囲する。このようなボイラはコンポジットボイラと称され得る。
【0042】
また、第2の束の管は、2以上であってもよく、互いおよび/またはバイパス管に沿って延びてもよく、可能性として、同じく互いおよび/またはバイパス管と平行に延びてもよく、任意の適切な材料から作ることができ、任意の適切な設計を有することができ、互いと同様であっても異なってもよく、バイパス管の内容積より小さい内容積をそれぞれ有し得る。
【0043】
このようなコンポジットボイラにおいて、第2の排気ガス供給源からの排気ガスは、媒体によって囲まれる管において、ボイラを通じて送り込まれ、媒体の加熱に寄与する。第2の排気ガス供給源は、油燃焼バーナおよび/またはガス燃焼バーナなど、任意の適切な種類のものであり得る。
【0044】
熱を排気ガスから媒体へと伝達するためにボイラを動作させる本発明の方法は、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを、ボイラの排気ガス入口から第1の排気ガス出口へと搬送するステップと、媒体を、ボイラの媒体入口から媒体出口へと搬送するステップとを含む。方法は、ボイラのバイパス管の上流で第1の排気ガス圧力を測定するステップであって、バイパス管は、第1の外部排気ガス供給源からの排気ガスを前記排気ガス入口から前記第1の排気ガス出口へと搬送するように構成される、ステップと、前記第1の排気ガス圧力に応じて、バイパス管を通る排気ガス流れを調節するステップとをさらに含むことにおいて特徴付けられる。
【0045】
方法は、バイパス管の下流で第2の排気ガス圧力を測定するステップと、前記第2の圧力にも応じて、バイパス管を通る排気ガス流れを調節するステップとをさらに含み得る。
【0046】
方法は、媒体出口から排出される蒸気の蒸気圧力を測定するステップと、前記蒸気圧力にも応じて、バイパス管を通る排気ガス流れを調節するステップとをさらに含み得る。
【0047】
方法は、媒体出口から排出された、廃棄される蒸気の量を測定するステップと、前記蒸気の量にも応じて、バイパス管を通る排気ガス流れを調節するステップとをさらに含み得る。
【0048】
本発明によるボイラの様々な実施形態の上記の検討された利点は、本発明による方法の様々な実施形態にも当然ながら引き渡すことができる。
【0049】
本発明のさらに他の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明から、および図面から、明らかになるであろう。
【0050】
本発明は、添付の概略的な図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1a】エンジンと、第1の実施形態によるボイラの概略的な断面とを示す図である。
【
図1b】第1の実施形態によるボイラの一部の概略的な上面図である。
【
図2】エンジンと、第2の実施形態によるボイラの概略的な断面とを示す図である。
【
図3】エンジンと、第3の実施形態によるボイラの概略的な断面とを示す図である。
【
図4】エンジンと、第4の実施形態によるボイラの概略的な断面とを示す図である。
【
図5】第5の実施形態によるボイラの概略的な断面図である。
【
図6】第6の実施形態によるボイラの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1aおよび
図1bにおいて、ボイラ2が示されている。ボイラ2は、船(図示されていない)に搭載されて配置されており、ダクト6によって、船のディーゼルエンジン4の形態での第1の外部排気ガス供給源に連結されている。ディーゼルエンジン4によって生成された排気ガスEG1は、排気ガスの熱回収のために、ダクト6を通じてボイラ2へと送り込まれる。ボイラ2は炭素鋼の容器8を備え、容器8はさらに、鉛直方向において連続して配置された下方室またはヘッダ10と、筐体12と、上方室またはヘッダ14とを備える。下方室10と筐体12とは、両方とも円筒形の形態を有し、同様の断面を有すると共に同心で配置されるように一体に形成されている。上方室14は、部分的に円筒形の形態を有し、下方室10および筐体12より小さい断面を有する。
【0053】
ボイラ2は、炭素鋼の管18の第1の束16と、炭素鋼の下方管板22と上方管板24との間において容器8の内部で延びる炭素鋼のバイパス管20とをさらに備え、それら管板は、筐体12を下方室10および上方室14から分離する筐体12の下方壁および上方壁を形成する。バイパス管20は管18によって部分的に囲まれている。管18およびバイパス管20は、真っ直ぐであり、互いと、および、筐体12の長手方向中心軸cと、平行に延びている。管18およびバイパス管20はすべて円の断面を有し、バイパス管20の内容積は管18の各々の内容積より相当に大きい。管18およびバイパス管20は、容器8を通じて排気ガスEG1を搬送するように構成されており、排気ガスEG1は、下方室10へと延びる排気ガス入口26を通じて、ボイラ2によって受け入れられ、上方室14から外へと延びる第1の排気ガス出口28を通じて、ボイラ2によって排出される。排気ガスEG1は、排気ガス入口26を通じて下方室10へと送り込まれ、管18を通り、可能性として、以下でさらに検討されているようにバイパス管20も通り、上方室14へと送り込まれ、第1の排気ガス出口28を通る。
【0054】
さらに、ボイラ2は、容器8の内部に配置された炉30と、炉30とボイラの上方管板24との間において筐体12の内部で延びる炭素鋼の管34の第2の束32(
図1aのみに示されている)とを備える。管34は、真っ直ぐであり、互いと、および、筐体12の長手方向中心軸cと、平行に延びている。管34はすべて円の断面を有し、バイパス管20の内容積は管34の各々の内容積より相当に大きい。管34は、排気ガスEG2を、炉30の内部に配置された油燃焼バーナ(図示されていない)の形態での第2の排気ガス供給源から、排気ガスEG2が上方管板24に配置された第2の排気ガス出口36を通じてボイラ2を出る前に筐体12を通って搬送するように構成されている。
【0055】
エンジン4、ボイラ2、および、可能性として油燃焼バーナの動作の間、筐体12は、媒体入口38を通じて筐体12へと送り込まれる、ここでは水である媒体で満たされる。さらに、排気ガスEG1は、管18と、可能性としてバイパス管20とを通じて送り込まれ、排気ガスEG2は、油燃焼バーナが運転している場合、管34を通じて送り込まれる。水は、管18、管34、およびバイパス管20を囲んでそれらの周りを流れ、水は排気ガスEG1およびEG2より低温であるため、熱は排気ガスから管および炉の壁を通じて水へと伝達され、その水は加熱され、水と蒸気との混合物の形態で、媒体出口40を通じてボイラ2から出て行く。筐体8の周囲壁42、管18、バイパス管20、および管34は、同じ材料から作られ、共通の水の容積にすべて浸けられているため、それらの温度は比較的少ししか差異がなく、これはボイラに比較的限られた熱応力しかもたらさない。したがって、管18の第1の束16およびバイパス管20は、排気ガスEG1を排気ガス入口26から第1の排気ガス出口28へと搬送するための手段として作用するが、筐体8の周囲壁42は、媒体を媒体入口38から媒体出口40へと搬送するための手段として作用する。
【0056】
ディーゼルエンジン4は、ボイラ排気ガス圧力降下が150mmWC以下であるときに最適に動作する。ボイラ2は、ボイラ排気ガス圧力降下の圧力が、最大ディーゼルエンジン負荷の55~85%であるディーゼルエンジン設計負荷において、おおよそ150mmWCとなるように寸法決定されている。エンジンが設計負荷以下で動作させられるとき、排気ガスEG1は、管18を通じて、筐体12を通って搬送されることになる。しかしながら、何らかの理由で、ディーゼルエンジンが設計負荷を上回る負荷で動作させられる場合、エンジン排気ガスEG1は、エンジン背圧の増加を回避するために、筐体12を通じて、さらにバイパス管20も通じて、搬送されることになる。バイパス管20を通じての排気ガス流れは、バタフライダンパ44の形態でのバイパス調節器を用いて調節される。バタフライダンパ44は、バイパス管20の排気ガス出口46に配置され、排気ガス出口46を開けて排気ガスEG1の通過を許容する、または、排気ガス出口46を閉じて排気ガスEG1の通過を防止する。
図1aおよび
図1bでは、バタフライダンパ44は閉じて示されている。バイパス管20の排気ガス入口48は常に開いている。
【0057】
ボイラ2は、バタフライダンパ44の開閉を制御するために、バタフライダンパ44に接続されている制御ユニット50を備える。制御ユニット50は、ボイラ2の下方室10における第1の排気ガス圧力を測定するために下方室10に配置されている第1の圧力センサ52、および、ボイラ2の上方室14における第2の排気ガス圧力を測定するために上方室14に配置されている第2の圧力センサ54と通信する。第2の排気ガス圧力と第1の排気ガス圧力との間の差は、エンジン背圧に直接的に関連付けられ、制御ユニット50は、この圧力差に応じて、バタフライダンパ44の開閉を制御するように構成されている。したがって、圧力差が所定の限度値を超える場合、バタフライダンパ44は、圧力差に応じた度合いまで開かれることになる。しかしながら、圧力差が所定の限度値未満である場合、バタフライダンパ44は閉じられる。
【0058】
前述されているように、ボイラ2は、媒体出口40を通じて筐体12を出て行く蒸気を生成する。この蒸気は、船における別の目的のために使用され得る。ディーゼルエンジン4からの排気ガスEG1によって生成される蒸気が十分でない場合、炉30における油燃焼バーナが、バーナからの排気ガスEG2を用いた追加の蒸気の生成のために動作させられ得る。当然ながら、ボイラの代替の実施形態において、炉30、管34の第2の束32、および第2の排気ガス出口36は省略されてもよい。
【0059】
したがって、バイパス管20、バタフライダンパ44、および制御ユニット50を用いることで、ボイラ排気ガス圧力降下は、エンジン負荷が設計負荷を超えるときであっても、150mmWC以下に維持させることができる。さらに、バイパス管20、バタフライダンパ44、および制御ユニット50は、バタフライダンパ44を用いてバイパス管20を通る排気ガス流れを突然に停止して、管16の内側から堆積物を「吹き飛ばす」前に、エンジン4を設計負荷を超えて動作させ、ボイラ2をバイパス管20を通る排気ガス流れで動作させることで、ボイラ2を効果的に洗浄する能力を提供する。
【0060】
図2では、別のボイラ56が示されている。ボイラ56は、ボイラ2とかなり類似しており、以下においては、ボイラ56の異なる特徴に焦点が当てられる。ボイラ56は、第1の圧力センサ52を備えるが、ボイラ2の第2の圧力センサ54がない。ボイラ56では、第1の圧力センサ52は、ディーゼルエンジン4の直ぐ後に位置決めされており、ディーゼルエンジン4のエンジン背圧を測定するように構成されている。制御ユニット50は、このエンジン背圧に応じてバタフライダンパ44の開閉を制御するように構成されている。
【0061】
図3では、別のボイラ58が示されている。ボイラ58は、ボイラ2とかなり類似しており、以下においては、ボイラ58の異なる特徴に焦点が当てられる。先の記載によれば、液体の水は、排気ガスEG1と、可能性として排気ガスEG2との熱交換を通じて、ボイラ58の内部で蒸気へと転換される。この蒸気は、船における別の目的のために使用され得る。エンジン4によって生成される排気ガスEG1がより多くなると、より多くの蒸気がボイラ58によって生成され得る。さらに、生成された排気ガスEG1の管18を通過する分がより多くなると、より多くの蒸気が生成される。別の言い方をすれば、特定のエンジン負荷について、すべての排気ガスEG1が管18を通じて筐体12を通過し、排気ガスEG1がバイパス管20を通過しない場合、排気ガス流れの速度、延いては熱伝達効率が、管18ではなくバイパス管20についてより低くなるため、最大の蒸気が生成される。必要とされるより多くの蒸気がボイラ58によって生成される場合、過剰な蒸気は、ボイラ58に連結された蒸気廃棄機器(図示されていない)を用いて廃棄される。バイパス管20を用いると、過剰な蒸気の生成が制限でき、これは、蒸気廃棄機器の能力が低減できることを意味する。
【0062】
第1の圧力センサ52および第2の圧力センサ54の他に、ボイラ58は、ボイラ58の媒体出口40から延びる連結部に配置された蒸気圧力センサ60の形態で、第3の圧力センサを備える。制御ユニット50は、蒸気圧力センサ60と通信し、蒸気圧力センサ60を用いて測定された蒸気圧力にも応じて、バタフライダンパ44の開閉を制御するように構成されている。したがって、蒸気圧力が所定の限度値を超える場合、バタフライダンパ44は、蒸気圧力の大きさに応じた度合いまで開かれることになる。蒸気圧力が所定の限度値未満であるが、第1の圧力センサ52および第2の圧力センサ54によって測定された第2の排気ガス圧力と第1の排気ガス圧力との間の差が所定の限度値を超える場合、バタフライダンパ44は、圧力差の大きさに応じた度合いまで開かれることになる。蒸気圧力が所定の限度値未満であり、圧力差が所定の限度値未満である場合、バタフライダンパ44は閉じられる。
【0063】
したがって、バイパス管20、バタフライダンパ44、および制御ユニット50を用いることで、蒸気の生成は、廃棄される必要がある蒸気の量を低減させるためになど、蒸気についての実際の要求に適合させることができ、それによって、ボイラに連結される蒸気廃棄機器の規模縮小を可能にする。
【0064】
図4では、別のボイラ62が示されている。ボイラ62は、ボイラ58とかなり類似しており、以下においては、ボイラ58の異なる特徴に焦点が当てられる。ボイラ62によって生成され、媒体出口40から出される蒸気が、船における使用のための連結部64を通じて送り込まれるか、または、廃棄されるために連結部66を通じて送り込まれるかのいずれかとされる。ボイラ62は、ボイラ58の蒸気圧力センサ60の代わりに蒸気流量計68を備える。蒸気流量計68は、廃棄される蒸気の流れを測定するために、連結部66に配置されている。測定された蒸気圧力に応じてバタフライダンパ44の開閉を制御する代わりに、ボイラ62の制御ユニット50は、連結部66における上記の測定された流れに応じて、バタフライダンパ44の開閉を制御するように構成されている。
【0065】
図5では、別のボイラ70が示されている。ボイラ70は、ボイラ2といくらか類似しており、以下においては、ボイラ70の異なる特徴に焦点が当てられる。ボイラ70は、船(図示されていない)に搭載されて配置されており、ディーゼルエンジン(図示されていない)の形態での第1の外部排気ガス供給源に連結されている。ディーゼルエンジンによって生成された排気ガスEG1は、排気ガスの熱回収のために、ボイラ70へと送り込まれる。ボイラ70は容器72を備え、容器72はさらに、鉛直方向において連続して配置された下方室74と、筐体76と、上方室78とを備える。下方室74、上方室78、および筐体76は、すべて円筒形の形態を有し、同様の断面を有すると共に同心で配置されるように一体に形成されている。
【0066】
ボイラ70は、筐体76を下方室74および上方室78から分離する筐体76の下方壁および上方壁を形成する下方管板84と上方管板86との間で延びる管82の第3の束80と、筐体76の内部で延びる平行なバイパス管88とをさらに備える。管82は、筐体76を通じて水および蒸気を搬送するように構成されており、水は、下方室74へと延びる媒体入口90を通じてボイラ70によって受け入れられ、蒸気は、上方室78から外へと延びる媒体出口92を通じてボイラ70から排出される。筐体76およびバイパス管88は、ボイラ70を通じて排気ガスEG1を搬送するように構成されており、排気ガスEG1は、筐体76の下方部分へと延びる排気ガス入口94を通じて、ボイラ70によって受け入れられ、筐体76の上方部分から外へと延びる(第1の)排気ガス出口96を通じて、ボイラ70から排出される。
【0067】
エンジンおよびボイラ70の動作の間、排気ガスEG1が筐体76を通じて送り込まれる。筐体76の周囲壁98は、排気ガスEG1を排気ガス入口94から(第1の)排気ガス出口96へと搬送するための手段として作用する。また、排気ガスEG1は、以下でさらに検討されているように、可能性としてバイパス管88を通じて送り込まれる。筐体76の内部では、排気ガスEG1は、管82およびバイパス管88を囲み、それらの周りを流れる。さらに、水は、媒体入口90から管82へと送り込まれ、水は排気ガスEG1より低温であるため、熱は排気ガスEG1から管82の壁を通じて、管82における水へと伝達され、その水は加熱され、蒸気の形態または水と蒸気との混合物の形態で、媒体出口92を通じてボイラ70から出て行く。したがって、管82の束80は、水および蒸気を媒体入口90から媒体出口92へと搬送するための手段として作用する。
【0068】
エンジンが設計負荷以下で動作させられるとき、排気ガスEG1は、筐体76を通じてバイパス管88の外部へと搬送されることになる。しかしながら、エンジンが設計負荷を上回る負荷で動作させられる場合、エンジン排気ガスEG1は、150mmWCを上回るボイラ排気ガス圧力を回避するために、筐体76を通じて、さらにバイパス管88も介して、搬送されることになる。バイパス管88を通る排気ガス流れは、バイパス管88の排気ガス出口102に配置されたバタフライダンパ100を用いて調節される。バイパス管88の排気ガス入口104は常に開いている。
【0069】
ボイラ70は、第1の圧力センサ108を用いてバイパス管88の上流で測定される第1の排気ガス圧力と、第2の圧力センサ110を用いてバイパス管88の下流で測定される第2の排気ガス圧力との間の圧力差に基づいてバタフライダンパ100の開閉を制御するために、バタフライダンパ100に連結された制御ユニット106を備える。
【0070】
図6では、別のボイラ112が示されている。ボイラ112は、ボイラ70と類似点を有し、以下においては、ボイラ112の異なる特徴に焦点が当てられる。ボイラ112は、円筒形の周囲壁116と、下方壁118と、上方壁120とによって定められる筐体114を備える。ボイラ112は、筐体114の内部においてバイパス管124の周りで延びるいくつかの螺旋状の管122(ここでは2つ)をさらに備える。管122は、筐体114を通じて水および蒸気を搬送するように構成されており、水は、筐体114の下方部分へと延びる媒体入口126を通じてボイラ112によって受け入れられ、蒸気、または蒸気と水との混合物は、筐体114の上方部分から外へと延びる媒体出口128を通じてボイラ112から排出される。筐体114およびバイパス管124は、ディーゼルエンジン(図示されていない)からの排気ガスEG1を、ボイラ112を通じて搬送するように構成されており、排気ガスEG1は、筐体114の下方壁118を通じて延びる排気ガス入口130と、筐体114の上方壁120を通じて延びる(第1の)排気ガス出口132とを通じて、ボイラ112によって受け入れられる。
【0071】
ボイラ112は、バイパス管124を通る排気ガス流れを調節するために、バイパス管124の排気ガス出口136に配置されたバタフライダンパ134を備える。バイパス管124の排気ガス入口138は常に開いている。さらに、ボイラ112は、第1の圧力センサ142を用いてバイパス管124の上流で測定される第1の排気ガス圧力と、第2の圧力センサ144を用いてバイパス管124の下流で測定される第2の排気ガス圧力との間の圧力差に基づいてバタフライダンパ134の開閉を制御するために、バタフライダンパ134に連結された制御ユニット140を備える。
【0072】
本発明の上記の実施形態は、例として理解されるだけであるべきである。当業者は、検討された実施形態が、本発明の概念から逸脱することなく、多くの方法で変形および組み合わせされ得ることを理解する。
【0073】
例として、第2の圧力センサは、
図3~
図6に示されたボイラで省略されてもよい。付加的に/代替的に、第1の圧力センサは、エンジン背圧を測定するために、ボイラの排気ガス入口の上流に配置されてもよい。
【0074】
別の例として、
図2および
図4~
図6に示されたボイラは、媒体出口から排出される蒸気の蒸気圧力を測定するための第3の圧力センサを備えてもよい。同様に、
図2、
図3、および
図5~
図6に示されたボイラも、蒸気を廃棄するための連結部と、廃棄される蒸気の量を測定するための蒸気流量計とを備えてもよい。
【0075】
バイパス調節器は、バタフライダンパとして設計される必要はなく、例えば、ガスダンパ、単一もしくは複数の羽根のダンパ、ルーバダンパ、仕切形ダンパ、または吸込ベーンダンパといった、任意の適切な方法で設計できる。
【0076】
バイパス管の端を外部から遮断するように構成されることの代替として、バイパス調節器は、代わりに、バイパス管の内部に配置されてもよく、および/または、バイパス管の中間部分においてバイパス管を遮断するように構成されてもよい。
【0077】
本発明に関連しない詳細な記載が省略されていることと、図が概略に過ぎず、縮尺通りに描かれていないこととは、強調されるべきである。図のうちのいくつかが他の図より単純化されていることも言っておかなければならない。そのため、いくつかの構成要素は、ある図では示され得るが、別の図では除外されている可能性がある。最後に、本明細書で使用されているように、「第1」、「第2」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「水平」、「鉛直」などの接頭語は、異なる構成要素の間で区別を行うために使用されているだけであり、相対的な位置決めまたは配向に関して要件を課してはいない。
【符号の説明】
【0078】
2 ボイラ
4 ディーゼルエンジン、第1の外部排気ガス供給源
6 ダクト
8 容器
10 下方室、ヘッダ
12 筐体
14 上方室、ヘッダ
16 第1の束
18 管
20 バイパス管
22 下方管板
24 上方管板
26 排気ガス入口
28 第1の排気ガス出口
30 炉
32 第2の束
34 管
36 第2の排気ガス出口
38 媒体入口
40 媒体出口
42 周囲壁
44 バタフライダンパ
46 排気ガス出口
48 排気ガス入口
50 制御ユニット
52 第1の圧力センサ
54 第2の圧力センサ
56、58 ボイラ
60 蒸気圧力センサ
62 ボイラ
64、66 連結部
68 蒸気流量計
70 ボイラ
72 容器
74 下方室
76 筐体
78 上方室
80 第3の束
82 管
84 下方管板
86 上方管板
88 バイパス管
90 媒体入口
92 媒体出口
94 排気ガス入口
96 (第1の)排気ガス出口
98 周囲壁
100 バタフライダンパ
102 排気ガス出口
104 排気ガス入口
106 制御ユニット
108 第1の圧力センサ
110 第2の圧力センサ
112 ボイラ
114 筐体
116 周囲壁
118 下方壁
120 上方壁
122 管
124 バイパス管
126 媒体入口
128 媒体出口
130 排気ガス入口
132 (第1の)排気ガス出口
134 バタフライダンパ
136 排気ガス出口
138 排気ガス入口
140 制御ユニット
142 第1の圧力センサ
144 第2の圧力センサ
c 長手方向中心軸
EG1 第1の外部排気ガス供給源からの排気ガス
EG2 第2の排気ガス供給源からの排気ガス