IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許7453407生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム
<>
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図1
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図2A
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図2B
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図3
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図4
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図5
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図6
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図7
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図8
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図9
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図10
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図11
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図12
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図13
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図14
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図15
  • 特許-生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240312BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N21/17 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022558800
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041022
(87)【国際公開番号】W WO2022091403
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】内藤 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雄太
(72)【発明者】
【氏名】久保田 啓之
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-507319(JP,A)
【文献】特開2006-081893(JP,A)
【文献】特開2020-068739(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109007975(CN,A)
【文献】国際公開第2012/066930(WO,A1)
【文献】特開2006-047209(JP,A)
【文献】特開2007-143702(JP,A)
【文献】実開平03-088507(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107319639(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 -5/03
A61B 5/145-5/1464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織のための測定装置であって、
前記生体組織の一部である被測定物に接触する測定面を通じて、発光部から前記被測定物に光を照射すると共に前記被測定物から反射された反射光を受光部が受けることにより、前記被測定物の光学データを測定する光学センサと、
前記光学センサの温度を測定する温度センサと、
前記光学センサの温度に基づいて前記光学データを処理し、前記処理された光学データに基づいて前記被測定物に関する測定結果を導出するデータ処理部と、
を備え、前記データ処理部による前記光学データの処理は、前記光学センサの温度が指定温度を示している状態で測定された前記光学データを選択することを含む、測定装置。
【請求項2】
当該測定装置を起動したときの環境温度に基づいて、前記指定温度が動的に決定されるように構成される、請求項に記載の測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定装置において、
前記データ処理部による前記光学データの処理が、前記光学センサの温度に基づいて、前記反射光の波長毎に前記光学データを補正することを含む、測定装置。
【請求項4】
請求項に記載の測定装置において、
前記光学センサの温度に対する光強度の変化率のモデルが前記波長毎に予め規定されて記憶部に格納されており、前記光学データが前記モデルを用いて補正されるように構成される、測定装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載の測定装置において、
前記光学センサの温度が所定の閾値以下である場合に前記発光部が活性化され、
前記光学センサの温度が前記所定の閾値よりも高い場合に前記発光部が非活性化される、
ように構成される、測定装置。
【請求項6】
前記測定面が光透過性を有する窓を備える、請求項1からの何れか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定面が、鉛直方向に対し、前記測定面を前記受光部の側に所定の角度だけ勾配した勾配面上で、前記受光部と前記発光部の間の位置となるように配置される、請求項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記勾配面の勾配に関する前記所定の角度が15度以下である、請求項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記発光部及び前記受光部と、前記測定面とが光ファイバを通じて連結される、請求項1からの何れか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
請求項に記載の測定装置において、
前記光ファイバが、前記発光部及び前記測定面を連結する第1ファイバと、前記受光部及び前記測定面を連結する第2ファイバとを備え、
前記第1ファイバの前記測定面側の端部と、前記第2ファイバの前記測定面側の端部との間の距離が、0~3mmの範囲内である、測定装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の測定装置において、
当該測定装置が吸引装置に具備され、前記吸引装置と一体で構成される、測定装置。
【請求項12】
前記温度センサが、前記吸引装置が備える空気流路と前記光学センサとの間に配置される、請求項11に記載の測定装置。
【請求項13】
請求項1から10の何れか一項に記載の測定装置において、
当該測定装置が吸引装置に着脱可能に取り付けられる、測定装置。
【請求項14】
請求項11から13の何れか一項に記載の測定装置において、
前記被測定物が口腔組織である、測定装置。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載の測定装置を具備した吸引装置。
【請求項16】
生体組織のための測定方法であって、
温度センサが光学センサの温度を測定するステップと、
前記光学センサが光学データを測定するステップであって、
前記生体組織の一部である被測定物に接触する測定面を通じて、前記被測定物に光を照射すると共に、前記被測定物から反射された反射光を受けることを含む、ステップと、
前記光学センサの温度に基づいて前記光学データを処理するステップであって、
前記光学センサの温度が指定温度を示している状態で測定された前記光学データを選択することを含む、ステップと、
前記処理された光学データに基づいて、前記被測定物に関する測定結果を導出するステップと、
を含む、測定方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記光学データを処理するステップが、前記光学センサの温度に基づいて、前記反射光の波長毎に前記光学データを補正することを含む、測定方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の測定方法を測定装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体組織のための測定装置、吸引装置、生体組織のための測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の水分のような生体組織の物質量を測定するための測定装置が知られている。このような測定装置では、生体組織を測定するために種々のセンサが採用されている。生体組織のための測定装置に適用されるセンサの例は、光学素子を用いたセンサ(光学センサ)である。
【0003】
一方、喫煙装置のようなユーザが携行する喫煙具に対し、生体組織の物質量を測定させる測定機構を適用することも知られている。生体組織の物質量を測定させる測定装置を備えた喫煙装置もまた生体組織の測定装置の例である。このような喫煙装置では、例えば、電気化学センサを採用することにより、喫煙者であるユーザの唾液中のニコチン代謝物質の量や濃度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/092192号パンフレット
【文献】特開2007-127666号公報
【文献】国際公開第2007/116675号パンフレット
【文献】特表2018-526971号公報
【文献】特表2018-523982号公報
【文献】国際公開第2019/173923号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学センサを適用した測定装置は、発熱時の温度の影響が大きく、十分な放熱機構を適用するために、実験室や工場で使われるような大型化された装置となるのが通常である。また、光学センサを起動してから動作が安定化するまでに時間を要するので、測定時間が長くなるのが通常である。つまり、光学センサを適用した生体組織の測定装置は、ユーザにとって気軽に利用できるものではなかった。測定機構を喫煙具に適用する場合には尚更、喫煙成分を生成する際に加熱を伴うことも想定され、加熱による光学センサへの影響を特に考慮する必要がある。
【0006】
本開示は、光学センサを用いて、ユーザの片手に収まる程度に小型化され、ユーザが気軽に利用することができる生体組織のための測定装置を提供することを目的の1つとする。また、本開示は、光学センサで取得される光学データを適切に処理することにより、生体組織の物質量の測定精度を向上させる測定装置を提供することを他の目的の1つとする。更に、本開示は、このような光学センサを用いた測定機構を、喫煙具をはじめとした吸引装置に適用することを更なる他の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点において、生体組織のための測定装置が提供される。係る測定装置は、生体組織の一部である被測定物に接触する測定面を通じて、発光部から被測定物に光を照射すると共に被測定物から反射された反射光を受光部が受けることにより、被測定物の光学データを測定する光学センサと、光学センサの温度を測定する温度センサと、光学センサの温度に基づいて光学データを処理し、処理された光学データに基づいて被測定物に関する測定結果を導出するデータ処理部と、を備える。
【0008】
第2観点の測定装置は、第1観点の測定装置において、データ処理部による光学データの処理が、光学センサの温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択することを含む。
【0009】
第3観点の測定装置は、第2観点の測定装置において、当該測定装置を起動したときの環境温度に基づいて、指定温度が動的に決定されるように構成される。
【0010】
第4観点の測定装置は、第1観点から第3観点の何れかの測定装置において、データ処理部による光学データの処理が、光学センサの温度に基づいて、反射光の波長毎に光学データを補正することを含む。
【0011】
第5観点の測定装置は、第4観点の測定装置において、光学センサの温度に対する光強度の変化率のモデルが波長毎に予め規定されて記憶部に格納されており、光学データがモデルを用いて補正されるように構成される。
【0012】
第6観点の測定装置は、第1観点から第5観点の何れかの測定装置において、光学センサの温度が所定の閾値以下である場合に発光部が活性化され、光学センサの温度が所定の閾値よりも高い場合に発光部が非活性化されるように構成される。
【0013】
第7観点の測定装置は、第1観点から第6観点の何れかの測定装置において、測定面が光透過性を有する窓を備える。
【0014】
第8観点の測定装置は、第7観点の測定装置において、測定面が、勾配面上で、受光部と発光部の間の位置となるように配置される。
【0015】
第9観点の測定装置は、第8観点の測定装置において、勾配面の勾配の角度が15度以下である。
【0016】
第10観点の測定装置は、第1観点から第6観点の何れかの測定装置において、発光部及び受光部と、測定面とが光ファイバを通じて連結される。
【0017】
第11観点の測定装置は、第10観点の測定装置において、光ファイバが、発光部及び測定面を連結する第1ファイバと、受光部及び測定面を連結する第2ファイバとを備え、第1ファイバの測定面側の端部と、第2ファイバの測定面側の端部との間の距離が、0~3mmの範囲内である。
【0018】
第12観点の測定装置は、第1観点から第11観点の何れかの測定装置において、当該測定装置が吸引装置に具備され、当該吸引装置と一体で構成される。
【0019】
第13観点の測定装置は、第12観点の測定装置において、温度センサが、吸引装置が備える空気流路と光学センサとの間に配置される。
【0020】
第14観点の測定装置は、第1観点から第11観点の何れかの測定装置において、当該測定装置が吸引装置に着脱可能に取り付けられる。
【0021】
第15観点の測定装置は、第12観点から第14観点の何れかの測定装置において、被測定物が口腔組織である。
【0022】
第16観点において、第1観点から第15観点の何れかの測定装置を備えた吸引装置が提供される。
【0023】
第17観点において、生体組織のための測定方法が提供される。係る測定方法は、温度センサが光学センサの温度を測定するステップと、光学センサが光学データを測定するステップであって、生体組織の一部である被測定物に接触する測定面を通じて、被測定物に光を照射すると共に、被測定物から反射された反射光を受けることを含む、ステップと、光学センサの温度に基づいて光学データを処理するステップと、処理された光学データに基づいて、被測定物に関する測定結果を導出するステップと、を含む。
【0024】
第18観点の方法は、第17観点の方法において、光学データを処理するステップが、光学センサの温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択することを含む。
【0025】
第19観点の方法は、第17観点又は第18観点の方法において、光学データを処理するステップが、光学センサの温度に基づいて、反射光の波長毎に光学データを補正することを含む。
【0026】
第20観点において、第17観点~第19観点の何れかの方法を測定装置に実行させるためのプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る生体組織のための測定装置の全体斜視図である。
図2A図1の測定装置の測定部を正面からみた平面図である。
図2B図1の測定装置の測定部を側面からみた切断図である。
図3図1の測定装置の構成例を示す模式図である。
図4】実施形態に係る生体組織のための測定方法を示す動作フロー図である。
図5図4の概略動作フローの変形例を示す動作フロー図である。
図6】温度制御動作に伴う光学センサの温度遷移例を示す概略グラフ図である。
図7】光強度の変化率のモデル例を示す概略グラフ図である。
図8】本実施形態に係る吸引装置の構成例を示す模式図である。
図9】吸引装置の他の構成例を示す模式図である。
図10図8の吸引装置の外観図を示す模式図である。
図11図10の吸引装置の要素の配置例を示す模式図である。
図12図10の吸引装置の要素の他の配置例を示す模式図である。
図13図10の吸引装置の要素の他の配置例を示す模式図である。
図14図10の吸引装置の要素の他の配置例を示す模式図である。
図15図8の吸引装置に測定装置を取り付けた例を示す模式図である。
図16図8の吸引装置に測定装置の取り付けた他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態に係る吸引装置について添付図面を参照して説明する。添付図面において、同一又は類似の要素には同一又は類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一又は類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。更に、図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
【0029】
本実施形態に係る生体組織のための測定装置は、ユーザが片手で保持できる程度に小型化された、光学センサを利用した装置である。つまり、光学センサを利用して生体組織に光を照射することで測定を行う。このような光学センサは、受光部及び発光部を備える。そして、生体組織の一部である被測定物に測定装置を接触させ、発光部から光を照射すると共に、被測定物から反射された反射光を受光部が受けることにより、被測定物の光学データを測定する。
【0030】
一般的に、光学センサは、測定素子(光学素子)がむき出しになることがなく堅牢性が高い。また、素子を保護するためのフィルム等も不要であるので利用可能性が高い。更に、光学素子を生体組織に直接接触させる必要もないのでユーザに不快感を与えることもない。
【0031】
他方、ユーザが片手で保持できる程度に小型化された、光学センサを用いた測定装置は、発光素子が発光する時の発熱によるノイズを受けやすい。具体的には、発光素子が発熱して発光素子の温度が上昇すると、そこから発光されるピーク波長が大きくなる。これにより、受光素子が受ける反射光の光強度は相対的に低下することになる。また、ユーザは、小型化された測定装置を携行することになるため、季節及び屋内外で測定装置が利用されることが想定される。つまり、外部環境の温度変化による影響を受けやすくなる。これらの温度に係る要因により、測定データが大きく変動し、測定装置の測定精度に悪影響を及ぼすことも想定される。
【0032】
そこで、本実施形態に係る生体組織のための測定装置は、前述の光学センサの構成に加えて、光学センサの温度を測定する温度センサを更に備える。そして、光学センサの温度情報及び光学データを関連付ける。より詳しくは、温度センサで取得される光学センサの温度に基づいて、光学センサで取得される光学データを適切に処理し、当該処理された光学データに基づいて生体組織に関する測定結果を導出する。これにより、小型化された測定装置においても、発光素子が発光する際の発熱によるノイズの影響を考慮しつつ、適切な測定結果を導出することができる。
【0033】
ここで、生体組織のための測定装置により測定される被測定物は、光学センサで測定可能なものであればよい。なお、光学センサは複数の波長を測定することができるので、生体組織の多種多様な物質量を同時に測定することができる。生体組織には、口腔、体表面の皮膚等が含まれる。被測定物が口腔の場合は、例えば、唾液中の物質(水分、グルコース等)、口腔組織の物性(例えば、口腔組織の色、舌のざらつきの程度)等を分析して測定結果を導出する。また、被測定物が体表面皮膚の場合は、例えば、汗中の物質(水分等)や皮膚の物性(肌の乾燥度等)などが挙げられる。本測定装置は、生体組織以外の物質の量や物性の測定にも適用し得る。
【0034】
(1)第1実施形態
(1-1)測定装置の全体構成例
図1は、本実施形態に係る生体組織のための測定装置10の全体斜視図である。また、図2A及び図2Bは、測定装置10に含まれる測定部20の概略図である。具体的には、図2Aは測定部20を正面からみた平面図であり、図2Bは測定部20の側面に関し、図1のA-A線に沿って切断した断面図である。
【0035】
説明の便宜のために、図1図2A及び図2Bでは、X-Y-Z直交座標系を規定している。つまり、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は測定装置10を水平方向に切断し、Y軸は測定装置10の正面から裏面へ延出する方向を向いている。以降、図示されたX-Y-Z座標系はこのような意味で用いるものとする。
【0036】
測定装置10は、ユーザが片手で保持できる程度に小型化された装置である。測定装置10は、生体組織に接触させて測定するための測定部20と、本体部30とを備える。測定部20は、本体部30の上面からZ軸方向に延出するように配置されている。また、測定部20は、X-Z平面に沿って測定面21を形成している。つまり、ユーザが生体組織の一部である被測定物を測定面21に接触させることにより、生体組織が測定される。なお、測定面21は開口としてよい。
【0037】
測定部20は、その内部に、受光部22及び発光部23を備える光学センサ24と、温度センサ25と、熱放出部26とを備える。
【0038】
光学センサ24は、受光部22及び発光部23が近接して配置される。より詳しくは、受光部22及び発光部23は鉛直方向(+Z方向)に沿って、受光部22が上、発光部23が下の位置となるように近接して配置されており、受光部22及び発光部23は、それぞれの素子が-Y方向を指向している。そして、測定部20を通じて、発光部23から被測定物に光を照射すると共に被測定物から反射された反射光を受光部22が受けるように構成される。例えば、被測定物が口腔の場合、発光部23から放射された光が口腔内の舌や唇で照射され、その反射光を受光部22が受光する。これにより、被測定物の光学データが測定される。なお、受光部22及び発光部23の配置関係は、上記に限定されず、+Z方向に沿って受光部22が下、発光部23が上の位置となってもよい。また、光学データは、これに限定されないが、光の複数の波長データ、波長毎の光強度を含むのがよい。
【0039】
光学センサ24の受光部22は、受光素子によって構成される。図1図2A及び図2Bの例では、受光素子は、測定装置10の小型化のためにフォトダイオード(PD)が採用されている。しかしながら、受光部22はこれに限定されず、外部光電効果(光電子放出)を用いた光電管、光電子増倍管、半導体の内部光電効果を利用したフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード、光導電セル、イメージセンサ、光電池、光吸収による熱を検出する放射用熱電対、サーモパイル、焦電効果を利用する焦電検出器等が採用されてもよい。
【0040】
また、光学センサ24の受光部22は、分光素子又は光学フィルタのような1つ以上の波長を特定して受ける波長特定部(不図示)を備えるのがよい。分光素子は、これに限定されないが、波長選択性がある機構を具備する回折格子やプリズム等とするのがよい。これにより、複数の種別の生体情報を、複数の波長に関する光学データとして取得することができる。すなわち、生体組織の複数の物質量を同時に測定することができる。波長特定部は、受光素子と一体形成されてもよい。
【0041】
光学センサ24の発光部23は、発光素子によって構成される。発光部23は、これに限定されないが、温度放射光源、放熱発光光源、電界発光光源、レーザー等によって構成するのがよい。図1図2A及び図2Bの例では、発光素子は、測定装置10の小型化のために発光ダイオード(LED)が採用されている。しかしながら、発光素子はこれに限定されず、レーザダイオード(LD)、蛍光ランプ、白熱ランプを採用してもよい。特に、測定装置10において生体組織の多様な物質を測定するためには、発光素子として、広帯域型LEDが採用されてもよい。
【0042】
なお、発光部23から照射され、被測定物から反射された光を受光部22が効率よく受けるために、測定面21を鉛直方向(+Z方向)に対し受光部22側(図2Bの場合+Y方向に)角度αだけ勾配した勾配面を形成するのがよい。なお、勾配させる向きは、図2Bでは、+Z方向に対し、発光部23から測定面21への入射角が、勾配がない場合と比較して小さくなる向きである。このように測定面21を勾配させる理由は次のとおりである。
【0043】
発光部23として採用され得るLEDから放射される光は、全方向に拡がりをもって直進する。特に、放射角が0°~60°の範囲では、直進する光と比較して50%以上の強度を維持することが当業者には知られている。また、光学フィルタのようなスリットを有する機構が受光部22に採用された場合、受光部22に反射光が入射する角度が受光強度に影響することも知られている。これに対し、本発明者の鋭意検討の結果、測定面21を受光部22に向けて所定の角度だけ勾配させることにより、勾配させない場合と比べて、受光部22における入射角を小さくすることができ、受光感度を向上できるとの知見を得た。特に、一実施形態の吸引装置10では、勾配の角度αは0°~15°の範囲で調整するのがよく、より好ましくは、1°~5°の範囲(例えば2°)で調整するのがよい。なお、図2Bにおいて受光部22及び発光部23の配置関係を入れ替えた場合には、勾配させる向きが逆(つまり+Z方向に対し-α度となる)になることが当業者には理解される。
【0044】
温度センサ25は、光学センサ24の温度を測定する。前述のとおり、発光部23が自ら発生する熱により、光学センサ24の光学データに影響することがあるので、データ測定に際しては発光部23の温度を考慮する必要がある。つまり、温度センサ25は、少なくとも発光部23の温度を測定するように発光部23の近傍に配置される。温度センサ25は、発光部23の近傍であれば、任意の位置に配置されてよい。温度センサ25により測定された光学センサ24(特に発光部23)の温度は、光学データを関連付けられるのがよい。
【0045】
また、受光部22の温度も測定される光学データに影響することがある。特に、受光部22と発光部23とが近接して配置される場合には、受光部22の温度が、測定される光学データに大きく影響しうる。すなわち、受光部22の温度を測定するための温度センサ25が別途設置されてもよいし、1つの温度センサ25で受光部22と発光部23の両方の温度が測定されてもよい。なお、温度センサ25は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ、サーモカップル、熱電対列、プラチナ温度センサ等の何れかによって構成されるのがよい。
【0046】
熱放出部26は、発光部23が動作している際に発生する熱を放出するための機構として構成される。つまり、発光部23の近傍に配置するのがよい。この例では、熱放出部26は、熱伝導板によって構成されるのがよく、特に、X-Z平面に沿って発光部23の背後に配置されている。これにより、発光部23が発生した熱は、Z軸方向に沿って放出することができる。なお、熱伝導板を採用する場合、熱伝導率が0.20W/(m・K)以上、より好ましくは20W/(m・K)以上の物質で構成するのがよい。熱放出部26は、熱伝導板に限定されず、この他にも空冷ファン、ペルチェ式冷却機構等が採用されてもよい。
【0047】
(1-2)測定装置の機能構成例
図3は、本実施形態に係る生体組織のための測定装置10の機能構成例の模式図である。図3に示すように、本構成例に係る測定装置10は、電源部11、センサ部12、通知部13、記憶部14、通信部15、及び制御部16を含む。制御部16は、データ処理部17を含む。
【0048】
電源部11は、電力を蓄積すると共に、制御部16による制御に基づいて測定装置10の各構成要素に電力を供給する。電源部11は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充電式バッテリにより構成してもよい。代替では、電源部11は、マンガン乾電池、アルカリマンガン電池等の一次電池により構成してもよい。
【0049】
センサ部12は、測定装置10に関する各種情報を取得する。センサ部12は、前述の光学センサ24及び温度センサ25を含む。具体的には、光学センサ24は、測定面21を通じて、発光部23から被測定物に発光すると共に、被測定物からの反射光を受光部22で受ける。温度センサ25は、発光部23の近傍に配置され、光学センサ24(特に発光部23)の温度を測定する。これ以外にも、センサ部12は、ボタン又はスイッチ等を含む、ユーザからの情報の入力を受け付ける入力装置により構成される。
【0050】
通知部13は、各種情報をユーザに通知する。通知部13は、例えば、発光する発光装置(例えば、LED)、画像及びテキスト等の情報を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等により構成される。例えば、測定装置10で測定された、被測定物に関する測定結果を表示装置に表示するのがよい。
【0051】
記憶部14は、測定装置10の動作のための各種情報を記憶する。各種情報には、光学センサ24によって取得された測定データと、温度センサ25によって取得された温度データと、生体組織に関して導出された測定結果とが含まれる。記憶部14は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体により構成される。また、記憶部14は、測定装置10を動作させるためのコンピュータ実行可能命令に加えて、ファームウェアのようなプログラム等も格納する。
【0052】
通信部15は、有線又は無線の任意の通信規格に準拠した通信を行うことが可能な通信インタフェースである。かかる通信規格としては、無線通信の場合は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等が採用され得る。また、有線通信の場合は、マイクロUSB等の外部接続端子を通じて、例えば、データ通信ケーブルを接続する。これにより、外部装置との間で測定装置10の動作に関連するデータの入/出力を行う。
【0053】
制御部16は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って測定装置10内の動作全般を制御する。制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)、及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって実現される。データ処理部17は、特に、光学センサ24及び温度センサ25を含むセンサ部12を起動させてデータを取得させると共に、取得した光学データ及び温度に基づいて生体組織に関する測定結果を導出する。
【0054】
以上、測定装置10の構成例を説明した。もちろん測定装置10の構成は上記に限定されず、以下に例示する多様な構成をとり得る。
【0055】
本実施形態に係る生体組織のための測定装置10は、光学センサ24を用いて、ユーザの片手に収まる程度に小型化され、ユーザが気軽に利用することができる。また、このような測定装置10は、光学センサ24で取得される光学データを適切に処理することにより、生体組織の物質量の測定精度を向上させる。更に、このような測定装置10は、光学センサ24を用いた測定機構を、喫煙具をはじめとした吸引装置に適用することができる。
【0056】
(1-3)測定装置の動作例
図4は、本実施形態に係る生体組織のための測定方法を示すフロー図であり、測定装置10の動作に関する概略動作フローを示している。以下では、測定装置10に関し、制御部16が主体となり生体組織の測定結果を導出するために実行される動作を示すが、測定装置10の動作はこれに限定されない。つまり、ここに示される各ステップは例示に過ぎず、任意の他のステップが含まれてもよいし、以下に特に注記する場合を除き、各ステップの動作順序も限定されない。
【0057】
本動作フローは、測定装置10の電源がオンされ、測定装置10が起動されたときに開始する。ここでは、温度センサ25が起動されている。制御部16は、温度センサ25に、光学センサ24の温度を測定させる(ステップS10)。光学センサ24の温度は、少なくとも発光部23の温度を含む。これに加えて、受光部22の温度を含んでもよい。
【0058】
特に、受光部22と発光部23とが離間して配置される場合(例えば、10mm以上離間させる場合)には、発光部23の温度と受光部22の温度の両方をそれぞれ取得して以降の処理に使用するのがよい。他方、受光部22と発光部23とが近接して配置される場合(例えば、10mm以内に配置される場合)には、発光部23の温度と受光部22の温度とが同一であるものとして、発光部23のみの温度を使用すればよい。
【0059】
次いで、制御部16は、測定された温度センサ24の温度が所定の温度条件を満たすかについて判定する(ステップS20)。所定の温度条件は、例えば、所定の温度閾値(例えば、摂氏60度(℃))を用いて規定するのがよい。温度条件は、予め設定され記憶部14に格納されている。所定の温度条件を設けることにより、光学センサ24の動作を所望の範囲に制限する。
【0060】
具体的には、測定された光学センサ24の温度が所定の温度条件を満たす場合、例えば、所定の温度閾値以下である場合(Yes)、測定装置10の測定が適切に行えるものとして、光学センサ24を活性化する(ステップS30)。一方、光学センサ24の温度が所定の温度条件を満たさず、例えば、所定の温度閾値よりも高い場合には(No)、光学センサ24を活性化することなく、ステップS10に戻る。特に、光学センサ24が既に活性化されている場合には、光学センサ24を非活性化するのがよい(ステップS25)。なお、活性化及び非活性化される対象は、光学センサ24全体でもよい。代替では、対象を光学センサ24の発光部23のみとしても、光学センサ24の受光部22及び発光部23の両方としてもよい。
【0061】
これにより、光学センサ24(特に発光部23)の温度過熱を防ぐことができ、測定装置10の安全性を向上させることができる。また、適切な温度条件下で測定装置10を安定的に動作させることができ、測定の精度を向上させることができる。更に、電源部11のバッテリを節約することもできる。
【0062】
ステップS30に続き、制御部16は、光学センサ24に、生体組織の一部である被測定物の光学データを測定させる(ステップS40)。測定される光学データは、ステップS10で測定済みの光学センサ24の温度と関連付けられる。なお、光学データは、例えば、光の複数の波長データと、波長毎の光強度とを含むのがよい。
【0063】
次いで、制御部16のデータ処理部17は、測定済みの光学センサ24の温度に基づいて、光学データを処理する(ステップS50)。より詳しくは、データ処理部17は、光学センサ24の温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択することにより、光学データを特定する。
【0064】
ここで、指定温度とは、所定の設定値である。また、光学センサ24の温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択するとは、発光部23の温度が一定の指定温度区間内にある場合に、測定された光学データから、発光部23の温度に関連付けられている光学データを選択することをいう。更に、一定の指定温度区間とは、例えば、50℃±2.0℃のように、温度の下限値(48.0℃)と上限値(52.0℃)とを有する区間のことである。このような情報は、予め設定され記憶部14に格納されている。
【0065】
なお、ステップS50において、光学データを選択して特定する構成は、所定の設定値に対応している光学データを取得できるのであれば任意の手法を採用してよい。例えば、ステップS40で光学データを測定している間に、光学センサ24の温度が設定値に対応しているタイミングで対象の光学データをリアルタイムに選択的に取得してもよい。或いは、ステップS40で光学データを測定した全ての光学データを一旦記憶部14に格納してから、対象の光学データのみを選択的に保持し、それ以外の光学データは記憶部14から削除してもよい。
【0066】
次いで、制御部16のデータ処理部17は、ステップS50で処理された光学データに基づいて、被測定物に関する測定結果を導出する(ステップS60)。例えば、指定温度に実質的に対応しているとして選択された光学データに含まれる2つの波長データを用いて、これらの相対比を計算する。そして、計算された相対比を、予め計算して決定しておいた基準状態値と比較することにより、基準状態に対する測定時の状態を特定するのがよい。
【0067】
ステップS60の測定結果の導出例は次のとおりである。ここでは、測定装置10を用いて、人の口腔内の水分量(つまり、唾液量)を測定することを想定する。この場合、被測定物は人の舌である。例えば、人の口腔内の水分量を測定する指標として、900nm及び970nmの波長の反射光の反射比率を適用することができる。つまり、ステップS50で処理された光学データのうち、900nm及び970nmの波長の反射光の光強度のデータを選択的に用いて、その相対比率を計算する。計算される相対比率は、900nm及び970nmの波長の反射光の反射比率となる。900nm及び970nmの波長に関する反射光の光強度は、光学センサ24が備える波長特定部によって取得することができる。
【0068】
一方、人の舌の唾液を脱脂綿等で十分に除去した仮想乾燥舌に対し、900nm及び970nmの波長の反射光の光強度を予め測定し、その反射比率を計算して記憶部14に格納しておく。そして、測定装置10で測定された反射比率を、格納された仮想乾燥舌の反射比率と比較することにより、舌が通常状態にある又は乾燥状態にある等の状態を判定することができる。また、具体的な唾液量を計算することができる。すなわち、本実施形態に係る生体組織のための測定装置10を使用することにより、人の口腔内の唾液量を簡易に測定することができる。なお、本発明者らによる実験によれば、一例では、指定温度区間を45℃±2.5℃とした場合、仮想乾燥舌の反射比率に対して、通常状態にある舌の反射比率は一律に大きく、その相対比率は凡そ1.03倍程度で有意な差として計算されることが確認された。
【0069】
最後に、制御部16は、ステップS60で導出された測定結果を通知部13に通知させる(ステップS70)。例えば、画像等の情報を表示装置に表示することにより、測定結果をユーザに通知するのがよい。前述の人の口腔内の唾液量を測定する例では、舌が通常状態にある又は乾燥状態にある等の具体的な口腔健康状態、及び計算された唾液量をユーザに通知するのがよい。これに加えて、人の口腔内の唾液量は、人の口臭とも関係するので、計算された唾液量から更に人の口臭レベルを計算し、これをユーザに通知してもよい。
【0070】
ステップS70で測定結果が通知されると、本動作フローは終了する。
【0071】
本実施形態に係る生体組織のための測定装置10の動作例では、特に、光学データの処理において、光学センサ24の温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択する。つまり、複数の光学データから所望のものを選択すればよいので、制御部16に掛かる計算負荷は小さくて済む。また、このような光学データは生データであるので、これを用いることにより、編集されたデータを用いるのと比較して、最終的に得られる測定結果の精度が高いものとなる。
【0072】
(1-4)測定装置の動作の変更例
(1-4-1)変更例1
前述の測定装置10の動作例は、ステップS20において、測定装置10の動作のための温度条件が設定されたものであった。つまり、制御部16は、ステップ20において温度センサ25の温度が所定の温度条件を満たすかについて判定し、その結果に応じてステップS30以降の処理を実行可能とした。これに加えて、本変形例では、測定装置10の動作のための更なる温度条件を設定して、ステップS30で光学センサ24が活性化された後に、更に制御部16によって測定装置10の動作を制限してもよい。
【0073】
図5は、図4の概略動作フローに関連した変形例であり、図4のステップS30とS70の間に、測定装置10の動作のために更なる温度条件を付加した概略動作フロー図である。なお、以下では、図4のステップS30で光学センサ24が活性化されたのに応じて、その旨が通知部13によって通知されていることを想定する。例えば、LEDを点灯してその旨をユーザに通知している。
【0074】
ステップS30で光学センサ24が活性化されると、光学センサ24は、発光部23の発光に伴い温度上昇段階となる。最初に制御部16は、温度センサ25に、光学センサ24が第1温度に達したことを検出させる(ステップS35)。第1温度は、測定動作を行うことを許容する許容温度範囲の下限値である。例えば、光学センサ24が活性化されて数秒程度で到達可能な温度(例えば、20℃)とするのがよい。
【0075】
代替では、第1温度は、前述のステップS40及びS50で用いる指定温度としてもよい。なお、図4の動作フローの説明においては、指定温度は1つ設定されるものとしたが、これに限定されない。具体的には、本変形例では、指定温度は、複数設定されてもよい。複数の指定温度が設定される場合、測定時に使用される1つの指定温度が複数の指定温度の中から動的に決定される。例えば、測定装置10を起動した時の環境温度(例えば、室温)よりも高く且つ最も環境温度に近いものを、指定温度として動的に決定するのがよい。複数の指定温度を設定することは、特に、環境温度の変化が大きい環境で測定装置10が使用されるような場合でも、より適切な設定値を柔軟に選択することができるので、有利である。なお、環境温度は、光学センサ24が活性化する前に温度センサ25で計測してもよく、測定装置等に別途設置した温度センサで計測してもよい。
【0076】
ステップS35で温度センサ25が第1温度を検出すると、制御部16は、前述のステップS40からステップS60の測定動作を順次実行して、測定結果を導出する。
【0077】
次いで、制御部16は、温度センサ25に、光学センサ24が第2温度に達したことを検出させる(ステップS62)。第2温度は、第1温度よりも高い温度であり、測定動作を行うことを許容する許容温度範囲の上限値である。
【0078】
ステップS62で温度センサ25が第2温度を検出すると、制御部16は、光学センサ24の温度が測定動作のための許容限度を超えたものと判断し、光学センサ24を非活性化する(ステップS64)。光学センサ24が非活性化されると、制御部16は更に、その旨を通知部13に通知させるのがよい。例えば、LEDを消灯又は点滅させて、測定装置10が許容限度を超えたことをユーザに通知するのがよい。
【0079】
ステップS64で光学センサ24が非活性化されると、光学センサ24は、温度下降段階となる。そして、制御部16は、温度センサ25に、光学センサ24が第3温度まで下降したことを検出させる(ステップS66)。第3温度は、測定動作を再び行うことを許容するための再開温度であり、許容温度範囲の下限値である第1温度と同じでもよいし、第1温度より低くてもよい。第3温度が検出されると、制御部16は更に、その旨を通知部13に通知させるのがよい。例えば、ステップS64で消灯されていたLEDを再度点灯させて、測定装置10が測定の再開が可能であることをユーザに通知するのがよい。
【0080】
ステップS68では、制御部16は測定装置10の測定動作を終了するか判定する(ステップS68)。例えば、ボタン又はスイッチ等を通じて、ユーザからの指示を受け付けたか否かで判定するのがよい。測定動作を終了する場合(Yes)、引き続き図3のステップS70に進み、測定結果を通知部13に表示し、その後測定動作を終了する。一方、測定動作を終了しない場合(No)は、本動作フローは例えば、図3のステップS30に戻るのがよい。
【0081】
本変形例は、測定装置10の動作のための更なる温度条件を付加することにより、例えば、光学センサ24(特に発光部23)の温度過熱を防ぐことができ、測定装置10の安全性を向上させることができる。また、適切な温度条件下で測定装置10を安定的に動作させることができ、測定の精度を向上させることができる。更に、適宜光学センサ24を非活性化することにより、電源部11のバッテリを節約することもできる。
【0082】
(1-4―2)変更例2
前述の測定装置10の動作例に加え、本変形例では、制御部16は、光学センサ24の温度を指定温度に維持するよう、温度制御動作を実行してもよい。図6は、制御部16が温度制御動作を実行した場合の光学センサ24の温度遷移の概略グラフ図である。図6のグラフは、横軸(x軸)が時間(秒)であり、縦軸(y軸)が光学センサ24の温度(℃)である。
【0083】
温度制御動作において、制御部16は、例えば、光学センサ24において光のパルス測定を行い、パルス周波数を用いた公知のロックイン検出法を実施して、光のノイズ処理を実行するのがよい。これにより、図6に示したように、例えば、指定温度である50℃に関する指定温度区間(48℃~52℃)で、約8秒にわたり、光学センサ24の温度を維持することができる。
【0084】
このような温度制御動作を実行することにより、測定装置10を所望の状態で安定させることができる。また、測定データの精度を向上させることができる。更に、電源部11のバッテリを節約することができる。
【0085】
(1-4-3)変更例3
前述の測定装置10の動作例では、ステップS50の光学データの処理において、光学センサ24の温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択することにより、測定結果の導出に必要な光学データを特定するものとした。本変形例では、これに替えて、又はこれに加えて、温度センサ25で取得した光学センサ24の温度に基づいて、光学センサ24で取得した光学データを反射光の波長毎に補正することにより、測定結果の導出に必要な光学データを特定してもよい。
【0086】
より詳しくは、本変形例では、光学センサ24の温度に対する光強度の変化率のモデルが波長毎に予め規定され記憶部14に格納されている。光強度の変化率のモデルは、実験を通じて取得された実験データに基づいて作成されている。図7にそのような光強度の変化率のモデルの例を示す。図7のグラフは、横軸(x軸)が光学センサ24の温度(℃)であり、縦軸(y軸)が光学センサ24の相対発光強度である。発光強度は、温度が0℃の場合の値が1.0となるように規格化された相対発光強度である。
【0087】
図示されるように、例えば、温度=20℃、50℃、80℃の相対発光強度の各データを用いて回帰モデルを作成することにより、光強度の変化率のモデルM(y=I(x))を作成することができる。なお、光強度の変化率のモデルの作成はこれに限定されず、これ以外にも、膨大な個数のデータを用いて、機械学習により種々のモデルを生成してもよい。
【0088】
ステップS50の光学データの処理において、光学センサ24で取得された光学データは、当該光強度の変化率のモデルMを用いて補正するのがよい。具体的には、各波長Λについて、光学センサ24の温度tに対する強度変化率をIΛ(t)とすると、光学センサ24の温度に基づいて補正される補正光強度Ic1(Λ)は次の数式(1)のように規定される。
【0089】
c1(Λ)=I(Λ)/IΛ(t) (1)
ここで、I(Λ)は光学センサ24で測定された、波長Λに対する実際(補正前)の光強度の測定値である。
【0090】
前述したように、測定動作においては、発光部23の動作によって発生される熱により、光学センサ24の光学データに影響する。これに加えて、受光部22の温度も、測定される光学データに影響することがある。そこで、本変形例では、測定装置10の測定精度を更に向上させるために、受光部22で得られる光学データを、発光部23の温度のみならず受光部22の温度にも基づいて補正するのがよい。特に、受光部22と発光部23とが離間して配置される場合(例えば、10mm以上離間させる場合)には、光学データを、発光部23の温度と受光部22の温度の両方に基づいて補正するのがよい。
【0091】
具体的には、受光部22の温度をtとし、発光部23の温度をtとする。また、各波長Λについて、受光部22の温度tに対する強度変化率をIΛD(t)とし、発光部23の温度tに対する強度変化率をIΛS(t)とする。この場合、受光部22の温度と発光部23の温度との両方に基づいて補正される補正光強度Ic2(Λ)は次の数式(2)のように規定される。
【0092】
c2(Λ)=I(Λ)/(IΛS(t)×IΛD(t)) (2)
【0093】
数式(2)を用いることにより、ステップS50の光学データの補正に係る処理を実行することができる。なお、受光部22と発光部23とが近接して配置させる場合には、受光部22の温度tが、発光部23の温度tと同じであるとして(つまり、t=t)、数式(2)に基づいてステップS50の光学データの補正に係る処理を実行してもよい。
【0094】
本発明者の実験によれば、受光部22の温度t及び発光部23の温度tは、約15℃~60℃程度の温度範囲であれば光学データの補正により、補正光強度の精度が維持されることが判明している。また、このような温度範囲の上限は、上記60℃に替えて、受光部22(例えば分光器)及び発光部23(例えば、LED)の動作保証値に設定してもよい。
【0095】
本変形例のように、光学センサ24で取得された光学データを光強度の変化率のモデルを用いて補正することにより、測定のタイミングが、光学センサ24の温度条件に制約されなくなる。すなわち、測定装置10は、任意のタイミングで測定を行うことができるので、ユーザにとって測定装置10が更に利用しやすいものとなる。特に、測定装置10が小型化され、ユーザが測定装置10を携行する場合に、様々な温度となる季節や場所の影響を受けることなく、安定した一定の精度で測定を行うことができる。
【0096】
なお、ステップS50の光学データの処理に関し、本変形例の光学データを反射光の波長毎に補正する手法は、前述した、光学センサ24の温度が指定温度に実質的に対応している光学データを選択する手法と組み合わせて共に実行することができる。
【0097】
(2)第2実施形態
前述の第1実施形態に係る生体組織のための測定装置10は、それ単独で測定装置10を構成するものであった。これに対し、第2実施形態では、吸引装置100に、生体組織のための測定装置10が具備される。つまり、第2実施形態に係る生体組織のための測定装置10は、生体組織の一部である被測定物を口腔組織とし、吸引装置100と一体で構成される。
【0098】
このように、測定装置10は吸引装置100に具備され、その一部として使用される。本実施形態に係る吸引装置100は、ユーザの片手に収まる程度に小型化され、ユーザが気軽に携行し、利用することができる。また、口腔組織のための測定装置10としても利用することができる。
【0099】
なお、吸引装置100は、ユーザにより吸引される物質を生成する装置であり、電子たばこやネブライザを含むが、これらに限定されない。また、吸引装置100は、加熱型香味吸引器や非加熱型香味吸引器であってよく、特に、ユーザが吸引するエアロゾル又は香味が付与されたエアロゾルを生成する様々な吸引装置を含み得る。また、生成される吸引成分は、エアロゾル以外にも、不可視の蒸気のような気体も含み得る。
【0100】
(2-1)吸引装置の機能構成例
(2-1-1)吸引装置の構成例1
図8は、吸引装置の第1の構成例の模式図である。図8に示すように、本構成例に係る吸引装置100Aは、電源ユニット110、カートリッジ120、及び香味付与カートリッジ130を含む。電源ユニット110は、電源部111A、センサ部112A、通知部113A、記憶部114A、通信部115A、及び制御部116Aを含む。カートリッジ120は、加熱部121A、液誘導部122、及び液貯蔵部123を含む。香味付与カートリッジ130は、香味源131、及びマウスピース124を含む。カートリッジ120及び香味付与カートリッジ130には、空気流路180が形成される。
【0101】
このうち、電源ユニット110に含まれる電源部111A、センサ部112A、通知部113A、記憶部114A、通信部115A、及び制御部116Aは、第1実施形態の測定装置10に含まれる電源部11、センサ部12、通知部13、記憶部14、通信部15、及び制御部16(データ処理部17)の各構成を実質的に包含する。以下では、吸引装置として機能する構成について説明する。
【0102】
センサ部112Aは、吸引装置100Aに関する各種情報を取得する。例えば、センサ部112Aは、マイクロホンコンデンサ等の圧力センサ、流量センサ又は温度センサ等により構成され、ユーザによる吸引に伴う値を取得する。
【0103】
記憶部114Aは、吸引装置100Aの動作のための各種情報を記憶する。また、記憶部114Aは、吸引装置100Aを動作させるためのコンピュータ実行可能命令に加えて、ファームウェアのようなプログラム等も格納する。
【0104】
液貯蔵部123は、エアロゾル源を貯蔵する。エアロゾル源が霧化されることで、エアロゾルが生成される。エアロゾル源は、例えば、グリセリン及びプロピレングリコール等の多価アルコール、並びに水等の液体である。エアロゾル源は、たばこ由来又は非たばこ由来の香味成分を含んでいてもよい。吸引装置100Aがネブライザ等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源は、薬剤を含んでもよい。
【0105】
液誘導部122は、液貯蔵部123に貯蔵された液体であるエアロゾル源を、液貯蔵部123から誘導し、保持する。液誘導部122は、例えば、ガラス繊維等の繊維素材又は多孔質状のセラミック等の多孔質状素材を撚って形成されるウィックである。その場合、液貯蔵部123に貯蔵されたエアロゾル源は、ウィックの毛細管効果により誘導される。
【0106】
加熱部121Aは、エアロゾル源を加熱することで、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成する。図8に示した例では、加熱部121Aは、コイルとして構成され、液誘導部122に巻き付けられる。加熱部121Aが発熱すると、液誘導部122に保持されたエアロゾル源が加熱されて霧化され、エアロゾルが生成される。加熱部121Aは、電源部111Aから給電されると発熱する。一例として、ユーザが吸引を開始したこと、及び/又は所定の情報が入力されたことが、センサ部112Aにより検出された場合に、給電されてもよい。そして、ユーザが吸引を終了したこと、及び/又は所定の情報が入力されたことが、センサ部112Aにより検出された場合に、給電が停止されてもよい。
【0107】
香味源131は、エアロゾルに香味成分を付与するための構成要素である。香味源131は、たばこ由来又は非たばこ由来の香味成分を含んでいてもよい。
【0108】
空気流路180は、ユーザに吸引される空気の流路である。空気流路180は、空気流路180内への空気の入り口である空気流入孔181と、空気流路180からの空気の出口である空気流出孔182と、を両端とする管状構造を有する。空気流路180の途中には、上流側(空気流入孔181に近い側)に液誘導部122が配置され、下流側(空気流出孔182に近い側)に香味源131が配置される。ユーザによる吸引に伴い空気流入孔181から流入した空気は、加熱部121Aにより生成されたエアロゾルと混合され、矢印190に示すように、香味源131を通過して空気流出孔182へ輸送される。エアロゾルと空気との混合流体が香味源131を通過する際には、香味源131に含まれる香味成分がエアロゾルに付与される。
【0109】
マウスピース124は、吸引の際にユーザに咥えられる部材である。マウスピース124には、空気流出孔182が配置される。ユーザは、マウスピース124を咥えて吸引することで、エアロゾルと空気との混合流体を口腔内へ取り込むことができる。
【0110】
以上、吸引装置100Aの構成例1を説明した。勿論、吸引装置100Aの構成は上記に限定されず、以下に例示する多様な構成をとり得る。
【0111】
例えば、吸引装置100Aは、香味付与カートリッジ130を含んでいなくてもよい。その場合、カートリッジ120にマウスピース124が設けられる。
【0112】
他の例では、吸引装置100Aは、複数種類のエアロゾル源を含んでいてもよい。複数種類のエアロゾル源から生成された複数種類のエアロゾルが空気流路180内で混合され化学反応を起こすことで、さらに他の種類のエアロゾルが生成されてもよい。
【0113】
また、エアロゾル源を霧化する手段は、加熱部121Aによる加熱に限定されない。例えば、エアロゾル源を霧化する手段は、振動霧化、又は誘導加熱であってもよい。
【0114】
(2-1-2)吸引装置の構成例2
図9は、吸引装置の第2の構成例の模式図である。吸引装置100Bでは、例えば、吸引成分源であるエアロゾル源及び香味源を含む充填物等の香味発生基材を有するスティック型基材150が挿入される。なお、本構成例において、エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体であってもよい。挿入されたスティック型基材150は、その外周から加熱されることによって、香味を含むエアロゾルを生成する。
【0115】
図9に示すように、本構成例に係る吸引装置100Bは、電源部111B、センサ部112B、通知部113B、記憶部114B、通信部115B、制御部116B、加熱部121B、保持部140、及び断熱部144を含む。
【0116】
電源部111B、センサ部112B、通知部113B、記憶部114B、通信部115B、及び制御部116Bの各々は、構成例1に係る吸引装置100Aに含まれる対応する構成要素と実質的に同一に機能する。
【0117】
保持部140は、内部空間141を有し、内部空間141にスティック型基材150の一部を収容しながらスティック型基材150を保持する。保持部140は、内部空間141を外部に連通する開口142を有し、開口142から内部空間141に挿入されたスティック型基材150を保持する。例えば、保持部140は、開口142及び底部143を底面とする筒状体であり、柱状の内部空間141を画定する。保持部140は、スティック型基材150へ供給される空気流路を画定する機能も有する。かかる流路への空気の入り口である空気流入孔は、例えば底部143に配置される。他方、かかる流路からの空気の出口である空気流出孔は、開口142である。
【0118】
スティック型基材150は、基材部151、及び吸口部152を含む。基材部151は、エアロゾル源を含む。スティック型基材150が保持部140に保持された状態において、基材部151の少なくとも一部は内部空間141に収容され、吸口部152の少なくとも一部は開口142から突出する。そして、開口142から突出した吸口部152をユーザが咥えて吸引すると、図示しない空気流入孔から内部空間141に空気が流入し、基材部151から発生するエアロゾルと共にユーザの口内に到達する。
【0119】
加熱部121Bは、構成例1に係る加熱部121Aと同様の構成を有する。ただし、図9に示した例では、加熱部121Bは、フィルム状に構成され、保持部140の外周を覆うように配置される。そして、加熱部121Bが発熱すると、スティック型基材150の基材部151が外周から加熱され、エアロゾルが生成される。
【0120】
断熱部144は、加熱部121Bから他の構成要素への伝熱を防止する。例えば、断熱部144は、真空断熱材、又はエアロゲル断熱材等により構成される。
【0121】
以上、吸引装置100Bの構成例2を説明した。もちろん吸引装置100Bの構成は上記に限定されず、以下に例示する多様な構成をとり得る。
【0122】
例えば、加熱部121Bは、ブレード状に構成され、保持部140の底部143から内部空間141に突出するように配置されてもよい。その場合、ブレード状の加熱部121Bは、スティック型基材150の基材部151に挿入され、スティック型基材150の基材部151を内部から加熱する。他の一例として、加熱部121Bは、保持部140の底部143を覆うように配置されてもよい。また、加熱部121Bは、保持部140の外周を覆う第1の加熱部、ブレード状の第2の加熱部、及び保持部140の底部143を覆う第3の加熱部のうち、2以上の組み合わせとして構成されてもよい。
【0123】
他の例では、保持部140は、内部空間141を形成する外殻の一部を開閉する、ヒンジ等の開閉機構を含んでいてもよい。そして、保持部140は、外殻を開閉することで、内部空間141に挿入されたスティック型基材150を挟持してもよい。その場合、加熱部121Bは、保持部140における当該挟持箇所に設けられ、スティック型基材150を押圧しながら加熱してもよい。
【0124】
また、エアロゾル源を霧化する手段は、加熱部121Bによる加熱に限定されない。例えば、エアロゾル源を霧化する手段は、誘導加熱であってもよい。
【0125】
また、吸引装置100Bは、構成例1に係る加熱部121A、液誘導部122、液貯蔵部123、及び空気流路180をさらに含んでいてもよく、空気流路180の空気流出孔182が内部空間141への空気流入孔を兼ねていてもよい。この場合、加熱部121Aにより生成されたエアロゾルと空気との混合流体は、内部空間141に流入して加熱部121Bにより生成されたエアロゾルとさらに混合され、ユーザの口腔内に到達する。
【0126】
(2-2)吸引装置の外観例
図10は、本実施形態に係る吸引装置の概略の外観を示す模式図である。本実施形態では、吸引装置100は、生体組織のための測定装置10を備える。以下では、前述の図8に示した構成例1に係る吸引装置100Aを例に説明するが、これに限定されず、図9に示した構成例2に係る吸引装置100Bにおいても同様である。
【0127】
吸引装置100Aは、図8に示した電源ユニット110、カートリッジ120、香味付与カートリッジ130、及びマウスピースが組み立てられることにより、吸引装置100Aの最外のハウジングを形成する。吸引装置100Aのハウジングは、手持部分200及び吸口部分210を含む。ユーザは、片手で手持部分200を保持しながら、吸口部分210を咥えてZ軸方向から吸引することにより、エアロゾルと空気との混合流体を口腔内へ取り込むことができる。
【0128】
(2-3)吸引装置に具備される測定装置の構成例
以下に、吸引装置100Aに具備される測定装置10について説明する。測定装置10の例として、光学センサ24と測定面21とが近接して配置される近接型と、光学センサ24と測定面21とが離間して配置される離間型とを想定する。図11は近接型の例であり、吸口部分210の概略拡大図である。図12は離間型の例である。図11及び図12には、主に、光学センサ24(受光部22及び発光部23)と測定面21との配置関係が模式的に示されている。
【0129】
(2-3-1)近接型の配置例1
図11に示されるように、吸引装置100Aの吸口部分210の表面には測定面21及び熱放出部26が設けられ、また、吸口部分210の内部には、光学センサ24及び温度センサ25が配置されている。より詳しくは、測定面21及び熱放出部26は吸口部分210の側面210aに設けられており、測定面21の近傍に、受光部22及び発光部23を含む光学センサ24が配置されている。受光部22及び発光部23は、+Z方向に沿って、発光部23及び受光部22の順にZ軸に平行となるように配置されている。また、受光部22及び発光部23の各素子は、+Y方向に向けられている。そして、温度センサ25が、光学センサ24(特に、発光部23)の近傍に配置されている。
【0130】
測定面21は、被測定物である口腔組織が接する測定窓を備えるのがよい。測定窓は、生体組織に対する安全性が高く、光透過性を有する材料を用いて形成するのがよい。例えば、これに限定されないが、アクリル樹脂及びガラス等を使用してもよい。また、その形状は、フィルム状及び板状等とするのがよい。これにより、光学素子と生体組織との直接接触を防ぐことができ、光学センサ24の堅牢性が向上すると共に、ユーザの使用感も向上する。
【0131】
なお、測定窓の面積(つまり、被測定物に接触することになる測定面21の面積)は、例えば、300mm以下とするのがよい。また、測定面21は吸口部分210に設けられるので、被測定物は、口腔組織とするのがよいが、必ずしもこれに限定されない。つまり、舌及び下唇等の口腔組織以外にも、体表面皮膚等に広く適用されてよい。
【0132】
測定面21と共に、側面210aに沿って熱放出部26が並んで配置される。熱放出部26は、光学センサ24の特に発光部23で発生される熱を吸口部分210の外側に放出するために、発光部23と隣接して配置されるのがよい。熱放出部26は、熱伝導板で構成されるのがよく、測定面21の一部として構成されてもよい。これにより、放出された熱を被測定物である口腔組織に伝導することができ、唾液分泌を促すことができる。
【0133】
また、図示されるように、吸口部分210の側面210aは、Z方向に対し受光部22に向けて角度αだけ勾配した勾配面(或いは、テーパー面)を形成するのがよい。その結果、吸口部分210は、+Z方向に沿って先細りした形状となっている。これにより、受光部22における入射角を小さくすることができ、勾配面としない場合と比べて受光感度を向上させることができる。なお、角度αは0°~15°の範囲で調整するのがよい。より好ましくは、角度αは1°~5°の範囲内(例えば2°)で調整するのがよい。
【0134】
吸口部分210の側面210aに沿って、測定面21は、吸口部分210の先端から、受光部22及び発光部23の間の位置に配置されるのがよい。これにより、発光部23から照射され、測定面21を通じて被測定物から反射された光を受光部22が受けるように構成することができる。受光部22と発光部23との距離は、3mm~20mmとするのがよい。より好ましくは5mm~15mmの範囲内で調整するのがよい。また、発光部23と測定面21との距離は、20mmとしてよく、より好ましくは10mm以下で調整するのがよい。
【0135】
温度センサ25は、発光部23の近傍であって、光学センサ24と吸引装置100Aに設けられる空気流路(点線の矢印)との間の位置に配置されるのがよい。エアロゾル源が加熱されて霧化されたエアロゾルが、空気との混合流体として、吸口部分210内の空気流路を通過する際、エアロゾルの熱が、光学センサ24の温度を変動させることも考えられる。そこで、光学センサ24と空気流路との距離を確保するのがよく、更にはその間に温度センサ25を配置するのがよい。
【0136】
近接型の配置例では、光学センサ24及び温度センサ25を含むセンサ部12は、吸引装置100Aの吸口部分210の内部に配置される。他方、制御部16のような他の要素(不図示)は、吸引装置100Aの手持部分200の内部に配置される。センサ部12と制御部16とは、吸引装置100A内部でワイヤにより電気配線されている。
【0137】
このように、近接型の配置例によれば、測定面21と光学センサ24(受光部22及び発光部23)とが近接して配置されると共に、熱放出部26及び温度センサ25も近接して吸口部分210内部に配置される。これにより、光学センサ24の発熱による影響を回避することができ、吸引装置100Aのような小型化された装置に対しても、測定装置10を具備させることができる。
【0138】
(2-3-2)離間型の配置例2
図12に示されるように、吸引装置100Aの手持部分200の内部には、光学センサ24、及び温度センサ25が配置されている(なお、熱放出部26は図示されていない)。また、吸引装置100Aの吸口部分210には、測定面21が設けられている。そして、受光部22及び発光部23と測定面21とは2本の光ファイバ27(27A、27B)を通じてそれぞれが連結されている。つまり、離間型の配置例では、光ファイバ27を適用することにより、手持部分200内部の受光部22及び発光部23と、吸口部分210内部の測定面21とを離間させることができる。
【0139】
また、離間型の配置例は、光ファイバ27を適用することにより、吸口部分210側に設ける測定面21を狭小化することができ有利である。なお、光ファイバ27は、これに限定されないが、石英ファイバとするのがよい。石英ファイバは、直径200μm~600μm程度で実装されることが知られている。
【0140】
図13及び図14を更に参照して、光学センサ24(受光部22及び発光部23)と測定面21との配置関係について更に詳細に説明する。図13は、図12に示した吸引装置100Aの吸口部分210をZ軸方向から模式的に示した平面図であり、図14は、吸引装置100AのY-Z平面を模式的に示した平面図である。
【0141】
ここでは、2本の光ファイバ27A、27Bが使用されている。そして、図13に示されるように、2本の光ファイバ27A、27Bの端面が測定面21を構成する。光ファイバ27A、27Bの端面間の距離は、0μm~20mmとするのがよい。特に、口腔表面のような生体組織表面の物質を測定する場合は、光ファイバ27A、27Bの端面間の距離は、0μm~3mmの範囲内で調整するのがよい。なお、光ファイバ27A、27Bの端面間の距離が0であるとは、光ファイバ27A、27Bの端面が接触する場合である。このように、測定面21において、光ファイバ27A、27Bの端面間を近接または接触させることにより、測定結果の精度を向上させることができる。
【0142】
また、図14に示されるように、また、2本の光ファイバ27A、27Bは、Z軸方向に対し、所定の角度を付けて相互に向かい合うように配置するのがよい。つまり、光学センサ24(受光部22及び発光部23)から光ファイバ27A、27Bの端面に向けて、2本の光ファイバ27A、27Bの間の距離が短くなるように配置するのがよい。例えば、所定の角度は、10°以下とするのがよい。また、ファイバの端面はファイバの軸方向に対して通常90°であるが、80°~90°に勾配させて、勾配面を向かい合わせてもよい。これにより、受光部22が反射光を更に効果的に受けることができるようになる。
【0143】
なお、ここでは、2本の光ファイバを適用したが、これに替えて、二股に分岐することができる1本の光ファイバ27を用いてもよい。この場合、光ファイバ27の測定面21側の端面は1つで構成される一方、反対側が二股に分岐されて、受光部22及び発光部23にそれぞれ連結される。
【0144】
また、近接型の配置で示されたのと同様、温度センサ25は、発光部23の近傍であって、光学センサ24と吸引装置100Aに設けられる空気流路(点線の矢印)との間の位置に配置されるのがよい。エアロゾル源が加熱されて霧化されたエアロゾルが、空気との混合流体として、吸口部分210内の空気流路を通過する際、エアロゾルの熱が、光学センサ24の温度を変動させることも考えられる。そこで、光学センサ24と空気流路との距離を確保すると共に、その間に温度センサ25を配置するのがよい。
【0145】
このように、離間型の配置例によれば、光ファイバ27を通じて、手持部分200内部の受光部22及び発光部23と、吸口部分210内部の測定面21とが離間される。これにより、特に吸口部分210を更に小型化することができ、吸引装置100Aのような小型化された装置に対しても測定装置10を具備させることができる。
【0146】
(2-4)吸引装置に具備される測定装置の動作例
吸引装置の動作例は、第1実施形態にて説明したとおりである。これに加えて、本実施形態では、ユーザが吸引装置を使用している間のデータを測定動作に応用してもよい。
【0147】
例えば、ユーザが吸煙動作時に吸口部分210を加えている間、測定面21には下唇が接触していることが想定される。つまり、吸引動作の間は下唇によって発光部23からの光が受光部22に反射されることになる。このことを利用して、例えば、制御部16は、受光部22で受ける光の強度(特に、光量)が所定の閾値以上である場合のみ、測定動作(図4のステップS40~S60)を実行するように制御してもよい。
【0148】
これ以外にも、ユーザの吸引動作に係る各種情報(例えば、パフ回数、パフ動作期間、消費したカプセルの数等)を利用して、吸引装置としての測定結果に活用したり、これに関連付けたりしてもよい。
【0149】
(3)第3実施形態
第1実施形態に係る生体組織のための測定装置10は、単独で測定装置10を構成するものであった。また、第2実施形態では、生体組織のための測定装置10は、吸引装置100に具備され、吸引装置100と一体構成された。これに対し、第3実施形態では、生体組織のための測定装置10は、吸引装置100に対して着脱可能に取り付けられるように構成される。以下では、前述の図8に示した構成例1に係る吸引装置100Aを例に説明するが、これに限定されない。
【0150】
本実施形態では、例えば、単体でも動作し得る測定装置10が吸引装置100Aに機械的に取り付けられるような機構を備えてもよい。これにより、ユーザが吸引装置100を使用する際に、併せて測定装置10により測定が行われるように構成されてもよい。
【0151】
代替では、測定装置10が吸引装置100Aに取り付けられたのに応じて、測定装置10が吸引装置100Aに電気的に接続されるように構成されてもよい。例えば、吸引装置100の電源部111Aから測定装置10に給電され、センサ部12及び制御部16が動作されてもよい。この場合、吸引装置100Aの記憶部114Aに格納された各種プログラム及び/又は設定情報を測定装置10が利用可能とするように構成されてもよい。また、吸引装置100Aの通知部113Aによって測定結果が通知されてもよい。
【0152】
本実施形態に係る生体組織のための測定装置10は、センサ部13及び測定部21を少なくとも備える。図15及び図16はこのような測定装置10が吸引装置100Aに取り付けられた状態を模式的に示した模式図である。
【0153】
図15の測定装置10Aは、吸引装置100Aの吸込部210の先端に取り付け可能なキャップ型の装置の例である。キャップ型の測定装置10Aは、例えば、第2実施形態で説明した隣接型の吸引装置10Aとして構成されるのがよい。具体的には、図示されるように、テーパー面上に測定面21を有し、測定面に近接して光学センサ24が配置される。また、光学センサ24は、測定装置10Aの内壁に設けられるのがよい。なお、測定面21と光学センサ24の配置関係については第2実施形態で説明したとおりである。(温度センサ25及び熱放出部26は、ここでは図示が省略されている。)
【0154】
図16の測定装置10Bは、吸引装置100Aの吸込部210の先端によって貫通されるように取り付け可能なケース型の装置の例である。ケース型の測定装置10Bは、例えば、第2実施形態で説明した離散型の吸引装置10Aとして構成されるのがよい。光学センサ24及び光ファイバ27は、測定装置10Aの内壁に設けられるのがよい。そして、図示されるように、測定装置10Bが取り付けられた状態で、吸引装置100Aの吸込部210と接して測定面21を形成するように、光学センサ24から配線された光ファイバ27が位置合わせされるのがよい。(図15と同様に、温度センサ25及び熱放出部26は、ここでは図示が省略されている。)
【0155】
本実施形態に係る生体組織のための測定装置10A,10Bは、吸引装置100Aに着脱可能に自由に取り付けることができる。測定装置10A,10Bを吸引装置100Aに取り付けたまま、吸引装置100Aを動作可能としてもよい。このように、測定装置10A,10Bは、十分に小型化された装置であり、ユーザは、吸引装置100Aと共に測定装置10を気軽に利用することができる。
【0156】
(4)他の実施形態
前述の説明において、幾らかの実施形態に係る測定装置、吸引装置、及び方法が図面を参照して説明された。本開示は、プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、測定装置又は吸引装置を動作させる方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体としても実施され得ることが理解される。
【0157】
以上、本開示の実施形態が、その変更例及び適用態様と共に説明されたが、これらは例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態の変更、追加、改良等を適宜行うことができることが理解されるべきである。本開示の範囲は、上述した実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるべきである。
【符号の説明】
【0158】
10,10A,10B・・・測定装置、17・・・データ処理部、20・・・測定部、21・・・測定面、22・・・受光部、23・・・発光部、24・・・光学センサ、25・・・温度センサ、26・・・熱放出部、27(27A,27B)…光ファイバ、30・・・本体部、100(100A、100B)…吸引装置、110…電源ユニット、11,111A,111B…電源部、12,112A,112B…センサ部、13,113A,113B…通知部、14,114A,114B…記憶部、15,115A,115B…通信部、16,116A,116B…制御部、120…カートリッジ、121A,121B…加熱部、122…液誘導部、123…液貯蔵部、124…マウスピース、130…香味付与カートリッジ、131…香味源、140…保持部、141…内部空間、142…開口、143…底部、144…断熱部、150…スティック型基材、151…基材部、152…吸口部、180…空気流路、181…空気流入孔、182…空気流出孔、200…手持部分、210…吸口部分
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16