(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】干渉縞が改善された多層構造のフィルム及びこれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20240312BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240312BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240312BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240312BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B1/14
B32B7/023
B32B27/34
G02B1/111
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2022567252
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2021007679
(87)【国際公開番号】W WO2021261848
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0076134
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】アン,ビョン-ジュン
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0126951(KR,A)
【文献】特開2019-124908(JP,A)
【文献】特表2008-506152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
B32B 27/34
G02B 1/10 - 1/18
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材
;
前記基材上の第1コーティング層;
及び
前記基材上の第2コーティング層;を含み、
380nm~780nm波長領域で反射率を測定して得た反射率グラフから、
下記式1によって算出される反射率オシレーション比(O
r)は1.0以下であり、
下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(G
r)は0.122以下であ
り、
前記基材は、X軸方向屈折率(Nx)が1.57~1.67であり;
Y軸方向屈折率(Ny)が1.57~1.67であり;
Z軸方向屈折率(Nz)が1.53~1.57であり、
前記第1コーティング層は、下記式4を満たす屈折率(N1)を有し、
前記第2コーティング層は、下記式5を満たす屈折率(N2)を有するフィルム:
<式1>
O
r=[(O
m1*O
m2)-(O
m1+O
m2)]/Min(O
m1,O
m2)
<式2>
G
r=|(R
m1-R
m2)|/R
m2
上記式1で、O
m1は、500nm~550nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(O
m)であり、O
m2は、650nm~780nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(O
m)であって、反射率オシレーション値の平均(O
m1,O
m2)は、下記式3によって算出され、Min(O
m1,O
m2)は、O
m1及びO
m2のうちの小さい方の反射率オシレーション値の平均(O
m)を表し、
上記式2で、R
m1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P
1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V
1)に対応する反射率値との算術平均値であり、R
m2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(P
f)に対応する反射率値と、最後のバレー(V
f)に対応する反射率値との算術平均値である。
<式3>
O
m=(1/n)*Σ(O
k)
上記式3で、O
kは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数であり、
前記オシレーション値は、隣り合う一対の、ピーク(P
k)とバレー(V
k)とのそれぞれに対応する、反射率値の差(|P
kに対応する反射率値-V
kに対応する反射率値|)である。
<式4>
0.927*Nx≦N1≦0.978*Ny
<式5>
0.793*Nx≦N2≦0.975*Ny
【請求項2】
前記基材は、複屈折性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第2コーティング層は、前記基材と前記第1コーティング層との間に配置される、請求項
1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第1コーティング層は、前記基材と前記第2コーティング層との間に配置される、請求項
1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記基材上の第3コーティング層をさらに含む、請求項
1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第3コーティング層は、下記式6を満たす屈折率(N3)を有する、請求項
5に記載のフィルム。
<式6>
0.793*Nx≦N3≦0.975*Ny
【請求項7】
前記第1コーティング層は、光透過性マトリックス及び前記光透過性マトリックスに分散された粒子を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
前記光透過性マトリックスは、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうちの少なくとも一つを含む、請求項
7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記粒子は、ジルコニア(zirconia,ZrO
2)、シリカ(silica,SiO
2)、アルミナ(alumina,Al
2O
3)、二酸化チタン(titanium dioxide,TiO
2)、スチレン(Styrene)及びアクリル(Acryl)のうちの少なくとも一つを含む、請求項
7に記載のフィルム。
【請求項10】
前記第1コーティング層は0.01~3.4μmの厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記第2コーティング層は、1~14μmの厚さを有する、請求項
1に記載のフィルム。
【請求項12】
前記第3コーティング層は、1μm以下の厚さを有する、請求項
5に記載のフィルム。
【請求項13】
ポリイミド系基材
;
前記ポリイミド系基材上の第1コーティング層;
及び
前記ポリイミド系基材上の第2コーティング層;を含み、
380nm~780nmの波長領域で反射率を測定して得た反射率グラフから、
下記式1によって算出される反射率オシレーション比(O
r)は、1.0以下であり、
下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(G
r)は、0.122以下であ
り、
前記ポリイミド系基材は、X軸方向屈折率(Nx)が1.57~1.67であり;
Y軸方向屈折率(Ny)が1.57~1.67であり;
Z軸方向屈折率(Nz)が1.53~1.57であり、
前記第1コーティング層は、下記式4を満たす屈折率(N1)を有し、
前記第2コーティング層は、下記式5を満たす屈折率(N2)を有するポリイミド系フィルム:
<式1>
O
r=[(O
m1*O
m2)-(O
m1+O
m2)]/Min(O
m1,O
m2)
<式2>
G
r=|(R
m1-R
m2)|/R
m2
上記式1で、O
m1は、500nm~550nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(O
m)であり、O
m2は、650nm~780nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(O
m)であって、反射率オシレーション値の平均(O
m1,O
m2)は、下記式3によって算出され、Min(O
m1,O
m2)は、O
m1及びO
m2のうちの小さい方の反射率オシレーション値の平均(O
m)を表し、
上記式2で、R
m1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P
1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V
1)に対応する反射率値との算術平均値であり、R
m2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(P
f)に対応する反射率値と、最後のバレー(V
f)に対応する反射率値との算術平均値である。
<式3>
O
m=(1/n)*Σ(O
k)
上記式3で、O
kは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数であり、
前記オシレーション値は、隣り合う一対の、ピーク(P
k)とバレー(V
k)とのそれぞれに対応する反射率値の差(|P
kに対応する反射率値-V
kに対応する反射率値|)である。
<式4>
0.927*Nx≦N1≦0.978*Ny
<式5>
0.793*Nx≦N2≦0.975*Ny
【請求項14】
表示パネル;及び
前記表示パネル上に配置された、請求項1~
12のいずれか一項のフィルム;
を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉縞が改善された多層構造のフィルム及びこれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性などに優れている高分子樹脂は、自動車材料、航空素材、宇宙船素材、絶縁コーティング剤、絶縁膜、保護フィルムなどとして用いられている。
【0003】
近年、表示装置の薄型化、軽量化、フレキシブル化に伴い、表示装置のカバーウィンドウとして、ガラスの代わりに高分子樹脂で形成された高分子フィルムを使用することが検討されている。高分子フィルムが、表示装置のカバーウィンドウとして用いられるためには、高分子フィルムが、優れた硬度、耐摩耗性、屈曲性などの物理的特性を有する必要がある。目的とする物性を付与するために、基材上にコーティング層を形成させる。
【0004】
ただし、基材上にコーティング層が形成されたフィルムは、コーティング層と基材との間の光学的な物性の差によって光学的な干渉が発生するため、フィルムの表面に、にじの光のような干渉縞が発生してしまい、フィルムの視認性が低下するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施例は、フィルムの反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であるフィルムを提供しようとする。
【0006】
また、本発明の一実施例は、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例は、基材、及び前記基材上の第1コーティング層を含み、380nm~780nm波長領域で反射率を測定して得た反射率グラフから、下記式1によって算出される反射率オシレーション比(Or)は1.0以下であり、下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(Gr)は0.122以下であるフィルムを提供する。
【0008】
<式1>
Or=[(Om1*Om2)-(Om1+Om2)]/Min(Om1,Om2)
【0009】
<式2>
Gr=|(Rm1-Rm2)|/Rm2
【0010】
上記式1で、Om1は、500nm~550nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(Om)であり、Om2は、650nm~780nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(Om)であって、反射率オシレーション値の平均(Om1,Om2)は、下記式3によって算出され、Min(Om1,Om2)は、Om1及びOm2のうち小さい方の反射率オシレーション値の平均(Om)を表すのであり、上記式2で、Rm1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V1)に対応する反射率値との算術平均値であり、Rm2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(Pf)に対応する反射率値と、最後のバレー(Vf)に対応する反射率値との算術平均値である。
【0011】
<式3>
Om=(1/n)*Σ(Ok)
【0012】
上記式3のOkは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数であり、前記オシレーション値は、隣り合う一対のピーク(Pk)とバレー(Vk)との、それぞれに対応する反射率値の差(|Pkに対応する反射率値-Vkに対応する反射率値|)である。
【0013】
前記基材は、複屈折性を有する。
【0014】
前記基材は、X軸方向屈折率(Nx)が1.57~1.67であり;Y軸方向屈折率(Ny)が1.57~1.67であり;Z軸方向屈折率(Nz)が1.53~1.57である。
【0015】
前記第1コーティング層は、下記式4を満たす屈折率(N1)を有する。
【0016】
<式4>
0.927*Nx≦N1≦0.978*Ny
【0017】
前記基材上の第2コーティング層をさらに含む。
【0018】
前記第2コーティング層は、前記基材と前記第1コーティング層との間に配置される。
【0019】
前記第1コーティング層は、前記基材と前記第2コーティング層との間に配置される。
【0020】
前記第2コーティング層は、下記式5を満たす屈折率(N2)を有する。
【0021】
<式5>
0.793*Nx≦N2≦0.975*Ny
【0022】
前記基材上の第3コーティング層をさらに含む。
【0023】
前記第3コーティング層は、下記式6を満たす屈折率(N3)を有する。
【0024】
<式6>
0.793*Nx≦N3≦0.975*Ny
【0025】
前記第1コーティング層は、光透過性マトリックス及び前記光透過性マトリックスに分散された粒子を含む。
【0026】
前記光透過性マトリックスは、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうち少なくとも一つを含む。
【0027】
前記粒子は、ジルコニア(zirconia,ZrO2)、シリカ(silica,SiO2)、アルミナ(alumina,Al2O3)、二酸化チタン(titanium dioxide,TiO2)、スチレン(Styrene)及びアクリル(Acryl)のうち少なくとも一つを含む。
【0028】
前記第1コーティング層は、0.01~3.4μmの厚さを有することができる。
【0029】
前記第2コーティング層は、1~14μmの厚さを有することができる。
【0030】
前記第3コーティング層は、1μm以下の厚さを有することができる。
【0031】
本発明の他の実施例は、ポリイミド系基材;及び、前記ポリイミド系基材上の第1コーティング層;を含み、380nm~780nmの波長領域で反射率を測定して得た反射率グラフから、下記式1によって算出される反射率オシレーション比(Or)は1.0以下であり、下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(Gr)は0.122以下であるポリイミド系フィルムを提供する。
【0032】
<式1>
Or=[(Om1*Om2)-(Om1+Om2)]/Min(Om1,Om2)
【0033】
<式2>
Gr=|(Rm1-Rm2)|/Rm2
【0034】
上記式1で、Om1は、500nm~550nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(Om)であり、Om2は、650nm~780nmの波長領域における反射率オシレーションの値の平均(Om)であって、反射率オシレーション値の平均(Om1,Om2)は、下記式3によって算出され、Min(Om1,Om2)は、Om1及びOm2のうちの小さい方の反射率オシレーション値の平均(Om)を表すのであり、上記式2で、Rm1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V1)に対応する反射率値との算術平均値であり、Rm2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(Pf)に対応する反射率値と、最後のバレー(Vf)に対応する反射率値との算術平均値である。
【0035】
<式3>
Om=(1/n)*Σ(Ok)
【0036】
上記式3のOkは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数であり、前記オシレーション値は、隣り合う一対のピーク(Pk)とバレー(Vk)とのそれぞれに対応する反射率値の差(|Pkに対応する反射率値-Vkに対応する反射率値|)である。
【0037】
本発明のさらに他の実施例は、表示パネル、及び前記表示パネル上に配置された上述のフィルムを含む、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0038】
一般に、ガラスとは違い、高分子フィルムは、硬度、耐摩耗性、屈曲性などのような物理的特性を向上させるために基材上にコーティング層を含むが、基材及びコーティング層からなるフィルムは、基材とコーティング層との光学的特性の差によって、干渉縞が発生しうる。
【0039】
本発明の一実施例によれば、フィルムの反射率オシレーション比(Or)を1.0以下に調節し、反射率グラフ勾配(Gr)を0.122以下に調節することによって、干渉縞が発生しないのであり、視認性の向上したフィルムを製造することができる。
【0040】
また、本発明の一実施例に係るフィルムは、優れた光学的特性及び機械的特性を有するので、表示装置のカバーウィンドウとして用いられる場合に、表示装置の表示面を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施例に係るフィルム100の概略図である。
【
図2】HITACHI社のUH4150装備を用いて380~780nmの波長領域でフィルムの光反射率を測定して得たフィルムの反射率グラフである。
【
図3】フィルムの反射率グラフのうち、任意の波長領域範囲W
xにおけるグラフを拡大したものである。
【
図4】フィルムの反射率グラフにおいて500nm~780nmの波長領域におけるグラフ勾配を表示したものである。
【
図5】本発明の一実施例に係る第1コーティング層20の拡大図である。
【
図6】本発明の他の実施例のスウェリング層12をさらに含むフィルム101の概略図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施例の第2コーティング層30をさらに含むフィルム102の概略図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施例の第2コーティング層30をさらに含むフィルム102のさらに他の形態の概略図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施例の第3コーティング層40をさらに含むフィルム103の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、以下に説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的な目的で提示されるだけで、本発明の範囲を限定しない。
【0043】
本発明の実施例を説明するための図面に開示された形状、大きさ、比率、角度、個数などは例示的なものであるので、本発明は図面に開示の事項に限定されない。明細書全体を通じて、同一の構成要素は同一の参照符号で示されうる。本発明を説明するにあたって、関連した公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を却ってぼやけさせ得ると判断される場合に、その詳細な説明は省略される。
【0044】
本明細書において「含む」、「有する」、「なされる」などが使われる場合に、「~のみ」という表現が使われない限り、他の部分が追加されてもよい。構成要素が単数で表現された場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数をも含む。また、構成要素を解釈するときに、別の明示的記載がなくても、誤差範囲を含むものとして解釈する。
【0045】
位置関係に関する説明において、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などで両部分の位置関係が説明される場合に、「直ちに」又は「直接」という表現が使われない以上、両部分の間に一つ以上の他の部分が位置してもよい。
【0046】
空間的に相対的な用語である「下(below、beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図面に示されているように、一つの素子又は構成要素と他の素子又は構成要素との相関関係を容易に記述するために使われうる。空間的に相対的である用語は、図面に示されている方向に加えて、使用時又は動作時に素子の互いに異なる方向を含む用語として理解されるべきである。例えば、図面に示されている素子をひっくり返す場合に、他の素子の「下(below又はbeneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に置かれうる。したがって、例示的な用語である「下」は、下と上のいずれの方向も含むことができる。同様に、例示的な用語である「上」も、上と下のいずれの方向も含むことができる。
【0047】
時間関係に関する説明において、例えば、「~の後に」、「~に続いて」、「~の次に」、「~の前に」などで時間的な先後関係が説明される場合に、「直ちに」又は「直接」という表現が使われない以上、連続していない場合も含むことができる。
【0048】
第1、第2などが様々な構成要素を説明するために使われるが、これらの構成要素は当該用語によって限定されない。当該用語は、単に、一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使われる。したがって、以下に言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0049】
「少なくとも一つ」との用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組合せを含むものと理解されるべきである。例えば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも一つ」との意味は、第1項目、第2項目又は第3項目のそれぞれだけでなく、第1項目、第2項目及び第3項目のうちの2項目以上から提示可能なあらゆる項目の組合せも意味しうる。
【0050】
本発明の複数実施例のそれぞれの特徴が部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施例が互いに独立して実施されてもよく、関連付けられて共に実施されてもよい。
【0051】
図1は、本発明の一実施例に係るフィルム100の概略図である。
【0052】
図1に示すように、発明の一実施例に係るフィルム100は、基材10、及び第1コーティング層20を含む。
【0053】
本発明の一実施例によれば、フィルム100は、380nm~780nm波長領域で反射率を測定して得た反射率グラフから、下記式1によって算出される反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(Gr)は0.122以下である。
【0054】
<式1>
Or=[(Om1*Om2)-(Om1+Om2)]/Min(Om1,Om2)
【0055】
<式2>
Gr=|(Rm1-Rm2)|/Rm2
【0056】
以下、
図2及び3を参照して、フィルムの反射率オシレーション比(O
r)を説明する。本発明において、オシレーション(oscillation)は振幅とも称する。
【0057】
図2は、HITACHI社のUH4150装備を用いて、380~780nmの波長領域でフィルムの光反射率を測定して得たフィルムの反射率グラフである。
図2のグラフは、一つの例示に過ぎず、グラフの形態及び結果値はフィルムごとに変わり得るので、本発明がこれに限定されるものではない。
【0058】
図3は、
図2のフィルムの反射率グラフのうち、任意の波長領域範囲W
xにおけるグラフを拡大したものである。
【0059】
フィルムの反射率オシレーション比(O
r)は、
図2のフィルムの反射率グラフから上記式1によって算出されてよい。
【0060】
上記式1で、Om1は、500nm~550nmの波長領域(W1)における反射率オシレーション値の平均(Om)であり、Om2は、650nm~780nmの波長領域(W2)における反射率オシレーション値の平均(Om)であり、Min(Om1,Om2)は、Om1及びOm2のうちの小さい方の反射率オシレーション値の平均(Om)である。
【0061】
前記反射率オシレーション値の平均(Om1,Om2)は、下記式3によって算出される。
【0062】
<式3>
Om=(1/n)*Σ(Ok)
【0063】
上記式3のOkは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数である。
【0064】
以下、
図2及び3を参照して、上記式3によって反射率オシレーション値の平均(O
m1,O
m2)を算出する方法をより具体的に説明する。
【0065】
図2のグラフには、光の波長別フィルムの光反射程度がパーセント(%)で表示されている。
図2に示すように、コーティング層を含むフィルムは、基材とコーティング層との光学的特性の差によって光学的な干渉が発生し、これにより、反射率のピーク(peak)とバレー(valley)とが不規則的に反復する振幅(oscillation)が現れ、このような波長による反射率の振幅は、フィルムの表面に発生する干渉縞の原因になる。
【0066】
図3に示すように、任意の波長領域範囲(W
x)のフィルムの反射率グラフにおいて、波長が増加するにつれて反射率のピーク(P
k=P
1,P
2,P
3,...,P
n)とバレー(V
k=V
1,V
2,V
3,...,V
n)とが反復して現れる。ここで、隣り合う一対のピーク(P
k)とバレー(V
k)とは、一つのオシレーションを構成し、隣り合う一対のピーク(P
k)とバレー(V
k)とのそれぞれに対応する反射率値の差(|P
kに対応する反射率値-V
kに対応する反射率値|)は、一つのオシレーション値(O
k)となる。このように計算されたn個のオシレーション値(O
k=O
1,O
2,O
3,...,O
n)を上記式3に代入すれば、反射率オシレーション値の平均(O
m)が算出できる。
【0067】
500nm~550nmの波長領域(W1)で上記式3によって算出した反射率オシレーション値の平均をOm1とし、650nm~780nmの波長領域(W2)で上記式3によって算出した反射率オシレーション値の平均をOm2とし、上記式1を用いて反射率オシレーション比(Or)を算出することができる。
【0068】
本発明の一実施例によれば、反射率オシレーション比(Or)は、1.0以下である。
【0069】
本発明の反射率オシレーション比(Or)は、波長の変化による光干渉の現象によって生じる、フィルムの反射率の変化幅の大きさを意味するもので、反射率オシレーション比(Or)が大きいほど光干渉が増加し、反射率オシレーション比(Or)が小さいほど光干渉が減少する。
【0070】
反射率オシレーション比(Or)が1.0以下である場合には、波長の変化による反射率の変化の幅が減少し、反射された光が人の目に均一に視認されるので、干渉縞が観察されない。一方、反射率オシレーション比(Or)が1.0を超える場合には、波長の変化による反射率の変化の幅が増加し、反射された光が人の目に不均一に視認されるため、フィルムの表面に、様々な色感が狭い間隔で見える干渉縞が発生しうる。
【0071】
以下、
図4を参照して、反射率グラフ勾配(G
r)を説明する。
【0072】
図4は、フィルムの反射率グラフにおいて500nm~780nmの波長領域におけるグラフ勾配を表示したものである。
図4のグラフは一つの例示に過ぎず、グラフの形態及び結果の値はフィルムごとに変わり得るので、本発明がこれに限定されるものではない。
【0073】
フィルムの反射率グラフ勾配(G
r)は、
図4のフィルムの反射率グラフから上記式2によって算出できる。
【0074】
上記式2で、Rm1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V1)に対応する反射率値との算術平均値であり、Rm2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(Pf)に対応する反射率値と、最後のバレー(Vf)に対応する反射率値との算術平均値である。
【0075】
図4に示すように、コーティング層を含むフィルムの反射率は、波長が増加するにつれて振幅が不規則的に現れる。したがって、反射率グラフの任意の特定地点における勾配は測定できるが、500nm~780nm波長領域の全体における勾配を測定することには困難がある。
【0076】
したがって、本発明の一実施例は、反射率グラフから当該波長領域内の、最初のピーク(P1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V1)に対応する反射率値との平均(Rm1)を求め、最後のピーク(Pf)に対応する反射率値と、最後のバレー(Vf)に対応する反射率値との平均(Rm2)を求めて、上記式2によって、500nm~780nmの波長領域の全体における勾配傾向を判断できる反射率グラフ勾配(Gr)を算出した。
【0077】
本発明の一実施例によれば、反射率グラフ勾配(Gr)は、0.122以下である。
【0078】
本発明の反射率グラフ勾配(Gr)は、波長によるフィルムの反射率の増減のレベルを意味するもので、波長の変化によって反射率が急激に増加又は減少する場合に、反射率グラフ勾配(Gr)が大きくなる。反射率グラフ勾配(Gr)が大きいほど、反射された光が人の目に不均一に視認されるため、様々な色感が広い領域で現れる干渉縞が発生しうる。一方、反射率グラフ勾配(Gr)が小さいほど、反射された光が人の目に均一に視認される。
【0079】
反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下である場合には光干渉が減少し、干渉縞が発生しない。一方、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超える場合には光干渉が増加し、フィルムの表面に干渉縞が発生しうる。
【0080】
本発明の一実施例によれば、基材10は透明な高分子を含む。透明な高分子であれば、特に限定されず、本発明の一実施例に係る基材10に使用されてよい。高分子としては、ポリイミド系高分子、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ノルボネン系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリアクリル系高分子、ポリエチレンテレフタレート系高分子、セルロース系高分子などの単一成分の高分子、これらの共重合高分子、エポキシ系高分子などを挙げることができる。
【0081】
特に、ポリイミド系高分子は、熱的特性、硬度、耐摩耗性、屈曲性などの物理的特性の他に、光透過率、ヘイズのような光学的特性にも優れており、表示装置のカバーウィンドウとして用いられるフィルムの基材としてポリイミド系高分子が含まれることが好ましい。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。本発明において、ポリイミド系高分子とは、主鎖構造内にイミド(imide)官能基の反復単位を含む高分子のことを指し、一般に、アミン(amine)とカルボン酸無水物(carboxylic anhydride)基との間の縮合反応によって形成されるものを指す。また、ポリイミド系高分子は、アミド反復単位を含むことができる。例えば、本発明の一実施例に係るポリイミド系高分子としてポリアミド-イミド高分子がある。
【0082】
基材10の高分子によって、フィルム100の種類が異なりうる。例えば、基材10がポリイミド系高分子を含むフィルム100は、ポリイミド系フィルムといえる。
【0083】
本発明の一実施例によれば、高分子は光学異方性の性質を有し、これにより、基材10は複屈折性を有する。
【0084】
基材10のX軸方向屈折率(Nx)は1.57~1.67であってよく、Y軸方向屈折率(Ny)は1.57~1.67であってよく、Z軸方向屈折率(Nz)は、1.53~1.57であってよい。
【0085】
本発明において、基材のZ軸方向は、基材の高さ方向を表し、基材のX軸方向及びY軸方向は、横及び縦方向の屈折率によって決められる。本発明において、横方向の屈折率及び縦方向の屈折率のうち、大きい値の屈折率の方向がX軸方向であり、小さい値の屈折率の方向がY軸方向である。
【0086】
したがって、基材のX軸方向屈折率(Nx)は、基材の横方向の屈折率及び縦方向の屈折率のうちの大きい方の屈折率を表し、基材のY軸方向屈折率(Ny)は、基材の横方向屈折率及び縦方向の屈折率のうちの小さい方の屈折率を表し、基材のZ軸方向屈折率(Nz)は、基材の高さ方向の屈折率を表す。
【0087】
基材の各方向による屈折率が前記範囲を外れる場合に、基材とコーティング層との屈折率の差によって、干渉縞が発生しうる。
【0088】
本発明の一実施例によれば、基材10は、100μm以下の厚さを有することができる。
【0089】
以下、
図5を参照して、本発明の第1コーティング層20を詳細に説明する。
【0090】
図5は、本発明の一実施例に係る第1コーティング層20の拡大図である。
【0091】
第1コーティング層20は、基材10上に位置し、フィルムの反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)を調節する役割を担う。
【0092】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層20は、光透過性マトリックス21及び光透過性マトリックスに分散された粒子22を含むことができる。
【0093】
光透過性マトリックス21及び光透過性マトリックスに分散された粒子22を表現した第1コーティング層20は、
図5の通りである。
【0094】
第1コーティング層20の光透過性マトリックスに分散された粒子22は、フィルムの反射率オシレーション比(Or)及びフィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を調節し、第1コーティング層20の屈折率を調節する。
【0095】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層20の光透過性マトリックス21は、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0096】
本発明の一実施例によれば、粒子は、ジルコニア(zirconia,ZrO2)、シリカ(silica,SiO2)、アルミナ(alumina,Al2O3)、二酸化チタン(titanium dioxide,TiO2)、スチレン(Styrene)及びアクリル(Acryl)のうち少なくとも一つを含むことができる。特に、ジルコニアは、第1コーティング層の屈折率を調節し、フィルムの反射率オシレーション比(Or)及びフィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を調節して、干渉縞の発生を防止することに有利である。
【0097】
第1コーティング層20は、第1コーティング組成物によって形成されてよい。第1コーティング組成物は、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうち少なくとも一つを含むことができる。第1コーティング組成物は、粒子を含むことができる。第1コーティング組成物は、溶媒を含むことができる。
【0098】
反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20の光透過性マトリックス21の種類、第1コーティング層20に含まれた粒子22の種類、第1コーティング層20に含まれた粒子22の含有量、第1コーティング層20の屈折率、第1コーティング層20の厚さ、及び第1コーティング層20の形成のための“第1コーティング組成物の溶媒”を調節することができる。
【0099】
本発明の一実施例によれば、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20の光透過性マトリックス21の種類を調節することができる。
【0100】
第1コーティング層20の光透過性マトリックス21は、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0101】
第1コーティング層20の光透過性マトリックス21の種類によって、第1コーティング層20の屈折率が異なってよく、反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)を調節することができる。
【0102】
本発明の一実施例によれば、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20に含まれた粒子22の種類を調節することができる。
【0103】
粒子22は、ジルコニア、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、スチレン及びアクリルのうち少なくとも一つを含むことができる。好ましくは、粒子22はジルコニアを含むことができる。
【0104】
第1コーティング層20内の粒子22は、第1コーティング層20の屈折率を調節し、フィルムの反射率オシレーション比(Or)を1.0以下、フィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を0.122以下にすることができる。特に、ジルコニアは、第1コーティング層20の屈折率を容易に調節することができる。
【0105】
本発明の一実施例によれば、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20に含まれた粒子22の含有量を調節することができる。
【0106】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層20内の粒子22は、光透過性マトリックス21の100重量部に対して10~50重量部を含む。
【0107】
第1コーティング層20内の粒子22が、光透過性マトリックス21の100重量部に対して10重量部未満であるか、50重量部を超えると、フィルムの反射率オシレーション比(Or)が1を超えるか、フィルムの反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超えてしまう。
【0108】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層20は、基材のX軸及びY軸の屈折率にしたがって、下記式4の屈折率(N1)を有することができる。
【0109】
<式4>
0.927*Nx≦N1≦0.978*Ny
【0110】
第1コーティング層20の屈折率(N1)が上記の範囲を外れる場合には、フィルム100の反射率オシレーション比(Or)が1を超えるか、フィルムの反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超えてしまう。
【0111】
したがって、フィルム100の反射率オシレーション比(Or)を1.0以下に、反射率グラフ勾配(Gr)を0.122以下に調節するために、第1コーティング層20の屈折率を、上記式4の範囲に調節することができる。
【0112】
本発明の一実施例によれば、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下であり、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20は0.01~3.4μmの厚さを有することができ、好ましくは、0.07~1.3μmの厚さを有することができる。
【0113】
第1コーティング層20の厚さを0.01~3.4μmに調節することによって、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下及び反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルムを製造できる。
【0114】
第1コーティング層20の厚さが0.01μm未満である場合に、コーティング安定性が低下し、スウェリング層12の厚さが薄くなるため、反射率オシレーション比(Or)の調節効果が不十分である。また、第1コーティング層20の厚さが3.4μmを超える場合に、反射率オシレーション比(Or)が1.0を超えてしまう。
【0115】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層20を形成するための第1コーティング組成物の溶媒を調節することによって、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下及び反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルムを製造できる。
【0116】
具体的に、第1コーティング組成物の溶媒は、MEK(Methyl Ethyl Ketone)、MIBK(Methyl Isobutyl Ketone)、PGME(Propylene Glycol Methyl Ether)及びEA(Ethyl Acetate)のうち少なくとも一つを含むことができる。特に、MEKを含むことが好ましい。
【0117】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング組成物の溶媒は、MEK;及び、MIBK、PGME及びEAのうち少なくとも一つ;を含むことができる。
【0118】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング組成物の溶媒のうち、MEKと、MIBK、PGME及びEAのうちの少なくとも一つとの質量比は、8:2~6:4であってよい。
【0119】
第1コーティング組成物の溶媒によってスウェリング層が形成されうる。
【0120】
本発明の他の実施例によれば、フィルム101は、スウェリング層12をさらに含むことができる。
【0121】
スウェリング層12は、残余の基材層11と第1コーティング層20との間に位置しうる。
【0122】
図6は、本発明の他の実施例の、スウェリング層12をさらに含むフィルム101の概略図である。
【0123】
以下、
図6を参照して、スウェリング層12を説明する。
【0124】
スウェリング層12は、第1コーティング組成物の溶媒によって形成されうる。
【0125】
図6に示すように、スウェリング層12は、残余の基材層11と第1コーティング層20との間に位置する層であり、基材10上に第1コーティング組成物で第1コーティング層20を形成する過程において、第1コーティング組成物に含まれた溶媒は、フィルム101の基材10をスウェリング(swelling)させることができる。これによって、基材10にスウェリング層12を形成することができる。ここで、スウェリングされていない基材10の部分を残余の基材層11という。
【0126】
本発明の一実施例によれば、基材10は、残余の基材層11、及びスウェリング層12を含むことができる。
【0127】
残余の基材層11と、第1コーティング層20との間に、スウェリング層12が配置されることにより、フィルム101の反射率オシレーション比(Or)が1.0以下になり得、反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下になり得る。
【0128】
スウェリング層12は、1.66以下の屈折率を有することができる。
【0129】
フィルム101の反射率オシレーション比(Or)を1.0以下、反射率グラフ勾配(Gr)を0.122以下にするために、スウェリング層12の屈折率は1.66以下に調節されてよい。
【0130】
スウェリング層12の屈折率が1.66を超える場合に、反射率オシレーション比(Or)が1.0よりも大きくなり、フィルム101の表面に干渉縞が視認されることがある。
【0131】
スウェリング層12は、第1コーティング層20の厚さに対して10~50%の厚さを有することができる。
【0132】
フィルム101の反射率オシレーション比(Or)を1.0以下、反射率グラフ勾配(Gr)を0.122以下にするために、スウェリング層12の厚さを第1コーティング層20の厚さに対して10~50%の範囲にしてよい。
【0133】
スウェリング層12の厚さが第1コーティング層20の厚さに対して10%未満である場合に、基材10及び第1コーティング層20の密着力が弱くなりうる。そして、50%を超える場合に、フィルム101の柔軟性が減少しうる。
【0134】
スウェリング層12の厚さは、“第1コーティング組成物の溶媒”の種類、含有量、含有量比によって変わってよく、第1コーティング層20の乾燥時間及び温度によっても変わってよい。
【0135】
スウェリング層12の厚さを、第1コーティング層20の厚さに対して10~50%にするために、第1コーティング組成物の溶媒は、MEK;及び、MIBK、PGME及びEAのうち少なくとも一つ;を含むことができる。
【0136】
スウェリング層12の厚さを第1コーティング層20の厚さに対して10~50%にするために、第1コーティング組成物の溶媒のMEK;及び、MIBK、PGME及びEAのうち少なくとも一つ;を8:2~6:4の質量比で混合して使用することができる。
【0137】
スウェリング層12の厚さを第1コーティング層20の厚さに対して10~50%にするために、第1コーティング層20の厚さを0.01~3.4μmにすることができる。
【0138】
第1コーティング層20の厚さが0.01μm未満である場合に、コーティング安定性が低下し、スウェリング層12の厚さが薄くなるため、反射率オシレーション比(Or)の調節効果が不十分である。また、3.4μmを超える場合に、反射率オシレーション比(Or)が1.0を超えて干渉縞が発生してしまい、フィルムの視認性が悪くなりうる。
【0139】
スウェリング層12の厚さを、第1コーティング層20の厚さに対して10~50%にするために、第1コーティング層20の製造時に、50~60℃で1~2分、70~80℃で2~3分、90~100℃で2~3分の段階でもって、グラデーション乾燥を行うことができる。
【0140】
第1コーティング層20の製造時に、段階別の上限温度を超えると、溶媒が急激に揮発してスウェリング層12が十分に形成されないという問題が発生し得るのであり、段階別の下限温度未満である場合に、スウェリング層12の厚さが本発明の範囲よりも厚くなるという問題が発生し得る。
【0141】
第1コーティング層20の乾燥時間が段階別の上限時間を超えると、スウェリング層12の厚さが本発明の範囲よりも厚くなる問題が発生し、段階別下限時間未満である場合に、スウェリング層12が十分に形成されないという問題が発生し得る。
【0142】
反射率オシレーション比(Or)が1.0以下及び反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために製造方法を調節することができる。例えば、反射率オシレーション比(Or)が1.0以下及び反射率グラフ勾配(Gr)が0.122以下であるフィルム100を製造するために、第1コーティング層20の製造過程において乾燥方法を調節することができる。
【0143】
例えば、第1コーティング層20を製造する際に、50~60℃で1~2分、70~80℃で2~3分、90~100℃で2~3分の段階でもって、グラデーション乾燥を行うことができる。
【0144】
このように、第1コーティング層20の成分、屈折率、厚さ及び製造方法を調節することによって、フィルムの反射率オシレーション比(Or)及びフィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を調節し、第1コーティング層の屈折率を調節することができる。
【0145】
本発明の他の実施例によれば、フィルム102は、基材10上の第2コーティング層30をさらに含むことができる。
【0146】
図7及び
図8は、本発明のさらに他の実施例の、第2コーティング層30をさらに含むフィルム102の概略図である。
【0147】
図7に示すように、第2コーティング層30が、基材10と第1コーティング層20との間に配置されてもよい。
【0148】
図8に示すように、第1コーティング層20が、基材10と第2コーティング層30との間に配置されてもよい。
【0149】
フィルム102の反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)は、第2コーティング層30によっても調節されてよい。
【0150】
第2コーティング層30は、基材10又は第1コーティング層20、フィルム102が取り付けられている被着物を外部の環境から保護する層であり、第2コーティング層30はハードコーティング層であってよい。
【0151】
本発明の他の実施例によれば、第2コーティング層30は、基材のX軸及びY軸屈折率によって、下記式5の屈折率(N2)を有することができる。
【0152】
<式5>
0.793*Nx≦N2≦0.975*Ny
【0153】
第2コーティング層30の屈折率(N2)が上記の範囲を外れる場合には、フィルムの反射率オシレーション比(Or)が1を超えるか、フィルムの反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超えてしまう。
【0154】
本発明の他の実施例によれば、第2コーティング層30は、光透過性マトリックスを含むことができる。
【0155】
第2コーティング層30の光透過性マトリックスは、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうちの少なくとも一つを含むことができる。第2コーティング層30の光透過性マトリックスは、第1コーティング層20の光透過性マトリックスと同一であってもよく、異なってもよい。本発明がこれに限定されるものではない。ただし、同一の光透過性マトリックスを使用する場合には、第1及び第2コーティング層の間の密着力が増加することから、同一の光透過性マトリックスを使用することが好ましい。
【0156】
本発明の他の実施例によれば、第2コーティング層30は、1~14μmの厚さを有することができ、好ましくは、3~7μmの厚さを有することができる。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0157】
第2コーティング層30の厚さを調節することによって、フィルム102の反射率オシレーション比(Or)及びフィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を調節し、第2コーティング層30の屈折率を調節することができる。
【0158】
第2コーティング層30は、第2コーティング組成物を用いて形成されてよい。第2コーティング組成物は、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうち少なくとも一つを含むことができる。第2コーティング組成物は溶媒を含むことができる。
【0159】
本発明のさらに他の実施例によれば、フィルム103は、基材10上の第3コーティング層40をさらに含むことができる。
【0160】
図9は、本発明のさらに他の実施例の第3コーティング層40をさらに含むフィルム103の概略図である。
【0161】
本発明のさらに他の実施例によれば、第3コーティング層40は、基材のX軸及びY軸屈折率にしたがって、下記式6の屈折率(N3)を有することができる。
【0162】
<式6>
0.793*Nx≦N3≦0.975*Ny
【0163】
第3コーティング層40の屈折率(N3)が上記の範囲を外れる場合には、フィルムの反射率オシレーション比(Or)が1を超えるか、フィルムの反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超えてしまう。
【0164】
本発明の他の実施例によれば、第3コーティング層40は、光透過性マトリックスを含むことができる。
【0165】
第3コーティング層40の光透過性マトリックスは、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうちの少なくとも一つを含むことができる。第3コーティング層40の光透過性マトリックスは、第1コーティング層20又は第2コーティング層30の光透過性マトリックスと同一であってもよく、異なってもよい。本発明がこれに限定されるものではない。
【0166】
本発明のさらに他の実施例によれば、第3コーティング層40は、1μm以下、好ましくは0.1μm以下の厚さを有することができる。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0167】
第3コーティング層40の厚さを調節することによって、フィルムの反射率オシレーション比(Or)及びフィルムの反射率グラフ勾配(Gr)を調節し、第3コーティング層40の屈折率を調節することができる。
【0168】
第3コーティング層40は、第3コーティング組成物を用いて形成されてよい。第3コーティング組成物は、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂のうちの少なくとも一つを含むことができる。第3コーティング組成物は溶媒を含むことができる。
【0169】
本発明のさらに他の実施例に係る表示装置は、表示パネル及び表示パネル上のフィルムを含む。表示装置のフィルムは、本発明の一実施例に係るフィルムを含むことができる。
【0170】
表示パネルは、基板、基板上の薄膜トランジスターTFT、及び薄膜トランジスターTFTと連結された有機発光素子を含む。有機発光素子は、第1電極、第1電極上の有機発光層、及び有機発光層上の第2電極を含む。表示装置は有機発光表示装置であってよい。
【0171】
基板は、ガラス又はプラスチックで作られてよい。具体的に、基板は、ポリイミド系樹脂又はポリイミド系フィルムといったプラスチックで作られてよい。基板上にバッファー層が配置されてよい。
【0172】
薄膜トランジスターTFTは基板上に配置される。薄膜トランジスターTFTは、半導体層、半導体層と絶縁して半導体層の少なくとも一部と重なるゲート電極、半導体層と連結されたソース電極、及びソース電極と離隔して半導体層と連結されたドレイン電極を含む。
【0173】
ゲート電極と半導体層との間にゲート絶縁膜が配置される。ゲート電極上に層間絶縁膜が配置され、層間絶縁膜上にソース電極及びドレイン電極が配置されてよい。
【0174】
平坦化膜は、薄膜トランジスターTFT上に配置され、薄膜トランジスターTFTの上部を平坦化させる。
【0175】
第1電極は平坦化膜上に配置される。第1電極は、平坦化膜に設けられたコンタクトホールを通じて、薄膜トランジスターTFTと連結される。
【0176】
バンク層は、第1電極の一部及び平坦化膜の上に配置され、画素領域又は発光領域を画定(定義)する。例えば、バンク層が、複数の画素同士の間の境界領域に、マトリックス構造で配置されることにより、バンク層によって画素領域が画定されてよい。
【0177】
有機発光層は、第1電極上に配置される。有機発光層は、バンク層上にも配置されてよい。有機発光層は一つの発光層を含んでもよく、上下に積層された2個の発光層を含んでもよい。このような有機発光層では、赤色、緑色及び青色のいずれか一つの色を有する光が放出されてよく、白色(White)光が放出されてもよい。
【0178】
第2電極は有機発光層上に配置される。
【0179】
第1電極、有機発光層及び第2電極が積層されて有機発光素子を構成することができる。
【0180】
有機発光層が白色(White)光を発光する場合に、個別の画素は、有機発光層から放出される白色(White)光を波長別にフィルタリングするためのカラーフィルターを含むことができる。カラーフィルターは光の移動経路上に形成される。
【0181】
第2電極上に薄膜封止層が配置されてよい。薄膜封止層は、少なくとも一つの有機膜及び少なくとも一つの無機膜を含むことができ、少なくとも一つの有機膜及び少なくとも一つの無機膜が交互に配置されてよい。
【0182】
以上に説明された積層構造を有する表示パネル上に、本発明の一実施例に係るフィルムが配置される。
【0183】
以下、例示的な製造例及び実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。ただし、以下に説明される製造例又は実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0184】
<製造例1:高屈折ポリイミド系基材製造>
撹拌器、窒素注入装置、適下漏斗、温度調節器及び冷却器を装着している1L反応器に、窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide)735.264gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた後に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)54.439g(0.17mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここに、ビフェニル-テトラカルボン酸二無水物(biphenyl-tetracarboxylic acid dianhydride,BPDA)10.003g(0.034mol)を添加し、3時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride,6FDA)15.105g(0.034mol)を添加して、完全に溶解させた。反応器温度を10℃に下げた後、テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride,TPC)20.716g(0.102mol)を添加して、25℃で12時間反応させ、固形分の濃度が12重量%である重合体溶液を得た。
【0185】
得られた重合体溶液にピリジン11.833g、無水酢酸15.110gを投入して30分撹拌後に、再び70℃で1時間撹拌して常温に冷まし、得られた重合体溶液にメタノール20Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕後に、さらにメタノール2Lで洗浄した後、100℃にて真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。ここで製造されたポリイミド系重合体の固形分は、ポリアミド-イミド重合体の固形粉である。
【0186】
1L反応器に550gのDMAcを満たした後、反応器の温度を10℃に維持したままで一定時間撹拌した。その後、製造されたポリイミド系重合体固形分の粉末75gを投入した後、1時間撹拌後に25℃に昇温させ、液状のポリイミド系樹脂溶液を製造した。
【0187】
得られたポリイミド系樹脂溶液を、ガラス基板にアプリケーターで塗布した後に、130℃の熱風で30分乾燥させてフィルムを製造した後、製造されたフィルムをガラス基板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0188】
フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れて、100℃から300℃まで2時間の間に徐々に加熱した後、徐々に冷却してフレームから分離し、高屈折ポリイミド系基材を得た。さらに高屈折ポリイミド系基材を250℃で5分間熱処理した。
【0189】
高屈折ポリイミド系基材の厚さは50μmであって、光透過性であり、複屈折性を有する。基材の屈折率は、Nx=Ny=1.65、Nz=1.55である。
【0190】
<製造例2:低屈折ポリイミド系基材製造>
撹拌器、窒素注入装置、適下漏斗、温度調節器及び冷却器を装着している1L反応器に窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide)754.06gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた後、TFDB 44.832g(0.14mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA 8.238g(0.028mol)を添加し、3時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA 49.756g(0.112mol)を添加して25℃で12時間反応させ、固形分の濃度が12重量%である重合体溶液を得た。
【0191】
得られた重合体溶液にピリジン24.36g、無水酢酸31.11gを投入して30分撹拌後に、再び70℃で1時間撹拌して常温に冷まして得られた重合体溶液に、メタノール20Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕後に、再びメタノール2Lで洗浄した後、100℃にて真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。ここで製造されたポリイミド系重合体固形分は、ポリアミド-イミド重合体の固形粉である。
【0192】
その後、得られたポリイミド系重合体固形分を用いて、前記製造例1と同じ方法で低屈折ポリイミド系基材を製造した。
【0193】
低屈折ポリイミド系基材の厚さは50μmであって、光透過性であり、複屈折性を有する。基材の屈折率は、Nx=Ny=1.57、Nz=1.53である。
【0194】
<製造例3:中間屈折ポリイミド系基材製造>
撹拌器、窒素注入装置、適下漏斗、温度調節器及び冷却器を装着している1L反応器に窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide)776.655gを満たし、反応器の温度を25℃に合わせた後、TFDB 54.439g(0.17mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA 15.005g(0.051mol)を添加し、3時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA 22.657g(0.051mol)を添加して完全に溶解させた。反応器温度を10℃に下げた後、TPC 13.805g(0.068mol)を添加後に25℃で12時間反応させ、固形分の濃度が12重量%である重合体溶液を得た。
【0195】
得られた重合体溶液にピリジン17.75g、無水酢酸22.92gを投入して30分撹拌後に、再び70℃で1時間撹拌して常温に冷まし、得られた重合体溶液にメタノール20Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕後に、再びメタノール2Lで洗浄した後、100℃にて真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。ここで製造されたポリイミド系重合体固形分は、ポリアミド-イミド重合体の固形粉である。
【0196】
その後、得られたポリイミド系重合体固形分を用いて、前記製造例1と同じ方法で中間屈折ポリイミド系基材を製造した。
【0197】
中間屈折ポリイミド系基材の厚さは50μmであって、光透過性であり、複屈折性を有する。基材の屈折率は、Nx=Ny=1.62、Nz=1.54である。
【0198】
<実施例1>
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(TCI社)、TEOS(Tetraethyl orthosilicate,Sigma-Aldrich社)、H2Oを747.66mL:38.28mL:93.88mLの比率に混合して1500mLフラスコに入れた後、水酸化ナトリウム0.1gを触媒として添加し、60℃で10時間撹拌した。その後、0.45μmテフロン(登録商標)フィルターで濾過してエポキシ系樹脂を得た。
【0199】
次に、製造されたエポキシ系樹脂に、MEK(Methyl Ethyl Ketone):MIBK(Methyl Isobutyl Ketone)を8:2の割合で希釈して600mL添加した後に、光開始剤としてIRGACURE 250(BASF社)を、前記製造されたエポキシ系樹脂に対して3重量部添加し、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(固形分42wt%、シクロヘキサノン+MIBK+脂肪族溶剤(Aliphatic solvent)、TOYOCHEM社)を、固形分基準で、前記エポキシ系樹脂に対して30重量部添加し、硬化時の屈折率が1.57の第1コーティング組成物を得た。
【0200】
製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材を、基材10として用いた。
【0201】
前記第1コーティング組成物を、前記製造例1の高屈折ポリイミド系基材の上面に、バー(Bar)を用いて塗布した後、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均25nmに形成させた。
【0202】
その後、315nm波長の紫外線ランプで1J/cm2露光させ、100nm厚の第1コーティング層を有する1次フィルムを製造した。
【0203】
次に、第1コーティング組成物から、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を除外して、硬化時の屈折率が1.50の第2コーティング組成物を製造した。前記第2コーティング組成物を、1次フィルム硬化膜の上面に、バー(Bar)を用いて塗布した後に、100℃で10分乾燥させ、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させ、5μm厚の第2コーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0204】
<実施例2>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して43重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.60である。
【0205】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0206】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0207】
<実施例3>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して17重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.54である。
【0208】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0209】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0210】
<実施例4>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して13重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.53である。
【0211】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0212】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例2で製造された低屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0213】
<実施例5>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して22重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.55である。
【0214】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0215】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例3で製造された中間屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0216】
<実施例6>
実施例1と同じ方法で第1及び第2コーティング層を有する2次フィルムを製造した。
【0217】
次に、第2コーティング組成物を、前記2次フィルムの他の面にバー(Bar)を用いて塗布した後に、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均0.2μmに形成させた。次に、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させて、0.8μm厚の第3コーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0218】
<実施例7>
【0219】
3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(Sigma-Adrich社)、TEOS(Sigma-Aldrich社)、H2Oを、747.66mL:38.28mL:93.88mLの割合で混合して、1500mLフラスコに入れた後、水酸化ナトリウム0.1gを触媒として添加して60℃で10時間撹拌した。その後、0.45μmテフロン(登録商標)フィルターで濾過してアクリル系樹脂を得た。
【0220】
次に、製造されたアクリル系樹脂に対して、MEK:MIBKを8:2の割合で希釈して600mL添加した後、光開始剤としてIRGACURE 184(BASF社)を、前記製造されたアクリル系樹脂に対して3重量部添加し、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、前記アクリル系樹脂に対して30重量部添加し、硬化時の屈折率1.57の第1コーティング組成物を得た。
【0221】
製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材を、基材10として用いた。
【0222】
前記第1コーティング組成物を、前記製造例1の高屈折ポリイミド系基材の上面に、バー(Bar)を用いて塗布後に60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均25nmに形成させた。
【0223】
その後、315nm波長の紫外線ランプで1J/cm2露光させ、100nm厚の第1コーティング層を有する1次フィルムを製造した。
【0224】
次に、第1コーティング組成物から、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を除外し、硬化時の屈折率が1.50の第2コーティング組成物を製造した。前記第2コーティング組成物を1次フィルム硬化膜の上面に、バー(Bar)を用いて塗布した後に、100℃で10分乾燥させ、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させ、5μm厚の第2コーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0225】
<比較例1>
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(TCI社)、TEOS(Sigma-Aldrich社)、H2Oを747.66mL:38.28mL:93.88mLの割合で混合して1500mLフラスコに入れた後、水酸化ナトリウム0.1gを触媒として添加し、60℃で10時間撹拌した。その後、0.45μmテフロン(登録商標)フィルターを用いて濾過してエポキシ系樹脂を得た。
【0226】
次に、製造されたエポキシ系樹脂に対して、MEK:MIBKを8:2の割合で希釈して600mL添加した後、光開始剤としてIRGACURE 250(BASF社)を、前記製造されたエポキシ系樹脂に対して3重量部添加し、硬化時の屈折率が1.50のエポキシ系樹脂組成物を得た。
【0227】
製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材を、基材10として用いた。
【0228】
前記エポキシ系樹脂組成物を、前記製造例1の高屈折ポリイミド系基材の上面に、バー(Bar)を用いて塗布した後に、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均25nmに形成させた。
【0229】
その後、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させ、5μm厚の、一つのコーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0230】
<比較例2>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して60重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時屈折率は1.64である。
【0231】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0232】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0233】
<比較例3>
ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を、固形分基準で、製造されたエポキシ系樹脂に対して5重量部を添加する以外は、実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時屈折率は1.51である。
【0234】
実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0235】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0236】
<比較例4>
実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.57である。
【0237】
前記第1コーティング組成物に、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を26重量部、さらに添加(総56重量部)し、硬化時の屈折率が1.63の第2コーティング組成物を製造した。
【0238】
製造された第1及び第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、製造例1で製造された高屈折ポリイミド系基材の上面に、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0239】
<比較例5>
実施例1と同じ方法で第1コーティング組成物を製造した。第1コーティング組成物の硬化時の屈折率は1.57である。
【0240】
前記第1コーティング組成物を、製造例1の高屈折ポリイミド系基材の上面に、バー(Bar)を用いて塗布した後に、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均1.25μmに形成させた。
【0241】
その後、315nmの波長の紫外線ランプで1J/cm2露光させ、100nm厚の第1コーティング層を有する1次フィルムを製造した。
【0242】
次に、実施例1と同じ方法で第2コーティング組成物を製造した。
【0243】
前記製造された第2コーティング組成物を用いて、実施例1と同じ方法により、1次フィルム硬化膜の上面に、第2コーティング層を形成させ、第1及び第2コーティング層を含む透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0244】
<比較例6>
実施例1と同じ方法で、第1及び第2コーティング層を有する2次フィルムを製造した。
【0245】
次に、前記第1コーティング組成物に、ジルコニア分散液であるKT-300Z-S-KR(TOYOCHEM社)を26重量部、さらに添加(総56重量部)し、硬化時の屈折率が1.63の第3コーティング組成物を製造した。
【0246】
その後、第3コーティング組成物を、前記2次フィルムの他の面にバー(Bar)を用いて塗布した後に、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均0.2μmに形成させた。次に、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させ、0.8μm厚の第3コーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0247】
<比較例7>
実施例1と同じ方法で、第1及び第2コーティング層を有する2次フィルムを製造した。
【0248】
次に、第2コーティング組成物を、前記2次フィルムの他の面にバー(Bar)を用いて塗布した後に、60℃/2分、80℃/3分、100℃/3分の乾燥を行い、溶媒による基材のスウェリング層の厚さを平均1.25μmに形成させた。次に、315nmの波長の紫外線ランプで2J/cm2露光させ、5μm厚の第3コーティング層を有する透明なポリイミド系フィルムを製造した。
【0249】
<測定例>
実施例1~7及び比較例1~7で製造されたフィルムに対して、次のような特定を実行した。
【0250】
(1)密着力
TQC社のCC1000モデルを用いて、ASTM D3359によって格子状に切断後に、剥離される程度を測定した。
【0251】
(2)透過度及びヘイズ(Haze)
実施例及び比較例によって製造された最終フィルムを、50mm×50mmに切り、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)の装備を用いて、ASTM D1003に従って透過度及びヘイズを5回測定し、その平均値を確認した。
【0252】
(3)反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)
HITACHI社のUH4150装備を用いて、380~780nmの波長領域で光反射率を測定した。測定したフィルムの反射率グラフから、下記式1によって算出される反射率オシレーション比(Or)、及び下記式2によって算出される反射率グラフ勾配(Gr)を算出した。
【0253】
<式1>
Or=[(Om1*Om2)-(Om1+Om2)]/Min(Om1,Om2)
【0254】
<式2>
Gr=|(Rm1-Rm2)|/Rm2
【0255】
上記式1で、Om1は、500nm~550nm波長領域(W1)における反射率オシレーション値の平均(Om)であり、Om2は、650nm~780nmの波長領域(W2)における反射率オシレーション値の平均(Om)であって、反射率オシレーション値の平均(Om1,Om2)は、下記式3によって算出され、Min(Om1,Om2)は、Om1及びOm2のうち小さい方の反射率オシレーション値の平均(Om)を表し、上記式2で、Rm1は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最初のピーク(P1)に対応する反射率値と、最初のバレー(V1)に対応する反射率値との算術平均値であり、Rm2は、500nm~780nmの波長領域における、反射率グラフの最後のピーク(Pf)に対応する反射率値と、最後のバレー(Vf)に対応する反射率値との算術平均値である。
【0256】
<式3>
Om=(1/n)*Σ(Ok)
【0257】
上記式3のOkは、当該波長領域におけるオシレーション値であり、nは、当該波長領域におけるオシレーション値の個数であり、前記オシレーション値は、隣り合う一対のピーク(Pk)とバレー(Vk)とのそれぞれに対応する反射率値の差(|Pkに対応する反射率値-Vkに対応する反射率値|)である。
【0258】
(4)干渉縞
三波長ランプ下で実施例及び比較例のフィルムを肉眼で評価し、次のような等級に分けて評価した。
【0259】
A:肉眼で認知し難い
B:少数の専門家の肉眼では認知できるが、使用には無理無し
C:普通の少数の人々が肉眼で認知でき、積層構造によっては使用に制限があり得る
D:普通の多数の人々が肉眼で確認でき、使用不可
E:普通の多数の人々が肉眼で明確に確認でき、使用不可
【0260】
測定結果は、下記表1の通りである。
【0261】
【0262】
上記表1の測定結果に開示されている通り、本発明の実施例に係るフィルムは、基材とコーティング層との密着力、及び柔軟性の他に、透過率及びヘイズといった光学特性にも優れている。
【0263】
実施例1及び比較例1から分かるように、第2コーティング層と基材との間に第1コーティング層が適用され、反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)が本願の範囲を満たすフィルムが、第1コーティング層が適用されていないフィルムに比べて干渉縞のレベルが良好であることが示された。
【0264】
そして、実施例1~3と比較例2~3を比較すると、第2コーティング層と基材との間に第1コーティング層が適用されている構造であっても、屈折率が本願の範囲を外れて反射率オシレーション比(Or)が1.0を超える場合には、干渉縞改善効果がないことがわかる。
【0265】
また、実施例1及び比較例5から分かるように、第2コーティング層と基材との間に第1コーティング層が適用されていても、第1コーティング層の厚さが一定範囲レベルを外れて反射率グラフ勾配(Gr)が0.122を超えると、同様に、干渉縞改善効果がないことがわかる。
【0266】
実施例1と比較例4とを比較すれば、第2コーティング層と基材との間に、適正な屈折率と厚さを有する第1コーティング層が適用されていても、第1コーティング層の屈折率が一定範囲レベルを外れて反射率オシレーション比(Or)が1.0を超えると、同様に、干渉縞改善効果がないことがわかる。
【0267】
また、実施例6と比較例6~7とを比較すれば、第2コーティング層と基材との間に適正な屈折率と厚さを有する第1コーティング層が適用されている構造の、他の面に第3コーティング層を形成する際に、第3コーティング層の屈折率及び厚さが一定範囲レベルを外れて反射率オシレーション比(Or)が1.0を超えると、同様に、干渉縞改善効果がないことがわかる。
【0268】
そして、実施例4~5から分かるように、基材の屈折率が変わっても、一定範囲を満たして反射率オシレーション比(Or)及び反射率グラフ勾配(Gr)が本願の範囲を満たす場合には、干渉縞改善効果がある。
【0269】
また、実施例1と実施例7から分かるように、第1コーティング層及び第2コーティング層の組成物がエポキシ系樹脂組成物だけでなく、アクリル系樹脂組成物である場合にも同一の結果が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0270】
100,101,102,103:フィルム
10:基材
11:残余基材層
12:スウェリング層
20:第1コーティング層
21:光透過性マトリックス
22:粒子
30:第2コーティング層
40:第3コーティング層