(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】緩衝袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/03 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B65D81/03 200A
(21)【出願番号】P 2023080611
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2019099070の分割
【原出願日】2019-05-28
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000147316
【氏名又は名称】株式会社生産日本社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】野口 ▲隆▼之
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-175346(JP,U)
【文献】特開2017-007694(JP,A)
【文献】特開2011-121615(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 57/00-59/08
B65D 81/00-81/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材からなる胴部を有する外袋と、第2基材からなる胴部を有し前記外袋の内側に配置される内袋と、を備える二重袋である緩衝袋において、
該緩衝袋は、前記内袋の内側に設けられた収容部と、該収容部に面する領域に設けられ
、かつ、前記第1基材の
うち前記外袋の胴部を構成する部分の内表面と前記第2基材の
うち前記内袋の胴部を構成する部分の外表面との熱接着部を有する区画シール部と、を有し、
該区画シール部は、前記第1基材と前記第2基材との間に複数の気体セルを形成し、該気体セルの各々は、緩衝用空気を密封しており、
隣接する前記気体セル間では前記緩衝用空気の出入がなく、
前記気体セルは、内包する空気量が相対的に少ない小気体セルと、内包する空気量が相対的に多い大気体セルとを有することを特徴とする緩衝袋。
【請求項6】
前記緩衝袋は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、
前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記嵌合具との間の領域に開封用のノッチを有し、
前記開口封止部は、前記第1基材及び前記第2基材の厚さ方向に沿って、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部と、前記第2基材の内表面同士の熱接着部と、前記第2基材の外表面及と前記第1基材の内表面との熱接着部と、を有することを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の緩衝袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝袋、特にはラミネート加工を施さず外的圧力から内容物を保護するとともに、美観を現出できる緩衝袋に関する。
【背景技術】
【0002】
外的圧力から内容物を保護する緩衝袋としては、例えば次のような袋が提案されている。外袋内に緩衝部を形成する緩衝シートを内装した輸送袋が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。第1面部と第2面部とを対向させ、開口部を残して周縁部を接合して形成された緩衝梱包包装において、第1面部及び第2面部が、それぞれ内装フィルムと外装フィルムとが重ね合わされて形成されており、内装フィルムと外装フィルムとの間に形成された緩衝気体用空間内に緩衝気体を注入する緩衝梱包包装が提案されている(例えば、特許文献2,3を参照。)。フィルム製の袋部の一端に、気体を導入する気体導入路が設けられ、気体導入路の各部位に注入用気体逆止弁が接続され、袋部に複数の気体セル列が併設され、気体導入路から各注入用逆止弁を通して気体を気体セル列に充填して使用する気体クッション材が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-292144号公報
【文献】特開2010-89808号公報
【文献】特開2017-39523号公報
【文献】特開2016-50028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、緩衝部は外袋に内装されているだけで外袋に対して接着されていないため、緩衝部が外袋からはずれるおそれがあった。また、ストローで気体を吹き込む必要があり、作成に時間及びコストがかかる問題があった。特許文献2では、緩衝気体用空間によって被梱包物が囲まれるようにして、被梱包物を浮かせるように配置するための工程が複雑でコストがかかる問題があった。また、被梱包物のサイズに対して袋体のサイズをより大きくする必要があるため、被梱包物のサイズが限定される。さらに、緩衝用気体を吹き込む必要があり、作成に時間及びコストがかかる問題があった。特許文献3についても、緩衝用気体を吹き込む必要があり、作成に時間及びコストがかかる問題があった。特許文献4では、構造が複雑であり、大掛かりな製造設備が必要となる問題があった。
【0005】
本開示は、ラミネート加工を施さず外的圧力から内容物を保護するとともに、美観を現出できる緩衝袋を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る緩衝袋は、第1基材からなる胴部を有する外袋と、第2基材からなる胴部を有し前記外袋の内側に配置される内袋と、を備える二重袋である緩衝袋において、該緩衝袋は、前記内袋の内側に設けられた収容部と、該収容部に面する領域に設けられ、かつ、前記第1基材のうち前記外袋の胴部を構成する部分の内表面と前記第2基材のうち前記内袋の胴部を構成する部分の外表面との熱接着部を有する区画シール部と、を有し、該区画シール部は、前記第1基材と前記第2基材との間に複数の気体セルを形成し、該気体セルの各々は、緩衝用空気を密封しており、隣接する前記気体セル間では前記緩衝用空気の出入がなく、前記気体セルは、内包する空気量が相対的に少ない小気体セルと、内包する空気量が相対的に多い大気体セルとを有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る緩衝袋では、前記緩衝袋は、前記第1基材と前記第2基材とが重ね合わされた状態で前記第2基材が内側にされて二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有し、前記第2基材は、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具を有し、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記第1基材及び前記第2基材の厚さ方向に沿って、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部と、前記第2基材の内表面同士の熱接着部と、前記第2基材の外表面と前記第1基材の内表面との熱接着部と、を有し、前記第1基材及び前記第2基材は、前記嵌合具の基部が設けられた部分から前記開口部の縁までの間の領域に、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部を有することが好ましい。嵌合具によって再封止可能とすることができる。
【0008】
本発明に係る緩衝袋では、前記緩衝袋は、前記第1基材と前記第2基材とが重ね合わされた状態で前記第2基材が内側にされて二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有し、前記開口部の縁を構成する2つの前記第1基材の縁が、2つの前記第2基材の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されており、前記第1基材は、前記開口部の縁に沿って前記第2基材の縁よりも突出した部分の内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具を有し、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記第1基材及び前記第2基材の厚さ方向に沿って、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部と、前記第2基材の内表面同士の熱接着部と、前記第2基材の外表面と前記第1基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。嵌合具によって再封止可能とすることができる。
【0009】
本発明に係る緩衝袋では、前記第1基材と前記第2基材とは、前記嵌合具よりも前記折り返し部側に設けられた接合シール部によって互いに接合されており、該接合シール部は、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部を有することが好ましい。第1基材と第2基材との接合部分が増えるので、第1基材と第2基材とのズレをより抑制することができる。
【0010】
本発明に係る緩衝袋では、前記折り返し部は、前記第1基材及び前記第2基材の厚さ方向に沿って、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部と、前記第2基材の内表面同士の熱接着部と、前記第2基材の外表面と前記第1基材との内表面の熱接着部と、を有することが好ましい。折り返し部において第2基材が袋の内方に浮き上がることを防止することができる。
【0011】
本発明に係る緩衝袋では、前記緩衝袋は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記嵌合具との間の領域に開封用のノッチを有し、前記開口封止部は、前記第1基材及び前記第2基材の厚さ方向に沿って、前記第1基材の内表面と前記第2基材の外表面との熱接着部と、前記第2基材の内表面同士の熱接着部と、前記第2基材の外表面及と前記第1基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。開口封止部によって、未開封状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ラミネート加工を施さず外的圧力から内容物を保護するとともに、美観を現出できる緩衝袋を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る緩衝袋の一例を示す正面図である。
【
図6】区画シール部の変形例を示す正面図であり、(a)は区画シール部が斜め格子状である形態、(b)は区画シール部が円形状である形態、(c)は区画シール部が横線状である形態、(d)は区画シール部が大小の格子状を有する形態である。
【
図7】本実施形態に係る緩衝袋の変形例の一例を示す正面図である。
【
図9】開口封止部を有する緩衝袋の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本実施形態に係る緩衝袋1は、
図1~
図4に示すように、第1基材91からなる胴部を有する外袋2と、第2基材92からなる胴部を有し外袋2の内側に配置される内袋3と、を備える二重袋である緩衝袋において、緩衝袋1は、内袋3の内側に設けられた収容部S1と、収容部S1に面する領域に設けられた第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H1を有する区画シール部7と、を有し、区画シール部7は、第1基材91と第2基材92との間に複数の気体セル10を形成し、気体セル10の各々は、緩衝用空気を密封している。
【0016】
緩衝袋1は、例えば、
図1に示すように、正面視で四角形状の袋体であり、下縁に折り返し部4、左右の側縁にそれぞれ第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6B、上縁に開口部5を有することが好ましい。緩衝袋1の形状は、
図1では一例として折り返し部4を有する形態を示したが、本発明はこれに限定されない。また、緩衝袋1は、折り返し部4を有さない形態であってもよい。
図1に示すように折り返し部4を有する形態は、例えば、表面フィルムと裏面フィルムとが1枚のフィルムを折り返して形成した袋体である。折り返し部4を有さない形態(不図示)は、例えば、表面フィルムと裏面フィルムとが別個のフィルムである袋体、スタンディングパウチのように胴部と底部とが別個のフィルムである袋体である。
【0017】
緩衝袋1は、
図2に示すように、外袋2と内袋3とを有する二重袋である。この二重袋では、第1基材91と第2基材92とが封止部(例えば側縁封止部6A,6B)によって一体的に接合されている。また、この二重袋は、外袋2の胴部を構成する第1基材91と内袋3の胴部を構成する第2基材92とは区画シール部7で接合されているため、実質的に一重構造の袋のように一つの収容部S1を有する。収容部S1は、開口部5に連通する空間である。
【0018】
外袋2は、
図1及び
図2に示すように、袋の外観を構成する部分である。外袋2の胴部は、第1基材91からなる。第1基材91は、気体セル10に緩衝用空気を密封できる素材であればよく、例えば、熱可塑性樹脂フィルム又は天然紙である。
【0019】
熱可塑性樹脂フィルムは、合成樹脂製フィルム及び生分解性フィルムを包含する。
【0020】
合成樹脂製フィルムの材質は、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)若しくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(SAN)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)/商品名ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、又はフッ素樹脂(PTFE)である。合成樹脂製フィルムは、単層構造であるか、又は積層構造であってもよい。
【0021】
生分解性フィルムは、生分解性プラスチックからなるフィルムであればよく特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。
【0022】
天然紙は、和紙又は洋紙を問わないが、例えば、クラフト紙又はパラフィン紙(蝋引き紙)である。天然紙とすることで、美観に優れる。また、高級感を創出することができる。本実施形態では、天然紙の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。バリア性塗工層によって内容物の品質低下をより抑制することができる。バリア性塗工層は、天然紙の内表面だけに設けられる形態、天然紙の外表面だけに設けられる形態、又は天然紙の内表面及び外表面の両方に設けられる形態であってもよい。バリア性塗工層は、生分解性を有していてもよい。また、バリア性塗工層を天然紙の内表面に設ける場合、バリア性塗工層は熱接着性を有することが好ましい。バリア性塗工層を天然紙の外表面に設ける場合、バリア性塗工層は印刷適性を有することが好ましい。生分解性、熱接着性及び印刷適性を有するバリア性塗工層としては、例えば日本製紙株式会社製のシールドプラス(登録商標)が挙げられる。
【0023】
内袋3は、
図1及び
図2に示すように、外袋2に内設され、その内部空間は収容部S1となっている。内袋3の胴部は、第2基材92からなる。第2基材92は、気体セル10に緩衝用空気を密封できる素材であればよく、例えば、第1基材91で列挙した材料を用いることができる。
【0024】
第1基材91若しくは第2基材92のいずれか一方又は両方は、バリア性塗工層を有することが好ましい。バリア性塗工層を施す面は、第1基材91若しくは第2基材92の片面又は両面のいずれであってもよい。バリア性塗工層は、例えば、蒸着又はコーティングである。
【0025】
第1基材91若しくは第2基材92のいずれか一方又は両方は、凹凸加工部(不図示)を有することが好ましい。後述する気体セル10内の空気量が増えるので、緩衝効果や保温効果が高まる。凹凸加工部は、例えば、エンボス加工である。また、凹凸加工部を有する基材としては、例えば、パールソフト(登録商標)が挙げられる。
【0026】
第1基材91及び第2基材92の両方が、合成樹脂製フィルムであってもよい。基材のバリエーションが豊富であるため、様々なニーズに応えることができる。また、第1基材91若しくは第2基材92のいずれか一方又は両方は、多層共押出しフィルムであることが好ましい。バリア性を付与することができる。
【0027】
第1基材91は天然紙であり、かつ、第2基材92は生分解性フィルムであることが好ましい。緩衝袋1を完全性分解性の袋体とすることができる。天然紙の片面又は両面は、バリア塗工層を有することが好ましい。
【0028】
第1基材91が天然紙であり、かつ、第2基材92が熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。この組合せでは、天然紙の表面には繊維の絡み合いによって生じる細孔又は凹凸があるため、毛管現象によって熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物が天然紙の表面又は不織布の細孔又は凹凸に含浸することで、後述する各熱接着部H1~H13において両者はより強固に結合する。このように、接着強度が向上するため相性が良い。本明細書において、「含浸」とは、熱によって溶融又は軟化させた熱可塑性の樹脂素材を非樹脂素材に圧入し硬化させて樹脂素材と非樹脂素材との隙間を埋める技術をいう。すなわち、本実施形態では、樹脂素材(例えば熱可塑性樹脂)に熱を加え、溶融又は軟化状態にして非樹脂素材(例えば天然紙)に含浸させ熱シールするものであり、分子結合させるものではない。従来は、熱シールには、一般的に溶融又は軟化する素材同士の熱接着が利用されてきたが、本発明では熱によって溶融又は軟化しない素材に、熱によって溶融又は軟化する素材を含浸させて熱シールする点で異なる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、天然紙の厚さ方向に20~100%含浸することが好ましく、50~90%含浸することがより好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、天然紙の厚さ方向に100%を超えて含浸していてもよい。ここで、100%を超えて含浸するとは熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が天然紙の外表面まで染み出るように浸透していることをいう。
【0029】
区画シール部7は、
図1に示すように、収容部S1に面する領域に設けられる。ここで、収容部S1に面する領域は、嵌合具8よりも折り返し部4側の領域である。区画シール部7は、緩衝袋1の表面及び裏面の両面に施すことが好ましい。区画シール部7は、
図3に示すように、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H1を有する。熱接着部H1は、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面とが熱によって接着された部分である。熱接着部H1では、熱によって第1基材91若しくは第2基材92の少なくともいずれか一方が溶融又は軟化して他方に固着(融着)しているか、又は、第1基材91及び第2基材92の両方が溶融又は軟化して互いに固着(融着)しあっていてもよい。このように、本実施形態に係る緩衝袋1では、第1基材91及び第2基材92はラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、例えば、区画シール部7において熱による接着で直接的に固定されている。その結果、ラミネート加工を施さず外的圧力から内容物を保護することができる。また、区画シール部7によって袋の外表面に例えば格子状などの規則的な図様が形成されるので、美観を現出できる。
【0030】
気体セル10は、
図1及び
図3に示すように、区画シール部7で囲まれた密閉空間であり、空気層が形成される。本明細書において、気体セルの各々が緩衝用空気を密封しているとは、隣接する気体セル間で緩衝用空気の出入がないことをいう。気体セル10の空気層によって耐衝撃性の効果を奏する。また、空気層によって保温性に優れた断熱効果も発揮できる。このため、冷凍食品又は温めた弁当などの持ち帰り用容器として好適である。
【0031】
気体セル10に密封される緩衝用空気は、区画シール部7を形成する時に気体セル10内に自然に内包された空気であるか、又は区画シール部7を形成する時に気体セル10内に意図的に送り込んだ空気であってもよい。
【0032】
本実施形態に係る緩衝袋1では、
図1及び
図5に示すように、第1基材91と第2基材92とは、嵌合具8よりも折り返し部4側に設けられた接合シール部9によって互いに接合されており、接合シール部9は、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H6を有することが好ましい。接合シール部9は、
図1に示すように嵌合具8に沿って設けられることが好ましい。接合シール部9は、
図1に示すように連続した線状であるか、又は断続した線状(不図示)であってもよい。このうち、接合シール部9は、第1基材91と第2基材92との間が閉塞される点で、
図1に示すように連続した線状であることがより好ましい。また、接合シール部9が
図1に示すように連続した線状であることによって、熱接着部H5と接合シール部9の熱接着部H6とで囲まれた空間S2も気体セルと同様に緩衝用空気を密封し得る。熱接着部H6は、熱接着部H1と同様に、ラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、熱による接着で直接的に固定されている。熱接着部H6によって、第1基材91と第2基材92との接合部分が増えるので、第1基材91と第2基材92とのズレをより抑制することができる。
【0033】
図6は、区画シール部の変形例を示す正面図である。
図1では、一例として区画シール部7が格子状に設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されない。区画シール部7は、例えば、
図6(a)に示すように斜め格子状である形態、
図6(b)に示すように円形状である形態、
図6(c)に示すように横線状である形態、
図6(d)に示すように大小の格子状を有する形態であってもよい。
図6(b)のように区画シール部7が円形状であり、かつ、接合シール部9が
図1に示すように連続した線状である場合、円内の空間10aに加えて、円外の空間10bも気体セル10と同様に緩衝用空気を密封し得る。
図6(c)のように、緩衝袋1の製造時に基材の流れ方向(MD方向とも呼ばれる)と平行に区画シール部7を設けることで、製造ライン上で気体セル10内に空気を送り込みやすい。また、
図6(d)に示すように、区画シール部7を形成する密度を変えることで、気体セル10として、内包する空気量が相対的に少ない小気体セル10cと、内包する空気量が相対的に多い大気体セル10dとを有する形態としてもよい。これによって、気体セル10内の空気量の多少を設けることができ、緩衝や保温の程度を調整できる。
【0034】
本実施形態に係る緩衝袋1は嵌合具8を有することが好ましい。嵌合具8によって収容部S1を再封止可能とすることができる。本実施形態に係る緩衝袋1は、
図2に示すように嵌合具8が第2基材92(すなわち内袋3の胴部)に設けられた形態(第一例)と、
図11に示すように嵌合具8が第1基材91(すなわち外袋2の胴部)に設けられた形態(第二例)とを包含する。次に、第一例の緩衝袋1について説明する。
【0035】
本実施形態に係る第一例の緩衝袋1では、緩衝袋1は、
図1及び
図2に示すように、第1基材91と第2基材92とが重ね合わされた状態で第2基材92が内側にされて二つ折りされた折り返し部4と、折り返し部4に対向する縁に設けられた開口部5と、折り返し部4と折り返し部4に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部6Aと、第1側縁封止部6Aに対向する第2側縁封止部6Bとを有し、第2基材92は、開口部5の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具8を有し、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、
図4に示すように、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H2と、第2基材92の内表面同士の熱接着部H3と、第2基材92の外表面と第1基材91の内表面との熱接着部H4と、を有し、第1基材91及び第2基材92は、
図5に示すように、嵌合具8の基部が設けられた部分から開口部5の縁までの間の領域Rに、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H5を有することが好ましい。
【0036】
第一例の緩衝袋1では、雌雄咬合型の嵌合具8は、
図2に示すように、開口部5において対向する第2基材92の一方に突設された雌部材8Aと第2基材92の他方に突設された雄部材8Bとを有する。雌部材8A及び雄部材8Bは互いに係脱可能に係合する形状であればよく、
図2では一例として雌部材8Aは断面形状が矢尻状の頭部を有する形状であり、雄部材8Bは雌部材8Aの頭部が嵌まるような断面形状が凹形状であってその両側の先端に互いに向き合う鉤が設けられた形状である形態を示したが、本発明はこれに限定されない。嵌合具8は、
図2に示すように第2基材92と一体であるか、又は別体であってもよい(不図示)。
【0037】
第一例の緩衝袋1において、
図2では一例として開口部の縁を構成する2つの第1基材91の縁と2つの第2基材92の縁とが同じ高さである形態を示したが、本発明はこれに限定されず、2つの第1基材91の縁が2つの第2基材92の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出している形態(不図示)、2つの第2基材92の縁が2つの第1基材91の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出している形態(不図示)、又は開口部5を挟んで一方側にある第1基材91及び第2基材92に対して、他方側にある第1基材91及び第2基材92が折り返し部4とは反対側により突出している形態(不図示)であってもよい。
【0038】
第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、
図4に示すように、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って、熱接着部H2、H3,H4を有する。本明細書において、「第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って」とは、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに伸びる仮想の同一直線(不図示)上に並んでいることを意味する。なお、
図3には代表して第1側縁封止部6Aを示したが、第2側縁封止部6Bも第1側縁封止部6Aと同様の構造を有する。熱接着部H2~H4は、熱接着部H1と同様に、ラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、熱による接着で直接的に固定されている。熱接着部H2~H4によって、外袋2と内袋3とが第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bにおいて一体的に接合されている。
【0039】
第1基材91及び第2基材92は、
図5に示すように、嵌合具8の基部が設けられた部分から開口部5の縁までの間の領域Rに、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H5を有することが好ましい。嵌合具8の基部が設けられた部分は、
図5に示すように、雌部材8Aが第2基材92から突設する部分のうち、最も折り返し部4(
図2に図示)側の部分である。熱接着部H5は、熱接着部H1と同様に、ラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、熱による接着で直接的に固定されている。熱接着部H5によって、開口部5の縁において第1基材91と第2基材92とが一体的に接合されるので、嵌合具8をより容易に開封することができる。
【0040】
図7は、本実施形態に係る緩衝袋の変形例の一例を示す正面図である。
図8は、
図7のC-C線断面図である。本実施形態に係る緩衝袋1では、折り返し部4は、
図7及び
図8に示すように、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H7と、第2基材92の内表面同士の熱接着部H8と、第2基材92の外表面と第1基材91との内表面の熱接着部H9と、を有することが好ましい。熱接着部H7~H9は、熱接着部H1と同様に、ラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、熱による接着で直接的に固定されている。熱接着部H7~H9によって、折り返し部4において第2基材92が袋の内方に浮き上がることを防止することができる。
【0041】
図9は、開口封止部を有する緩衝袋の一例を示す正面図である。
図10は、
図9のD-D線断面図である。本実施形態に係る緩衝袋1では、緩衝袋1は、
図9及び
図10に示すように、開口部5の縁を封止する開口封止部11を有し、かつ、第1側縁封止部6A若しくは第2側縁封止部6Bのいずれか一方又は両方は、開口封止部11と嵌合具8との間の領域に開封用のノッチ12を有し、開口封止部11は、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H10と、第2基材92の内表面同士の熱接着部H11と、第2基材92の外表面及と第1基材91の内表面との熱接着部H12と、を有することが好ましい。
【0042】
ノッチ12は、特に限定されず、例えば、Vノッチ(
図7に図示)、Iノッチ(不図示)、又は傷加工などによるダメージ加工であってもよい(不図示)。また、ノッチ12は、
図7に示すように第1側縁封止部6Aだけに設けられていてもよいし、第2側縁封止部6Bだけに設けられていてもよいし(不図示)、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bの両方に設けられていてもよい(不図示)。
図9及び
図10に示す緩衝袋1では、緩衝袋1をノッチ12から嵌合具8に沿って切り開くと、例えば
図2に示すように開口部5が形成される。熱接着部H10~H12は、熱接着部H1と同様に、ラミネート加工などによって貼り合わされておらず、第1基材91と第2基材92とは、熱による接着で直接的に固定されている。開口部5の縁が開口封止部11で封止されることによって、緩衝袋1の未開封状態を確保することができる。
図10では、折り返し部4に熱接着部が設けられていない形態を示したが、
図8に示すように熱接着部H7~H9が設けられた形態であってもよい。
【0043】
次に
図11を参照して第二例の緩衝袋1について説明するが、第二例の緩衝袋1は、嵌合具8が第1基材91に設けられている以外は基本的な構成を第一例の緩衝袋1と同じくする。このため、共通する構成については説明を省略し、異なる構成について説明する。本実施形態に係る第二例の緩衝袋1では、緩衝袋1は、
図11に示すように、第1基材91と第2基材92とが重ね合わされた状態で第2基材92が内側にされて二つ折りされた折り返し部4と、折り返し部4に対向する縁に設けられた開口部5と、折り返し部4と折り返し部4に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部6Aと、第1側縁封止部6Aに対向する第2側縁封止部6Bとを有し、開口部5の縁を構成する2つの第1基材91の縁が、2つの第2基材92の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置されており、第1基材91は、開口部5の縁に沿って第2基材92の縁よりも突出した部分の内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具8を有し、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、
図4に示すように、第1基材91及び第2基材92の厚さ方向Tに沿って、第1基材91の内表面と第2基材92の外表面との熱接着部H2と、第2基材92の内表面同士の熱接着部H3と、第2基材92の外表面と第1基材91の内表面との熱接着部H4と、を有することが好ましい。
【0044】
第二例の緩衝袋1では、開口部5の縁を構成する2つの第1基材91の縁が、2つの第2基材92の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置されており、この第1基材91の突出した部分の内表面に嵌合具8が設けられている。第二例の緩衝袋1は、第2基材92の縁と第1基材91との熱接着部H13を有することが好ましい。熱接着部H13によって、第1基材91と第2基材92との間に内容物が侵入することを防止することができる。
【0045】
本実施形態に係る緩衝袋1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法で製造してもよい。ここでは、
図1~
図5に示す第一例の緩衝袋1を例にとって製造方法を説明するが、第二例の緩衝袋1も同様の方法で製造することができる。
【0046】
まず、帯状の第1基材91と帯状の第2基材92とを第2基材92が内側になるように2枚重ねで二つ折りする。帯状の第1基材91及び帯状の第2基材92はそれぞれロール状に巻かれた原反ロールから、それぞれ繰り出されて供給されてもよい。また、嵌合具8は第2基材92の原反を製造時に第2基材92と一体に成形されることが好ましい。例えば、インフレーション成形によれば、嵌合具8を第2基材92と一体に成形することができる。
【0047】
次いで、第1基材91と第2基材92とが二つ折りで重ね合わされた状態で、長手方向に交差する方向に延びる側縁封止部(第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを含む。)を所定の間隔毎に熱接着で形成する。
【0048】
その後、収容部に面する領域に、シールバー又は所定の形状が施された金型によって区画シール部7を熱接着で形成する。このとき、区画シール部7の形成時に第1基材91の区画シール部7で囲まれる部分を吸引したり、第1基材91及び第2基材92の原反ロール側から空気流れを発生させたりしてもよい。これらによって気体セル10中に内包される緩衝用空気の量を増量することができる。
【0049】
接合シール部9は、側縁封止部6A,6Bを形成する前に形成するか、側縁封止部6A,6Bを形成した後に形成するか、又は区画シール部7を形成する時に同時に形成してもよい。
【0050】
第1基材91が天然紙であり、かつ、第2基材92が熱可塑性樹脂フィルムであるとき、熱接着部H1~H13を設けるにあたり、熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からのみシールバーで加熱してもよいが、第1基材91(天然紙)の厚さに応じて、熱接着される部分の両面側(製袋時上側と下側)に同時にシールバーで加熱するか、又は熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からシールバーで加熱した後、更に他方の面側(製袋時下側)からもシールバーで加熱してもよい。これによって、より安定的に第2基材92の熱可塑性樹脂を第1基材91の天然紙に含浸させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 緩衝袋
2 外袋
3 内袋
4 折り返し部
5 開口部
6A 第1側縁封止部
6B 第2側縁封止部
7 区画シール部
8 嵌合具
8A 雌部材
8B 雄部材
9 接合シール部
10 気体セル
10a 円内の空間
10b 円外の空間
10c 小気体セル
10d 大気体セル
11 開口封止部
12 ノッチ
91 第1基材
92 第2基材
H1~H13 熱接着部
R 領域
S1 収容部
S2 空間
T 厚さ方向