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▶ 竹内 修の特許一覧

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  • 特許-透かし模様付き金属板の製造方法 図1-1
  • 特許-透かし模様付き金属板の製造方法 図1-2
  • 特許-透かし模様付き金属板の製造方法 図2
  • 特許-透かし模様付き金属板の製造方法 図3
  • 特許-透かし模様付き金属板の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】透かし模様付き金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 25/02 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B22D25/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023114134
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593097317
【氏名又は名称】竹内 修
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 修
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-114129(JP,A)
【文献】特開平07-164103(JP,A)
【文献】特開2018-072746(JP,A)
【文献】特開平01-008004(JP,A)
【文献】特開2006-136939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/00-1/14
B22C 1/00-3/02
B22C 9/22
B22D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂型よりなる上側と下型の間に厚み3mm以下の部分を有する板を埋め込み、上型と下型を分離して板を抜き取り、上型と下型を合わせて板を抜き取ってできた隙間に溶けた金属を流し込むことで、3mm以下の隙間の部分において不規則な透かし模様を形成するものであり、板は、厚みの異なる粘土製の板をモザイク状に組み合わせて構成することを特徴とする透かし模様付き金属板の製造方法。
【請求項2】
砂型よりなる上側と下型の間に厚み3mm以下の部分を有する板を埋め込み、上型と下型を分離して板を抜き取り、上型と下型を合わせて板を抜き取ってできた隙間に溶けた金属を流し込むことで、3mm以下の隙間の部分において不規則な透かし模様を形成するものであり、板は、粘土で形成してあり、部分的に削るか肉盛りすることを特徴とする透かし模様付き金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透かし模様付きの金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透かし模様付きの金属板は存在するが、そうした金属板の透かし模様は、草花などをモチーフとした伝統的なものが多く、厚く動きがなく目新しさがなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、薄く、軽量、繊細で、躍動感があり、斬新で深みのある透かし模様付きの金属板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、砂型よりなる上側と下型の間に厚み3mm以下の部分を有する板を埋め込み、上型と下型を分離して板を抜き取り、上型と下型を合わせて板を抜き取ってできた隙間に溶けた金属を流し込むことで、3mm以下の隙間の部分において不規則な透かし模様を形成するものであり、板は、厚みの異なる粘土製の板をモザイク状に組み合わせて構成することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、砂型よりなる上側と下型の間に厚み3mm以下の部分を有する板を埋め込み、上型と下型を分離して板を抜き取り、上型と下型を合わせて板を抜き取ってできた隙間に溶けた金属を流し込むことで、3mm以下の隙間の部分において不規則な透かし模様を形成するものであり、板は、粘土で形成してあり、部分的に削るか肉盛りすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、砂型よりなる上側と下型の間に厚み3mm以下の部分を有する板を埋め込み、上型と下型を分離して板を抜き取り、上型と下型を合わせて板を抜き取ってできた隙間に溶けた金属を流し込むことで、時として予測できない不規則なレース状の透かし模様が形成されるので、軽量で繊細さと躍動感に満ちた斬新で深みのある透かし模様付き金属板を製造することができる。
【0008】
さらに、請求項記載の発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、板は、厚みの異なる粘土製の板をモザイク状に組み合わせて構成することで、一枚の金属板の中に透光部の面積の割合が異なるレース状の透かし模様を配設することができ、より一層斬新で深みのある透かし模様付き金属板を製造することができる。
【0009】
請求項記載の発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、板は、粘土で形成してあり、部分的に削るか肉盛りすることで、透けない部分と透けた部分を意図的に形成し、芸術性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】本発明の透かし模様付き金属板の製造工程を示す説明図である。
図1-2】本発明の透かし模様付き金属板の製造工程(図1-1の続き)を示す説明図である。
図2】隙間の大きさ毎の透かし模様の状態を示す写真である。
図3】本発明の透かし模様付き金属板の使用状態の一例を示す写真である。
図4】同金属板を製造する際に用いられる板の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1-1,図1-2は、本発明の透かし模様付き金属板の製造工程を示している。
まず、図1-1(a)に示すように、粘土で厚みが異なる複数の板4a,4b,4c,4d,…を作る。各板4a,4b,4c,4d,…の厚みは、例えば4mm、3.5mm、3mm、2.5mm、2mm、1mm、0.5mmとする。
次に、図1-1(b)に示すように、厚みの異なる粘土製の板4a,4b,4c,4d,…をモザイク状に組み合わせて一枚の板3を作り、これを枠5の中に砂6を詰めた下型2の上に配置する。このとき、板3を削って溝7を形成したり、紐状の粘土8を付け足して肉盛りしてもよい。
次に、図1-1(c)に示すように、下型2の枠5の上に上型1の枠5を載せ、その枠5の中に砂6を詰める。
次に、図1-2(d)に示すように、上型1と下型2を分離し、埋め込んであった板3を抜き取る。
次に、図1-2(e)に示すように、上型1と下型2を合わせ、板3を抜き取ってできた隙間に溶けた金属19、具体的には1000~1200℃の銅又は銅合金を流し込む。
その後、上型1と下型2を分離して金属板を取り出す。
【0012】
以上の工程により製造した金属板は、3mm以下の隙間の部分に溶けた金属が流れ込むことにより、図2(a)~(d)に示すように、隙間の大きさ毎に透光部(透けた部分)の面積の割合が異なる不規則なレース状の透かし模様12が形成される。これらの写真より明らかなように、隙間の大きさが大きいほど、溶けた金属19が隙間に流れ込みやすいため透光部の面積の割合が小さくなり(図2(a)参照)、隙間の大きさが小さいほど、溶けた金属19が隙間に流れ込みにくくなるので透光部の面積の割合が大きくなる(図2(d)参照)。
出願人が行った実験の結果、隙間の大きさが0.5~1mmでは透光部の面積の割合が65~45%のレース状の透かし模様12が得られ、隙間の大きさが1.0~2.5mmでは透光部の面積の割合が40~20%のレース状の透かし模様12が得られ、隙間の大きさが2.5~3.5mmでは透光部の面積の割合が20~10%のレース状の透かし模様12が得られることが分かった。
また、鋳型に埋め込む粘土製の板3を部分的に削ることで、その部分には溶けた金属19が流れ込まず、反対に粘土製の板3に肉盛りをすると、その部分には溶けた金属19が流れ込むことになるので、透けた部分と透けない部分を意図的に形成し、芸術性を高めることができる。
【0013】
図3は、本発明による透かし模様付き金属板9の使用状態の一例を示しており、同金属板9を鏡10の前に取付けた例を示している。この透かし模様付き金属板9は、外形が四角形で、中央部に略円形の大きな穴11が形成されており、その穴11の周りに不規則なレース状の透かし模様12が形成されている。
【0014】
図4は、この透かし模様付き金属板9を製造する際に用いられる板3の例を示している。同図に示すように、この板3は厚み4mm、3mm、2.5mm、2mm、1mmの5種類の粘土製の板4a,4b,4c,4d,4eを組合わせて構成してある。周囲の4角形の枠状の部分13には厚み4mmの粘土製の板4aを用い、その枠状の部分13と外側の円14との間の部分には厚み3mmの粘土製の板4bを用い、外側の円14と内側の四角形15との間の部分には厚み2.5mmの粘土製の板4cを用い、内側の四角形15と内側の円16との間の部分には厚み2mmの粘土製の板4dを用い、内側の円16の内側には厚み1mmの粘土製の板4eを用いている。
そして、この板3の左右両側に湯道17を形成し、湯道17から周囲の四角形の枠状の部分13にまたがって堰18が複数設けてある。溶けた金属19は、上型1と下型2を合わせた鋳型を縦にした状態で、湯道17の上端部に設けた湯口20から流し込む。
【0015】
周囲の枠状の部分13は厚み4mmの粘土製の板4aを用いているので、この部分には溶けた金属19が全体的に流れ込む。周囲の枠状の部分13から中央の円16との間には、厚みの異なる粘土製の板4b,4c,4dを組合わせて用いていることで、周囲の枠状の部分13と中央の円16との間に不規則で複雑なレース状の透かし模様12が形成される(図3参照)。
【0016】
以上に述べたように本発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、砂型よりなる上側1と下型2の間に厚み3mm以下の部分を有する板3を埋め込み、上型1と下型2を分離して板3を抜き取り、上型1と下型2を合わせて板3を抜き取ってできた隙間に溶けた金属19を流し込むことで、時として予測できない不規則なレース状の透かし模様12が形成されるので、軽量で繊細さと躍動感に満ちた斬新で深みのある透かし模様付き金属板9を製造することができる。
本発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、板3は、厚みの異なる粘土製の板4a,4b,4c,4d,…をモザイク状に組み合わせて構成することで、一枚の金属板9の中に透光部の面積の割合が異なるレース状の透かし模様12を配設することができ、より一層斬新で深みのある透かし模様付き金属板9を製造することができる。
また、本発明による透かし模様付き金属板の製造方法は、板3は、粘土で形成してあり、部分的に削るか肉盛りすることで、透けない部分と透けた部分を意図的に形成し、芸術性を高めることができる。
【0017】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。上型と下型の間に埋め込む板は、厚み3mm以下の部分を少なくとも一部に有していればよく、板の材質や形状は問わない。上型と下型の間に形成される隙間に溶けた金属を流し込む方法(方案)は、任意である。金属は、銅又は銅合金に限らず、鉄やアルミ等であってもよい。本発明による透かし模様付き金属板の用途は、特に限定されるものではなく、例えば鏡や額縁、扉やパーテーション等の装飾に用いたり、観賞用に単独で用いることもできる。
【符号の説明】
【0018】
1 上型
2 下型
3 板
4a,4b,4c,4d,4e 粘土製の板
【要約】
【課題】 斬新で深みのある透かし模様付きの金属板の製造方法の提供
【解決手段】 砂型よりなる上側1と下型2の間に厚み3mm以下の部分を有する板3を埋め込み、上型1と下型2を分離して板3を抜き取り、上型1と下型2を合わせて板3を抜き取ってできた隙間に溶けた金属19を流し込むことを特徴とする。
【選択図】 図1-1
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4