(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体。
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240312BHJP
C09D 175/16 20060101ALI20240312BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20240312BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20240312BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240312BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240312BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D175/16
C09D7/48
C09D7/41
C09D7/63
G02B1/14
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2023140236
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 洋明
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-70820(JP,A)
【文献】特開2016-204585(JP,A)
【文献】特開2003-105033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D175/
C08F290/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性フィルム上にハードコート層を形成するための組成物であって、
活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)、色調調整剤(D)および溶剤(E)を含み、
前記活性エネルギー線硬化性成分(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を含み、
前記光重合開始剤(C)がオキシムエステル系誘導体を含
み、
前記色調調整剤(D)が、組成物中における平均分散粒子径(D50)が10~100nmの顔料を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化成分(A)が、
さらに(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を含む請求項1記載のハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
光透過性フィルム上に、請求項1記載のハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してなるハードコート層を有するハードコートフィルム。
【請求項4】
波長380nmにおける透過率(ta)が3%以下、かつ波長420nmにおける透過率(tb)が65%以上である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
L
*a
*b
*表色系において、b
*が-1.5以上3.0以下である請求項4記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
L
*a
*b
*表色系において、a
*が-2.5以上、1.5以下である請求項5記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項3~6いずれか1項記載のハードコートフィルムとその他機能層を積層してなる光学積層電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルム、およびその積層体に関する。
【0002】
より詳細には、TV、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、電子ブックや電子サイネージなどのディスプレイに適用することができるハードコートフィルムを得るための、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルム、その積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
TV、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン等のディスプレイ用途では長らく多用されていた液晶ディスプレイ(LCD)の他にも様々なディスプレイが開発され、各種の特長を活かした製品が市場へ展開されている。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイもその一つであり、TVやスマートフォンなどの各種用途に急速に広がっている。
【0005】
動画再生に特長を持つ液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに対して、静止画再生において応答速度、高視認性、電源オフ、あるいは微小電力にて表示情報が保持可能な特長を持つ電子ペーパーは近年、カラー化も進み、電子ブックや電子サイネージなどの用途に向けた開発、製品化が進んでいる。
【0006】
ディスプレイ製品では、外部からの紫外線によるディスプレイ機能への悪影響が問題とされ、特に屋外にて使用される用途では深刻である。
外部からの紫外線による影響を防ぐには、保護すべき機能層の外側に紫外線カット層を設けるのが一般的である。
また保護すべき機能層外側に紫外線カット層を設けることにより、ディスプレイ内部より発生する有害な紫外線から眼を保護することも出来る。
【0007】
ディスプレイ製品、特にノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、パッド、スマートウォッチ、電子ブックなどのモバイル機器は携帯性を重視するため、軽量化、ダウンサイズ化が進んでおり、ディスプレイ構成中の機能層の複機能化、薄膜化が検討されている。薄膜化検討では、基材フィルムの小膜厚化が進行しており、50μm以下の薄膜フィルムも検討されている。
フィルム上に活性エネルギー線硬化物を塗工すると、一般的に硬化収縮による反りや、カールが発生することが多く、フィルム基材の薄膜化により、その傾向は顕著となる。
ディスプレイは機能層を積層して構成されているため、機能層形成後の基材カールは、後工程での作業性の悪化、歩留まりの低下を招く。
【0008】
特許文献1には、ハードコート性と紫外線吸収性とを兼ね備える紫外線吸収性を有するハードコートフィルムが例示されている。
【0009】
しかしながら、380nmでの透過率(T)%を適正な値に設定しないと紫外線を十分にカットできず、ディスプレイ製品への悪影響を防ぐことが出来ない。また380nmでの透過率(T)%を十分な値に設定した場合、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線カット剤を使用すると420nm付近から透過率の低下が起こるため、色相が黄色味を帯びる。その上、さらなる薄型化を図ろうとすると、UVカット剤添加量を増やすことになり、黄色味が一層強くなる。その結果、ディスプレイ製品としての白色鮮明度に悪影響を与える。
【0010】
また、可視光領域を含む紫外線の照射にてラジカルが発生する開始剤を使用するため、経時の保管安定性が悪く、さらには塗工作業での照明や温度等の環境に影響を受けやすく、歩留まりの点で課題が残る。
【0011】
特許文献2には、基材フィルムに特定の紫外線カット剤を含有する樹脂層を設けることで、着色が少なく耐擦傷性に優れる表面保護フィルムが例示されている。
【0012】
しかしながら、紫外線カット剤をベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物から選択する限り、420nm付近から透過率の低下による黄色味の課題、および薄型化を図ろうとした場合の添加量増量による黄色味増加の課題は特許文献1同様に発生し、ディスプレイ製品としての白色鮮明度に悪影響を与える。
【0013】
また特許文献2には390nm近傍まで吸収を持つUV開始剤の記載があるが、開始剤の吸収波長端と紫外線カット剤のカット波長領域が一致、または近いため、十分な紫外線硬化性が得られず密着性低下、塗膜硬度等の物性低下が発生し不具合となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2009-6513号公報
【文献】特開2016-107498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、外部からの紫外線からディスプレイ表示部を保護し、白色鮮明度を向上させ、生産プロセス中の傷付き防止、硬化収縮によるカール防止および光透過性フィルムとの密着性を向上させるハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を用いることで解決することを見出し、本発明に至った。
【0017】
本発明は、光透過性フィルム上にハードコート層を形成するための組成物であって、活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)、色調調整剤(D)および溶剤(E)を含み、前記活性エネルギー線硬化性成分(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を含み、前記光重合開始剤(C)がオキシムエステル系誘導体を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、前記活性エネルギー線硬化成分(A)が、さらに(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を含む前記ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、光透過性フィルム上に、前記ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してなるハードコート層を有するハードコートフィルムに関する。
【0020】
また、本発明は、波長380nmにおける透過率(ta)が3%以下かつ波長420nmにおける透過率(tb)が65%以上である前記ハードコートフィルムに関する。
【0021】
また、本発明は、L*a*b*表色系において、b*が-1.5以上3.0以下である前記ハードコートフィルムに関する。
【0022】
また、本発明は、L*a*b*において、a*が-2.5以上、1.5以下である前記ハードコートフィルムに関する。
【0023】
また、本発明は、前記ハードコートフィルムとその他の機能層を積層してなる光学積層体電子デバイスに関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、外部からの紫外線からディスプレイ表示部を保護し、白色鮮明度を向上させ、生産プロセス中の傷付き防止、硬化収縮によるカール防止および光透過性フィルムとの密着性を向上させるハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0026】
初めに本明細書で用いられる用語について説明する。
本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、および「(メタ)アクリレート」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、および「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
また、「ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物」を「ハードコート層形成用組成物」、「(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(a1)」を「ウレタン(メタ)アクリレート(a1)」、「(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500以上15000以下である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)」を「多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)」と、それぞれ記載することがある。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
≪活性エネルギー線硬化性成分(A)≫
活性エネルギー線硬化性成分(A)は(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を含む。さらに(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)、およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を含むことが好ましい。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタン結合を有し、かつ(メタ)アクリレート基を2個以上有するオリゴマーをいう。
【0028】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)>
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する。ヌレート環骨格は、窒素原子を有するイソシアネート化合物の三量体であり、六員環構造である。(メタ)アクリロイル基を6個以上有することで、架橋密度が増大し、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れかつハードコート膜のカールを抑えることができる。カール性を抑える詳細な要因は不明であるが、ヌレート環骨格部分の環構造が応力緩和に大きく寄与していると考える。
(メタ)アクリロイル基を3個有しヌレート環骨格をもつ化合物も比較的入手しやすいが、架橋密度が小さいためハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性が不十分であり適さない。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)として、具体的には、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)と水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応物、ポリイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)とポリオールおよび水酸基を有するポリ又はモノ(メタ)アクリレート化合物との反応生成物が挙げられるが、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れる観点から、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)化合物と、水酸基を1個および(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応生成物が好ましい。
【0030】
ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、前記芳香族イソシアネートの水素添加体、並びに、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアヌレ―トが挙げられる。
水酸基を1個有するモノ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、 2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、水酸基を1個有するポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,およびトリシクロデカンジメタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%中の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の含有率は、12~48質量%が好ましい。
この範囲に調整することで、カール発生の抑制が実現できる。
【0033】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)>
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)である。重量平均分子量は硬化後の塗膜硬度の向上と良好なカール性を保つために1,000~5,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0034】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)と併用することにより、架橋密度、可撓性、基材密着のバランスがとれ、傷付き、カール(反り)発生を低減できる。
【0035】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、例えば、ポリイソシアネートと水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートとを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。
あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0036】
以下に、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の製造方法について示すが、一例であり、これらに限定されない。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを、適当なウレタン化触媒の存在下で、酸素雰囲気下、60~100℃ 、4~8時間の条件で攪拌して得ることができる。
ウレタン化触媒の具体例としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレ- ト、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等を挙げることができる。これらの中で、特に、ジブチル錫ジラウレ-ト等が好ましい。
【0037】
ポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられ、脂肪族ジイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイシシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ジイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、イソシアネート基の芳香族基との結合位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでも良い。また該ジイソシアネートは3量体としてイソシアヌレート環を形成していてもよい。
中でも、光学用途を想定した場合の黄変抑制の観点で、脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリロイル数と重量平均分子量は、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有モノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートの組み合わせで調整することができる。
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ) アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
架橋密度を高め、傷付き、カール発生等を抑える観点で、(メタ)アクリロリル基を2~5個有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0040】
カタログ等で分子量およびアクリロイル基数が公表されているウレタンアクリレート(a2)としては、三菱ケミカル(株)製:紫光UV1700B(分子量2000、アクリロイル基数10)、UV7600B(分子量1400、アクリロイル基数6)、UV7605B(分子量1100、アクリロイル基数6)、UV7610B(分子量1100、アクリロイル基数9)、UV7629EA(分子量4100、アクリロイル基数9、揮発分35%)、UV7640B(分子量1500、アクリロイル基数6~7)、およびUV7650B(分子量2300、アクリロイル基数4~5)、MIWON(株)製:MiramerPU610(分子量1800、アクリロイル基数6)、およびMU9500(分子量3200、アクリロイル基数10)、日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA―40H(分子量2000、アクリロイル基数10)、UX-5000(分子量1500、アクリロリ基数6)、UX-5102D-M20(分子量3500、アクリロリル基数6揮発分20%)、UX-5103(分子量7000、アクリロイル基数6)、およびUX―5005(分子量4500、アクリロイル基数9)、根上工業(株)製:アートレジンUN-3320HA(分子量1500、アクリロイル基数6)、UN-3320HC(分子量1500、アクリロイル基数15、揮発分5%)、UN-904(分子量4900、アクリロイル基数10)、UN-906S(分子量1000、アクリロイル基数6)、UN-901T(分子量4000、アクリロイル基数9、揮発分20%)、およびUN-952(分子量6500~11000、アクリロイル基数10)等が挙げられるがこれらに限らない。
【0041】
活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%中の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の含有率は、20~80質量%が好ましい。
この範囲に調整することで、高い傷付き防止が実現できる。
【0042】
<その他多官能(メタ)アクリレート(a3)>
その他多官能(メタ)アクリレート(a3)は、(a1)、(a2)以外のその他多官能(メタ)アクリレートである。
その他多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、各種ジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の各種ポリオールポリ(メタ)アクリレート、各種ジイソシアネートのイソシアヌレート体のトリ(メタ)アクリレート、多官能ウレタンアクリレート(a1)および多官能ウレタンアクリレート(a2)以外のウレタンアクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)およびウレタン(メタ)アクリレート(a2)を合成時に残留するペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4)をそのまま使用できる。
【0043】
その他多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、(メタ)アクリロイル基を2~5個有し、ヌレート環骨格を有する多官能アクリレートである、東亞合成(株)製:アロニックスM-215等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(アクリロイル基数2)、東亞合成(株):アロニックスM-313、および東亞合成(株):アロニックスM-315等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートおよび又はトリアクリレート(アクリロイル基数2~3)、新中村化学(株)製:NKエステルA-9300-1CL等のε―カプロラクトン変性(2-アクリロキシ)イソシアヌレート(アクリロイル基数3)、並びに、新中村化学(株)製:NKエステルA-9300、アルケマ(株)製:SARTOMER SR368、第一工業製薬(株)製:NEW FRONTIER TEICA(GX-8430)、および昭和電工製:FANCRYL FA-731A等のトリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(アクリロイル基数3)等が挙げられるがこれらに限らない。
【0044】
また、その他多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、(メタ)アクリロイル基数が4~15個の範囲外あるいは、重量平均分子量が500~15,000の範囲外である多官能ウレタンアクリレートである、
三菱ケミカル(株)製:紫光UV-6300B(分子量3700、アクリロイル基数3)、根上工業(株)製:アートレジンUN-5500(分子量50000、アクリロイル基数12.5、揮発分50%)、UN-5507(分子量17000、アクリロイル基数15.5、揮発分50%)、およびUN-905(分子量40000~200000、アクリロイル基数15、揮発分40%)等、並びに、MIWON(株)製:MiramerSC2152(分子量20787、アクリロイル基数15)等のウレタンアクリレートが挙げられるが、これらに限らない。
【0045】
活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%中のその他多官能(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、8~32質量%が好ましい。この範囲に調整することで、高基材密着性が実現できる。
【0046】
活性エネルギー線硬化性成分(A)中に含まれる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)と多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の質量比(a1)/(a2)は、20/80~80/20が好ましく、より好ましくは、60/40~40/60である。(a1)/(a2)を20/80~80/20とすることで、工程中の傷付きおよび基材に対する密着性およびカール発生を抑制することができる。
【0047】
<紫外線カット剤(B)>
紫外線カット剤(B)は、紫外線吸収剤を指す。(B)を含むことによって本発明のハードコート層形成用組成物は、紫外線吸収性を有する。
紫外線カット剤(B)としては、ブリード防止、価格等の点から少ない添加量で紫外線吸収能に優れるものが好ましい。
このような紫外線カット剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系等の紫外線カット剤が挙げられる。
塗膜の他の物性への悪影響を最小限に抑えられるという点からは、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線カット剤が好ましい。前記紫外線カット剤は、市販品をそのまま用いてもよいし、または市販品を2種類以上混合して用いてもよい。
【0048】
市販品の紫外線カット剤としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名「TINUVIN」シリーズ(ベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系)、「CHIMASSORB」シリーズ、BASF(株)製の商品名「UVINUL」シリーズ(ベンゾフェノン系およびトリアジン系)、大塚化学(株)製の商品名「RUVA」シリーズ(ベンゾトリアゾール系)、、ADEKA(株)製の商品名「アデガスタブ LA」シリーズ(ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系)、Ever Light Chemicals社製の商品名「Eversorb」シリーズ(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系)等が挙げられる。
【0049】
紫外線カット剤(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%に対し、例えば、0.5~20質量%であり、好ましくは2~15質量%の範囲である。0.5~20質量%とすることで、十分に紫外線をカットしつつ、光重合開始剤を光励起させるために必要な紫外線は確保でき、塗膜の硬化性を向上することができる。
【0050】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、オキシムエステル系誘導体を含む。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線カット剤を含むことで、積層体に影響を及ぼす可視光に近い概ね波長400nm未満の紫外線をカットするため、一般的に紫外線硬化に使用される高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の水銀を含む紫外線ランプから発せられる313nm(j線)や365nm(i線)などの多くの光重合開始剤の光励起に必要な紫外線もカットされる。しかし、オキシムエステル系誘導体を使用することで、400nm以上の紫外線(例えば、405nmのh線等)による光励起によってラジカル重合を開始することができる。
【0051】
従来公知のオキシムエステル系誘導体としてはB.A.S.F(株)製のIrgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04等、(株)日本化学工業所製のNikkacure YJ-04、IW-15等、(株)ADEKA製アデカアークルズNCI-831Eなどが挙げられる。
【0052】
光重合開始剤(C)は、オキシムエステル系誘導体以外のその他光重合開始剤を併用しても良い。その他光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ホスフィンオキシド化合物、ケタール化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0053】
併用する開始剤は、できるだけ少量かつわずかな紫外線でも効率的にラジカルを発生させることが可能な高感度開始剤が好ましい。具体的には、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノン誘導体、(±)-カンファキノンなどのカンファキノン誘導体、Sherwin-Williams社製のUltracure CTX、Ultra cure DTX、Ward-Blenkinsop社製:Quantacure ITX、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサンソン誘導体、BASF社製のTBA、2-エチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体などが挙げられる。
【0054】
光重合開始剤(C)の配合量は、活性エネルギー線硬化性成分(A)の合計100質量%に対し、0.1~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。この範囲であることで、十分な重合開始効果が得られ、密着性や耐擦傷性の向上に効果的である。
【0055】
<色調調整剤(D)>
本発明における色調調整剤とは、可視光領域の光を吸収して色調を調製する添加剤である。色調調整剤の種類は特に限定されないが、ハードコート層の黄色味を調整するために、青色または紫色を呈する着色剤として公知の染料や顔料を用いることができる。
【0056】
また黄色味の調整に使用する青色の色調調整剤により、緑色味を帯びる(a*が-(マイナス)側へ移行する)場合は、赤色または紫色を呈する色調調整剤を添加し、L*a*b*表色系での座標中心部へ調整することにより、b*調整による色調調整に比べ、さらに白色鮮明度を良好にすることが出来る。
赤色または紫色を呈する色調調整剤として公知の染料や顔料を用いることができる。
【0057】
染料としては、有機系染料ではアゾ基を分子内に有するモノアゾ系染料、トリアリールメタン系染料、フタロシアニン系染料、アントラキノン染料等、無機系染料として、アイロンブルー、プルシアンブルー、ベルリンブルー、ターンブルブルー、ミロリーブルー、チャイニーズブルー、パリブルー等の紺青( 鉄シアノ錯体系着色剤) ; ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンバイオレット等の群青; コバルトブルー等が挙げられる。
顔料としては、青色顔料として、例えばC.I.Pigment Blue15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、80等が上げられる。なかでも、C.I.Pigment Blue15:6からなる群から選ばれる青色顔料を用いることが好ましい。
紫色顔料として、C.I.Pigment Violet19またはC.I.Pigment Violet23が好ましい。
また赤色顔料として、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、255、264、272等が上げられる。なかでも、C.I.Pigment Red48:1、177、242及び254からなる群から選ばれる赤色顔料を用いることが好ましい。
【0058】
耐熱性、耐光性、耐候性の観点からは顔料の使用が好ましい。顔料の使用により屋外使用にも対応出来る耐熱性、耐光性、耐候性が得られる。
色調調整剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
色調調整剤の含有量は、所定の膜厚のハードコート層を有するハードコートフィルムが所望の透過率となるように、適宜調整すればよい。一例として、膜厚5μmのハードコート層を有するハードコートフィルムの380nmにおける透過率(ta)を3%以下とする場合、黄色味の抑制及び透明性の点から活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%に対し、色調調整剤の含有量は0.001~4.0質量%であることが好ましく、0.01 ~ 2.5質量% がさらに好ましい。
【0060】
色調調整剤として顔料を使用する場合は、ハードコート層の透明性の観点から顔料の体積平均一次粒子径は150nm以下であることが好ましく、組成物中における顔料の平均分散粒子径(D50)は10~150nmであることが好ましい。
【0061】
顔料の体積平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を用いて、100個の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、短軸径と長軸径の平均をその顔料粒子の粒径(d)とし、次いで個々の顔料が、求めた粒径を有する球と仮定してそれぞれの粒子の体積(V)を求め、この作業を100個の顔料粒子について行い、そこから下式より得られる体積平均粒径(MV)を平均一次粒子径としたものである。
MV=Σ(V・d)/Σ(V)
組成物中における顔料の平均分散粒子径(D50)は粒度分布測定装置、なかでも動的光散乱式を用いた粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「NANOTRAC WAVE II EX150」等)により測定できる。
【0062】
体積平均一次粒子径が150nm以下の顔料を得るには例えばソルトミリング処理を行い微細化することができる。
また活性エネルギー線硬化性組成物中において10~150nmの平均分散粒子径(D50)を得るためには、顔料の分散処理をすることが好ましく、事前に顔料を分散処理した顔料分散体を用いることが好ましい。
【0063】
顔料を分散処理した顔料分散体は、顔料、分散剤、およびまたはバインダー樹脂、有機溶剤からなる混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる(顔料分散体)。特に酸化ジルコニウムや無機ガラスによるビーズ分散を行うことが好ましく、その際に径の異なるビーズを使用してもよい。
【0064】
顔料を分散する際には適宜、色素誘導体、樹脂型分散剤、界面活性剤等の分散剤を含有してもよい。微細な顔料は再凝集しやすく塗膜の透明性を低下させことがあるが、分散剤は顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、塗膜の透明性が良好になる。
【0065】
色素誘導体は、色素骨格に塩基性置換基または酸性置換基を有するものがあり、例えば特開昭63―305173号公報、特公昭57-15620号公報、特公昭59-40172号公報、特公昭63-17102号公報、又は特公平5-9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0066】
樹脂型顔料分散剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、色素担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の色素担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ) アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYK-101、103、107、108,109、110,111,116、130、140、154,161,162,163,164,165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、2163、2164、またはAnti-Terra-U、203、204またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブルリゾール製のSOLSPERSE-3000、9000、11200、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33000、33500,32600、34750、35100、35200、36600、37500、38500、39000、41000、41090、53090、56000、55000、71000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、4500、4510、4530、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0068】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン- アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン- アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤; ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤; アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤; アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
分散剤を添加する場合には、顔料100質量部に対し好ましくは0.1~200質量部、さらに好ましくは0.1~150質量部である。
分散剤の配合量が0.1質量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が 200質量部より多いと、過剰な分散剤により分散に悪影響を及ぼすことがある。
【0070】
バインダー樹脂は、薄膜状の層を形成し得るものであってかつ顔料を分散させることができるものであれば特に限定されない。バインダー樹脂としては、例えば公知の熱可塑性樹脂やUV硬化型樹脂等のエネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が挙げられる。UV硬化型樹脂としては、(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有する樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、樹脂成分としては、最終組成物塗膜の硬化性を上げ、塗膜硬度、密着性などの物性が向上するのでUV硬化型樹脂等のエネルギー線硬化型樹脂が好ましい。
【0071】
<溶剤(E)>
溶剤(E)としては、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、1,3-ジオキソラン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン等が挙げられるがこれらに限らない。また1種類単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
溶剤(E)は、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物100質量%中、40~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、45~65質量%がさらに好ましい。
含有率が前記範囲にあることで、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成の低粘度化、塗工性、および乾燥性を調節できる。
【0073】
≪ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物≫
本発明のハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)、色相調整剤(D)および溶剤(E)を含む。
【0074】
本発明におけるハードコート層形成用組成物には、必要に応じてその他添加剤を含むことができる。その他添加剤は、例えば、可塑剤、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤が挙げられる。
【0075】
≪ハードコートフィルム≫
本発明のハードコートフィルムは、光透過性フィルム上に前記ハードコート層形成用組成物を硬化してなるハードコート層を有する。
本発明のハードコートフィルムは、波長380nmにおける透過率(ta)が3%以下かつ波長420nmにおける透過率(tb)が65%以上であることが好ましい。
波長380nmにおける透過率(ta)が3%以下であることにより、波長380nm以下のディスプレイに有害な紫外領域の光線がカットされ、ディスプレイ表示部の劣化を防止することが出来る。
また、波長420nmにおける透過率(tb)が65%以上であることにより、ディスプレイ表示部の白色鮮明性の向上が可能となる。
透過率(ta)は1.5%以下がより好ましく、透過率(tb)は、黄変抑制の観点で70%以上であることがより好ましい。
【0076】
本発明のハードコートフィルムは、ディスプレイ表示部の白色鮮明性の点でL*a*b*表色系において、b*が-1.5以上3.0以下であることが好ましい。また、a*が-2.5以上、1.5以下であることが好ましい。
【0077】
(光透過性フィルム)
本発明で用いる光透過性フィルムは、光学的に透明なグレードであればよく、フィルムの厚さは特に制限はないが、一般には強度や取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10~500μm程度である。特に20~250μmが好ましい。
【0078】
光透過性フィルムの具体例としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリサルホン系樹脂フィルム、脂環式ポリイミド系樹脂フィルム、ポリシクロオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどが挙げられる。ディスプレイ構造により最適なフィルムを使用すれば良く、光学的に透明であれば制限されない。
【0079】
(ハードコートフィルムの製造)
ハードコートフィルムの製造方法は、光透過性フィルム上にハードコート層形成用組成物を塗工する等の、従来公知の方法で製造することができ、とくに制限されない。
例えば、本発明のハードコート層形成用組成物を光透過性フィルムに塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させる。そこへ活性エネルギー線を照射することにより、塗工したハードコート層形成用組成物を架橋硬化させ、光透過性フィル
ム、およびハードコート層を有するハードコートフィルムが得られる。
【0080】
塗工方法としては、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等が挙げられる。
【0081】
活性エネルギー線としては、電子線や、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を用いることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線カット剤を含むことで、可視光に近い波長400nm近傍の紫外線をカットするため、波長400nm以上に発光スペクトルを持つ高圧水銀灯、メタルハライドランプの使用が好ましい。
【0082】
ハードコート層の膜厚はハードコート性を保有していれば特に限定されず、通常1~20μmであり、好ましくは1~15μmである。
【0083】
≪光学積層電子デバイス≫
本発明の光学積層電子デバイスは、ハードコートフィルムとその他の機能層を積層してなる。例えば、ハードコートフィルムとディスプレイ表示機能層の積層体が挙げられ、ハードコート層/光学フィルム/ディスプレイ表示機能層の構成を有する。
積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、ハードコートフィルムのハードコート層を有していない光透過性フィルム面とディスプレイ機能層を接着することで、外部からの有害な紫外線から保護されたディスプレイ機能層積層体を形成することができる。
【実施例】
【0084】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量は、東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC-8220GPC」を使用し、分離カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL SUPER H5000」、「TSK-GEL SUPER H4000」、「TSK-GELSUPER H3000」、および「TSK-GEL SUPER H2000」を4本直列に繋ぎ、移動相に温度40℃のテトラヒドロフランを用いて、0.6ml/分の流速で測定したポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0085】
<平均分散粒子径(D50)>
平均分散粒子径(D50)は、動的光散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「NANOTRAC WAVE II EX150」)により測定した。希釈溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用し、ローディングインデックスが1.0±0.2の範囲となる濃度で60秒間の測定を3回行った際の平均値を使用した。
【0086】
<多官能ウレタンアクリレート(a1)の製造>
(合成例1)ウレタンアクリレート混合液(P1): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM306(東亞合成(株)製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)(a3-1)67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)32.5質量%とを含む、ペンタエリスリトールポリアクリレート)1325.6質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールZ4470BA(住化コベストロ(株)製、不揮発分70質量%(揮発分酢酸ブチル)、不揮発分に対して分子量667のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマーを89.9質量%含み、NCO含有率11.9%のヌレート環を有するポリイソシアネート溶液)1059.3質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)においてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中に、重量平均分子量1600のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-1)を75.5質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)を20.8質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(f-1)を3.6質量%含む、不揮発分86.7質量%のウレタンアクリレート混合液(P1)を得た。
【0087】
(合成例2)ウレタンアクリレート混合液(P2): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4 口フラスコに、アロニックスM306 1325.6質量部 と、ネオスタンU-810 0.1質量部 を入れ、液温を50℃ にした後、デュラネートTPA-100(旭化成(株)製、不揮発分100質量%、不揮発分に対して分子量505のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリマーを92.8質量%含む、NCO含有率23.1%のヌレート環を有するポリイソシアネート)545.7質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量1400のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-2)を74.8質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)を23.0質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(f-2)を2.2質量%含む、不揮発分100質量%のウレタンアクリレート混合液(P2)を得た。
【0088】
(合成例3)ウレタンアクリレート混合液(P3): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、デスモジュールZ4470BA 4237.3質量部と、シクロヘキシルジメタノール(分子量144、水酸基価389mgKOH/g)432.6質量部と、ネオスタンU-810 0.1質量部を入れ、80℃ に昇温して3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピーク強度が反応前の5割になったことを確認後、4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144、水酸基価389mgKOH/g)865.0質量部を入れ、さらに、80℃で3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量4000のアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(a1-3)93.0質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(f-3)7.0質量%を含む、不揮発分100.0質量%のウレタンアクリレート混合液(P3)を得た。
【0089】
(合成例4)ウレタンアクリレート混合液(P4): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)、純度97%以上、分子量298)894.8質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールZ4470BA(住化コベストロ(株)製、不揮発分70質量%(揮発分酢酸ブチル)、不揮発分に対して分子量667のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマーを89.9質量%含み、NCO含有率11.9%のヌレート環を有するポリイソシアネート液)1059.33を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)においてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中に、重量平均分子量1600のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-1)を95.4質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(f-1)を4.6質量%含む、不揮発分83.7質量%のウレタンアクリレート混合液(P4)を得た。
【0090】
<(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ分子量が500以上15000以下であるウレタンアクリレート(a2)の製造>
(合成例5)ウレタンアクリレート混合液(Q1):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)、純度97%以上、分子量298)533質量部と、アロニックスM306 237質量部 と、ネオスタンU-8100.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ(株)製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量900、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(a2-1)を82.4質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1)(PE-3A、アクリロイル基当量99)を9.7質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2)(PE-4A)を7.8質量%含むウレタンアクリレート混合液(Q1)を得た。
【0091】
(合成例6)ウレタンアクリレート混合液(Q2):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM403(東亞合成(株)製、分子量524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA(a3-3))55質量%と分子量579のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA(a3-4))45質量%との混合物)2500質量部 と、ネオスタンU-810 0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI 224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量1300、アクリロイル基を10個有するウレタンアクリレート(a2-2)46.7質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)(DPPA、アクリロイル基当量105)12.0質量%、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4)(DPHA)41.3質量%を含むウレタンアクリレート混合液(Q2)を得た。
【0092】
実施例および比較例で使用した材料について、下記に記載する。
【0093】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)>
・(a1-1):分子量1600、アクリロイル基数9
・(a1-2):分子量1400、アクリロイル基数9
・(a1-3):分子量4000、アクリロイル基数6
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)>
・(a2-1):分子量900、アクリロイル基数6個
・(a2-2):分子量1300、アクリロイル基数10個
<多官能(メタ)アクリレート(a3)>
・(a3-1):ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)
・(a3-2):ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)
・(a3-3):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)
・(a3-4):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
・多官能アクリレート液(R1):東亞合成(株)製:アロニックスM-403(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)55%とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4)45%の混合物)
・多官能アクリレート液(R2):アルケマ(株)製:SARTOMER SR368(分子量423、アクリロイル基数3、(a3-5))
・多官能アクリレート液(R3):根上工業(株)製:アートレジンUN-5507(分子量17000、アクリロイル基数15.5、(a3-6)、PGMAC(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)50%含有)
【0094】
<青色分散体用顔料の作製>
青色顔料C.I.ピグメントブルー15:6(トーヨーカラー社製「リオノールブルーES」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、98部の青色微細化顔料(BP)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は28.3nmであった。
【0095】
<青色顔料分散体(d-B)の作製>
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM -250MKII」)で5 時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し顔料分散体を得た。顔料分散体はPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により不揮発分20質量%となるように調整しd-Bを得た。
青色微細化顔料(BP):11.1重量部
分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ製、DS):12.1重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:76.8重量部
得られた分散液の平均分散粒子径(D50)は55nmであった。
【0096】
<紫色分散体用顔料の作製>
紫色顔料C.I.ピグメントバイオレット23(トーヨーカラー社製「LIONOGEN VIOLET FG-6140」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、95部の紫色微細化顔料(VP)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は53.7nmであった。
【0097】
<紫色分散体(d-V)の作製>
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で3時間分散した後、孔径5.0μmのフィルタで濾過し、顔料分散体を得た。顔料分散体はPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により不揮発分20質量%となるように調整しバイオレット分散体(d-V)を作製した。
紫色微細化顔料(VP):14.0部
分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ製、DS)):10.1重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)
:75.9部
得られた分散液の平均分散粒子径(D50)は100nmであった。
【0098】
<赤色分散体用顔料の作製>
C.I.ピグメントレッド254(BASF社製「S3610CF」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の赤色微細化顔料(RP)を得た。体積平均一次粒子径は27.6nmであった。
【0099】
<赤色顔料分散体(d-R)の作製>
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、顔料分散体を得た。顔料分散体はPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により不揮発分20質量%となるように調整し赤色顔料分散体(d-R)を作製した。
赤色微細化顔料(RP):14.4部
分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ製、DS):10.1部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:75.5部
得られた分散液の平均分散粒子径(D50)は50nmであった。
【0100】
<紫外線カット剤(B)>
・紫外線カット剤(b-1):BASF社製:UVINUL 3050:ベンゾフェノン系紫外線カット剤
【0101】
<光重合開始剤(C)>
・(c-1):BASF(株)製:Irgacure OXE03:オキシムエステル系誘導体
・(c-2):BASF(株)製:Irgacure OXE01:オキシムエステル系誘導体
・(c-3):IGM Resins B.V.製:ESACURE ONE:オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン
【0102】
<溶剤(E)>
・(e-1):酢酸ブチル(三協化学(株)製)
・(e-2):MEK(メチルエチルケトン、大伸化学(株)製)
・(e-3):PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル、大伸化学(株)製)
・(e-4):PGMAC(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、三協化学(株)製)
・(e-5):DMC(炭酸ジメチル、UBE(株)製)
・(e-6):MIBK(メチルイソブチルケトン、三菱ケミカル(株)製)
【0103】
<実施例1>
攪拌機付きフラスコに、ウレタンアクリレート液(P1)21.4部、ウレタンアクリレート液(Q1)67.9部、多官能アクリレート液(R1)14.2部、紫外線カット剤UVINUL3050(b-1)10.0部、光重合開始剤Irugacure OXE03(c-1) 10.0部、メチルエチルケトン(e-2)76.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(e-3)20.0部、色調調整剤の青色顔料分散体(d-B)0.176部、紫色顔料分散体(d-V)0.418部を加え、攪拌混合して、下記の化合物を含むハードコート層形成用組成物を得た。
・ウレタンアクリレート(a1-1):14.0部
・ウレタンアクリレート(a2-1):56.0部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1):6.6部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2):9.2部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3):7.8部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4):6.4部
以上活性エネルギー線硬化成分(A)計100.0部
・その他の不揮発分(f-1):0.6部
・紫外線カット剤UVINUL3050(b-1):10.0部
・光重合開始剤Irgacure OXE03(c-1):10.0部
・青色微細化顔料(BP):0.017部
・紫色微細化顔料(VP):0.049部
・分散剤(DS):0.053部
・酢酸n-ブチル(e-1):2.8部
・メチルエチルケトン(MEK)(e-2):76.7部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)(e-3):20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)(e-4):0.475部
【0104】
<実施例2~29、比較例1~7>
表1~3に示すように、組成および配合量(質量部)を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~29、および比較例1~7のハードコート層形成用組成物を製造した。
【0105】
得られたハードコート層形成用組成物を用いて、下記の方法で透過率、a*、b*、鉛筆硬度、密着性、反り、白色鮮明度の評価を行なった。結果を表1~3に示す。
【0106】
[透過率の測定]
380nmの透過率が80%以上の厚さ50μmの光透過性フィルム(易接着PETフィルム(東レ(株)製:ルミラー U403)の上に、得られたハードコート層形成用組成物をバーコーターNo.9を用いて塗布し、熱風オーブンで100℃2分間乾燥した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を400mJ/cm2照射し、塗布層を硬化させて、光透過性フィルム、およびハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
このハードコート層を有するハードコートフィルムを23℃、相対湿度50%(以下50%RH)の恒温恒湿室に設置した日立ハイテク(株)分光光度計「U-4100」を使用して380nm、420nmの透過率を測定した。
【0107】
[a*、b*の測定]
[透過率測定]と同様にa*、b*測定用のハードコートフィルムを得た。23℃、50%RHの恒温恒湿室内に設置した日本電色工業(株)製分光・へイズメーター「SH 7000」を使用して、D65光源でのn=3の測定平均値をa*、b*とした。
【0108】
[鉛筆硬度]
[透過率測定]と同様に鉛筆硬度評価用のハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムを塗工フィルムは長さ100mm×幅50mmのテストフィルムに切断してテストフィルムとした。
得られたハードコートフィルムの鉛筆硬度は、異なる硬度の鉛筆を用い、JIS K5400(1990)に準じた試験方法により測定した。
◎:鉛筆硬度が3H以上(優れている)
○:鉛筆硬度がH~2H(良好)
△:鉛筆硬度がF(実用上問題なし)
×:鉛筆硬度がHB以下(実用不可)
【0109】
[密着性]
[透過率測定]と同様に密着性評価用のハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムのハードコート層が形成された反対側の面を、硝子板に厚み約20μmの粘着剤層を介して貼り付けた後、ハードコート層表面について、JIS K5400に準じた碁盤目剥離試験を実施し、下記の指標により判定した。
◎:剥離個数0/100(優れている)
○:剥離個数1~5/100(良好)
△:剥離個数6~20/100(実用上問題なし)
×:剥離個数21~100/100(実用不可)
【0110】
[反り試験]
[透過率測定]と同様に反り試験用のハードコートフィルムを得た。
得られたハードコートフィルムを長さ100mm×幅50mmに切断してテストフィルムとし、22℃50%RHの恒温恒湿室にて6時間放置した。
テストフィルムを水平面上に置き、長辺の両端および中央の3箇所について、幅方向の両端間の距離を、マイクロゲージを用いて測定し、その平均値を算出した。
◎:40mm以上(優れている)
○:30mm以上40mm未満(良好)
△:10mm以上30mm未満(実用上問題なし)
×:筒状、あるいは10mm未満(実用不可)
【0111】
[白色鮮明度評価]
[透過率測定]と同様に白色鮮明度評価用のハードコートフィルムを得た。白色鮮明度は、得られたハードコートフィルムのハードコート層形成面を上にして、コニカミノルタ(株)製色彩色度計用キャリブレーションプレート(CIE Y=94.9、x=0.3135、y=0.3205、以下、標準板と呼ぶ)上に置き、標準板との色味の違いを目視にて評価し、下記の指標により判定した。
◎:標準板と比べて色味の差異がわからない(優れている)
○:標準板と比べて僅かに色味を有する(良好)
△:標準板と比べて明らかに色味を有するが、標準板の色味が確認できる(実用上問題なし)
×:色味が濃く標準板の色味が確認できない(実用不可)
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表1~3に示す通り、本発明のハードコート剤を用いることで、高い紫外線カット性により外部からの紫外線からディスプレイ表示部を保護し、白色鮮明度を向上させ、低カール性によるディスプレイ生産プロセス効率の向上と高いハードコート性付与によるディスプレイ生産プロセスでの傷つき防止性を有するハードコート層を有するハードコートフィルムを提供することが出来る。
【要約】
【課題】外部からの紫外線からディスプレイ表示部を保護し、白色鮮明度を向上させ、生産プロセス中の傷付き防止、硬化収縮によるカール防止および光透過性フィルムとの密着性を向上させるハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を含む活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)、色調調整剤(D)および溶剤(E)を含み、光重合開始剤(C)がオキシムエステル系誘導体を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物によって解決される。
【選択図】なし