(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アンテナ交換方法及び仮設設備
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H01Q1/12 C
H01Q1/12 Z
(21)【出願番号】P 2023183868
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和5年3月3日 開催場所 大宮工業株式会社(大阪府富田林市若松町東2丁目5番35号、及び大阪府富田林市若松町東3丁目3番23号) 公開者 エイチ・シー・ネットワークス株式会社 住友電設株式会社 〔刊行物等〕 実施日 令和5年6月12日 実施場所 テレビ中継局(滋賀県大津市石居一丁目字西ヶ谷558番2) 実施者 エイチ・シー・ネットワークス株式会社 住友電設株式会社
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300059979
【氏名又は名称】エイチ・シー・ネットワークス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183392
【氏名又は名称】住友電設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光重
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 才幹
(72)【発明者】
【氏名】山本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】浜田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】岩本 剛
(72)【発明者】
【氏名】西堀 英樹
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-027314(JP,A)
【文献】特開2006-211108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の頂部に位置するアンテナ設置部に設置された、既設アンテナ柱に既設アンテナが取り付けられた既設アンテナユニットを、新設アンテナ柱に新設アンテナが取り付けられた新設アンテナユニットに交換するアンテナ交換方法であって、
前記鉄塔に取り付けられるとともに上下方向に延在する仮設柱を有する仮設設備を形成する仮設工程と、
前記アンテナ設置部から取り外された前記既設アンテナユニットと、前記新設アンテナユニットとを、前記仮設設備を用いて保持し、前記既設アンテナユニットと前記新設アンテナユニットとを前記仮設柱を中心に公転させる回転入替工程と、
前記回転入替工程によって前記アンテナ設置部の上方に配された前記新設アンテナユニットを前記アンテナ設置部に取り付ける取付工程と、を備える
アンテナ交換方法。
【請求項2】
前記仮設柱は、前記鉄塔に自転可能に取り付けられ、
前記回転入替工程においては、前記仮設柱を中心に前記仮設設備を自転させることで、前記仮設設備に吊るされた前記新設アンテナユニットと前記既設アンテナユニットとを公転させる、
請求項1に記載のアンテナ交換方法。
【請求項3】
前記回転入替工程においては、前記仮設柱と、前記既設アンテナユニット及び前記新設アンテナユニットのそれぞれとを連結部材にて連結した状態で、前記新設アンテナユニットと前記既設アンテナユニットとが公転される、
請求項1又は2に記載のアンテナ交換方法。
【請求項4】
前記回転入替工程前に、上下方向から見たときの前記新設アンテナの配置が前記仮設柱の中心軸を中心として前記既設アンテナと点対称な配置となるよう、前記新設アンテナユニットの姿勢を調整する姿勢調整工程を更に有する、
請求項1又は2に記載のアンテナ交換方法。
【請求項5】
前記仮設柱の上端部には、前記既設アンテナ柱の上端に取り付けられていた避雷針を取り付け可能な避雷針取付部が形成されており、
アンテナ交換作業中、前記避雷針を前記既設アンテナ柱から前記仮設柱の前記避雷針取付部へ移設し、
アンテナ交換作業後、前記避雷針を前記仮設柱の前記避雷針取付部から前記新設アンテナユニットの上端へ移設する、
請求項1又は2に記載のアンテナ交換方法。
【請求項6】
前記取付工程後、前記新設アンテナユニットを用いた特性確認検査を行っている間、前記既設アンテナユニットを地面より上側で待機させる、
請求項1又は2に記載のアンテナ交換方法。
【請求項7】
鉄塔の頂部に位置するアンテナ設置部に設置された、既設アンテナ柱に既設アンテナが取り付けられた既設アンテナユニットを、新設アンテナ柱に新設アンテナが取り付けられた新設アンテナユニットに交換する際に用いる仮設設備であって、
前記鉄塔に取り付け可能な、上下方向に延在する仮設柱を備え、
前記仮設設備は、前記アンテナ設置部から取り外された前記既設アンテナユニットと、前記新設アンテナユニットとの双方を保持可能に構成されており、
前記仮設柱は、前記鉄塔に対して自転可能に取り付けられる、
仮設設備。
【請求項8】
前記仮設柱と、前記既設アンテナユニット及び前記新設アンテナユニットのそれぞれとを連結する連結部材を更に備える、
請求項7に記載の仮設設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ交換方法及び仮設設備に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔には、例えば地上デジタルテレビ放送のための電波を送信するアンテナユニットが頂部に取り付けられているものがある。アンテナユニットは、鉄塔の頂部に取り付けられるアンテナ柱と、アンテナ柱に取り付けられたアンテナとを備える。
【0003】
特許文献1には、鉄塔の頂部に取り付けられた既設のアンテナユニットを新設のアンテナユニットに交換する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法においては、鉄塔の上部に、アンテナユニットを吊り上げて移動させるためのジンポール、支持部材、アーム、基端部滑車、先端部滑車、アンテナ用ワイヤ及び移動滑車を有する設備(以後、吊上用設備ともいう。)が建設される。ジンポールは、鉄塔の上部に固定されるとともに上下方向に長尺である。支持部材は、ジンポールから上側に突出するとともにジンポールに対して回転可能に取り付けられている。アームは、支持部材に固定されており、ジンポール及びジンポールの外周側の位置まで延びている。滑車は、アームに取り付けられている。アンテナ用ワイヤは、滑車に掛けられるとともにアームから垂下されている。移動滑車は、アンテナ用ワイヤに吊るされるとともに、アンテナユニットを吊り上げるためのフックを有する。
【0004】
また、特許文献1に記載の方法においては、既設のアンテナユニットを一時的に配置しておくための移設用ポールも建設される。
【0005】
そして、特許文献1に記載の方法においては、既設のアンテナユニットが鉄塔から取り外され、取り外された既設のアンテナユニットが吊上用設備を用いて移設用ポール上に移設される。
【0006】
その後、既設のアンテナユニットから吊上用設備の移動滑車が取り外され、移動滑車が地上まで降ろされる。そして、移動滑車に、地上に準備された新設のアンテナユニットが吊るされ、新設のアンテナユニットが、地上から鉄塔の上方まで吊り上げられて鉄塔に取り付けられる。以上のようにしてアンテナ交換が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法においては、アンテナ交換作業中に、吊上用設備の移動滑車を既設のアンテナユニットから取り外して地上まで降ろした後、新設のアンテナユニットを鉄塔上まで吊り上げて付け替える作業が必要となるため、アンテナ交換の作業時間を短縮し難い。
【0009】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、アンテナ交換の作業時間を短縮することができるアンテナ交換方法及び仮設設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の目的を達成するため、鉄塔の頂部に位置するアンテナ設置部に設置された、既設アンテナ柱に既設アンテナが取り付けられた既設アンテナユニットを、新設アンテナ柱に新設アンテナが取り付けられた新設アンテナユニットに交換するアンテナ交換方法であって、前記鉄塔に取り付けられるとともに上下方向に延在する仮設柱を有する仮設設備を形成する仮設工程と、前記アンテナ設置部から取り外された前記既設アンテナユニットと、前記新設アンテナユニットとを、前記仮設設備を用いて保持し、前記既設アンテナユニットと前記新設アンテナユニットとを前記仮設柱を中心に公転させる回転入替工程と、前記回転入替工程によって前記アンテナ設置部の上方に配された前記新設アンテナユニットを前記アンテナ設置部に取り付ける取付工程と、を備えるアンテナ交換方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、鉄塔の頂部に位置するアンテナ設置部に設置された、既設アンテナ柱に既設アンテナが取り付けられた既設アンテナユニットを、新設アンテナ柱に新設アンテナが取り付けられた新設アンテナユニットに交換する際に用いる仮設設備であって、前記鉄塔に取り付け可能な、上下方向に延在する仮設柱を備え、前記仮設設備は、前記アンテナ設置部から取り外された前記既設アンテナユニットと、前記新設アンテナユニットとの双方を保持可能に構成されており、前記仮設柱は、前記鉄塔に対して自転可能に取り付けられる、仮設設備を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナ交換の作業時間を短縮することができるアンテナ交換方法及び仮設設備を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態における、既設アンテナユニットが取り付けられた鉄塔の上部の正面図である。
【
図2】第1の実施の形態における、アンテナ交換方法のフローチャートである。
【
図3】第1の実施の形態における、仮設工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図4】第1の実施の形態における、第1引上工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図5】第1の実施の形態における、
図4のA-A線矢視断面図である。
【
図6】第1の実施の形態における、姿勢調整工程後の
図4のA-A線矢視断面図である。
【
図7】第1の実施の形態における、姿勢調整工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図8】第1の実施の形態における、第2引上工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図9】第1の実施の形態における、回転入替工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図10】第1の実施の形態における、取付工程後の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図11】第1の実施の形態における、検査工程中の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図12】第1の実施の形態における、降下工程中の状態を示す鉄塔の上部の正面図である。
【
図13】第2の実施の形態における、既設アンテナユニットが取り付けられた鉄塔の上部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図12を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本形態における、既設アンテナユニット2が取り付けられた鉄塔1の上部の正面図である。本形態において、鉄塔1は、鉄製の骨組み構造11を有する上下方向(すなわち鉛直方向)に長尺な建造物である。鉄塔1は、頂部に、上下方向に延在する柱状のアンテナ設置部12を有する。アンテナ設置部12の上端には、外周側に突出したフランジ121が形成されており、フランジ121上に既設アンテナユニット2が固定されている。
【0016】
既設アンテナユニット2は、例えば、地上デジタルテレビ放送用のUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信するために用いられる。既設アンテナユニット2は、既設アンテナ柱21と既設アンテナ22とを備える。
【0017】
既設アンテナ柱21は、鉄塔1の頂部、具体的には鉄塔1に設けられた柱状のアンテナ設置部12のフランジ121に取り付けられる。既設アンテナ柱21は、下端と上端とのそれぞれに、外周側に突出した円環状のフランジ211を有する。既設アンテナ柱21の下側のフランジ211は、アンテナ設置部12のフランジ121に重ね合わせられてボルト締結されている。既設アンテナ柱21の上側のフランジ211には、避雷針3の下端において外周側に突出するよう形成されたフランジ31が重ね合わされてボルト締結されている。
【0018】
既設アンテナ22は、図示しないアンテナ素子がパネル221にて覆われたパネル型のアンテナである。アンテナ素子は、例えば双ループアンテナ、ダイポールアンテナ等の素子とすることができる。パネル221は、例えば、既設アンテナ柱21側を向くように配されるとともにアンテナ素子が発する電波を反射可能な金属製の反射板221aと、反射板221aを既設アンテナ柱21と反対側から覆ってアンテナ素子を保護するカバー221bとを有する。
【0019】
本形態において、既設アンテナ22は、既設アンテナ柱21の周方向の互いに異なる位置に3面設けられている。さらに、既設アンテナ22は、上下方向に2列設けられている。各既設アンテナ22は、水平方向に所定の指向性を有する。そして、既設アンテナ22は、所望の方向に電波を送信できるよう向きが設計されている。
【0020】
なお、既設アンテナユニット2は、鉄塔1の頂部に取り付けられるものであれば、その構成は前述のものに限られない。例えば、既設アンテナユニット2は、上下方向の各位置の既設アンテナ22の面数、上下方向の列数等が前述のものと異なっていてもよい。
【0021】
既設アンテナユニット2は、例えば長期間(例えば数十年以上)の使用等により交換が必要となる。アンテナ交換作業は、クレーン車を用いて行うことも考えられるが、鉄塔1が山の中等のクレーン車が横付けできない場所にある場合や、鉄塔1が高過ぎてクレーン車が使えない場合等もある。
【0022】
また、アンテナ交換作業のうちの地上デジタルテレビ放送に影響を及ぼす作業は、地上デジタルテレビの放送時間中には行えず、放送休止中の短時間内に完了することが必要となる。複数の放送局において共通の放送休止時間を長く確保することは難しく、例えば夜間の数時間(例えば2,3時間)以内等の短時間でアンテナ交換作業が完了することが望ましい。
【0023】
そこで、本形態のアンテナ交換方法は、クレーン車を用いなくともアンテナ交換作業が可能であるとともに、短時間でアンテナ交換作業が完了可能なよう工夫したものである。
【0024】
図2は、本形態におけるアンテナ交換方法のフローチャートである。
本形態のアンテナ交換方法は、準備作業S1と、地上テレビジョン放送の休止中(例えば夜間)に実施される休止中作業S2と、休止中作業S2後に行われる後作業S3とを有する。以後、本形態のアンテナ交換方法の各工程につき、詳説する。
【0025】
(準備作業S1)
準備作業S1においては、まず、仮設工程S11が実施される。
図3は、仮設工程S11後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。仮設工程S11は、鉄塔1の上部に仮設設備4を建設する工程である。仮設工程S11においては、まず、鉄塔1に仮設設備4を取り付けるための取付部51,52が固定される。本形態において、取付部51,52は、鉄塔1の骨組み構造11に取り付けられる。本形態においては、2つの取付部51,52が、鉄塔1の頂部における上下方向の2箇所に固定される。
【0026】
下側の取付部51は、上側に開放された有底筒状を呈しており、仮設設備4を構成する後述の仮設柱41の下端部が挿入される。取付部51は、例えば内部にグリース等の潤滑材が配されており、仮設柱41が内部で自転可能となっている。また、上側の取付部52は、下側の取付部51の真上に形成されており、例えば仮設柱41を締付可能なバンドを有する。例えば、取付部52のバンドの内径は、仮設柱41に取り付けられる前の状態において、仮設柱41(フランジ411aを除く。)の外径よりも大きく、バンドが締め付けられることで仮設柱41に固定され、バンドが緩められることで仮設柱41が取付部52内で自転可能となる。
【0027】
取付部51,52に、仮設設備4が取り付けられる。仮設設備4は、仮設柱41、既設側張出部42、新設側張出部43、既設側ワイヤ44、新設側ワイヤ45、ウインチワイヤ40及び連結部材46を備える。
【0028】
仮設柱41は、上下方向に長尺な円筒状の複数の分割柱411を順次上側に重ねることで形成される。最も下側の分割柱411は、2つの取付部51,52に挿入されて支持される。最も下側の分割柱411の上端、並びにその他の分割柱411の上端及び下端のそれぞれには、外周側に突出したフランジ411aが形成されている。上下方向に隣接する分割柱411同士は、フランジ411a同士を重ね合わせてボルト締結されている。また、最も上側の分割柱411の上端に位置するフランジ411aは、既設アンテナユニット2に取り付けられていた避雷針3を取り付け可能な避雷針取付部を構成する。アンテナ交換作業中は、避雷針3は、既設アンテナユニット2から最も上側の分割柱411へ移設される。既設アンテナユニット2から取り外された避雷針3は、最も上側の分割柱411のフランジ411aに重ね合されてボルト締結されることでフランジ411a上に移設される。避雷針3は、仮設柱41を介して鉄塔1に電気的に接続されている。
【0029】
最も上側の分割柱411には、互いに反対側に突出した既設側張出部42及び新設側張出部43が取り付けられる。既設側張出部42と新設側張出部43とは、上下方向から見たとき、仮設柱41から互いに180°反対側に向かって突出するよう取り付けられる。既設側張出部42及び新設側張出部43は、アングル材、平板等から形成され得る。
【0030】
既設側張出部42には、2つの滑車47が取り付けられている。本形態において、各滑車47は、2つのシーブを備えた2車滑車である。滑車47には、一方のシーブに既設側ワイヤ44が掛けられており、他方のシーブには何も掛けられていないが後述するウインチワイヤ40が後に掛けられる。既設側ワイヤ44は、一端が既設アンテナユニット2に取り付けられ、他端側が仮設柱41に取り付けられた小型巻取装置49aに通されている。小型巻取装置49aは、手動で既設側ワイヤ44を巻き取り又は巻き戻しできるものであり、一例としてチルホール(登録商標)とすることができる。
【0031】
新設側張出部43には、2つの滑車48が取り付けられている。本形態において、各滑車48は、2つのシーブを備えた2車滑車である。滑車48には、一方のシーブにウインチワイヤ40が掛けられており、他方のシーブには何も掛けられていないが後述する新設側ワイヤ45が後に掛けられる。ウインチワイヤ40は、一端が地上100まで延びており、既設アンテナユニット2の交換対象である新設アンテナユニット(後述の
図4の符号6参照)が取り付けられ、他端が地上100まで延びており、地上100に設置されたウインチ10にて巻き取り又は巻き戻し可能となっている。
【0032】
小型巻取装置49a及び後述の小型巻取装置49bは、鉄塔1の上部にいる作業員によって、例えば既設アンテナユニット2又は新設アンテナユニット6の位置を変更したいとき等に使用される。一方、既設アンテナユニット2又は新設アンテナユニット6の地上100と鉄塔1の上部との間の長距離の移動の際には、ウインチ10が用いられる。
【0033】
仮設柱41と既設アンテナ柱21とは、連結部材46にて連結される。連結部材46は、仮設柱41と、既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6の少なくとも一方とを連結するための部材である。
【0034】
まず、連結部材46を構成する2つの既設側固定部461が、既設アンテナ柱21に取り付けられる。2つの既設側固定部461は、既設アンテナ柱21における既設アンテナ22より上側の部位と、下側の部位とのそれぞれに固定されている。
図5は、詳細は後述するが、上側から見た連結部材46が表れた図である。既設側固定部461は、既設アンテナ柱21を締付可能なバンド461aと、バンド461aから水平方向の一方側に突出した取付板461bとを有する。既設側固定部461は、取付板461bが仮設柱41側に突出する姿勢となるよう既設アンテナ柱21に取り付けられる。
【0035】
そして、
図3に示すごとく、連結部材46を構成する2つの仮設柱固定部462が、仮設柱41に取り付けられる。2つの仮設柱固定部462の上下方向の位置は、2つの既設側固定部461の上下方向の位置と揃えられている。
図5に示すごとく、仮設柱固定部462は、仮設柱41を締付可能なバンド462aと、バンド462aから水平方向の互いに反対側に突出した一対の取付板462b,462cとを有する。仮設柱固定部462は、一方の取付板462bがバンド462aから既設アンテナ柱21側に突出する姿勢となるよう仮設柱41に取り付けられる。
【0036】
そして、
図3に示すごとく、連結部材46を構成する2つの既設側連結部463によって、上下方向の同位置にある仮設柱固定部462と既設側固定部461とが連結される。既設側連結部463は、長尺なアングル材、平板等からなる。
図5に示すごとく、既設側連結部463は、一端部が取付板461bにボルト締結されており、他端部が仮設柱固定部462の取付板462bにボルト締結されている。
【0037】
そして、
図3に示すごとく、前述の2つの仮設柱固定部462の更に下側において、3つ目の仮設柱固定部462が仮設柱41に固定される。当該仮設柱固定部462は、取付板462bを有さない点を除いて他の仮設柱固定部462と同様の構成を有する。最下位置の仮設柱固定部462は、中央位置の仮設柱固定部462から最上位置の仮設柱固定部462までの上下方向の距離L1と、中央位置の仮設柱固定部462から最下位置の仮設柱固定部462までの上下方向の距離L2とが等しくなる位置に設けられる。
【0038】
図2に示すごとく、仮設工程S11後、第1引上工程S12が実施される。
図4は、第1引上工程S12後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。
図5は、
図4のA-A線矢視断面図である。第1引上工程S12は、仮設設備4を用いて、地上100から鉄塔1の上部まで新設アンテナユニット6が引き上げられる工程である。
【0039】
新設アンテナユニット6は、新設アンテナ柱61と新設アンテナ62とを備える。新設アンテナユニット6の構成は、既設アンテナユニット2の構成と同様とすることができる。なお、
図4及び後述の
図7乃至
図11等においては、新設アンテナユニット6の上下方向の長さが、既設アンテナユニット2の上下方向の長さよりも短い例を示すが、これに限られるものではない。新設アンテナユニット6は、既設アンテナユニット2とは構成が異なってもよいし、同じであってもよい。例えば、新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とは、水平方向の指向性が互いに異なるものであってもよい。新設アンテナユニット6の構成は、アンテナ交換場所、アンテナ交換時期等における電波送信対象エリアの状況等に応じて適宜決定され得る。
【0040】
第1引上工程S12においては、
図3に示すごとく、地上100へ延ばされたウインチワイヤ40が新設アンテナユニット6(
図4参照)に取り付けられ、ウインチ10がウインチワイヤ40を巻き取ることで新設アンテナユニット6(
図4参照)が鉄塔1の上部まで引き上げられる。
図4に示すごとく、新設アンテナユニット6は、既設アンテナユニット2から発される電波の邪魔にならないよう、既設アンテナユニット2の位置より下側の位置で止められる。そして、仮設柱41に取り付けられた小型巻取装置49bに通された新設側ワイヤ45を滑車48に掛けるとともに新設アンテナユニット6の頂部に取り付ける。小型巻取装置49bは、小型巻取装置49aと同様の構成を有する。小型巻取装置49bにて新設側ワイヤ45を巻き取って固定した後、ウインチ10が巻き戻されてウインチワイヤ40が新設アンテナユニット6から取り外される。取り外されたウインチワイヤ40は、滑車47における既設側ワイヤ44が掛けられていない側のシーブに掛けられるとともに既設アンテナユニット2の頂部に取り付けられる。すなわち、既設アンテナユニット2の頂部には、既設側ワイヤ44とウインチワイヤ40とが掛けられている。
【0041】
そして、新設アンテナユニット6が、新設側固定部464及び新設側連結部465を用いて仮設柱41に連結される。新設アンテナユニット6には、3つの仮設柱固定部462のうちの中央及び下側の2つの仮設柱固定部462と上下方向の同位置に、連結部材46を構成する2つの新設側固定部464が固定される。上側の新設側固定部464は、新設アンテナ柱61の新設アンテナ62より上側の部分に固定され、下側の新設側固定部464は、新設アンテナ柱61の新設アンテナ62より下側の部分に固定される。
図5に示すごとく、新設側固定部464は、新設アンテナ柱61を締付可能なバンド464aと、バンド464aから水平方向の一方側に突出した取付板464bとを有する。新設側固定部464は、取付板464bが仮設柱41側に突出する姿勢となるよう新設アンテナ柱61に取り付けられる。
【0042】
そして、
図4に示すごとく、連結部材46を構成する2つの新設側連結部465によって、上下方向の同位置にある仮設柱固定部462と新設側固定部464とが連結される。新設側連結部465は、長尺なアングル材、平板等からなる。
図5に示すごとく、新設側連結部465は、一端部が仮設柱固定部462の取付板462cにボルト締結されており、他端部が取付板464bにボルト締結されている。
【0043】
第1引上工程S12後、姿勢調整工程S13が実施される。
図6は、姿勢調整工程S13後における
図4のA-A線矢視断面図である。
図5及び
図6においては、既設アンテナ22を既設アンテナ柱21に取り付けるための部材、及び新設アンテナ62を新設アンテナ柱61に取り付けるための部材の図示は省略している。
図7は、姿勢調整工程S13後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。
【0044】
姿勢調整工程S13は、バンド464aを緩め、新設アンテナユニット6を、上下方向に延在する回転軸を中心に自転させて所望の姿勢に調整する工程である。
図6に示すごとく、姿勢調整工程S13においては、上下方向から見たときの新設アンテナ62の配置が仮設柱41の中心軸Cを中心として既設アンテナ22と点対称な配置となるよう、新設アンテナユニット6の姿勢が調整される。これにより、新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とが後述の回転入替工程S24によって仮設柱41を中心に180°公転されて位置が入れ替えられる際、入替前の既設アンテナユニット2の既設アンテナ22の向き(すなわち指向性)と、入替後の新設アンテナユニット6の新設アンテナ62の向き(すなわち指向性)とが同様となる。
【0045】
姿勢調整工程S13においては、新設アンテナ柱61のフランジ611に形成された所定のボルト挿通孔612と取付板464bとの位置関係と、既設アンテナ柱21のフランジ211に形成された所定のボルト挿通孔212と取付板461bとの位置関係とに基づいて、新設アンテナユニット6の姿勢が調整される。このことについて、以下説明する。
【0046】
まず、
図5に示すごとく、本形態において、新設アンテナユニット6は、新設アンテナユニット6の周方向における複数のボルト挿通孔612及び新設アンテナ62の相対位置関係が、既設アンテナユニット2の周方向における複数のボルト挿通孔212及び既設アンテナ22の相対位置関係と同じものとする。
【0047】
図5に示すごとく、既設アンテナ22の向きと新設アンテナ62の向きとが揃っている状態において、既設アンテナユニット2の既設アンテナ柱21の中心から所定方向(
図5の例においては斜め右下)に位置するボルト挿通孔212を既設側特定孔212aと定義する。既設アンテナ22の向きと新設アンテナ62の向きとが揃っている状態において、新設アンテナユニット6の新設アンテナ柱61の中心から前記所定方向(
図5の例においては斜め右下)と同じ方向に位置するボルト挿通孔612を新設側特定孔612aと定義する。上下方向から見たときの既設側特定孔212aと取付板461bとの間の角度であって、既設アンテナユニット2の周方向における既設側特定孔212aの一方側(本形態においては反時計回り側)になす角度を既設側角度θ1とする。上下方向から見たときの新設側特定孔612aの中心と取付板464bとの間の角度であって、新設アンテナユニット6の周方向における新設側特定孔612aの一方側(すなわち反時計回り側)になす角度を新設側角度θ2と定義する。
【0048】
姿勢調整工程S13においては、
図5及び
図6に示すごとく、新設側角度θ2が既設側角度θ1と一致するよう、新設アンテナユニット6の回転姿勢を調整する。これにより、
図6に示すごとく、上下方向から見たときの新設アンテナ62の配置が仮設柱41の中心軸Cを中心として既設アンテナ22と点対称な配置となる。
図6及び
図7に示すごとく、新設アンテナユニット6の姿勢が調整された後、新設側固定部464が締め付けられて新設アンテナユニット6に固定され、姿勢調整工程S13が終了する。
【0049】
なお、姿勢調整工程S13後の、上下方向から見た既設アンテナ22の外形と新設アンテナ62の外形とは、仮設柱41の中心軸Cを中心として完全な点対称となる必要はない。すなわち、上下方向から見たときの新設アンテナ62の配置が仮設柱41の中心軸Cを中心として既設アンテナ22と点対称な配置であるとは、入替前の既設アンテナユニット2の既設アンテナ22の向きと入替後の新設アンテナユニット6の新設アンテナ62の向きとが同様となればよい。例えば、既設アンテナ22のパネル221と新設アンテナ62のパネル621との大きさが異なる場合は、姿勢調整工程S13後において、既設アンテナ22の外形と新設アンテナ62の外形とは中心軸Cを中心とした完全な点対称とはならないが、入替前の既設アンテナユニット2の既設アンテナ22の向きと入替後の新設アンテナユニット6の新設アンテナ62の向きとが揃えばよい。
【0050】
姿勢調整工程S13の終了により、準備作業S1が終了する。
【0051】
(休止中作業S2)
準備工程後、地上テレビジョン放送の休止中の夜間等に休止中作業S2が実施される。休止中作業S2においては、まず、第2引上工程S21が実施される。
図8は、第2引上工程S21後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。
【0052】
第2引上工程S21においては、まず、2つの新設側連結部465が3つの仮設柱固定部462のうちの中央及び下側の2つの取付板462cからそれぞれ取り外される。次いで、小型巻取装置49bを用いて新設アンテナユニット6が引き上げられ、新設アンテナユニット6の上端位置が既設アンテナユニット2の上端位置又はその付近の位置に揃えられる。このとき、後述の回転入替工程S24において、新設アンテナユニット6がアンテナ設置部12に干渉しないよう、新設アンテナユニット6の下端位置は、既設アンテナユニット2の下端位置よりも上側に位置させることが好ましい。
【0053】
次いで、連結工程S22が実施される。連結工程S22においては、3つの仮設柱固定部462のうちの上側に位置する仮設柱固定部462の取付板462cと2つの新設側固定部464のうちの上側に位置する新設側固定部464の取付板464bとが新設側連結部465を用いて連結される。さらに、3つの仮設柱固定部462のうちの中央に位置する仮設柱固定部462の取付板462cと2つの新設側固定部464のうちの下側に位置する新設側固定部464の取付板464bとが新設側連結部465を用いて連結される。前述のごとく、中央位置の仮設柱固定部462から最上位置の仮設柱固定部462までの上下方向の距離L1(
図3参照)と、中央位置の仮設柱固定部462から最下位置の仮設柱固定部462までの上下方向の距離L2(
図3参照)とが等しいため、2つの新設側固定部464同士の上下方向の間隔を変更することなく、新設側固定部464と仮設柱固定部462とが連結可能となる。また、前述のごとく、姿勢調整工程S13にて姿勢が調整された後に新設側固定部464が新設アンテナ柱61に固定されているため、新設側固定部464の取付板464bと仮設柱固定部462の取付板462cとが新設側連結部465にて連結し直されることで、新設アンテナユニット6の回転姿勢は、姿勢調整工程S13にて調整された回転姿勢と同じとなる。
【0054】
なお、第2引上工程S21及び連結工程S22は、地上テレビジョン放送へ与える影響が少ないと判断した場合は、地上テレビジョン放送の休止直前から開始してもよい。
【0055】
次いで、取外工程S23が実施される。取外工程S23は、アンテナ設置部12から既設アンテナユニット2を取り外す工程である。このとき、図示は省略するが、既設アンテナユニット2に設けられている電力分配器に接続されている同軸ケーブルも取り外される。
【0056】
次いで、
図8にて矢印にて示すごとく、回転入替工程S24が実施される。
図9は、回転入替工程S24後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。回転入替工程S24は、仮設設備4を用いて既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6を公転させて入れ替える工程である。本形態においては、取付部51,52に対して仮設柱41を自転させることで、仮設柱41を中心に仮設設備4全体を自転させ、これによって仮設設備4に吊るされた新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とを公転させて位置を入れ替える。回転入替工程S24において新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とを公転させている際、新設アンテナユニット6は新設側ワイヤ45にて仮設設備4に保持され(吊るされ)、既設アンテナユニット2は既設側ワイヤ44にて仮設設備4に保持される(吊るされる)。また、回転入替工程S24においては、前述の連結工程S22にて説明したように既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6のそれぞれが連結部材46にて仮設柱41に固定されているため、回転時に既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6が振れることが抑制される。
【0057】
そして、既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6とが仮設柱41を中心に180°公転されたとき、すなわち新設アンテナユニット6がアンテナ設置部12上まで回転されたとき、新設アンテナユニット6がアンテナ設置部12へ降ろされて取り付けられる取付工程S25が行われる。
図10は、取付工程S25後の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。取付工程S25においては、上下の連結部材46のそれぞれから新設側連結部465が取り外された後、新設アンテナユニット6がアンテナ設置部12へ降ろされて取り付けられる。図示は省略するが、取付工程S25においては、新設アンテナユニット6に設けられている電力分配器に、既設アンテナユニット2に取り付けられていた同軸ケーブルとは別の新たな同軸ケーブルが接続される。
【0058】
次いで、検査工程S26が実施される。
図11は、検査工程S26中の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。検査工程S26は、鉄塔1に新設された新設アンテナユニット6を用いて特性確認検査を行う工程である。特性確認検査に先立って、ウインチ10にてウインチワイヤ40を巻き上げて小型巻取装置49aから既設側ワイヤ44が取り外される。そして、既設アンテナユニット2を仮設柱41に連結している2つの連結部材46のそれぞれから既設側連結部463が取り外された後、ウインチ10が巻き戻され、既設アンテナユニット2が、新設アンテナユニット6が発する電波の影響を受けない位置であって、地面よりも上側の位置まで降下されて待機される。
【0059】
検査工程S26においては、新設アンテナユニット6を用いて試験電波7を飛ばし、その受信レベルが、基準レベル以上を満たしているか否かがステップS27にて判断される。万一、検査工程S26にて新設アンテナユニット6から発された試験電波7の受信レベルが基準レベル未満と判断された場合、地上デジタルテレビ放送の再開前までの短期間に既設アンテナユニット2をアンテナ設置部12に戻す切戻工程S28が実施される。切戻工程S28は、前述の第2引上工程S21、連結工程S22、取外工程S23、回転入替工程S24及び取付工程S25と同様の工程が実施される。切戻工程S28の後、後作業S3が行われる。また、検査工程S26において、新設アンテナユニット6から発された試験電波7の受信レベルが基準レベル以上と判断された場合は、検査工程S26に次いで後作業S3が行われる。
【0060】
(後作業S3)
後作業S3においては、まず、降下工程S31が実施される。
図12は、降下工程S31中の状態を示す鉄塔1の上部の正面図である。降下工程S31は、既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6のうち、アンテナ設置部12に取り付けられていない方を地上100へ降ろす工程である。すなわち、検査工程S26において新設アンテナユニット6から発された試験電波7の受信レベルが基準レベル未満と判断されて切戻工程S28が実施された場合は、降下工程S31においては新設アンテナユニット6が地上100へ降ろされ、一方、検査工程S26において新設アンテナユニット6が発する電波のレベルが基準レベル以上と判断された場合は、降下工程S31においては既設アンテナユニット2が地上100へ降ろされる。
図12においては、既設アンテナユニット2が地上100へ降ろされる例を示している。
【0061】
図12に示すごとく、降下工程S31において既設アンテナユニット2を地上100へ降ろす場合、予め、2つの新設側固定部464と3つの仮設柱固定部462のうちの上側及び中央の2つの仮設柱固定部462とが2つの新設側連結部465を用いてそれぞれ連結される。このとき、連結される新設側固定部464と仮設柱固定部462との上下方向の高さが揃っていない場合は、一方を他方の高さに合わせてから新設側固定部464と仮設柱固定部462とが連結される。その後、既設アンテナユニット2がウインチ10を用いて地上100へ降ろされる。降下工程S31において、事前に切戻工程S28がなされて新設アンテナユニット6を地上100へ降ろす場合も同様に、仮設柱41が既設アンテナユニット2に連結された状態で、新設アンテナユニット6が地上100へ降ろされる。
【0062】
次いで、解体工程S32が実施される。解体工程S32は、仮設設備4を解体して地上100へ降ろす工程である。解体工程S32は、例えば仮設工程S11と逆の手順で分解され、各部品が地上100へ降ろされる。このとき、仮設設備4から取り外された避雷針3は、新設アンテナユニット6の新設アンテナ柱61の上側のフランジ611に移設される。
以上のように、本形態におけるアンテナ交換方法が実施される。
【0063】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態におけるアンテナ交換方法は、既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6とを仮設柱41を中心に公転させる回転入替工程S24を有する。それゆえ、既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6との入れ替え作業を短期間で実施可能である。
【0064】
また、回転入替工程S24においては、仮設柱41を中心に仮設設備4を自転させることで、仮設設備4に吊るされた新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とを公転させる。例えば、仮設設備4を、仮設柱41を中心に部分的に回転可能に構成することも可能であるが、本形態のように仮設柱41を中心に仮設設備4を自転可能とすることで、仮設設備4を簡易な構成としつつ回転入替工程S24が可能となる。
【0065】
また、回転入替工程S24においては、仮設柱41と、既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6のそれぞれとを連結部材46にて連結した状態で、新設アンテナユニット6と既設アンテナユニット2とを公転される。それゆえ、回転入替工程S24中、新設アンテナユニット6及び既設アンテナユニット2が揺れて作業性が低下することが抑制される。
【0066】
また、本形態のアンテナ交換方法は、回転入替工程S24前に、上下方向から見たときの新設アンテナ62の位置が仮設柱41の中心軸Cを中心として既設アンテナ22と点対称な位置となるよう、新設アンテナユニット6の姿勢を調整する姿勢調整工程S13を有する。それゆえ、回転入替工程S24においては、既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6とを公転させることで、入替前の既設アンテナユニット2の既設アンテナ22の姿勢と新設アンテナユニット6の新設アンテナ62の姿勢とを揃えやすい。
【0067】
また、仮設柱41の上端部には、既設アンテナ柱21の上端に取り付けられていた避雷針3を取り付け可能な避雷針取付部が形成されている。そして、アンテナ交換作業中、避雷針3が既設アンテナ柱21から仮設柱41の避雷針取付部へ移設され、アンテナ交換作業後、避雷針3が仮設柱41の避雷針取付部から新設アンテナユニット6の上端へ移設される。それゆえ、アンテナ交換作業中及びアンテナ交換後も、同じ避雷針3を使用可能となる。
【0068】
また、取付工程S25後、新設アンテナユニット6を用いた特性確認検査を行っている間、既設アンテナユニット2を地面より上側で待機させる。それゆえ、検査結果が不合格であり、切戻工程S28を実施する必要がある場合であっても、検査工程S26中に既設アンテナ22を地上100へ降ろした場合と比べ、切戻工程S28が短期間で実施可能となる。
【0069】
以上のごとく、本形態によれば、アンテナ交換の作業時間を短縮することができるアンテナ交換方法及び仮設設備を提供することができる。
【0070】
[第2の実施の形態]
図13は、本形態における、既設アンテナユニット2が取り付けられた鉄塔1の上部の正面図である。本形態は、第1の実施の形態に対して、既設アンテナユニット2及び新設アンテナユニット6の取付対象となる鉄塔1を、第1の実施の形態で示したような骨組み構造(
図1等の符号11参照)を有さない鋼管柱13からなるものとした形態である。本形態の鉄塔1は、上下方向に順次重ね合された複数の鋼管柱13を有する。上下方向に隣り合う鋼管柱13同士は、鋼管柱13に形成された131にてボルト締結されている。複数の鋼管柱13の最も下側のものは、地上100に埋められた土台部14に固定されている。複数の鋼管柱13の最も上のものは、アンテナ設置部12を構成している。複数の鋼管柱13の最も上の鋼管柱13の上端に形成されたフランジ131に、既設アンテナユニット2の下端に形成されたフランジ211が重ね合されてボルト締結されている。また、複数の鋼管柱13の中間位置は、地上100に埋められた土台部14に固定された支持柱15によって支えられている。そして、本形態においては、第1の実施の形態と同様の取付部(例えば
図3,4,7乃至12の符号51及び52参照)が複数の鋼管柱13のうちの上部に固定され、取付部に第1の実施の形態と同様の仮設設備(例えば
図3,4,7乃至12の符号4参照)が取り付けられ、第1の実施の形態と同様のアンテナ交換方法が実施される。
【0071】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0072】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0073】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0074】
[1]鉄塔1の頂部に位置するアンテナ設置部12に設置された、既設アンテナ柱21に既設アンテナ22が取り付けられた既設アンテナユニット2を、新設アンテナ柱61に新設アンテナ62が取り付けられた新設アンテナユニット6に交換するアンテナ交換方法であって、前記鉄塔1に取り付けられるとともに上下方向に延在する仮設柱41を有する仮設設備4を形成する仮設工程S11と、前記アンテナ設置部12から取り外された前記既設アンテナユニット2と、前記新設アンテナユニット6とを、前記仮設設備4を用いて保持し、前記既設アンテナユニット2と前記新設アンテナユニット6とを前記仮設柱41を中心に公転させる回転入替工程S24と、前記回転入替工程S24によって前記アンテナ設置部12の上方に配された前記新設アンテナユニット6を前記アンテナ設置部12に取り付ける取付工程S25と、を備えるアンテナ交換方法。
【0075】
[2]前記仮設柱41は、前記鉄塔1に自転可能に取り付けられ、前記回転入替工程S24においては、前記仮設柱41を中心に前記仮設設備4を自転させることで、前記仮設設備4に吊るされた前記新設アンテナユニット6と前記既設アンテナユニット2とを公転させる、[1]に記載のアンテナ交換方法。
【0076】
[3]前記回転入替工程S24においては、前記仮設柱41と、前記既設アンテナユニット2及び前記新設アンテナユニット6のそれぞれとを連結部材46にて連結した状態で、前記新設アンテナユニット6と前記既設アンテナユニット2とが公転される、[1]又は[2]に記載のアンテナ交換方法。
【0077】
[4]前記回転入替工程S24前に、上下方向から見たときの前記新設アンテナ62の配置が前記仮設柱41の中心軸を中心として前記既設アンテナ22と点対称な配置となるよう、前記新設アンテナユニット6の姿勢を調整する姿勢調整工程S13を更に有する、[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のアンテナ交換方法。
【0078】
[5]前記仮設柱41の上端部には、前記既設アンテナ柱21の上端に取り付けられていた避雷針3を取り付け可能な避雷針取付部が形成されており、アンテナ交換作業中、前記避雷針3を前記既設アンテナ柱21から前記仮設柱41の前記避雷針取付部へ移設し、アンテナ交換作業後、前記避雷針3を前記仮設柱41の前記避雷針取付部から前記新設アンテナユニット6の上端へ移設する、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のアンテナ交換方法。
【0079】
[6]前記取付工程S25後、前記新設アンテナユニット6を用いた特性確認検査を行っている間、前記既設アンテナユニット2を地面より上側で待機させる、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のアンテナ交換方法。
【0080】
[7]鉄塔1の頂部に位置するアンテナ設置部12に設置された、既設アンテナ柱21に既設アンテナ22が取り付けられた既設アンテナユニット2を、新設アンテナ柱61に新設アンテナ62が取り付けられた新設アンテナユニット6に交換する際に用いる仮設設備4であって、前記鉄塔1に取り付け可能な、上下方向に延在する仮設柱41を備え、前記仮設設備4は、前記アンテナ設置部12から取り外された前記既設アンテナユニット2と、前記新設アンテナユニット6との双方を保持可能に構成されており、前記仮設柱41は、前記鉄塔1に対して自転可能に取り付けられる、仮設設備4。
【0081】
[8]前記仮設柱41と、前記既設アンテナユニット2及び前記新設アンテナユニット6のそれぞれとを連結する連結部材46を更に備える、[7]に記載の仮設設備4。
【0082】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…鉄塔
12…アンテナ設置部
2…既設アンテナユニット
21…既設アンテナ柱
22…既設アンテナ
3…避雷針
4…仮設設備
41…仮設柱
46…連結部材
6…新設アンテナユニット
61…新設アンテナ柱
62…新設アンテナ
S11…仮設工程
S13…姿勢調整工程
S24…回転入替工程
S25…取付工程
【要約】
【課題】アンテナ交換の作業時間を短縮することができるアンテナ交換方法及び仮設設備を提供する。
【解決手段】アンテナ交換方法は、鉄鉄塔1の頂部に位置するアンテナ設置部12に設置された、既設アンテナ柱21に既設アンテナ22が取り付けられた既設アンテナユニット2を、新設アンテナ柱61に新設アンテナ62が取り付けられた新設アンテナユニット6に交換する方法である。アンテナ交換方法は、仮設柱41を有する仮設設備4を形成する仮設工程と、アンテナ設置部12から取り外された既設アンテナユニット2と、新設アンテナユニット6とを、仮設設備4を用いて保持し、既設アンテナユニット2と新設アンテナユニット6とを仮設柱41を中心に公転させる回転入替工程とを備える。
【選択図】
図8