(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】部品把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B25J15/06 S
(21)【出願番号】P 2023515995
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2021016432
(87)【国際公開番号】W WO2022224433
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 航
(72)【発明者】
【氏名】駒池 国宗
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-11176(JP,A)
【文献】特開昭62-44385(JP,A)
【文献】特開2018-114822(JP,A)
【文献】特開2019-171535(JP,A)
【文献】特開平6-144584(JP,A)
【文献】特開2020-189387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の把持部を有し、前記複数の把持部によって磁性体である部品を把持するハンドと、
前記ハンドによって把持された前記部品を移送するピッキングロボットと、
前記ハンドの磁力を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の把持部を磁化させた状態で前記部品を把持し、前記ピッキングロボットによって前記部品を持ち上げた後、磁力をOFFにするもしくは磁力を反転させることにより、把持できていない前記部品があった場合に前記把持できていない前記部品を自重で落下させてから前記部品を搬送する、部品把持装置。
【請求項12】
複数の把持部を有し、前記複数の把持部によって磁性体である部品を把持するハンドと、
前記ハンドによって把持された前記部品を移送するピッキングロボットと、
前記ハンドの磁力を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の把持部を開いた状態で磁化させて複数の前記部品を前記複数の把持部にそれぞれ引き寄せた後、前記複数の把持部を閉じることで複数の前記部品を一箇所に集めて磁力をOFFにすることで前記部品の山を形成する、部品把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを採取して配置する装置として、国際公開第2017/094112号に記載のワーク移載装置が知られている。このワーク移載装置は、軸部材の先端に磁性体のワークを引き付けて採取する引付部と、引付部が引き付けたあとの姿勢でワークを挟み込んで支持する挟持部と、を有している。引付部の軸部材は電磁石に接続されており、電磁石に供給される電力に応じて、複数段階の磁力(引付力)が引付部に生じるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のワーク移載装置では引付部と挟持部が別々に構成されており、ワークを挟持する挟持部自体に磁力を発生させることができない。部品を挟持するのは挟持部であるから、部品の形状に合わせて挟持部を設ける必要があり、部品毎に特殊な挟持部を用意する必要があった。また、上記のワーク移載装置では挟持部によって挟持できるワークの数は1つであるため、複数のワークを一度に挟持できなかった。このように様々な挟持態様に対応できる汎用性、例えば寸法、重量、数量等が異なる多様な挟持対象に対応してこれを的確に把持する能力が十分とは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の部品把持装置は、複数の把持部を有し、前記複数の把持部によって磁性体である部品を把持するハンドと、前記ハンドによって把持された前記部品を移送するピッキングロボットと、前記ハンドの磁力を調整する制御部と、を備える、部品把持装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、制御部によってハンドの磁力を調整できるため、多様な把持対象を的確に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図5は、実施形態1の部品把持装置の動作説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の部品把持装置のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態2-1の部品把持装置の動作説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態2-1の部品把持装置のフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2-2の部品把持装置の動作説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態2-2の部品把持装置のフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態3の部品把持装置の動作説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態3の部品把持装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の部品把持装置は、複数の把持部を有し、前記複数の把持部によって磁性体である部品を把持するハンドと、前記ハンドによって把持された前記部品を移送するピッキングロボットと、前記ハンドの磁力を調整する制御部と、を備える、部品把持装置である。
制御部によってハンドの磁力を調整できるため、磁力によって部品を引き寄せたり、反発させたりすることで任意の個数の部品を把持できる。
【0009】
(2)前記制御部は、把持された前記部品の個数情報を取得することで、前記磁力と前記個数情報とを紐付けることが好ましい。
把持された部品の個数情報を取得することで、制御部によって磁力と個数情報とを紐付けることができる。
【0010】
(3)前記制御部は、複数の前記把持部の相互の間隔であるハンド幅を調整することが好ましい。
制御部によってハンド幅を調整できるため、同一のハンドで大きさの異なる複数種類の部品を把持できる。
【0011】
(4)前記制御部は、把持された前記部品の個数情報を取得することで、前記磁力と前記ハンド幅と前記個数情報とを紐付けることが好ましい。
把持された部品の個数情報を取得することで、制御部によって磁力とハンド幅と個数情報とを紐付けることができる。
【0012】
(5)前記ハンド幅は、対向する一対の前記把持部の間隔であるものとしてもよい。
対向する一対の把持部の間隔を調整すればよいから、ハンド幅の調整が容易になる。
【0013】
(6)前記制御部は、前記ハンドの磁力を調整する磁力調整部と、前記ハンド幅を調整するハンド幅調整部と、前記磁力と前記ハンド幅と前記個数情報とを紐付ける演算部と、紐付けされた前記磁力と前記ハンド幅と前記個数情報とを記憶する記憶部と、を有することが好ましい。
演算部によって磁力とハンド幅と個数情報とを紐付けし、紐付けされたこれらの情報を記憶部に記憶させ把持成功率の高い磁力、ハンド幅に制御することができる。また、このようにすることで、さらに把持成功率の高い磁力、ハンド幅を学習し、制御するようにすることもできる。
【0014】
(7)前記ハンドは、磁性体である前記複数の把持部と、前記把持部を磁化させるコイルと、を有することが好ましい。
コイルによって把持部が磁化されて把持部自体が磁力を持つことにより、部品の確実な把持、移送が可能になる。
【0015】
(8)前記制御部は、質量の大きい前記部品に対しては強い磁力を用いて前記把持部を磁化させ、質量の小さい前記部品に対しては弱い磁力を用いて前記把持部を磁化させることが好ましい。
仮に質量の小さい部品に対して強い磁力を用いると、質量の小さい部品を強い磁力で必要以上に引き寄せてしまい、部品移送時に部品を落とす可能性がある。そこで、上記のように部品の質量に応じた適切な磁力を用いることにより、必要な数の部品を引き寄せることができ、把持成功率を上げることができる。
【0016】
(9)前記ハンドは、前記複数の把持部を磁化させることで載置部に載置された前記部品を引き寄せた後に前記部品を把持することが好ましい。
例えばトレーの載置部の端部等、把持することが難しい箇所に部品がある場合にも部品を把持可能な位置に引き寄せた後に部品を把持することができる。
【0017】
(10)前記ハンドは、前記複数の把持部を開いた状態で磁化させることで載置部に載置された前記部品をそれぞれの前記把持部に引き寄せた状態とし、前記複数の把持部を閉じることにより前記部品を一箇所に集めてから把持することが好ましい。
例えばトレーの載置部に部品がばらけた状態で配置されている場合、把持成功率が低くなることがある。その場合でも、部品をそれぞれの把持部に引き寄せた状態とし、複数の把持部を閉じることにより部品を一箇所に集めることができるから、把持成功率を高めることができる。
【0018】
(11)前記ハンドは、単数の前記部品を把持するための磁力よりも大きい磁力で複数の前記部品を把持することが好ましい。
ハンドを変更することなく、複数の部品を落とさず把持できる。
【0019】
[本開示の実施形態1の詳細]
[部品把持装置の全体構成]
部品把持装置10の全体構成について、
図1を参照して説明する。部品把持装置10は、大量の部品Pが収納された箱から一部の部品Pを取り出して小分けにするための装置である。部品把持装置10は、部品Pを把持、移送するためのピッキングロボット20、部品Pなどの対象物を撮像するためのカメラ40などを備えている。
【0020】
[ピッキングロボットの構成]
ピッキングロボット20は、垂直多関節型のロボットアーム21と、ロボットアーム21の先端部に取り付けられて部品Pを把持するハンド30と、を備えている。ハンド30は、エンドエフェクタと称呼される場合がある。ロボットアームは垂直多関節型に限られず、スカラロボット(水平多関節型ロボット)でもよいし、その他のロボットでもよい。
【0021】
ロボットアーム21は、架台22に固定されるベース部23と変位や力を伝達する複数のリンク24とを備え、ベース部23とリンク24、および隣り合うリンク24同士が関節25で揺動又は回転可能に連結されている。本実施形態では、ロボットアーム21は、揺動する3軸と回転する6軸の関節25とを備えており、各関節25には関節駆動装置(図示せず)が組み込まれている。
【0022】
[ハンドの構成]
ハンド30は、部品Pを把持する複数の把持部31を備え、本実施形態では一対の把持部31によって部品Pを挟んで保持する。ハンド30は、ベース部23とは反対側の端部に位置するリンク24に取り付けられている。一対の把持部31は、互いに近接および離間する方向に変位可能となっており、一対の把持部31が互いに近づく方向に平行移動(閉動作)することにより部品Pが把持され、一対の把持部31が互いに離れる方向に平行移動(開動作)することにより部品Pが解放されるようになっている。
【0023】
ハンド30は、詳細には
図3および
図4に示すように、一対の把持部31と、コイル32と、ハンド本体部33と、を備えている。一対の把持部31は、ハンド本体部33から2列に並んで下方に突出する形態をなし、開閉方向に対向する配置とされている。一対の把持部31におけるハンド本体部33側の端部には、コイル32が配置されている。コイル32は、2つの把持部31を囲うように配置されている。
【0024】
把持部31は磁性体によって構成され、コイル32に電流を流すことで発生する磁界によって磁化する(磁力を持つ)ようになっている。コイル32に流す電流の向きによって磁界の方向を制御し、コイル32に流す電流の強さによって磁力の強さを制御できる。磁力の強弱の調整およびハンド幅の調整は、ピッキング作業開始前、作業中、作業完了後のいずれにおいても実行可能である。ピッキング作業とは、一対の把持部31によって部品Pを把持する作業と、把持した部品Pをピッキングロボット20によって移送する作業と、を含む。ハンド幅とは、対向する一対の把持部31の間隔(一対の対向面34間の距離)のことである。
【0025】
コイル32を備えていないハンドの場合、一対の挟持部によって部品Pを挟持した際に挟持部と部品Pの間に発生する摩擦力によって部品Pを固定することになる。このため、挟持部と部品Pの接触面積を十分に確保できないような場合には十分な摩擦力が得られないことになる。その点、本開示のハンド30はコイル32を備え、磁力でも部品Pを固定するため、同一の把持部31でつかめる部品Pの種類が多くなる。
【0026】
また、相対的に質量の大きい部品Pに対しては強い磁力を用いて把持部31を磁化させて部品Pを把持、移送し、相対的に質量の小さい部品Pに対しては弱い磁力を用いて把持部31を磁化させて部品Pを把持、移送する。このようにすれば、相対的に質量の小さい部品Pを必要以上に引き寄せることがなく、例えば把持部31の対向面34以外の側面に磁力のみで固定された部品Pが移送の途中で落下することを回避できる。
【0027】
[カメラの構成]
カメラ40は、部品Pを撮像するための装置であって、CCDやCMOS等の光電変換素子や、部品Pを照らすための光源などを備えている。カメラ40は、画像が光電変換素子によって光電変換された画像信号を次述する制御部50に出力する。例えばハンド30に把持された部品Pを撮像した場合、制御部50は、画像信号を画像処理することにより部品Pの種類や個数情報などを取得できる。カメラ40は、ピッキングロボット20とは別の部材(例えば架台22の上方に配された図示しない天井壁)に取り付けられている。
【0028】
[部品把持装置の電気的構成]
次に、部品把持装置10の電気的構成について、
図2のブロック図を参照して説明する。部品把持装置10は制御部50を有しており、制御部50によってその全体が制御統括されている。制御部50は、把持位置推定部51と、磁力調整部52と、ハンド幅調整部53と、演算部54と、記憶部55と、を含む。制御部50には、ピッキングロボット20とハンド30とカメラ40とが接続されている。ピッキングロボット20の動作とハンド30の動作とカメラ40の動作とはいずれも制御部50によって制御されている。
【0029】
把持位置推定部51は、カメラ40によって撮像された部品Pの画像に基づいて部品Pの位置を推定する。例えば、画像の中心位置をカメラの位置としておき、カメラの位置は既知であるから、画像の中心位置からの部品Pのずれ量を測定することで部品Pの位置を推定する。これにより、制御部50は一対の挟持部31の中心が部品Pの位置に移動するようにロボットアーム21の動作を制御する。
【0030】
磁力調整部52は、コイル32に流れる電流の強さを調整することでコイル32に発生する磁力の強さを調整する。磁力の強さは、部品Pの個数情報に基づいて算出される質量によって決定される。また、磁力調整部52は、コイル32に流す電流の向きを調整することでコイル32に発生する磁界の向きを調整する。磁界の向きを変えることで部品Pを引き寄せたり、反発させたりすることができる。
【0031】
ハンド幅調整部53は、部品Pの種類に応じてハンド幅を調整する。部品Pの大きさは既知であるから、部品Pの種類によってハンド幅を決定できる。
【0032】
演算部54は、磁力とハンド幅と個数情報とを互いに紐付けし、紐付けされたこれらの情報を記憶部55に記憶させる。また、演算部54は、部品Pの1個あたりの質量と部品Pの個数情報とに基づいて部品Pの全体質量を算出する。さらに、演算部54は、記憶部55に問い合わせることで部品Pの個数情報(全体質量)に対応する磁力やハンド幅などの情報を取得する。
【0033】
記憶部55は、部品Pの部品名とハンド幅を紐付けしたテーブル(以下「ハンド幅&部品テーブル」という)56と、部品Pの部品名と質量を紐付けしたテーブル(以下「部品質量」という)57と、質量と磁力(電力)を紐付けしたテーブル(以下「磁力&質量テーブル」という)58と、を記憶している。
【0034】
[部品把持装置の動作説明]
次に、部品把持装置10の動作について、
図5の動作説明図を参照して説明する。
図5(A)はトレー60の載置部61に載置された部品Pとして質量の小さい部品SPを把持する場合を示し、
図5(B)はトレー60の載置部61に載置された部品Pとして質量の大きい部品LPを把持する場合を示している。小さい部品SPと大きい部品LPはいずれも磁性体である。小さい部品SPは大きい部品LPよりも小さく、軽い。小さい部品SPを把持する際のハンド幅は、大きい部品LPを把持する際のハンド幅よりも小さい。また、小さい部品SPを把持する際に使用する磁力は、大きい部品LPを把持する際に使用する磁力よりも弱い。
【0035】
例えば、小さい部品SPがM3ボルトで大きい部品LPがM6ボルトであるとした場合、小さい部品SPを把持する際のハンド幅を5mmとし、大きい部品LPを把持する際のハンド幅を8mmとしてもよい。また、小さい部品SPの質量が1gで大きい部品LPの質量が5gであるとして、小さい部品SPを把持する際の磁力(電力)は20Wとした場合、大きい部品LPを把持する際の磁力(電力)はそれより大きな100W等としてもよい。
【0036】
具体的には、演算部54は記憶部55に問い合わせてハンド幅&部品テーブル56を参照することでハンド幅を決定してもよい。また、演算部54は記憶部55に問い合わせて部品質量57を参照することで1個あたりの質量を決定し、部品Pの個数情報と1個あたりの質量とに基づいて部品Pの全体質量を算出してもよい。また、演算部54は記憶部55に問い合わせて磁力&質量テーブル58を参照することで部品Pの全体質量に対応した磁力を決定してもよい。
【0037】
このように、部品Pの種類(小さい部品SP、大きい部品LP等)に応じてハンド幅を調整するようにすれば、同一のハンド30で複数種類の部品Pを把持することができる。言うまでもなく、上記に例示した小さい部品SP、大きい部品LPに限らず、ハンド幅の調整可能な範囲であれば、他の大きさの部品Pについても把持できる。また、部品Pを把持する際に磁力を併用することでより確実に部品Pを保持することができ、部品Pを移送する際に部品Pが落下する確率を低減できる。
【0038】
ただし、小さい部品SPを把持する際に強い磁力を使用する場合、1個の小さい部品SPを把持したいときでも小さい部品SPを必要以上に引き付けてしまい、複数個把持してしまう可能性があるため、弱い磁力を使用することが好ましい。
【0039】
[部品把持装置の動作手順]
次に、部品把持装置10の動作手順について、
図6のフローチャートを参照して説明する。まず、カメラ40が載置部61に載置された部品Pを撮像することにより把持位置推定部51が部品Pの把持位置を推定し、その把持位置にハンド30を移動させる(ステップS1)。次に、演算部54が記憶部55に問い合わせてハンド幅&部品テーブル56を参照することにより、ハンド幅を決定する(ステップS2)。次に、ハンド幅調整部53は、一対の挟持部31の間隔がステップS2で決定したハンド幅になるように2つの挟持部31を移動させる。次に、演算部54が記憶部55に問い合わせて部品質量57を参照し(ステップS4)、同様にして磁力&質量テーブル58を参照し(ステップS5)、演算部54がステップS4とS5の参照結果から磁力を決定する(ステップS6)。
【0040】
次に、磁力調整部52はステップS6で決定した磁力をONにする(ステップS7)。次に、2つの把持部31が部品Pを把持し(ステップS8)、ロボットアーム21が部品Pを持ち上げる(ステップS9)。次に、磁力調整部52が磁力OFFもしくは磁力を反転させることにより(ステップS10)、把持できていない部品P(対向面34以外の面に磁力のみで固定された部品P)を自重で落下させる。次に、磁力調整部52がステップS6よりも強い磁力をONにすることにより(ステップS11)、部品移送時に部品Pを落としにくくさせる。
【0041】
次に、ロボットアーム21が部品Pを別の載置部に移載する(ステップS12)。次に、ハンド30が開いて(ステップS13)、部品Pが解放されるとともに、ロボットアーム21が部品Pを置く際、磁力調整部52が磁力OFFもしくは磁力を反転させることにより(ステップS14)、部品Pが把持部31から確実に解放されるようにできる。
【0042】
[実施形態1の作用効果]
以上のように本開示の部品把持装置10は、複数の把持部31を有し、複数の把持部31によって磁性体である部品Pを把持するハンド30と、ハンド30によって把持された部品Pを移送するピッキングロボット20と、ハンド30の磁力を調整する制御部50と、を備える、部品把持装置10である。
制御部50によってハンド30の磁力を調整できるため、磁力によって部品Pを引き寄せたり、反発させたりすることで任意の個数の部品Pを把持できる。
このように多様な把持態様に対応することができ、数量が異なる多様な把持対象を的確に把持することができる。
【0043】
制御部50は、把持された部品Pの個数情報を取得することで、磁力と個数情報とを紐付けることが好ましい。
把持された部品Pの個数情報を取得することで、制御部50によって磁力と個数情報とを紐付けることができる。
【0044】
制御部50は、複数の把持部31の相互の間隔であるハンド幅を調整することが好ましい。
制御部50によってハンド幅を調整できるため、同一のハンド30で小さい部品SPと大きい部品LPとを把持できる。
このようにハンド30の汎用性を高めることができ、サイズが異なる多様な把持対象を的確に把持することができる。
【0045】
制御部50は、把持された部品Pの個数情報を取得することで、磁力とハンド幅と個数情報とを紐付けることが好ましい。
把持された部品Pの個数情報を取得することで、制御部50によって磁力とハンド幅と個数情報とを紐付けることができる。
【0046】
前記ハンド幅は、対向する一対の把持部31の間隔であるものとしてもよい。
対向する一対の把持部31の間隔を調整すればよいから、ハンド幅の調整が容易になる。
【0047】
制御部50は、ハンド30の磁力を調整する磁力調整部52と、ハンド幅を調整するハンド幅調整部53と、磁力とハンド幅と個数情報とを紐付ける演算部54と、紐付けされた磁力とハンド幅と個数情報とを記憶する記憶部55と、を有する。
【0048】
演算部54によって磁力とハンド幅と個数情報とを紐付けし、紐付けされたこれらの情報を記憶部55に記憶させ把持成功率の高い磁力、ハンド幅に制御することができる。また、このようにすることで、さらに把持成功率の高い磁力、ハンド幅を学習し、制御するようにすることもできる。
【0049】
ハンド30は、磁性体である複数の把持部31と、把持部31を磁化させるコイル32と、を有する。
コイル32によって把持部31が磁化されて把持部31自体が磁力を持つことにより、部品Pの確実な把持、移送が可能になる。
【0050】
制御部50の磁力調整部52は、質量の大きい部品LPに対しては強い磁力を用いて把持部31を磁化させ、質量の小さい部品SPに対しては弱い磁力を用いて把持部31を磁化させる。
仮に質量の小さい部品SPに対して強い磁力を用いると、質量の小さい部品SPを強い磁力で必要以上に引き寄せてしまい、部品移送時に小さい部品SPを落とす可能性がある。そこで、上記のように部品Pの質量に応じた適切な磁力を用いることにより、必要な数の部品Pを引き寄せることができ、把持成功率を上げることができる。
実施形態1のようにすることにより、サイズ、重量または数量が異なる多様な把持対象を的確に把持することができる。
【0051】
[本開示の実施形態2-1の詳細]
次に、本開示の実施形態2-1について、
図7および
図8を参照して説明する。実施形態2-1は、トレー60の角(載置部61の端部)に部品Pがあり、ハンド30で部品Pをつかめず、荷ばらしもできないような場合に、ハンド30を磁力化し、部品Pをハンド30によって把持可能な位置に引き寄せることで部品Pの移動と荷ばらしを行う方法について説明している。
【0052】
[部品把持装置の動作説明]
図7(A)はトレー60の角に部品Pが載置されている様子を示している。載置部61の端部に部品Pが載置されていると、ハンド30をトレー60の端部まで移動させて一対の把持部31を開いても一対の把持部31によって部品Pを把持できないことがわかる。そこで、
図7(B)はコイル32に電流を流して把持部31の磁力をONにすることにより、磁力のみで部品Pを把持部31に引き寄せる様子を示している。
図7(C)は把持部31に部品Pが引き寄せられた状態で一対の把持部31を閉じつつハンド30をトレー60の中央に移動させた様子を示している。
図7(D)は把持部31の磁力をOFFにして部品Pを解放した後、ハンド30を上方に移動させて一対の把持部31を部品Pの種類に対応するハンド幅に開いた状態を示している。
【0053】
[部品把持装置の動作手順]
次に、部品把持装置10の動作手順について、
図8のフローチャートを参照して説明する。まず、カメラ40で部品Pを撮像することによりハンド30による把持が難しい部品Pを特定する(ステップS210)。次に、ハンド30の一対の把持部31を開くことで把持部31の一方が部品Pにできるだけ近づけた状態にしておく(ステップS211)。次に、演算部54が記憶部55に問い合わせて磁力&質量テーブル58を参照することで磁力を決定する(ステップS212)。
【0054】
次に、磁力調整部52はステップS212で決定した磁力をONにする(ステップS213)。これにより、部品Pは載置部61の端部から磁力によって把持部31に引き寄せられる。部品Pが把持部31に接触した状態になった後、ハンド30の一対の把持部31を閉じる、もしくはロボットアーム21を動かすことにより部品Pを把持可能な位置(例えば載置部61の中央部)に移動させる(ステップS214)。次に、磁力調整部52が磁力をOFFにすることで部品Pが把持部31から解放される(ステップS215)。
【0055】
次に、ハンド30を部品Pの上に移動させ(ステップS216)、カメラ40で部品Pを撮像することにより把持位置推定部51が部品Pの把持位置を推定する(ステップS217)。次に、部品Pを把持可能なハンド幅となるようにハンド30の一対の把持部31を開いてハンド30を載置部61の高さ位置に移動させる。一対の把持部31の間に部品Pが配置されたら、一対の把持部31を閉じることで部品Pを把持する(ステップS218)。次に、ハンド30を上に移動させることで部品Pを持ち上げる(ステップS219)。
【0056】
[実施形態2-1の作用効果]
以上のように本開示のハンド30は、複数の把持部31を磁化させることで載置部61に載置された部品Pを引き寄せた後に部品Pを把持する。
例えばトレー60の載置部61の端部等、把持することが難しい箇所に部品Pがある場合にも部品Pを把持可能な位置に引き寄せた後に部品Pを把持することができる。
【0057】
[本開示の実施形態2-2の詳細]
次に、本開示の実施形態2-2について、
図9および
図10を参照して説明する。実施形態2-2は複数の部品Pが薄くならして配置されている場合に、部品Pのつかみ幅よりも大きく、磁力も強くした状態で、ハンド30を閉じる動作をすることによって、複数の部品Pを一箇所に集めて部品Pの山を作ることで把持成功率を高くする方法について説明している。
【0058】
[部品把持装置の動作説明]
図9(A)はトレー60の載置部61に複数の部品Pが薄くならして載置されている様子を示している。この状態で部品Pをハンド30で把持しようとすると、部品Pを把持できない場合もあり、把持成功率が低いことがわかる。そこで、
図9(B)はコイル32に電流を流して一対の把持部31の磁力をONにすることにより、磁力のみで複数の部品Pを一対の把持部31にそれぞれ引き寄せる様子を示している。
図7(C)は一対の把持部31を閉じることで複数の部品Pを一箇所に集めた様子を示している。
図7(D)は把持部31の磁力をOFFにして部品Pを解放した後、ハンド30を上方に移動させることで部品Pの山を作る様子を示している。
【0059】
[部品把持装置の動作手順]
次に、部品把持装置10の動作手順について、
図10のフローチャートを参照して説明する。まず、カメラ40で複数の部品Pを撮像することで、ハンド30によって把持しにくい状態を特定する。カメラ40としては3Dカメラを使用することが好ましく、ばら積み状態の部品Pを撮像する。演算部54はカメラ40によって撮像された画像に基づいて面粗度を算出し、部品Pの山ができているか否かを判定し、部品Pの山ができていなければ把持しにくい状態であると特定する(ステップS220)。次に、ハンド30の一対の把持部31を開く。その際のハンド幅は、一対の把持部31がトレー60と干渉しない範囲内で最大の幅となるように設定する(ステップS221)。次に、磁力調整部52は磁力を強に決定し(ステップS222)、磁力をONにする(ステップS223)。これにより、複数の部品Pは磁力によって一対の把持部31にそれぞれ引き寄せられる。その状態で一対の把持部31を閉じることで複数の部品Pを一箇所に集める(ステップS224)。次に、磁力調整部52が磁力をOFFにすることで部品Pの山が形成される(ステップS225)。
【0060】
次に、ハンド30を複数の部品Pの上に移動させ(ステップS226)、カメラ40で複数の部品Pを撮像する。演算部54はカメラ40によって撮像された画像に基づいて面粗度を算出し、部品Pの山ができたか否かを判定する(ステップS227)。次に、部品Pを把持可能なハンド幅となるようにハンド30の一対の把持部31を開いてハンド30を部品Pの山の頂点付近に移動させる。一対の把持部31の間に部品Pが配置されたら、一対の把持部31を閉じることで部品Pを把持する(ステップS228)。次に、ハンド30を上に移動させることで部品Pを持ち上げる(ステップS229)。
【0061】
[実施形態2-2の作用効果]
以上のように本開示のハンド30は、複数の把持部31を開いた状態で磁化させることで載置部61に載置された部品Pをそれぞれの把持部31に引き寄せた状態とし、複数の把持部31を閉じることにより部品Pを一箇所に集めてから把持する。
例えばトレー60の載置部61に部品Pがばらけた状態で配置されている場合、把持成功率が低くなることがある。その場合でも、部品Pをそれぞれの把持部31に引き寄せた状態とし、複数の把持部31を閉じることにより部品Pを一箇所に集めることができるから、把持成功率を高めることができる。
実施形態2-1または実施形態2-2のようにすることで、積載状態が異なる多様な把持対象を的確に把持することができる。
【0062】
[本開示の実施形態3の詳細]
次に、本開示の実施形態3について、
図11および
図12を参照して説明する。実施形態3は、複数(2個以上)の部品Pを把持したい場合に、1個の部品Pを把持するための磁力よりも大きい磁力を持つようにハンド30を磁化させて複数の部品Pを把持する方法について説明している。
【0063】
[部品把持装置の動作説明]
図11(A)はカメラ40でトレー60の載置部61を撮像することによりハンド30による部品Pの把持位置を決定し、その把持位置にハンド30を移動させた様子を示している。
図11(B)は強い磁力でハンド30を磁化させて一対の把持部31を閉じることにより複数の部品Pを把持した様子を示している。
図11(C)はハンド30をトレー60の上に移動させた様子を示している。
図11(D)はハンド30に発生する磁力をOFFにすることで把持できていない部品P(ハンド30に磁力のみで引き寄せられた部品P)をトレー60の載置部61に落下させた様子を示している。
【0064】
例えば、質量が1gの部品Pを把持する際の磁力(電力)は50Wとし、質量が5gの部品Pを把持する際の磁力(電力)は250Wとしてもよい。この磁力は実施形態1の磁力の2.5倍であるから、複数の部品Pを確実に保持できる。
【0065】
[部品把持装置の動作手順]
次に、部品把持装置10の動作手順について、
図12のフローチャートを参照して説明する。まず、演算部54は、カメラ40でトレー60の載置部61を撮像し、撮像された画像に基づいて、どの位置に部品Pが多く集まっているかを判断し、最も部品Pが多く集まっている位置を把持位置として決定する(ステップS30)。次に、演算部54が把持する部品Pの質量を記憶部55に問い合わせて部品質量57を参照し(ステップS31)、同様にして磁力&質量テーブル58を参照し(ステップS32)、演算部54がステップS31とS32の参照結果と把持された部品Pの個数情報とに基づいて磁力を決定する(ステップS33)。
【0066】
次に、演算部54が記憶部55に問い合わせてハンド幅&部品テーブル56を参照し、把持する部品Pに対応するハンド幅を決定する(ステップS34)。ハンド幅調整部53は、ステップS34で決定したハンド幅になるように一対の挟持部31を移動させる。
【0067】
次に、磁力調整部52はステップS33で決定した磁力をONにする(ステップS35)。次に、2つの把持部31が部品Pを把持し(ステップS36)、ロボットアーム21が部品Pを持ち上げる(ステップS37)。次に、磁力調整部52が磁力OFFもしくは磁力を反転させることにより(ステップS38)、把持できていない部品P(対向面34以外の面に磁力のみで固定された部品P)を自重で落下させる。次に、磁力調整部52がステップS33よりも強い磁力をONにすることにより(ステップS39)、部品Pを落としにくくさせる。次に、ロボットアーム21が部品Pを別の載置部に移載する(ステップS40)。
【0068】
[実施形態3の作用効果]
以上のように本開示のハンド30は、単数の部品Pを把持するための磁力よりも大きい磁力で複数の部品Pを把持する。
ハンド30を変更することなく、複数の部品Pを落とさず把持できる。
実施形態3のようにすることで、ハンド30による移載性能を高めることができる。
【0069】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態ではカメラ40がピッキングロボット20とは別の部材に取り付けられているものを例示したが、カメラ40がピッキングロボット20のハンド30に取り付けられているものでもよい。
【0070】
(2)上記実施形態ではハンド30が一対の把持部31を有するものを例示したが、3つ以上の把持部を有するハンドでもよく、ハンド幅の調整は複数の把持部の相互の間隔を調整するようにすればよい。
【0071】
(3)上記実施形態では部品Pが側面視で四角形状のものを例示したが、側面視で丸形状の部品でもよい。
【0072】
(4)上記実施形態ではコイル32を用いて把持部31を磁化させているものを例示したが、永久磁石を用いて把持部を磁化させてもよい。その場合、永久磁石を把持部に近づけたり遠ざけたりすることで磁力を調整してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10:部品把持装置
20:ピッキングロボット 21:ロボットアーム 22:架台 23:ベース部 24:リンク 25:関節
30:ハンド 31:把持部 32:コイル 33:ハンド本体部 34:対向面
40:カメラ
50:制御部 51:把持位置推定部 52:磁力調整部 53:ハンド幅調整部 54:演算部 55:記憶部 56::ハンド幅&部品テーブル 57:部品質量 58:磁力&質量テーブル
60:トレー 61:載置部
P:部品 SP:小さい部品 LP:大きい部品