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特許7453487導電性顔料ペースト、合材ペースト、及びリチウムイオン電池用電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】導電性顔料ペースト、合材ペースト、及びリチウムイオン電池用電極
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20240312BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20240312BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240312BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240312BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240312BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/44
C09D5/24
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01B1/24 A
H01M4/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023578968
(86)(22)【出願日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2023033509
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2022148655
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陸矢
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-115523(JP,A)
【文献】特開2021-2520(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085344(WO,A1)
【文献】特表2018-535284(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092976(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047522(WO,A1)
【文献】特開2017-204474(JP,A)
【文献】特開2015-11899(JP,A)
【文献】特開2022-63234(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086174(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208637(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/017656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D 15/00- 17/00
C09C101/00-201/10
H01B 1/00- 1/24
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)とした場合、下記式(1)
X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、5以上であり、
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m /g~800m /gであり、カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560m -1 ~1600cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をG、1310m -1 ~1350cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1~5である、導電性顔料ペースト。
【請求項2】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m /g)とした場合、下記式(1);
X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、5以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、導電性顔料ペースト。
【請求項3】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、下記式(2)
Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m /g~800m /gであり、カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560m -1 ~1600cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をG、1310m -1 ~1350cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1~5である、導電性顔料ペースト。
【請求項4】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m /g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、下記式(2);
Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、導電性顔料ペースト。
【請求項5】
塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)が、10~250μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項7】
塩基性低分子量成分(E)の含有量が、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、12質量%以上、500質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項8】
カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g~0.5mmol/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項9】
溶媒(C)のアミン化合物含有量が1質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項10】
塩基性低分子量成分(E)の重量平均分子量が、1000未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項11】
アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである、請求項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項12】
溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト。
【請求項14】
請求項13に記載の合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高顔料濃度においても、顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペースト、並びに合材ペーストを塗布したリチウムイオン電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を顔料分散樹脂及び溶媒等の混合物中に分散させたペースト状の顔料分散体が、各種分野で広く用いられている。これらの分野では、顔料分散性、貯蔵安定性、塗工性、導電性、仕上がり性、耐溶剤性等の性能向上がますます要求されており、そのため、優れた顔料分散能力と、形成された顔料分散体中の顔料粒子を再凝集させないだけの優れた貯蔵安定性を有する顔料分散樹脂及び顔料ペーストの開発がなされつつある。
【0003】
顔料ペーストの設計にあたっては、顔料分散樹脂が電極等の最終製品そのものの性能に悪い影響を及ぼさないように、あるいは溶媒及び顔料分散樹脂の使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減する観点から、少量の顔料分散樹脂で高濃度かつ均一に分散された顔料ペーストを作製することが重要となっている。
また、当該顔料ペーストが長期間変質なく貯蔵できることも重要である。
【0004】
かかる状況の下、特許文献1には、バンドル型カーボンナノチューブ、分散媒、および重量平均分子量が5万超過のポリビニルブチラール樹脂を含み、バンドル型カーボンナノチューブの分散粒径が粒径分布D50において3~10μmであるカーボンナノチューブ分散液が記載されている。
しかしながら、上記カーボンナノチューブ分散液及び電極活物質とバインダー樹脂を含む電極スラリーは、初期の分散性や粘性等の性能は良いものの、長期の貯蔵性能は十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-535284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高顔料濃度においても顔料分散性に優れ適切な粘度(低い粘度)を有し、貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペースト、並びに諸性能(電池性能等)に優れるリチウムイオン電池用電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
第一の態様として、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)とした場合、X=α/β×300で示される式(1)のXの値が、5以上である導電性顔料ペーストの場合、及び/又は、
第二の態様として、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、Y=α/β/γで示される式(2)のYの値が、0.01以上である、導電性顔料ペーストの場合、
において、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の導電性顔料ペースト、合材ペースト及びリチウムイオン電池用電極を提供するものである。
[項1] 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)とした場合、下記式(1)のXの値が、5以上である、導電性顔料ペースト。
X=α/β×300・・・式(1)
[項2] 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、下記式(2)のYの値が、0.01以上である、導電性顔料ペースト。
Y=α/β/γ・・・式(2)
[項3] 塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、項1又は2に記載の導電性顔料ペースト。
[項4] カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)が、10~250μmである、項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項5] 塩基性低分子量成分(E)の含有量が、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、12質量%以上、500質量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項6] カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g~0.5mmol/gである、項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項7] カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m/g~800m/gであり、カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560m-1~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310m-1~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1~5である、項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項8] 溶媒(C)の水分含有量が1質量%以下であり、かつアミン化合物含有量が1質量%以下である、項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項9] 塩基性低分子量成分(E)の重量平均分子量が、1000未満である、項1~8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項10] アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである、項3~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項11] 溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンである、項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項12] 項1~11のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト。
[項13] 項12に記載の合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池用電極。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性顔料ペースト及び合材ペーストは、高顔料濃度においても顔料分散性に優れ適切な粘度(低い粘度)を有し、貯蔵安定性に優れ、塗膜の導電性が優れている。さらに、合材ペーストを塗布して得られるリチウムイオン電池用電極は、諸性能(電池性能等)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0011】
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本発明において、「比表面積」とは、窒素吸着法によるBET比表面積のことである。
本発明では、まず適度な分散状態の導電性顔料を有する導電性顔料ペーストが調整される。さらに諸性能を満足するリチウムイオン電池用電極を得るため、導電性顔料ペーストに電極活物質等の成分を追加して合材ペーストが製造される。
【0012】
[導電性顔料ペースト]
本発明の第一の態様の導電性顔料ペーストとしては、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)とした場合、下記式(1)のXの値が、5以上である、導電性顔料ペーストが好適である。
X=α/β×300・・・式(1)
Xの値としては、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは40以上であり、特に好ましくは60以上であり、例えば2500以下であり、好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは300以下である。また、好適な範囲としては、好ましくは5以上2500以下であり、より好ましくは10以上1000以下であり、さらに好ましくは40以上500以下であり、特に好ましくは60以上300以下である。
この範囲内であればカーボンナノチューブ(B1)の表面に必要十分に塩基性低分子量成分(E)を濡れさせることができ、カーボンナノチューブ(B1)の分散性(粘度含む)や貯蔵安定性(増粘抑制含む)を向上できることを見出した。
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量が過剰であると、臭気がきつくなり、またコスト増になる。含有量が不足するとカーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積に対する塩基性低分子量成分(E)含有量が不足して、分散性や貯蔵安定性(増粘抑制)が劣る場合がある。
【0013】
また、本発明の第二の態様の導電性顔料ペーストとしては、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、下記式(2)のYの値が、0.01以上である導電性顔料ペーストが好適である。
Y=α/β/γ・・・式(2)
Yの値としては、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは3以上であり、例えば400以下であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは100以下である。また、好適な範囲としては、好ましくは0.01以上400以下であり、より好ましくは1以上200以下であり、さらに好ましくは2以上150以下であり、特に好ましくは3以上100以下である。
この範囲内であればカーボンナノチューブ(B1)の一定量の酸性基を有する表面に必要十分に塩基性低分子量成分(E)を濡れさせることができ、カーボンナノチューブ(B1)の分散性(粘度含む)や貯蔵安定性(増粘抑制含む)を向上できることを見出した。
酸性基を有するカーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量が過剰であると、臭気がきつくなり、またコスト増になる。含有量が不足するとカーボンナノチューブ(B1)の酸性基を有するBET比表面積に対する塩基性低分子量成分(E)含有量が不足して、分散性や貯蔵安定性(増粘抑制)が劣る場合がある。
【0014】
顔料分散樹脂(A)
上記顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、エーテル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gである。また、上記の酸基は塩になっていてもよい。
【0015】
樹脂の種類としては、後述するフッ素樹脂(D)以外の樹脂であれば特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素系樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0016】
なかでも、顔料分散性、貯蔵安定製、及び仕上がり性等の観点から、顔料分散樹脂(A)としては、下記式(1)の重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを重合又は共重合することにより得られるビニル(共)重合体(A1)を含有することが好ましい。尚、本発明の「(共)重合体」とは、1種のモノマーを重合した重合体と2種以上のモノマーを共重合した共重合体の両方を含むものである。
【0017】
C(-R)=C(-R) ・・・式(1)
[上記式において、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。]
上記ビニル(共)重合体(A1)としては、その構造中に「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位(ただし、Xは活性水素基又は活性水素基を含む有機基である。)を含むものが好ましい。上記ビニル(共)重合体(A1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
水酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-脂肪酸ビニル共重合体、ビニルアルコール-エチレン共重合体、ビニルアルコール-(N-ビニルホルムアミド)共重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。(共)重合体中のビニルアルコール単位は脂肪酸ビニル単位を(共)重合した後に加水分解して得られたものでも良い。
【0019】
カルボキシル基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の重合体、又は(メタ)アクリル酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0020】
アミド基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドの重合体、(メタ)アクリルアミド誘導体(3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の重合体、又は(メタ)アクリルアミドとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0021】
スルホン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、アリルスルホン酸又はスチレンスルホン酸等の重合体、アリルスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0022】
リン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートの重合体、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0023】
上記ビニル(共)重合体(A1)は、上記の「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位以外に、必要に応じて共重合可能な重合性不飽和基含有モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。共重合可能な重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体又はビニリデン単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;第四級アンモニウム基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、N-ビニルホルムアミド、、N-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃量は、顔料分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、通常0.3mmol/g~23mmol/gであり、好ましくは9mmol/g~23mmol/gであることが好適である。
【0025】
上記ビニル(共)重合体(A1)の重合方法は、それ自体既知の重合方法で製造することができ、例えば溶液重合を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0026】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用できる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30℃以上200℃以下程度の範囲で設定できる。
【0028】
上記のようにして得ることができるビニル(共)重合体(A1)は、重合度が例えば100以上、好ましくは150以上であり、例えば4,000以下、好ましくは3,000以下、より好ましくは700以下である。
【0029】
また、重量平均分子量としては、例えば500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、例えば2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。
【0030】
重量平均分子量としては、仕上がり性、防食性等の観点から、通常500~50,000の範囲内であり、さらに1,000~20,000の範囲内であり、さらに特に1,500~20,000の範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量は、特に記載がない限り、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を用い、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0031】
上記ビニル(共)重合体(A1)は、合成終了後に脱溶媒及び/又は溶媒置換することで、固体又は任意の溶媒に置き換えた樹脂溶液にできる。
【0032】
脱溶媒の方法としては、常圧で加熱により行ってもよいし、減圧下で脱溶媒してもよい。溶媒置換の方法としては、脱溶媒前、脱溶媒途中、又は脱溶媒後のいずれの段階で置換溶媒を投入してもよい。
【0033】
(顔料分散樹脂(A)の含有量)
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、例えば40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0034】
また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料(B)の含有量を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0035】
導電性顔料(B)
上記導電性顔料(B)は、カーボンナノチューブ(B1)を含有する。
導電性顔料(B)は、さらに、カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)を含有していてもよい。
上記導電性顔料(B)中のカーボンナノチューブ(B1)の含有量としては、導電性顔料(B)100質量%を基準として、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0036】
(カーボンナノチューブ(B1))
カーボンナノチューブ(B1)としては、単層カーボンナノチューブ、又は多層カーボンナノチューブをそれぞれ単独で、又は組合せて使用できる。特に粘度、導電性及びコストの関係から、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
【0037】
カーボンナノチューブ(B1)の平均外径としては、例えば1nm以上、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上であり、例えば30nm以下、好ましくは28nm以下、より好ましくは25nm以下である。
カーボンナノチューブ(B1)の平均長さとしては、例えば0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0038】
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積としては、粘度及び導電性の関係から、例えば100m/gであり、好ましくは130m/gであり、より好ましくは160m/gであり、例えば800m/g以下であり、好ましくは600m/g以下であり、より好ましくは400m/g以下である。
【0039】
上記カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量としては、分散性及び貯蔵性の観点から、例えば0.01mmol/g~0.5mmol/gであり、好ましくは0.01mmol/g~0.2mmol/gであり、より好ましくは0.01mmol/g~0.1mmol/gである。酸性基量が0.01mmol/g以上であれば分散性が良好となり、また1.0mmol/g以下であれば貯蔵性が良好となる。
上記酸性基は以下のカーボンナノチューブの酸処理により付与することができる。
【0040】
<酸処理方法>
酸処理の方法としては、カーボンナノチューブに酸を接触させることができれば特に限定されないが、カーボンナノチューブを酸処理液(酸の水溶液)中に浸漬させる方法が好ましい。酸処理液に含まれる酸としては、特に限定されないが、例えば硝酸、硫酸、塩酸が挙げられる。これらは、1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、硝酸、硫酸が好ましい。
カーボンナノチューブの酸性基量は、酸処理液の濃度、温度、処理時間等によって調整することができる。
【0041】
酸処理後、後述する洗浄方法により表面に付着した余剰な酸成分を除去し、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
酸処理したカーボンナノチューブを洗浄する方法としては、特に限定されないが、水洗が好ましい。例えば、酸処理をしたカーボンナノチューブから、ろ過などの既知の手法でカーボンナノチューブを回収し、続いてカーボンナノチューブを水洗する。上記洗浄後、必要に応じて、表面に付着した水を乾燥により除去する等して、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
【0042】
また、カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)としては、実施例で記載する方法で測定した場合、例えば10μm以上であり、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、例えば250μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。ここでメディアン径(D50)はカーボンナノチューブの粒子にレーザー光を照射し、その散乱光からカーボンナノチューブの直径を球形に換算して求めることができる。メディアン径(D50)が大きいほどカーボンナノチューブの凝集塊が多く存在し、分散性が悪いことを意味する。メディアン径(D50)が250μmより大きい場合、電極中でカーボンナノチューブの凝集塊が存在する可能性が高くなり、電極全体における導電性が不均一となる。一方、メディアン径(D50)が10μmよりも小さい場合、繊維長が短くなっていることから導電パスが不十分であり、導電性が低下してしまう。メディアン径(D50)が10~250μmの範囲内である場合、カーボンナノチューブは導電性を維持したまま電極内で均一に分散することが可能になる。
【0043】
また、上記カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm-1~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が、例えば0.1以上であり、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.6以上であり、例えば5.0以下であり、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0以下である。
ここで、G/D比が0.1~5.0の範囲内であると、炭素表面の欠陥や結晶界面が少なく導電性が高くなりやすいため好適である。
【0044】
(その他の導電性顔料(B2))
カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)としては、特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の導電性カーボンが挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックからなる群より選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはアセチレンブラックの1種以上である。
【0045】
その他の導電性顔料(B2)の平均一次粒子径としては、10~80nmであることが好ましく、20~70nmであることがより好ましい。ここで、平均一次粒子径は、導電性カーボン(B2)を電子顕微鏡で観察し、100個の粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均径をいう。なお、顔料が凝集状態になっていた場合は、凝集粒子を構成している一次粒子で計算をする。
【0046】
導電性カーボン(B2)のBET比表面積は、特に限定されない。粘度及び導電性の関係から、例えば1m/g以上、好ましくは10m/g以上であり、より好ましくは20m/g以上であり、例えば500m/g以下、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。
【0047】
導電性カーボン(B2)のジブチルフタレート(DBP)吸油量は、特に限定されない。顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上であり、例えば1,000ml/100g以下、好ましくは800ml/100g以下である。
【0048】
(導電性顔料(B)の含有量)
導電性顔料(B)の固形分含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば10.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下である。
【0049】
溶媒(C)
上記溶媒(C)は、水や各種有機溶媒などを好適に用いることができる。
具体的には、例えば、水;n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産社製、アミド系溶剤)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。
なかでも、アミド系溶剤が好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
また、導電性顔料ペーストの顔料分散性や樹脂成分を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
本発明において、導電性顔料ペーストの水の分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定できる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業社製、商品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子社製、商品名ADP-611)の設定温度は130℃として測定できる。
【0051】
N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系化合物(溶剤)を用いる場合、不純物としてアミン成分を含むことがあり、本発明の導電性顔料ペーストにおいて、この不純物であるアミン成分によってロット毎に粘度または増粘傾向が異なることがあった。
また、本発明の導電性顔料ペーストを後述する方法で電極層にする場合、溶媒等は揮発するため残らないが、廃棄物削減、環境対応、及び/又は原料コスト削減のために揮発した溶媒を回収及び再利用することが好ましい。すなわち、溶媒(C)として再生品を使用する事が好ましい。この再生溶媒(再生品)には、本発明の導電性顔料ペーストにもともと含有しているアミン化合物(E1)も含まれることになり、同じくロット毎に導電性顔料ペーストの粘度または増粘傾向が異なることになる。また、アミン化合物は強い臭気を有する場合が多い。
従って、再生品である溶媒(C)中のアミン化合物含有量を一定量以下に管理・調整することが好ましく、アミン化合物含有量としては、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることが好適である。
なお、上記「溶媒(C)として再生品を使用」とは、本発明の導電性顔料ペーストに用いられる溶媒(C)中に再生品が10%以上(好ましくは20%以上)含まれるということである。
【0052】
導電性顔料ペーストにおける溶媒(C)の含有量は、導電性顔料ペーストの総量を基準として、例えば40質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、例えば99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
【0053】
また、樹脂の溶解性の観点から、顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係であることが好ましい。溶媒(C)自体の溶解性パラメーターδCとしては、10.0以上が好ましく、10.5以上がより好ましく、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましい。
【0054】
樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
【0055】
溶媒の溶解性パラメーターは、J.Brandrup及びE.H.Immergut編「Polymer Handbook VII」 Solubility Parameter Values,pp519-559(John Wiley& Sons社、第3版1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。
2種以上の溶媒(C)を組合せて混合溶媒として用いる場合、その混合溶媒の溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
なお、本発明において、溶解性パラメーターの単位は「(cal/cm1/2」である。
【0056】
フッ素樹脂(D)
上記フッ素樹脂(D)は、電極層の膜形成を目的とする樹脂である。
【0057】
フッ素樹脂(D)としては、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0058】
フッ素樹脂(D)は、顔料分散時に含有していてもよく、あるいは顔料分散後に添加して含有してもよい。フッ素樹脂(D)の重量平均分子量としては、基材との密着性、膜物性の補強、及び耐溶剤性の観点から、10万以上であることが好ましく、50万がより好ましく、65万以上がさらに好ましく、300万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましい。
【0059】
フッ素樹脂(D)の含有量は、導電性顔料ペーストの固形分を基準として、例えば10.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下である。
【0060】
塩基性低分子量成分(E)
塩基性低分子量成分(E)としては、無機塩基化合物及び有機塩基化合物のいずれであってもよい。例えば、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物;炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;りん酸三ナトリウム、りん酸三カリウム等のリン酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩;ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムターシャリーブトキサイド等のアルコキサイド化合物;アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン化合物;等が挙げられる。
これらの塩基性低分子量成分(E)は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
塩基性低分子量成分(E)の分子量は、例えば1000未満であり、好ましくは500以下、より好ましくは350以下、さらに好ましくは250以下、特に好ましくは120以下である。
【0061】
上記塩基性低分子量成分(E)は、導電性顔料のぬれ性及び/又は貯蔵安定性を上げる観点から、アミン化合物(E1)を含有することが好ましい。
上記塩基性低分子量成分(E)中のアミン化合物(E1)の含有量としては、塩基性低分子量成分(E)100質量%を基準として、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
上記アミン化合物(E1)としては、例えば、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
【0062】
1級アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、sec-プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、i-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミスチリルアミン、1,2-ジメチルヘキシルアミン、3-ペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノエタノール、1-アミノプロパノール、2-アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-イソブトキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノノルボルネン、アミノメチルシクロヘキサン、アミノベンゼン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、α-フェニルエチルアミン、ナフチルアミン、フルフリルアミン等の1級モノアミン;エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス-(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス-(3-アミノプロポキシ)エタン、1,3-ビス-(3-アミノプロポキシ)-2,2’-ジメチルプロパン、アミノエチルエタノールアミン、1,2-ビスアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノシクロヘキサン、1,4-ビスアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3-ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3-ビスアミノプロピルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-アミノピペリジン、4-アミノピペリジン、2-アミノメチルピペリジン、4-アミノメチルピペリジン、2-アミノエチルピペリジン、4-アミノエチルピペリジン、N-アミノエチルピペリジン、N-アミノプロピルピペリジン、N-アミノエチルモルホリン、N-アミノプロピルモルホリン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,4-ビスアミノプロピルピペラジン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、4-クロロ-o-フェニレンジアミン、テトラクロロ-p-キシリレンジアミン、4-メトキシ-6-メチル-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ベンジジン、4,4’-ビス(o-トルイジン)、ジアニシジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-(4,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-チオジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジトリルスルホン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-アミノエチルピペラジン、N-アミノプロピルピペラジン、1,4-ビス(アミノエチルピペラジン)、1,4-ビス(アミノプロピルピペラジン)、2,6-ジアミノピリジン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン等の1級ポリアミン等が挙げられる。
【0063】
2級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-3-ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2,4-ルペチジン、2,6-ルペチジン、3,5-ルペチジン、ジフェニルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジナフチルアミン、ピロール、インドリン、インドール、モルホリン等の2級モノアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1-ジ-(4-ピペリジル)メタン、1,2-ジ-(4-ピペリジル)エタン、1,3-ジ-(4-ピペリジル)プロパン、1,4-ジ-(4-ピペリジル)ブタン等の2級ポリアミン等が挙げられる。
【0064】
3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-iso-プロピルアミン、トリ-1,2-ジメチルプロピルアミン、トリ-3-メトキシプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-iso-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリ-ペンチルアミン、トリ-3-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ-ドデシルアミン、トリ-ラウリルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリ-シクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N-メチルジヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルアミノ-p-クレゾール、N,N-ジメチルアミノメチルフェノール、2-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)-4-メチル-1,3,2-ジオキサボルナン、2-、3-、4-ピコリン等の3級モノアミン;テトラメチルエチレンジアミン、ピラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N’-ビス((2-ヒドロキシ)プロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンアミン、2-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘプタメチルイソビグアニド等の3級ポリアミン等が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
なかでも、酸基や水酸基などの他の官能基を含有しないことが好ましく、1級のアミン化合物が好ましく、1価のアミン化合物(モノアミン)が好ましい。
上記アミン化合物(E1)としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、いずれも好適に使用できるが、芳香族アミン、水酸基を有する1級の脂肪族アミン化合物、水酸基を有する2級の脂肪族アミン化合物が好ましく、1級の芳香族アミン化合物がより好ましい。
また、アミン化合物(E1)中の窒素原子が、アミノ基を構成する窒素原子のみであることが好ましい。
また、アミン化合物(E1)は、窒素原子が3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個であることがさらに好ましい。
【0065】
また、アミン化合物(E1)としては、分子内にトリアジン環を有するアミン化合物でないことが好ましい。
脂肪族アミン化合物と分子内にトリアジン環を有するアミン化合物を併用する場合、トリアジン環を有するアミン化合物1モル当量に対して、脂肪族アミン化合物が1モル当量超となる量で混合して用いることが好ましい。この際、脂肪族アミン化合物が1級の1価の脂肪族アミン化合物の場合には、その分子量が116未満であることが好ましい。
【0066】
乾燥後の電極層にアミン化合物が残らないことが好ましいため、アミン化合物(E1)の重量平均分子量が1000未満であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、350以下であることがさらに好ましく、250以下であることが特に好ましく、120以下であることがさらに特に好ましい。なお、水酸基を有する1級の脂肪族アミン化合物については、重量平均分子量が89以上の水酸基を有する1級の脂肪族アミン化合物であることが好ましい。
また同じ理由で、アミン化合物の沸点としては、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
また、アミン化合物(E1)のアミン価としては、例えば5mgKOH/g以上、好ましくは105mgKOH/g以上、より好ましくは250mgKOH/g以上、さらに好ましくは400mgKOH/g以上であり、例えば1000mgKOH/g以下の範囲内であることが好適である。
【0067】
上記塩基性低分子量成分(E)の含有量としては、導電性顔料ペーストの固形分100質量%を基準として、例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、例えば300質量%以下、好ましくは200質量%以下、より好ましくは150質量%以下が好適である。
また、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、下限としては、例えば1質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限としては、例えば1000質量%以下、好ましくは500質量%以下、より好ましくは350質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。塩基性低分子量成分(E)〔特にアミン化合物(E1)〕は、臭気が強いものが多いため、配合時や乾燥過程で作業環境が悪化する場合がある。また、一般的に高価なためコスト増になる場合がある。従って、必要最低限の含有量にする必要がある。
また、溶媒(C)と塩基性低分子量成分(E)の含有比率としては、溶媒(C)と塩基性低分子量成分(E)の質量比で、通常100/0.1~100/10の範囲内であり、好ましくは100/0.5~100/8の範囲内であり、より好ましくは100/1~100/6の範囲内であり、より好ましくは100/1.5~100/4の範囲内であることが好適である。
【0068】
その他の成分
本発明の導電性顔料ペーストとしては、上記の成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)の他に、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
【0069】
その他の成分としては、例えば、顔料分散樹脂(A)及びフッ素樹脂(D)以外の樹脂、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、導電性顔料(B)以外の顔料等を挙げることができる。
【0070】
導電性顔料(B)以外の顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華等の白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料;シアニングリーン、緑青等の緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系等の有機赤色顔料、ベンガラ等の赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛等の黄色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの導電性顔料(B)以外の顔料は、導電性を大きく損なわない範囲内で色調整や膜の物性補強等の目的で使用することができ、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)と共に同時に分散してもよく、また、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)を分散してペーストを作成した後に顔料又は顔料ペーストとして混ぜても良い。
【0071】
上記導電性顔料(B)以外の顔料の含有量としては、導電性顔料ペースト中の全顔料を基準として、10質量以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
また、本発明の導電性顔料ペーストとしては、顔料誘導体を含まないことが好ましい。特に分子内にトリアジン環を含有するトリアジン系の顔料誘導体を含有していないことが好ましい。
【0072】
上記導電性顔料ペーストの粘度としては、顔料分散性や貯蔵安定性などの観点から、せん断速度2s-1での粘度が、5000mPa・s未満であり、好ましくは2500mPa・s未満であり、1000mPa・s未満であり、10mPa・s以上であり、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上である。例えば、10mPa・s以上かつ5000mPa・s未満であることが好ましく、50mPa・s以上かつ2500mPa・s未満であることがより好ましく、100mPa・s以上かつ1000mPa・s未満であることが特に好ましい。
【0073】
粘度の測定は、例えば、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用いて測定する事ができる。
【0074】
本発明の導電性顔料ペーストは、以上に述べた各成分を、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:クレアミックス、フィルミックス等)等の従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
【0075】
[合材ペースト]
本発明は、上記導電性顔料ペーストに、さらに電極活物質(F)を配合してなる合材ペーストを提供する。当該合材ペーストは、リチウムイオン電池電極用の正極又は負極用途に使用する事が好適であり、好ましくは正極用途として使用することが好適である。
また、本発明の合材ペーストの第二の態様としては、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、塩基性低分子量成分(E)及び電極活物質(F)を含有し、顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、エーテル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有するものであれば、製造方法(各成の混合する順序)は限定されない。
【0076】
電極活物質(F)
電極活物質(F)としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のリチウム複合酸化物;リン酸鉄リチウム(LiFePO);ナトリウム複合酸化物;カリウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質(F)は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。上記リン酸鉄リチウムを含有する電極活物質は、安価でありサイクル特性及びエネルギー密度が比較的良好であるため、好適に用いることができる。
電極活物質の粒子径としては、例えば0.5μm以上であり、好ましくは10.5μm以上であり、例えば30μm以下であり、好ましくは20μm以下である。
【0077】
本発明の合材ペースト固形分中の電極活物質(F)の固形分含有量は、通常70質量%以上、かつ100質量%未満、好ましくは80質量%以上、かつ100質量%未満であることが、電池容量、電池抵抗等の面から好適である。
【0078】
合材ペースト中に上記電極活物質(F)を含有すると、貯蔵により増粘する場合がある。その理由としては、電極活物質(F)は、粒子表面に原料由来のアルカリ金属の水酸化物(例えば、LiOH、KOH、NaOHなど)を有することになるため、酸性表面を有する導電性顔料(B)により凝集(増粘)すると考えられる。そのため、塩基性低分子量成分(E)〔特にアミン化合物(E1)〕を一定量以上含有することにより合材ペーストの貯蔵増粘を抑制することができる。
【0079】
合材ペーストの製法
本発明の合材ペーストは、前述した導電性顔料ペーストをまず調製し、当該ペーストに少なくとも1種の電極活物質(F)を配合することにより得ることができる。
また、本発明の合材ペーストは、前述の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び電極活物質(F)を混和して調製してもよい。
【0080】
本発明の合材ペースト固形分中の顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下であることが、電池性能、ペースト粘度等の面から好適である。
【0081】
本発明の合材ペーストにおいては、合材ペーストにおける貯蔵安定性(増粘抑制)の観点から、塩基性低分子量成分(E)を含有している。
塩基性低分子量成分(E)を導電性顔料(B)に接触させ(濡れさせ)、次いで電極活物質(F)を混合することで導電性顔料(B)と電極活物質(F)との凝集が緩和される観点から、まず導電性顔料(B)と塩基性低分子量成分(E)を混合する順序を含むことが好ましい。
【0082】
本発明の合材ペーストにおいて、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、塩基性低分子量成分(E)の好ましい含有量下限値としては、合材ペーストの貯蔵安定性(増粘抑制)の観点から、通常1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限としては、電極膜中の成分(E)残存量の観点から、通常500質量%以下、好ましくは400質量%以下、より好ましくは350質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
【0083】
本発明の合材ペースト固形分中の導電性顔料(B)の固形分含有量は、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であることが電池性能の点から好適である。また、本発明の合材ペースト中の溶媒(C)の含有量は、例えば1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、例えば70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であることが電極乾燥効率、ペースト粘度の点から好適である。
【0084】
[リチウムイオン電池電極]
リチウムイオン電池電極の製法
前述したように、リチウムイオン二次電池の電極合材層(電極層または合材層とも呼ぶ)は、リチウムイオン電池電極用合材ペーストを正極または負極の芯材表面に塗布し、これを乾燥することで、製造することができ、得られたリチウムイオン二次電池の電極合材層は、特に正極に用いることが好ましい。
また、本発明の導電性顔料ペーストの用途としては、合材層のペーストとして用いる以外に、電極芯材と合成層との間のプライマー層としても用いることができる。
リチウムイオン電池電極用合材ペーストの塗布方法は、ダイコーター等を用いたそれ自体公知の方法により行うことができる。リチウムイオン電池電極用合材ペーストの塗布量は特に限定されないが、例えば、乾燥後の合材層の厚みが0.04mm以上、好ましくは0.06mm以上であり、例えば0.30mm以下、0.24mm以下の範囲となるように設定することができる。乾燥工程の温度としては、例えば、80~200℃、好ましくは100~180℃の範囲内で適宜設定することができる。乾燥工程の時間としては、例えば、5~120秒、好ましくは5~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0085】
上記乾燥工程で溶媒(C)及び塩基性低分子量成分(E)の全部または一部が揮発するが、前述した通り、廃棄物削減、環境対応、及び/又はコスト削減のために、揮発した成分(C)及び成分(E)を回収・再利用することが好ましい。
【実施例
【0086】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら特定の実施形態に限定されるものではない。
【0087】
[顔料分散樹脂の製造]
製造例1 スルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97質量部及びアリルスルホン酸ナトリウム3.0質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60℃の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重量平均分子量17000、極性官能基濃度が18.1mmol/g、ケン化度90モル%のスルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0088】
[導電性顔料ペースト及び合材ペーストの製造]
実施例1A
製造例1で得られたスルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂40部(固形分40部)、カーボンナノチューブ(CNT1)200部、KFポリマーW#7300(商品名、ポリフッ化ビニリデン、重量平均分子量100万、クレハ社製)180部、N-メチル-2-ピロリドン(NMP1)9380部、及びベンジルアミン200部を混合してボールミルにて5時間分散し、導電性顔料ペースト(A-1)を製造した。
【0089】
実施例1B
上記導電性顔料ペースト(A-1)100部に対して、活物質粒子(組成式LiNi0.5Mn1.5で表されるスピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子、平均粒径6μm、BET比表面積0.7m/g)900部をディスパーで混合して合材ペースト(B-1)を製造した。
【0090】
実施例2A~21A、比較例1A~2A
下記表1の配合とする以外は、実施例1Aと同様にして導電性顔料ペースト(A-2)~(A-23)を得た。
【0091】
実施例2B~21B、比較例1B~2B
下記表1の配合とする以外は、実施例1Bと同様にして合材ペースト(B-2)~(B-23)を得た。
【0092】
【表1】
【0093】
尚、上記表1中の各成分の詳細は下記の通りである。
【0094】
<顔料分散樹脂(A)>
【0095】
【表2】
【0096】
<カーボンンナノチューブ(B)>
【0097】
【表3】
【0098】
CNT1~CNT6は全て多層カーボンナノチューブである。
なお、上記表中のメディアン径(D50)、G/D比、及び酸性基量は下記方法で測定した。
【0099】
<メディアン径(D50)>
メディアン径(D50)の測定は、レーザ回折/散乱式 粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、堀場製作所社製)を用い、下記の手順で行った。
【0100】
[水分散媒の調製]
蒸留水100mLにF10MC(商品名、日本製紙社製、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMCNaとも記載))固形分0.10gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa0.1質量%の水分散媒を調製した。
【0101】
[CMCNa水溶液の調製]
蒸留水100mLにF10MC(商品名、日本製紙社製、カルボキシメチルセルロースナトリウム)固形分2.0gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa2.0質量%の水溶液を調製した。
【0102】
[測定前処理]
バイアル瓶にカーボンナノチューブを6.0mg秤量し、前記水分散媒6.0gを添加した。測定前処理に超音波ホモジナイザー「SmurtNR-50」(商品名、マイクロテック・ニチオン社製)を用いた。チップの劣化がないことを確認し、チップが処理サンプル液面から10mm以上つかるように調整した。TIME SET(照射時間)を40秒、POW SETを50%、START POWを50%(出力50%)とし、出力電力が一定であるオ-トパワ-運転による超音波照射により均一化させカーボンナノチューブ水分散液を作製した。
【0103】
[測定]
前記カーボンナノチューブ水分散液を用い、カーボンナノチューブの1μm以下の分散粒子の割合およびメディアン径(D50)の測定を、以下の方法に従い実施した。
LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュールの光学モデルをカーボンナノチューブ1.520、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュ-ル洗浄終了後にCMCNa水溶液を約1.0mL充填する。ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、調製したカーボンナノチューブ水分散液を粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDSが40%~55%になるように加え、粒度分布計付属装置により78W、2分間超音波照射を行い(測定前処理)、30秒循環し気泡を除いた後に粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)を求めた。
測定は、カーボンナノチューブ1試料につき、採取場所を変え3測定用サンプルを採取して粒度分布測定を行い、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)をその平均値で求めた。
【0104】
<カーボンナノチューブのG/D比>
カーボンナノチューブのラマンスペクトルは、ラマン顕微鏡「XploRA)(商品名、堀場製作所社製)にカーボンナノチューブを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。得られたピークの内、スペクトルで1560cm-1~1600cm-1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310cm-1~1350cm-1の範囲内で最大ピーク強度をDとした際のG/Dの比をカーボンナノチューブのG/D比とした。
【0105】
<カーボンナノチューブ(CNT)の酸性基量>
CNTを2g精秤し、0.01Mのベンジルアミン/N-メチル-2-ピロリドン溶液50mlに浸漬させ、超音波照射機で1時間分散処理をした。その後遠心分離を行い、上澄みをフィルターでろ過した。得られたろ液中に残存するベンジルアミンを0.1Mの塩酸で電位差滴定することにより定量分析し、得られたCNT1g当たりの酸性基量(mmol/g)を特定した。
【0106】
<アミン化合物(E1)>
【0107】
【表4】
【0108】
<溶媒(C)>
用いた溶媒の水分含有量とアミン含有量をそれぞれ測定した。
水分含有量とアミン含有量はカールフィッシャー水分率計「MKC-610」(商品名、京都電子工業株式会社製)とイオンクロマトグラフィーを用いて測定した。
NMP1:N-メチル-2-ピロリドン、SP値11.1、水分含有量0.1質量%、アミン含有量0質量%
NMP2:N-メチル-2-ピロリドン、SP値11.1、水分含有量1.2質量%、アミン含有量0質量%
プロピレングリコールモノメチルエーテル:SP値10.4、水分含有量0.1質量%、アミン含有量0質量%。
【0109】
[評価試験]
上記実施例及び比較例で得られた導電性顔料ペースト及び合材ペーストの評価試験を行った。評価としてはDが不合格である。1つでも不合格の評価結果がある場合、導電性顔料ペーストの評価としては不合格である。評価結果は表1に示す。
【0110】
<分散性>
得られた導電性顔料ペーストをJIS K-5600-2-5の分散度試験に準じ、ツブゲージを用いて下記基準により分散性を評価した。
A:顔料が10μm未満で分散されている。分散性は非常に良好である。
B:顔料が10μm以上、かつ20μm未満で分散されている。分散性はやや良好である。
C:顔料が20μm以上で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性はやや劣る。
D:目視で凝集物が確認される。分散性は非常に劣る。
【0111】
<初期粘度>
得られた合材ペーストをコーン&プレート型粘度計「Mars2」(商品名、HAAKE社製)を用い、シアーレート2.0sec-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。
A:粘度が、10Pa・s未満である。
B:粘度が、10Pa・s以上、かつ20Pa・s未満である。
C:粘度が、20Pa・s以上、かつ50Pa・s未満である。
D:粘度が、50Pa・s以上である。
【0112】
<貯蔵安定性>
得られた合材ペーストを50℃の温度で2週間貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行なった。粘度は、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度2.0s-1で測定し、下記式により粘度上昇率を求め、下記の基準により貯蔵安定性を評価した。
粘度上昇率(%)=貯蔵後粘度(mPa・s)/初期粘度(mPa・s)×100-100
S:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%未満である。
A:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%以上、かつ20%未満である。
B:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、20%以上、かつ50%未満である。
C:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、50%以上、かつ200%未満である。
D:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、200%以上(又はゲル化して測定不可)である。
【0113】
<体積抵抗率(導電性)>
実施例1A、7A、8A、及び9Aで得られた導電性顔料ペーストに関して、さらに体積抵抗率の測定を行った。体積抵抗率の測定では、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの5質量%溶液(株式会社クレハ製、商品名「KFポリマーW#7300」、溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)を使用した。
得られた導電性顔料ペーストの導電性顔料(B)の質量と、導電性顔料ペーストの顔料分散樹脂(A)固形分及びKFポリマーW#7300固形分を合計した質量との比が5:100となるように、導電性顔料ペーストとKFポリマーW#7300溶液を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して測定用試料を得た。
【0114】
ガラス板(2mm×100mm×150mm)上に測定用試料をドクターブレード法にて塗工して、80℃60分で加熱乾燥し、ガラス板上に塗工膜を形成した。得られた塗工膜について膜厚を測定した後、ASPプローブ「MCP-TP03P」(商品名、三菱化学アナリテック社製)を用いて、抵抗率計「Loresta-GP MCP-T610」(商品名、三菱化学アナリテック社製)で抵抗値を測定し、得られた抵抗値に抵抗率補正係数(RCF)4.532及び塗工膜の膜厚を乗じて体積抵抗率を算出した。体積抵抗率は下記基準により評価した。
A:体積抵抗率が、7Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、7Ω・cm以上、かつ15Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
D:体積抵抗率が、15Ω・cm以上であり、導電性は劣る。
評価結果として、実施例1A及び7Aで得られた導電性顔料ペーストは「A」であり、実施例8A及び9Aで得られた導電性顔料ペーストは「B」であった。
【0115】
[電池電極層の製造]
応用例1~21
実施例1B~21Bで得られた合材ペーストを、平均厚み15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に、片面あたりの目付量が10mg/cm(固形分基準)となるようにローラコート法で帯状に塗布して乾燥(乾燥温度180℃、10分間)することにより、正極活物質層を形成した。この正極集電体に担持された正極活物質層(正極電極層)をロールプレス機により圧延して電極層を形成し、性状を調整した。
得られた電極層は残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性などが良好な電極層であった。
【要約】
高顔料濃度においても顔料分散性と貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペーストを提供することを課題とし、さらに諸性能に優れるリチウムイオン電池用電極を提供することを課題とする。解決手段として、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3~23mmol/gであり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m/g)とした場合、X=α/β×300のXが5以上である導電性顔料ペーストを提供する。