(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】排気ガス再循環装置およびエンジン
(51)【国際特許分類】
F02M 26/47 20160101AFI20240313BHJP
F02M 26/50 20160101ALI20240313BHJP
F02M 26/22 20160101ALI20240313BHJP
F01P 1/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F02M26/47 B
F02M26/50 321
F02M26/22
F01P1/06 K
(21)【出願番号】P 2021083269
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 和也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】河本 拓哉
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040224(JP,A)
【文献】特開2005-194943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/47
F02M 26/50
F02M 26/22
F01P 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、
前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、
前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、
を備え、
前記スペーサは、
前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、
前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、
を有
し、
前記空間部および前記排気圧取得経路の少なくともいずれかは、前記エンジンの冷却ファンから送られる風に晒される位置に設けられたことを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項2】
前記排気圧取得部は、前記空間部から前記孔に向かって下り勾配になっていることを特徴とする請求項
1に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記排気還流手段を流れる前記排気の流れに対して交差する方向に形成され前記排気の流れ方向に沿ってみたとき前記排気圧取得部の入口を覆う壁部を有することを特徴とする請求項1
または2に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項4】
前記排気圧取得経路は、前記差圧検出手段から前記スペーサに向かって下り勾配になっていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項5】
前記排気圧取得経路は、前記排気圧取得部に接続されるとともに前記スペーサに対して着脱可能に固定される金属パイプと、前記金属パイプと前記差圧検出手段とを接続する可撓性を有する接続パイプと、を有することを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項6】
前記スペーサの前記孔の内径は、前記排気還流手段の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項7】
エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、
前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、
前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、
を備え、
前記スペーサは、
前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、
前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、
を有
し、
前記スペーサの前記孔の内径は、前記排気還流手段の内径よりも大きいことを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項8】
前記排気圧取得部は、前記空間部から前記孔に向かって下り勾配になっていることを特徴とする請求項
7に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項9】
前記スペーサは、前記排気還流手段を流れる前記排気の流れに対して交差する方向に形成され前記排気の流れ方向に沿ってみたとき前記排気圧取得部の入口を覆う壁部を有することを特徴とする請求項
7または8に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項10】
前記排気圧取得経路は、前記差圧検出手段から前記スペーサに向かって下り勾配になっていることを特徴とする請求項
7~
9のいずれか1項に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項11】
前記排気圧取得経路は、前記排気圧取得部に接続されるとともに前記スペーサに対して着脱可能に固定される金属パイプと、前記金属パイプと前記差圧検出手段とを接続する可撓性を有する接続パイプと、を有することを特徴とする請求項
7~
10のいずれか1項に記載の排気ガス再循環装置。
【請求項12】
排気ガス再循環装置を備えるエンジンであって、
前記排気ガス再循環装置は、
前記エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、
前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、
前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、
を有し、
前記スペーサは、
前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、
前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、
を有
し、
前記空間部および前記排気圧取得経路の少なくともいずれかは、前記エンジンの冷却ファンから送られる風に晒される位置に設けられたことを特徴とするエンジン。
【請求項13】
排気ガス再循環装置を備えるエンジンであって、
前記排気ガス再循環装置は、
前記エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、
前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、
前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、
を有し、
前記スペーサは、
前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、
前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、
を有
し、
前記スペーサの前記孔の内径は、前記排気還流手段の内径よりも大きいことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気還流手段を流れるエンジンの排気とエンジンの吸気との差圧を検出する差圧検出手段を有する排気ガス再循環装置およびエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の排気浄化装置が開示されている。特許文献1に記載された差圧センサ本体部は、排気ガスを通すための差圧検出用通路と接続通路とを介して、EGR通路に接続されている。
【0003】
しかし、差圧検出用通路と接続通路とが狭い場合には、高温の排気ガスが冷えないまま差圧検出用通路と接続通路とを通って差圧センサ本体部に到達する。そうすると、排気ガスに含まれる水蒸気が、差圧センサ本体部あるいは差圧センサ本体部の近傍において結露するおそれがある。排気ガスに含まれる水蒸気が結露して凝縮水(すなわち結露水)が差圧センサ本体部において生じたり差圧センサ本体部に入り込んだりすると、凝縮水が、差圧センサ本体部の回路基板に付着するおそれがある。そうすると、差圧センサ本体部の回路基板が、凝縮水により破損するおそれがある。
【0004】
また、差圧検出用通路と接続通路とが狭い場合において、排気ガスに含まれる煤が差圧検出用通路と接続通路とに入り込むと、差圧検出用通路と接続通路とが閉塞するおそれがある。差圧検出用通路と接続通路とが閉塞すると、EGR通路を流れる排気と吸気との差圧を正確に検出できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、差圧検出手段が破損することを抑えることができ、差圧検出手段が正確な差圧を検出できる排気ガス再循環装置およびエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、を備え、前記スペーサは、前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、を有することを特徴とする本発明に係る排気ガス再循環装置により解決される。
【0008】
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、排気還流手段に設けられたスペーサは、孔と、排気圧取得部と、を有する。スペーサの孔は、排気還流手段を流れる排気を通す。スペーサの排気圧取得部は、孔と、スペーサから取り出された排気の圧力を差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、に接続され、スペーサの孔を通る排気の圧力を取り出して排気圧取得経路に伝える。また、スペーサの排気圧取得部は、排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する。そのため、排気圧取得部に存在する排気は、排気圧取得部の空間部に一時的に滞留し冷やされる。そのため、排気に含まれる水蒸気が差圧検出手段あるいは差圧検出手段の近傍において結露することを抑え、スペーサの排気圧取得部あるいはスペーサの排気圧取得部の近傍において排気に含まれる水蒸気を結露させることができる。これにより、凝縮水(結露水)が差圧検出手段の回路基板に付着することを抑え、差圧検出手段が破損することを抑えることができる。
【0009】
また、前述した通り、スペーサの排気圧取得部は、排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する。そのため、排気に含まれる煤が排気圧取得部に入り込んだ場合であっても、排気圧取得部の流路が煤により閉塞することを抑えることができる。これにより、差圧検出手段は、排気還流手段を流れる排気と吸気分配手段に流れる吸気との差圧を正確に検出することができる。
【0010】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記空間部および前記排気圧取得経路の少なくともいずれかは、前記エンジンの冷却ファンから送られる風に晒される位置に設けられたことを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、排気圧取得部の空間部および排気圧取得経路の少なくともいずれかがエンジンの冷却ファンから送られる風に晒される位置に設けられているため、排気は、排気圧取得部の空間部および排気圧取得経路の少なくともいずれかにおいてより確実に冷やされる。そのため、排気に含まれる水蒸気が差圧検出手段あるいは差圧検出手段の近傍において結露することをより確実に抑え、スペーサの排気圧取得部あるいはスペーサの排気圧取得部の近傍において排気に含まれる水蒸気をより確実に結露させることができる。これにより、凝縮水が差圧検出手段の回路基板に付着することをより一層抑え、差圧検出手段が破損することをより一層抑えることができる。
【0011】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記排気圧取得部は、前記空間部から前記孔に向かって下り勾配になっていることを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、排気圧取得部が空間部からスペーサの孔に向かって下り勾配になっているため、スペーサの排気圧取得部において生じた凝縮水は、空間部からスペーサの孔に向かって流れる。そのため、凝縮水が差圧検出手段の回路基板に付着することをより一層抑え、差圧検出手段が破損することをより一層抑えることができる。
【0012】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記スペーサは、前記排気還流手段を流れる前記排気の流れに対して交差する方向に形成され前記排気の流れ方向に沿ってみたとき前記排気圧取得部の入口を覆う壁部を有することを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、スペーサの壁部が、排気還流手段を流れる排気の流れに対して交差する方向に形成されており、排気の流れ方向に沿ってみたとき排気圧取得部の入口を覆う。そのため、排気圧取得部の流路が煤により閉塞することをより一層抑えることができる。これにより、差圧検出手段は、排気還流手段を流れる排気と吸気分配手段に流れる吸気との差圧をより正確に検出することができる。
【0013】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記排気圧取得経路は、前記差圧検出手段から前記スペーサに向かって下り勾配になっていることを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、排気圧取得経路が差圧検出手段からスペーサに向かって下り勾配になっているため、排気圧取得経路において生じた凝縮水は、排気圧取得経路からスペーサに向かって流れる。そのため、凝縮水が差圧検出手段の回路基板に付着することをより一層抑え、差圧検出手段が破損することをより一層抑えることができる。
【0014】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記排気圧取得経路は、前記排気圧取得部に接続されるとともに前記スペーサに対して着脱可能に固定される金属パイプと、前記金属パイプと前記差圧検出手段とを接続する可撓性を有する接続パイプと、を有することを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、排気圧取得経路の金属パイプに存在する排気は、金属パイプを介して金属パイプの外部に熱を放出しやすく、金属パイプにおいてより確実に冷やされる。そのため、排気に含まれる水蒸気が差圧検出手段あるいは差圧検出手段の近傍において結露することをより確実に抑え、金属パイプにおいて排気に含まれる水蒸気をより確実に結露させることができる。これにより、凝縮水が差圧検出手段の回路基板に付着することをより一層抑え、差圧検出手段が破損することをより一層抑えることができる。また、金属パイプと差圧検出手段とを接続する接続パイプは、可撓性を有するため、可撓性を有しない硬い材質のパイプを用いるのに比べて、金属パイプの位置と差圧検出手段との位置に柔軟に対応し、金属パイプと差圧検出手段とを容易に接続できる。
【0015】
本発明に係る排気ガス再循環装置において、好ましくは、前記スペーサの前記孔の内径は、前記排気還流手段の内径よりも大きいことを特徴とする。
本発明に係る排気ガス再循環装置によれば、スペーサが排気還流手段の途中に配置されても、排気還流手段を流れる排気ガスの流れを阻害しないので、差圧を正確に検出できる。
【0016】
また、前記課題は、排気ガス再循環装置を備えるエンジンであって、前記排気ガス再循環装置は、前記エンジンの排気を前記エンジンの吸気分配手段に還流する排気還流手段と、前記排気還流手段を流れる前記排気と前記吸気分配手段に流れる吸気との差圧を検出する差圧検出手段と、前記排気還流手段に設けられて前記排気還流手段を流れる前記排気を通すスペーサと、前記スペーサと前記差圧検出手段とに接続されて前記スペーサから取り出された前記排気の圧力を前記差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、を有し、前記スペーサは、前記排気還流手段を流れる前記排気を通す孔と、前記孔と前記排気圧取得経路とに接続され前記孔を通る前記排気の圧力を取り出して前記排気圧取得経路に伝え前記排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する排気圧取得部と、を有することを特徴とする本発明に係るエンジンにより解決される。
【0017】
本発明に係る排気ガス再循環装置を備えるエンジンによれば、排気ガス再循環装置の排気還流手段に設けられたスペーサは、孔と、排気圧取得部と、を有する。スペーサの孔は、排気還流手段を流れる排気を通す。スペーサの排気圧取得部は、孔と、スペーサから取り出された排気の圧力を差圧検出手段に伝える排気圧取得経路と、に接続され、スペーサの孔を通る排気の圧力を取り出して排気圧取得経路に伝える。また、スペーサの排気圧取得部は、排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する。そのため、排気圧取得部に存在する排気は、排気圧取得部の空間部に一時的に滞留し冷やされる。そのため、排気に含まれる水蒸気が差圧検出手段あるいは差圧検出手段の近傍において結露することを抑え、スペーサの排気圧取得部あるいはスペーサの排気圧取得部の近傍において排気に含まれる水蒸気を結露させることができる。これにより、凝縮水(結露水)が差圧検出手段の回路基板に付着することを抑え、差圧検出手段が破損することを抑えることができる。
【0018】
また、前述した通り、スペーサの排気圧取得部は、排気圧取得経路の流路断面積よりも広い流路断面積の空間部を有する。そのため、排気に含まれる煤が排気圧取得部に入り込んだ場合であっても、排気圧取得部の流路が煤により閉塞することを抑えることができる。これにより、差圧検出手段は、排気還流手段を流れる排気と吸気分配手段に流れる吸気との差圧を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、差圧検出手段が破損することを抑えることができ、差圧検出手段が正確な差圧を検出できる排気ガス再循環装置およびエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る排気ガス再循環装置を備えるエンジンを示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る排気ガス再循環装置を有するエンジンの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2の排気ガス再循環装置の付近を拡大して示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る排気ガス再循環装置の排気圧取得経路等を示す側面図である。
【
図5】本実施形態のスペーサの構造例を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すスペーサのB-B線における垂直方向の断面図である。
【
図7】本実施形態の排気圧取得経路を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス再循環装置を備えるエンジンを示す模式図である。
まず、本実施形態に係る排気ガス再循環装置を備えるエンジン1の概要を説明する。
図1に示すエンジン1は、内燃機関であって、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジン等の立型の直列の多気筒エンジンである。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような車両等に搭載される。
【0023】
図1に示すエンジン1は、シリンダヘッド2と、吸気マニホールド(インテークマニホールド)3と、排気マニホールド(エキゾーストマニホールド)4と、ターボチャージャ5と、インテークスロットルバルブ(吸気調整部)6と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット、制御部)100を含む吸気量測定装置200と、排気ガス再循環装置600と、冷却ファンFと、を備える。排気ガス再循環装置600は、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)バルブ7と、EGR冷却器8と、を有する。なお、「マニホールド」は、「マニホルド」とも呼ばれる。また、本実施形態のECU100は、本発明の「制御部」の一例である。
【0024】
エンジン1のシリンダヘッド2は、例えば、第1気筒11と、第2気筒12と、第3気筒13と、第4気筒14と、を有する立型の直列の多気筒エンジンのシリンダヘッドである。本願明細書では、複数の気筒が並んだ方向すなわちクランク軸が延びた方向に沿ってみたとき、インテークスロットルバルブ6を通過した吸気ARと、EGRバルブ7を通過した排気還流ガスECGと、が互いに混合される部位(混合部)24から遠い位置に設けられた気筒から近い位置に設けられた気筒に向かって順に、第1気筒、第2気筒、第3気筒、第4気筒と称することにする。EGRバルブ7は、排気還流ガスECGの供給量を調整する調整手段の例である。
【0025】
図1に示すように、吸気マニホールド3は、エンジン1の各気筒に吸気を分配する吸気分配手段の一例である。吸気マニホールド3の第1枝部としての第1枝管31と第2枝部としての第2枝管32と第3枝部としての第3枝管33と第4枝部としての第4枝管34とは、本管35から分岐し、第1気筒11と第2気筒12と第3気筒13と第4気筒14とに対して、それぞれ接続されている。第1気筒11と第2気筒12と第3気筒13と第4気筒14との各燃焼室には、燃料噴射弁15が設けられている。燃料噴射弁15は、コモンレール16に接続されている。図示しない燃料タンクの燃料は、燃料ポンプの動作により、コモンレール16に送られる。コモンレール16は、ECU100の制御により、燃料ポンプから送られてくる燃料を蓄圧する。コモンレール16において蓄圧された燃料は、各燃料噴射弁15から各燃焼室内に噴射される。
【0026】
(ターボチャージャ5)
図1に示すように、ターボチャージャ5は、タービン5Tとブロア5Bとを有し、吸気マニホールド3へ送る吸気を過給する。すなわち、ブロア5Bの部分は、吸気配管20と吸気通路21とに接続されている。吸気通路21は、インテークスロットルバルブ6を介して、吸気マニホールド3のインレットフランジ22に接続されている。タービン5Tの部分は、排気通路4Bに接続されている。排気マニホールド4の排気通路4Bを通して導かれた排気がターボチャージャ5のタービン5Tに供給されると、タービン5Tとブロア5Bとは、高速回転する。ブロア5Bが高速回転することで、ターボチャージャ5のブロア5Bに供給され圧縮された吸気ARは、吸気通路21を通じて吸気マニホールド3へ過給される。
【0027】
タービン5Tから排出された排気ガスEGは、DPF(Diesel particulate filter:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)19等を介してエンジン1の外部へ排出される。
【0028】
図1に示すように、EGRガス経路23は、排気還流ガスECGを吸気側の部位24へ還流させるための排気還流経路である。EGRガス経路23の一端部としての始端部23Mは、排気マニホールド4に接続されている。あるいは、EGRガス経路23の始端部23Mは、排気マニホールド4とタービン5Tとの間における排気通路4Bに接続されていてもよい。EGRガス経路23の末端部23Nは、インテークスロットルバルブ6と吸気マニホールド3の始端部351との間におけるインレットフランジ22に接続されている。EGRガス経路23には、EGRバルブ7と、EGR冷却器(EGRクーラー)8と、が設けられている。EGR冷却器8は、EGRガス経路23を流れる排気還流ガスECGを冷却する冷却手段の一例である。EGRガス経路23は、排気還流ガスECGを還流させる排気還流経路の一例である。
【0029】
ECU100は、インテークスロットルバルブ6と、EGRバルブ7と、コモンレール16等の動作を制御する。インテークスロットルバルブ6は、アクセルペダルの踏み込み量に基づいて、ECU100の指令により、吸気マニホールド3のインレットフランジ22に供給する吸気ARの供給量を制御する。EGRバルブ7は、ECU100の指令により、排気マニホールド4からEGRガス経路23を経て、吸気マニホールド3のインレットフランジ22に供給する排気還流ガスECGの供給量を調整する。
【0030】
(吸気量測定装置200)
次に、吸気量測定装置200について、
図1を参照して説明する。
吸気量測定装置200は、圧力センサ201と、温度センサ202と、EGR差圧センサ203と、ECU100と、を有する。圧力センサ201は、吸気の圧力を検出して演算部であるECU100に伝達する。本実施形態の圧力センサ201は、本発明の「圧力検出手段」の一例である。本実施形態の温度センサ202は、本発明の「温度検出手段」の一例である。本実施形態のEGR差圧センサ203は、本発明の「差圧検出手段」の一例である。
【0031】
圧力センサ201は、吸気マニホールド3内に設置された第1測定部213における混合吸気CYLの圧力Piを検出して、ECU100に伝達する。具体的には、配管などの吸気圧取得経路230が、吸気マニホールド3と、圧力センサ201およびEGR差圧センサ203と、に接続されている。圧力センサ201は、吸気圧取得経路230を通して取り出され伝わった第1測定部213における混合吸気CYLの圧力Piを検出する。混合吸気CYLは、インテークスロットルバルブ6を通過した吸気ARと、EGRバルブ7を通過した排気還流ガスECGと、が互いに混合されたガスである。
【0032】
温度センサ202は、吸気マニホールド3内に設置され、吸気マニホールド3内の混合吸気CYLの温度Tiを検出して、ECU100に伝達する。
【0033】
EGR差圧センサ203は、第1測定部213における混合吸気CYLの圧力Piと、EGRガス経路23内に設置された第2測定部223における排気還流ガスECGの圧力Peと、の差圧PPを検出して、ECU100に伝達する。具体的には、
図1に表したように、吸気圧取得経路230は、吸気マニホールド3から圧力センサ201およびEGR差圧センサ203に向って、圧力センサ201に接続された部分と、EGR差圧センサ203に接続された部分と、に分岐している。
【0034】
上述したように、EGR差圧センサ203は、吸気圧取得経路230を通して取り出され伝わった第1測定部213における混合吸気CYLの圧力Piに基づいて差圧PPを検出する。つまり、EGR差圧センサ203は、圧力センサ201により圧力Piが検出される混合吸気CYLと同じ位置にある混合吸気CYLの圧力Piに基づいて、差圧PPを検出する。言い換えれば、圧力センサ201およびEGR差圧センサ203は、吸気マニホールド3内において互いに時間的に同期した第1測定部213における混合吸気CYLの圧力Piを検出する。
【0035】
また、第2測定部223は、EGR冷却器8とEGRバルブ7との間におけるEGRガス経路23内に設置される。具体的には、配管などの排気圧取得経路500が、EGRガス経路23と、EGR差圧センサ203と、に接続されている。EGR差圧センサ203は、排気圧取得経路500を通して取り出され伝わった第2測定部223における排気還流ガスECGの圧力Peに基づいて差圧PPを検出する。排気圧取得経路500の好ましい構造例は、後で説明する。
【0036】
(排気ガス再循環装置600)
次に、排気ガス再循環装置600について、
図1から
図4を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る排気ガス再循環装置を有するエンジンの外観を示す斜視図である。
図3は、
図2の排気ガス再循環装置の付近を拡大して示す斜視図である。
図4は、本実施形態に係る排気ガス再循環装置の排気圧取得経路等を示す側面図である。
【0037】
図1および
図2に表したように、排気ガス再循環装置600は、上述したEGRガス経路23と、EGR差圧センサ203と、スペーサ400と、排気圧取得経路500と、を有する。すでに説明したように、EGRガス経路23は、エンジン1の排気ガスEGの一部を排気還流ガスECGとして吸気マニホールド3内に還流する。EGR差圧センサ203は、すでに説明したように、
図1に示すエンジン1の排気還流ガスECGの圧力Peと、エンジン1の気筒に分配する混合吸気CYLの圧力Piと、に基づいた差圧PPを検出する。
【0038】
図1に表したように、スペーサ400は、排気還流手段であるEGRガス経路23の途中の位置であって、EGRバルブ7の始端部7Nと、EGR冷却器8の末端部8Mと、の間の位置に、着脱可能に装着されている。排気圧取得経路500の一端部は、スペーサ400に接続されている。排気圧取得経路500の他端部は、差圧検出手段であるEGR差圧センサ203に接続されている。
【0039】
排気圧取得経路500は、スペーサ400を通して取り出された排気還流ガスECGの圧力PeをEGR差圧センサ203に伝える圧力伝達経路である。
図3および
図4に表したように、排気圧取得経路500は、スペーサ400に接続された第1部分としての金属パイプ501と、金属パイプ501とEGR差圧センサ203とを接続し可撓性を有する第2部分としての接続パイプ502と、を有する。金属パイプ501は、例えばステンレスや鉄等の耐熱性を有する金属により作られている。あるいは、金属パイプ501は、例えば銅などの比較的高い熱伝導率を有する金属により作られていてもよい。接続パイプ502は、可撓性を有する熱に強いエンジニアリングプラスチックやゴム等により作られている。
【0040】
図5は、本実施形態のスペーサの構造例を示す斜視図である。
図6は、
図5に示すスペーサのB-B線における垂直方向の断面図である。
図1に表したように、スペーサ400は、EGRガス経路23の途中の位置であって、EGRバルブ7と、EGR冷却器8と、の間の位置に、着脱可能に装着されていることで、
図5の矢印で示すように、排気還流ガスECGの流れの途中に配置されている。より具体的には、スペーサ400は、EGR冷却器8の末端部8Mと、EGRバルブ7の始端部7Nと、の間であって、末端部8M寄りに配置されている。
【0041】
図5および
図6に表したように、スペーサ400は、エンジン1の大型化を防ぐために、矢印で示す排気還流ガスECGの流れ方向に関して、できる限り薄い肉厚(例えば、10mm程度の肉厚)になるように形成されている。これにより、EGRガス経路23の長さを抑えることができ、エンジン1の大型化を抑制できる。
【0042】
ところで、
図1に表したEGR差圧センサ203が、スペーサ400と排気圧取得経路500とを用いて、EGR冷却器8とEGRバルブ7との間から取り出された排気還流ガスECGの圧力Peに基づいて差圧PPを検出する理由の一つは、EGR冷却器8の劣化を検知できるようにするためである。例えば、EGR冷却器8が少しでも粒子状物質により閉塞すると、EGR冷却器8と、EGR冷却器8よりも下流側に設けられたEGRバルブ7と、の間にある排気還流ガスECGの圧力Peに基づいた差圧PPの値が変化する。このため、排気圧取得経路500が、EGR冷却器8の下流側の末端部8Mと、EGRバルブ7の上流側である始端部7Nと、の間に設けられたスペーサ400に直接接続されている。EGR差圧センサ203は、スペーサ400を通る排気還流ガスECGの圧力Peに基づいて差圧PPを検出する。
【0043】
図5および
図6に表したように、スペーサ400は、略長方形状を有する本体部410と、本体部410に連続して形成されている取付け部415と、を有する。取付け部415は、排気還流ガスECGの流れ方向と直交する方向である側方に本体部410から突出して形成されている。
【0044】
本体部410は、排気還流ガスECGを通すガス通し孔401と、2つの取り付け用孔402,403と、を有する。本実施形態のガス通し孔401は、本発明の「孔」の一例である。また、本体部410は、ガス通し孔401の一部を塞ぐように設けられた壁部420を有する。
【0045】
取付け部415は、排気圧取得部440を内部に有する。排気圧取得部440は、ガス通し孔401と排気圧取得経路500とに接続され、ガス通し孔401を通る排気還流ガスECGの圧力を取り出して排気圧取得経路500に伝える。また、排気圧取得部440は、略直方体形状の空間部441を有する。
図5に表したように、空間部441の流路断面積S1は、排気圧取得経路500の流路断面積S2よりも広い。
図6に表したように、排気圧取得部440は、空間部441からガス通し孔401に向かって下り勾配になっている。具体的には、排気圧取得部440は、空間部441からガス通し孔401に向かって本体部410の下側面部416に対して角度θだけ傾斜するように延びている。
【0046】
図5および
図6に表した取り付け用孔402,403は、例えば
図1に示すEGR冷却器8の末端部8Mに設けられた図示しない位置決めスタッドを通す。これにより、スペーサ400は、スタッドを用いてEGR冷却器8の末端部8Mに位置決めされ固定されている。
また、上述したように、取付け部415は、本体部410の側面部417から排気還流ガスECGの流れ方向とは交差する方向(側方)に突出して形成されている。このため、
図3に表すように、取付け部415は、冷却ファンFが発生する冷風CLLにより効率よく冷却できる位置にある。つまり、取付け部415の内部に設けられた排気圧取得部440の空間部441は、冷却ファンFから送られる冷風CLLに晒される位置に設けられている。取付け部415は、フランジ部419を有している。フランジ部419の両端部には、2つのねじ通し孔418が設けられている。
【0047】
図7は、本実施形態の排気圧取得経路を示す斜視図である。
図4および
図7に表したように、排気圧取得経路500の金属パイプ501の一端部501Bにはフランジ部520が設けられている。
図5および
図7に表したように、フランジ部520は、2つのねじ孔526を有している。
図4および
図5に表したように、複数のねじ422は、ねじ孔526とねじ通し孔418とをそれぞれ通過し、ナット等の締結部材と結合することにより、取付け部415のフランジ部419とフランジ部520とを締結する。これにより、
図5に表した排気圧取得部440の空間部441が、排気圧取得経路500の金属パイプ510に直接接続されている。
【0048】
また、
図4に表したように、金属パイプ501の他端部501Cは、金具502Dを用いて接続パイプ502の一端部502Bに接続されている。接続パイプ502の他端部502Cは、金具502Fを用いてEGR差圧センサ203に接続されている。
【0049】
図5に表したスペーサ400の本体部410のガス通し孔401は、排気還流ガスECGを通す。ガス通し孔401の内径は、
図4に表した排気還流手段であるEGRガス経路23の内径よりも大きい。これにより、スペーサ400がEGRガス経路23の途中に配置されても、EGRガス経路23を流れるEGRガスの流れを阻害しないので、EGR差圧センサ203は差圧を正確に検出できる。
【0050】
図5および
図6に表したように、本体部410の壁部420は、ガス通し孔401の下側の一部分をわずかに遮るようにして、しかも排気還流ガスECGの流れ方向と交差する方向に形成されている。壁部420は、排気還流ガスECGの流れを阻害しない範囲で、ガス通し孔401の領域に入り込む形で設けられている。壁部420は、排気還流ガスECGの流れ方向(
図5および
図6に表した矢印参照)に沿ってみたとき排気圧取得部440の入口442を覆っている。
【0051】
図6に表したように、壁部420の直線状の内側縁421は、本体部410の下側面部416に対して角度θだけ傾斜するようにして、排気圧取得部440に向けて斜め上方に形成されている。これにより、
図5に示す排気還流ガスECGがガス通し孔401を通過する際に、排気還流ガスECGの一部が、ガス通し孔401から排気圧取得部440を通じて、排気圧取得経路500の金属パイプ501側に送られる際に、排気還流ガスECGに含まれる煤などの粒子状物質が、
図6に示す排気圧取得部440へ侵入することを阻止できる。このため、煤が、
図1に示す排気圧取得経路500と、排気圧取得経路500を経てEGR差圧センサ203とに流入することを抑制する。
【0052】
図4に表したように、排気圧取得経路500は、EGR差圧センサ203からスペーサ400に向って下り勾配になっている。すなわち、排気圧取得経路500の金属パイプ501と接続パイプ502とは、水平線LRに対して角度αだけ下り勾配に設定されている。水平線LRは、エンジン1が機器に搭載されている状態での水平を表している。
【0053】
図4および
図7に表す金属パイプ501の内径は、できる限り大きく設定されている。金属パイプ501の内径は、例えば約8mm以上、10mm以下程度である。これにより、排気圧取得経路500を通過する排気還流ガスの放熱を効率よく行うことができる。
図2から
図4に表したように、排気圧取得経路500の金属パイプ501および接続パイプ502が、
図2に示す冷却ファンFが発生する冷風CLLに晒される位置に、具体的にはエンジン1の外側の上部の位置に配置されている。
【0054】
ここで、ガス通し孔と排気圧取得経路とを接続する排気圧取得部の流路断面積が狭い場合や、排気圧取得経路の流路断面積が狭い場合には、EGRガス経路を流れる高温の排気還流ガスが冷えないまま差圧センサに到達することがある。そうすると、排気還流ガスに含まれる水蒸気が差圧センサあるいは差圧センサの近傍において結露するおそれがある。排気還流ガスに含まれる水蒸気が結露して凝縮水(すなわち結露水)が差圧センサにおいて生じたり差圧センサに入り込んだりすると、凝縮水が、差圧センサの回路基板に付着するおそれがある。そうすると、差圧センサの回路基板が、凝縮水により破損するおそれがある。また、排気圧取得部の流路断面積が狭い場合や、排気圧取得経路の流路断面積が狭い場合において、排気還流ガスに含まれる煤が排気圧取得部および排気圧取得経路に入り込むと、排気圧取得部および排気圧取得経路が閉塞するおそれがある。排気圧取得部および排気圧取得経路が閉塞すると、差圧PPを正確に検出できないおそれがある。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る排気ガス再循環装置600によれば、スペーサ400の排気圧取得部440は、排気圧取得経路500の流路断面積S2よりも広い流路断面積S1の空間部441を有する。そのため、排気圧取得部440に存在する排気還流ガスECGは、排気圧取得部440の空間部441に一時的に滞留し冷やされる。そのため、排気還流ガスECGに含まれる水蒸気がEGR差圧センサ203あるいはEGR差圧センサ203の近傍において結露することを抑え、スペーサ400の排気圧取得部440あるいはスペーサ400の排気圧取得部440の近傍において排気還流ガスECGに含まれる水蒸気を結露させることができる。これにより、凝縮水がEGR差圧センサ203の回路基板に付着することを抑え、EGR差圧センサ203が破損することを抑えることができる。
【0056】
また、前述した通り、スペーサ400の排気圧取得部440は、排気圧取得経路500の流路断面積S2よりも広い流路断面積S1の空間部441を有する。そのため、排気還流ガスECGに含まれる煤が排気圧取得部440に入り込んだ場合であっても、排気圧取得部440の流路が煤により閉塞することを抑えることができる。これにより、EGR差圧センサ203は、差圧PPを正確に検出することができる。
【0057】
また、排気圧取得部440の空間部441および排気圧取得経路500は、冷却ファンFから送られる冷風CLLに晒される位置に設けられている。そのため、排気還流ガスECGは、排気圧取得部440の空間部441および排気圧取得経路500の少なくともいずれかにおいてより確実に冷やされる。そのため、排気還流ガスECGに含まれる水蒸気がEGR差圧センサ203あるいはEGR差圧センサ203の近傍において結露することをより確実に抑え、スペーサ400の排気圧取得部440あるいはスペーサ400の排気圧取得部440の近傍において排気還流ガスECGに含まれる水蒸気をより確実に結露させることができる。これにより、凝縮水がEGR差圧センサ203の回路基板に付着することをより一層抑え、EGR差圧センサ203が破損することをより一層抑えることができる。
【0058】
また、排気圧取得部440が空間部441からガス通し孔401に向かって下り勾配になっているため、排気圧取得部440において生じた凝縮水は、空間部441からガス通し孔401に向かって流れる。そのため、凝縮水がEGR差圧センサ203の回路基板に付着することをより一層抑え、EGR差圧センサ203が破損することをより一層抑えることができる。
【0059】
また、スペーサ400の壁部420が、EGRガス経路23を流れる排気還流ガスECGの流れに対して交差する方向に形成されており、排気還流ガスECGの流れ方向に沿ってみたとき排気圧取得部440の入口442を覆う。そのため、排気圧取得部440の流路が煤により閉塞することをより一層抑えることができる。これにより、EGR差圧センサ203は、差圧PPをより正確に検出することができる。
【0060】
また、排気圧取得経路500がEGR差圧センサ203からスペーサ400に向かって下り勾配になっているため、排気圧取得経路500において生じた凝縮水は、排気圧取得経路500からスペーサ400に向かって流れる。そのため、凝縮水がEGR差圧センサ203の回路基板に付着することをより一層抑え、EGR差圧センサ203が破損することをより一層抑えることができる。
【0061】
さらに、排気圧取得経路500の金属パイプ501に存在する排気還流ガスECGは、金属パイプ501を介して金属パイプ501の外部に熱を放出しやすく、金属パイプ501においてより確実に冷やされる。そのため、排気還流ガスECGに含まれる水蒸気がEGR差圧センサ203あるいはEGR差圧センサ203の近傍において結露することをより確実に抑え、金属パイプ501において排気還流ガスECGに含まれる水蒸気をより確実に結露させることができる。これにより、凝縮水がEGR差圧センサ203の回路基板に付着することをより一層抑え、EGR差圧センサ203が破損することをより一層抑えることができる。また、金属パイプ501とEGR差圧センサ203とを接続する接続パイプ502は、可撓性を有するため、可撓性を有しない硬い材質のパイプを用いるのに比べて、金属パイプ501の位置とEGR差圧センサ203との位置に柔軟に対応し、金属パイプ501とEGR差圧センサ203とを容易に接続できる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、本発明のエンジンの例として、本実施形態に係るエンジン1を例示している。エンジン1は、ターボチャージャ付きの過給式のディーゼルエンジンである。しかし、これに限らず、本発明のエンジンは、自然吸気式のディーゼルエンジン、ターボチャージャ付きの過給式のガソリンエンジン、自然吸気式のガソリンエンジン等であってもよい。また、エンジン1の種類は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジン等の多気筒エンジンである。但し、エンジン1の種類は、これだけに限定されるわけではなく、3気筒あるいは5気筒以上のエンジンであっても良い。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような車両以外の種類の車両に搭載できる。
【符号の説明】
【0063】
1:エンジン、 2:シリンダヘッド、 3:吸気マニホールド、 4:排気マニホールド、 4B:排気通路、 5:ターボチャージャ、 5B:ブロア、 5T:タービン、 6:インテークスロットルバルブ、 7:EGRバルブ、 7N:始端部、 8:EGR冷却器、 8M:末端部、 11:第1気筒、 12:第2気筒、 13:第3気筒、 14:第4気筒、 15:燃料噴射弁、 16:コモンレール、 19:ディーゼル微粒子捕集フィルタ、 20:吸気配管、 21:吸気通路、 22:インレットフランジ、 23:EGRガス経路、 23M:始端部、 23N:末端部、 24:部位、 31:第1枝管、 32:第2枝管、 33:第3枝管、 34:第4枝管、 35:本管、 100:ECU、 200:吸気量測定装置、 201:圧力センサ、 202:温度センサ、 203:EGR差圧センサ、 213:第1測定部、 223:第2測定部、 230:吸気圧取得経路、 351:始端部、 400:スペーサ、 401:ガス通し孔、 402、403:取り付け用孔、 410:本体部、 415:取付け部、 416:下側面部、 417:側面部、 418:ねじ通し孔、 419:フランジ部、 420:壁部、 421:内側縁、 422:ねじ、 440:排気圧取得部、 441:空間部、 442:入口、 500:排気圧取得経路、 501:金属パイプ、 501B:一端部、 501C:他端部、 502:接続パイプ、 502B:一端部、 502C:他端部、 502D、502F:金具、 510:金属パイプ、 520:フランジ部、 526:ねじ孔、 600:排気ガス再循環装置、 AR:吸気、 CLL:冷風、 CYL:混合吸気、 ECG:排気還流ガス、 EG:排気ガス、 F:冷却ファン、 LR:水平線、 PP:差圧、 Pe、Pi:圧力、 S1、S2:流路断面積、 Ti:温度