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  • 特許-ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240313BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240313BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240313BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240313BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L53/00
C08K3/013
C08L91/00
B60C1/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020020344
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123701
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 悠一郎
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039820(JP,A)
【文献】特開2010-254908(JP,A)
【文献】特開2005-330319(JP,A)
【文献】特開2017-043712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均ガラス転移温度が-50℃以下のジエン系ゴムと、無機充填剤と、特定ブロック共重合体とを含有し、
前記特定ブロック共重合体が、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAと、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBとを有するブロック共重合体であって、前記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上であり、前記ブロック共重合体全体に対する前記ブロックBの割合が50質量%超である、ブロック共重合体であり、
前記無機充填剤の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以上であり、
前記特定ブロック共重合体の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上である、ゴム組成物を用いて製造された、スタッドレスタイヤ
【請求項2】
前記ゴム組成物が、さらに、オイルを含有し、
前記特定ブロック共重合体と前記オイルの合計の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上である、請求項1に記載のスタッドレスタイヤ
【請求項3】
前記特定ブロック共重合体において、前記割合が75質量%以上である、請求項1又は2に記載のスタッドレスタイヤ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッドレスタイヤのタイヤトレッド部に用いられるゴム組成物として、ジエン系ゴムと無機充填剤とを含有するゴム組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-199597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、求められる安全レベルの向上に伴い、スタッドレスタイヤに対して、WET性能(ウェットグリップ性能)及び氷上性能のさらなる向上が求められている。
このようななか、本発明者が特許文献1を参考にゴム組成物を調製し、その性能を評価したところ、今後さらに高まるであろう要求を考慮するとさらなる改善が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときにWET性能及び氷上性能に優れるゴム組成物、並びに、上記ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体を配合することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 平均ガラス転移温度が-50℃以下のジエン系ゴムと、無機充填剤と、特定ブロック共重合体とを含有し、
上記特定ブロック共重合体が、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAと、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBとを有するブロック共重合体であって、上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上であり、上記ブロック共重合体全体に対する上記ブロックBの割合が50質量%超である、ブロック共重合体であり、
上記無機充填剤の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以上であり、
上記特定ブロック共重合体の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上である、ゴム組成物。
(2) さらに、オイルを含有し、
上記特定ブロック共重合体と上記オイルの合計の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上である、上記(1)に記載のゴム組成物。
(3) 上記特定ブロック共重合体において、上記割合が75質量%以上である、上記(1)又は(2)に記載のゴム組成物。
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のゴム組成物を用いて製造された、スタッドレスタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときにWET性能及び氷上性能に優れるゴム組成物、並びに、上記ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のスタッドレスタイヤの実施態様の一例の部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のゴム組成物及び上記ゴム組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のゴム組成物が含有する各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、タイヤにしたときにWET性能に優れることを単に「WET性能に優れる」とも言い、タイヤにしたとき氷上性能に優れることを単に「氷上性能に優れる」とも言う。
また、WET性能と氷上性能の少なくとも一方が優れることを「本発明の効果が優れる」とも言う。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
平均ガラス転移温度が-50℃以下のジエン系ゴムと、無機充填剤と、特定ブロック共重合体とを含有し、
上記特定ブロック共重合体が、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAと、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBとを有するブロック共重合体であって、上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上であり、上記ブロック共重合体全体に対する上記ブロックBの割合が50質量%超である、ブロック共重合体であり、
上記無機充填剤の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以上であり、
上記特定ブロック共重合体の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上である、ゴム組成物である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0013】
上述のとおり、本発明の組成物に含有される特定ブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAと、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBとを有するブロック共重合体であって、上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上であり、上記ブロック共重合体全体に対する上記ブロックBの割合が50質量%超である、ブロック共重合体である。ここで、上記ブロックBの炭素数2以上のアルキル基(長鎖アルキル基)が軟質性及び撥水性を向上させるものと考えられる。結果として、本発明の組成物は優れたWET性能及び氷上性能を示すものと推測される。
【0014】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0015】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、平均ガラス転移温度(平均Tg)が-50℃以下であれば特に制限されない。本発明の組成物は1種のジエン系ゴムを含有するのでも2種以上のジエン系ゴムを含有するのでもよい。
【0016】
<具体例>
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。
【0017】
<平均Tg>
上述のとおり、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(平均Tg)は-50℃以下である。
なお、本明細書において、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度とは、ゴム組成物が1種のジエン系ゴムを含有する場合、そのジエン系ゴムのガラス転移温度を意味し、ゴム組成物が2種以上のジエン系ゴムを含有する場合、各ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)に各ジエン系ゴムの質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の加重平均値)を意味する。例えば、後述する実施例1の場合、ジエン系ゴムとして、天然ゴム(Tg:-62℃)55質量部とブタジエンゴム(Tg:-105℃)45質量部とを含有するため、ジエン系ゴムの平均Tgは-81℃(=(-62℃)×(55/(55+45))+(-105℃)×(45/(55+45))である。
【0018】
上記ジエン系ゴムの平均Tgは、本発明の効果がより優れる理由から、-60℃以下であることが好ましく、-70℃以下であることがより好ましく、-80℃以下であることがさらに好ましい。上記平均Tgの上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、-150℃以上であることが好ましく、-100℃以上であることがより好ましい。
【0019】
<分子量>
上記ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~3,000,000であることがより好ましく、300,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0020】
<好適な態様>
上記ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、天然ゴムとブタジエンゴムとを含むのが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムのみからなるのがより好ましい。
【0021】
上記ジエン系ゴム中の天然ゴムの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、20~80質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0022】
上記ジエン系ゴム中のブタジエンゴムの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、30~80質量%であることが好ましく、35~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
上記ジエン系ゴム中の天然ゴムとブタジエンゴムの合計の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上記合計の含有量の上限は特に制限されず、100質量%である。
【0024】
上記ジエン系ゴムが天然ゴム及びブタジエンゴム以外のジエン系ゴムを含有する場合、その含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0~30質量%であることが好ましい。
【0025】
〔無機充填剤〕
本発明の組成物に含有される無機充填剤は特に制限されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、層状又は板状粘土鉱物、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムなどの無機充填剤が挙げられ、こちらのうち1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、カーボンブラックは無機充填剤に該当しないものとする。
【0026】
<シリカ>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、無機充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されないが、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカが好ましい。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~300m/gであることが好ましく、150~200m/gであることがより好ましい。なお、本明細書において、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0027】
<含有量>
本発明の組成物において、無機充填剤(特にシリカ)の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以上である。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、150質量部以下であることが好ましい。無機充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、50~100質量部であることが好ましい。
【0028】
〔特定ブロック共重合体〕
本発明の組成物に含有される特定ブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAと、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBとを有するブロック共重合体であって、上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上であり、上記ブロック共重合体全体に対する上記ブロックBの割合が50質量%超である、ブロック共重合体である。
【0029】
上記特定ブロック共重合体は、上記ブロックAを複数有していてもよい。上記特定ブロック共重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ブロックAを2つ有するのが好ましい。
上記特定ブロック共重合体は、上記ブロックBを複数有していてもよい。上記特定ブロック共重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ブロックBを1つ有するのが好ましい。
上記特定ブロック共重合体は、上記ブロックA及び上記ブロックBのいずれにも該当しないブロック(重合体)を含有していてもよいが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ブロックA及び上記ブロックBのみからなるのが好ましい。
【0030】
<ブロックA>
上述のとおり、上記特定ブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であるブロックAを有する。
【0031】
(分子量)
ブロックAの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~500,000であることが好ましく、2,000~100,000であることがより好ましく、5,000~50,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値である。
【0032】
(割合A)
上記特定ブロック共重合体全体に対する上記ブロックAの割合(割合A)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。上記割合Aの下限は、本発明の効果がより優れる理由から、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0033】
<ブロックB>
上述のとおり、上記特定ブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であるブロックBを有する。ここで、上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルのアルキル基の炭素数は2以上である。
【0034】
((メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステル)
上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上のアルキル基(長鎖アルキル基)のアルコールとのエステルである。
上記長鎖アルキル基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、2~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
上記長鎖アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよいが、本発明の効果がより優れる理由から、直鎖状であることが好ましい。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルは、本発明の効果がより優れる理由から、アクリル酸ブチル又はアクリル酸2-エチルヘキシルであることが好ましく、アクリル酸ブチルであることがより好ましい。
【0036】
なお、上記ブロックBは、1種の(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であっても、2種以上の(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの重合体であってもよい。例えば、アクリル酸ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルはいずれも上記(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルに該当するため、アクリル酸ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体は上記ブロックBに該当する。
【0037】
(分子量)
ブロックBの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~500,000であることが好ましく、2,000~100,000であることがより好ましく、5,000~50,000であることがさらに好ましい。
【0038】
(割合B)
上記特定ブロック共重合体全体に対する上記ブロックBの割合(割合B)は50質量%超である。上記割合Bは、本発明の効果がより優れる理由から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0039】
<全体の分子量>
上記特定ブロック共重合体の全体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、5,000~2,000,000であることが好ましく、10,000~500,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることがさらに好ましい。
【0040】
<好適な態様>
上記特定ブロック共重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ブロックAと上記ブロックBと上記ブロックAとがこの順に結合するトリブロック共重合体(以下、「ABAトリブロック共重合体」とも言う)であることが好ましい。
【0041】
<特定ブロック共重合体の製造方法>
上記特定ブロック共重合体は従来公知の方法により製造することができるが、例えば、リビングアニオン重合により、(メタ)アクリル酸メチルを重合してから、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルを重合し、さらに、(メタ)アクリル酸メチルを重合する方法が挙げられる。この場合、上記ABAトリブロック共重合体が得られる。なお、クラレ社製クラリティ等の製品を用いることもできる。
【0042】
<含有量>
本発明の組成物において、上記特定ブロック共重合体の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2質量部以上であることが好ましく、5質量以上であることがより好ましい。上記特定ブロック共重合体の含有量の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の組成物が上述したジエン系ゴムとして天然ゴムを含有する場合、上記天然ゴムの含有量に対する上記特定ブロック共重合体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、15~20質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明の組成物が上述したジエン系ゴムとしてブタジエンを含有する場合、上記ブタジエンゴムの含有量に対する上記特定ブロック共重合体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明の組成物において、上述した無機充填剤(特にシリカ)に対する上記特定ブロック共重合体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、カーボンブラック、シランカップリング剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、充填剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱膨張性マイクロカプセル、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0047】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m/gであることが好ましく、70~150m/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0048】
上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1~200質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましい。
【0049】
<熱膨張性マイクロカプセル>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、熱膨張性マイクロカプセルを含有するのが好ましい。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱により気化して気体を発生する液体を熱可塑性樹脂に内包した熱膨張性熱可塑性樹脂粒子であり、この粒子をその膨張開始温度以上の温度、通常130~190℃の温度で加熱して膨張させて、その熱可塑性樹脂からなる外殻中に気体を封入した気体封入熱可塑性樹脂粒子となる。
【0050】
上記熱可塑性樹脂において、その膨張開始温度は100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。最大膨張温度は150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば(メタ)アクリロニトリルの重合体、また(メタ)アクリロニトリル含有量の高い共重合体が好適に用いられる。その共重合体の場合の他のモノマー(コモノマー)としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、酢酸ビニル、ブタジエン、ビニルピリジン、クロロプレン等のモノマーが用いられる。
なお、上記熱可塑性樹脂は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート等の架橋剤で架橋可能にされていてもよい。架橋形態については、未架橋が好ましいが、熱可塑性樹脂としての性質を損わない程度に部分的に架橋していてもよい。
また、熱により気化して気体を発生する上記液体としては、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化炭化水素;等の液体が挙げられる。
【0051】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱によって膨張して気体封入熱可塑性樹脂となる熱膨張性マイクロカプセルであれば特に限定されず、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、熱膨張性マイクロカプセルの膨張前の粒子径は、5~300μmが好ましく、10~200μmがより好ましい。
【0052】
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、EXPANCEL社製のエクスパンセル091DU-80、エクスパンセル092DU-120;松本油脂社製のマイクロスフェアF-85、マイクロスフェアF-100;等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物において、熱膨張性マイクロカプセルの含有量は特に制限されないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0054】
<シランカップリング剤>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0055】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-S-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0057】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した無機充填剤(特にシリカ)の含有量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0059】
<オイル>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、オイルを含有するのが好ましい。
【0060】
本発明の組成物において、上記オイルの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、20~50質量部であることがより好ましい。
【0061】
本発明の組成物において、上述した特定ブロック共重合体と上記オイルの合計の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。上記合計は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
〔ゴム組成物の調製方法〕
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~155℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0063】
〔用途〕
上述のとおり、本発明の組成物は、WET性能及び氷上性能に優れるため、タイヤに好適である。上記タイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。上述のとおり、本発明の組成物は、WET性能及び氷上性能に優れるため、特に、スタッドレスタイヤに好適である。
【0064】
[スタッドレスタイヤ]
本発明のスタッドレスタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたスタッドレスタイヤである。なかでも、本発明の組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備えるスタッドレスタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明のスタッドレスタイヤの実施態様の一例を表すスタッドレスタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のスタッドレスタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0065】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0066】
本発明のスタッドレスタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、本発明のスタッドレスタイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例
【0067】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、まず、下記表1に示される成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0069】
〔評価〕
得られたゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。そして、得られた加硫ゴム試験片について、以下の評価を行った。
【0070】
<WET性能>
加硫ゴム試験片について、JIS K6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにWET性能(ウェットグリップ性能)に優れる。
【0071】
<氷上性能>
加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて、測定温度:-3.0℃及び-1.5℃、荷重:5.5kg/cm3、ドラム回転速度:25km/時間の条件で、氷上摩擦係数を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例の氷上摩擦係数を100とする指数で表した。指数が大きいほどゴムと氷との摩擦力が大きく、タイヤにしたときに氷上性能に優れる。
【0072】
【表1】
【0073】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
なお、特定ブロック共重合体1~3は、いずれも上述したABAトリブロック共重合体であり、上述した割合Bが50質量%超であるため、上述した特定ブロック共重合体に該当する。一方、比較ブロック共重合体は、上述したABAトリブロック共重合体であるが、上述した割合Bが50質量%であるため、上述した特定ブロック共重合体に該当しない。
・NR:TSR20(天然ゴム、ガラス転移温度(Tg):-62℃)
・BR:NIPOL BR1220(ブタジエンゴム、ガラス転移温度(Tg):-105℃、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・シリカ:ZEOSIL 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m/g、ローディア社製)
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・比較ブロック共重合体:クラリティLA4285(ABAトリブロック共重合体、ブロックA:メタクリル酸メチルの重合体、B:アクリル酸ブチルの重合体、Mw:52,000、割合B:50質量%、クラレ社製)
・特定ブロック共重合体1:クラリティLA2250(ABAトリブロック共重合体、ブロックA:メタクリル酸メチルの重合体、B:アクリル酸ブチルの重合体、Mw:53,000、割合B:70質量%、クラレ社製)
・特定ブロック共重合体2:クラリティLA3320(ABAトリブロック共重合体、ブロックA:メタクリル酸メチルの重合体、B:アクリル酸ブチルの重合体、Mw:120,000、割合B:85質量%、クラレ社製)
・特定ブロック共重合体3:クラリティLK9243(ABAトリブロック共重合体、ブロックA:メタクリル酸メチルの重合体、B:アクリル酸ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、Mw:60,000、割合B:80質量%、クラレ社製)
【0074】
表1から分かるように、特定ブロック共重合体を含有しない標準例1及び比較例1と比較して、特定ブロック共重合体を含有する実施例1~3は、優れたWET性能及び氷上性能を示した。なかでも、特定ブロック共重合体における割合Bが75質量%以上である実施例2~3は、より優れた氷上性能(-1.5℃)を示した。
実施例1と実施例2との対比(ブロックBがアクリル酸ブチルの重合体である態様同士の対比)から、特定ブロック共重合体における割合Bが75質量%以上である実施例2は、より優れたWET性能及び氷上性能(-1.5℃)を示した。
【符号の説明】
【0075】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1