(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】コネクタカバーの脱落防止構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
H01R13/52 302E
(21)【出願番号】P 2020108699
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】植田 健一郎
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011741(JP,A)
【文献】特開2002-110284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H04M 1/00-1/82,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ用の開口部が電子機器の筐体に形成され、当該開口部を覆うように装着されるコネクタカバーの脱落防止構造であって、
前記コネクタ用の開口部を覆う、弾性部材で成るコネクタカバーと、
前記コネクタカバーに取り付けられ、当該コネクタカバーを前記筐体に固定するためのリジッドな部材で成るカバーホルダーと、を備え、
前記コネクタカバーは、その裏面側に前記カバーホルダーの保持部を係合保持する受け部を有し、
前記カバーホルダーは、前記筐体に固定するためのフック部と、前記コネクタカバーに保持させるための保持部とを有し、
前記コネクタカバー
の受け部に前記カバーホルダー
の保持部を
係合してユニットとされ、
前記カバーホルダーのフック部が前記筐体に設けられた孔に嵌合固定されることを特徴とするコネクタカバーの脱落防止構造。
【請求項2】
前記コネクタカバーは
、前記カバーホルダーから取り外し可能としていることを特徴とする請求項1記載のコネクタカバーの脱落防止構造。
【請求項3】
前記コネクタカバーは、その裏面側に一体形成された、前記筐体のコネクタ用の開口部に嵌まり込み防水機能を奏する突出部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタカバーの脱落防止構造。
【請求項4】
前記カバーホルダーの保持部を係合保持する前記コネクタカバーの受け部は、空洞となって周縁が突出した凸部とされ、
前記カバーホルダーのフック部が嵌合固定される前記筐体の孔の周縁は凹部とされ、
前記コネクタカバーの前記凸部が前記筐体の前記凹部に嵌まり込み防水機能を奏することを特徴とする請求項2に記載のコネクタカバーの脱落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機など特に屋外で使用する機会の多い防水機能付きの電子機器のコネクタカバーの脱落防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器には、外付け機器、例えばマイクやスピーカのジャック、USB、外部電源等を接続するためのオプションコネクタ(以下、コネクタという)が機器本体内部に設けられ、電子機器の筐体にはこのコネクタにジャックを挿入するための開口部が設けられている。このコネクタに外付け機器を接続しないときには、該開口部をカバーするためのコネクタカバーが装着される。
【0003】
従来、コネクタカバーの脱落を防止するため、コネクタカバーの固定用足部を機器の筐体の孔を通して筐体内に引っ張り込み、固定用足部の反り(凸部)でもって抜け止めしていた。このため、コネクタカバーは、電子機器の製造組み立て初期に固定する必要があった。そうすると、コネクタ部がコネクタカバーで閉じられた状態となるため、製造ライン上の完成品検査工程で、コネクタカバーを開ける作業が発生する。
【0004】
また、コネクタカバー全体を弾性部材で構成した場合、コネクタカバーの筐体への嵌合固定部が変形しやすいという問題がある。そこで、コネクタカバーを弾性部材とリジッドな部材(金属板)とで構成し、コネクタカバーの筐体開口部との嵌合部を薄板状の金属製環状突起とし、金属板の周囲を弾性部材でモールドした構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、製造工程におけるコネクタカバーの組み込み性の容易化を図るため、コネクタカバーを、機器本体への係合部とカバー部とをゴム等の弾性部材で一体成型したものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許3991546号公報
【文献】特開2003-258964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるような、金属板を弾性部材でモールドした一体構造のコネクタカバーにあっては、コストアップとなり、また、リジッドな部材が破損した場合には全体を取り替える必要がある。
【0008】
特許文献2に示されるような、ゴム等の弾性部材で一体成型したコネクタカバーにあっては、コネクタカバーが機器本体から抜け易くなり、また、逆に、機器本体から抜け難くなるよう樹脂等で形成した場合、防水性を損ねてしまい、防水性を得るためにOリング等を設けると、コストアップや組立工程が増えてしまう。
【0009】
本発明は、上記課題を解消するものであり、コネクタカバーの機器筐体への取り付けが何時の段階でも可能となり、完成品検査をオプションコネクタ部で行い、検査後にコネクタカバーを組み立てることができる電子機器のコネクタカバーの脱落防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コネクタ用の開口部が電子機器の筐体に形成され、当該開口部を覆うように装着されるコネクタカバーの脱落防止構造であって、
前記コネクタ用の開口部を覆う、弾性部材で成るコネクタカバーと、
前記コネクタカバーに取り付けられ、当該コネクタカバーを前記筐体に固定するためのリジッドな部材で成るカバーホルダーと、を備え、
前記コネクタカバーは、その裏面側に前記カバーホルダーの保持部を係合保持する受け部を有し、
前記カバーホルダーは、前記筐体に固定するためのフック部と、前記コネクタカバーに保持させるための保持部とを有し、
前記コネクタカバーの受け部に前記カバーホルダーの保持部を係合してユニットとされ、前記カバーホルダーのフック部が前記筐体に設けられた孔に嵌合固定されることを特徴とする。
【0011】
上記脱落防止構造において、前記コネクタカバーは、前記カバーホルダーから取り外し可能としてもよい。
【0012】
上記脱落防止構造において、前記コネクタカバーは、その裏面側に一体形成された、前記筐体のコネクタ用の開口部に嵌まり込み防水機能を奏する突出部を有しているものとしてもよい。
【0013】
上記脱落防止構造において、前記カバーホルダーの保持部を係合保持する前記コネクタカバーの受け部は、空洞となって周縁が突出した凸部とされ、前記カバーホルダーのフック部が嵌合固定される前記筐体の孔の周縁は凹部とされ、前記コネクタカバーの前記凸部が前記筐体の前記凹部に嵌まり込み防水機能を奏するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コネクタカバーが弾性部材とリジッドな部材から成り、コネクタカバーの筐体への固定にリジッドな部材を用いて取り外し可能としているので、リジッドな部材が破損した場合には取り替え可能で、コストを低減することができる。また、コネクタカバーの機器筐体への取り付けが機器筐体の外側からの嵌め込み式であるので、コネクタカバーの機器への取り付けが何時の段階でも可能となり、完成品検査をコネクタ部で行い、検査後にコネクタカバーを組み立てることができる。また、使用時にコネクタカバーが機器筐体から外れた場合も、製品を分解せずにコネクタカバーを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタカバーの脱落防止構造を適用した電子機器の斜視図。
【
図2】同電子機器の筐体と装着前のコネクタカバーの斜視図。
【
図3】同コネクタカバーと同コネクタカバーに取り付けられる前のカバーホルダーの斜視図。
【
図4】同コネクタカバーにカバーホルダーを取り付けてユニットとした状態の斜視図。
【
図5】同ユニットとしたコネクタカバーと筐体の孔部分の拡大斜視図。
【
図6】(a)は同コネクタカバーにカバーホルダーを取り付ける要領を示す斜視図、(b)は同ユニットとしたコネクタカバーを筐体に固定する要領を示す斜視図。
【
図7】同コネクタカバーを筐体に固定した状態の筐体内面を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るコネクタカバーの脱落防止構造について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のコネクタカバーの脱落防止構造が採用された携帯無線機である電子機器1を示す。電子機器1は、当該機器本体内部に、外付け機器を接続するためのオプションコネクタ2(複数種のコネクタがあり、以下では総称してコネクタ2という)を備え、電子機器1の筐体4にはコネクタ2用の開口部が形成され、このコネクタ2に外付け機器を接続しないときは開口部をコネクタカバー5で覆っている。コネクタカバー5は筐体4から脱落し難いように装着され、かつ、コネクタ2に外付け機器を接続するときにはコネクタ2が利用できる状態になる必要がある。
【0017】
本実施形態の電子機器1において、表示部3aや操作部3bが設けられている面を機器前面としたとき、機器一側面にコネクタ2用の開口部が設けられている。外付け機器は、例えばマイク、スピーカ、USB、外部電源等であり、それらのジャックがコネクタ2に接続される。
【0018】
図2は、電子機器1の筐体4と筐体4から取り外されたコネクタカバー5を示す。図示の筐体4は、背面開口4aに取り付けられる裏蓋を外し、かつ筐体4内に組み見込まれる回路基板に搭載されるコネクタ2、表示部3a、操作部3b等を取り外した状態を示す。筐体4は、樹脂等で形成され、その一側面にコネクタ2用の複数の開口部41,42,43,44が形成されている。これらの開口部41~44は、本例では、それぞれマイクジャック、スピーカジャック、USB、外部電源ジャックを、それぞれのコネクタ2に接続するために挿入する開口であり、列状に並んで設けられている。コネクタカバー5は、図では、筐体4の開口部41~44を塞ぐ裏面を下向きに、表面を上向きに示している。この表面には、コネクタ2に対応してコネクタ種別が表示されている。
【0019】
筐体4には、開口部41~44を覆うように装着されるコネクタカバー5の略長方形の外形と同形状の窪み部40が形成され、この窪み部40内において開口部41~44の各周縁はさらに凹部とされている。また、窪み部40内の長手方向の略中央部(本例では中央寄りの開口部42と開口部43との間)に孔45が設けられ、この孔45の周縁も凹部46とされている。この孔45は、コネクタカバー5を筐体4に装着したときにコネクタカバー5の脱落防止を図るためのカバーホルダー6(後述の
図3等参照)のフック部61が嵌合される開口である。なお、コネクタカバー5が筐体4に装着されたとき、筐体4の窪み部40内の平面部にコネクタカバー5の裏面が接触し、窪み部40の深さ分だけコネクタカバー5の筐体4からの突出量が少なくなり、実使用時に引っ掛かりで脱落するようなことが軽減される。
【0020】
図3は、コネクタカバー5の筐体4からの脱落防止構造としての、コネクタカバー5と、それから分離されている状態のカバーホルダー6を示す。
図4はコネクタカバー5にカバーホルダー6を取り付けてユニットとした状態を示す。
図5はユニットとしたコネクタカバー5と筐体4の孔45等の部分を拡大して示す。なお、上述の
図2においては、筐体4は、その背面開口4aを下向き状態で示したが、
図5においては当該背面開口4aを上向きに反転した状態で示している。
【0021】
図3乃至
図5において、脱落防止構造として、コネクタカバー5と、コネクタカバー5に取り付けられて筐体4に固定するためのカバーホルダー6との2つのパーツを用いている。コネクタカバー5は、ゴム等の弾性部材で形成される。カバーホルダー6は、樹脂または金属等のリジッドな部材で構成される。
【0022】
コネクタカバー5は、筐体4に対面される裏面側にカバーホルダー6を取り付けてユニットとされ、筐体4への取り付け固定は、筐体4の外側から行う。そのための構成として、カバーホルダー6は、筐体4に固定するためのフック部61と、コネクタカバー5に保持させるための保持部62とを有している。フック部61と保持部62とは、一体に形成されている。フック部61は、その先端に一対の互いに外向きの爪を有し、この爪が筐体4の孔45に嵌合されることで筐体4に固定される。
【0023】
コネクタカバー5は、その裏面側にカバーホルダー6の保持部62を係合保持するための空洞状の受け部55を有している。カバーホルダー6は、その保持部62がコネクタカバー5の受け部55に係合保持されることで、コネクタカバー5に固定される。
【0024】
コネクタカバー5の空洞状の受け部55は、当該空洞の周縁がコネクタカバー5と一体に突出形成された凸部56とされている。一方、筐体4の孔45の周縁は凹部46とされている。ユニットとされたカバーホルダー6を筐体4に装着するとき、コネクタカバー5の凸部56が筐体4の凹部46に嵌まり込み、併せて、カバーホルダー6のフック部61が筐体4の孔45に嵌合固定される。これにより、ユニットとされたカバーホルダー6は、防水機能を持って筐体4に固定される。
【0025】
また、コネクタカバー5は、筐体4に対面する裏面側に、筐体4のコネクタ用の開口部41,42,43,44に嵌まり込む突出部51,52,53,54が一体形成されている。カバーホルダー6を筐体4に装着するとき、これら突出部51,52,53,54は、開口部41,42,43,44に各々嵌まり込む。このことにより、防水機能が高まる。また、コネクタカバー5が筐体4に装着されたとき、コネクタカバー5の筐体4に対面する裏面は、窪み部40内の平面に接触するので、防水機能は高まる。
【0026】
また、コネクタカバー5とカバーホルダー6の両者は、受け部55と保持部62の係合により取り付けられ、コネクタカバー5をカバーホルダー5から取り外しできるので、何らかの大きな応力が加わってリジッドな部材であるカバーホルダー6が破損したとしても取り替えることが可能である。
さらにまた、コネクタカバー5は、その長手方向の略中央部で筐体4に固定されているので、コネクタカバー5が筐体4に装着固定されたまま、コネクタカバー5の一端または他端側を撓ませて開口部41,42,43,44を開くことができる。従って、コネクタカバー5を筐体4から外すことなく、容易に外付け機器をコネクタ2に接続することが可能となる。
【0027】
図6(a)はコネクタカバー5にカバーホルダー6を取り付ける要領を、
図6(b)はユニットとしたコネクタカバー5を筐体4に固定する要領を示す。
図7はコネクタカバー5を筐体4に固定した状態を示す。コネクタカバー5の裏面側にカバーホルダー6を取り付けてユニットとし、ユニットとされたカバーホルダー6のフック部61を筐体4の孔45に嵌合固定する。カバーホルダー6のフック部61は、リジッドな部材で成り、2つの外向きの爪を有している。フック部61を孔45に嵌合させるとき、フック部61の爪が僅かに撓んで圧入され、嵌合後は、爪の撓みが戻って抜け止めされた状態となる。筐体4に固定されたコネクタカバー5を取り外すには、フック部61の2つの爪を内向きに狭めて筐体4(孔45)との嵌合を外すことで可能となる。
【0028】
以上のように、本実施形態のコネクタカバーの脱落防止構造によれば、コネクタカバー5の筐体4への取り付けが、筐体4の外側から嵌め込みで行えるので、製造過程の何時の段階でも可能となり、完成品検査をコネクタ2で行い、検査後にコネクタカバー5を組み立てることができる。
【0029】
また、ユニットとされたコネクタカバー5は、弾性部材とリジッドな部材から成り、コネクタカバー5の筐体4への固定にリジッドな部材を用いて取り外し可能としているので、リジッドな部材が破損した場合には取り替え可能で、コストを低減することができる。使用時にコネクタカバー5が筐体4から外れた場合も、製品を分解することなくコネクタカバー5を取り付けることができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、カバーホルダー6のフック部61と保持部62とは一体形成のものを示したが、これに限られず、また、カバーホルダー6の保持部62とそれを係合保持するコネクタカバー5の受け部55の構成も任意の形態を採用し得る。
【符号の説明】
【0031】
1 電子機器
2 コネクタ
3a 表示部
3b 操作部
4 筐体
4a 筐体の背面開口
40 窪み部
41,42,43,44 開口部
45 孔
46 凹部
5 コネクタカバー
51,52,53,54 突出部
55 受け部
56 凸部
6 カバーホルダー
61 フック部
62 保持部