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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】欠陥評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020202952
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090513
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北田 啓順
(72)【発明者】
【氏名】立澤 拓也
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-098108(JP,A)
【文献】特開2012-026982(JP,A)
【文献】特開2003-344309(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06N 20/00 - G06N 20/20
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01B 15/00 - G01B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象物を撮像して得た撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法において、
前記撮像画像から前記評価対象物に発生している欠陥の評価を行う評価対象領域を抽出し、第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記評価対象領域から前記第1欠陥に対応する画素領域である第1欠陥領域を取得し、
前記評価対象領域から前記第1欠陥領域を除外した評価実施領域を設定し、
前記評価実施領域から第2欠陥に対応する画素領域である第2欠陥領域を取得し、
取得した前記第2欠陥領域の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法であって、
前記評価対象物が、基板であり、
前記第1欠陥が、前記基板のランドに形成されたプローブ痕であり、
前記ランドに対応する画素領域を、前記評価対象領域として抽出する欠陥評価方法。
【請求項2】
評価対象物を撮像して得た撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法において、
前記撮像画像から前記評価対象物に発生している欠陥の評価を行う評価対象領域を抽出し、第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記評価対象領域から前記第1欠陥に対応する画素領域である第1欠陥領域を取得し、
前記評価対象領域から前記第1欠陥領域を除外した評価実施領域を設定し、
前記評価実施領域から第2欠陥に対応する画素領域である第2欠陥領域を取得し、
取得した前記第2欠陥領域の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法であって、
前記第1のディープニューラルネットワークにより前記撮像画像又は前記評価対象領域から前記第1欠陥に対応する画素領域を決定し、決定した画素領域を所定量拡張した領域を前記第1欠陥領域とする欠陥評価方法。
【請求項3】
評価対象物を撮像して得た撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法において、
第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記撮像画像から前記第1欠陥に対応する画素領域である第1欠陥領域を取得し、
前記撮像画像から前記第1欠陥領域を除外した評価実施領域を設定し、
前記評価実施領域から第2欠陥に対応する画素領域である第2欠陥領域を取得し、
取得した前記第2欠陥領域の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法であって、
前記第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記第1欠陥の重心位置に対応する画素領域である重心領域を取得し、前記重心領域を開始点とする領域拡張法を用いて前記第1欠陥領域を取得する欠陥評価方法。
【請求項4】
評価対象物を撮像して得た撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法において、
第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記撮像画像から前記第1欠陥に対応する画素領域である第1欠陥領域を取得し、
前記撮像画像から前記第1欠陥領域を除外した評価実施領域を設定し、
前記評価実施領域から第2欠陥に対応する画素領域である第2欠陥領域を取得し、
取得した前記第2欠陥領域の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法であって、
前記第2欠陥の形状を学習した第2のディープニューラルネットワークを用いて、前記第2欠陥の重心位置に対応する画素領域である重心領域を取得し、前記重心領域を開始点とする領域拡張法を用いて前記第2欠陥領域を取得する欠陥評価方法。
【請求項5】
前記撮像画像から、前記ランドの位置を取得し、
事前に形状及び大きさが設定された領域を、前記撮像画像における前記ランドの位置に対応させて、前記評価対象領域とする請求項に記載の欠陥評価方法。
【請求項6】
所定の条件を満たした際に、前記第1のディープニューラルネットワークに前記プローブ痕である前記第1欠陥の形状を再学習させ、
前記再学習において、前回の再学習のとき以降の欠陥評価に使用した撮像画像を教師データとして使用する請求項1又は5に記載の欠陥評価方法。
【請求項7】
前記領域拡張法において、
検査領域内から前記第1欠陥または前記第2欠陥に対応する画素領域である欠陥候補領域を検出する欠陥候補領域検出ステップと、
検出された前記欠陥候補領域を拡張したものを新たな検査領域とする検査領域更新ステップと、を順次繰り返し実行し、
直近の前記欠陥候補領域検出ステップにおいて検出された前記欠陥候補領域と、その前回の前記欠陥候補領域検出ステップにおいて検出された前記欠陥候補領域との差分領域の大きさに基づいて、前記繰り返しを終了するか否かを判断する請求項またはに記載の欠陥評価方法。
【請求項8】
前記ルールベースシステムが、前記第2欠陥領域の面積に基づいて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する請求項1~のいずれか1項に記載の欠陥評価方法。
【請求項9】
前記評価対象物を撮像して得た前記撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する評価装置に用いられるソフトウエアであった、請求項1~のいずれか1項に記載の欠陥評価方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥評価方法及び欠陥評価方法を実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
評価対象物を例えばCMOS( Complementary Metal OxideSemiconductor)カメラなどによって撮像し、得られた撮像画像を処理して評価対象物に発生している欠陥を評価することが行われている。
【0003】
欠陥を評価する手法としては、ディープラーニングと呼ばれる手法を利用することが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、評価対象物を撮像して得られた撮像画像に基づいて欠陥の特徴量(欠陥の濃淡、色などの特徴、幾何学的特徴)を算出し、これら特徴量に基づいてディープラーニングの手法を用いて評価対象物に発生している欠陥を評価したり、撮像画像から抽出された欠陥の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて欠陥を評価することが記載されている。
【0005】
ディープラーニングによる欠陥評価では、教師データを用いた学習によって欠陥の濃淡や色などの特徴や幾何学的な特徴量を自動抽出し、これら特徴量が反映されたニューラルネットワークを用いて評価対象物の欠陥を評価する。
【0006】
このようなディープラーニングによる欠陥評価では、教師データを用いた学習により複雑な形状の欠陥についても対応しやすいが、形状に規則性が無い欠陥の検出が困難であったり、教師データの選定やハイパーパラメータの調整が困難であったり、欠陥の評価基準が分からないため、評価結果の信頼性に乏しいという問題がある。
【0007】
ルールベースシステムによる欠陥評価では、評価基準の調整が可能であるが、想定した欠陥に対して個々に評価ルールを作成する必要があり、評価ルールの設定に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-504856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、評価ルールの設定を簡略化しつつ、評価対象物の撮像画像に基づいて評価対象物の欠陥を適切に評価することができる欠陥評価方法及び欠陥評価方法を実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる欠陥評価方法は、評価対象物を撮像して得た撮像画像に基づいて、前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法において、前記撮像画像から前記評価対象物に発生している欠陥の評価を行う評価対象領域を抽出し、第1欠陥の形状を学習した第1のディープニューラルネットワークを用いて、前記評価対象領域から前記第1欠陥に対応する画素領域である第1欠陥領域を取得し、前記評価対象領域から前記第1欠陥領域を除外した評価実施領域を設定し、前記評価実施領域から第2欠陥に対応する画素領域である第2欠陥領域を取得し、取得した前記第2欠陥領域の属性に基づいて、ルールベースシステムを用いて前記評価対象物に発生している欠陥を評価する欠陥評価方法であって、前記評価対象物が、基板であり、前記第1欠陥が、前記基板のランドに形成されたプローブ痕であり、前記ランドに対応する画素領域を、前記評価対象領域として抽出する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、評価ルールの設定を簡略化しつつ、評価対象物の撮像画像に基づいて評価対象物の欠陥を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる欠陥評価方法を実行する欠陥評価装置の構成を模式的に示す図
図2】プリント基板の平面図
図3図1の欠陥評価装置の制御を示すフロー図
図4】(a)~(c)はランド上に設定する評価対象領域、第1欠陥領、評価実施領域を示す平面図
図5】第2欠陥領域取得処理のフロー図
図6】(a)~(h)は第2欠陥領域取得処理を説明する第2欠陥の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(1)評価装置10の構成
本実施形態は、図1に示すような評価装置10を用いて、評価対象物である図2に例示するプリント基板P上に設けられたランドLの表面に発生している欠陥を評価する場合について説明する。
【0015】
プリント基板Pは、評価装置10による評価の前に、ランドLにプローブを接触させて導通試験が行われている。そのため、プリント基板PのランドLの表面には、プローブを接触させたときに発生したプローブ痕(以下、これを第1欠陥という)F1と、それ以外の欠陥、例えばランドLを構成する金属膜の形成過程で発生した表面欠陥(以下、プローブ痕以外の欠陥を纏めて第2欠陥という)F2が存在することがある。第1欠陥F1はランドLの導通に影響がほとんど無いが、第2欠陥F2はその種類やサイズによってはランドLの導通に影響が大きい場合もある。そこで、評価装置10は、第2欠陥F2に基づいてプリント基板PのランドLに発生している欠陥を評価する。
【0016】
評価装置10は、プリント基板Pの画像を取得する撮像部11と、撮像部11を制御するとともに撮像部11が取得した撮像画像を用いてデータ処理を行う制御部20とを含んで構成されている。
【0017】
撮像部11は、プリント基板Pを載置するステージ12を有する。ステージ12は、直交する2方向にプリント基板Pを水平移動可能なXステージ13とYステージ14と、プリント基板Pをステージ12上に保持する不図示の保持機構を備える。
【0018】
また、撮像部11は、プリント基板Pの上方に配置されるCMOSセンサ等の画像センサを有するカメラ15と、プリント基板Pを照らす照明装置16とが設けられている。カメラ15は、制御部20に接続されており、撮像して得られたプリント基板Pの撮像画像データを制御部20へ出力する。
【0019】
制御部20は、プログラムを実行するCPUや、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)や、プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備える。制御部20は、各種データを格納する記憶装置(記録媒体)26に接続され、必要に応じて、データを表示する表示部やデータを入力する入力部に接続されている。
【0020】
制御部20は、CPUがランドLの表面に発生している欠陥を評価するためのプログラムを実行することによって、カメラ制御部21、領域抽出部22、第1欠陥決定部23、検出部24及び評価部25を仮想的に実現し、これにより、プリント基板PのランドLの表面に発生している第2欠陥F2を評価する。
【0021】
(2)評価装置10の制御
次に、評価装置10において実行される欠陥の評価方法について、図3図6を参照して説明する。
【0022】
ステップS1において、ステージ12上にプリント基板Pが載置されると、カメラ制御部21は、撮像部11を構成する各部12,13,14,15,16を制御することで、プリント基板Pをカメラ15の下方に配置し、照明装置16でプリント基板Pを照明しながら、カメラ15でプリント基板Pを撮像して撮像画像を取得する。取得したプリント基板Pの撮像画像は記憶装置26に記憶される。なお、カメラ15は、ランドLだけでなくプリント基板Pの表面全体を撮像してもよい。
【0023】
次いで、ステップS2において、領域抽出部22は、カメラ15が撮像したプリント基板Pの撮像画像について、事前に形状及び大きさが設定された認識パターンを用いてパターンマッチングによって、ランドLに対応する画素領域を抽出し、抽出した画素領域を評価対象領域R0として記憶装置26に記憶する(図4(a)参照)。このとき、抽出した評価対象領域R0の向きを一定に揃えておくことが好ましい。これにより、領域抽出部22において、所定位置及び所定の向きに位置決めされた画素領域が評価対象領域R0として得られる。
【0024】
次いで、ステップS3において、第1欠陥決定部23は、第1のディープニューラルネットワークを使用して評価対象領域R0を解析することで、評価対象領域R0の中から第1欠陥F1の形状に対応する画素領域を取得する。第1のディープニューラルネットワークとしては、予めプリント基板Pを撮像して得た撮像画像に基づいて当該プリント基板PのランドLに発生している第1欠陥F1の形状を学習したニューラルネットワークを用いることができ、例えば畳み込みニューラルネットワークを用いることができる。
【0025】
なお、第1欠陥決定部23は、評価対象領域R0の中から第1欠陥F1の形状に対応する画素領域に加え、あるいは第1欠陥F1の形状に対応する画素領域に代えて、第1欠陥F1の重心位置に対応する画素領域を取得してもよい。
【0026】
第1欠陥決定部23は、例えば、周期的に、評価装置10がプリント基板Pの評価を行っていない期間に、または、新たな教師データが追加されたときに、など所定の条件を満たした際に、第1のディープニューラルネットワークに第1欠陥F1の形状を再学習してもよい。その再学習において、前回の再学習のとき以降の欠陥評価に使用した撮像画像、つまり、前回の再学習のとき以降に上記ステップS1において取得した撮像画像や上記ステップS2において抽出した評価対象領域R0を教師データとして使用してもよい。
【0027】
第1欠陥F1のようなプローブ痕をランドLに発生させるプローブは、使用時間の経過と共にその形状が変化するため、ランドLに発生する第1欠陥F1の形状的特徴が、複数のプリント基板Pを検査している中で変化する。上記の再学習を行うことで、このような第1欠陥F1の形状的特徴の変化を考慮することができ、より正確に第1欠陥F1を検出することができるようになる。
【0028】
また、第1のディープニューラルネットワークに第1欠陥F1の形状を学習させる際に、
教師データとなる撮像画像を所定の向きに位置決めしたデータを用いることが好ましい。
【0029】
そして、ステップS4において、第1欠陥決定部23は、取得した情報に基づいて第1欠陥領域R1を設定する。ここでは、第1欠陥決定部23は、取得した第1欠陥F1に対応する画素領域を所定画素数だけ外側へ拡張した領域を第1欠陥領域R1に設定し、これを記憶装置26に保存する(図4(b)参照)。
【0030】
次いで、ステップS5において、検出部24は、評価対象領域R0から第1欠陥領域R1を除外した領域を、欠陥の評価を行う評価実施領域R2に設定し、これを記憶装置26に保存する(図4(c)参照)。
【0031】
そして、ステップS6において、検出部24は、評価実施領域R2について図5に示すような第2欠陥領域取得処理を実行して第2欠陥F2に対応する画素領域を取得し、取得した画素領域を第2欠陥領域R3として記憶装置26に記憶する。
【0032】
第2欠陥領域取得処理では、まず、ステップS61において、検出部24が、あらかじめ第2欠陥F2の形状を学習した第2のディープニューラルネットワークを使用して評価実施領域R2を解析することで、評価実施領域R2の中から第2欠陥F2の重心位置に対応する画素領域を取得し、取得した画素領域を重心領域G2として記憶装置26に記憶する。なお、評価実施領域R2に複数の第2欠陥F2があれば、各第2欠陥F2について重心領域を取得して記憶装置26に記憶する。
【0033】
その後、検出部24は、重心領域に基づいて第2欠陥F2の形状に対応する画素領域を特定する。ここでは、検出部24は、重心領域G2を検査領域の開始点に設定した後、所定条件を満たすまで検査領域を漸次拡大する領域拡張法を実行して、第2欠陥F2の形状に対応する画素領域を取得し、これを第2欠陥領域R3として記憶装置26に保存する。
【0034】
ここでは、領域拡張法の一例として、検査領域内から第2欠陥F2に対応する画素領域である第2欠陥候補領域を検出する第2欠陥候補領域検出ステップと、検出された第2欠陥候補領域を拡張したものを新たな検査領域とする検査領域更新ステップと、を所定条件を満たすまで順次繰り返し実行することで第2欠陥領域R3を取得する。
【0035】
具体的には、ステップS62において、検出部24は、第2欠陥F2の重心領域G2を含むように検査領域K0を設定する(図6(a)参照)。
【0036】
そして、ステップS63において、検出部24は、検査領域K0に存在する第2欠陥F2に対応する画素領域である第2欠陥候補領域B0と、第2欠陥候補領域B0の画素数を検出する(図6(b)参照)。第2欠陥F2は、例えば、画素値(輝度)が所定値以下の画素を第2欠陥F2の画素とすることで検出することができる。
【0037】
そして、ステップS64において、検出部24は、直近に検出した第2欠陥候補領域B0を所定画素数だけ外側へ拡張した領域を新たな検査領域K1を設定する(図6(c)参照)。
【0038】
そして、ステップS65において、検出部24は、拡張した後の検査領域K1に存在する第2欠陥候補領域B1と第2欠陥候補領域B1の画素数を検出する(図6(d)参照)。
【0039】
そして、ステップS66において、検出部24は、直近の第2欠陥候補領域B1と前回(つまり、拡張前)の第2欠陥候補領域B0との差分領域の大きさ、つまり、直近の第2欠陥候補領域B1の画素数と前回の第2欠陥候補領域B0の画素数との差ΔNを算出する。
【0040】
そして、ステップS67において、検出部24は、算出した画素数の差ΔNが所定値以下であるか否か判断する。画素数の差ΔNが所定値より大きい場合(図5のステップS67のNo)、ステップS64へ戻る。
【0041】
ステップS64へ戻ると、検出部24は、直近に検出した第2欠陥候補領域B1を所定画素数だけ外側へ拡張した領域を新たな検査領域K2を設定し(図6(e)参照)、ステップS65において、拡張した後の検査領域K2に存在する第2欠陥候補領域B2とその画素数を検出し(図6(f)参照)、ステップS66において、直近に検出した第2欠陥候補領域B2とその前回の第2欠陥候補領域B1との画素数の差ΔNを算出し、ステップS67において、算出した画素数の差ΔNが所定値以下であるか否か判断する。
【0042】
以後、ステップS64における新たな検査領域の設定と(図6(g)参照)、ステップS65における拡張した後の検査領域に存在する第2欠陥候補領域B2とその画素数の検出と(図6(h)参照)、ステップS66における第2欠陥候補領域の画素数の差ΔNの算出とを、ステップS67において画素数の差ΔNが所定値以下になるまで繰り返し実行する。
【0043】
そして、ステップS67において画素数の差ΔNが所定値以下になるとステップS68へ進み、検出部24は、その時の第2欠陥候補領域を第2欠陥領域R3として記憶装置26に保存して、第2欠陥領域取得処理を終了し、ステップS7へ進む。
【0044】
なお、ここでは、ステップS61において評価実施領域R2に1の第2欠陥F2が検出された場合について説明するが、評価実施領域R2に複数の第2欠陥F2が検出された場合、各第2欠陥F2について上記のような領域拡張法を実行して第2欠陥領域R3を取得する。
【0045】
また、上記したステップS67では、画素数の差ΔNが所定値以下であると、ステップS64~ステップS66の繰り返しを終了したが、画素数の差ΔNを直近の第2欠陥候補領域の画素数で除した値が所定値以下の場合や、画素数の差ΔNの変化量が所定値以下の場合に、ステップS64~ステップS66の繰り返しを終了してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、評価実施領域R2から第2欠陥領域R3を取得する第2欠陥領域取得処理として、ディープニューラルネットワークを使用して第2欠陥F2の重心領域G2を取得し、取得した重心領域G2を開始点とする領域拡張法を実行したが、このようなディープラーニングを用いた方法に加え、あるいはこのよう方法に代えて、輝度値が所定の閾値以下の画素の集合を第2欠陥領域R3として取得するなどルールベースシステムを用いて評価実施領域R2から第2欠陥領域R3を取得してもよい。
【0047】
そして、検出部24が評価実施領域R2に存在する第2欠陥領域R3を取得すると、ステップS7において、評価部25は、第2欠陥領域R3の属性を予め作成したルールベースと照合するルールベースシステムを用いてランドLに存在する欠陥を評価する。評価部25は、例えば、第2欠陥領域の面積が所定値以下の場合にランドLに不良欠陥があると評価することができる。
【0048】
なお、評価部25は、第2欠陥領域R3の面積以外にも、第2欠陥領域R3の形状、所定方向の長さ、最大長さ等の属性の1つまたは複数を組み合わせて予め作成したルールベースと照合してランドLに存在する欠陥を評価してもよい。
【0049】
(3)効果
以上のような本実施形態では、ディープニューラルネットワークを用いて評価対象物の評価に影響しない第1欠陥F1を抽出し、当該第1欠陥領域R1を除外して評価実施領域R2を設定する。そのため、正常な領域とコントラストが類似する欠陥等のルールベースシステムによって評価しにくい欠陥を取り除くことができ、ルールベースシステムの評価ルールの設定を簡略化することができる。また、評価対象物の欠陥の評価をルールベースシステムに基づいて行うことができるため、評価基準の調整が可能となり信頼性の高い評価結果を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、領域抽出部22によって撮像画像から抽出することで所定位置に位置決めされた評価対象領域R0からディープニューラルネットワークを用いて第1欠陥F1を取得するため、第1欠陥F1を第2欠陥F2と誤検出したり、第1欠陥F1を検出できなかったりすることがなく、これを精度良く取得することができる。
【0051】
本実施形態では、第1のディープニューラルネットワークにより評価対象領域R0から第1欠陥F1に対応する画素領域を決定し、決定した画素領域を所定量拡張した領域を第1欠陥領域とするため、簡便に第1欠陥領域R1を決定することができる。
【0052】
本実施形態では、第2のディープニューラルネットワークを用いて取得した第2欠陥F2の重心領域G2を開始点とする領域拡張法を用いて第2欠陥領域R3を取得するため、第2欠陥F2の検出漏れを抑えつつ、第2欠陥F2の形状を精度良く検出することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0054】
例えば、上記した実施形態では、第1のディープニューラルネットワークを使用して取得した第1欠陥F1に対応する画素領域を拡張して第1欠陥領域R1を取得したが、例えば、第1のディープニューラルネットワークを使用して取得した第1欠陥F1の重心位置に対応する画素領域を取得し、当該画素領域を開始点とする領域拡張法を実行することで第1欠陥領域R1を取得してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…欠陥評価装置、11…撮像部、12…ステージ、13…Xステージ、14…Yステージ、15…撮像カメラ、16…照明装置、20…制御部、21…カメラ制御部、22…領域抽出部、23…第1欠陥決定部、24…検出部、25…評価部、26…記憶装置、F1…第1欠陥、F2…第2欠陥、P…プリント基板、L…ランド、R0…評価対象領域、R1…第1欠陥領域、R2…評価実施領域、R3…第2欠陥領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6