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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】フルオロポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20240313BHJP
   C08F 14/18 20060101ALI20240313BHJP
   C08F 4/34 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08F2/18
C08F14/18
C08F4/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021537686
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028267
(87)【国際公開番号】W WO2021024797
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019145400
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 有香里
(72)【発明者】
【氏名】井坂 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】善家 佑美
(72)【発明者】
【氏名】深川 亮一
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104744622(CN,A)
【文献】特開平01-129005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0004369(US,A1)
【文献】特開平06-041247(JP,A)
【文献】米国特許第02952669(US,A)
【文献】特公昭49-028675(JP,B1)
【文献】特開昭52-000887(JP,A)
【文献】特開平03-056512(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101643523(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
XRfC(=O)OOC(=O)RfY (1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、Rf及びRfは、独立に、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイド、及び、下記式(2):
RfCOOH (2)
(式中、ZはH又はFであり、ZがHのとき、Rfは、炭素数1~3の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、ZがFのとき、Rfは、炭素数1又は2の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素カルボン酸の存在下に、pHが3.0以下である水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素カルボン酸が、CCOOH、CFCOOH及びHCCOOHからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記含フッ素カルボン酸が、CFCOOHである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記水性媒体のpHが2.90以下である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系のジアシルパーオキサイドを重合開始剤として用いる重合体の製造方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ジ(ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド(重合開始剤)及びω-ヒドロパーフルオロヘプタン酸の存在下に水中でテトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンの共重合を行ったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-41247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、重合開始剤の利用効率が向上したフルオロポリマーの製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、また、環境負荷が低減されたフルオロポリマーの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下記式(1):
XRfC(=O)OOC(=O)RfY (1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、Rf及びRfは、独立に、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイドの存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含み、
上記水性媒体のpHが2.5未満であるフルオロポリマーの製造方法に関する。
上記水性媒体のpHが2.2以下であることが好ましい。
【0007】
本開示は、下記式(1):
XRfC(=O)OOC(=O)RfY (1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、Rf及びRfは、独立に、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイド、及び、下記式(2):
RfCOOH (2)
(式中、ZはH又はFであり、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素カルボン酸の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法にも関する。
式(2)において、ZがHのとき、Rfの炭素数は1~3であり、ZがFのとき、Rfの炭素数は1又は2であることが好ましい。
上記含フッ素カルボン酸が、CCOOH、CFCOOH及びHCCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記水性媒体のpHが2.90以下であることが好ましい。
【0008】
本開示は、(C11COO)、(CCOO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素ジアシルパーオキサイドの存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを懸濁重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法にも関する。
上記水性媒体のpHが2.90以下であることが好ましい。
上記懸濁重合を、下記式(3):
RfCOOH (3)
(式中、ZはH又はFであり、ZがHのとき、Rfは、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、ZがFのとき、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である)で表される含フッ素カルボン酸の存在下に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、重合開始剤の利用効率が向上したフルオロポリマーの製造方法を提供することができる。
本開示によれば、環境負荷が低減されたフルオロポリマーの製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0011】
本開示は、下記式(1):
XRfC(=O)OOC(=O)RfY (1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、Rf及びRfは、独立に、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイド(以下、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)ともいう。)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含み、
上記水性媒体のpHが2.5未満であるフルオロポリマーの製造方法(以下、第1の製造方法ともいう。)に関する。
第1の製造方法においては、上記水性媒体のpHが2.5未満であることにより、重合開始剤である含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の加水分解を抑制することができる。その結果、同じ使用量で、より多くの含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を起点としてフルオロモノマーを重合させることができ、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の利用効率を向上させることができる。
【0012】
式(1)において、X及びYは同一であっても、互いに異なってもよいが、同一であることが好ましい。
X及びYは、Fであることが好ましい。
【0013】
式(1)において、Rf及びRfは同一であっても、互いに異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0014】
Rf及びRfとしての上記パーフルオロアルキレン基は、炭素数が1~6である。上記炭素数は5以下であることが好ましく、また、2以上であることが好ましい。
【0015】
上記パーフルオロアルキレン基は、エーテル結合を有してもよい。
上記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0016】
Rf及びRfとしての上記パーフルオロアルキレン基としては、例えば、-(CF-(nは1~6の整数である。)、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CFCF-、-CFCF(CF)CF-、-CF(CF)CFCFCF-、-CFCF(CF)CFCF-、-CF(CF)CF(CF)CF-、-CF(CF)CFCFCFCF-、-CFCF(CF)CFCFCF-、-CFCFCF(CF)CFCF-、-CF(CF)CFCF(CF)CF-、-C2lOC2m-(l及びmは独立に1~5の整数であり、l+mは2~6の整数である。)等が挙げられる。
上記-C2lOC2m-で表される基としては、-(CFO(CF-(l及びmは上記のとおり。)、-CF(CF)OCF(CF)CF-*、-COCF(CF)CF-*(*はX又はYと結合する側を表す。)等が好ましい。
上記パーフルオロアルキレン基としては、なかでも、上記-(CF-が好ましい。
【0017】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)は、下記式(1-1):
X(CFC(=O)OOC(=O)(CFY (1-1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、a及びbは、独立に、1~6の整数である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイドであることが好ましい。
【0018】
式(1-1)において、a及びbは、同一であっても、互いに異なってもよいが、同一であることが好ましい。
a及びbの上限は、5であることが好ましく、下限は、2であることが好ましい。
【0019】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)としては、(HC12COO)、(C13COO)、(HC10COO)、(C11COO)、(HCCOO)、(CCOO)、(HCCOO)、(CCOO)、(HCCOO)、(CCOO)、(HCFCOO)、(CFCOO)、{(CFCFOCF(CF)COO}、{(CFCFOCCOO}等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、(HC12COO)、(C11COO)、(CCOO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、{H(CFCOO}、{F(CFCOO}、{F(CFCOO}及び{F(CFCOO}からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、環境負荷を低減できる点で、{F(CFCOO}、{F(CFCOO}及び{F(CFCOO}からなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、{F(CFCOO}及び{F(CFCOO}からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)は、また、(C11COO)、(CCOO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、(C11COO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、{F(CFCOO}及び{F(CFCOO}からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0020】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の使用量は、目的のフルオロポリマーに応じて決定することができるが、例えば、フルオロモノマーの合計量に対し、0.01~1質量%であってよい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)は、一度に全量を投入してもよく、複数回に分けて投入してもよい。
【0021】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)は、水性媒体に直接投入してもよく、溶媒に溶解し、溶液の形態で投入してもよい。安全性の観点からは、溶液の形態で投入することが好ましい。
【0022】
上記溶媒は、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を溶解できるものであればよく、非フッ素溶媒でもよいし、含フッ素溶媒でもよい。
【0023】
非フッ素溶媒としては、従来公知の溶媒、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒が挙げられる。
【0024】
連鎖移動による副反応の抑制の観点から、上記溶媒としては含フッ素溶媒が好ましい。
上記含フッ素溶媒としては、分子中にフッ素原子を有し、特に限定されるものではないが、沸点が25~100℃であるものが好ましい。上記含フッ素溶媒は芳香族、脂肪族のいずれであってもよい。
上記含フッ素溶媒としては特に限定されず、例えば、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、含フッ素エーテル、パーフルオロパーフルオロベンゼン等が挙げられる。特にパーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、ハイドロフルオロカーボン及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0025】
上記パーフルオロカーボンとしては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0026】
上記含フッ素エーテルとしては、下記一般式に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4):
Rf-O-R (4)
(式中、Rfは、炭素数2~6のフルオロアルキル基又はアルキル基を表す。Rは、炭素数1~4のフルオロアルキル基又はアルキル基を表す。ただし、RfとRの炭素数の合計は8以下である。)で示される含フッ素エーテルが挙げられる。
【0027】
上記一般式(4)中のRfは、炭素数2~5のフルオロアルキル基又はアルキル基であることが好ましく、炭素数3~4のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数4のフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
また、一般式(4)中のRは、炭素数1~3のフルオロアルキル基又はアルキル基であることが好ましく、炭素数1又は2のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1のアルキル基であることが更に好ましい。
そして、式(4)中のRfとRの炭素数の合計は、3~7が好ましく、4~6がより好ましく、5が更に好ましい。
上記含フッ素エーテルは、フッ素原子の合計数が水素原子とフッ素原子の合計数に対して50%以上であることが好ましい。より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは70%以上である。
【0028】
上記含フッ素エーテルとしては、下記式(5-1):
F(CFO(CHH (5-1)
(式中、pは2~6の整数である。qは1~4の整数である。)で示される含フッ素エーテル、下記式(5-2):
H(CFO(CFF (5-2)
(式中、pは2~6の整数である。qは1~4の整数である。)で示される含フッ素エーテル、下記式(5-3):
H(CFO(CHH (5-3)
(式中、pは2~6の整数である。qは1~4の整数である。)で示される含フッ素エーテル、下記式(5-4):
(CFCHO(CFH (5-4)
(式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表す。pは1~5の整数である。qは1~4の整数である。)で示される含フッ素エーテル、(CFCHOCH、(CFCFOCH、CHFCFCHOCFCHF、CFCHFCFOCH、及び、CFCHFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
より好ましくは、COCH、COC、COCH、(CFCFOCHであり、更に好ましくは、COCHである。
【0029】
上記含フッ素エーテルは、沸点が-20~85℃であることが好ましく、より好ましくは、0~85℃であり、更に好ましくは4~85℃である。
【0030】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、任意で有機溶媒を含むものであってよい。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒や、フッ素含有有機溶媒が挙げられる。
上記水性媒体は、上述した含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を溶解させるための溶媒を含んでもよい。
【0031】
第1の製造方法においては、上記水性媒体のpHが2.5未満である。これにより、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の加水分解を抑制することができ、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の重合開始剤としての利用効率を向上させることができる。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の利用効率が一層向上する点で、上記pHは、2.2以下であることが好ましい。
また、重合槽が腐食しにくい点で、上記pHは、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.4以上であることが更により好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
本明細書において、水性媒体のpHは、pHメーターを用いて測定することができる。
【0032】
第1の製造方法においては、上記重合の開始から終了までの期間中、pHを上述の範囲内に維持することが好ましい。
本明細書において、重合の開始とは、反応系にフルオロモノマー及び重合開始剤の両方が存在することとなった最初の時点を意味し、重合の終了とは、圧力開放により反応系の圧力が大気圧となった時点を意味する。
【0033】
上記pHの調整方法としては、例えば、上記水性媒体に酸性物質を添加する方法が挙げられる。上記酸性物質としては、無機酸、有機酸が挙げられ、カルボン酸が好ましく、含フッ素カルボン酸がより好ましい。
【0034】
上記含フッ素カルボン酸としては、下記式(3):
RfCOOH (3)
(式中、ZはH又はFであり、ZがHのとき、Rfは、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、ZがFのとき、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である)で表される含フッ素カルボン酸(以下、含フッ素カルボン酸(3)ともいう。)が好ましい。
第1の製造方法における重合を含フッ素カルボン酸(3)の存在下に行うことは、好適な態様の1つである。
【0035】
式(3)において、ZがHのとき、Rfは、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。ZがHのとき、Rfの炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
【0036】
式(3)において、ZがFのとき、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。ZがFのとき、Rfの炭素数は、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0037】
上記パーフルオロアルキレン基は、エーテル結合を有してもよい。
上記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0038】
Rfとしての上記パーフルオロアルキレン基としては、例えば、-(CF-(ZがHのとき、dは1~6の整数であり、ZがFのとき、dは1~5の整数である。)、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CFCF-、-CFCF(CF)CF-、-CF(CF)CFCFCF-、-CFCF(CF)CFCF-、-CF(CF)CF(CF)CF-、-CF(CF)CFCFCFCF-、-CFCF(CF)CFCFCF-、-CFCFCF(CF)CFCF-、-CF(CF)CFCF(CF)CF-、-C2jOC2k-(ZがHのとき、j及びkは独立に1~5の整数であり、j+kは2~6の整数である。ZがFのとき、j及びkは独立に1~4の整数であり、j+kは2~5の整数である。)等が挙げられる。
上記パーフルオロアルキレン基としては、なかでも、上記-(CF-が好ましい。
【0039】
含フッ素カルボン酸(3)は、下記式(3-1):
(CFCOOH (3-1)
(式中、ZはH又はFであり、ZがHのとき、dは1~6の整数であり、ZがFのとき、dは1~5の整数である)で表される含フッ素カルボン酸であることが好ましい。
【0040】
式(3-1)において、ZがHのとき、dは1~6の整数であり、1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
【0041】
式(3-1)において、ZがFのとき、dは1~5の整数であり、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0042】
含フッ素カルボン酸(3)としては、HC12COOH、HC10COOH、C11COOH、HCCOOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH、HCFCOOH、CFCOOHが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
なかでも、H(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、重合開始剤の利用効率の向上と環境負荷の低減を両立できる点で、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、H(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が更により好ましく、H(CFCOOH、F(CFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
含フッ素カルボン酸(3)は、また、HC12COOH、C11COOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、H(CFCOOH、F(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、F(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0043】
含フッ素カルボン酸(3)の使用量は、上記水性媒体のpHを上述した範囲内にすることが可能な量であればよいが、例えば、水性媒体に対し、0.06~2.0質量%であってよく、0.07~1.0質量%であってもよい。
【0044】
上記フルオロモノマーは、特に限定されるものではないが、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、三フッ化エチレン、フッ化ビニル、下記式(6-1):
CF=CFO(CFCF(Y)O)(CFF (6-1)
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは0~2の整数である。nは1~4の整数である。)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、下記式(6-2):
CH=CF(CF (6-2)
(式中、Zはフッ素原子又は水素原子を表す。nは1~8の整数である。)で示される単量体、及び、下記式(6-3):
CH=CH(CF (6-3)
(式中、Zはフッ素原子又は水素原子を表す。nは1~8の整数である。)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロモノマーを含有していることが好ましい。
【0045】
上記フルオロモノマーとしては、加水分解性の官能基を含む含フッ素モノマーを用いることもできる。
上記加水分解性の官能基を含む含フッ素モノマーとしては、下記式(7):
CR1112=CR13(CR1415-(O)-R10-Z (7)
(式中、R11、R12、R13、R14及びR15は、同一若しくは異なって、F又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を表し、R10は、主鎖に酸素原子を有していてもよい炭素数1~8の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキレン基を表し、aは、0~6の整数を表し、bは、0又は1の整数を表し、Zは加水分解性の官能基を表す。)で表されるモノマーが好ましい。
上記加水分解性の官能基を含む含フッ素モノマーとしては、更に、下記(7-1)~(7-3)の構造を有するものが好ましい。
CF=CF-(CF-Z (7-1)
CF=CF-(CFC(CF)F)-Z (7-2)
CF=CF(CF-O-(CFCFXO)-(CF-Z (7-3)
(各式中、Xは、F又は-CFを表し、cは0~8の整数を表し、dは1~2の整数を表し、eは0~2の整数を表し、fは0~3の整数を表し、gは1~8の整数を表し、Zは加水分解性の官能基を表す。)
上記Zとしては、-SOF、-SOCl、-COOA、-PO(式中、Aは、フルオロアルキル基を表し、A及びAは、同一若しくは異なって、フルオロアルキル基を表す。)が好ましい。
上記加水分解性の官能基を含む含フッ素モノマーとしては、下記式で表されるものがより好ましい。
CF=CF-SO
CF=CFCF-SO
CF=CFOCFCFSO
CF=CFOCFCFCFCFSO
CF=CFCFOCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSO
CF=CFOCFCFCOOCH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOCH
【0046】
上記フルオロモノマーとしては、環構造を有するモノマーや環化重合性モノマーを用いてもよい。
例えば、環構造を有するモノマーとしては、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール等が挙げられる。
上記環化重合性モノマーとしては、パーフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ[(1-メチル-3-ブテニル)ビニルエーテル]、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、1,1-[(ジフルオロメチレン)ビス(オキシ)][1,2,2-トリフルオロエテン]等が挙げられる。
【0047】
上記式(6-1)におけるmは、0又は1の整数であることが好ましく、より好ましくは0である。また、nは、1~3の整数であることが好ましい。
上記式(6-2)におけるZは、水素原子であることが好ましい。また、nは1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましい。
上記式(6-3)におけるZは、フッ素原子であることが好ましい。また、nは1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましい。
【0048】
第1の製造方法においては、上記フルオロモノマーとともに、非フッ素化モノマーを重合してもよい。上記非フッ素化モノマーとしては、例えば、エチレン〔Et〕、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0049】
上記フルオロポリマーは、結晶性高分子であってもよいし、非晶性高分子であってもよい。上記、結晶性高分子は、結晶の融解による融点をもつ高分子であり、非晶性高分子とは、結晶の融解による融点を明確にはもたない高分子である。
【0050】
上記フルオロポリマーは、フッ素樹脂であることが好ましい。上記フッ素樹脂は含フッ素モノマーに基づく重合単位を有するものであれば特に限定されない。
【0051】
上記フルオロポリマーは、融点が100~347℃であってよい。上記融点の下限は、150℃であってもよく、180℃であってもよく、200℃であってもよい。上限は、322℃であってもよく、320℃であってもよい。
上記融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めることができる。
【0052】
上記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、(パーフルオロメチル)ビニルエーテル、(パーフルオロエチル)ビニルエーテル、(パーフルオロプロピル)ビニルエーテル、三フッ化エチレン、フッ化ビニル、下記式(6-1):
CF=CFO(CFCF(Y)O)(CFF (6-1)
(式中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは0~2の整数である。nは1~4の整数である。)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、下記式(6-2):
CH=CF(CF (6-2)
(式中、Zはフッ素原子又は水素原子を表す。nは1~8の整数である。)で示される単量体、及び、下記式(6-3):
CH=CH(CF (6-3)
(式中、Zはフッ素原子又は水素原子を表す。nは1~8の整数である。)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロモノマーに基づく重合単位を有するフルオロポリマーであることが好ましい。
なお、本明細書において、モノマー(単量体)に基づく重合単位とは、モノマー(単量体)分子中の炭素-炭素不飽和二重結合が単結合になった形態を表している。
【0053】
上記フルオロポリマーは、非フッ素化モノマーに基づく重合単位を有してもよい。上記フルオロポリマーは、エチレン〔Et〕、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素化モノマーに基づく重合単位を有することも好ましい形態の一つである。
【0054】
上記フルオロポリマーは、特に限定されるものではないが、例として、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、TFE/HFP共重合体、TFE/HFP/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のTFE/HFP系共重合体〔FEP〕、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、Et/TFE共重合体〔ETFE〕、TFE/HFP/VdF共重合体〔THV〕、VdF/TFE共重合体〔VT〕、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、及び、CTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/TFE共重合体〔CPT〕等が挙げられる。
【0055】
上記フルオロポリマーは、溶融加工可能なフルオロポリマーであることが好ましい。本明細書において、溶融加工可能であるとは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
上記溶融加工可能なフルオロポリマーは、メルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~50g/10分であることがより好ましい。
本明細書において、MFRは、ASTM D1238に準拠し、メルトインデクサーを用いて、フルオロポリマーの種類によって定められた測定温度(例えば、PFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は5kg)において内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0056】
上記フルオロポリマーは、ETFE、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、FEPであることが更に好ましい。
上記フルオロポリマーは、パーフルオロポリマーであることも好ましい。
【0057】
上記ETFEは、Et単位:TFE単位のモル比が20:80~80:20であるものが好ましい。より好ましくは、Et単位:TFE単位のモル比が35:65~55:45である。ETFEは、TFEに基づく重合単位と、Etに基づく重合単位とを含む共重合体であり、他のフルオロモノマー又は非フッ素化モノマーに基づく重合単位を有していてもよい。
【0058】
上記他のフルオロモノマー又は非フッ素化モノマーとしては、Et及びTFEの両方に付加し得るものであれば特に限定されないが、炭素数3~10の含フッ素ビニルモノマーが使用しやすく、例えば、ヘキサフルオロイソブチレン、CH=CFCH、HFP等が挙げられる。中でも、下記式(8):
CH=CH-Rf (8)
(式中、Rfは炭素数4~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される含フッ素ビニルモノマーも好ましい形態の一つである。また、非フッ素化モノマーとしては、下記式(9):
CH=CH-R (9)
(式中、Rは、特に炭素数は限定されず、芳香環を含んでいてもよく、カルボニル基、エステル基、エーテル基、アミド基、シアノ基、水酸基又はエポキシ基を含んでいてもよい。Rはフッ素原子を含まない。)で表されるビニルモノマーであってもよい。
【0059】
また、ETFEは、Et/TFE/HFP共重合体〔EFEP〕であることも好ましい形態の一つであり、更に他のフルオロモノマー(HFPを除く)、あるいは、非フッ素化モノマーに基づく重合単位を有するものであってもよい。他のフルオロモノマー及び非フッ素化モノマーは、ポリマー全体の10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。Et単位:TFE単位:その他のフルオロモノマー及び非フッ素化モノマーに基づく単量体単位のモル比は、31.5~54.7:40.5~64.7:0.5~10であることが好ましい。
【0060】
上記FEPは、HFP単位が2質量%を超え、20質量%以下であることが好ましく、8~15質量%であることがより好ましい。
【0061】
上記PFAにおけるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、炭素数1~6のアルキル基を有するものが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)がより好ましい。上記PFAは、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が2質量%を超え、15質量%以下であることが好ましく、2.5~8.0質量%であることがより好ましい。
【0062】
上記FEP又はPFAは、それぞれ上述の組成を有するものであれば、更に、その他の単量体を重合させたものであってよい。上記その他の単量体として、例えば、上記FEPである場合には、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が挙げられ、上記PFAである場合、HFPが挙げられる。上記その他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0063】
上記FEP又はPFAと重合させるその他の単量体は、その種類によって異なるが、通常、得られるフルオロポリマーの2質量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は1.5質量%である。
【0064】
上述した共重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0065】
上記重合は、水性媒体中で実施可能な方法であればよく、懸濁重合、乳化重合等であってよく、懸濁重合であることが好ましい。
【0066】
上記重合は、例えば、反応容器に、上記水性媒体、上記フルオロモノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応容器の内容物を撹拌し、そして反応容器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。界面活性剤、懸濁安定剤、連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤等を仕込むことも可能である。重合は、回分式重合、半回分式重合又は連続式重合であってよい。なお、重合反応に用いられる反応原料は重合反応開始後に断続的又は連続的に加えてもよい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)は、溶媒に溶解させて反応容器に投入してもよい。
【0067】
上記連鎖移動剤としては、例えば、イソペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素;アセトン等を用いることができる。
【0068】
上記重合反応における、重合温度は特に限定されないが、0~100℃であることが好ましく、10~90℃であることがより好ましい。重合圧力も特に限定されないが、0.1~10MPaであることが好ましく、0.3~5MPaであることがより好ましい。
なお、上記重合温度は、反応容器内の水性媒体の温度であり、上記重合圧力は、反応容器内の圧力である。
【0069】
上記重合の終了後に、必要に応じてフルオロポリマーの分離、洗浄、乾燥等の後処理を行ってもよい。
【0070】
本開示は、下記式(1):
XRfC(=O)OOC(=O)RfY (1)
(式中、X及びYは、独立に、H又はFであり、Rf及びRfは、独立に、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素ジアシルパーオキサイド(含フッ素ジアシルパーオキサイド(1))、及び、下記式(2):
RfCOOH (2)
(式中、ZはH又はFであり、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)で表される含フッ素カルボン酸(以下、含フッ素カルボン酸(2)ともいう。)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法(以下、第2の製造方法ともいう。)にも関する。
第2の製造方法においては、含フッ素カルボン酸(2)を共存させることにより、重合開始剤である含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の加水分解を抑制することができる。その結果、同じ使用量で、より多くの含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を起点としてフルオロモノマーを重合させることができ、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の利用効率を向上させることができる。
また、含フッ素カルボン酸(2)の炭素数が少ないので、環境負荷を低減することができる。
【0071】
第2の製造方法における含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)、水性媒体、フルオロモノマー及びフルオロポリマーとしては、第1の製造方法について説明した含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)、水性媒体、フルオロモノマー及びフルオロポリマーと同様のものが採用できる。
【0072】
第2の製造方法における重合は、含フッ素カルボン酸(2)の存在下に実施する。これにより、重合開始剤の利用効率の向上と環境負荷の低減を両立することができる。
【0073】
式(2)において、Rfとしての上記パーフルオロアルキレン基は、炭素数が1~5である。上記炭素数は、1~3であることが好ましい。
また、ZがHのとき、Rfの炭素数は1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。ZがFのとき、Rfの炭素数は1又は2であることが好ましい。
【0074】
上記パーフルオロアルキレン基は、エーテル結合を有してもよい。
上記パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0075】
Rfとしての上記パーフルオロアルキレン基としては、例えば、-(CF-(cは1~5の整数である。)、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CFCF-、-CFCF(CF)CF-、-CF(CF)CFCFCF-、-CFCF(CF)CFCF-、-CF(CF)CF(CF)CF-、-C2hOC2i-(h及びiは独立に1~4の整数であり、h+iは2~5の整数である。)等が挙げられる。
上記パーフルオロアルキレン基としては、なかでも、上記-(CF-が好ましい。
【0076】
含フッ素カルボン酸(2)は、下記式(2-1):
(CFCOOH (2-1)
(式中、ZはH又はFであり、cは1~5の整数である。)で表される含フッ素カルボン酸であることが好ましい。
【0077】
式(2-1)において、cは1~5の整数であり、1~3の整数であることが好ましい。
また、ZがHのとき、cは1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。ZがFのとき、cは1又は2であることが好ましい。
【0078】
含フッ素カルボン酸(2)としては、HC10COOH、C11COOH、HCCOOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH、HCFCOOH、CFCOOHが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
なかでも、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、H(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、H(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH、HCFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、H(CFCOOH、F(CFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
含フッ素カルボン酸(2)は、また、C11COOH、CCOOH、HCCOOH、CCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、F(CFCOOH、F(CFCOOH、H(CFCOOH、F(CFCOOH及びCFCOOHからなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0079】
含フッ素カルボン酸(2)の使用量は、例えば、水性媒体に対し、0.01~2.0質量%であってよく、0.06~2.0質量%であることが好ましく、0.07~1.0質量%であることがより好ましい。
【0080】
第2の製造方法においては、上記水性媒体のpHが3.1以下であってよい。ただし、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の加水分解を一層抑制することができ、含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の重合開始剤としての利用効率を一層向上させることができる点からは、上記水性媒体のpHが2.90以下であることが好ましい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)の利用効率がより一層向上する点で、上記pHは、2.5未満であることがより好ましく、2.2以下であることが更に好ましい。
また、重合槽が腐食しにくい点で、上記pHは、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.4以上であることが更により好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
【0081】
第2の製造方法においては、上記重合の開始から終了までの期間中、pHを上述の範囲内に維持することが好ましい。
【0082】
上記pHの調整方法としては、例えば、含フッ素カルボン酸(2)の使用量を調整する方法が挙げられる。
【0083】
第2の製造方法における重合のその他の条件や、後処理については、第1の製造方法について説明したのと同様の条件や処理が採用できる。
【0084】
本開示は、(C11COO)、(CCOO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素ジアシルパーオキサイド(以下、含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)ともいう。)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを懸濁重合することにより、フルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法(以下、第3の製造方法ともいう。)にも関する。
第3の製造方法では、炭素数が少ない含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)を使用するので、環境負荷を低減することができる。
【0085】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)は、{F(CFCOO}、{F(CFCOO}及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、環境負荷を一層低減できる点で、{F(CFCOO}及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)は、また、(C11COO)及び(CCOO)からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、{F(CFCOO}及び{F(CFCOO}からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0086】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)の使用量は、目的のフルオロポリマーに応じて決定することができるが、例えば、フルオロモノマーの合計量に対し、0.01~1質量%であってよい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)は、一度に全量を投入してもよく、複数回に分けて投入してもよい。
【0087】
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)は、水性媒体に直接投入してもよく、溶媒に溶解し、溶液の形態で投入してもよい。安全性の観点からは、溶液の形態で投入することが好ましい。
【0088】
上記溶媒としては、第1の製造方法において含フッ素ジアシルパーオキサイド(1)を溶解する溶媒として例示したものが使用できる。
【0089】
第3の製造方法における水性媒体、フルオロモノマー及びフルオロポリマーとしては、第1の製造方法について説明した水性媒体、フルオロモノマー及びフルオロポリマーと同様のものが採用できる。
【0090】
第3の製造方法においては、上記水性媒体のpHが3.1以下であってよい。ただし、含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)の加水分解を抑制することができ、含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)の重合開始剤としての利用効率を向上させることができる点からは、上記水性媒体のpHが2.90以下であることが好ましい。
含フッ素ジアシルパーオキサイド(10)の利用効率が一層向上する点で、上記pHは、2.5未満であることがより好ましく、2.2以下であることが更に好ましい。
また、重合槽が腐食しにくい点で、上記pHは、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.4以上であることが更により好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
【0091】
第3の製造方法においては、上記重合の開始から終了までの期間中、pHを上述の範囲内に維持することが好ましい。
【0092】
第3の製造方法における懸濁重合は、下記式(3):
RfCOOH (3)
(式中、ZはH又はFであり、ZがHのとき、Rfは、炭素数1~6の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、ZがFのとき、Rfは、炭素数1~5の、エーテル結合を有してもよい直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキレン基である)で表される含フッ素カルボン酸(3)の存在下に行うことが好ましい。
含フッ素カルボン酸(3)の具体例や好ましい例は、第1の製造方法について説明したのと同様である。
【0093】
含フッ素カルボン酸(3)の使用量は、例えば、水性媒体に対し、0.01~2.0質量%であってよく、0.06~2.0質量%であることが好ましく、0.07~1.0質量%であることがより好ましい。
【0094】
第3の製造方法においては、含フッ素カルボン酸(3)の使用量を調整することにより、水性媒体のpHを上述の範囲内に調整してよい。
【0095】
第3の製造方法における懸濁重合のその他の条件や、後処理については、第1の製造方法について説明した条件や処理に準じた条件及び処理が採用できる。
【0096】
次に本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
各数値は以下の方法により測定した。
【0098】
(pH)
pHメーター(佐藤計量器製作所社製、SK-620PHII 6430-00)を用いて、重合の開始前及び終了後の水性媒体(水層)のpHを測定した。
【0099】
(MFR)
ASTM D1238に準拠し、メルトインデクサーを用いて、372℃、荷重5kgにて内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として求めた。
【0100】
参考例
内容積4.1Lのオートクレーブに蒸留水1095gを投入し、充分に窒素置換を行った後、H(CFCOOHで表される含フッ素カルボン酸0.47g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)1133g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)12.34gを仕込み、系内を32℃、攪拌速度580rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン(TFE)を120g仕込み、その後、{F(CFCOO}で表される重合開始剤のパーフルオロヘキサン(PFH)溶液(10質量%溶液)9.66gを投入して重合を開始し、反応開始から2時間後及び4時間後に同量の開始剤を追加投入した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン(TFE)を連続して供給し、系内圧力を1.03MPaに保った。そして、テトラフルオロエチレン(TFE)を合計量172g追加で仕込んだところで反応を終了した。反応時間は4.5時間であった。
重合終了後、常圧に戻るまで系内ガスを放出し、窒素置換をした後に、オートクレーブを開け、白色のフルオロポリマー粉体を取り出し、150℃の電気炉で12時間乾燥させた。得られたフルオロポリマーは、193gであった。
水性媒体のpH及び得られたフルオロポリマーのMFRを表1に示す。
【0101】
参考例2~3、8~10、及び、実施例4~7、11~15
重合開始剤の種類及び量、含フッ素カルボン酸の種類及び量を表1及び2に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして重合を行い、フルオロポリマーを得た。表中のHFE7100は、COCHで表されるハイドロフルオロエーテルを指す。
水性媒体のpH及び得られたフルオロポリマーのMFRを表1及び2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
重合開始剤量及びフルオロモノマー量が同程度である場合、得られるフルオロポリマーのMFRが大きい(分子量が小さい)ことは、より多くの重合開始剤を起点とした重合反応が起こっていること、言い換えると、重合開始剤がより有効に利用されていることを意味する。