(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】空気循環装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20240313BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F7/007 B
(21)【出願番号】P 2021551256
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036660
(87)【国際公開番号】W WO2021065808
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019180378
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇多 全史
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】川原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 喜一郎
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-053102(JP,A)
【文献】特開2000-121139(JP,A)
【文献】特開平11-184420(JP,A)
【文献】特開平07-332750(JP,A)
【文献】特開2000-176339(JP,A)
【文献】特開2018-110667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気を吸引する吸引部(11)と、
前記吸引部(11)が吸引した空気を渦輪状に室内に吹き出す吹き出し部(12)とを備え、
少なくとも、吹き出した前記渦輪(41)を室内の壁面(31)に到達させると共に、前記壁面(31)に衝突して崩壊した前記渦輪(41)の空気を前記吸引部(11)の側に押し戻し、当該空気の少なくとも一部を前記吸引部(11)によって再び吸引させる
ことによって前記室内の空気を循環させる第1モードを備え、
前記吸引部(11)及び前記吹き出し部(12)は、室内における前記壁面(31)とは異なる他の壁面に設けられていることを特徴とする空気循環装置。
【請求項2】
請求項1の空気循環装置において、
前記吹き出し部(12)は、前記渦輪(41)の体積及び前記渦輪(41)の発生頻度の少なくとも一方を変更可能であるように構成されていることを特徴とする空気循環装置。
【請求項3】
請求項1又は2の空気循環装置において、
吹き出した前記渦輪(41)を、室内の壁面(31)に到達する前に消滅させると共に、前記壁面(31)に到達する前に崩壊した前記渦輪(41)の空気を前記吸引部(11)の側に押し戻し、当該空気の少なくとも一部を前記吸引部(11)によって再び吸引させる第2モードを更に備えることを特徴とする空気循環装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つの空気循環装置において、
人の位置を検知する人検知部(23)を備え、
前記人検知部(23)が検知した人に向かって前記渦輪(41)を吹き出す第3モードを更に備えることを特徴とする空気循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の空気を循環させる手段としては、空間内に配置したダクトを利用する方法がある。例えば、非特許文献1において、空間内にダクトを配置し、空気吹出口及び空気吸込口を設けて空気循環を行うことが開示されている(87ページ、
図3等)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】宇宙航空研究開発機構特別資料(Journal Name) JAXA Special Publication(巻) JAXA-SP-12-015 「国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダクトを用いて空間内(人の居住する室内等)の全体に空気を循環させるためには、当該空間の全体にわたってダクトを配置し、且つ、ダクトを通じて空気を循環させるための送風機を設けることが必要であり、高コストであると共にエネルギー消費が大きい。
【0005】
本開示の目的は、ダクトを削減又は不要とする空気循環装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、室内空気を吸引する吸引部(11)と、吸引部(11)が吸引した空気を渦輪状に室内に吹き出す吹き出し部(12)とを備える空気循環装置を対象とする。少なくとも、吹き出した渦輪(41)を室内の壁面(31)に到達させる第1モードを備えるように構成される。
【0007】
第1の態様では、渦輪により空気を循環でき、ダクトを削減できる又は不要とすることができる。
【0008】
本開示の第2態様は、上記第1の態様において、吹き出し部(12)は、渦輪(41)の体積及び渦輪(41)の発生頻度の少なくとも一方を変更可能であるように構成されているものである。
【0009】
第2の態様では、渦輪の体積及び発生頻度の少なくとも一方を変更することにより、空気循環の量等を制御することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、吹き出した前記渦輪(41)を、室内の壁面(31)に到達する前に消滅させる第2モードを更に備えるように構成されているものである。
【0011】
第3の態様では、渦輪が壁面にまで到達しないように制御することにより、室内において、空気循環が行われる範囲等を制御することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第1~3のいずれか1つの態様において、人の位置を検知する人検知部(23)を備え、人検知部(23)が検知した人に向かって渦輪(41)を吹き出す第3モードを更に備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の空気循環装置を用いた渦輪による空気循環を模式的に示す図であり、第1モードについて示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の空気循環装置の構成をより具体的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の空気循環装置による渦輪の発生について示す図である。
【
図4】
図4は、
図2の空気循環装置による渦輪の発生について示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の空気循環装置の第2モードについて示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の空気循環装置の第3モードについて示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の空気循環装置を低温倉庫において用いる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
図1は、本実施形態の空気循環装置(10)により空間(30)内の空気を循環させることについて模式的に示す図である。
図2は空気循環装置(10)についてより具体的に示し、
図3及び
図4は吹き出し部(12)について更に詳し示し、渦輪の発生に関して説明する図である。
【0015】
空気循環装置(10)は、室内空気を吸引する吸引部(11)と、吸引部(11)が吸引した空気を渦輪状に室内に吹き出す吹き出し部(12)とを備え、少なくとも、吹き出した渦輪(41)を室内の壁面(31)に到達させる第1モードを備える。
【0016】
空気循環装置(10)は、矢印(44)により示すように空間(30)内の空気(室内空気)を吸引し、当該空気を渦輪(41)として空間(30)内に吹き出す。吹き出された渦輪(41)は、空間(30)における空気循環装置(10)とは反対側の壁面(31)にまで到達し、壁面(31)と衝突して渦輪の形態が崩壊する。これにより、空気循環装置(10)の側から対向する壁面(31)の側に向かって(
図1では、左側から右側に向かって)一定量の空気が搬送される。渦輪(41)の吹き出しが繰り返し行われると、空気が順次搬送されることになる。
【0017】
壁面(31)に衝突して崩壊した渦輪(41)の空気は、矢印(42)及び矢印(43)に示すように、壁面(31)の側から空気循環装置(10)の側に押し戻される。押し戻された空気の少なくとも一部が、矢印(44)に示すように、再び空気循環装置(10)に吸引される。
【0018】
以上のようにして、空気循環装置(10)により、空間(30)内の空気を循環させることができる。
【0019】
渦輪(41)を利用すると、空気を塊のように安定して搬送することができる。従って、空気循環のために、ダクトを配置することは不要である。この結果、ダクト及び空気循環用のファンの費用が不要となり、ファンを動作させるための消費エネルギーも削減できる。更に、ダクトの設置に必要であったスペースを居住用等の他の目的に用いることもできる。
【0020】
また、ファン等により空気の流れを発生させて空気循環を行う場合、ファンの近くでは空気流が強くなりすぎる、要求されるファンのサイズや回転数が大きくなりすぎる等の問題が生じる場合がある。また、空間(30)の使用目的によっては、強い空気流の発生が望まれない場合がある。渦輪(41)を用いた空気循環では、これらを解消できる。
【0021】
<空気循環装置の構成>
次に、
図2は、空気循環装置(10)についてより具体的に説明する図である。
【0022】
空気循環装置(10)は、空間(30)に設けられた吸引口(20)と吹き出し口(19)との間に設けられ、吸引部(11)及び吹き出し部(12)を備える。吸引口(20)、吸引部(11)、吹き出し部及び吹き出し口(19)は、順に空気通路(13)により接続されている。
【0023】
吸引部(11)は、空気を吸引するための送風機(15)と、吸引した空気の空気質を調整するする空気制御装置(16)とを備える。空気制御装置(16)は、例えば、空気の温度、湿度、成分(二酸化炭素濃度等)、清浄度(微粒子の量等)等について制御を行う。
【0024】
空気制御装置(16)により空気質が制御された空気は、空気通路(13)を通じて吹き出し部(12)に搬送される。
【0025】
吹き出し部(12)は、ケーシング(12a)を備え、ケーシング(12a)内における吹き出し口(19)と対向する位置に振動板(17)が設けられている。振動板(17)は、弾性支持部(18)によりケーシング(12a)に取り付けられている。これにより、振動板(17)は、吹き出し口(19)に対して近づいたり離れたりする方向に(
図2では左右に)移動することができる。また、振動板(17)を振動させるリニアアクチュエータ(21)が備えられている。
【0026】
更に、振動板(17)から吹き出し口(19)に向かう途中において、空気通路(13)を塞ぐことのできるダンパ(14)が設けられている。ダンパ(14)は、吸引部(11)から吹き出し部(12)に向かう空気を遮断する位置にも移動することができる。
【0027】
また、送風機(15)、空気制御装置(16)、ダンパ(14)及びリニアアクチュエータ(21)等を制御するための制御部(22)が備えられている。
【0028】
以上のような空気制御装置(16)において、送風機(15)を用いて空間(30)から吸引した空気を、ダンパ(14)及び振動板(17)の動作により渦輪(41)として空間(30)に吹き出すことができる。これについて、
図3及び
図4により更に説明する。
【0029】
図3及び
図4は、
図2における吹き出し部(12)付近を拡大して示す図である。但し、リニアアクチュエータ(21)の図示は省略している。
【0030】
図3において、ダンパ(14)は吹き出し口(19)に向かう空気通路(13)を塞いでいる。矢印(45)のように、吸引部(11)から吹き出し部(12)に空気が移動することは可能である。振動板(17)は、吹き出し口(19)とは反対側に移動した(引いた)状態となっている。
【0031】
この状態から、
図4に示すようにダンパ(14)を移動させる。つまり、吸引部(11)から吹き出し部(12)に向かう空気通路(13)を塞ぎ、吹き出し口(19)に向かう空気通路(13)は解放させる。続いて、吹き出し口(19)の側に振動板(17)を移動させる(押す)。これにより、吹き出し部(12)から空間(30)内に向かって空気が押し出され、渦輪(41)として吹き出す。
図3及び
図4の状態を繰り返すことにより、空間(30)内に繰り返し渦輪(41)を吹き出すことができる。
【0032】
渦輪(41)の体積及び発生の頻度を制御することにより、空気の循環量を変更できる。渦輪(41)の体積は、吹き出し部(12)のケーシング(12a)の容積、振動板(17)の面積等に依存する。更に、渦輪(41)の体積は、振動板(17)の移動範囲にも依存する。振動板(17)の移動範囲とは、振動板(17)について、
図3に示すように吹き出し口(19)と反対側に移動させる(引く)距離L1と、
図4に示すように吹き出し口(19)側に移動させる(押す)距離L2とを合わせた距離である。当然ながら、当該距離が大きくすることにより、渦輪(41)の体積は大きくなる。
【0033】
尚、振動板(17)の移動範囲に加えて、振動板(17)の移動速度も渦輪(41)に影響する。渦輪(41)の体積、移動速度、安定性等について、振動板(17)を制御することにより変更可能である。更に、渦輪(41)の発生頻度は、振動板(17)を動作させる頻度により制御できる。
【0034】
以上のような振動板(17)の制御については、制御部(22)により行っても良い。
図2に示すように、制御部(22)は例えば空間(30)内に設けられても良い。
【0035】
渦輪(41)を発生させるためには、十分な量の空気が必要である。このために、吸引部(11)が空間(30)から空気を吸引して吹き出し部(12)に供給している。必要量の空気を供給するために、吸引部(11)の送風機(15)及び空気制御装置(16)は、制御部(22)によって制御される。
【0036】
制御部(22)は、人間が設定した空気の循環量(具体的な循環量の数値設定、複数段階の強弱の設定からの選択等)に応じて、自動的に振動板(17)を振動させるリニアアクチュエータ(21)、送風機(15)、空気制御装置(16)等を動作させるようになっていても良い。
【0037】
<空気循環装置の動作モード>
制御部(22)により振動板(17)等を制御して、空気循環装置(10)の様々な動作モードを実行することができる。以下に、動作モードの具体例を説明する。
【0038】
(第1モード)
本実施形態の空気循環装置(10)は、少なくとも、吹き出した渦輪を室内の壁面に到達させる第1モードを備える。
図1は、空気循環装置(10)の第1モードの動作状態を示す図でもある。第1モードでは、渦輪(41)は、空間(30)における空気循環装置(10)とは反対側の壁面(31)にまで渦輪(41)が到達する。
【0039】
渦輪(41)は、空気中を所定の距離移動した後に崩壊する。従って、吹き出し部(12)から吹き出した渦輪(41)は、崩壊するよりも前に壁面(31)に到達する必要がある。このためには、十分な移動速度、安定性等を有する渦輪(41)を発生させるように、制御部(22)により振動板(17)等を制御する。
【0040】
第1モードでは、渦輪(41)が壁面(31)にまで到達し、壁面(31)付近の空気を押し出して、矢印(42)、矢印(43)のように空気循環装置(10)の方へ移動させる。従って、空間(30)内の全体において空気を循環させることができる。
【0041】
(第2モード)
本実施形態の空気循環装置(10)は、吹き出した渦輪を室内の壁面に到達する前に消滅させる第2モードを備えていても良い。
図5は、空気循環装置(10)の第2モードの動作状態を示す図である。第2モードでは、空間(30)における空気循環装置(10)とは反対側の壁面(31)に到達する前に、渦輪(41)が消滅する。つまり、壁面(31)に到達するまで渦輪の状態が維持されず、崩壊する。
図5では、崩壊した渦輪(41a)を示している。
【0042】
当該第2モードでは、壁面(31)付近の空気は渦輪(41)に影響されないか、又は、小さな影響しか受けない。従って、壁面(31)付近において、空気が循環されない(又は、循環されにくい)領域が生じる。
【0043】
渦輪(41)が到達する範囲については、矢印(43)により示す空気循環装置(10)側に戻る空気の流れも発生し、空気が循環する。空間(30)の使用目的によっては、壁面(31)付近まで空気を循環させることが不要の場合もある。その場合、必要な範囲において空気を循環させるようにすることで、空気循環装置(10)の動作に必要なエネルギーを削減することができる。また、壁面(31)には到達しない範囲について、空気の循環量を増やすこともできる。更に、壁面(31)付近の空気は動かさない方が良いということも考えられ、その場合は第2モードを用いることが好ましい。
【0044】
第2モードを行うために、壁面(31)に到達しない渦輪(41)を発生させるには、制御部(22)により吹き出し部(12)の振動板(17)等を制御すれば良い。
【0045】
(第3モード)
本実施形態の空気循環装置(10)は、人の位置を検知する人検知部(23)を備え、当該人検知部(23)が検知した人に向かって渦輪を吹き出す第3モードを備える。
図6は、空気循環装置(10)の第3モードを説明する図である。
【0046】
図6に示す空気循環装置(10)において、吹き出し口(19)は向きを変えることができ、空間(30)内の様々な方向に向かって渦輪(41)を吹き出すことができる。
【0047】
また、人検知部(23)が備えられ、空間(30)内に居る人(24)の位置を検知することができる。人検知部(23)としては、例えば赤外線センサー、カメラ等を用いることができる。カメラを用いる場合、画像認識により人を認識して位置を特定してもよい。特に、複数のカメラを用いることにより、立体的な位置の認識が可能である。
【0048】
人検知部(23)が人(24)の位置を検知すると、その情報を制御部(22)に伝達する。制御部(22)は、吹き出し口(19)の向きを変えて、人(24)に向けて渦輪(41)を吹き出すように設定する。これにより、人(24)に向かって渦輪(41)を吹き出すことができる。破線の渦輪(46)は、他の位置に向かって渦輪を吹き出す例を示す。
【0049】
第3モードによると、空間(30)内の様々な位置に居る人(24)に向けて渦輪(41)を吹き出すことができ、人(24)の居る位置の空気を循環させることができる。
【0050】
このようにすると、空間(30)の全体に空気を循環させるよりも省エネルギー化することができる。
【0051】
尚、検知する対象は、人以外であっても良い。また、以上では検知した人(24)に向かって渦輪(41)を吹き出すことを説明した。しかし、人(24)又は他の検知対象について、検知した位置を避けて渦輪(41)を吹き出すモードを設けても良い。渦輪(41)の衝突を避けるべき対象が存在する場合、そのようなモードも有用である。
【0052】
《その他の実施形態等》
以上では、空間(30)について、渦輪(41)を用いた空気循環のみを行う例を説明した。しかしながら、他の空気循環の方法と併用しても良い。
【0053】
例えば、
図5に示すように、空間(30)内に壁などの障害物(32)が存在したとする。この場合、空気循環装置(10)から見て障害物(32)に隠れる領域(33)については、渦輪(41)による空気循環は困難である。従って、領域(33)についてはダクトを用いる等の他の方法により空気循環を行うことも好ましい。また、一定の空気循環をダクト等により行い、必要に応じて渦輪(41)による空気循環を併用するのであっても良い。このような場合にも、全ての空気循環をダクト及びダクトを通じて送風するためのファン等を用いて行うよりも低コスト化、省エネルギー化することができる。
【0054】
また、渦輪(41)による空気循環は、宇宙ステーション等の無重力環境、月面等の低重力環境において特に有用である。無重力環境では空気温度による自然対流が生じにくいので、強制的に空気循環を行うことが特に重要である。従って、宇宙ステーション等ではダクトを用いた空気循環が行われる。そこで、渦輪(41)による空気循環を用いると、ダクトを小型化するか、又は、不要とすることができ、省スペース化が実現する。また、必要な位置のみに空気を供給することの需要は、無重力環境において大きい。また、宇宙ステーション等では利用できるスペース、エネルギー共に限られている。従って、渦輪(41)による空気循環装置(10)が有用である。
【0055】
<低温倉庫における実施例>
次に、
図7を参照して、本開示の空気循環装置(10)を低温倉庫(50)において用いる例を説明する。低温倉庫(50)には棚(51)が配列され、当該棚(51)に、所定の温度以下に維持するべき物品が収納される。
【0056】
低温倉庫(50)の室内では、一部の領域でも所定の温度を超えるとことは避けなければならない。そこで、従来、十分な空調能力があるように空調機器の設置数を多くする、部屋全体に冷気が行き渡るように風量を強く設定する等が行われている。また、棚(51)が冷気の流路にとって障害となる場合があるので、これを避けるために空調設備の配置、冷気の吹き出し口の向きの設定等も必要となっていた。加えて、このように余裕があるように空調が設定されるので、低温で過酷な温度環境となり、特に冷気が作業者に直接当たると身体的に負担となっていた。
【0057】
これに対し、
図7の例では、本開示の空気循環装置(10)を用いている。空気循環装置(10)が渦輪(41)として冷気を吹き出し、低温倉庫(50)内を所定の温度以下に維持する。上記に説明したとおり、渦輪(41)を利用することによりダクト等を用いることなく空間内に空気を循環させることができる。また渦輪(41)の吹き出し方向、移動速度等を調整し、棚(51)を避けて低温倉庫(50)内に冷気を行き渡らせることができる。これにより、低温倉庫(50)内において場所毎の温度の違い(温度ムラ)の発生を抑制でき、温度ムラに起因した貯蔵物に対するダメージを抑制できる。
【0058】
また、低温倉庫(50)内に十分に冷気を行き渡らせることができるので、過剰な数の空調機器、過剰な出力(風量)での運転等は不要となる。従って、初期の空調設備の費用削減、運転費用の削減及び省エネルギー化が実現する。また、上記第3モードを利用して、低温倉庫(50)内の作業者に冷気が衝突するのを避けることができ、作業者の負担を軽減できる。
【0059】
以上、実施形態を例示説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本開示は、空気循環装置について有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 空気循環装置
11 吸引部
12 吹き出し部
12a ケーシング
13 空気通路
14 ダンパ
15 送風機
16 空気制御装置
17 振動板
18 弾性支持部
19 吹き出し口
20 吸引口
21 リニアアクチュエータ
22 制御部
23 人検知部
24 人
30 空間(室)
31 壁面
32 障害物
33 領域
41 渦輪
50 低温倉庫
51 棚