(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240313BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240313BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240313BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240313BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/3445
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2023144209
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2023009703
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大角 香織
(72)【発明者】
【氏名】広田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】相武 慶介
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0178828(US,A1)
【文献】特開2020-139052(JP,A)
【文献】特開2021-024995(JP,A)
【文献】特開2004-123926(JP,A)
【文献】特開2017-082121(JP,A)
【文献】特開2022-165622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
B60C 1/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを60質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、下記一般式(1)で表される化合物を0.1~5.0質量部、カーボンブラックおよびシリカを合計で40~80質量部配合してなるゴム組成物であって、前記シリカのCTAB吸着比表面積が190m
2/g以上であるシリカを含
み、前記シリカが、前記カーボンブラックおよびシリカの合計に対し30質量%以下であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を示す。R
3およびR
4は一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3およびR
4のいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、任意に1個以上の置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
請求項
1に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるキャップトレッドを有するタイヤ。
【請求項3】
請求項
1に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるキャップトレッドを有する重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主にオフロードを走行するダンプなどの大型車両に装着する重荷重用タイヤにおいて、悪路走行時のトレッド耐久性および耐発熱性に優れることが重要である。悪路走行時のトレッド耐久性を向上させるには、タイヤを構成するゴム組成物の引張破断伸びや引裂き強さを向上する必要があり、例えば加硫密度を低減したり充填剤を減量するなどして引張破断伸びを向上させる手法が挙げられる。しかしながら、加硫密度を低減すると耐発熱性が悪化し、充填剤を減量するとゴム硬度が低下するため耐摩耗性が悪化するなどの課題が生じる。このように、重荷重用タイヤに求められる悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備させるのは困難である。
【0003】
特許文献1は、ゴム成分に、カーボンブラックおよび/または無機充填剤に、特定のピラゾロン化合物およびその誘導体を配合したゴム組成物が低発熱性を発現し得ることを記載する。しかし、特許文献1に記載された発明では、悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を重荷重用タイヤに求められる高いレベルで兼備させるには必ずしも十分な性能が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを60質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、下記一般式(1)で表される化合物を0.1~5.0質量部、カーボンブラックおよびシリカを合計で40~80質量部配合してなるゴム組成物であって、前記シリカのCTAB吸着比表面積が190m
2/g以上であるシリカを含
み、前記シリカが、前記カーボンブラックおよびシリカの合計に対し30質量%以下であることを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を示す。R
3およびR
4は一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3およびR
4のいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、任意に1個以上の置換基を有していてもよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを60質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、一般式(1)で表されるピラゾロン化合物およびその誘導体を0.1~5.0質量部、CTAB吸着比表面積が190m2/g以上のシリカおよびカーボンブラックを合計で40~80質量部配合したので、悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を従来以上の高いレベルで兼備することができる。
【0008】
タイヤ用ゴム組成物は、前記シリカが、前記カーボンブラックおよびシリカの合計に対し30質量%以下であるとよく、耐発熱性および耐摩耗性をより優れたものにすることができる。
【0009】
上述したタイヤ用ゴム組成物からなるキャップトレッドを有するタイヤは、悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を従来以上の高いレベルで兼備することができる。とりわけ、主にオフロードを走行する大型車両に装着する重荷重用タイヤにおいて、キャップトレッドを上述したタイヤ用ゴム組成物で構成すると、悪路走行時でもトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量%中、イソプレン系ゴムを60質量%以上含む。イソプレン系ゴムを60質量%以上含むことにより、悪路走行時のトレッド耐久性(以下、「悪路走行時のトレッド耐久性」を、単に「トレッド耐久性」ということがある。)および耐発熱性を優れたものにすることができる。イソプレン系ゴムは、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、イソプレンゴム、変性イソプレンゴムから選ばれる少なくとも1つである。これらのイソプレン系ゴムは、タイヤ用ゴム組成物に用いられるものの中から適宜選択することができる。イソプレン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%であるとよい。さらに、ジエン系ゴムのすべてが、イソプレン系ゴムでもよい。イソプレン系ゴムは、1種類でも2種類以上を組み合わせてもよい。
【0011】
タイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム以外の他のジエン系ゴムを含むことができる。他のジエン系ゴムとして、例えばブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、およびこれらジエン系ゴムに官能基を付した変性ジエン系ゴム等を挙げることができる。なかでもブタジエンゴムを配合するとよく、トレッド耐久性および耐摩耗性を改良するのに有利になる。これら他のジエン系ゴムは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。他のジエン系ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは0~40質量%、さらに好ましくは0~30質量%、よりさらに好ましくは0~10質量%であるとよい。
【0012】
タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよびシリカを配合する。カーボンブラックを配合することにより、耐摩耗性およびトレッド耐久性を優れたものにすることができる。シリカを配合することにより、耐発熱性およびウェット性能を優れたものにすることができる。カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計は、ジエン系ゴム100質量部に対し40~80質量部、好ましくは45~75質量部、より好ましくは50~70質量部である。カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計が40質量部未満であると、引裂強さが小さくなり、トレッド耐久性および耐摩耗性が低下する。また80質量部を超えると、引張破断伸びが小さくなり、トレッド耐久性および耐発熱性が低下する。
【0013】
タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計に対するシリカの配合量の割合(以下、「シリカ割合」ということがある。)が好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下であるとよい。シリカ割合はさらに好ましくは10~30質量%、さらにより好ましくは15~25質量%であるとよい。シリカ割合が30質量%を超えると、引裂き強さや破断強度が低下する傾向がある。
【0014】
シリカは、そのCTAB吸着比表面積が190m2/g以上のシリカを含むものとする。シリカのすべてがCTAB吸着比表面積190m2/g未満であると、トレッド耐久性および耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。CTAB吸着比表面積は好ましくは190~280m2/g、より好ましくは190~240m2/gであるとよい。本明細書において、シリカのCTAB吸着比表面積は、ISO 5794に準拠するものとする。なお、本発明の課題の解決を阻害しない範囲内であれば、CTAB吸着比表面積が190m2/g未満のシリカを含むことができる。全シリカ中、CTAB吸着比表面積が190m2/g以上のシリカは、好ましくは55質量%以上、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは85~100質量%であるとよい。
【0015】
シリカとして、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤またはポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
【0016】
また、シリカとともにシランカップリング剤を配合するとよく、シリカの分散性を向上し、ウェット性能がさらに改善されるので好ましい。シランカップリング剤の種類は、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびエボニック社製のVP Si363等特開2006-249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物等、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0017】
シランカップリング剤は、シリカの質量に対し3~20質量%、好ましくは5~15質量%配合するとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ質量の3質量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤が20質量%を超えると、ジエン系ゴム成分がゲル化し易くなる傾向があるため、所望の効果を得ることができなくなる。
【0018】
タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することにより、ゴム強度を優れたものにすることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。なかでもSAF、ISAF、IISAF、HAFがより好ましく、さらにISAF、IISAF、HAFが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
【0019】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは40~350m2/g、より好ましくは70~250m2/g、さらに好ましくは70~150m2/gであるとよい。カーボンブラックのN2SAを、このような範囲内にすることにより、耐摩耗性をより向上することができる。本明細書において、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217‐2に準拠するものとする。
【0020】
タイヤ用ゴム組成物は、シリカおよびカーボンブラック以外の他の充填剤を配合することもできる。これにより、ゴム組成物の強度を高くし、タイヤ耐久性を確保することができる。他の充填剤として、例えばタルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
【0021】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、下記一般式(1)で表される化合物を0.1~5.0質量部配合する。
【化2】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を示す。R
3およびR
4は一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3およびR
4のいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、任意に1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0022】
一般式(1)において、R1、R2、R3およびR4は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を示す。R1、R2、R3およびR4が水素のとき、一般式(1)の化合物は、5-ピラゾロンである。よって、本明細書において、一般式(1)で表される化合物を、「ピラゾロン誘導体」ということがある。
【0023】
本明細書において、「アルキル基」として、例えば、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、1-エチルプロピル等の炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、更に、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数1~18の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が例示される。
【0024】
「アラルキル基」として、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が例示される。
【0025】
「アリール基」として、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が例示される。
【0026】
「複素環基」として、例えば、ピリジル、ピリミジル、トリアジル、キノリル、イソキノリル、キノキサリル、シンノリル、キナゾリル、フタラジル、テトラヒドロキノリル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、モルホリル、ピペラジル、2-ピペラジル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピロリジル、フラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、5-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル基等が例示される。
【0027】
「アルキリデン基」として、例えば、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン基等が例示される。
【0028】
「アルキレン基」として、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。これらアルキレン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、フェニレン基を介していてもよい。
【0029】
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アルキリデン基、およびアルキレン基の各基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。「置換基」として、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
【0030】
一般式(1)において、R1、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基であるとよい。
【0031】
一般式(1)において、R1として水素原子が好ましい。また、R2は、水素原子、炭素数1~4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1~4の直鎖状または分岐状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、またはフリル基がより好ましく、水素原子、または炭素数1~4の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0032】
一般式(1)において、R3およびR4の少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましく、R3およびR4が共に水素原子である化合物がより好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される化合物は、R1が水素原子、R2が水素原子、炭素数1~4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基で、R3およびR4が共に水素原子である化合物、および、R1が水素原子、R2が水素原子、炭素数1~4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基、R3とR4とが一緒になってアルキリデン基を形成している化合物がより好ましく、R1が水素原子であり、R2が水素原子または炭素数1~4の直鎖状アルキル基であり、R3およびR4が共に水素原子である化合物が特に好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物として、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン等が挙げられる。
【0035】
一般式(1)で表される化合物の中には、互変異性体を生じるものがあり、その互変異性体も包含されるものとする。なお、互変異性化が可能であるとき(例えば、溶液中)、互変異性体の化学平衡に達し得る。また、一般式(1)で表される化合物は、その塩も包含されるものとする。一般式(1)で表される化合物の塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が例示される。
【0036】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に、一般式(1)で表される化合物(ピラゾロン誘導体)を0.1~5.0質量部配合する。ピラゾロン誘導体を配合することにより、引裂強さおよび引張破断伸びを向上し、トレッド耐久性および耐摩耗性を優れたものにすることができる。ピラゾロン誘導体は、好ましくは0.1~3.0質量部、より好ましくは0.1~2.5質量部、さらに好ましくは0.5~2.0質量部配合するとよい。ピラゾロン誘導体が0.1質量部未満であると、トレッド耐久性および耐摩耗性を従来レベル以上に向上させることができない。また、5.0質量を超えると、引裂強さが却って低下し、トレッド耐久性を改良することができず、耐摩耗性および耐発熱性が低下する。しかも、タイヤ用ゴム組成物の原料コストが高くなる。ピラゾロン誘導体は、単独または2種以上を混合して配合してもよい。2種以上のピラゾロン誘導体を配合するとき、それらの合計が上述した範囲内であるとよい。
【0037】
タイヤ用ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫または架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0038】
タイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部を形成するのに好適であり、なかでもキャップトレッド、とりわけ重荷重用タイヤのキャップトレッドを形成するのに好適である。特に、主にオフロードを走行する大型車両に装着する重荷重用タイヤにおいて、キャップトレッドを上述したタイヤ用ゴム組成物で構成すると、悪路走行時でもトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備することができる。なお、タイヤは空気入りタイヤ、非空気式タイヤのいずれでもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
表3に示す共通の添加剤処方を有し、表1,2に示す配合からなるタイヤ用ゴム組成物(実施例1~10、基準例1、比較例1~6)を調製するに当たり、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチをミキサー外に放出し室温冷却した。このマスターバッチを同バンバリーミキサーに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。なお、表3の添加剤処方の配合量は、表1,2に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で記載している。
【0040】
上記で得られたタイヤ用ゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して評価用試料を作製した。得られた評価用試料を使用し、引張破断伸び、引裂強さ、トレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を以下の方法で測定した。
【0041】
引張破断伸び
上記で得られた厚さ2mmの評価用試料を使用し、JIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されている測定方法に準拠し、引張速度500mm/分で、23℃における引張試験を行い、引張破断伸び(%)を測定した。得られた結果は、基準例1の値を100にする指数として表1,2の「引張破断伸び」の欄に記載した。この指数が大きいほど引張破断伸びが大きいことを意味する。
【0042】
引裂強さ
上記で得られた厚さ2mmの評価用試料を使用し、JIS K6252に記載されたトラウザ形試験片を打ち抜き、JIS K6252「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引裂強さの求め方」に規定されている測定方法に準拠し、引張速度100mm/分で、23℃における引裂試験を行い、引裂強さ(kN/m)を測定した。得られた結果は、基準例1の値を100にする指数として表1,2の「引裂強さ」の欄に記載した。この指数が大きいほど引裂強さが大きいことを意味する。
【0043】
トレッド耐久性
上記で得られた引張破断伸びの指数および引裂強さの指数の平均値を、トレッド耐久性の指数として表1,2の「トレッド耐久性」の欄に記載した。この指数が大きいほどトレッド耐久性に優れることを意味し、指数が120以上であれば実用的に優れているものとする。
【0044】
耐発熱性
得られた評価用試料を使用し、JIS K6394:2007に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、60℃のtanδを測定した。得られた結果は、それぞれの値の逆数を算出し基準例1の値を100とする指数として表1,2の「耐発熱性」の欄に示した。この指数が大きいほど発熱が小さく、耐発熱性が優れることを意味する。なお、指数が95以上であれば許容範囲とする。
【0045】
耐摩耗性
得られた評価用試料を使用し、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗減量を測定した。得られた結果は、それぞれの値の逆数を算出し、基準例1の値を100とする指数として、表1,2の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、摩耗減量が小さく、耐摩耗性が優れることを意味する。なお、指数が95以上であれば許容範囲とする。
【0046】
【0047】
【0048】
表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、SIR
・BR:ブタジエンゴム、ZSエラストマー社製 Nipol BR1220
・カーボンブラック-1:SAF級カーボンブラック、日鉄カーボン社製ニテロン#430、N2SAが125m2/g
・カーボンブラック-2:ISAF級カーボンブラック、日鉄カーボン社製シースト 7HM、N2SAが110m2/g
・カーボンブラック-3:HAF級カーボンブラック、東海カーボン社製シースト NHT、N2SAが70m2/g
・シリカ-1:Evonik社製ULTRASIL VN3GR、CTAB吸着比表面積が150m2/g
・シリカ-2:Evonik社製ULTRASIL 9100GR、CTAB吸着比表面積が200m2/g
・化合物-1:3-メチル-5-ピラゾロン、一般式(1)で表される化合物(R1、R3およびR4が水素原子、R2がメチル基)、大塚化学社製 EN‐01
・化合物-2:ヒドラジド化合物、N′‐(1,3‐ジメチルブチリデン)‐3‐ヒドロキシ‐2‐ナフトヒドラジド、一般式(1)で表されない化合物、大塚化学社製 DC‐01
・カップリング剤:シランカップリング剤、Evonik Degussa社製 Si69、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
【0049】
【0050】
表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・硫黄:四国化成工業社製ミュークロンOT-20
・加硫促進剤:大内振興化学工業社製ノクセラーCZ-G
【0051】
表2から明らかなように、実施例1~10のタイヤ用ゴム組成物は、引張破断伸びおよび引裂強さを向上させ、トレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を従来以上の高いレベルで兼備することが確認された。
【0052】
表1から明らかなように、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、ピラゾロン誘導体を配合しないので、引張破断伸びおよび引裂強さが小さく、トレッド耐久性および耐摩耗性が劣る。
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計が40質量部未満なので、引裂強さが小さく、トレッド耐久性および耐摩耗性が劣る。
比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよびシリカの配合量の合計が80質量部を超えるので、引張破断伸びが小さく、トレッド耐久性および耐発熱性が劣る。
比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、ピラゾロン誘導体を配合せずに、ヒドラジド化合物を配合したので、引張破断伸びおよび引裂強さが小さく、トレッド耐久性および耐摩耗性が劣る。
比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムが60質量%未満なので、引裂強さが小さく、トレッド耐久性が劣る。
比較例6タイヤ用ゴム組成物は、ピラゾロン誘導体が5.0質量部を超えるので、引裂強さがさらに小さく、トレッド耐久性が劣り、さらに耐摩耗性も劣る。
【要約】
【課題】悪路走行時のトレッド耐久性、耐発熱性および耐摩耗性を高いレベルで兼備するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】 イソプレン系ゴムを60質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、下記一般式(1)で表される化合物を0.1~5.0質量部、カーボンブラックおよびシリカを合計で40~80質量部配合してなるゴム組成物であって、前記シリカのCTAB吸着比表面積が190m
2/g以上であるシリカを含むことを特徴とする。
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を示す。)
【選択図】なし