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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6827 20180101AFI20240313BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240313BHJP
   C08F 226/04 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z ZNA
C12N15/09 Z
C08F226/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023528074
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2022044333
(87)【国際公開番号】W WO2023106189
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2021201160
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】橘 亜美
(72)【発明者】
【氏名】内木 智朗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 実
(72)【発明者】
【氏名】照内 洋子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃司
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/018841(WO,A1)
【文献】特開2008-278779(JP,A)
【文献】The Journal of Physical Chemistry B,2017年,Vol.121,p.4015-4022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6827
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I-a)若しくは一般式(I-b)
【化1】

(式中、Rは、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A)、および
一般式(I-d)若しくは一般式(I-e)
【化2】


(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、R及びRの少なくとも一方は水素以外であり、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B)
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPが、2.50~4.50であり、前記化学構造パラメーターPと、分子量Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系(共)重合体を含む、核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数1】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数2】
【請求項2】
前記P及びMが下記式(3)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系(共)重合体を含む、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数3】
【請求項3】
前記P及びMが下記式(4)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系(共)重合体を含む、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数4】
【請求項4】
前記少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位が、前記構成単位(A)を含み、前記構成単位(A)は、一般式(I-a)で表される構造、又はその酸付加塩である構造を有する、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項5】
前記少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位が、前記構成単位(B)を含む、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項6】
前記構成単位(B)は、一般式(I-d)で表される構造、又はその酸付加塩である構造を有する、請求項5に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項7】
さらに、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリルアミド系単量体、アクリルアミド系単量体、または二酸化硫黄から導かれるノニオン性構成単位(C)を含む、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤
【請求項8】
前記(ジ)アリルアミン系の構成単位の前記(ジ)アリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める割合が、40%モル以上である、請求項1に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項9】
前記(ジ)アリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量は、700~300000である、請求項8に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項10】
前記核酸が、DNAである請求項1~9のいずれか1項に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【請求項11】
請求項1~9の何れか1項に記載する核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を、核酸を含有する水溶液中に添加する核酸の安定化方法。
【請求項12】
請求項1~9の何れか1項に記載する核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を、核酸と共に含む水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤(以下、Tm値上昇化剤ということもある)に関する。より具体的には、特定の構造を有する(ジ)アリルアミン系化合物を含む核酸(特に二本鎖核酸)の融解温度(Tm値)上昇化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸は、医学分野、食品分野、農業若しくは漁業分野、および環境分析など多くの分野で分子生物学的分析に供されたり、治療薬の活性成分として用いられたりしているが、これに伴う課題の一つは、試料中の核酸を安定化することである。従来、核酸を安定化する試みとしては、例えば、エタノールおよびアセトンの混合液、硫酸アンモニウム、またはテトラデシルトリメチルシュウ酸アンモニウムなどを使用して、核酸を安定することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特定の細菌やウィルスを同定したり、ヒト対象の疾患易罹患性や薬剤反応性などを判定したりするために、ゲノム核酸中の変異を検出することが行われているが、その検出手段の1つとして、核酸の融解温度(Tm値)の利用がある。
【0004】
融解温度(Tm値)は、二本鎖核酸の50%が一本鎖に変性する温度をいい、完全に相補的な関係にある二本鎖に比べ、二本鎖核酸間にミスマッチがあり、完全に相補的な関係にない二本鎖では、融解温度(Tm値)が低くなる。このため、このような現象を利用して、試料核酸の基準核酸に対する変異を検出したり、この現象により生じる核酸増幅効率の差を通じて標的配列を検出したりすることができる。ただし、一塩基のミスマッチによって生じる融解温度(Tm値)の変化は1~3℃程度であるとされ、融解温度(Tm値)を利用してゲノム核酸中のごく僅かな変異を検出するには、感度を高める工夫が必要になる。
また、核酸増幅反応において、アニーリング温度が低い場合、非特異的な増幅を生じることがあるため、プライマーのGC含量を検討しアニーリング温度が55℃程度になるようにプライマーを設計する必要がある(非特許文献1)。しかし、GC含量への依存を低減してプライマー設計が可能となれば、柔軟なプライマー設計が可能となる。
【0005】
この点、融解曲線を解析して僅かな変異を検出可能とする方法がなされている(特許文献2)。しかし、この方法では、厳密な温度制御を可能な高精度な恒温装置が必要となり、実用上より簡便な方法が望まれる。また、GC含量に依存したプライマー設計の問題を取り扱うものではない。
【0006】
ところで、融解温度(Tm値)を利用して変異を検出する方法ではないが、基準遺伝子に対してミスマッチな短鎖核酸分子をフルマッチな短鎖核酸分子に置換する速度を促進するカチオン性高分子ポリマーを用いて、基準遺伝子に対するミスマッチを検出する方法が提案され、この方法では、一塩基のミスマッチでも検出できるとされる(特許文献3乃至5)。このカチオン性高分子ポリマーは、ポリリジンやポリアルギニンなどのカチオン性高分子を主鎖として、デキストランやポリエチレングリコール等を側鎖としてグラフト重合したポリマーであり、その具体的例として、α-PLL-g-Dex、ε-PLL-g-Dex、PAA-g-Dexが開示されている。特許文献3には、このカチオン性高分子ポリマーの存在下および非存在下での一塩基変異を有する核酸分子のTm値の差が示されている。残念ながら、このカチオン性高分子ポリマーの添加によるTm上昇値は、20merのDNAで15℃以下であり、Tm値を利用して変異を検出する方法で十分に検出感度を高めることができないし、核酸増幅反応において、アニーリング温度を十分に高めることができるものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-212273号
【文献】特開2005-58107号
【文献】WO03/018841A1
【文献】特開2001-78769号
【文献】特開2008-278779号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Dieffenbach et al., “General concepts for PCR primer design”, PCR Methods Appl., 1993, 3(3), S30-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような従来技術における問題に対処し得る、新規な核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を提供することを目的とする。また、当該核酸のTm値上昇化剤を核酸と共に含む医薬組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、化学構造に関連する特定のパラメーターから算出される数値と分子量Mとが特定の関係を充足する特定の(ジ)アリルアミン系化合物を核酸溶液に添加すると、核酸の融解温度(Tm値)を効果的に上昇させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一の実施形態として、以下の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を提供する。
[1] 一般式(I-a)、一般式(I-b)若しくは一般式(I-c)
【化1】

【化2】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A)、
一般式(I-d)、一般式(I-e)若しくは一般式(I―f)
【化3】

【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B)、並びに
一般式(I-g)若しくは一般式(1―h)
【化5】

【化6】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(C)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、分子量((ジ)アリルアミン系化合物が(ジ)アリルアミン系(共)重合体である場合には、重量平均分子量により特定される。)Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物を含む、核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数1】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数2】
【0011】
本発明はまた、以下[2]から[19]に記載する他の実施形態を提供する。
[2] 前記P及びMが下記式(3)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物を含む、[1]に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数3】

[3] 前記P及びMが下記式(4)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物を含む、[1]に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
【数4】

[4] 前記(ジ)アリルアミン系化合物が、(ジ)アリルアミン系(共)重合体である[1]~[3]のいずれか1項に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
[5] 前記核酸が、DNAである[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤。
[6] [1]~[5]の何れか1項に記載する核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を、核酸を含有する水溶液中に添加する核酸の安定化方法。
[7] [1]~[5]の何れか1項に記載する核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を、核酸と共に含む水溶液。
[8] 一般式(I-a)、一般式(I-b)若しくは一般式(I-c)
【化7】

【化8】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A)、
一般式(I-d)、一般式(I-e)若しくは一般式(I―f)
【化9】

【化10】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B)、並びに
一般式(I-g)若しくは一般式(1―h)
【化11】

【化12】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(C)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、分子量((ジ)アリルアミン系化合物が(ジ)アリルアミン系(共)重合体である場合には、重量平均分子量により特定される。)Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物の、核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤を製造するための使用。
【数5】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数6】

[9] 前記(ジ)アリルアミン系化合物は、前記P及びMが下記式(3)を満たす関係を有する化合物である、[8]に記載の使用。
【数7】

[10] 前記(ジ)アリルアミン系化合物は、前記P及びMが下記式(4)を満たす関係を有する化合物である、[8]に記載の使用。
【数8】

[11] 前記(ジ)アリルアミン系化合物が、(ジ)アリルアミン系(共)重合体である、[8]~[10]のいずれか1項に記載の使用。
[12] 前記核酸が、DNAである[8]~[11]のいずれか1項に記載の使用。
[13] [1]~[4]の何れか1項に記載する(ジ)アリルアミン系化合物を、核酸を含有する水溶液中に添加する、核酸の安定化方法。
[14] [1]~[4]の何れか1項に記載する(ジ)アリルアミン系化合物を、核酸と共に含む、水溶液。
[15] 一般式(I-a)、一般式(I-b)若しくは一般式(I-c)
【化13】

【化14】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A)、
一般式(I-d)、一般式(I-e)若しくは一般式(I―f)
【化15】

【化16】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B)、並びに
一般式(I-g)若しくは一般式(1―h)
【化17】

【化18】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(C)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、分子量((ジ)アリルアミン系化合物が(ジ)アリルアミン系(共)重合体である場合には、重量平均分子量により特定される。)Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物を、核酸と溶液中で混合して、前記核酸の融解温度(Tm値)を上昇させる方法。
【数9】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数10】

[16] 前記(ジ)アリルアミン系化合物は、前記P及びMが下記式(3)を満たす関係を有する化合物である、[15]に記載の方法。
【数11】

[17] 前記(ジ)アリルアミン系化合物は、前記P及びMが下記式(4)を満たす関係を有する化合物である、[15]に記載の方法。
【数12】

[18] 前記(ジ)アリルアミン系化合物が、(ジ)アリルアミン系(共)重合体である、[15]~[17]のいずれか1項に記載の方法。
[19] 前記核酸が、DNAである、[15]~[18]のいずれか1項に記載の方法。
【0012】
本発明の核酸のTm値上昇化剤は、上述の特定の構造の有する(ジ)アリルアミン系化合物を含むことで、核酸のTm値を顕著に上昇させる。これを利用して、ゲノム核酸中の変異の検出をより高感度で実施可能にすることが期待される。また、核酸を含む組成物に添加することで核酸を安定化することが期待される。
【0013】
ここで、「融解温度(Tm値)」は、二本鎖核酸の50%が一本鎖に変性する温度を意味するが、本願明細書において、Tm値は、インターカレーターを用いて、リアルタイムPCRシステムにて、40℃(ただし、40℃から昇温させて、Tm値が測定できない場合、又は、Tm値が50℃未満の場合には10℃)から、95℃まで0.3℃上昇する毎に蛍光強度を計測して二本鎖融解曲線を作成し、この二本鎖融解曲線から微分法により求められるTm値を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の核酸のTm値上昇化剤は、特定構造の(ジ)アリルアミン系構成単位を有する(ジ)アリルアミン系化合物であって、その化学構造から算出されるパラメーターとその分子量Mとが特定の関係を充足するもの(以下「特定化合物」ともいう。)を含む。
本発明の核酸のTm値上昇化剤は、上記特定化合物のみで構成されていてもよく、特定化合物に加えて、それ以外の成分を含んでいてもよい。
【0015】
特定化合物
上記特定化合物は、上述の様に特定構造の(ジ)アリルアミン系構成単位を有するものであり、複数の(ジ)アリルアミン系構成単位を有する(共)重合体(以下、「特定(共)重合体」ともいう。)であってもよく、単独の(ジ)アリルアミン系構成単位を有する単量体(以下、「特定単量体」ともいう。)であってもよい。保存安定性やTm値上昇効果等の観点からは、複数の(ジ)アリルアミン系構成単位を有するジアリルアミン(共)重合体(特定(共)重合体)であることが好ましい。
【0016】
特定(共)重合体
本発明において用いられる特定化合物の好ましい形態である特定(共)重合体は、
一般式(I-a)若しくは一般式(I-b)
【化19】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A1)、
一般式(I-d)若しくは一般式(I-e)
【化20】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B1)、並びに
一般式(1-g)
【化21】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(C1)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系構成単位(α)を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、GPC測定により得られる重量平均分子量Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン(共)重合体である。
【数13】

式中、nは前記(共)重合体を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。ここで、「j級アミン」は、見かけ上、「j級アミン」に該当するものを計算する。また、「カルボニル基」は、見かけ上、「カルボニル基」に該当するものを計算する。例えば、アクリルアミドが構成単位である場合において、アミド基中の窒素原子は、1級アミンとして計算し、アミド基中の酸素原子は、1つのカルボニル基として計算する。
ここで、前記共重合体を構成する各構成単位のモル比は、前記共重合体を構成する構成単位の構造が既知である場合、前記共重合体をイソプロピルアルコール又はアセトン等の有機溶媒で再沈し、再沈物について、Perkin Elmer 2400II CHNS/O全自動元素分析装置又は同等の性能の装置を用いて、前記共重合体を構成する構成単位の構造に応じた適宜のモードで分析することで特定することができる。なお、測定は、キャリアーガスとしてヘリウムガスを使用し錫カプセルに固体試料を量りとり、燃焼管内に落下して純酸素ガス中で燃焼温度1800℃以上で試料を燃焼し、分離カラム及び熱伝導検出器によるフロンタルクロマトグラフィー方式で各測定成分を検出し、校正係数を用いて各元素の含有率を定量することで行うことができる。また、前記共重合体におけるカチオン性構成単位及びアニオン性構成単位の構造が未知である場合、上記元素分析装置による測定の前に、1H-NMR又は13C-NMRを用いた公知の方法により、前記共重合体を構成する構成単位の構造を特定する。また、前記共重合体の製造(共重合)において供給した各単量体の量、及び前記共重合体に取り込まれずに残留した各単量体の量から計算することもできる。なお、前記共重合体における各単量体から導かれる構成単位の割合(モル比)は、各構成単位の仕込み組成(モル比)とほぼ一致するため、本明細書では便宜的にモノマーの配合比を構成単位の割合(モル比)として取り扱う事がある。
【数14】
【0017】
(ジ)アリルアミン系構成単位(α)
上述の様に、本発明で使用される特定(共)重合体は、特定構造の(ジ)アリルアミン系構成単位(以下、「(ジ)アリルアミン系構成単位(α)」ともいう。)を有する。
特定(共)重合体は、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)のみで構成されていてもよく、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)以外の構成単位を有していてもよい。(ジ)アリルアミン系構成単位(α)以外の構成単位としては、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)以外の各種カチオン性構成単位、各種ノニオン性構成単位、各種アニオン性構成単位等を挙げることができる。
【0018】
上記の特定構造の(ジ)アリルアミン系構成単位が特定(共)重合体の全構成単位に占める割合には特に制限は無いが、通常40モル%以上であり、好ましくは50~100モル%であり、より好ましくは70~100モル%であり、特に好ましくは80~100モル%である。
また、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)以外の構成単位としてノニオン性構成単位を含む場合、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)とノニオン性構成単位とが合計で前記特定構造の(ジ)アリルアミン系構成単位が特定(共)重合体の全構成単位に占める割合は、通常50モル%以上であり、好ましくは70~100モル%であり、より好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%である。
【0019】
本発明において用いられる特定(共)重合体を構成する(ジ)アリルアミン系構成単位(α)は、より具体的には、下記の構成単位(A1)、構成単位(B1)、及び構成単位(C1)からなる群の中から選ばれる少なくとも1種のカチオン性の構成単位である。
特定(共)重合体は、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)を1種類のみを含んでいてもよく、2種類以上の(ジ)アリルアミン系構成単位(α)を含んでいてもよい。2種類以上の(ジ)アリルアミン系構成単位(α)を含む場合の当該2種類以上の(ジ)アリルアミン系構成単位(α)は、ともに構成単位(A1)に分類される2種類以上の構成単位の組み合わせ、ともに構成単位(B1)に分類される2種類以上の構成単位の組み合わせ、又はともに構成単位(C1)に分類される2種類以上の構成単位の組み合わせであってもよく、構成単位(A1)から(C1)のうち互いに異なるものに分類される構成単位同士の組み合わせであってもよい。
特定(共)重合体を構成し得る構成単位(A1)から(C1)は、いずれもアミノ基を有するものであるが、高い融解温度(Tm値)上昇効果を実現するという観点から、第二級、第三級又は第四級のアミノ基を有することが好ましく、第三級又は第四級のアミノ基を有することがより好ましく、第四級のアミノ基を有することが特に好ましい。この観点から、特定(共)重合体は、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)として構成単位(B1)に該当するものを少なくとも1種有することが好ましい。
【0020】
構成単位(A1)
構成単位(A1)は、下記一般式(I-a)若しくは一般式(I-b)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位である。
【化22】

式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。Rは、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
化学構造パラメーターPの値を高いものとする等の観点から、構成単位(A1)の少なくとも一部は、第3級のアミノ基を有することが好ましい。全構成単位(A1)に占める、第3級のアミノ基を有するものの割合は、50モル%以上であることが好ましく、70~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることがより好ましい。
【0021】
構成単位(A1)は、上記の構造式(I-a)、又は(I-b)で示される構造の無機酸塩、若しくは有機酸塩等である構造、すなわち酸付加塩である構造を有していてもよい。
特定(共)重合体が構成単位(A1)を有する場合、特定(共)重合体の製造にあたっては、製造コスト等の観点からは、付加塩を有するジアリルアミンモノマーを用いることが好ましい。重合体からHCl等の付加塩を除去するプロセスは煩雑であり、コスト増大の原因ともなることから、その様なプロセスを要さずして製造可能である、付加塩型の構成単位(A1)を用いることは、コスト等の観点からも好ましい実施形態である。
入手の容易さや反応の制御性等の観点から、この実施形態の構成単位(A1)における無機酸塩、又は有機酸塩は、塩酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、又はアルキルサルフェート塩であることが好ましく、塩酸塩であることが特に好ましい。
【0022】
構成単位(B1)
構成単位(B1)は、下記一般式(I-d)若しくは一般式(I-e)で表される構造を有する構成単位である。
【化23】

式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、又は炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。
及びRの少なくとも一方は水素原子以外であることが好ましく、両方が水素原子以外であることが好ましい。
及びRはそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はベンジル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
化学構造パラメーターPの値を高いものとする等の観点から、構成単位(B1)の少なくとも一部は、第3級又は第4級のアミノ基又はアンモニウム塩を有することが好ましい。全構成単位(B1)に占める、第3級又は第4級のアミノ基又はアンモニウム塩を有するものの割合は、50モル%以上であることが好ましく、70~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることがより好ましい。
【0023】
カウンターイオンXa-には特に限定はないが、入手の容易さや反応の制御性等の観点から、塩素イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、又はアルキルサルフェートイオンであることが好ましく、塩素イオン、又はエチルサルフェートイオンであることが特に好ましい。
特定(共)重合体の製造にあたっては、製造コスト等の観点からは、カウンターイオンを有するジアリルアミンモノマーを用いることが好ましい。(共)重合体からカウンターイオンを除去するプロセスは煩雑であり、コスト増大の原因ともなることから、その様なプロセスを要さずして製造可能である、カウンターイオン型の構成単位(B1)を有する(共)重合体を使用することは、コスト等の観点からも好ましい実施形態である。
【0024】
構成単位(C1)
構成単位(C1)は、下記一般式(I-g)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位である。
【化24】

式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。
及びRの少なくとも一方は水素原子以外であることが好ましく、両方が水素原子以外であることがより好ましい。
及びRとして好ましい炭素数1~12のアルキル基又は炭素数7~10のアラルキル基は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよい。その例としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ベンジル基などが挙げられる。また、R及びRとして好ましい炭素数5~6のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基が挙げられるが、これらには限定されない。
化学構造パラメーターPの値を高いものとする等の観点から、構成単位(C1)の少なくとも一部は、第3級のアミノ基を有することが好ましい。全構成単位(C1)に占める、第3級のアミノ基を有するものの割合は、50モル%以上であることが好ましく、70~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることがより好ましい。
【0025】
構成単位(C1)が一般式(I-e)で表される構造の酸付加塩である場合の付加塩の種類には特に制限はないが、入手性や反応の制御の容易さ等の観点から、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、亜硝酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、アミド硫酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等を使用することができる。
中でも、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及びアミド硫酸塩が好ましく、モノアリルアミンから導かれる構造の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及びアミド硫酸塩が特に好ましい。
【0026】
本発明において使用される特定化合物の好ましい形態である特定(共)重合体は、下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、GPC測定により得られる重量平均分子量Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン(共)重合体である。
【数15】

式中、nは前記(共)重合体を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。
【数16】

特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとが上記式(2)に規定される関係を有することで、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤は、ハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値を効果的に上昇させることができる。
【0027】
化学構造パラメーターP
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPは、下式(1)により算出される値であり、(共)重合体を構成する構成単位中のアミンをはじめとする各種の基が本実施形態の効果に寄与する度合いを合算し総合的に表すパラメーターである。
【数17】

式中、nは特定(共)重合体を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。
ここで、
【数18】

は、当該構成単位種i中のアミン又はアンモニウム塩の寄与の合計を示し、アミン又はアンモニウム塩の級数jが大きい程大きな寄与が加算される。oiは、当該構成単位種i中のカルボニル基の寄与を示し、同数の第1級アミンと同等の寄与が加算される。2×siは、当該構成単位種i中のスルホニル基の寄与を示し、同数の第2級アミンと同等の寄与が加算される。
この様にして計算される当該構成単位種iの寄与
【数19】

を、当該構成単位種iのモル比miに応じ全構成単位種iからnに亘って(1)式に従い加重平均して、化学構造パラメーターPを算出する。
【0028】
上記式(2)の条件を満たす限りにおいて、化学構造パラメーターPの値自体には特に制限は無いが、特定(共)重合体の重量平均分子量Mが製造、使用が比較的容易となる範囲にある場合に上記式(2)の条件を満たす観点や、一層好ましい下記式(3)や(4)の条件を満たすことを容易にする観点などから、1.20~4.50であることが好ましく、2.10~4.20であることがより好ましく、2.80~4.00であることがさらに好ましく、3.00~4.00であることがとりわけ好ましく、3.40~4.00の範囲であることが特に好ましく、3.50~3.85であることが最も好ましい。
化学構造パラメーターPは、特定(共)重合体の化学構造、特に各構成単位の種類及び割合を選択、調整することによって適宜調整することが可能である。例えば、第3級又は第4級のアミン又はアンモニウム塩を有する構成単位を導入し、その割合を増やすことで、化学構造パラメーターPの値を高いものとすることができる。また、アミン若しくはアンモニウム塩、カルボニル基、又はスルホニル基のいずれをも有しない構成単位を導入し、その割合を増やすことで、化学構造パラメーターPの値を低いものとすることができる。
化学構造パラメーターPの値を高いものとする等の観点から、特定(共)重合体は、第3級又は第4級のアミン又はアンモニウム塩を有する構成単位を有することが好ましく、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)であって第3級又は第4級アミン又はアンモニウム塩を有するものを有することが特に好ましい。特定(共)重合体の全構成単位に占める、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)であって第3級又は第4級アミン又はアンモニウム塩を有するものの割合は、40モル%以上であることが好ましく、50~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることがより好ましく、80~100モル%であることが特に好ましい。
また、第3級又は第4級のアミン又はアンモニウム塩を有する構成単位以外の構成単位としてノニオン性構成単位を含む場合、第3級又は第4級のアミン又はアンモニウム塩を有する構成単位とノニオン性構成単位とが合計で特定(共)重合体の全構成単位に占める割合は、通常50モル%以上であり、70~100モル%であり、より好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%である。
【0029】
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとは、下記式(2)に規定される関係を有する。
【数20】

すなわち、化学構造パラメーターPの三乗と重量平均分子量Mの1/4乗との比、P/M1/4は、0.84以上12.67以下の数値範囲内となる。
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとが上記式(2)に規定される関係を有することで、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤は、ハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値を効果的に上昇させることができる。Tm値を効果的に上昇させることで、例えば、本実施形態の核酸のTm値上昇化剤以外にTm値に影響を与える物質が存在しない場合において、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸のTm値上昇化剤の存在下で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値と、当該上昇化剤が存在しない以外は同一の条件で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値との差異を、20℃以上とすることができる。なお、Tm値の上昇値の上限は特に限定されないが、例えば、50℃である。
【0030】
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとは、下記式(3)に規定される関係を有することが好ましい。
【数21】

すなわち、化学構造パラメーターPの三乗と重量平均分子量Mの1/4乗との比、P/M1/4は、2.37以上6.92以下の数値範囲内となることが好ましい。
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとが上記式(3)に規定される関係を有することで、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤は、ハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値を更に効果的に上昇させることができる。Tm値を更に効果的に上昇させることで、例えば、本実施形態の核酸のTm値上昇化剤以外にTm値に影響を与える物質が存在しない場合において、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸のTm値上昇化剤の存在下で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値と、当該上昇化剤が存在しない以外は同一の条件で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値との差異を、30℃以上とすることができる。
【0031】
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとは、下記式(4)に規定される関係を有することが特に好ましい。
【数22】

すなわち、化学構造パラメーターPの三乗と重量平均分子量Mの1/4乗との比、P/M1/4は、2.60以上3.00以下の数値範囲内となることが好ましい。
特定(共)重合体の化学構造パラメーターPと重量平均分子量Mとが上記式(4)に規定される関係を有することで、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸の融解温度(Tm値)上昇化剤は、ハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値を特に効果的に上昇させることができる。Tm値を特に効果的に上昇させることで、例えば、本実施形態の核酸のTm値上昇化剤以外にTm値に影響を与える物質が存在しない場合において、特定(共)重合体を含む本実施形態の核酸のTm値上昇化剤の存在下で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値と、当該上昇化剤が存在しない以外は同一の条件で測定したハイブリダイゼーションした二本鎖核酸のTm値との差異を、35℃以上とすることができる。
【0032】
上記式(2)の条件を満たす限りにおいて、特定(共)重合体の重量平均分子量Mには特に制限は無く、化学構造パラメーターPとの関係や、本実施形態の核酸のTm値上昇化剤の使用形態や他の成分等との関係で適宜好適な重量平均分子量Mの特定(共)重合体を入手又は重合すればよい。
核酸等と反応液を形成する容易さや、実用上許容可能な時間及びコストで重合を行う観点からは、特定(共)重合体の重量平均分子量M(Mw)は400~400000であることが好ましい。重量平均分子量M(Mw)は、600~360000であることがより好ましく、700~300000であることがさらに好ましく、3500~250000であることがとりわけ好ましく、8000~240000であることが特に好ましく、100000~200000であることが最も好ましい。
特定(共)重合体の重量平均分子量M(Mw)は、液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定したものである。より具体的には、例えば本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
特定(共)重合体の重量平均分子量Mは、重合に寄与するモノマーの種類及び組成、重合工程における温度、時間及び圧力、重合工程で用いるラジカル開始剤等の種類及び量等を調整することで、適宜調整することができる。
【0033】
特定(共)重合体の回転粘度[η]にも特に制限は無く、本実施形態の核酸のTm値上昇化剤における使用形態や製造コスト等を考慮して適宜設定することができるが、25.0質量%水溶液の状態で、1.0~1500.0mPa・s(25℃)であることが好ましく、1.5~1000.0mPa・s(25℃)であることが特に好ましい。
回転粘度[η]は、当業界において慣用される方法により測定することができるが、例えば、AMETEK Brookfield製デジタルB型粘度計DV-3Tにより測定することができる。測定にあたっては、ULAアダプターを使用し、典型的には液量16ml、液温25℃で測定することができる。
回転粘度[η]も、重合時の希釈濃度、重合に寄与するモノマーの種類及び組成、重合工程における温度、時間及び圧力、重合工程で用いるラジカル開始剤等の種類及び量等を調整することで、適宜調整することができる。
【0034】
それ以外の構成単位
特定(共)重合体は、上記(ジ)アリルアミン系構成単位(α)に加えて、それ以外の構成単位を有していてもよい。
それ以外の構成単位としては、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)以外の各種カチオン性構成単位、各種のアニオン性構成単位、各種のノニオン性構成単位等を挙げることができる。
化学構造パラメーターPに寄与し得るカルボニル基やスルホニル基を含む構成単位を選択できるという観点から、特定(共)重合体はノニオン性構成単位を更に含むことが好ましい。
【0035】
アニオン性構成単位
本実施形態においては、アニオン性構成単位を有することで、特定(共)重合体がいわゆる両性高分子となる。
本実施形態におけるアニオン性構成単位は、下記の構造式(III)、(IV)、又は(V)で示される構造を有することが好ましい。このとき、化学構造パラメーターPに寄与し得るカルボニル基を特定(共)重合体の構造中に導入することができる。
【化25】

【化26】

【化27】

但し上記式(III)中、Rは、水素又はメチル基であり、(III)、(IV)、及び(V)中、Yは、結合するカルボキシ基ごとにそれぞれ独立に水素、Na、K、NH、1/2Ca、1/2Mg、1/2Fe、1/3Al、又は1/3Feである。
アニオン性構成単位は、カルボキシル基等のアニオン性基を有する限りにおいて、上記の構造式(III)、(IV)、及び(V)のいずれにも該当しない構造を有していてもよく、例えばメタクリル酸、アクリル酸等から導かれる構成単位であってもよい。
アニオン性構成単位は、前記(ジ)アリルアミン系構成単位(α)のポジティブチャージを調整するため、Tm値の上昇量を所望の値に調整したい場合には、含まれることが好ましいが、Tm値の上昇量を高めるという観点からは含まれないことが好ましい。
【0036】
特定(共)重合体がアニオン性構成単位を有する場合には、1種類のみのアニオン性構成単位を単独で用いてもよいし、複数種類の互いに異なる構造のアニオン性構成単位を組み合わせて用いてもよい。
特定(共)重合体がアニオン性構成単位を有する場合のアニオン性構成単位の含有量には特に制限はなく、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)の種類及び量との関係において適切な化学構造パラメーターPが得られる様に適宜設定すればよい。
アニオン性構成単位が不飽和ジカルボン酸から導かれる場合には、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)とのモル比が、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)/アニオン性構成単位=1/0.1~0.1/1であることが好ましく、1/0.5~2/1であることが特に好ましい。
アニオン性構成単位の少なくとも一部は、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸から導かれるものであってもよい。アニオン性構成単位が不飽和モノカルボン酸から導かれる場合には、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)/アニオン性構成単位)の比率は2/1~0.1/1であることが好ましく、1/1~0.5/1であることが特に好ましい。
【0037】
ノニオン性構成単位
本実施形態においては、ノニオン性構成単位を有することで、化学構造パラメーターPに寄与し得るカルボニル基やスルホニル基を含む構成単位を選択して導入することもできる。
本実施形態におけるノニオン性構成単位は、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)を導く単量体と共重合可能な非イオン性の単量体から導かれる構成単位であればよく、特にそれ以外の制限はないが、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリルアミド系単量体、アクリルアミド系単量体、二酸化硫黄等から導かれる構成単位を、好ましく用いることができる。より具体的な例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、アクリロイルモルフォリン、イソプロピルアクリルアミド、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、又は二酸化硫黄から導かれる構成単位を挙げることができる。中でも、二酸化硫黄、アクリルアミド系単量体等から導かれる構成単位が特に好ましい。
【0038】
ノニオン性構成単位は、通常、単量体として非イオン性の単量体を用いることで、高分子中に導入することができる。特定(共)重合体がノニオン性構成単位を有する場合のノニオン性構成単位の含有量には特に制限はなく、またノニオン性構成単位の種類によってもその好適な量は異なるが、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)の種類及び量との関係において適切な化学構造パラメーターPが得られる様に、当業者において適宜設定することができる。例えば、二酸化硫黄から導かれる構成単位を導入することで、化学構造パラメーターPに寄与し得るスルホニル基を特定(共)重合体の構造中に導入することができる。
例えば、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)とのモル比が、(ジ)アリルアミン系構成単位(α)/ノニオン性構成単位=1/0.05~1/0.05であることが好ましく、1/0.1~0.1/1であることが特に好ましい。
ノニオン性構成単位がメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリルアミド系単量体、又はアクリルアミド系単量体から導かれる場合には、上記比率は1/0.05~1/0.5であることが好ましく、1/0.1~1/1であることが特に好ましい。
ノニオン性構成単位が二酸化硫黄から導かれる場合には、上記比率は1/0.1~1/1.5であることが好ましく、1/0.25~1/1であることが特に好ましい。
【0039】
特定(共)重合体の製造方法
特定(共)重合体の製造方法には特に制限はなく、従来当該技術分野において公知の方法で製造することができるが、例えば(ジ)アリルアミン系構成単位(α)に対応する構造の(ジ)アリルアミン系単量体、及び所望によりノニオン性構成単位等のそれ以外構成単位に対応する単量体を共重合することにより製造することができる。
【0040】
(ジ)アリルアミン系構成単位(α)に対応する構造の(ジ)アリルアミン系単量体等を(共)重合する場合の溶媒は特に限定されず、水系の溶媒であっても、アルコール、エーテル、スルホキシド、アミド等の有機系の溶媒であってもよいが、水系の溶媒であることが好ましい。
(ジ)アリルアミン系構成単位(α)に対応する構造の(ジ)アリルアミン系単量体等を(共)重合する場合の単量体濃度は単量体の種類により、また(共)重合を行う溶媒の種類により、異なるが、水系の溶媒の場合通常10~75質量%である。この共重合反応は、通常、ラジカル重合反応であり、ラジカル重合触媒の存在下に行なわれる。ラジカル重合触媒の種類は特に限定されるものでなく、その好ましい例として、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、アゾビス系、ジアゾ系などの水溶性アゾ化合物が挙げられる。
【0041】
ラジカル重合触媒の添加量は、一般的には全単量体に対して0.1~20モル%、好ましくは1.0~10モル%である。重合温度は一般的には0~100℃、好ましくは5~80℃であり、重合時間は一般的には1~150時間、好ましくは5~100時間である。重合雰囲気は、大気中でも重合性に大きな問題を生じないが、窒素などの不活性ガスの雰囲気で行なうこともできる。
【0042】
特定単量体
本発明において用いられる特定化合物の他の一形態である特定単量体は、
一般式(I-c)
【化28】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である単量体構造(A2)(以下、「構成単位(A2)」ともいう。)、
一般式(I-f)
【化29】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造である単量体構造(B2)(以下、「構成単位(B2)」ともいう。)、並びに
一般式(I-h)
【化30】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である単量体構造(C2)(以下、「構成単位(C2)」ともいう。)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構造(構成単位)を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、分子量Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物((ジ)アリルアミン系単量体)である。
【数23】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成(単位)種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数24】
【0043】
特定単量体においては、上記式(1)中、単量体であるためにn=1であり、したがって分母と分子とのmは相殺される。また、式(I-c)、(I-f)及び(I-h)で表される構造のいずれにおいても1個のアミノ基しか存在しないので、aijは1である。したがって、式(1)は、下記式(1’)に簡略化することができる。
P=j+o+2×s ・・・ (1’)
(式中、jは単量体構造中のアミノ基の級数、oは単量体構造中のカルボニル基の数、sは単量体構造中のスルホニル基の数を示す。)
【0044】
上記式(2)の条件を満たす限りにおいて、特定単量体の化学構造パラメーターPの値自体には特に制限は無いが、現実的な特定単量体の分子量Mとの関係において上記式(2)の条件を満たす観点などから、2.00~4.00であることが好ましく、2.00~3.00であることが特に好ましい。
特定単量体の化学構造パラメーターPは、特定単量体の化学構造、特にアミノ基の級数や、カルボニル基及び/又はスルホニル基の有無及び数を選択、調整することによって適宜調整することが可能である。
化学構造パラメーターPの値を高いものとする等の観点から、特定単量体は、第2級又は第3級のアミン又はアンモニウム塩を有することが好ましい。
【0045】
特定単量体においては、上記式(2)中の分子量Mは、当該特定単量体分子の分子量であり、特定単量体の化学構造から計算することができる。
上記式(2)の条件を満たす限りにおいて、特定単量体の分子量Mには特に制限は無いが、化学構造パラメーターPとの関係において上記式(2)の条件を容易に満たすことや、取り扱いの容易さ等の観点から、100~700であることが好ましく、120~300であることが特に好ましい。
特定単量体についても、上記特定(共)重合体と同様に、化学構造パラメーターPと分子量Mとが、上記式(3)を満たす関係を有することが好ましく、上記式(4)を満たす関係を有することがより好ましい。
【0046】
単量体構造(A2)
特定単量体の構造の一選択肢である単量体構造(A2)(構成単位(A2))は、下記一般式(I-c)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、である。
【化31】

式(I-c)中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。Rの好ましい例は、構成単位(A1)に関して上記にて説明したものと同様である。
単量体構造(A2)が一般式(I-c)で表される構造の酸付加塩である場合の好ましい酸付加塩の例も、構成単位(A1)に関して上記にて説明したものと同様である。
【0047】
好ましい単量体構造(A2)の具体例として、ジアリルメチルアミン塩酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩等を挙げることができる。
【0048】
単量体構造(B2)
特定単量体の構造の一選択肢である単量体構造(B2)(構成単位(B2))は、下記一般式(I-f)で表される構造である。
【化32】

式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。
及びRの好ましい例は、構成単位(B1)に関して上記にて説明したものと同様である。
カウンターイオンXa-の好ましい例も、構成単位(B1)に関して上記にて説明したものと同様である。
好ましい単量体構造(B2)の具体例として、ジアリルジノナデシルアンモニウムクロリド、ジアリルジイコシルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0049】
単量体構造(C2)
特定単量体の構造の一選択肢である単量体構造(C2)(構成単位(C2))は、下記一般式(I-h)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、である。
【化33】

式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。
及びRの好ましい例は、構成単位(C1)に関して上記にて説明したものと同様である。
単量体構造(C2)が一般式(I-h)で表される構造の酸付加塩である場合の好ましい酸付加塩の例も、構成単位(C1)に関して上記にて説明したものと同様である。
【0050】
好ましい単量体構造(C2)の具体例として、N,N-ジメチルアリルアミン、メトキシカルボニル化アリルアミン等を挙げることができる。
【0051】
以上説明した特定(共)重合体及び特定単量体を総合して、本発明において用いられる特定化合物を、以下の様に特定することもできる。
すなわち、本発明における特定化合物は、一般式(I-a)、一般式(I-b)若しくは一般式(I-c)
【化34】

【化35】

(式中、Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~10のアラルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(A)、
一般式(I-d)、一般式(I-e)若しくは一般式(I―f)
【化36】

【化37】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、Xa-はカウンターイオンを示し、aは該カウンターイオンの価数を示す。)で表される構造を有する構成単位(B)、並びに
一般式(I-g)若しくは一般式(1―h)
【化38】

【化39】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、又は炭素数5~6のシクロアルキル基を示す。)で表される構造、又はその酸付加塩である構造、を有する構成単位(C)、
からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の(ジ)アリルアミン系の構成単位を有し、
下記式(1)で算出される化学構造パラメーターPと、分子量Mとが下記式(2)を満たす関係を有する(ジ)アリルアミン系化合物、である。
【数25】

(式中、nは前記(ジ)アリルアミン系化合物を構成する構成単位種の数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oiは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、siは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。)
【数26】

ここで、構成単位(A)は、上記の構成単位(A1)と構成単位(A2)(単量体構造(A2))とを総称したものであり、構成単位(B)は、上記の構成単位(B1)と構成単位(B2)(単量体構造(B2))とを総称したものであり、構成単位(C)は、上記の構成単位(C1)と構成単位(C2)(単量体構造(C2))とを総称したものである。
【0052】
用途等
本発明の核酸のTm値上昇化剤は、二本鎖核酸に対して顕著なTm値の上昇をもたらす。Tm値の特性上、完全に相補的な関係にある二本鎖と、ミスマッチがあり、完全に相補的な関係にない二本鎖では、核酸のTm値上昇化剤を添加した際のTm値上昇幅に相違が生じることが予想される。このため、Tm値を利用して、基準配列に対する変異をより高感度で検出し得ることが期待される。また、本発明の核酸のTm値上昇化剤を添加した溶液中で核酸増幅サイクルを実施すると、完全に相補的な関係にある二本鎖と、ミスマッチがあり、完全に相補的な関係にない二本鎖では、増幅効率の差がより大きくなることが予想される。従って、核酸増幅でより効率的に高感度で変異を検出することが期待される。また、核酸増幅反応において、アニーリング温度を高めることができるため、用いるプライマーを設計する際に、GC含量への依存を低減することができ、プライマー設計の自由度が大きくなることが期待される。
核酸増幅方法としては、特に限定は無く、例えば、PCR法、TMA法、LAMP法、ICAN法、SDA法、LCR法、NASBA法、HDA法、RCA法、RPA法等を例示することが出来るが、これらには限定されない。
【0053】
また、Tm値の上昇は、二本鎖核酸の安定化を意味する。したがって、本願発明のTm上昇化剤は、核酸医薬品や核酸分析に供する試料を安定化させるために好適に使用することが可能である。
具体的な核酸分析に供する試料としては、医学及び臨床診断、医薬組成物の開発及び評価、食品分析、食品製造のモニタリング、農業、並びに環境分析及び多くの研究分野等における試料を例示することが出来るが、これらには限定されない。
【0054】
従って、本発明の一実施形態では、本発明の核酸のTm値上昇化剤を核酸を含む溶液中に添加する核酸の安定化方法、ならびに核酸と共に本発明の核酸のTm値上昇化剤を含む水溶液が提供される。
【実施例
【0055】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は、いかなる意味においても、これらの実施例により限定されるものではない。
【0056】
重量平均分子量Mの測定ならびに構造パラメーターPの決定
(重量平均分子量M)
重合体の重量平均分子量M(Mw)は、日立L-6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。
溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI-101示差屈折率、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS-220HQ(排除限界分子量3,000)とGS-620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μLを用いた。溶離液には、0.4mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。
標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000、48290、66200、117900、205500などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0057】
(構造パラメーターP)
各実施例または比較例の核酸のTm値上昇化剤に含まれる(共)重合体又は単量体の構造パラメーターPは、下式により決定した。
【数27】

式中、nは(共)重合体又は単量体を構成する構成単位数を示し、mは構成単位iのモル比を示し、aijは構成単位i中のj級アミン(又はアンモニウム塩)の数を示し、oは構成単位i中のカルボニル基の数を示し、sは構成単位i中のスルホニル基の数を示す。
【0058】
[実施例1]
1-1.ポリマー水溶液(核酸のTm値上昇化剤)
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(モノマー1)と、アクリルアミド(モノマー2)とを以下の重合条件1で共重合してなり、モノマー1に由来する構成単位1とモノマー2に由来する構成単位2とのモル比が8:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが180000である、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重体を10.0質量%含み、pHが7.0である、ポリマー水溶液20.0μLを調製した。構造パラメーターPは3.78であり、P/M1/4は2.62であった。
重合条件1:温度計、撹拌機、冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコに65.0%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド119.39g(0.48モル)、アクリルアミド4.26g(0.06モル)、蒸留水149.24gを仕込み、内温を50℃に昇温した。15質量%のV-50(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)水溶液を、当該水溶液中のV-50の量がモノマー全量に対して0.2質量%となる量だけ添加し重合を開始した。V-50の量がそれぞれ22、25時間後にモノマー全量に対して0.2質量%、28、46、53時間後にモノマー全量に対して0.3質量%となる量だけ、前記V-50水溶液を添加し、72時間反応させた。
【0059】
1―2.核酸分子
核酸のTm値上昇化剤を添加した際のTm値上昇値を評価するために、野生型KRAS遺伝子センス鎖のExon2の一部に由来する40merDNAオリゴマーおよびこれに相補的な配列からなるアンチセンス鎖40merDNAオリゴマーを用いた。両核酸分子の塩基配列は以下の通りである。
【表1】
【0060】
1-3.反応液の調製
上記ポリマー水溶液および核酸分子を用いて、以下の反応液1および2を調製した(反応液2における(共)重合体の濃度は1.0質量%であった)。
【表2】
【0061】
1-4.Tm上昇値の測定
得られた反応液1および2を、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific社製)にセットし、95℃で15秒間加熱した後、40℃で1分間保温し、次いで、0.3秒毎に蛍光計測を実施しながら、95℃まで昇温させDNA融解曲線を得た後、95℃で15秒間保持した。
得られたDNA融解曲線から、微分法によりTm値を求め、反応液2のTm値から反応液1のTm値を引いてTm上昇値を決定した。反応液1のTm値は、58.00℃であり、反応液2のTm値は、93.30℃であった。この結果、Tm上昇値は35.3℃であった。
【0062】
<実施例2>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(モノマー1)と、アクリルアミド(モノマー2)とを以下の重合条件2で共重合してなり、モノマー1に由来する構成単位1とモノマー2に由来する構成単位2とのモル比が8:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが10000である、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重体を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは3.78であり、P/M1/4は5.40であった。また、Tm上昇値は33.3℃であった。
重合条件2:温度計、撹拌機、冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコに65.0%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド124.37g(0.50モル)、アクリルアミド4.44g(0.06モル)、次亜リン酸ナトリウム0.85g、蒸留水84.39gを仕込み、内温を50℃に昇温した。28.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液を、当該水溶液中の過硫酸アンモニウムの量がモノマー全量に対して0.2質量%となる量だけ添加し重合を開始した。過硫酸アンモニウムの量がそれぞれ4時間後にモノマー全量に対して0.3質量%、23時間後にモノマー全量に対して0.5質量%、28時間後にモノマー全量に対して1.0質量%となる量だけ前記過硫酸アンモニウム水溶液を添加し48時間反応させた。
【0063】
<実施例3>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(構成単位1に対応するモノマー)を重合してなり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが8500である、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(製品名:PAS-H-1L、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは4.00であり、P/M1/4は6.67であった。また、Tm上昇値は33.3℃であった。
【0064】
<実施例4>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(構成単位1に対応するモノマー)を重合してなり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが30000である、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(製品名:PAS-H-5L、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは4.00であり、P/M1/4は4.86であった。また、Tm上昇値は33.5℃であった。
【0065】
<実施例5>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(モノマー1)と、二酸化硫黄(モノマー2)とを共重合してなり、モノマー1に由来する構成単位1とモノマー2に由来する構成単位2とのモル比が1:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが4000である、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体(製品名:PAS-A-5、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは3.00であり、P/M1/4は3.40であった。また、Tm上昇値は33.8℃であった。
【0066】
<実施例6>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルメチルアミン塩酸塩(モノマー1)と、二酸化硫黄(モノマー2)とを共重合してなり、モノマー1に由来する構成単位1とモノマー2に由来する構成単位2とのモル比が1:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが3000である、ジアリルメチルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体(製品名:PAS-2201CL、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.50であり、P/M1/4は2.11であった。また、Tm上昇値は24.0℃であった。
【0067】
<実施例7>
核酸のTm値上昇化剤として、アリルアミン(モノマー1)と、ジメチルアリルアミン(モノマー2)とを以下の重合条件3で共重合してなり、モノマー1に由来する構成単位1とモノマー2に由来する構成単位2とのモル比が1:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが1000である、アリルアミン・ジメチルアリルアミン共重合体を含む水溶液を用いた以外は、実施例1同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.00であり、P/M1/4は1.42であった。また、Tm上昇値は24.6℃であった。
重合条件3:温度計、撹拌機、冷却管を備えた1Lの四つ口フラスコに58.01質量%のアリルアミン塩酸塩209.67g(1.3モル)と63.61質量%のジメチルアリルアミン塩酸塩248.51g(1.3モル)を仕込み、60℃に昇温した。開始剤V-50(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)を、V-50の量がモノマー全量に対して12モル%となる量だけ3分割して添加し、72時間重合を行った。その後、48時間60℃で加熱分解処理した。その後、30℃以下の冷却下で濃度25質量%の水酸化ナトリウムを449.28g(2.81モル)添加し、40℃で24時間反応させた。その後、エバポレーターによる脱モノマー(50℃、3時間)を行った。脱モノマー後、濃度15%に調整して電気透析による脱塩(約3時間、電導度が下がりきってから1時間後に終了)を行った。
【0068】
<実施例8>
核酸のTm値上昇化剤として、以下の反応条件1で得られる、アリルアミン(構成単位1)と、尿素化アリルアミン(構成単位2)とを含み、構成単位1と構成単位2とのモル比が1:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが15000である、50モル%尿素化ポリアリルアミンを含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.50であり、P/M1/4は1.41であった。また、Tm上昇値は22.8℃であった。
反応条件1:温度計、撹拌機、冷却管を備えた10Lの四つ口フラスコに49.77質量%のアリルアミン塩酸塩重合体(製品名:PAA-HCl―3L、ニットーボーメディカル製)1.88kg(10.00モル)、希釈水2.21kgを仕込んだ。その後、50℃に昇温し、7.50質量%のシアン酸ナトリウム水溶液4.33kg(5.00モル)を滴下し、一晩反応させた。その後、30℃以下の冷却下で濃度25質量%の水酸化ナトリウムを800g(5.00モル)添加し、減圧により脱モノマー(65℃、20時間)を行った。脱モノマー後、濃度15%に調整して電気透析による脱塩(約20時間、電導度が下がりきってから1時間後に終了)を行った。
【0069】
<実施例9>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルアミン(構成単位1)を重合してなり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが5000である、ポリジアリルアミン(製品名:PAS-21、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.00であり、P/M1/4は0.95であった。また、Tm上昇値は21.9℃であった。
【0070】
<比較例1>
核酸のTm値上昇化剤として、以下の反応条件2で得られる、アリルアミン(構成単位1)と、メトキシカルボニル化アリルアミン(構成単位2)とを含み、構成単位1と構成単位2とのモル比が1:1であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが15000である、50モル%メトキシカルボニル化ポリアリルアミンを含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.00であり、P/M1/4は0.72であった。また、Tm上昇値は15.2であった。
反応条件2:温度計、撹拌機、冷却管を備えた10Lの四つ口フラスコに15.00質量%のアリルアミン重合体(製品名:PAA-15C、ニットーボーメディカル製)3.81kg(10.00モル)を仕込んだ。その後、40℃に昇温し、99.00質量%炭酸ジメチル0.45kg(5.00モル)を滴下し、45℃で一晩反応させた。その後、減圧により副生したメタノールを除去した。(50℃、20時間)を行った。その後、濃度15%に調整して、50%メトキシカルボニル化ポリアリルアミン水溶液を得た。
【0071】
<比較例2>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルアミン塩酸塩(構成単位1)を重合してなり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが50000である、ポリジアリルアミン塩酸塩(製品名:PAS-21CL、ニットーボーメディカル製)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは2.00であり、P/M1/4は0.53であった。また、Tm上昇値は18.1℃であった。
【0072】
<比較例3>
核酸のTm値上昇化剤として、アリルアミン塩酸塩(構成単位1)と、ジアリルアミン塩酸塩(構成単位2)とを以下の重合条件4で共重合してなり、構成単位1と構成単位2とのモル比が1:19であり、GPC測定により得られる重量平均分子量Mが40000である、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合体を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この共重合体の構造パラメーターPは1.95であり、P/M1/4は0.52であった。また、Tm上昇値は18.2℃であった。
重合条件4:温度計、撹拌機、冷却管を備えた1Lの四つ口フラスコに57.22質量%のアリルアミン塩酸塩10.63g(0.065モル)と65.22質量%のジアリルアミン塩酸塩253.02g(1.235モル)と希釈水31.35g(濃度58質量%となる量)を仕込み、60℃に昇温した。28.5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を、当該水溶液中の過硫酸アンモニウム量がモノマー全量に対して0.25質量%となる量だけ添加し重合を開始させた。3、5、21時間後に0.25質量%、23、25、27、29時間後に0.50質量%添加し、さらに一晩反応させた。
【0073】
<比較例4>
核酸のTm値上昇化剤として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(構成単位1)の単量体(分子量M:161.5)を含む水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tm上昇値を決定した。この単量体の構造パラメーターPは4.00であり、P/M1/4は17.95であった。また、Tm上昇値は15.4℃であった。
【0074】
各実施例および比較例で得られた結果を纏めて以下に示す。
【表3】
【0075】
各実施例では、核酸のTm値上昇化剤として、P/M1/4が0.95~6.67の(ジ)アリルアミン化合物を含む水溶液が使用され、20℃以上のTm上昇値を示した。特に、P/M1/4が3.40~6.67である(ジ)アリルアミン化合物を含む水溶液が使用された実施例1~5では、33℃以上のTm上昇値を示した。一方で、P/M1/4が、0.72以下であった(ジ)アリルアミン化合物を含む水溶液が使用された比較例1~3では、20℃未満のTm上昇値を示した。また、P/M1/4が17.95である、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの単量体を用いた比較例4では、Tm上昇値は15.4℃であり、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの重合体を用いた実施例3や4と比較してその値は低かった。
【配列表】
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