(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】単結晶膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20240313BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240313BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20240313BHJP
C30B 25/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C30B29/16
C23C16/40
C23C16/448
C30B25/02 Z
(21)【出願番号】P 2017161675
(22)【出願日】2017-08-24
【審査請求日】2020-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】井川 拓人
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】立木 林
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-70248(JP,A)
【文献】特開平2-258691(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101559921(CN,A)
【文献】国際公開第2017/013399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/16
C23C 16/40
C23C 16/448
C30B 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物を含む原料溶液を用いて結晶成長により基板上に単結晶膜を製造する方法であって、前記金属化合物が、二価の周期律表第14族金属のハロゲン化物であり、前記基板が
正方晶の結晶構造を有する結晶基板であり、前記単結晶膜は前記周期律表第14族金属の酸化物を含
み且つコロンバイト構造を有することを特徴とする単結晶膜の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化物が塩化物である請求項1に記載の単結晶膜の製造方法。
【請求項3】
周期律表第14族金属がスズ(Sn)である請求項1又は2に記載の単結晶膜の製造方法。
【請求項4】
前記原料溶液が溶媒として水を含む、請求項1~3のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
【請求項5】
前記原料溶液がドーパントを含む、請求項1~4のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
【請求項6】
前記ドーパントが、フッ素、銀、又はアンチモンを含む、請求項5に記載の単結晶膜の製造方法。
【請求項7】
前記基板の主面が、(100)結晶面又は(200)結晶面である請求項1~6のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶膜の製造方法に関し、特に、コロンバイトの結晶構造(a crystal structure of columbite)を有する単結晶膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末(PDA)等の電子表示機器分野において、その表示装置やセンサーの電極には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)等に、所望により、他の不純物を添加した酸化物、窒化物、酸窒化物などにより、形成される透明導電膜や、銅やその合金等により形成される金属膜が用いられている。中でも透明導電膜は、電子表示機器の表示装置に設置されるタッチパネルの構成要素であることから、その需要が高まっている。
【0003】
近年では、電子表示機器分野などにおいて、透明導電膜の光学電気特性の向上が課題となってきており、電子表示装置に使用される液晶パネルの高精細化に伴い、画素ピッチの縮小に対応して透明導電膜の導電率向上や透過率向上が求められている。特許文献1には、基材上に積層するためのITO膜及びFTO膜からなる透明電極膜であって、FTO膜の表面の結晶構造の一部又は全部が斜方晶であることを特徴とする透明電極膜が記載されている。しかしながら、膜に含まれる多結晶部分や非晶部分によって、表面凹凸があり、光透過率や導電率において、必ずしも満足のいくものではなかった。そのため、多結晶部分や非晶部分のない良質な単結晶膜の製造方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許公開WO2009-157177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面平滑性に優れ、光学電気特性に優れた単結晶膜を工業的有利に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、2価のハロゲン化スズを用いてミストCVD法により、YSZ基板上に酸化スズを形成すると、驚くべきことに、コロンバイトの結晶構造を有する酸化スズの単結晶膜が形成できることを見出し、得られた単結晶膜が、表面平滑性に優れ、光透過性が高いこと等を種々知見し、このような単結晶膜の製造方法が従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 金属化合物を含む原料溶液を用いて結晶成長により基板上に単結晶膜を製造する方法であって、前記金属化合物が、二価の周期律表第14族金属のハロゲン化物であることを特徴とする単結晶膜の製造方法。
[2] ハロゲン化物が塩化物である前記[1]に記載の単結晶膜の製造方法。
[3] 周期律表第14族金属がスズ(Sn)である前記[1]又は[2]に記載の単結晶膜の製造方法。
[4] 原料溶液が溶媒として水を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
[5] 原料溶液がドーパントを含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
[6] ドーパントが、フッ素、銀、又はアンチモンを含む、前記[5]に記載の単結晶膜の製造方法。
[7] 基板が、正方晶の結晶構造を有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
[8] 基板の主面が、(100)結晶面又は(200)結晶面である前記[1]~[6]のいずれかに記載の単結晶膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法は、表面平滑性に優れ、光学電気特性に優れている単結晶膜を工業的有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において用いられる成膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
【
図2】実施例におけるXRD測定結果を示す図である。
【
図4】実施例及び比較例におけるXRD測定結果を示す図である。
【
図5】実施例における断面SEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法は、金属化合物を含む原料溶液を用いて結晶成長により基板上に単結晶膜を製造する方法であって、前記金属化合物が、二価の周期律表第14族金属のハロゲン化物であることを特長とする。本発明においては、前記ハロゲン化物が塩化物であるのが好ましく、また、前記の周期律表第14族金属がスズ(Sn)であるのが好ましい。また、本発明においては、前記原料溶液が、溶媒として水を含むのが好ましく、また、前記基板が、正方晶の結晶構造を有するのが好ましい。
【0011】
このような好ましい方法により単結晶膜を製造すると、コロンバイトの結晶構造を有する単結晶からなり、実質的に炭素を含まない単結晶膜を得ることができる。前記単結晶はコロンバイトの結晶構造を有していれば特に限定されず、通常、金属酸化物を含む。前記金属酸化物としては、金属と酸素を含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、周期律表第14族金属の酸化物などが挙げられる。周期律表第14族金属としては、例えば、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)などが挙げられる。本発明においては、前記金属酸化物が、酸化スズ(SnO2)であるのが、光学電気特性がより向上するので好ましい。なお、「実質的に炭素を含まない」とは、前記単結晶膜を、SIMS装置と標準試料を用いてイオン濃度に換算し、炭素がバックグラウンドノイズと同等であり、存在の有無が確認できないほど微量、つまり、実質的に含有していないことを意味する。また、「周期律表」は、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC)にて定められた周期律表を意味する。
【0012】
前記単結晶膜は、ドーパントを含んでいてもよい。前記ドーパントは、n型ドーパントおよびp型ドーパント等のいずれであってもよく、公知のドーパントであってよい。本発明においては、前記ドーパントが、フッ素、銀、又はアンチモンを含むのが好ましい。ドーパントの含有量は、特に限定されないが、前記単結晶膜の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%~10原子%であるのが最も好ましい。このような好ましい範囲とすることで、前記単結晶膜の電気特性をより向上させることができる。
【0013】
また、前記単結晶膜の面方位等は特に限定されないが、本発明においては、主面が(100)結晶面又は(200)結晶面であるのが、透過性により優れたものになるので好ましい。また、前記単結晶膜は、オフ角を有していてもよい。「オフ角」とは、所定の結晶面(主面)を基準面として形成される傾斜角をいい、通常、所定の結晶面(主面)と結晶成長面とのなす角度をいう。前記オフ角の傾斜方向は特に限定されないが、好適には例えば0.2°~8.0°などが挙げられる。このような好ましいオフ角を有することにより、前記単結晶膜の電気特性がさらにより優れたものになる。
【0014】
本発明において用いられる好ましい結晶成長手段としては、例えば
図1のようなミストCVD装置を用いて、原料溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られたミストまたは液滴をキャリアガスで成膜室内に搬送し(搬送工程)、ついで成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、基板上に、単結晶膜を成膜する(成膜工程)手段などが挙げられる。
【0015】
以下、本発明の好ましい態様について説明するが、本発明はこれら好ましい態様に限定されるものではない。
【0016】
(基板)
前記基板としては、特に限定されないが、主面の全部または一部に、正方晶の結晶構造を有している基板などが好適な例として挙げられ、より好適には、主面が(100)結晶面又は(200)結晶面の正方晶の結晶構造を有している基板などが挙げられる。また、前記結晶基板は、オフ角を有してしてもよい。前記結晶基板の基板形状は、板状であって、前記単結晶膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよい。前記基板の形状は、特に限定されず、略円形状(例えば、円形、楕円形など)であってもよいし、多角形状(例えば、3角形、正方形、長方形、5角形、6角形、7角形、8角形、9角形など)であってもよく、様々な形状を好適に用いることができる。また、本発明においては、大面積の基板を用いることもでき、このような大面積の基板を用いることによって、前記単結晶膜の面積を大きくすることができる。前記結晶基板の基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などが挙げられる。また、前記結晶基板の表面には、バッファ層等が設けられていてもよい。前記バッファ層としては、斜方晶の金属酸化膜や単結晶膜材料の非晶膜などが挙げられる。
【0017】
(霧化・液滴化工程)
霧化・液滴化工程は、原料溶液を霧化または液滴化する。原料溶液の霧化手段または液滴化手段は、原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは0.1~10μmである。
【0018】
(原料溶液)
前記原料溶液は、ミストCVDにより、前記単結晶膜が得られる溶液であれば特に限定されない。前記原料溶液としては、例えば、2価の前記金属(好ましくは周期律表第14族金属)のハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物等)の水溶液などが挙げられる。原料溶液中の前記金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%~50モル%であり、より好ましくは0.01モル%~50モル%である。
【0019】
また、原料溶液には、前記ドーパントが含まれていてもよい。原料溶液にドーパントを含ませることにより、イオン注入等を行わずに、結晶構造を壊すことなく、単結晶膜の導電性を容易に制御することができる。前記ドーパントとしては、例えば前記金属が少なくともスズ(Sn)を含む場合には、フッ素、銀又はアンチモン等が挙げられる。前記ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよいし、ドーパントを約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよい。
【0020】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましく、水であるのが最も好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。
【0021】
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を成膜室内に搬送する。前記キャリアガスは、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスを用いる場合には、希釈ガスの流量が、0.001~5L/分であるのが好ましく、0.1~5L/分であるのがより好ましい。
【0022】
(成膜工程)
成膜工程では、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、前記結晶基板上に、単結晶膜を成膜する。熱反応は、熱でもって前記ミストまたは液滴が反応すればそれでよく、化学反応であってもよいし、物理反応であってもよい。その他の反応であってもよい。反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、200℃~500℃がより好ましく、250℃~450℃が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0023】
上記のようにして得られた単結晶膜は、表面平滑性が良好であり、光学電気特性に優れており、工業的に有用なものである。前記単結晶膜は、そのままで又は必要に応じて表面処理等が施されて、各種機器又はその部品等に用いられる。前記機器としては、電子機器又は光学機器などが好適な例として挙げられる。前記電子機器又は光学機器としては、例えば、光学物品、電気機器、電子部品、燃料電池、太陽電池、車両、産業用機器などが挙げられ、より具体的には、例えば、タッチスクリーン、色素増感型太陽電池、薄膜太陽電池、キャパシタ、レンズ、窓材などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0026】
2.原料溶液の作製
二塩化スズ水溶液(SnCl2・2H2O)0.05mol/Lを原料溶液24aとした。
【0027】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、YSZ(100)基板をサセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を400℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を2.5L/minに調節した。なお、キャリアガス(希釈)は用いなかった。また、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0028】
4.単結晶膜の形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを微粒子化させて原料微粒子を生成した。この原料微粒子が、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、400℃にて、供給管27内でミストが反応して、基板20上に単結晶膜が形成された。なお、成膜時間は20分間であった。
【0029】
(評価)
上記で得られた単結晶膜について、X線回折装置を用いて、それぞれの結晶構造を測定評価した。結果を
図2示す。
図2から明らかなとおり、単結晶膜は、コロンバイトの結晶構造を有することがわかる。また、SEMにて単結晶膜を観察した。結果を
図3に示す。
図3から明らかなように、表面凹凸がなく、非常にきれいな表面であることがわかる。
【0030】
(比較例1)
原料溶液として、二塩化スズ水溶液(SnCl
2・2H
2O)の代わりに、四塩化スズ水溶液(SnCl
4・5H
2O)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化スズを成膜した。得られた膜につき、X線回折装置にて膜の同定を行ったところ、コロンバイトの結晶構造を形成することができなかった。なお、実施例1と比較例1のXRD測定結果を
図4に示す。
【0031】
(実施例2)
成膜温度を500℃としたこと以外は、実施例1と同様にして酸化スズを成膜した。得られた膜の断面を断面SEMにて観察した。結果を
図5に示す。
図5から明らかなように、得られた単結晶膜は、非常に表面がきれいであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の単結晶膜の製造方法は、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材など、単結晶膜が用いられるあらゆる分野に有用である。
【符号の説明】
【0033】
19 ミストCVD装置
20 基板
21 サセプタ
22a キャリアガス供給手段
22b キャリアガス(希釈)供給手段
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 供給管
28 ヒーター
29 排気口