(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】サーミスタならびにその製品およびシステム
(51)【国際特許分類】
H01C 7/04 20060101AFI20240313BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01C7/04
H01C7/02
(21)【出願番号】P 2019068482
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】松田 時宜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207676(WO,A1)
【文献】特開2016-201540(JP,A)
【文献】特公昭49-002954(JP,B1)
【文献】特開2000-100606(JP,A)
【文献】特開2015-053356(JP,A)
【文献】特開2008-066622(JP,A)
【文献】特開2003-183075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
H01C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタ膜と電極とを少なくとも含むサーミスタであって、前記サーミスタ膜が結晶性金属酸化物を含み、
前記結晶性金属酸化物が酸化ガリウムまたはその混晶を含み、前記結晶性金属酸化物中のGaの含有量が、金属成分中10原子%以上であ
り、前記サーミスタ膜がMnを含むことを特徴とするサーミスタ。
【請求項2】
前記サーミスタ膜中のGaの含有量が、金属成分中30原子%以上である
請求項1に記載のサーミスタ。
【請求項3】
200℃~250℃ におけるB定数(K)が8000以上である請求項1または2に記載のサーミスタ。
【請求項4】
160℃~250℃におけるB定数(K)が8000以上である請求項1~3のいずれかに記載のサーミスタ。
【請求項5】
200℃~250℃におけるB定数(K)が10000以上である請求項1~4のいずれかに記載のサーミスタ。
【請求項6】
前記サーミスタ膜が結晶性酸化物半導体を含む、請求項1~5のいずれかに記載のサーミスタ。
【請求項7】
前記電極が2以上ある請求項1~
6のいずれかに記載のサーミスタ。
【請求項8】
前記サーミスタ膜の第1面側に配置される第1の電極と、第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2の電極と、を有する請求項
7記載のサーミスタ。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載のサーミスタを含む製品。
【請求項10】
温度センサーまたは温度制御機器である請求項
9記載の製品。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれかに記載のサーミスタまたは請求項
9もしくは請求項
10に記載の製品を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタ膜を用いるサーミスタならびにその製品およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器などの製品または電子機器を具備するシステムにおいて、電子機器の温度補償に温度センサーやガスセンサーが用いられており、温度センサーやガスセンサーには、サーミスタが用いられている。前記サーミスタの種類には、負温度係数(Negative Temperature Coefficient;NTC)サーミスタと正温度係数(Positive Temperature Coefficient;PTC)サーミスタとがある。
【0003】
負温度係数(NTC)サーミスタは、温度が上がると抵抗が減少する現象を利用したサーミスタで、広範囲な温度で抵抗が指数関数的に減少するn型半導体の性質が強く、大部分のサーミスタがこれに該当する。正温度係数(PTC)サーミスタは、温度が上がり一定温度を越えると急激に抵抗が増加する現象を利用した特殊なサーミスタである。
【0004】
近年においては、電子機器の小型化や薄型化が進んでおり、電子機器に用いられている温度センサーやガスセンサー、さらにはこれらのセンサーに用いられるサーミスタ素子にも小型化や薄型化が要求されている。このような要求に対し、サーミスタ膜を用いたサーミスタ素子が検討されているが、機械的な強度が弱かったり、サーミスタ特性が十分でなかったりして満足のいくものではなかった。
【0005】
特許文献1には、常温真空粉末噴射法により形成されたNTCサーミスタ膜が記載されている。しかしながら、特許文献1記載のNTCサーミスタ膜は、機械的強度が弱く、薄膜化も困難であり、また、真空装置を用いて、複雑な工程を必要とするなどの問題があった。
【0006】
また、特許文献2には、エアロゾルデポジション法にて成膜されたサーミスタ膜が記載されている。しかしながら、サーミスタ膜をエアロゾルデポジション法で得ようとすると、小口径のノズルで勢いよくエアロゾルを基板に噴射して、サーミスタ原料粒子を衝突させなければサーミスタ特性の良い粒状が緻密な膜を得ることはできず、また、このような膜を得るにしても、膜の面積を広げることが困難であり、長時間かけて膜状にしても、密着性や表面平坦性も悪く、特許文献2に記載の方法により成膜されたサーミスタ膜は、数ミクロン以上の厚膜でなければサーミスタ特性が十分でないか、または膜としてまだまだ満足のいくものが得られなかったという問題があった。
【0007】
以上のとおり、従来では、サーミスタ膜を得ようとしても、サーミスタ原料微粒子を単に堆積させた場合には、膜の機械強度が弱く、サーミスタ特性も不十分であり、また、サーミスタ原料微粒子を基板に吹き付けて衝突させて緻密な膜を形成した場合でも数ミクロン以上の膜を形成しなければ十分なサーミスタ特性が得られず、このようなサーミスタ特性が得られる膜も密着性や表面平坦性が悪い等の問題があった。
【0008】
また、特許文献3には、薄膜サーミスタ素子が記載されているが、特許文献3記載の薄膜サーミスタ素子では、電極内に一定量の酸素および窒素を含有させなければサーミスタ膜との密着性を確保できず、また、縦型サーミスタ素子も実現困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-251757号公報
【文献】特開2015-115438号公報
【文献】特許第5509393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、200℃~250℃において高感度かつ良好なサーミスタ特性を実現できるサーミスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の条件下でミストCVD法を用いて、GaとMnとを含む結晶性サーミスタ膜を成膜することに成功し、このようにして得られた膜が、160℃~250℃において高感度かつ良好なサーミスタ特性を実現できることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] サーミスタ膜と電極とを少なくとも含むサーミスタであって、前記サーミスタ膜がGaを含み、前記サーミスタ膜中のGaの含有量が、金属成分中10原子%以上であることを特徴とするサーミスタ。
[2] サーミスタ膜と電極とを少なくとも含むサーミスタであって、前記サーミスタ膜がGaを含み、前記サーミスタ膜中のGaの含有量が、金属成分中30原子%以上であることを特徴とするサーミスタ。
[3] 200℃~250℃におけるB定数(K)が8000以上である前記[1]または[2]に記載のサーミスタ。
[4] 160℃~250℃におけるB定数(K)が8000以上である前記[1]~[3]のいずれかに記載のサーミスタ。
[5] 200℃~250℃におけるB定数(K)が10000以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載のサーミスタ。
[6] 前記サーミスタ膜が結晶性酸化物半導体を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のサーミスタ。
[7] 前記サーミスタ膜がGaとMnとを含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のサーミスタ。
[8] 前記電極が2以上ある前記[1]~[7]のいずれかに記載のサーミスタ。
[9] 前記サーミスタ膜の第1面側に配置される第1の電極と、第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2の電極と、を有する前記[8]記載のサーミスタ。
[10] 前記[1]~[9]のいずれかに記載のサーミスタを含む製品。
[11] 温度センサーまたは温度制御機器である前記[10]記載の製品。
[12] 前記[1]~[9]のいずれかに記載のサーミスタまたは前記[10]もしくは[11]に記載の製品を含むシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサーミスタは、200℃~250℃において高感度かつ良好なサーミスタ特性を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のサーミスタを示す概略構成図である。
【
図2】本発明のサーミスタを示す概略構成図である。
【
図3】本発明のサーミスタを示す概略構成図である。
【
図4】本発明のサーミスタを示す概略構成図である。
【
図5】本発明のサーミスタを示す概略構成図である。
【
図6】本発明のサーミスタが回路基板に実装された概略構成図である。
【
図7】実施例1で用いた成膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
【
図10】実施例1におけるXRDデータを示す図である。
【
図11】本発明の製品が用いられた燃料電池システムの好適な一態様を示す構成図である。
【
図12】実施例1~3におけるサーミスタ特性の評価結果を示す図である。
【
図13】実施例4~6におけるサーミスタ特性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のサーミスタは、サーミスタ膜と電極とを少なくとも含むサーミスタであって、前記サーミスタ膜が、ガリウム(Ga)を金属成分中10原子%以上含む結晶または結晶性酸化物半導体からなることを特長とする。
前記結晶は、Gaとマンガン(Mn)とを含むのが好ましい。また、前記結晶は、コランダム構造を有していてもよいし、β-ガリア構造を有していてもよいし、他の結晶構造を有していてもよい。また、前記結晶は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。本発明においては、前記結晶が金属酸化物を主成分として含むのが好ましい。ここで、「主成分」とは、例えば前記結晶中の前記金属酸化物が、原子比0.5以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明においては、前記結晶中の金属酸化物が原子比0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。前記金属酸化物は、Gaを含んでいれば特に限定されないが、GaとMnとを含むのが好ましい。前記結晶中のGaの含有量は、金属成分中、通常10原子%以上であるが、30原子%以上であるのが好ましく、60原子%以上であるのがより好ましく、90原子%以上であるのが最も好ましい。また、前記結晶中のMnの含有量は、前記金属酸化物中におけるGaの含有量に対して、0.1原子%以上であるのが好ましい。また、前記結晶は、GaおよびMnを含むのが好ましく、さらに、GaおよびMn以外の他の金属成分が1種または2種以上含まれている混晶であってもよい。他の金属成分としては、例えば、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ストロンチウム(Sr)、Mn以外の遷移金属などが挙げられ、より具体的には、Al、In、Sr、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)またはクロム(Cr)などが挙げられる。
【0016】
前記結晶は、ドーパントを含んでいてもよい。前記ドーパントを含ませることにより、電気特性をより良好なものとすることができる。前記ドーパントとしては、例えば、n型ドーパント、p型ドーパントなどが挙げられる。前記n型ドーパントとしては、例えば、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。前記p型ドーパントとしては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などが挙げられる。
【0017】
前記結晶性酸化物半導体は、通常、ガリウム(Ga)を含んでいるが、本発明においては、Gaとマンガン(Mn)とを含むのが好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体は、コランダム構造を有していてもよいし、β-ガリア構造を有していてもよいし、他の結晶構造を有していてもよい。単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。前記結晶性酸化物半導体は、通常、前記ドーパントまたは/および酸素空孔を含む。前記ドーパントのキャリア濃度は、特に限定されないが、例えば、約1×1014/cm3~1×1022/cm3であるのが好ましく、約1×1015/cm3~1×1022/cm3であるのがより好ましい。前記の好ましい結晶性酸化物半導体中のGaの含有量は、金属成分中、通常10原子%以上であるが、30原子%以上であるのが好ましく、60原子%以上であるのがより好ましく、90原子%以上であるのが最も好ましい。また、前記の好ましい結晶性酸化物半導体中のMnの含有量は、金属酸化物中におけるGaの含有量に対して、0.1原子%以上であるのが好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体は、GaとMnとを含むのが好ましいが、さらに、GaおよびMn以外の他の金属成分が1種または2種以上含まれている混晶であってもよい。他の金属成分としては、例えば、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ストロンチウム(Sr)、Mn以外の遷移金属などが挙げられ、より具体的には、Al、In、Sr、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)またはクロム(Cr)などが挙げられる。
【0018】
前記サーミスタ膜は、サーミスタに用いられる膜であって、前記結晶または前記結晶性酸化物半導体を主成分として含んでいるのが好ましい。ここで、「主成分」とは、例えば前記サーミスタ膜中の前記結晶または前記結晶性酸化物半導体が、原子比0.5以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の金属酸化物が原子比0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。また、前記サーミスタ膜の膜厚は特に限定されないが、10μm以下が好ましく、0.001μm~10μmであるのがより好ましい。
【0019】
前記サーミスタ膜は、種々のサーミスタに好適に用いられる。本発明においては、前記サーミスタが、サーミスタ膜と、サーミスタ膜の第1面側に配置される第1の電極と、第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2の電極と、を有するサーミスタであるのが好ましい。
【0020】
以下、前記サーミスタの好適な実施態様について説明するが、本発明はこれら実施態様に制限されることはない。
【0021】
本発明のサーミスタの好適な実施態様の一つは、前記サーミスタ膜と電極とを少なくとも備えることを特長とする。本発明においては、前記サーミスタが縦型デバイスであるのが好ましい。このような好ましいサーミスタ素子である場合には、低抵抗かつ放熱性においてより優れたものになる。
また、本発明のサーミスタは、前記サーミスタ膜の第1面側に配置される第1電極と、サーミスタ膜の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極と、を有することが好ましい。
図1は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子100は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面側に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極52と、を有する。第1電極51と第2電極52とは、それぞれ縦方向に導通するように構成されている。さらに、第1電極51に接触して配置される基体54を有していてもよい。基体54は導電性を有する金属膜を含んでいてもよい。導電性の金属膜を基体表面に設けることで、回路基板に実装しやすくなるという利点がある。また、基体54は特に限定されないが、例えばコランダム構造を有する結晶基板であってもよい。基体を結晶基板とし、結晶成長させてサーミスタ膜を成膜することで、表面がより平坦なサーミスタ膜を得ることができるという利点がある。
図2は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子200は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面側に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極52と、を有する。本態様のサーミスタ素子200は、第1電極51とサーミスタ膜50の間に位置する層53を有していてもよい。層53は結晶膜であってもよい。
図3は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子300は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。
図3で示すように、第2電極を複数設けることも可能である。
図4は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子400は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。
図5は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子500は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。第1電極51に接触して配置される基体54が、例えばサファイア基板である場合、第1電極51と電気的に接続された上面電極を第2電極52と同じ側に配置することも可能である。また、
図6で示すように、電子機器1000の回路基板70上にある第1電極71上にサーミスタ素子100の第1電極51を導電性の基体54を介して半田付けなどで電気的に実装し、サーミスタ素子300の上面に位置する第2電極と、回路基板の第2電極72電極とをワイヤーボンディング60などにより電気的に接続することができる。このようにして、縦型デバイスとして用いることが可能である。
【0022】
(サーミスタ膜)
前記サーミスタ膜について、より詳細に説明する。前記サーミスタ膜は、NTCサーミスタ膜であってもよいし、PTCサーミスタ膜であってもよい。前記サーミスタ膜は、例えば、以下に述べる好ましい態様により得ることができる。
【0023】
前記好ましい態様について説明する。本発明では、前記のサーミスタ膜の形成を、ミストCVD法により行うのが好ましく、サーミスタ膜の原料溶液を霧化・液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られた霧化液滴(ミストを含む)に対し、キャリアガスを供給して、前記霧化液滴を基体まで搬送し(搬送工程)、ついで前記霧化液滴を前記基体上で熱反応させること(成膜工程)により行うのがより好ましい。
【0024】
(基体)
前記基体は、特に限定されず、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。本発明においては、前記基体が導電性材料または結晶を含んでいるのが好ましい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。本発明においては、前記基板が、表面の一部または全部に結晶を有するものであるのが好ましく、結晶成長側の主面の全部または一部に結晶を有している結晶基板であるのがより好ましく、結晶成長側の主面の全部に結晶を有している結晶基板であるのが最も好ましい。前記結晶は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、三方晶系または六方晶系の結晶であるのが好ましく、コランダム構造を有している結晶であるのがより好ましい。なお、本発明においては、例えば前記結晶基板がコランダム構造を有する場合には、前記主面は、c面、a面またはm面であるのが、よりサーミスタ特性を向上させることができるので好ましい。また、前記結晶基板は、オフ角を有していてもよく、前記オフ角としては、例えば、0.1°~12.0°のオフ角などが挙げられる。ここで、「オフ角」とは、基板表面と結晶成長面とのなす角度をいう。前記基板形状は、板状であって、前記結晶性酸化物半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいが、本発明においては、前記基体が、例えばニッケル箔や貴金属箔等のような導電性を有する金属膜が表面に形成されているのも好ましい。また、本発明においては、前記基板は導電性基板であるのも好ましい。前記導電性基板としては、例えば、周期律表第3族~第15族に属する1種または2種以上の金属が挙げられ、好適には1種または2種以上の遷移金属が挙げられ、より好適には周期律表第7族~第11族の1種または2種以上の金属が挙げられる。前記基板の形状は、特に限定されず、略円形状(例えば、円形、楕円形など)であってもよいし、多角形状(例えば、3角形、正方形、長方形、5角形、6角形、7角形、8角形、9角形など)であってもよく、様々な形状を好適に用いることができる。本発明においては、前記基板の形状を好ましい形状にすることにより、基板上に形成される膜の形状を設定することができる。また、本発明においては、大面積の基板を用いることもでき、このような大面積の基板を用いることによって、サーミスタ膜の面積を大きくすることができる。前記結晶基板の基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料は、例えば、α―Al2O3(サファイア基板)またはα―Ga2O3が好適に挙げられ、c面サファイア基板、a面サファイア基板、m面サファイア基板またはα酸化ガリウム基板(c面、a面又はm面)などがより好適な例として挙げられる。
【0025】
また、本発明においては、前記基体が平坦面を有するのが好ましいが、前記基体が表面の一部または全部に凹凸形状を有していてもよく、前記基体が結晶性基体である場合には、前記サーミスタ膜の結晶成長の品質をより良好なものとすることができるので好ましい。前記の凹凸形状を有する基体は、表面の一部または全部に凹部または凸部からなる凹凸部が形成されていればそれでよく、前記凹凸部は、凸部または凹部からなるものであれば特に限定されず、凸部からなる凹凸部であってもよいし、凹部からなる凹凸部であってもよいし、凸部および凹部からなる凹凸部であってもよい。また、前記凹凸部は、規則的な凸部または凹部から形成されていてもよいし、不規則な凸部または凹部から形成されていてもよい。本発明においては、前記凹凸部が周期的に形成されているのが好ましく、周期的かつ規則的にパターン化されているのがより好ましい。前記凹凸部の形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、ドット状、メッシュ状またはランダム状などが挙げられるが、本発明においては、ドット状またはストライプ状が好ましく、ドット状がより好ましい。また、凹凸部が周期的かつ規則的にパターン化されている場合には、前記凹凸部のパターン形状が、三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形状、円状、楕円状などの形状であるのが好ましい。なお、ドット状に凹凸部を形成する場合には、ドットの格子形状を、例えば正方格子、斜方格子、三角格子、六角格子などの格子形状にするのが好ましく、三角格子の格子形状にするのがより好ましい。前記凹凸部の凹部または凸部の断面形状としては、特に限定されないが、例えば、コの字型、U字型、逆U字型、波型、または三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形等が挙げられる。
【0026】
(原料溶液)
前記原料溶液は、サーミスタ膜の原料溶液であって、霧化および/または液滴化が可能なものであれば、特に限定されず、無機材料を含んでいても、有機材料を含んでいてもよい。本発明においては、前記原料溶液は、通常、前記結晶性酸化物の金属を含む。前記金属は、金属単体であっても、金属化合物であってもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。前記原料溶液中の前記金属の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、0.001重量%~80重量%であり、より好ましくは0.01重量%~80重量%である。
【0027】
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0028】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましく、水であるのが最も好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。
また、前記溶媒として水を用いる場合には、200℃~250℃におけるB定数(K)が10000以上であるサーミスタに有用なサーミスタ膜を容易に得ることができ、前記溶媒として低級アルコールを用いる場合には、160℃~250℃におけるB定数(K)が8000以上であるサーミスタに有用なサーミスタ膜を容易に得ることができる。
【0029】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
前記原料溶液には、前記ドーパントが含まれていてもよい。前記原料溶液にドーパントを含ませることにより、得られる膜の特性を制御することができる。
【0030】
(霧化・液滴化工程)
前記霧化・液滴化工程は、前記原料溶液を霧化液滴にする。霧化・液滴化手段は、前記原料溶液を霧化および/または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化液滴化手段であるのが好ましい。前記霧化液滴は、初速度がゼロで、空中に浮遊するものが好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。霧化液滴の液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
【0031】
(搬送工程)
前記搬送工程では、前記霧化・液滴化工程で得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴をキャリアガスでもって前記基体まで搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。本発明においては、前記キャリアガスが、酸素又は不活性ガスであるのがより好ましい。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、0.1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~10L/分であるのが好ましく、0.1~5L/分であるのがより好ましい。
【0032】
(成膜工程)
成膜工程では、前記霧化液滴を熱反応させて、前記基体上に前記サーミスタ膜を成膜する。前記熱反応は、熱でもって前記霧化液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行う。また、熱反応は、真空下、非真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、本発明においては、前記熱反応が非真空下で行われるのが好ましく、窒素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのがより好ましい。また、前記熱反応は、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。また、得られる膜の膜厚も、成膜時間を調整することにより、容易に調整することができる。なお、本発明においては、前記サーミスタ膜が、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。
【0033】
また、本発明においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行うのも好ましい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~1100℃であり、好ましくは500℃~1000℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよい。
【0034】
上記のようにして得られたサーミスタ膜は、良質でかつ密着性等の表面特性に優れており、そのままで、または剥離や加工等の処理が施された後、公知の手段を用いて、例えば、電極と積層されてサーミスタに用いられる。
【0035】
前記サーミスタの好適な製造方法は、第1電極を形成すること、該第1電極に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によって前記サーミスタ膜を形成すること、前記サーミスタ膜に少なくとも一部が接触するように、第2電極を形成すること、を含む。
図8は製法の一例を示す。基体54上に第1電極51を形成し、さらに、第1電極51上に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によってサーミスタ膜50を成長させる。さらに、第2電極52を形成する。
図9は集合的な製法の一例を示す。大判の基体540上に第1電極層510を形成する。第1電極層510に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によってサーミスタ膜5000を形成して集合体を得た後、縦横にダイシングして複数のサーミスタ素子を得る。個々のサーミスタ素子上に第2電極52を形成してもよい。
【0036】
また、前記サーミスタは、温度センサーまたは温度制御装置等に常法にもとづき用いられ、前記サーミスタが搭載された温度センサーまたは温度制御装置等は、さらに、公知の手段を用いて、電子機器等の製品またはシステムに適用される。なお、前記製品としては、例えば、200℃以上の温度センサーや温度制御装置等が用いられる製品などが挙げられる。また、本発明においては、前記製品とCPUとを少なくとも備えるシステムにも、好適に用いることができる。なお、前記製品としては、特に限定されず、例えば、携帯端末、業務用機器、調理機器、製造機器、ガス処理器、CPU搭載機器、携帯電話等の基地局や5G無線用デバイス、車用センサーデバイス、新規デバイス(例えば、IoTやAI等)用温度補償素子などが挙げられる。
【0037】
前記温度センサーを用いた好適な態様を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図11は、前記製品と、CPU(制御器)とを備える発電システムの一例を示すブロック図である。前記発電システム30は、例えば、燃料電池システム32を含み、燃料電池システム32は、都市ガス等の原料ガスを水蒸気改質、水性シフト反応および選択酸化反応させて水素が主成分である燃料ガスを生成する燃料処理器33と、燃料処理器33から供給される燃料ガスと酸化剤ガスとを化学反応させて発電を行うスタック(燃料電池スタック)34と、スタック34の発電により得られた出力直流電力を交流電力に交換するインバータ35と、燃料電池システム32の起動、発電、終了、停止の一連の動作を制御する制御器(CPU)36と、酸化剤ガスで酸素を含んでいる空気をスタック34に供給する送風機37と、スタック34が発電する際に発生した熱を回収し、温水として貯水タンクに蓄える熱交換機38とを備えており、200℃~250℃における温度制御装置が内部に設けられている。なお、
図7において、燃料電池システム32は、例えば家庭内に設置されている分電盤39を介し商用交流と接続されている。また、分電盤39と燃料電池システムとの間には、家電製品や工業用製品などの負荷40が接続されている。そして、スタック34により発電が開始されると、インバータ35を介して負荷40に電気が供給され、負荷40が作動し、さらに、スタック34の発電による熱も活用し、貯水タンク31に温水として効率的に蓄えられるように構成されている。そして、貯水タンク31にはセンサー41として温度センサーが設けられており、貯水タンク31の温度を制御している。なお、図示しないが、燃料処理器33にもガスセンサーが設けられており、燃料ガスの発生を制御している。
以上のように、前記サーミスタ膜は、温度制御装置や温度センサーが用いられ得るあらゆるシステムにおいて有用である。
【0038】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
1.成膜装置
図7を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排気する排気口とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
【0040】
2.原料溶液の調製
水にマンガンアセチルアセトナートとガリウムアセチルアセトナートとを、得られる膜のGa:Mnが原子比で100:2となるように混合し、これを原料溶液とした。
【0041】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、サファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて900℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bをそれぞれ開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3L/分に調節した。キャリアガスとして窒素を用いた。なお、キャリアガス(希釈)の流量も0.5L/分とした。
【0042】
4.成膜
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、500℃にて、基板10近傍でミストが熱反応して、基板10上に膜厚0.5μmの膜が形成された。なお、成膜時間は60分間であった。得られた膜は、剥離等が生じることなく、密着性に優れた膜であり、機械的強度も十分であった。XRDの結果を
図10に示す。
図10から、得られた膜がα-Ga
2O
3を含んでおり、コランダム構造を有することがわかる。また、抵抗値を測定し、サーミスタ特性を評価した。評価結果を
図12に示す。
図12から良好なNTCサーミスタ特性を有することがわかる。なお、200℃~250℃においてB定数は10337であった。
【0043】
(実施例2~3)
膜組成比を下記表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に実施例2および実施例3としてそれぞれのサーミスタ膜を得た。なお、実施例2~3として得られたそれぞれの膜は、実施例1と同様、剥離等が生じることなく、密着性に優れた膜であり、機械的強度も十分であった。また、抵抗値を測定し、サーミスタ特性を評価したところ、実施例1のサーミスタ膜と同様、良好なNTCサーミスタ特性を有していた(
図12、表1)。
【0044】
【0045】
(実施例4~6)
溶媒として水の代わりにメタノールを用いて、膜組成比を下記表2のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にしてサーミスタ膜を得た。なお、実施例4~6として得られたそれぞれの膜は、実施例1と同様、剥離等が生じることなく、密着性に優れた膜であり、機械的強度も十分であった。また、抵抗値を測定し、サーミスタ特性を評価したところ、実施例1のサーミスタ膜と同様、良好なNTCサーミスタ特性を有していた(
図13、表2)。なお、実施例4~6では、下記表2には記載されていないが、160℃~250℃におけるB定数がいずれも8000以上であった。
【0046】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の結晶、結晶性酸化物半導体、サーミスタ膜は、サーミスタ素子に有用であり、電子機器の温度補償に温度センサーやガスセンサーに用いることができる。また、このような温度センサーやガスセンサーは、電子機器などの製品または電子機器を具備するシステムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 成膜装置
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b 原料微粒子
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
7 成膜室
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板
30 発電システム
31 貯水タンク
32 燃料電池システム
33 燃料処理器
34 スタック
35 インバータ
36 制御器
37 送風機
38 熱交換機
39 分電盤
40 負荷
41 センサー
50 サーミスタ膜
51 第1電極
52 第2電極
100 サーミスタ素子
200 サーミスタ素子
300 サーミスタ素子
400 サーミスタ素子
500 サーミスタ素子