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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240313BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L21/365
H01L29/78 301V
H01L29/78 301F
H01L27/06 102A
H01L27/04 F
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020013611
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120972
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】沖川 満
(72)【発明者】
【氏名】木口 学
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-542004(JP,A)
【文献】特開2009-088488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10
H01L 31/18
H01L 21/365
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 21/822
H01L 29/78
H01L 29/12
H10K 30/60
H10K 30/65
H10K 39/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル形成領域と、前記チャネル形成領域に正孔を供給する正孔注入用領域とを含む結晶層を少なくとも有する半導体素子を含む半導体装置であって、前記正孔注入用領域がp型ドーパントを含み、前記結晶層が、結晶性酸化物半導体を主成分として含み、さらに、前記結晶層のバンドギャップよりもエネルギーが小さい光を発光する発光素子を備え、前記発光素子が、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
前記結晶性酸化物半導体がガリウムおよび/またはイリジウムを含む、請求項記載の半導体装置。
【請求項3】
前記結晶性酸化物半導体が少なくともガリウムを含む、請求項またはに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する請求項1~3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子がMOSFETである請求項1~のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子がパワーデバイスである、請求項1~のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子がノーマリーオフである請求項1~のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項1~のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス等として有用な半導体装置およびそれを備える半導体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての応用も期待されている。当該酸化ガリウムはインジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶することによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInAlGa(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5~2.5)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
【0003】
そして、近年においては、酸化ガリウム系のp型半導体が検討されており、例えば、特許文献1には、β-Ga系結晶を、MgO(p型ドーパント源)を用いてFZ法により形成したりすると、p型導電性を示す基板が得られることが記載されている。また、特許文献2には、MBE法により形成したα-(AlGa1-x単結晶膜にp型ドーパントをイオン注入してp型半導体を形成することが記載されている。しかしながら、これらの方法では、p型半導体の作製は実現困難であり、実際に、これらの方法でp型半導体の作製に成功したとの報告はなされていない。そのため、実現可能なp型酸化物半導体及びその製造方法が待ち望まれていた。
【0004】
また、例えば、非特許文献1に記載されているように、RhやZnRh等をp型半導体に用いることも検討されているが、Rhは、成膜時に特に原料濃度が薄くなってしまい、成膜に影響する問題があり、有機溶媒を用いても、Rh単結晶が作製困難であった。また、ホール効果測定を実施してもp型とは判定されることがなく、測定自体もできていない問題もあり、また、測定値についても、例えばホール係数が測定限界(0.2cm/C)以下しかなく、実用上の問題となった。また、ZnRhは移動度が低く、バンドギャップも狭いため、LEDやパワーデバイスに用いることができない問題があり、これらは必ずしも満足のいくものではなかった。
【0005】
ワイドバンドギャップ半導体として、RhやZnRh等以外にも、p型の酸化物半導体が種々検討されている。特許文献3には、デラフォサイトやオキシカルコゲナイド等をp型半導体として用いることが記載されている。しかしながら、これらの半導体は、移動度が1cm/V・s程度かまたはそれ以下であり、電気特性が悪く、α-Ga等のn型の次世代酸化物半導体とのpn接合がうまくできない問題もあった。
【0006】
なお、従来より、Irは知られている。例えば、特許文献4には、イリジウム触媒としてIrを用いることが記載されている。また、特許文献5には、Irを誘電体に用いることが記載されている。また、特許文献6には、電極にIrを用いることが記載されている。しかしながら、Irをp型半導体に用いることは知られていなかったが、最近、本出願人らにより、p型半導体として、Irを用いることが検討され、研究開発が進められている(非特許文献2)。
ところで、高耐圧・大電流を可能とするパワーデバイスにおいては、p型半導体の特性動作が安定せず、電気特性が悪くなるといった問題があった。そのため、電気特性が良好であり半導体動作の安定性に優れた、信頼性のある半導体装置が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-340308号公報
【文献】特開2013-58637号公報
【文献】特開2016-25256号公報
【文献】特開平9-25255号公報
【文献】特開平8-227793号公報
【文献】特開平11-21687号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】F.P.KOFFYBERG et al., "optical bandgaps and electron affinities of semiconducting Rh2O3(I) and Rh2O3(III)", J. Phys. Chem. Solids Vol.53, No.10, pp.1285-1288, 1992
【文献】Shin-ichi Kan et al., "Electrical properties of α-Ir2O3/α-Ga2O3 pn heterojunction diode and band alignment of the heterostructure",Appl. Phys. Lett.113, 212104(2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パワーデバイス等として有用な半導体特性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、チャネル形成領域と、前記チャネル形成領域に正孔を供給する正孔注入用領域とを含む結晶層を少なくとも有する半導体素子を含む半導体装置であって、前記正孔注入用領域がp型ドーパントを含み、さらに、前記結晶層のバンドギャップよりもエネルギーが小さい光を発光する発光素子を備え、前記発光素子が、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されている半導体装置が、電気特性および半導体動作の安定性が良好であり、半導体素子の信頼性に優れていることを知見し、このような半導体装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] チャネル形成領域と、前記チャネル形成領域に正孔を供給する正孔注入用領域とを含む結晶層を少なくとも有する半導体素子を含む半導体装置であって、前記正孔注入用領域がp型ドーパントを含み、さらに、前記結晶層のバンドギャップよりもエネルギーが小さい光を発光する発光素子を備え、前記発光素子が、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されていることを特徴とする、半導体装置。
[2] 前記結晶層が、結晶性酸化物半導体を主成分として含む前記[1]記載の半導体装置。
[3] 前記結晶性酸化物半導体がガリウムおよび/またはイリジウムを含む、前記[2]記載の半導体装置。
[4] 前記結晶性酸化物半導体が少なくともガリウムを含む、前記[2]または[3]に記載の半導体装置。
[5] 前記結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する前記[2]~[4]のいずれかに記載の半導体装置。
[6] 前記半導体素子がMOSFETである前記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体装置。
[7] 前記半導体素子がパワーデバイスである、前記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体装置。
[8] 前記半導体素子がノーマリーオフである前記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体装置。
[9] 半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[1]~[8]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置は、パワーデバイス等として有用であり、半導体特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明において好適に用いられる成膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
図2】本発明の好適な半導体装置の一例を模式的に示す上方斜視図である。
図3】電源システムの好適な一例を模式的に示す図である。
図4】システム装置の好適な一例を模式的に示す図である。
図5】電源装置の電源回路図の好適な一例を模式的に示す図である。
図6】実施例における光をon/offした際の電流変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体装置は、チャネル形成領域と、前記チャネル形成領域に正孔を供給する正孔注入用領域とを含む結晶層を少なくとも有する半導体素子を含む半導体装置であって、前記正孔注入用領域がp型ドーパントを含み、さらに、前記結晶層のバンドギャップよりもエネルギーが小さい光を発光する発光素子を備え、前記発光素子が、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されていることを特長とする。前記半導体素子は、チャネル形成領域と、前記チャネル形成領域に正孔を供給する正孔注入用領域とを含む結晶層を少なくとも有する。
【0015】
前記正孔注入用領域は、前記チャネル形成領域に正孔を供給するものであって、通常、p型ドーパントを含む結晶層の一部であり、前記結晶層と同じ結晶構造を有するのが好ましい。前記p型ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記p型ドーパントとしては、例えば、Mg、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Tl、Pb、N、P等及びこれらの2種以上の元素などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、前記p型ドーパントが、Mg、ZnまたはCaであるのが好ましい。本発明においては、前記チャネル形成領域近傍に前記正孔注入用領域が設けられているのが好ましい。
【0016】
前記結晶層は、前記チャネル形成領域と前記正孔注入用領域とを含むものであれば、特に限定されないが、本発明の実施態様においては、2eV以上のバンドギャップを有するものであるのが好ましく、3eV以上のバンドギャップを有するのがより好ましく、4eV以上のバンドギャップを有するのが最も好ましい。また、本発明の実施態様においては、前記結晶層が、結晶性酸化物半導体を主成分として含むのが好ましい。前記結晶性酸化物半導体はガリウムおよび/またはイリジウムを含むのが好ましく、少なくともガリウムを含むのがより好ましい。また、本発明の実施態様においては、前記結晶性酸化物半導体がコランダム構造またはβ-ガリア構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。なお、「主成分」とは、例えば結晶性酸化物半導体がα-Gaである場合、前記結晶層の全ての金属元素中のガリウムの原子比が50%以上の割合でα-Gaが含まれていればそれでよい。本発明の実施態様においては、前記酸化物半導体膜の全ての金属元素中のガリウムの原子比が70%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。前記結晶層は、多結晶層であってもよいし、単結晶層であってもよい。また、本発明の実施態様においては、前記結晶層がp型ドーパントを含むのが、前記発光素子による光の照射によって、p型半導体の動作特性をより優れたものとすることができるので、好ましい。
【0017】
前記結晶層は、半導体層であるのが好ましく、酸化ガリウムまたはその混晶を主成分として含む酸化物半導体膜からなるのがより好ましい。前記酸化物半導体膜は、p型半導体膜であってもよいし、n型半導体膜であってもよい。前記酸化ガリウムとしては、例えば、α-Ga、β-Ga、ε-Gaなどが挙げられるが、中でもα-Gaが好ましい。また、前記の酸化ガリウムの混晶としては、前記酸化ガリウムと、1種または2種以上の金属酸化物との混晶が挙げられ、前記金属酸化物の好適な例としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化鉄などが挙げられる。本発明の実施態様においては、前記混晶が、酸化ガリウムと酸化イリジウムとの混晶であるのが好ましい。なお、「主成分」とは、例えば酸化物半導体膜がα-Gaを主成分として含む場合、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの原子比が50%以上の割合でα-Gaが含まれていればそれでよい。本発明の実施態様においては、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの原子比が70%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。また、例えば酸化物半導体膜がα-Gaとα-Irとの混晶を主成分として含む場合、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムとイリジウムとの合計の原子比が50%以上の割合で前記混晶が含まれていればそれでよいが、本発明の実施態様においては、さらに、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの原子比が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。
【0018】
また、前記結晶層の厚みは、特に限定されず、1μm以下であってもよいし、1μm以上であってもよいが、本発明の実施態様においては、1μm以上であるのが好ましく、1μm~40μmであるのがより好ましく、1μm~25μmであるのが最も好ましい。前記結晶層の表面積は特に限定されないが、1mm以上であってもよいし、1mm以下であってもよい。なお、前記結晶層は、単層膜から構成されていてもよいし、多層膜から構成されていてもよい。
【0019】
前記結晶層は、ドーパントが含まれている酸化物半導体膜であるのが好ましい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のものであってよい。前記ドーパントとしては、n型ドーパント、p型ドーパント等が挙げられる。ドーパントの含有量は、前記酸化物半導体膜の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.0001原子%~20原子%であるのが最も好ましい。
【0020】
なお、前記n型ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってもよい。前記n型ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムおよびニオブ等から選択される一種または二種以上のn型ドーパントが挙げられる。前記p型ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記p型ドーパントとしては、例えば、Mg、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Tl、Pb、N、P等及びこれらの2種以上の元素などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、前記p型ドーパントが、Mg、ZnまたはCaであるのが好ましい。
【0021】
前記結晶層(以下、「半導体層」または「半導体膜」ともいう。)は、エピタキシャル結晶成長方法を用いて成膜することにより得ることが可能であるが、形成方法等は特に限定されない。前記エピタキシャル結晶成長方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の方法であってよい。前記エピタキシャル結晶成長方法としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法またはパルス成長法などが挙げられる。本発明の実施態様においては、前記エピタキシャル結晶成長方法が、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのが好ましい。
【0022】
本発明の実施態様においては、前記成膜を、金属を含む原料溶液を霧化し(霧化工程)、得られた霧化液滴をキャリアガスでもって前記基体近傍まで搬送し(搬送工程)、ついで、前記霧化液滴を熱反応させること(成膜工程)により行うのが好ましい。
【0023】
(原料溶液)
原料溶液は、成膜原料として金属を含んでおり、霧化可能であれば特に限定されず、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよい。前記金属は、金属単体であっても、金属化合物であってもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、ガリウム(Ga)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、ロジウム(Rh)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、レニウム(Re)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、前記金属が、少なくとも周期律表第4周期~第6周期の1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、少なくともガリウム、インジウム、アルミニウム、ロジウムまたはイリジウムを含むのがより好ましく、少なくともガリウムを含むのが最も好ましい。このような好ましい金属を用いることにより、半導体装置等により好適に用いることができるエピタキシャル膜を成膜することができる。
【0024】
本発明の実施態様においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0025】
前記原料溶液の溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明の実施態様においては、前記溶媒が水を含むのが好ましい。
【0026】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。前記添加剤の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、原料溶液に対し、0.001体積%~50体積%であり、より好ましくは、0.01体積%~30体積%である。
【0027】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれているのが好ましい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、上記したn型ドーパントまたはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1014/cm~1×1022/cmであってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm以上の高濃度で含有させてもよい。
【0028】
(霧化工程)
前記霧化工程は、金属を含む原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化し、霧化液滴を発生させる。前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液全体に対して、0.0001mol/L~20mol/Lが好ましい。霧化方法は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化方法であってよいが、本発明の実施態様においては、超音波振動を用いる霧化方法であるのが好ましい。本発明で用いられる霧化液滴(例えばミスト等)は、空中に浮遊するものであり、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、初速度がゼロで、空間に浮遊して搬送することが可能な霧化液滴であるのがより好ましい。霧化液滴の液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
【0029】
(搬送工程)
前記搬送工程では、前記キャリアガスによって前記霧化液滴を前記基体へ搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、不活性ガス(例えば窒素やアルゴン等)、または還元ガス(水素ガスやフォーミングガス等)などが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20LPMであり、より好ましくは0.1~10LPMである。
【0030】
(成膜工程)
成膜工程では、前記霧化液滴を反応させて、前記基体上に成膜する。前記反応は、前記霧化液滴から膜が形成される反応であれば特に限定されないが、本発明の実施態様においては、熱反応が好ましい。前記熱反応は、熱でもって前記霧化液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、原料溶液の溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度以下が好ましく、850℃以下がより好ましく、650℃以下が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明の実施態様においては、大気圧下で行われるのが蒸発温度の計算がより簡単になり、設備等も簡素化できる等の点で好ましい。また、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0031】
(基体)
前記基体は、前記膜(半導体膜)を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明の実施態様においては特に限定されない。
【0032】
前記基板は、板状であって、前記半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。前記基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、またはβ-ガリア構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、六方晶構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよい。
【0033】
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料としては、例えば、α-Al(サファイア基板)またはα-Gaが好適に挙げられ、a面サファイア基板、m面サファイア基板、r面サファイア基板、c面サファイア基板や、α型酸化ガリウム基板(a面、m面またはr面)などがより好適な例として挙げられる。β-ガリア構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えばβ-Ga基板、又はGaとAlとを含みAlが0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。また、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。
【0034】
本発明の実施態様においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行ってもよい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~650℃であり、好ましくは350℃~550℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは非酸素雰囲気下であり、より好ましくは窒素雰囲気下である。
【0035】
また、本発明の実施態様においては、前記基体上に、直接、前記半導体膜を設けてもよいし、バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層を介して前記半導体膜を設けてもよい。各層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法であってよいが、本発明の実施態様においては、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法が好ましい。
【0036】
以下、図面を用いて、前記ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法に好適に用いられる成膜装置19を説明する。図1の成膜装置19は、キャリアガスを供給するキャリアガス源22aと、キャリアガス源22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源22bと、キャリアガス(希釈)源22bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、成膜室30と、ミスト発生源24から成膜室30までをつなぐ石英製の供給管27と、成膜室30内に設置されたホットプレート(ヒーター)28とを備えている。ホットプレート28上には、基板20が設置されている。
【0037】
そして、図1に示すとおり、原料溶液24aをミスト発生源24内に収容する。次に、基板20を用いて、ホットプレート28上に設置し、ホットプレート28を作動させて成膜室30内の温度を昇温させる。次に、流量調節弁23(23a、23b)を開いてキャリアガス源22(22a、22b)からキャリアガスを成膜室30内に供給し、成膜室30の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量と、キャリアガス(希釈)の流量とをそれぞれ調節する。次に、超音波振動子26を振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを微粒子化させて霧化液滴24bを生成する。この霧化液滴24bが、キャリアガスによって成膜室30内に導入され、基板20まで搬送され、そして、大気圧下、成膜室30内で霧化液滴24bが熱反応して、基板20上に膜が形成する。
【0038】
本発明の実施態様においては、前記成膜工程にて得られた膜を、結晶層としてそのまま半導体素子に用いてもよいし、前記基体等から剥離する等の公知の方法を用いた後に結晶層として半導体素子に用いてもよい。
本発明の一態様において、前記半導体素子は絶縁性基板を備えていてもよく、横型の半導体素子であってもよいが、本発明の別の実施態様においては、縦型の半導体素子であってもよい。また、前記縦型の半導体素子は導電性基板を備えていてもよい。
【0039】
前記半導体素子は、とりわけ、パワーデバイスに有用である。前記半導体素子としては、例えば、トランジスタなどが挙げられるが、中でもMOSFETが好ましい。また、前記半導体素子はノーマリーオフであるのが好ましい。
【0040】
前記トランジスタとしては、例えば、前記結晶層、ゲート絶縁膜、ゲート電極、ソース電極(第1の電極)およびドレイン電極(第2の電極)を少なくとも含む半導体装置などが挙げられる。また、前記結晶層は、チャネル形成領域を含むのが好ましく、反転チャネル形成領域を含むのがより好ましい。本発明の実施態様においては、前記半導体素子が、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、前記半導体層が配置されている、縦型デバイスであるのが好ましい。
【0041】
前記反転チャネル形成領域は、通常、異なるタイプの導電性を示す半導体領域の間に設けられる。例えば、前記反転チャネル形成領域が、p型半導体層内に設けられる場合には、通常、n型半導体からなる半導体領域の間のp型半導体層内に設けられ、また、前記反転チャネル形成領域が、n型半導体層内に設けられる場合には、通常、p型半導体からなる半導体領域の間のn型半導体層内に設けられる。なお、各半導体領域の形成方法は、前記の結晶層の形成方法と同様であってよい。
【0042】
また、本発明の実施態様においては、前記反転チャネル形成領域上に、周期律表第15族の少なくとも1種の元素を含む酸化膜が積層されているのが好ましい。前記元素としては、例えば、窒素(N)、リン(P)などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、窒素(N)またはリン(P)が好ましく、リン(P)がより好ましい。例えば、ゲート絶縁膜と前記反転チャネル形成領域との間に、リンを少なくとも含む酸化膜を前記反転チャネル形成領域上に積層することにより、水素の半導体層への拡散を防止することができ、さらに界面準位を下げることもできるので、半導体素子、とりわけワイドバンドギャップ半導体の半導体素子に対し、より優れた半導体特性を与えることができる。なお、本発明の実施態様においては、前記酸化膜が、周期律表第15族の少なくとも1種の前記元素および周期律表第13族の1種または2種以上の金属を少なくとも含むのがより好ましい。前記金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などが挙げられるが、中でも、Gaおよび/またはAlが好ましく、Gaがより好ましい。また、前記酸化膜は、薄膜であるのが好ましく、膜厚100nm以下であるのがより好ましく、膜厚50nm以下であるのが最も好ましい。このような酸化膜を積層することにより、ゲートリークをより効果的に抑制することができ、半導体特性をより優れたものにすることができる。前記酸化膜の形成方法としては、例えば公知の方法などが挙げられ、より具体的には例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられるが、リン酸等による前記反転チャネル領域上への表面処理であるのが好ましい。
【0043】
また、本発明の実施態様においては、前記反転チャネル形成領域上に、ゲート絶縁膜を介して、ゲート電極が設けられているのが好ましいが、前記反転チャネル形成領域および前記酸化膜上に、ゲート絶縁膜を介して、ゲート電極が設けられているのも好ましく、このように構成することにより、水素の拡散防止等が容易となり、より良好な半導体特性を実現することができる。
【0044】
前記ゲート絶縁膜は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の絶縁膜であってよい。前記ゲート絶縁膜としては、例えば、SiO、Si、Al、GaO、AlGaO、InAlGaO、AlInZnGaO、AlN、Hf、SiN、SiON、MgO、GdO、リンを少なくとも含む酸化膜等の酸化膜が好適な例として挙げられる。前記ゲート絶縁膜の形成方法は、公知の方法であってよく、このような公知の形成方法としては、例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられる。ドライ法としては、例えば、スパッタ、真空蒸着、CVD、PLD等の公知の方法が挙げられる。ウェット法としては、例えば、スクリーン印刷やダイコート等の塗布方法が挙げられる。
【0045】
前記ゲート電極は、公知のゲート電極であってよく、かかる電極材料も導電性無機材料であってもよいし、導電性有機材料であってもよい。本発明の実施態様においては、前記電極材料が金属であるのが好ましい。前記金属としては、特に限定されないが、好適には例えば、周期律表第4族~第11族から選ばれる少なくとも1種の金属などが挙げられる。周期律表第4族の金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられるが、中でもTiが好ましい。周期律表第5族の金属としては、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などが挙げられる。周期律表第6族の金属としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)等から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、よりスイッチング特性等の半導体特性がより良好なものとなるのでCrが好ましい。周期律表第7族の金属としては、例えば、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などが挙げられる。周期律表第8族の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。周期律表第9族の金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。周期律表第10族の金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などが挙げられるが、中でもPtが好ましい。周期律表第11族の金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などが挙げられる。前記ゲート電極の形成方法としては、例えば公知の方法などが挙げられ、より具体的には例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられる。ドライ法としては、例えば、スパッタ、真空蒸着、CVD等の公知の方法が挙げられる。ウェット法としては、例えば、スクリーン印刷やダイコート等が挙げられる。
【0046】
なお、本発明の実施態様においては、ゲート電極だけでなく、通常、前記第1の電極として、ソース電極を、前記第2の電極としてドレイン電極をそれぞれ備えるが、前記ソース電極およびドレイン電極はいずれも、前記ゲート電極と同様に、それぞれ公知の電極であってよく、電極形成方法もそれぞれ公知の方法であってよい。
【0047】
本発明の半導体装置は、前記半導体素子の他に、前記バンドギャップよりもエネルギーが小さい光を発光する発光素子を備え、前記発光素子が、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されている。前記発光素子は、公知の発光素子であってよく、前記正孔注入用領域の少なくとも一部に前記光を照射可能に構成されていれば、特に限定されない。前記発光素子としては、例えば、LED等が挙げられ、より具体的には、例えば、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置されている発光体とを有する公知の発光素子等が挙げられる。本発明の半導体装置においては、通常、前記発光素子と前記半導体素子との間に光路が設けられている。なお、前記光路は、透光性の材料を介して設けられていてもよい。前記光路の光路長は、特に限定されないが、10mm以下であるのが好ましい。
【0048】
また、本発明においては、前記光が前記半導体素子内で反射した反射光を、前記結晶層の少なくとも一部に照射可能に構成されているのが好ましく、前記結晶層が、全反射条件を満たす界面を有しているのがより好ましい。「反射」とは、正反射および拡散反射等のいずれであってもよく、光の一方向への跳ね返りを指すのみならず、光が様々な方向に進路を変える「散乱」も含む。前記光が反射する反射対象物は、前記半導体素子内にあるものであれば特に限定されないが、本発明においては、電極または誘電体膜であるのが好ましい。また、前記結晶層が、全反射条件を満たす界面を有している場合としては、例えば、前記半導体素子が、さらに誘電体膜を有しており、前記結晶層と前記誘電体膜との界面が、全反射条件を満たしている場合等が挙げられる。なお、前記全反射条件とは、前記結晶層および前記誘電体膜のそれぞれの屈折率によって定められる全反射条件を意味する。前記誘電体膜は、特に限定されず、公知の誘電体膜であってよい。前記誘電体膜の比誘電率等も特に限定されないが、比誘電率が5以下であるのが好ましい。「比誘電率」とは、膜の誘電率と、真空の誘電率との比である。誘電体膜の例として、酸化膜やリン酸化物膜や窒化膜等が挙げられるが、本発明においては、前記誘電体膜がSiを含む膜であるのが好ましい。前記のSiを含む膜としては、酸化シリコン系の膜が好適な例として挙げられる。前記酸化シリコン系膜としては、例えば、SiO膜、リン添加SiO(PSG)膜、ボロン添加SiO膜、リンーボロン添加SiO膜(BPSG膜)、SiOC膜、SiOF膜等が挙げられる。前記誘電体膜の形成手段としては、特に限定されないが、例えば、CVD法、大気圧CVD法、プラズマCVD法、ミストCVD法、熱酸化法等が挙げられる。本発明においては、前記誘電体膜の形成手段が、ミストCVD法または大気圧CVD法であるのが好ましい。また、前記誘電体膜の膜厚も、特に限定されないが、前記誘電体膜の少なくとも一部の膜厚が1μm以上であるのが好ましい。なお、本発明の実施態様においては、前記誘電体膜を、前記ゲート絶縁膜として用いるのも好ましい。
【0049】
以下、本発明において好ましい実施態様を、図面を用いてより具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0050】
(MOSFET)
本発明の半導体装置の具体的な一例としては、例えば図2に示すMOSFETおよび発光素子(光源)などが挙げられる。図2のMOSFETは、縦型のMOSFETであり、n+型半導体層(半導体層)1、p+型半導体層(半導体層)2、n型半導体層(半導体層)3、p型半導体層(結晶層)6、正孔注入用領域7、n+型半導体層9、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5a、ソース電極5b、ドレイン電極5cおよび透明電極8を備えている。ゲート電極5aは、p型半導体層6およびn型半導体層3内に少なくとも一部が埋設されていてもよく、図示するように全体が埋設されていてもよい。ゲート電極5a近傍には、n+型半導体層1およびp+型半導体層2がそれぞれp型半導体層6内に埋設されており、n型半導体層1およびp+型半導体層2の上にはソース電極5bが配置されている。ソース電極5bの近傍には正孔注入用領域7がp型半導体層6内に埋設されており、正孔注入領域7上のソース電極5bの隣には透明電極8が配置されている。このように正孔注入用領域7を配置することにより、p型半導体層6内に正孔を供給することができる。また、図2の半導体装置はMOSFETの他に発光素子(光源)11を備えており、図2の矢印に示される方向に光が照射されるように構成されている。
【0051】
正孔注入用領域7は、電極と接しているのが好ましい。前記電極としては、公知の電極であってよいが、本発明においては、透明電極が好ましい。図2に示されるように、透明電極8を用いることによって、より効果的にホール等を発生させて、半導体特性をより優れたものにすることができる。なお、透明電極8は、導電性および透光性を有する透光性電極からなるものであれば特に限定されず、公知の透明電極であってよい。前記透明性電極の透光性の程度も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。前記透光性電極の材料としては、インジウム(In)またはチタン(Ti)を含む酸化物の導電性材料などが挙げられる。より具体的には、例えば、In、ZnO、SnO、Ga、TiO、CeOまたはこれらの2以上の混晶またはこれらにドーピングされたものなどが挙げられる。これらの材料を、スパッタリング等の公知の手段で設けることによって、透光性電極を形成できる。また、透光性電極を形成した後に、透光性電極の透明化を目的とした熱アニールを施してもよい。
【0052】
図2のMOSFETのオン状態では、発光素子(光源)11から光が矢印の方向に照射され、正孔注入用領域7に光が照射されることにより、ホールの発生が活性化され、p型半導体層6の電気特性を向上させるとともに、前記ソース電極5bと前記ドレイン電極5cとの間に電圧を印加し、前記ゲート電極5aに前記ソース電極5bに対して正の電圧を与えると、チャネル層が形成され、ターンオンする。オフ状態では、光の照射が止められてホールの発生が抑制されるとともに、前記ゲート電極5aの電圧を0Vにすることにより、チャネル層ができなくなり、ターンオフとなる。
【0053】
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の方法を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の方法を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。図3に電源システムの例を示す。図3は、複数の前記電源装置171、172と制御回路173を用いて構成されている電源システム170を示す。前記電源システム170は、図4に示すように、電子回路181と電源システム182(すなわち図10の電源システム170)とを組み合わせてシステム装置180に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を図5に示す。図5は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ192(MOSFET:A~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランス193で絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET194で整流後、DCL195(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器197で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路196でインバータ192及び整流MOSFET194を制御する。
【実施例
【0054】
図2に示されるMOSFETに準じて簡易な試作品を作製し、次の条件で試験評価を行った。正孔注入用領域として、Mgをドーピングしたα-Gaを用いた。電極にはいずれもTiを用いた。発光素子(光源)として、レーザー光源を用いた。なお、照射する光の波長は638nm、強度100mWとした。また、ソース電極とドレイン電極との間の距離は1mmとした。ドレイン電極を遮蔽して光照射を行った結果を図6に示す。図6から明らかなとおり、光の照射によって電気抵抗率が下がり、特に、ホールの発生が活性化されていた。また、上記では電極材料としてTiを用いたが、Ru、Ptでも同様の結果が得られた。なお、照射する光の波長を300nm~1300nm、強度を1mW~200mWまで適宜調整して上記と同様に光照射による電気特性を評価したところ、それぞれ光照射による電気抵抗率の低下およびホール発生の活性化については上記と同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の半導体装置は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、とりわけ、パワーデバイスに有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 n+型半導体層(半導体層)
2 p+型半導体層(半導体層)
3 n型半導体層(半導体層)
4 ゲート絶縁膜
5a ゲート電極
5b ソース電極
5c ドレイン電極
6 p型半導体層(結晶層)
7 正孔注入用領域
8 透明電極
9 n+型半導体層
10 半導体素子
11 発光素子(光源)
19 ミストCVD装置
20 基板
21 サセプタ
22a キャリアガス供給源
22b キャリアガス(希釈)供給源
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 供給管
28 ヒーター
29 排気口
30 成膜室
170 電源システム
171 電源装置
172 電源装置
173 制御回路
180 システム装置
181 電子回路
182 電源システム
192 インバータ
193 トランス
194 整流MOSFET
195 DCL
196 PWM制御回路
197 電圧比較器
図1
図2
図3
図4
図5
図6