(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ガラス板梱包体およびガラス板梱包体の作製方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/48 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B65D85/48
(21)【出願番号】P 2021546631
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034095
(87)【国際公開番号】W WO2021054219
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019171399
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】内田 勢津夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 佳範
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143946(JP,A)
【文献】特開2005-239242(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095643(WO,A1)
【文献】特開2011-207483(JP,A)
【文献】特開2008-213920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30-85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のガラス板と保護シートとが傾斜姿勢で前後方向に積層されてなる積層体と、前記積層体を後方側から支持した状態で積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、
前記保護シートが、前記ガラス板から食み出した食出部を有し、
前記ガラス板の上辺が延びる方向を幅方向としたとき、
前記食出部のうち、前記保護シートの幅方向両端にあたる箇所に折り目が形成され、
前記折り目は、前記幅方向と交差する方向に延び
、
前記食出部が、前記ガラス板の上辺から食み出した上辺食出部を含み、
前記折り目が、前記上辺食出部に形成され、
前記積層体において隣り合う二枚の前記保護シートの相互間にて、前記折り目により形成される凹凸の向きが逆向きであることを特徴とするガラス板梱包体。
【請求項2】
前記積層体において隣り合う二枚の前記保護シートの相互間にて、前記ガラス板を正面視する方向から視て前記折り目同士が異なる位置に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のガラス板梱包体。
【請求項3】
矩形状のガラス板と保護シートとが傾斜姿勢で前後方向に積層されてなる積層体と、前記積層体を後方側から支持した状態で積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、
前記保護シートが、前記ガラス板から食み出した食出部を有し、
前記ガラス板の上辺が延びる方向を幅方向としたとき、
前記食出部のうち、前記保護シートの幅方向両端にあたる箇所に折り目が形成され、
前記折り目は、前記幅方向と交差する方向に延び、
前記食出部が、前記ガラス板の両側辺からそれぞれ食み出した二つの側辺食出部を含み、
前記折り目が、前記側辺食出部に形成され、
前記側辺食出部のうち、前記折り目よりも前記保護シートの幅方向外側に位置する部位が、前記折り目から前方に延び
、
前記積層体の両側面をそれぞれ押える、対をなす押え部材を備え、
前記折り目が、前記押え部材に対応する位置に形成され、
前記積層体の前部に位置する保護シートのみに前記折り目が形成され、
前記押え部材が、前記積層体の側面上における前部のみを押えることを特徴とす
るガラス板梱包体。
【請求項4】
請求項
1又は2に記載のガラス板梱包体の作製方法であって、
前記パレットに積載前の前記保護シートを移送装置により移送する移送工程を含み、
前記移送工程の実行中に、前記移送装置に備わったチャックにより前記保護シートを厚み方向に挟むのに伴って、前記折り目を形成することを特徴とするガラス板梱包体の作製方法。
【請求項5】
矩形状のガラス板と保護シートとが傾斜姿勢で前後方向に積層されてなる積層体と、前記積層体を後方側から支持した状態で積載するパレットと、を備え、
前記保護シートが、前記ガラス板から食み出した食出部を有し、
前記ガラス板の上辺が延びる方向を幅方向としたとき、
前記食出部のうち、前記保護シートの幅方向両端にあたる箇所に折り目が形成され、
前記折り目は、前記幅方向と交差する方向に延びるガラス板梱包体、を作製するための方法であって、
前記パレットに積載前の前記保護シートを移送装置により移送する移送工程を含み、
前記移送工程の実行中に、前記移送装置に備わったチャックにより前記保護シートを厚み方向に挟むのに伴って、前記折り目を形成することを特徴とするガラス板梱包体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体およびガラス板梱包体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ用のガラス基板や、太陽電池用のガラス基板を初めとする各種ガラス板を輸送、或いは、保管する形態として、ガラス板と保護シートとを交互に積層して積層体とし、当該積層体をパレットに積載した状態で梱包するガラス板梱包体が知られている。
【0003】
ここで、特許文献1にはガラス板梱包体の一例が開示されている。同文献に開示された梱包体では、積層体を構成する矩形状のガラス板と保護シートとを傾斜姿勢で前後方向に積層すると共に、積層体を後方側から支持した状態でパレットに積載している。保護シートはガラス板よりも一回り大きい面積を有し、ガラス板の四辺のそれぞれから保護シートが食み出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたガラス板梱包体においては、下記のような解決すべき問題が生じていた。
【0006】
すなわち、同梱包体では、保護シートにおけるガラス板から食み出した部位(以下、食出部と表記)が後方側に倒れやすいという難点がある。これに起因して、同梱包体を開梱するにあたり、積層体からガラス板と保護シートとを交互に取り出していく際に不具合が生じる。詳述すると、保護シートを取り出す際には、取出用のロボット等に備わった吸着パッドにより、保護シートを前方側から吸着する場合が多い。しかしながら、食出部の後方側への倒れに起因して、吸着パッドによる吸着が失敗したり、倒れた食出部が取り出しの対象ではない保護シートやガラス板に引っ掛かったりして、保護シートの取り出し不良が発生する問題があった。
【0007】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ガラス板梱包体を開梱して積層体からガラス板と保護シートとを取り出すに際し、保護シートの取り出し不良の発生を回避することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、矩形状のガラス板と保護シートとが傾斜姿勢で前後方向に積層されてなる積層体と、積層体を後方側から支持した状態で積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、保護シートが、ガラス板から食み出した食出部を有し、ガラス板の上辺が延びる方向を幅方向としたとき、食出部のうち、保護シートの幅方向両端にあたる箇所に折り目が形成され、折り目は、幅方向と交差する方向に延びることを特徴とする。
【0009】
本梱包体では、幅方向(ガラス板の上辺が延びる方向)と交差する方向に延びる折り目が、食出部のうち、保護シートの幅方向両端にあたる箇所に形成されている。このため、当該両端にあたる箇所において、後方側への倒れに対するコシが強くなり、これに伴って食出部の後方側への倒れを防止することが可能となる。その結果、食出部の後方側への倒れに起因して、保護シートの取り出し不良が発生することを回避できる。
【0010】
上記の構成では、食出部が、ガラス板の上辺から食み出した上辺食出部を含み、折り目が、上辺食出部に形成されていてもよい。
【0011】
上辺食出部のうち、保護シートの幅方向両端にあたる箇所(一方端にあたる箇所と他方端にあたる箇所との二箇所)は、とりわけ後方側に倒れやすい傾向がある。そのため、これら二箇所に折り目が形成されていれば、当該箇所にて後方側への倒れに対するコシが強くなり、これに伴って上辺食出部の後方側への倒れを防止することが可能となる。その結果、上辺食出部の後方側への倒れに起因して、保護シートの取り出し不良が発生することを回避する上で好適となる。また、上記の二箇所に折り目が形成されていれば、二箇所の相互間に折り目が形成されていなくとも、上辺食出部の後方側への倒れを防止できるので、効率的に目的を達成することが可能となる。
【0012】
上記の構成では、積層体において隣り合う二枚の保護シートの相互間にて、ガラス板を正面視する方向から視て折り目同士が異なる位置に形成されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、折り目同士が重なって位置している場合とは異なり、折り目が潰れて平坦化してしまう恐れを排除できる。また、折り目同士が異なる位置に形成されていることで、折り目により形成される凹凸(前後方向の膨らみ)を利用して、後方側の上辺食出部により前方側の上辺食出部を倒れないように支えることができる。そのため、保護シートの取り出し不良の発生を回避する上で更に有利となる。
【0014】
上記の構成では、積層体において隣り合う二枚の保護シートの相互間にて、折り目により形成される凹凸の向きが逆向きであることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、折り目により形成される凹凸の向きが逆向きであるため、折り目が潰れることを効果的に防止できると共に、上辺食出部のうち、保護シートの幅方向両端にあたる箇所のコシを確実に強くすることが可能となる。従って、保護シートの取り出し不良の発生を回避する上で一層有利となる。
【0016】
上記の構成では、食出部が、ガラス板の両側辺からそれぞれ食み出した二つの側辺食出部を含み、折り目が、側辺食出部に形成され、側辺食出部のうち、折り目よりも保護シートの幅方向外側に位置する部位が、折り目から前方に延びていてもよい。
【0017】
本構成においては、折り目が側辺食出部に形成されている。その上、側辺食出部のうち、折り目よりも保護シートの幅方向外側に位置する部位が折り目から前方に延びている。これにより、側辺食出部における後方側への倒れを好適に防止することが可能となる。そのため、保護シートを取り出すにあたり、取出用のロボット等に備わった吸着パッドにより、保護シートの側辺食出部を前方側から吸着させる場合に、吸着の失敗を確実に回避できる。
【0018】
上記の構成では、積層体の両側面をそれぞれ押える、対をなす押え部材を備え、折り目が、押え部材に対応する位置に形成されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、上述した側辺食出部における折り目から前方に延びた部位を、押え部材によって押えることが可能となる。これにより、側辺食出部に形成された折り目を消失させることなく確実に維持できる。その結果、上述した吸着の失敗を一層確実に回避することが可能となる。
【0020】
上記の構成では、積層体の前部に位置する保護シートのみに折り目が形成され、押え部材が、積層体の側面上における前部のみを押えることが好ましい。
【0021】
積層体の前部に位置する保護シートほど側辺食出部が後方側に倒れやすく、上述した吸着の失敗が発生しやすい傾向がある。そのため、積層体の前部に位置する保護シートのみに折り目が形成され、押え部材が積層体の側面上における前部のみを押えるようにすれば、吸着の失敗を回避する効果を獲得しつつ、押え部材のサイズを可及的に小さくして梱包体に掛かるコストを抑制する効果も得られる。また、押え部材が積層体の側面上における後部とは接触しないので、接触に伴って積層体の後部に位置する保護シートの側辺食出部が後方に倒れてしまうような恐れも確実に排除できる。
【0022】
また、上記の課題を解決するための本発明は、上述のガラス板梱包体の作製方法であって、パレットに積載前の保護シートを移送装置により移送する移送工程を含み、移送工程の実行中に、移送装置に備わったチャックにより保護シートを厚み方向に挟むのに伴って、折り目を形成することを特徴とする。
【0023】
本作製方法で作製したガラス板梱包体によれば、上記のガラス板梱包体の説明で既述の作用・効果と同一の作用・効果を得ることが可能である。また、移送工程の実行中に、保護シートにおける後に食出部となる箇所に対して折り目を形成できる。このため、保護シートの移送と、保護シートへの折り目の形成とを別々に実行するような無駄を省くことが可能となり、ガラス板梱包体の作製に要する工程数の増加を防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガラス板梱包体を開梱して積層体からガラス板と保護シートとを取り出すに際し、保護シートの取り出し不良の発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3a】ガラス板梱包体に含まれる合紙に形成された折り目の周辺を示す断面図である。
【
図3b】ガラス板梱包体に含まれる合紙に形成された折り目の周辺を示す断面図である。
【
図4】ガラス板梱包体の作製方法における移送工程を示す図である。
【
図5】移送工程の実行に用いるチャックを示す斜視図である。
【
図6a】移送工程の実行に用いるチャックを示す断面図である。
【
図6b】移送工程の実行に用いるチャックを示す断面図である。
【
図7】ガラス板梱包体の変形例を示す正面図である。
【
図8】ガラス板梱包体の変形例を示す断面図である。
【
図9】ガラス板梱包体の変形例を示す斜視図である。
【
図10】移送工程の実行に用いるチャックの変形例を示す斜視図である。
【
図11】ガラス板梱包体に備わった押え部材の周辺を示す側面図である。
【
図12】ガラス板梱包体に備わった押え部材の周辺を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板梱包体、及び、ガラス板梱包体の作製方法について、添付の図面を参照しながら説明する。ここで、実施形態の説明で参照する各図面において、ガラス板の上辺が延びる方向(幅方向)をX方向、鉛直方向をY方向と表している。X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向である。
【0027】
<第一実施形態>
図1に示すように、第一実施形態に係るガラス板梱包体1(以下、単に梱包体1と表記)は、パレット2と、パレット2上に積載された積層体3とを備えている。
【0028】
積層体3は、矩形状のガラス板Gと、保護シートとしての矩形状の合紙Pとで構成されている。ガラス板Gと合紙Pとは、鉛直方向(Y方向)に対して傾いた傾斜姿勢を取った状態で交互に前後方向(Z方向に対して傾いた方向)に積層されている。積層体3の最後方には合紙Pが配置されている。
【0029】
ここで、積層体3の諸元の一例を挙げると、積層体3を構成するガラス板Gの枚数は200枚~400枚、ガラス板Gのサイズ(縦×横)は1000mm×1200mm~2900mm×3200mm、ガラス板Gの厚さは0.2mm~2mmである。積層体3を構成する合紙Pは、いわゆるガラス合紙であり、例えば純パルプ紙である。合紙Pはガラス板Gよりも一回り大きいサイズを有する(
図2を参照、
図1では両者G,Pを便宜的に同サイズで表示)。なお、保護シートとして発泡樹脂シートを用いてもよい。
【0030】
パレット2は、基台部4と、後面支持部5と、底面支持部6と、保持部7と、緩衝板8と、受け板9とを主として備えている。
【0031】
基台部4には、フォークリフト等のフォークを挿入するための穴部4aが形成されている。後面支持部5は、基台部4から起立すると共に緩衝板8を介して積層体3の後面を支持する。これにより、緩衝板8の前面8aは、積層体3を後方側から支持する支持面として機能している。底面支持部6は、基台部4上で受け板9を介して積層体3の底面(各ガラス板Gの下辺Gb)を支持する。
【0032】
緩衝板8におけるX方向の寸法は、後面支持部5の前面5aにおけるX方向の寸法よりも小さく、前面5aのうちの上縁部と両側縁部とを除いた領域に緩衝板8が取り付けられている。ガラス板G及び合紙Pの面積は、緩衝板8の前面8aの面積よりも小さく、緩衝板8の周縁部が積層体3から食み出した状態となっている。
【0033】
後面支持部5の前面5aおよび緩衝板8の前面8aは、鉛直方向(Y方向)に対して所定の角度(例えば5°~25°)だけ後方に傾いている。両前面5a,8aは、底面支持部6の上面6a(受け板9の上面9a)との間で例えば略直角(例えば90°±10°)をなしている。
【0034】
緩衝板8と受け板9は、例えば発泡体やゴム等の弾力性に富んだ材質で構成されている。本実施形態においては、緩衝板8と受け板9の両者が、発泡ポリプロピレンを主たる材質として構成されている。
【0035】
保持部7は、ベルト10と、押えバー11と、サイドストッパー12とを主として備えている。
【0036】
ベルト10は、ラチェット部13を備えたラチェットベルトである。ベルト10は、後面支持部5の後方に配置されたフック14に引っ掛けられ、二重にされた上で、押えバー11の前面上でラチェット部13により締め付けられる。
【0037】
積層体3の前方側には押え板15が配置され、押え板15のさらに前方側にはフレーム16が配置されている。フレーム16にはフック17が設けられており、フック17に押えバー11が載せられる。ベルト10の締め付けに伴い、押えバー11がフレーム16を後方側に押圧し、さらにフレーム16が押え板15を後方側に押圧する。これにより、積層体3が緩衝板8に押し付けられた状態でパレット2上に固定される。
【0038】
押えバー11は、その長手方向がX方向となるようにベルト10と組み合わされる。本実施形態では、二本の押えバー11が上下に間隔を空けて配置されている。
【0039】
なお、上述の保持部7は、一例であり、積層体3をパレット2に固定できれば、他の構成の保持部7を用いてもよい。
【0040】
図2に示すように、ガラス板Gの上辺Gaおよび両側辺Gc,Gcの各々からは合紙Pが食み出している。一方で、ガラス板Gの下辺Gbからは合紙Pが食み出しておらず、ガラス板Gの下辺Gbと合紙Pが同じ位置にある。なお、ガラス板Gの下辺Gbが、合紙Pの下辺から食み出していてもよい。以下の説明では、合紙Pにおけるガラス板Gの上辺Gaから食み出した部位を上辺食出部Paと表記する。なお、
図2においては、説明の便宜上、積層体3を構成する複数枚のガラス板Gと複数枚の合紙Pとのうち、最も後方側に配置されたガラス板Gおよび合紙Pのみを図示している。
【0041】
上辺食出部PaにおけるX方向の両端(合紙Pの幅方向両端にあたる箇所)には、合紙Pの折り目Pfが形成されている。つまり、折り目Pfは、合紙Pがなす矩形状の上側のコーナー部に形成されている。本実施形態では、X方向の両端のそれぞれで単一の折り目Pfがガラス板Gの上辺Gaに対して鉛直(幅方向に対して鉛直)に延びるように形成されている。折り目Pfは、ガラス板Gの上辺Gaよりも上方で、且つ、合紙Pの上縁(上辺)よりも下方に位置している。しかしながら、この限りではなく、折り目Pfが上辺Gaの上方と下方とに跨って形成されていてもよいし、折り目Pfが合紙Pの上縁まで形成されていてもよい。
【0042】
なお、梱包体1を開梱して積層体3からガラス板Gと合紙Pとを交互に取り出していく際に、合紙Pを取り出すにあたっては、吸着パッドを備えたロボット等を用いる場合が多い。そして、ロボットに備わった吸着パッドにより、合紙Pの上辺食出部Paのうち、コーナー部よりも内側の領域(両折り目Pf,Pfの相互間に位置する領域)を前方側から吸着する。
【0043】
以下、
図3a,
図3bを参照することで、折り目Pfの詳細について説明する。ここで、積層体3を作製するにあたっては、一例として、一枚のガラス板Gと一枚の合紙Pとを重ね合わせて一組とし、複数組を順々に積層していく形態が挙げられる。
図3aは、これら複数組を積層する前の状態を示しており、
図3bは、積層した後の状態を示している。
【0044】
図3a,
図3bに示すように、本実施形態においては、積層体3を構成する合紙Pとして、折り目Pfの形成態様が異なった二種類の合紙Pが含まれている。以下の説明では、第一種の合紙Pを合紙P1と表記すると共に、第二種の合紙Pを合紙P2と表記して区別する。合紙P1と合紙P2との間では、折り目Pfにより形成される凹凸の向きと、折り目Pfの位置との二点が異なっている。
【0045】
合紙P1および合紙P2の双方について、折り目Pfを境界として、X方向における合紙Pの端部側と中央部側との間には段差が形成されている。合紙P1においては、端部側が中央部側に対して前方側に出っ張っている。一方、合紙P2においては、中央部側が端部側に対して前方側に出っ張っている。
【0046】
合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとは、X方向において異なる位置に形成されている。なお、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとは、Y方向においては揃った位置に形成されている。合紙P2の折り目Pfは、合紙P1の折り目PfよりもX方向において合紙Pの端部寄りに形成されている。
【0047】
合紙P1と合紙P2とは、積層体3において交互に配置される。これにより、積層体3の隣り合う二枚の合紙Pの相互間では、折り目Pfにより形成される凹凸の向きが逆向きになっている。さらに、隣り合う二枚の合紙Pの相互間では、ガラス板Gを正面視する方向(ガラス板Gの厚み方向に一致)から視た場合に、折り目Pf同士が異なる位置(本実施形態ではX方向にずれた位置)に形成されている。
【0048】
以下、上記の梱包体1の作製方法について説明する。
【0049】
梱包体1の作製方法は、一例として、ロール状に巻かれた帯状合紙から合紙Pを切り出す工程、切り出した合紙Pを移送装置により移送する工程、ガラス板Gと合紙Pとを重ね合わせる工程、重ね合わせたガラス板Gと合紙Pとをパレット2上に積載する工程等の種々の工程を含む。ここでは、移送する工程(以下、移送工程と表記)についてのみ説明する。その他の工程は、既に種々の態様が公知となっているので説明を省略する。
【0050】
移送工程の実行に用いる移送装置は、パレット2に積載する前の合紙Pを一枚ずつ移送するための装置である。
図4に示すように、移送装置は、合紙Pにおける四隅のコーナー部をそれぞれ厚み方向に挟む四つのチャック18を備えている。四つのチャック18のうち、二つのチャック18xは、パレット2への積載後に合紙Pの上辺食出部Paとなるコーナー部を挟む。二つのチャック18xの各々は、コーナー部を挟むのに伴って折り目Pfを形成することが可能である。つまり、移送装置は、合紙Pを移送しながら折り目Pfの形成が可能である。
【0051】
図5に示すように、チャック18xは一対の爪部19,19を有する。一対の爪部19,19は、同図に両端矢印で示す方向に沿って開閉動作が可能である。そして、一対の爪部19,19を閉じるのに伴って合紙Pのコーナー部を挟むと共に、一対の爪部19,19を開くのに伴ってコーナー部の挟みを解除する。
【0052】
一対の爪部19,19の各々はベース20とチャック本体21とを有する。
【0053】
チャック本体21を支持するベース20は、例えば金属で構成される。一方、合紙Pを実際に挟むチャック本体21は、例えば樹脂やゴムで構成される。ベース20とチャック本体21との両者は、例えばネジ等の締結具により固定されている。本実施形態においては、ベース20が雌ネジの形成されたネジ穴20aを有すると共に、チャック21がネジの頭部を収容するための収容穴21aを有する。
【0054】
チャック本体21には、収容穴21aを挟んで一直線に延びた段差21bが形成されている。一対の爪部19,19の一方のチャック本体21に形成された段差21bと、他方のチャック本体21に形成された段差21とは、一対の爪部19,19が閉じた際に噛み合うようになっている。これにより、一対の爪部19,19が閉じるのに伴って合紙Pに折り目Pfが形成される。
【0055】
本実施形態では、移送工程の実行に際して、チャック18xの構成が相互に異なる二機の移送装置を用いている。第一移送装置は、移送工程の実行中に合紙Pに折り目Pfを形成することで、移送中の合紙Pを上記の合紙P1とする。一方、第二移送装置は、移送工程の実行中に合紙Pに折り目Pfを形成することで、移送中の合紙Pを上記の合紙P2とする。そして、第一移送装置が移送した合紙P1と第二移送装置が移送した合紙P2とが、後に積層体3において交互に配置される。
【0056】
図6a,
図6bに対比して示すように、
図6aに示す第一移送装置のチャック18xと、
図6bに示す第二移送装置のチャック18xとの間では、チャック本体21の形状が異なっている。具体的には、両移送装置のチャック18x同士の間では、段差21bにより形成される凹凸の向きが逆向きであると共に、段差21bの位置がずれている。これにより、上述した合紙P1と合紙P2との間における折り目Pfの形成態様の違いが生じる。
【0057】
以下、上記の梱包体1による主たる作用・効果について説明する。
【0058】
上記の梱包体1においては、上辺食出部Paの両端に折り目Pfが形成され、その折り目Pfはガラス板Gの上辺Gaが延びる方向(X方向)と鉛直な方向に延びる。このため、上辺食出部Paの両端において、後方側への倒れに対するコシが強くなり、これに伴って上辺食出部Paの後方側への倒れを防止することが可能となる。その結果、上辺食出部Paの後方側への倒れに起因して、合紙Pの取り出し不良が発生することを回避できる。なお、折り目Pfが存在しない場合には、積層体3の前方側に存する合紙Pほど、上辺食出部Paが後方側に倒れやすくなる。
【0059】
ここで、本発明に係るガラス板梱包体およびガラス板梱包体の作製方法は、上記の第一実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではなく、例えば、下記のような変形例を採用することも可能である。
【0060】
<第一変形例>
上記の実施形態では、合紙Pの折り目Pfがガラス板Gの上辺Gaに対して鉛直に延びるように形成されていたが、この限りではない。第一の変形例として、
図7に示すように、合紙Pの折り目Pfがガラス板Gの上辺Gaに対して傾斜した方向(幅方向に対して傾斜した方向)に延びるように形成されていてもよい。
【0061】
<第二変形例>
また、上記の実施形態では、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとが、X方向において異なる位置に形成され、且つ、Y方向において揃った位置に形成されていたが、この限りではない。第二の変形例として、
図8に示すように、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとが、Y方向においてのみでなく、X方向においても揃った位置に形成されていてもよい。この場合、ガラス板Gを正面視する方向から視て、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとが重なることになる。
【0062】
<第三変形例>
さらに、第三の変形例として、
図9に示すように、上記の実施形態とは逆に、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとが、X方向において揃った位置に形成され、且つ、Y方向において異なる位置に形成されるようにしてもよい。この場合、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとの間には高低差Hが生じる。
【0063】
<第四変形例>
また、上記の実施形態では、合紙P1と合紙P2との間で折り目Pfにより形成される凹凸の向きが逆向きになっていたが、これに限定されるものではない。第四の変形例として、両合紙P1,P2の間で折り目Pfにより形成される凹凸の向きが同じであってもよい。ただし、この場合には、折り目Pfが潰れて平坦化することを防止するため、ガラス板Gを正面視する方向から視て、合紙P1の折り目Pfと合紙P2の折り目Pfとが重ならないことが望ましい。
【0064】
上述した第一~第四の変形例は、チャック18xに備わったチャック本体21の形状に必要な変更を加えることで実現が可能である。すなわち、チャック本体21の段差21bにより形成される凹凸の向きや、段差21bの位置や、段差21bが延びる方向に変更を加えることで実現する。
【0065】
<第五変形例>
また、上記の実施形態では、合紙Pの上辺食出部PaにおけるX方向の両端に、それぞれ単一の折り目Pfが形成されているが、これに限定されるものではなく、第五の変形例として、複数の折り目Pfが形成されていてもよい。複数の折り目Pfは、例えば、
図10に示すチャック18xにより形成が可能である。このチャック18xのチャック本体21には、断面が半円状となる突起が複数並べられてなる凹凸21cが形成されている。これにより、一対の爪部19,19が閉じるのに伴って合紙Pに複数の折り目Pfが形成される。
【0066】
上記の実施形態及び変形例では、上辺食出部Paの後方側の倒れをさらに防止する観点から、折り目Pfの鉛直方向の長さが上辺食出部Paの鉛直方向の長さの30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらにより好ましい。また、同様の観点から、折り目Pfが上辺Gaの上方と下方とに跨って形成されていることが好ましい。
【0067】
<第二実施形態>
以下、第二実施形態に係る梱包体1について説明する。ここで、第二実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明した要素と実質的に同一の要素については、第二実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。従って、第二実施形態の説明では、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0068】
第二実施形態に係る梱包体1が、第一実施形態と相違する主な点は、
図11及び
図12に示すように、梱包体1が、サイドストッパー12に代えて、押え部材22を備えている点と、上辺食出部Paではなく、合紙Pにおけるガラス板Gの側辺Gcから食み出した部位(以下、側辺食出部Pcと表記)に折り目Pfが形成されている点である。側辺食出部Pcは、合紙Pの幅方向端部にあたる箇所である。
【0069】
ここで、
図11及び
図12には、積層体3の両側面のうち、一方側面側のみを表示しているが、他方側面側においても同様にして、押え部材22が備わると共に、側辺食出部Pcに折り目Pfが形成されている。
【0070】
押え部材22は、上述のとおり、積層体3の両側面(一方側面および他方側面)にそれぞれ対応するように一対が配置されている。一対の押え部材22の各々は、締め付けた状態のベルト10に引っ掛けられて装着され、ベルト10と積層体3の側面との相互間に介在している。
【0071】
押え部材22は、装着に伴って積層体3の側面を押える機能を有する。同機能は、押え部材22に対応する位置に存する側辺食出部Pcについて、当該側辺食出部Pcに形成された折り目Pfを消失させることなく維持するためのものである。
【0072】
上記機能の詳細として、押え部材22が積層体3の側面を押えると、折り目Pfによってガラス板Gの側辺Gc(ガラス板Gの端面)に沿うように折れ曲がった側辺食出部Pcの状態が保持され、これに伴って折り目Pfが維持される。折り目Pfは、押え部材22が積層体3の側面を押える前から予め側辺食出部Pcに形成しておいたものである(例えば、人手や治具等で側辺食出部Pcを折り曲げて形成)。また、折り目Pfは、押え部材22を梱包体1から取り除いた後でも側辺食出部Pc上に残存する。折り目Pfは、幅方向(X方向)に対して鉛直に延びている。
【0073】
側辺食出部Pcのうち、折り目Pfよりも合紙Pの幅方向外側(合紙Pの端縁側)に位置する部位は、折れ曲がりに伴って折り目Pfから前方に延びている。これにより、側辺食出部Pcの後方側への倒れを防止することが可能となる。その結果、側辺食出部Pcの後方側への倒れに起因して、合紙Pの取り出し不良が発生することを回避できる。
【0074】
なお、梱包体1を開梱して積層体3からガラス板Gと合紙Pとを交互に取り出していく際に、合紙Pを取り出すにあたっては、取出用のロボット等に備わった吸着パッドにより、合紙Pにおける折り目Pfが形成された高さ位置の付近を前方側から吸着する。
【0075】
押え部材22は、積層体3の側面上において前部のみを押えている。詳述すると、押え部材22は、積層体3の側面上において前側半分にあたる範囲のみを押えている。そして、前部(前側半分にあたる範囲)に存する合紙Pについてのみ、側辺食出部Pcに折り目Pfが形成されている。すなわち、前後方向において、積層体3の側面上にて押え部材22に押えられている範囲と、側辺食出部Pcに折り目Pfが形成された合紙Pが存する範囲とが、同一範囲となっている。
【0076】
ここで、本実施形態においては、押え部材22に対応しない位置に存する側辺食出部Pc(押え部材22と非接触の側辺食出部Pc)については折り目Pfが形成されていない。しかしながら、本実施形態の変形例として、これら対応しない位置に存する側辺食出部Pcにも折り目Pfが形成されていてもよい。
【0077】
なお、押え部材22の変形例として、全ての合紙Pについて、側辺食出部Pcに折り目Pfが形成されている場合には、押え部材22は、積層体3の側面上にて最前方から最後方までの全範囲を押えるものであってもよい。このようにすれば、合紙Pの取り出し不良の発生を一層確実に回避できる。
【0078】
本実施形態において前部は、前側半分(1/2)にあたる範囲としているが、前部は、半分(1/2)に限定されることなく、例えば前側の1/5~4/5の範囲とすることができるが、前側の1/3~2/3の範囲とすることが好ましい。この場合でも合紙Pの取り出し不良の発生は回避し得る。この理由としては、積層体3の前方側に存する合紙Pほど、側辺食出部Pcが後方側に倒れやすいので、この倒れやすい合紙Pに対してのみ対策をすれば十分な場合が多いからである。
【0079】
ここで、押え部材22の構造の詳細について説明する。
図13a,
図13bに示すように、押え部材22は、略直方体状の外形を有する。押え部材22は、本体22aと、本体22aの外表面を覆う帯電防止シート22bとを備えている。なお、
図13a及び
図13bでは、便宜的に本体22aの外表面と帯電防止シート22bとの間に隙間が存在するように表示しているが、実際には両者22a,22bは接触している。
【0080】
本体22aの材質としては、発泡スチロールを採用することが可能である。勿論この限りではなく、本体22aの材質は、例えばポリスチレン、ポリプロピレン等であってもよい。押え部材22が積層体3の側面を押える際に、直接に当該側面を押えることになる押え面22aaは、平坦面として形成されている。一方、押え面22aaの裏側に存する外側面22abには、ベルト10を通すための溝22xが形成されている。この溝22xを介して押え部材22がベルト10に引っ掛けられる。なお、本実施形態においては、溝22xはベルト10を平置き姿勢で通す構成となっているが、勿論この限りではなく、縦置き姿勢で通す構成であってもよい。
【0081】
ここで、上述のごとく、押え部材22により折り目Pfを好適に維持するため、押え部材22に形成された押え面22aaの高さ寸法(溝22xが延びる方向と直交する方向に沿った寸法)は、50mm以上とすることが好ましい。
【0082】
帯電防止シート22bの材質としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン等を採用することが可能である。帯電防止シート22bは、本体22aの外表面の全面を覆っている。本体22aの溝22xが形成された箇所においては、溝22xの側面および底面に倣うようにして、帯電防止シート22bが本体22aの外表面を覆っている。
【0083】
ここで、本発明に係るガラス板梱包体は、上記の第二実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形例を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 ガラス板梱包体
2 パレット
3 積層体
18 チャック
18x チャック
22 押え部材
G ガラス板
Ga ガラス板の上辺
Gc ガラス板の側辺
P 合紙(保護シート)
Pa 合紙の上辺食出部
Pc 合紙の側辺食出部
Pf 合紙の折り目