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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/38 20200101AFI20240313BHJP
【FI】
D06F58/38
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019234931
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101925
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】谷越 修
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081782(JP,A)
【文献】実開平04-060185(JP,U)
【文献】特開2003-154191(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103134799(CN,A)
【文献】特開平02-119900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、衣類が収容される収容室と、
前記収容室内に温風を供給する温風供給部と、
前記収容室内に吊られた状態となるよう衣類を保持する保持部と、
前記保持部を振動させる加振部と、
前記加振部を制御する制御部と、
前記保持部が振動したときの衣類の揺れの大きさを検出するための揺れ検出部と、を備え、
前記制御部は、前記温風供給部からの温風により衣類を乾燥する際、前記揺れ検出部により検出された衣類の揺れの大きさに応じて前記保持部が振動するときの、共振により衣類が揺れやすくなる振動数を決定する、
ことを特徴とする衣類処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衣類処理装置において、
前記揺れ検出部は、前記保持部に吊られた衣類を撮像する撮像部を含む、
ことを特徴とする衣類処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の衣類処理装置において、
前記収容室内の湿度を検出する湿度検出部をさら備え、
前記制御部は、前記湿度検出部による検出湿度が閾値以下になったときに、前記加振部により前記保持部の振動を開始させる、
ことを特徴とする衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に乾燥等の処理を施す衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容部内において衣類を吊り下げ、その衣類を温風により乾燥したり、その衣類のしわをスチームにより伸ばしたりすることができる衣類処理装置が知られている。このような衣類処理装置の一例が、たとえば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-057413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥される前の衣類は、水分を含んで膨らんでいるため、しわが付いていない状態にあり、乾きが進むにつれて衣類が縮むとしわが付きやすくなる。よって、衣類が乾燥される際に、吊られた衣類を伸ばすことができると、しわが付きにくくなり、好ましい。
【0005】
衣類にスチームを当ててしわ伸ばしを行う場合にも、スチームで濡らされた衣類を乾かすために乾燥が行われ得る。この乾燥においても、衣類にしわが発生することを避ける必要がある。
【0006】
そこで、衣類を吊られた状態に保持する保持部(たとえば、ハンガー掛け)を振動させることにより衣類を揺らし、衣類に遠心力等を作用させて衣類が伸びやすくなるようにすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、保持部に吊られた衣類は、形状、重さ等、その状態によって、共振により揺れやすくなる振動数が変わり得る。このため、保持部を単純に振動させただけでは、衣類の状態によっては衣類が期待通りに揺れずにしわ付きが抑制されにくくなる、ということが懸念される。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑み、衣類のしわ付きが十分に抑制され得る衣類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係る衣類処理装置は、筐体内に配置され、衣類が収容される収容室と、前記収容室内に温風を供給する温風供給部と、前記収容室内に吊られた状態となるよう衣類を保持する保持部と、前記保持部を振動させる加振部と、前記加振部を制御する制御部と、前記保持部が振動したときの衣類の揺れの大きさを検出するための揺れ検出部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記温風供給部からの温風により衣類を乾燥する際、前記揺れ検出部により検出された衣類の揺れの大きさに応じて前記保持部が振動するときの、共振により衣類が揺れやすくなる振動数を決定する。
【0010】
なお、振動数は直接的に決定されるのみならず、結果的に決定されてもよい。たとえば、加振部がモータの回転により保持部を振動させるような構成である場合、モータの回転数が決定されると、その結果、保持部の振動数が決定されることになる。
【0011】
上記の構成によれば、重さ、形状等の状態によらず、衣類を十分に揺らすことが可能となるので、衣類へのしわ付きを十分に抑制することが期待できる。
【0012】
本態様に係る衣類処理装置において、前記揺れ検出部は、前記保持部に吊られた衣類を撮像する撮像部を含むような構成とされ得る。
【0013】
上記の構成によれば、撮像部により撮像された画像を解析することにより、衣類の揺れの大きさを検出できる。
【0014】
本態様に係る衣類処理装置において、前記収容室内の湿度を検出する湿度検出部をさら備えるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、前記湿度検出部による検出湿度が閾値以下になったときに、前記加振部により前記保持部の振動を開始させ得る。
【0015】
上記の構成によれば、衣類の含水量がしわが固まり始めようとする量まで低下したタイミングで、衣類を揺らし始めることができるので、しわ伸ばし効果が得られにくい期間に加振部が動作することが避けられ、電力の浪費等を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衣類のしわ付きが十分に抑制され得る衣類処理装置を提供できる。
【0017】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施の態様に係る、衣類処理装置の正面図であり、図1(b)は、実施の態様に係る、衣類処理装置の右側面図である。
図2図2は、実施の態様に係る、第1供給ユニットの位置で切断した、衣類処理装置の正面断面図である。
図3図3は、実施の態様に係る、第2供給ユニットの位置で切断した、衣類処理装置の正面断面図である。
図4図4(a)および(b)は、それぞれ、実施の態様に係る、カバーが取り外された状態および取り付けられた状態の衣類処理装置の平面断面図である。
図5図5は、実施の形態に係る、第1供給ユニットの吸気ダクトの位置で切断した、衣類処理装置の要部の側面断面図である。
図6図6(a)ないし(d)は、実施の形態に係る、ハンガー掛けと加振機構部の構成について説明するための図である。
図7図7(a)は、実施の形態に係る、空気循環ユニットの前方位置で切断した、衣類処理装置の要部の正面断面図であり、図7(b)は、実施の形態に係る、カバーが外された状態の空気循環ユニットの正面図である。
図8図8は、実施の形態に係る、衣類処理装置の要部の側面断面図である。
図9図9は、実施の形態に係る、衣類処理装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、実施の形態に係る、衣類処理装置の運転制御を示すフローチャートである。
図11図11は、実施の形態に係る、乾燥工程の際に実行される衣類揺動処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)は、衣類処理装置1の正面図であり、図1(b)は、衣類処理装置1の右側面図である。図2は、第1供給ユニット300の位置で切断した、衣類処理装置1の正面断面図である。図2では、第2供給ユニット400および空気循環ユニット700の図示が省略されている。図3は、第2供給ユニット400の位置で切断した、衣類処理装置1の正面断面図である。図3では、空気循環ユニット700の図示が省略されている。図4(a)および(b)は、それぞれ、カバー240が取り外された状態および取り付けられた状態の衣類処理装置1の平面断面図である。図4(a)および(b)では、空気循環ユニット700の図示が省略されている。図5は、第1供給ユニット300の吸気ダクト350の位置で切断した、衣類処理装置1の要部の側面断面図である。なお、図2には、オゾンを含む空気および温風の流れが実線矢印で示されている。また、図3には、スチームの流れが実線矢印で示されており、結露水の流れが破線矢印で示されている。さらに、図5には、衣類処理装置1の外部からの空気の流れが実線矢印で示されている。さらに、図3には、便宜上、切断面よりも前方にあるハンガー掛け610が、一点鎖線にて描かれている。
【0021】
衣類処理装置1は、縦長の直方体形状を有する筐体100を備える。筐体100の外底面には、4つの角部に脚110が設けられる。筐体100の内部には、スーツ、コート等の各種の衣類が吊られた状態で収容される収容室200が配される。収容室200は、縦長の直方体形状を有する。また、筐体100の内部には、収容室200の下方に、収容室200に温風とオゾンとを供給可能な第1供給ユニット300と、収容室200にスチームを供給可能な第2供給ユニット400とが配される。第1供給ユニット300は、本発明の温風供給部に相当する。
【0022】
収容室200の前面は、衣類の投入口201として開口する。筐体100の前面は、投入口201に対応する部分が開口する。筐体100の前面には、ドア500が設けられる。ドア500は、筐体100の前面とほぼ同じ大きさを有する。投入口201がドア500により覆われる。ドア500の右端部は図示しないヒンジ部により筐体100と連結されており、ヒンジ部を支点にしてドア500を前方へ開くことができる。
【0023】
収容室200には、底面の中央部に、第1供給口210と第2供給口220が、互いに隣接するように設けられる。第1供給口210および第2供給口220は、両側に直線部分を有するほぼ半円形の筒状を有する。第1供給口210の円弧状部211と第2供給口220の円弧状部221は、上方から見て、互いに反対方向に湾曲する。これにより、第1供給口210と第2供給口220とを合わせた形状が、図4(a)の一点鎖線のような円形に近い形状となる。第1供給口210と第2供給口220との間には僅かに隙間が設けられており、この隙間に取付穴231を有する取付ボス230が設けられる。
【0024】
第1供給口210および第2供給口220の上方には、これらを覆うように、カバー240が配置される。カバー240は、円盤状の天面部241と、天面部241の周縁から下斜め方向に延びる周面部242とを含む。天面部241は、第1供給口210と第2供給口220とを合わせた大きさよりも大きい。天面部241の裏面中央には、下方に突出する軸243が形成される。カバー240の天面部241と第1供給口210および第2供給口220との間に所定の隙間ができるように、軸243が取付ボス230の取付穴231に取り付けられる。カバー240の周面部242には、全周に亘って、複数の排出孔244が形成される。排出孔244は、カバー240の径方向に長い方形状を有し、第1供給口210および第2供給口220の周囲、即ち、カバー240における第1供給口210および第2供給口220の投影領域よりも外側に位置する。これにより、衣類から落ちた埃や異物が、排出孔244を通じて第1供給口210や第2供給口220に侵入しづらくなる。カバー240の外周縁と収容室200の底面との間には、所定の隙間が設けられる。
【0025】
収容室200の後面には、上部に排出口202が形成される。排出口202には排気ダクト250が繋がっており、排気ダクト250は筐体100の後面から外部に露出する。
【0026】
排出口202には、着脱可能に排気フィルタユニット260が装着される。排気フィルタユニット260は、オゾン除去フィルタ261と、オゾン除去フィルタ261が収容されるフィルタカバー262とを含む。オゾン除去フィルタ261には、活性炭・触媒フィルタが用いられ得る。フィルタカバー262には、複数の排気窓263が設けられる。
【0027】
収容室200の上部には、前後方向における中央部に、衣類が吊られた状態で保持されるとともに衣類を揺らすことができる保持ユニット600が設けられる。
【0028】
保持ユニット600は、ハンガー掛け610と、2つの支持部620と、加振機構部630と、を含む。ハンガー掛け610は、本発明の保持部に相当し、加振機構部630は、本発明の加振部に相当する。
【0029】
ハンガー掛け610には、衣類が掛けられたハンガーが掛けられる。2つの支持部620は、それぞれ、収容室200の左右の側面に固定される。各支持部620にはレール溝621が形成されており、ハンガー掛け610の左右の端部がレール溝621に嵌り込む。これにより、ハンガー掛け610は、左右方向に水平移動が可能に2つの支持部620に支持される。加振機構部630は、ハンガー掛け610に装着され、ハンガー掛け610を水平方向に振動させる。
【0030】
図6(a)ないし(d)は、ハンガー掛け610と加振機構部630の構成について説明するための図である。図6(a)は、加振機構部630が装着されたハンガー掛け610の正面図であり、図6(a)は、ハンガー掛け610の平面図である。図6(c)および(d)は、それぞれ、加振機構部630によりハンガー掛け610が右方向および左方向に動かされた状態を示す図である。なお、図6(b)では、便宜上、カム溝613に収容された加振機構部630のローラ633が示されている。また、図6(c)および(d)では、ハンガー掛け610が断面で示されている。
【0031】
ハンガー掛け610は、左右方向に長い形状を有する。ハンガー掛け610の下面には、所定の間隔で左右方向に並ぶようにして、ハンガーを掛けるための複数のフック部611が設けられる。ハンガー掛け610の上面には、中央の凹部612に、前後方向に延びる長円形のカム溝613が形成される。また、ハンガー掛け610の上面には、凹部612を囲むように方形筒状のカバー部614が設けられる。
【0032】
加振機構部630は、振動モータ631と、カム軸632と、ローラ633とを含む。カム軸632は、振動モータ631のモータ軸631aに接続される。カム軸632の先端部には、モータ軸631aと垂直な方向に延びるアーム632aが形成される。アーム632aの先端に回転自在にローラ633が取り付けられる。ローラ633は、ハンガー掛け610のカム溝613に収容される。
【0033】
振動モータ631が動作してカム軸632が回転すると、図6(b)の矢印と破線に示すように、ローラ633が円軌道を描いて移動し、カム溝613が左右方向に動かされる。これにより、図6(c)および(d)のように、ハンガー掛け610が、右方向および左方向に交互に動く。即ち、ハンガー掛け610が、振動モータ631の回転数に応じた振動数で左右方向に振動する。
【0034】
図2に示すように、ハンガー掛け610には、衣類の前後の方向がハンガー掛け610の延びる方向となるように、複数の衣類を並べて掛けることができる。加振機構部630は、振動モータ631が収容室200の天面と筐体100の天面との間に配置され、カム軸632が収容室200の天面を貫通して振動モータ631に接続される。カム軸632は、ハンガー掛け610のカバー部614により覆われて隠された状態となる。
【0035】
図2および図5を参照し、第1供給ユニット300は、第1供給ダクト310と、オゾン発生器320と、加熱器330と、送風ファン340と、吸気ダクト350とを含む。
【0036】
第1供給ダクト310は、その導入口311が送風ファン340の吐出口342に接続され、その導出口312が第1供給口210の入口に接続される。第1供給ダクト310内の導入口311の近傍にオゾン発生器320が配置される。第1供給ダクト310は、導入口311から左方に延び、オゾン発生器320の配置位置を過ぎた部分から右方に折り返されるように湾曲した後、上方に延びて第1供給口210へと至るような形状を有する。
【0037】
オゾン発生器320は、放電方式のオゾン発生器であり、一対の電極間にコロナ放電、無声放電等の放電を生じさせ、一対の電極間に通された空気からオゾンを生成する。加熱器330は、第1供給ダクト310内において、オゾン発生器320よりも第1供給口210側に配置され、第1供給ダクト310内を流れる空気を加熱する。加熱器330として、たとえば、PTCヒータを用いることができる。
【0038】
送風ファン340は、遠心ファンであり、側面に吸込口341が設けられ、周面に吐出口342が設けられる。送風ファン340は、吸込口341から空気を取り込み、取り込んだ空気を第1供給ダクト310内のオゾン発生器320へ送る。送風ファン340として、遠心ファン以外のファン、たとえば、軸流ファンが用いられても良い。
【0039】
筐体100の前面には、送風ファン340の吸込口341と対向する位置に吸気口101が形成される。吸気口101には、吸気口101から取り込まれる空気に含まれる埃などを除去するダストフィルタ120が設けられる。
【0040】
吸気ダクト350は、一端が吸気口101に接続され、他端が吸込口341に接続される。ドア500には、後面における筐体100の吸気口101に対応する位置に複数の通気孔501が形成され、底面に空気の取込口502が形成される。ドア500の内部では、取込口502と複数の通気孔501とが連通する。送風ファン340が動作したとき、衣類処理装置1の外部の空気が、取込口502、通気孔501および吸気口101を通じて吸気ダクト350内に取り込まれる。以降、衣類処理装置1の外部を、機外ということとする。
【0041】
図3を参照し、第2供給ユニット400は、第2供給ダクト410と、スチーム発生装置420と、排水装置430とを含む。第2供給ダクト410は、下部が右方に膨らんだ形状を有する。第2供給ダクト410には、上端部に第2供給口220の入口に接続される導出口411が設けられる。また、第2供給ダクト410には、下部の右側面に導入口412が設けられる。さらに、第2供給ダクト410には、導入口412の下方に、その底部を導入口412の位置よりも低くすることにより、貯水部413が設けられる。貯水部413の底面には、排出口414が設けられる。
【0042】
スチーム発生装置420は、給水タンク440と、給水槽450と、ポンプモジュール460と、スチーム発生器470とを含む。給水タンク440には、スチーム発生器470に供給される水が溜められる。給水タンク440は、筐体100内において、図示しない給水タンク設置部に着脱可能に設置される。給水タンク440が給水タンク設置部に設置されると、その供給口441が上方から給水槽450の入口451に接続される。供給口441には開閉弁442が設けられ、供給口441が入口451に接続されると、開閉弁442が開いて給水タンク440から給水槽450に水が供給され、給水槽450内全体が水で満たされる。
【0043】
ポンプモジュール460は、ポンプ461と、接続ホース462と、給水ホース463とを含む。ポンプ461の吸込口は、接続ホース462により給水槽450の出口452に接続される。ポンプ461の吐出口には、給水ホース463が接続される。ポンプ461は、給水槽450内の水を、接続ホース462を通じて吸い込み、給水ホース463を通じてスチーム発生器470に送る。
【0044】
スチーム発生器470は、本体部471と、ヒータ472とを含み、第2供給ダクト410の導入口412に、図示しない断熱部材を介して装着される。本体部471は、アルミダイカスト等の金属材料で形成され、内部にスチーム発生室473を有する。また、本体部471には、スチーム発生室473の上方に、給水ホース463が接続される給水口474が設けられ、スチーム発生室473の右方に、第2供給ダクト410内に繋がる放出口475が設けられる。ヒータ472は、本体部471に埋め込まれる。
【0045】
本体部471は、ヒータ472により加熱されて高温となる。ポンプ461により送られた水がスチーム発生室473の底面に滴下し蒸発することで高温のスチームが発生する。発生したスチームは、放出口475を通じて第2供給ダクト410内へ放出される。
【0046】
排水装置430は、排水タンク480と、排水ホース490とを含む。排水ホース490は、上端部に第2供給ダクト410の排出口414に接続される接続口491を有する。接続口491には、排出口414を塞ぐようにして抵抗板492が配置される。抵抗板492は、例えば、金属製の目の細かな網板であり、脱臭・除菌運転時に収容室200内に供給されたオゾンが排水ホース490を通じて筐体100の内部に漏れにくくするためのものである。
【0047】
排水タンク480は、第2供給ダクト410内で発生した結露水を回収するための容器である。排水タンク480は、筐体100内において、図示しない排水タンク設置部に着脱可能に設置される。排水タンク480が排水タンク設置部に設置されると、その入口481が、排水ホース490の下端の真下に位置づけられる。
【0048】
筐体100の前面には、筐体100内に設置された給水タンク440および排水タンク480の正面位置に、これらタンク440、480の出入口102が設けられている。出入口102は、開閉可能な蓋103で覆われる(図1参照)。ユーザは、ドア500を開いて蓋103を開けることにより、筐体100内に対して給水タンク440および排水タンク480を出し入れできる。
【0049】
図7(a)は、空気循環ユニット700の前方位置で切断した、衣類処理装置1の要部の正面断面図であり、図7(b)は、カバー712bが外された状態の空気循環ユニット700の正面図である。図8は、衣類処理装置1の要部の側面断面図である。なお、図7(a)および図8には、空気循環ユニット700から吹き出した空気の流れが実線矢印や破線矢印で示されている。また、図7(a)には、便宜上、切断面よりも前方にあるハンガー掛け610が、一点鎖線にて描かれている。
【0050】
収容室200の内部には、底部であって収容室200の後面の近傍に、空気循環ユニット700が配置される。空気循環ユニット700は、収容室200内の空気を吸い込んで収容室200内に吹き出し、吹き出した空気を吊られた衣類に向かわせる。
【0051】
空気循環ユニット700は、循環ファン710と、ルーバー機構720とを備える。循環ファン710は、クロスフローファンであり、ファン711と、ケーシング712と、ファンモータ713とを含む。ファン711は、円筒状に配されたランナー711aを有し、軸方向の寸法が径方向の寸法よりも大幅に大きい。ファン711には、中心にファン軸714が設けられる。ファン軸714の両端部は、ファン711の両端面から突出する。
【0052】
ファン711はケーシング712内に収容され、ファン軸714の両端部がケーシング712の両側面に回転可能に支持される。ケーシング712は、前面が開口する本体712aと、本体712aの前面を覆うカバー712bとで構成される。ケーシング712には、ファン711の前側、即ちカバー712bの前面に、前方に開口する吸込口715が設けられ、ファン711の後側に上方に開口する吐出口716が設けられる。吸込口715は、収容室200の底面に沿う方向に開口し、その下端が収容室200の底面より僅かに高くなっている。吸込口715には、格子状に走る複数の桟715aが設けられる。吸込口715および吐出口716の軸方向の寸法はファン711の寸法とほぼ同じである。即ち、吸込口715および吐出口716は、軸方向に長い形状を有する。
【0053】
ケーシング712内には、吸込口715とファン711との間に、フィルタ717が配置される。フィルタ717は、空気とともに吸込口715から吸い込まれた埃を捕集する。
【0054】
ファン軸714の右側の端部は、ケーシング712の右側の側面を貫通し、さらに、収容室200の右側面を貫通する。収容室200の右側面は、空気循環ユニット700に対応する部分が内側に凹んでおり、その部分の外側にファンモータ713が取り付けられる。収容室200の右側面を貫通したファン軸714は、ファンモータ713のロータ(図示せず)に連結される。
【0055】
ファンモータ713は、ファン軸714を介してファン711を回転駆動する。ファン711が回転すると、吸込口715から空気が吸い込まれ、吸い込まれた空気がファン711により送られて吐出口716から吹き出す。
【0056】
ルーバー機構720は、ルーバー721と、ルーバーモータ722とを含む。ルーバー721は、循環ファン710の軸方向に長い方形状を有し、循環ファン710の吐出口716よりもやや大きなサイズを有する。ルーバー721の左右の両端部には庇部723が設けられ、庇部723の下端部にルーバー軸724が設けられる。循環ファン710には、ケーシング712の両側面の後上端部に支持部718が設けられる。ルーバー721の両側のルーバー軸724がケーシング712の両側の支持部718に回転可能に支持される。これにより、ルーバー721は、吐出口716の上方に位置付けられ、上下方向に揺動可能となる。
【0057】
ルーバー軸724の右側の端部は、右側の支持部718を貫通し、さらに、収容室200の右側面を貫通する。収容室200の右側面の外側には、ファンモータ713の上方にルーバーモータ722が取り付けられる。収容室200の右側面を貫通したルーバー軸724は、ルーバーモータ722のロータ(図示せず)に連結される。
【0058】
ルーバーモータ722は、所定の回転角だけ正転および反転することにより、ルーバー軸724を介してルーバー721を揺動させる。循環ファン710の吐出口716から上方に吹き出した空気がルーバー721に接触して偏向される。空気の偏向角度は、揺動するルーバー721の角度に従って変化し、空気、即ち風が向かう方向が変化する。
【0059】
循環ファン710のファン軸714は、ファン711が回転するときの回転軸となり、ルーバー機構720のルーバー軸724は、ルーバー721が揺動するときの揺動軸となる。図8に示すように、循環ファン710、即ち、空気循環ユニット700は、ファン711の回転軸およびルーバー721の揺動軸の軸方向が、左右方向、即ち、ハンガー掛け610によって吊られた衣類の前後の方向と平行またはほぼ平行な状態となるように、収容室200の底部に配置される。
【0060】
図8に示すように、収容室200の天面には、左右方向における中央部であって、ハンガー掛け610の前方にカメラ270が配置される。カメラ270は、ハンガー掛け610に吊られた衣類を撮像する。カメラ270は、ハンガー掛け610の全てのフック部611に衣類が掛けられたときにそれら衣類全てを撮像できる水平および垂直画角を有する。カメラ270は、本発明の撮像部および揺れ検出部に相当する。
【0061】
図9は、衣類処理装置1の構成を示すブロック図である。
【0062】
衣類処理装置1は、上記の構成の他、操作部801と、制御部802と、湿度センサ803を備える。
【0063】
操作部801は、運転コースを選択するための選択ボタン、運転を開始させるためのスタートボタン等の操作ボタンを含み、ユーザに操作された操作ボタンに応じた操作信号を制御部802に出力する。
【0064】
湿度センサ803は、収容室200内の湿度を検出し、検出した湿度に応じた湿度信号を制御部802に出力する。湿度センサ803は、本発明の湿度検出部に相当する。
【0065】
制御部802は、マイクロコンピュータ、各種のドライバ回路などを含み、第1供給ユニット300のオゾン発生器320、加熱器330および送風ファン340、第2供給ユニット400のポンプ461およびヒータ472、保持ユニット600の振動モータ631、空気循環ユニット700のファンモータ713およびルーバーモータ722などを制御する。
【0066】
本実施の形態の衣類処理装置1では、衣類の脱臭・除菌を行う脱臭・除菌運転と、衣類の乾燥を行う乾燥運転と、衣類のしわを伸ばすしわ伸ばし運転とを行うことができる。
【0067】
図10は、衣類処理装置1の運転制御を示すフローチャートである。
【0068】
運転開始の操作が行われると、制御部802は、脱臭・除菌運転、乾燥運転およびしわ伸ばし運転のうち、何れの運転が選択されているかを判定する(S1)。
【0069】
脱臭・除菌運転が選択されている場合(S1:脱臭・除菌)、脱臭・除菌運転が開始され、制御部802は、脱臭・除菌工程を実行する(S2)。脱臭・除菌工程では、制御部802は、第1供給ユニット300において、送風ファン340とオゾン発生器320を動作させる。
【0070】
図5の実線矢印に示すように、送風ファン340の動作によって、機外の空気が吸気口101から吸気ダクト350に取り込まれ、第1供給ダクト310内に送り込まれる。
【0071】
図2に示すように、第1供給ダクト310内を流れる空気がオゾン発生器320を通過し、この際に、オゾン発生器320で発生したオゾンが空気に混入される。こうして、オゾンを含む空気が第1供給ダクト310内を通って第1供給口210へと至り、第1供給口210から収容室200内に排出される。排出されたオゾンを含む空気は、カバー240に当たって周囲に拡がり、その一部は、複数の排出孔244から排出され、残りがカバー240と収容室200の底面との間から排出される。こうして、オゾンを含む空気は、カバー240により拡散されて上方の衣類へと向かい、広く衣類に当てられる。オゾンの脱臭・除菌作用により衣類が脱臭・除菌される。
【0072】
衣類の脱臭・除菌によりオゾン濃度が低下した空気は、収容室200の上部に設けられた排出口202から排気ダクト250内に排出され、排気ダクト250内を流れて機外へ排出される。排出口202から排出される空気は、オゾン除去フィルタ261を通過する。これにより、空気中のオゾンが除去され、適正なオゾン濃度まで低下した空気が機外に排出される。
【0073】
さらに、脱臭・除菌工程において、制御部802は、空気循環ユニット700において、ファンモータ713を駆動して循環ファン710を動作させるとともに、ルーバーモータ722を駆動してルーバー721を上下方向に揺動させる。
【0074】
図7(a)に示すように、収容室200内のオゾンを含む空気が吸込口715からケーシング712内に取り込まれ、オゾン風として吐出口716から吹き出す。吹き出したオゾン風は、ルーバー721で偏向されて衣類へと向かう。このとき、ルーバー721が揺動していることによりオゾン風の偏向角度が変化するため、衣類には、様々な方向からオゾン風が接触するようになる。これにより、衣類へのオゾン風の接触効率が良くなり、衣類が脱臭・除菌されやすくなる。また、様々な方向からのオゾン風により衣類が押されることで吊られた衣類が揺らされる。これにより、衣類の袖と胴体との間など、衣類が静止した状態では行き渡りにくい部分に、オゾンを行き渡らせることができる。また、衣類に付着した埃が落ちやすくなる。
【0075】
さらに、ハンガー掛け610には、衣類が、その前後の方向が空気循環ユニット700のルーバー721の揺動軸の軸方向と平行となるように吊られている。このため、図7(a)のように複数の衣類が収容室200内に収容された場合であっても、循環ファン710から吐き出されてルーバー721で偏向されたオゾン風が、衣類と衣類の間を通って収容室200の上部まで行き渡りやすくなる。これにより、オゾン風が複数の衣類に万遍なく当たりやすくなり、複数の衣類が良く脱臭・除菌される。
【0076】
所定の脱臭・除菌時間が経過すると、制御部802は、オゾン発生器320、送風ファン340、循環ファン710およびルーバー721の動作を停止させ、脱臭・除菌工程を終了する。こうして、脱臭・除菌運転が終了する。
【0077】
次に、ステップS1において、制御部802は、乾燥運転が選択されていると判定すると(S1:乾燥)、乾燥運転を開始し、乾燥工程を実行する(S3)。乾燥工程では、制御部802は、第1供給ユニット300において、送風ファン340と加熱器330を動作させる。
【0078】
図5の実線矢印に示すように、送風ファン340の動作によって、機外の空気が吸気口101から吸気ダクト350に取り込まれ、第1供給ダクト310内に送り込まれる。
【0079】
図2に示すように、第1供給ダクト310内を流れる空気は、加熱器330で加熱され、乾燥に適する温度(たとえば、60℃程度)の温風となる。その後、温風は、第1供給口210へと至り、第1供給口210から収容室200内に排出される。排出された温風は、オゾンを含む空気と同様、カバー240により拡散されて上方の衣類へと向かい、広く衣類に当てられる。これにより、衣類が乾燥する。収容室200内で衣類から水分を奪った空気は、排出口202、排気ダクト250を通じて機外に排出される。
【0080】
乾燥工程において、制御部802は、空気循環ユニット700において、循環ファン710を動作させるとともに、ルーバー721を上下方向に揺動させる。
【0081】
図7(a)に示すように、温風の供給により温まった収容室200内の空気が吸込口715からケーシング712内に取り込まれ、温風として吐出口716から吹き出す。吹き出した温風は、揺動するルーバー721で偏向されることにより、様々な方向から衣類に接触する。これにより、衣類への温風の接触効率が良くなり、衣類が乾燥しやすくなる。また、衣類が揺らされることにより、衣類が静止した状態では行き渡りにくい衣類の部分に温風を行き渡らせることができ、また、衣類に付着した埃が落ちやすくなる。
【0082】
さらに、脱臭・除菌運転の場合と同様、図7(a)のように複数の衣類が収容室200内に収容された場合であっても、循環ファン710から吐き出されてルーバー721で偏向された温風が、衣類と衣類の間を通って収容室200の上部まで行き渡りやすくなる。これにより、温風が複数の衣類に万遍なく当たりやすくなり、複数の衣類が乾燥しやすくなる。
【0083】
さらに、乾燥工程では、制御部802により、後述する衣類揺動処理が実行され、ハンガー掛け610が振動する。これにより、ハンガー掛け610に吊られた衣類が、その衣類の前後方向に揺らされ、その際に衣類に作用する遠心力により衣類が伸ばされる。これにより、乾燥の進行に伴う衣類のしわ付きが抑制される。
【0084】
所定の乾燥時間が経過すると、制御部802は、加熱器330、送風ファン340、循環ファン710およびルーバー721の動作を停止させ、乾燥工程を終了する。こうして、乾燥運転が終了する。
【0085】
次に、ステップS1において、制御部802は、しわ伸ばし運転が選択されていると判定すると(S1:しわ伸ばし)、しわ伸ばし運転を開始し、準備工程を実行する(S4)。準備工程では、制御部802は、第2供給ユニット400において、ポンプ461を停止させたままスチーム発生器470のヒータ472を動作させる。これにより、スチーム発生器470の本体部471の温度が上昇していく。
【0086】
さらに、準備工程において、制御部802は、空気循環ユニット700において、循環ファン710を動作させるとともに、ルーバー721を上下方向に揺動させる。図7(a)に示すように、収容室200内の空気が吸込口715からケーシング712内に取り込まれ、風として吐出口716から吹き出す。吹き出した風は、揺動するルーバー721で偏向されることにより、様々な方向から衣類に接触し、衣類を揺らす。これにより、衣類から埃が落ちやすくなる。
【0087】
スチーム発生器470の本体部471が十分に高温になると、制御部802は、準備工程を終了し、スチーム工程を実行する(S5)。スチーム工程では、制御部802は、ヒータ472を引き続き動作させた状態でポンプ461を動作させる。図3に示すように、スチーム発生器470で高温のスチームが発生し、第2供給ダクト410内に放出される。放出されたスチームは、第2供給ダクト410内を上昇して第2供給口220へと至り、第2供給口220から収容室200内に排出される。排出されたスチームは、カバー240に当たって周囲に拡がり、その一部は、複数の排出孔244から排出され、残りがカバー240と収容室200の底面との間から排出される。こうして、スチームは、カバー240により拡散されて上方の衣類へと向かい、広く衣類に当てられる。スチームが有する水分と熱により、衣類のしわが伸ばされる。
【0088】
スチームが第2供給ダクト410内を流れる際、その一部が結露して結露水が生じ得る。結露水は、下方へ流れて貯水部413に溜まり、排出口414から排出される。排出された結露水は、排水ホース490を通って排水タンク480に回収される。このように、本実施の形態では、第2供給ダクト410の導入口412よりも下方に、結露水が溜められる貯水部413が設けられているので、結露水が導入口412からスチーム発生器470の内部へと流れることが防止される。
【0089】
さらに、スチーム工程では、引き続き、循環ファン710とルーバー721が動作する。吐出口716から吹き出してルーバー721により偏向された風により、衣類が揺らされる。衣類が吊られた状態で揺れると、衣類に遠心力等の力が加わりやすくなる。これにより、スチームが当てられた衣類の表面が伸ばされやすくなるので、衣類のしわが伸びやすくなる。また、衣類がスチームで濡らされているために準備工程での乾いた状態ほどではないが、衣類が揺らされることで、衣類に付着した埃が落ち得る。
【0090】
さらに、脱臭・除菌運転の場合と同様、図7(a)のように複数の衣類が収容室200内に収容された場合であっても、循環ファン710から吐き出されてルーバー721で偏向された風が、衣類と衣類の間を通って収容室200の上部まで行き渡りやすくなる。これにより、風が複数の衣類に万遍なく当たりやすくなり、複数の衣類が良く揺らされて、そのしわが伸びやすくなる。
【0091】
所定のスチーム供給時間が経過すると、制御部802は、ヒータ472とポンプ461を停止させて、スチーム工程を終了する。
【0092】
次に、制御部802は、乾燥工程を実行する(S6)。乾燥工程は、乾燥運転における乾燥工程と同様であり、送風ファン340と加熱器330が動作し、循環ファン710とルーバー721も引き続き動作する。これにより、スチームによって濡らされた衣類が乾燥する。なお、しわ伸ばし運転での乾燥時間は、しわ伸ばし運転に適したものとされ、乾燥運転の乾燥時間とは異なるものとされ得る。
【0093】
さらに、しわ防止運転の乾燥工程においても、制御部802により衣類揺動処理が実行され、ハンガー掛け610が振動してハンガー掛け610に吊られた衣類が、その衣類の前後方向に揺らされる。これにより、乾燥の進行に伴う衣類のしわ付きが抑制される。
【0094】
所定の乾燥時間の経過により乾燥工程が終了すると、制御部802は、換気工程を実行する(S7)。即ち、制御部802は、乾燥工程に引き続いて循環ファン710とルーバー721を動作させたままとする。収容室200内の空気が吸込口715から取り込まれ、吐出口716から収容室200内に吹き出すことにより、機外の空気が、第1供給ユニット300の吸気ダクト350および第1供給ダクト310を通じて第1供給口210から収容室200内に取り込まれ、収容室200内の空気が排出口202および排気ダクト250を通じて機外に排出される。これにより、収容室200内が換気され、収容室200内の内壁などが、スチームにより湿っていても乾かされる。
【0095】
所定の換気時間が経過すると、制御部802は、循環ファン710とルーバー721の動作を停止させ、換気工程を終了する。こうして、しわ伸ばし運転が終了する。
【0096】
図11は、乾燥工程の際に実行される衣類揺動処理を示すフローチャートである。
【0097】
図11を参照して、乾燥工程が開始されると、制御部802は、湿度センサ803により収容室200内の湿度を検出し、検出湿度が所定の閾値以下になったか否かを判定する(S101)。なお、湿度の検出は、乾燥工程が開始されてからある程度の時間が経過し、衣類から放出される水分で収容室200内の湿度が十分に高くなった後に開始される。
【0098】
衣類は、濡れた状態では、含有された水分により膨らむため、伸びてしわが付きにくい。衣類は、乾かされて水分が少なくなるにつれて縮んでゆき、表面にしわが形成され、そのしわが固まる。よって、衣類の含水量がしわが固まり始めようとする量まで低下したタイミングで衣類を伸ばすことができると、衣類のしわ付きを効果的に抑制できる。衣類の含水量は、収容室200内の湿度から推測できるため、しわが固まり始めようとする含水量に対応する収容室200内の湿度が、予め実験等を行うことにより求められ、その湿度が上記の閾値に設定される。
【0099】
検出湿度が閾値以下になると(S101:YES)、制御部802は、ハンガー掛け610を振動させるときの振動数を決める振動数決定処理を行う(S102)。振動数決定処理の手順は以下のとおりである。
【0100】
制御部802は、振動モータ631の回転数を段階的に、たとえば、数十rpmずつ上昇させて、ハンガー掛け610の振動数を段階的に上昇させる。各段階の振動数において、衣類は、その衣類の前後方向に、振動数に応じた態様で揺れる。制御部802は、各段階の振動数において、カメラ270により所定のサンプリング周波数で、ハンガー掛け610に吊られた衣類を撮像し、撮像された各画像を解析することにより、衣類の揺れの大きさ(以下、揺れ量という)を検出する。たとえば、制御部802は、撮像した画像の中から衣類を認識し、その衣類が鉛直方向に対して右側あるは左側に傾く角度を測定する。そして、制御部802は、各画像から測定した傾き角の中で最大の傾き角を揺れ量として検出する。なお、衣類が右側に揺れたときの最大の傾き角と衣類が左側に揺れたときの最大の傾き角とを足し合わせた角度が揺れ量とされてもよい。
【0101】
制御部802は、各段階の振動数での揺れ量を、その内部のメモリに記憶する。制御部802は、振動モータ631の回転数が所定回転数に到達し、当該所定回転数に対応する振動数での揺れ量を検出すると、検出した全ての揺れ量の中から最大の揺れ量を抽出し、その揺れ量に対応する振動数を、今回のハンガー掛け610の振動数に決定する。なお、制御部802は、振動モータ631の回転数を決定することにより、ハンガー掛け610の振動数を決定してもよい。即ち、振動モータ631の回転数を決定することも、ハンガー掛け610の振動数を決定することになる。
【0102】
ハンガー掛け610に吊られた衣類は、形状、重さ等、その状態によって、共振により揺れやすくなる振動数が変わり得る。決定される振動数は、そのときの状態の衣類が最も大きく揺れる振動数と考えられる。
【0103】
なお、ハンガー掛け610に複数の衣類が吊られている場合、制御部802は、各段階の振動数において、個々の衣類の揺れ量を検出し、それら揺れ量の平均値あるいは合算値を、その段階での揺れ量とする。
【0104】
振動数決定処理により今回の振動数が決定されると、制御部802は、決定した振動数に対応する回転数で振動モータ631を回転させ、決定した振動数でハンガー掛け610を振動させる。これにより、ハンガー掛け610に吊られた衣類がその前後方向に大きく揺れ、衣類の表面が十分に伸ばされて衣類にしわが形成されにくくなる。
【0105】
制御部802は、決定した振動数でのハンガー掛け610の振動の開始から所定時間が経過したか否かを判定する。衣類の乾燥が進行するに伴い衣類の重さ等が変化するため、衣類が揺れやすい振動数も変化し得る。よって、乾燥が終了するまでに、複数回の振動数決定処理が行われて複数回の振動数の変更が可能となるよう、所定時間の長さが設定される。
【0106】
所定時間が経過すると(S104:YES)、制御部802は、再び、振動数決定処理を行い(S102)、決定した振動数でハンガー掛け610を振動させる(S103)。このようにして、乾燥工程が終了するまで、所定時間が経過する度にハンガー掛け610の振動数が最適な振動数に変更される。よって、乾燥の進行に伴い衣類の状態が変化しても、衣類が十分に揺らされ続ける。
【0107】
その後、乾燥工程が終了すると(S105:YES)、制御部802は、衣類揺動処理を終了させる。
【0108】
なお、乾燥工程は、時間経過に基づいて終了されるのではなく、湿度センサ803により検出された収容室200内の湿度に基づいて終了されてもよい。この場合、所定時間が経過する度に振動数決定処理が行われるのではなく、収容室200内の湿度が所定量だけ低下する度に振動数決定処理が行われるようにしてもよい。
【0109】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、第1供給ユニット300からの温風により衣類を乾燥する乾燥工程において、カメラ270によりハンガー掛け610に吊られた衣類の揺れの大きさが検出され、検出された揺れの大きさに応じてハンガー掛け610が振動するときの振動数が決定される。これにより、重さ、形状等の状態によらず、衣類を十分に揺らすことが可能となり、衣類へのしわ付きを十分に抑制することが期待できる。
【0110】
また、乾燥工程において、湿度センサ803により検出された湿度が閾値以下になったときに、加振機構部630によりハンガー掛け610の振動が開始されるので、衣類の含水量がしわが固まり始めようとする量まで低下したタイミングで、衣類を揺らし始めて衣類を伸ばすことができる。これにより、しわ伸ばし効果が得られにくい期間において加振機構部630が動作することが避けられるので、電力の浪費等を抑制できる。
【0111】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0112】
たとえば、上記実施の形態では、乾燥工程において、湿度センサ803により検出された湿度が閾値以下になったときに、加振機構部630によりハンガー掛け610の振動が開始された。しかしながら、乾燥工程の最初から、あるいは、乾燥工程の開始から所定の待機時間が経過した後、ハンガー掛け610の振動が開始されてもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、衣類の揺れの大きさを検出するためにカメラ270が用いられた。しかしながら、他の検出部、たとえば、加速度センサが用いられてもよい。加速度センサが用いられる場合、ハンガー掛け610のフック部611に、揺動可能なハンガーが固定され、このハンガーに加速度センサが配置されるような構成が採られるとよい。
【0114】
さらに、ハンガー掛け610の構成は、上記実施の形態の構成に限られず、衣類を吊り下げた状態で保持できれば、如何なる構成であってもよい。
【0115】
さらに、加振機構部630の構成は、上記実施の形態の構成に限られず、ハンガー掛け610を水平方向に振動させることができれば、如何なる構成であってもよい。
【0116】
さらに、上記実施の形態では、衣類揺動処理において、制御部802は、S104で所定時間が経過したと判定すると、直ちに、S102の処理に戻って振動決定処理を行った。しかしながら、制御部802は、所定時間が経過したときに、カメラ270によりハンガー掛け610に吊られた衣類を撮像して衣類の揺れの大きさを検出し、その揺れの大きさと、その回の振動数決定処理において検出された、決定した振動数での衣類の揺れの大きさとを比較し、揺れの大きさが所定量よりも低下していないときに振動数決定処理に移行しないようにしてもよい。
【0117】
さらに、上記実施の形態では、吊られた衣類の前後方向が、収容室200の左右方向となるような方向で、収容室200内にハンガー掛け610が配置された。しかしながら、吊られた衣類の前後方向が、収容室200の前後方向となるような方向で、収容室200内にハンガー掛け610が配置されてもよい。
【0118】
さらに、上記実施の形態では、衣類処理装置1は、脱臭・除菌運転が行われるものであった。しかしながら、衣類処理装置1は、脱臭・除菌運転が行われないものであってもよく、第1供給ユニット300にオゾン発生器320が配されないようにされてもよい。
【0119】
さらに、上記実施の形態では、収容室200内に空気循環ユニット700が配置された。しかしながら、衣類処理装置1は、収容室200内に空気循環ユニット700が配置されない構成とされてもよい。
【0120】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 衣類処理装置
100 筺体
200 収容室
270 カメラ(撮像部、揺れ検出部)
300 第1供給ユニット(温風供給部)
600 保持ユニット
610 ハンガー掛け(保持部)
630 加振機構部(加振部)
802 制御部
803 湿度センサ(湿度検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11