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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】新規製紙用紙力剤
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/18 20060101AFI20240313BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20240313BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20240313BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240313BHJP
   C08F 12/22 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
D21H21/18
C08F220/56
C08F220/28
C08F290/06
C08F12/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020048566
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147723
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-008207(JP,A)
【文献】特開2007-301532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00- 27/42
C08F 2/00- 2/60
6/00-246/00
301/00
C09K 23/00- 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性界面活性剤として、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩及びオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選択される一種以上、(メタ)アクリルアミド、カチオン性単量体を必須成分とし、疎水性単量体を含まない単量体成分を重合して得られる高分子であり、該高分子が全単量体に対して、反応性界面活性剤が1質量%より大きく15質量%以下である単量体成分を重合して得られる高分子からなることを特徴とする紙力剤。
【請求項2】
前記高分子の1質量%水溶液のB型粘度計による回転数60rpm、温度25℃における粘度が5~50mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の紙力剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙の製造に使用される製紙用紙力剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紙に強度を付与する紙力剤として、ポリアクリルアミド系紙力剤がある。ポリアクリルアミド系紙力剤はイオン性によりアニオンタイプ、カチオンタイプ、及び両性タイプに分類される。現在では性能の面から、両性タイプの紙力剤が主流となっている。両性タイプのポリアクリルアミド系紙力剤は、アクリルアミドにカチオン性モノマーとアニオン性モノマー等の各種重合成分を共重合して得られる両性アクリルアミド系水溶性ポリマーよりなる(特許文献1)。両性アクリルアミド系水溶性ポリマーは、ポリイオンコンプレックスを形成する。ポリイオンコンプレックスは、カチオン基とアニオン基の間の静電相互作用により形成される。ポリイオンコンプレックスを形成することで、両性アクリルアミド系水溶性ポリマーは紙力増強効果を発揮することが知られている。
【0003】
近年古紙のリサイクル化やクローズド化が進むことで、抄紙系内には微細繊維や溶存電解質物質が蓄積され、抄紙系の電気伝導度は上昇傾向にある。このため、特に両性タイプの紙力剤はイオンコンプレックスの形成が阻害され、十分な効果が発揮できない状況となっている。
【0004】
一方、分子内に疎水性基を有する水溶性高分子は水中で会合体を形成することが知られている(非特許文献1)。疎水性会合体は疎水性相互作用により形成されるため、溶存電解質の存在によりその形成が阻害されることは無い。
【0005】
疎水性基を有する重合性単量体として反応性界面活性剤がある。紙力剤製造時の高分子水溶液の撹拌軸への巻き付き現象を抑制するために反応性界面活性剤を添加する技術(特許文献2、3)が開示されている。本技術は、重合時の高分子水溶液の撹拌軸への巻き付き現象を抑制するためのものであり、重合した高分子の性能を向上させるために反応性界面活性剤を添加するものではない。また、反応性界面活性剤と重合性単量体を共重合してなる水性ポリマーとポリマー微粒子の混合物からなる水性ポリマー組成物が、機械的、化学的、貯蔵安定性に優れ、塗工紙に使用した場合に表面強度、内部強度、印刷適性等を改善することが開示されている(特許文献4)。当該技術はポリマー微粒子を必須とするものであり、また表面塗工剤を目的としたものである。また、合成樹脂エマルション及び反応性界面活性剤を共重合成分とする(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有する内添製紙用添加剤が開示されている(特許文献5)。当該技術は合成樹脂エマルジョンの分散性と繊維に対する定着性を改善することを目的とするものである。
【0006】
【文献】特開2012-251252号公報
【文献】特開平2-8207号公報
【文献】特開平2-104796号公報
【文献】特開平10-120711号公報
【文献】特開平11-189988号公報
【文献】高分子46巻3月号(1997年)、128項~131項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一般に使用されている両性タイプの紙力剤の問題点を解決し、イオン性夾雑物の影響を受けにくく紙力増強効果に優れた新しいタイプの紙力剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、反応性界面活性剤、(メタ)アクリルアミド、カチオン性単量体を必須成分とし、疎水性単量体を含まない単量体を重合することにより得られる高分子が、優れた紙力増強効果を発揮することを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた紙力増強効果を有し、従来にない新規な構造を有する紙力剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の高分子は、反応性界面活性剤、(メタ)アクリルアミド、カチオン性単量体を必須成分とし、疎水性単量体を含まない単量体を重合することにより得られる。重合は水溶液重合、懸濁重合、塩水中分散重合等の従来公知の方法により行うことができる。例えば、所定の反応容器に単量体混合物、水、ラジカル重合開始剤を添加し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、撹拌、加温することにより目的の高分子を得ることができる。
【0012】
ここで反応性界面活性剤とは、一分子中にラジカル重合可能なエチレン性二重結合を持つ置換基を有し界面活性剤として機能する単量体である。反応性界面活性剤としては、例えば下記式(1)で表されるポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬株式会社製アクアロンAN-10(nの平均値10)、AN-20(nの平均値20)、AN-30(nの平均値30)等)、下記式(2)で表されるポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製アクアロンAR-10(nの平均値10)、AR-20(nの平均値20)等)、下記式(3)で表されるポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製アクアロンBC-10(nの平均値10)、BC-20(nの平均値20)等)、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。反応性界面活性剤は全単量体に対して、0.5質量%~15質量%以下であるが、1質量%より大きく~15質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5~10質量%である。反応性界面活性剤とアクリルアミド及びカチオン性単量体を共重合して得られる高分子は水中で疎水性会合体を形成し紙力増強効果が向上する。反応性界面活性剤の量が少ないとアクリルアミド及びカチオン性単量体との共重合が不十分となるため疎水性会合体の形成が不十分となり、紙力増強効果が低下する。また、反応性界面活性剤の量が多いとアクリルアミドの量が少なくなり、パルプとの水素結合による結合力が低下し紙力増強効果が低下する。

式(1)
ここで、mは1~3の整数、nは10~1000の整数

式(2)
ここで、mは1~3の整数、nは3~1000の整数、Kはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基またはアルカノールアミン基

式(3)
ここで、nは3~1000の整数、Kはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基またはアルカノールアミン基
【0013】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸若しくは有機酸の塩類、またはこれら第3級アミノ基含有単量体とメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリン等の四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を有する単量体等が挙げられる。この内、第四級アンモニウム塩を有する単量体として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。カチオン性単量体は全単量体に対し、3~30質量%が好ましく、更に好ましくは5~25質量%である。カチオン性単量体の量が少ないとパルプへの吸着性が低下し紙力増強効果が低下する。またカチオン性単量体の量が多すぎるとアクリルアミドの量が少なくなり、パルプとの水素結合による結合力が低下し紙力増強効果が低下する。
【0014】
本発明の紙力剤に係る共重合体は重合成分としてさらにアクリルアミド以外のノニオン性単量体、アニオン性単量体、架橋性単量体等を含むことができる。これらの合計量は全単量体の20質量%以下が好ましい。尚、本発明の紙力剤に係る高分子は重合成分として疎水性単量体は含まない。ここで疎水性単量体とは、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体を意味する。疎水性単量体の例としては、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0015】
アクリルアミド以外のノニオン性単量体としては、ジメチルアクリルアミド、ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がある。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0016】
アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸単量体、マレイン酸、イタコン酸等のジカルボン酸単量体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の有機スルホン酸単量体、またはこれらのナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0017】
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。架橋性単量体の添加率は全単量体に対し1質量%以下が好ましい。
【0018】
本発明においては連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、ジ亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。また、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸アンモニウム等のメタリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0019】
重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩等のアゾ系の重合開始剤も使用可能である。重合開始剤の量は全単量体に対し0.05質量%~2質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0020】
重合反応は、通常温度30℃~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。得られる高分子の濃度は通常5~50質量%である。
【0021】
得られた高分子は、高分子1質量%水溶液の粘度が5~50mPa・sであることが好ましい。粘度はB型粘度計で回転数60rpm、25℃で測定したものである。粘度がこれより小さいと紙力増強効果が不十分となる。また、粘度がこれより大きいと溶解性が低下し取扱いが困難となる。B型粘度計として、東機産業株式会社製B8M型、TVB-10M型等の汎用品が適宜に使用される。粘度が100mPa・s以下の場合は、1号ローターを用いる。
【0022】
本発明における紙力剤を使用する紙の種類としては、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙等が挙げられる。添加する場所としては、抄紙工程におけるパルプスラリー中あるいは湿紙上などのウエットエンド部に添加される。添加率としては、パルプ乾燥固形分に対して、固形分で0.05~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。又、その他の紙力剤やサイズ剤、硫酸バンド、凝結剤、歩留向上剤、濾水性向上剤等の製紙用薬品と併用することができる。
【実施例
【0023】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。なお、粘度はB型粘度計を使用し、回転数60rpm、25℃で測定した。
【0024】
(実施例1)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ブレンマー50POEP-800B、日油製)1.0g、80質量%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド3.1g、50%アクリルアミド93.6g、脱塩水152.0g、ジ亜リン酸ナトリウム0.10g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、20.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0025】
(実施例2)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ブレンマー50POEP-800B、日油製)1.0g、80質量%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド11.3g、50%アクリルアミド95.6g、脱塩水142.9g、ジ亜リン酸ナトリウム0.10g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、17.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0026】
(実施例3)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAN-10(第一工業製薬製)1.0g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.4g、50質量%アクリルアミド83.2g、脱塩水151.6g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、23.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0027】
参考例4)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAN-10(第一工業製薬製)0.25g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.4g、50質量%アクリルアミド84.6g、脱塩水151.0g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、18.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0028】
(実施例5)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAN-10(第一工業製薬製)5.0g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.4g、50質量%アクリルアミド75.1g、脱塩水155.4g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、27.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0029】
(実施例6)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAN-10(第一工業製薬製)2.5g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.4g、50質量%アクリルアミド80.1g、脱塩水153.1g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、32.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0030】
(実施例7)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAN-10(第一工業製薬製)0.50g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド84.2g、脱塩水152.1g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、23.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0031】
(実施例8)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)5.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド75.1g、脱塩水157.8g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、22.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0032】
(実施例9)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)2.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド80.0g、脱塩水155.1g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、29.2mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0033】
参考例10)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)0.25g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド84.5g、脱塩水152.8g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、20.2mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0034】
(実施例11)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)1.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.2g、50質量%アクリルアミド83.1g、脱塩水153.5g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.35g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、27.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0035】
(実施例12)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)1.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、80質量%アクリル酸1.3g、50質量%アクリルアミド83.2g、脱塩水153.5g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.35g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、20.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0036】
(実施例13)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)1.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド83.1g、脱塩水153.5g、メチレンビスアクリルアミド0.05g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.90g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、19.7mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0037】
(実施例14)
500mLの4つ口フラスコに、反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬製)2.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド80.0g、脱塩水155.0g、メチレンビスアクリルアミド0.05g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.90g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、16.2mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
500mLの4つ口フラスコに、80質量%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド3.1g、50質量%アクリルアミド96.4g、脱塩水150.9g、ジ亜リン酸ナトリウム0.10g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、18.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0039】
(比較例2)
500mLの4つ口フラスコに、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.4g、50質量%アクリルアミド85.6g、脱塩水155.6g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.30g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、18.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0040】
(比較例3)
500mLの4つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート7.5g、35%塩酸5.0g、50質量%アクリルアミド85.0g、脱塩水152.5g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.25g、VA-044(和光純薬製)0.1gを仕込み200rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、22.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0041】
表1
反応性界面活性剤;
50POEP-800B:オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製ブレンマー50POEP-800B)
AN-10:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬株式会社製アクアロンAN-10)
AR-10:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製アクアロンAR-10)
カチオン性単量体;
DMBZ:アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド
DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
その他の単量体;AAC:アクリル酸、MBAA:メチレンビスアクリルアミド
【0042】
(試験例1)
本発明における紙力剤の紙質測定試験を実施した。先ず、LBKPをナイアガラ式ビーターで叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス(叩解度)355mLに調整した。パルプ濃度1質量%のスラリー(pH6.4、電気伝導度17.1mS/m)500mLに対し、パルプ固形分に対し0.5質量%、1質量%となるように表1の実施例の高分子試料あるいは比較例の高分子試料を添加し、800rpmで1分間撹拌後、タッピシートマシンにて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型乾燥機を使用し105℃で乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/cmの紙を得た。得られた紙の引張強度(オリエンテック製TENSILON RTC-1210A)、JIS P8112に準じて破裂強度を測定し、表2の結果を得た。実施試験例では比較試験例の紙に比較して紙力の向上を示した。
【0043】
(表2)
【0044】
(試験例2)
試験例1と同様に調製(叩解度320mL)したパルプ濃度1質量%のスラリー500mLに対し、パルプ固形分に対し0.5質量%、1質量%となるように表1の実施例の高分子試料あるいは比較例の高分子試料を添加し、800rpmで1分間撹拌後、タッピシートマシンにて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型乾燥機を使用し105℃で乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/cmの紙を得た。得られた紙の内部結合強さ(熊谷理機工業製インターナルボンドテスター)、JIS P8112に準じて破裂強度を測定し、表3の結果を得た。実施試験例では比較試験例の紙に比較して紙力の向上を示した。
【0045】
表3
【0046】
(試験例3)
試験例1と同様に調製(叩解度355mL)したパルプ濃度1質量%のスラリー500mLに対し、パルプ固形分に対し0.5質量%、1質量%となるように表1の実施例の高分子試料あるいは比較例の高分子試料を添加し、800rpmで1分間撹拌後、タッピシートマシンにて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型乾燥機を使用し105℃で乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/cmの紙を得た。得られた紙の内部結合強さ(熊谷理機工業製インターナルボンドテスター)、JIS P8112に準じて破裂強度を測定し、表4の結果を得た。実施試験例では比較試験例の紙に比較して紙力の向上を示した。
【0047】
(表4)
【0048】
(試験例4)
試験例1と同様に調製(叩解度355mL)したパルプ濃度1質量%のスラリー500mLに対し、パルプ固形分に対し0.5質量%、1質量%となるように表1の実施例の高分子試料あるいは比較例の高分子試料又は市販品の両性ポリアクリルアミド系紙力剤(固形分20質量%、pH7のカチオン当量値1.33meq/g、アニオン当量値1.06meq/g)を添加し、800rpmで1分間撹拌後、タッピシートマシンにて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型乾燥機を使用し105℃で乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/cmの紙を得た。得られた紙の内部結合強さ(熊谷理機工業製インターナルボンドテスター)、JIS P8112に準じて破裂強度を測定し、表5の結果を得た。実施試験例では比較試験例の紙に比較して紙力の向上を示した。
【0049】
(表5)