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特許7453655超音波ヘッド装置、及び超音波治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】超音波ヘッド装置、及び超音波治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240313BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20240313BHJP
   A61B 17/225 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61B17/00 700
A61B34/30
A61B17/225
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023551670
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2022036464
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和孝
(72)【発明者】
【氏名】丸野 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 武則
(72)【発明者】
【氏名】松成 信一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-023990(JP,A)
【文献】特開2020-039397(JP,A)
【文献】特開2020-036709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 34/30
A61B 17/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の姿勢状態で保持可能なロボットアームに支持され、治療対象物の内部に超音波を照射する超音波治療システムに適用される超音波ヘッド装置であって、
前記ロボットアームに支持されたベース部と、
前記ベース部に設けられ、前記超音波を照射する半球状の照射面を有する照射部と、
前記超音波を伝達する媒介液を収容し、前記照射面を覆う水袋と、
前記媒介液を前記水袋に流通させる給排水部と、
前記ベース部に設けられ、前記照射面の中心軸方向に沿って前記水袋を前記照射面に対して移動自在に支持する移動機構と、を有し、
前記移動機構は、前記ベース部側に設けられた第1筒状部と、
前記第1筒状部に対して前記中心軸方向に沿って移動自在に設けられた第2筒状部と、
前記第2筒状部を前記中心軸方向に沿って移動させる第1駆動部と、を備え、
前記第2筒状部は、前記中心軸方向に沿って前記ベース部と異なる側に前記水袋が固定される、
超音波ヘッド装置。
【請求項2】
前記第1筒状部または前記第2筒状部のいずれか一方に前記中心軸方向に沿って1つ以上の第1溝部が形成され、
前記第1筒状部または前記第2筒状部のいずれか他方には、径方向に沿って突出し、前記第1溝部に係合するように形成された1つ以上の係合部材を備えている、
請求項1に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項3】
前記第1筒状部または前記第2筒状部のいずれか一方が他方に挿入され、
前記移動機構は、径方向において前記第1筒状部と前記第2筒状部との間に配置された第3筒状部を備え、
前記第1筒状部は、前記第1溝部を有し、
前記第2筒状部は、前記係合部材を有し、
前記第3筒状部の前記中心軸に対する周方向には、前記中心軸方向に沿って傾斜し、前記係合部材が貫通する1つ以上の第2溝部が形成され、
前記第1駆動部は、
前記第3筒状部を前記中心軸を回転軸として回転させ、
前記第3筒状部が前記第1筒状部及び前記第2筒状部に対して前記周方向に沿って回転駆動されることにより、
前記係合部材が前記第2溝部及び前記第1溝部に沿って相対的に移動し、
回転方向に基づいて前記第2筒状部を前記第1筒状部に対して前記中心軸方向に沿った方向に移動させる、
請求項2に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項4】
前記第1筒状部と前記第2筒状部との間には、周方向に沿って隙間をシールするシール部を備え、
前記第1筒状部は、前記シール部にシールされる被シール部が設けられ、
前記第2筒状部は、前記シール部が配置されるシール溝部が設けられる、
請求項1または2に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項5】
前記第2筒状部は、下方に前記水袋を着脱自在とする取付部を備え、
前記取付部は、前記第2筒状部の下端に着脱自在な環状部材を備える、
請求項4に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項6】
前記水袋は、端部にフランジ部を有する半球状に構成され、
前記環状部材は、前記フランジ部に係合すると共に、前記第2筒状部の下端と協働して前記フランジ部を挟持する、
請求項5に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項7】
前記照射部は、
前記照射面を有し、前記治療対象物の患部に超音波を照射し治療する第1照射部と、
前記照射面より突出し、前記治療対象物に超音波を走査して断面画像を生成する第2照射部と、を備え、
前記中心軸を中心として前記第1照射部を回転駆動させる第2駆動部と、
前記中心軸を中心として前記第2照射部を回転駆動させる第3駆動部と、
前記中心軸に沿った方向に前記第2照射部を移動させる第4駆動部と、を備える、
請求項6に記載の超音波ヘッド装置。
【請求項8】
治療対象物の内部に超音波を照射する超音波ヘッド装置と、
前記超音波ヘッド装置を任意の姿勢状態で保持可能なロボットアームと、
前記超音波ヘッド装置に接続された給排水機構と、
前記超音波ヘッド装置及び前記給排水機構を制御する制御装置と、を備え、
前記超音波ヘッド装置は、
前記ロボットアームに支持されたベース部と、
前記ベース部に設けられ、前記超音波を照射する照射面を有する照射部と、
前記超音波を伝達する媒介液を収容し、前記照射面を覆う水袋と、
前記媒介液を前記水袋に流通させる給排水部と、
前記ベース部に設けられ、前記照射面の中心軸方向に沿って前記水袋を前記照射面に対して移動自在に支持する移動機構と、を有し、
前記移動機構は、前記ベース部側に設けられた第1筒状部と、
前記第1筒状部に対して前記中心軸方向に沿って移動自在に設けられ下側に前記水袋が固定された第2筒状部と、
前記第2筒状部を前記第1筒状部に対して移動させる第1駆動部と、を備え、
前記給排水機構は、
前記給排水部に前記媒介液を供給し、または、前記媒介液を排出させる、
超音波治療システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記移動機構を制御して前記水袋を移動させ、
前記給排水機構を制御して移動に応じて変化する前記水袋の内部空間に前記媒介液を供給または排出させる、
請求項8に記載の超音波治療システム。
【請求項10】
任意の姿勢状態で保持可能なロボットアームに支持され、治療対象物の内部に超音波を照射する超音波治療システムに適用され、前記超音波を伝達する媒介液を収容する水袋を取り付けられる超音波ヘッド装置であって、
前記ロボットアームに支持されたベース部と、
前記ベース部に設けられ、前記超音波を照射する半球状の照射面を有する照射部と、
前記ベース部に設けられ、前記照射面の中心軸方向に沿って前記水袋を前記照射面に対して移動自在に支持する移動機構と、を有し、
前記移動機構は、前記ベース部側に設けられた第1筒状部と、
前記第1筒状部に対して前記中心軸方向に沿って移動自在に設けられた第2筒状部と、
前記第2筒状部を前記中心軸方向に沿って移動させる第1駆動部と、を備え、
前記第2筒状部は、前記中心軸方向に沿って前記ベース部と異なる側に前記水袋が前記照射部を覆う様に装着される水袋装着部を有する、超音波ヘッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を照射して治療するための超音波ヘッド装置、超音波治療システム、及び超音波治療システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者体内の癌細胞、腫瘍等の患部に対して超音波を照射し患部を焼灼したり、結石や細胞を破砕したり、患部や神経を刺激したりする治療を行う侵襲性の低い超音波治療装置が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1に記載された超音波治療装置は、複数のリンクが関節により連結されて形成されたロボットアームと、該ロボットアームの先端に支持された超音波ヘッド装置を有し、該超音波ヘッド装置は、超音波を患部に照射する照射面を有する照射部と、照射面と患者との間において、超音波を伝達するための媒介液で満たされた水袋を有する。また、水袋への媒介液の供給と排出を行う制御部をさらに備えている。
【0003】
特許文献1に記載された超音波治療装置の照射部から照射される超音波は、照射面から一定の位置に焦点が形成される。治療時には、患部の位置に応じてロボットアームを操作し、超音波ヘッド装置を待機位置から適切な位置・姿勢に移動させ、焦点の位置と患部の位置を一致させる。水袋は、患者の体表面に接触し、照射面と患者体表面との間において超音波を患部へと伝達させるため、水袋の内部には超音波を伝達する媒介液が満される。
【0004】
制御部は、患者体表面と照射面との間の距離に応じて水袋への媒介液の供給と排出を行うことにより、水袋内に充填する媒介液の量を調整する。例えば、患部が患者体表面から浅い箇所に位置する場合には、照射面を患者体表面から離す必要があるため、超音波ヘッド装置を患者体表面から離れた位置でロボットアームにより保持して、水袋に充填する媒介液の量を増加させる。
【0005】
また、患部が患者体表面から深い箇所に位置する場合には、照射面を患者体表面に近づける必要があるため、超音波ヘッド装置を患者体表面に近づけた位置でロボットアームにより保持して、水袋に充填する媒介液の量を減少させる。特許文献2に記載された超音波ヘッド装置は、水袋が蛇腹状の伸縮構造を有しており、水袋を上下方向に沿って変形させることで、照射面に対して水袋の底面の位置を調整可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-036709号公報
【文献】特開平1-91845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された超音波治療装置によれば、媒介液の量を増やした場合には、水袋内の水圧が上昇し、水袋が破損する虞がある。また、特許文献1に記載された超音波治療装置によれば、媒介液の量を減らした場合には、水袋がしぼみ、治療時に水袋の表面と患者体表面の間に空気が入って隙間が生じ、超音波が適切に患部に伝達できなくなる虞がある。超音波が適切に患部に伝達できない場合、意図しない箇所が焼灼される虞がある。
【0008】
水袋は患者の体表面に直接当接するため、衛生管理上の観点から治療毎に交換されることが望ましい。超音波ヘッド装置に流通する媒介液は、例えば、脱気水等が用いられている。脱気水は溶存する空気量が増加したり、気泡が混入したりすると超音波の伝達性能が低下して治療精度が低下するため、治療毎に交換されることが望ましい。すなわち、衛生管理及び治療精度の観点から、治療毎に水袋を交換し、交換した水袋内の空気を排出しながら未使用の脱気水を供給し、水袋内を脱気水で満たしてから治療を行う必要がある。
【0009】
特許文献2に記載された超音波ヘッド装置によれば、水袋が蛇腹状の伸縮構造を有するように構成されているため、水袋の交換作業後に水袋内に脱気水を供給する際、蛇腹部分の空気を排出することができず、媒介液に気泡が混入する虞がある。媒介液に気泡が混入した場合、気泡が超音波の伝達を阻害し、超音波が適切に患部に伝達できなくなり、治療効率が低下して治療時間が増大する虞がある。
【0010】
本発明は、治療に用いられる超音波を超音波照射機器から患部に対して適切に伝達するべく、患部の患者体表面からの深度に応じて水袋内に充填する媒介液の水分量及び水圧を適切に保つよう調整可能とし、水袋を容易に交換可能とし、且つ水袋及び媒介液の交換時に媒介液に気泡の混入を防止できる超音波ヘッド装置、超音波治療システム、及び超音波治療システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、任意の姿勢状態で保持可能なロボットアームに支持され、治療対象物の内部に超音波を照射する超音波治療システムに適用される超音波ヘッド装置であって、前記ロボットアームに支持されたベース部と、前記ベース部に設けられ、前記超音波を照射する半球状の照射面を有する照射部と、前記超音波を伝達する媒介液を収容し、前記照射面を覆う水袋と、前記媒介液を前記水袋に流通させる給排水部と、前記ベース部に設けられ、前記照射面の中心軸方向に沿って前記水袋を前記照射面に対して移動自在に支持する移動機構と、を有し、前記移動機構は、前記ベース部側に設けられた第1筒状部と、前記第1筒状部に対して前記中心軸方向に沿って移動自在に設けられた第2筒状部と、前記第2筒状部を前記中心軸方向に沿って移動させる第1駆動部と、を備え、前記第2筒状部は、前記中心軸方向に沿って前記ベース部と異なる側に前記水袋が固定される、超音波ヘッド装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、患部の患者体表面からの深度に応じて水袋内に充填する媒介液の水分量及び水圧を適切に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超音波治療システムの概略的な構成を示す図である。
図2】超音波ヘッド装置の構成を示す斜視図である。
図3】超音波ヘッド装置の構成を示す底面図である。
図4A】移動機構の構成を示す分解斜視図である。
図4B】超音波ヘッド装置の構成を示す断面図である。
図4C】移動機構の動作を示す図である。
図5】第1駆動部の構成を示す斜視図である。
図6】第2駆動部の構成を示す斜視図である。
図7】第3駆動部の構成を示す斜視図である。
図8】第4駆動部の構成を示す斜視図である。
図9】移動機構の動作を示す断面図である。
図10】移動機構の動作を示す断面図である。
図11】超音波治療システムの構成を示すブロック図である。
図12】超音波治療システムの制御方法を示すフローチャートである。
図13】変形例に係る移動機構の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示されるように、超音波治療システムSは、超音波の照射を制御する超音波治療装置1と、超音波治療装置1を制御すると共に使用状態等を管理する制御装置40と、を備えている。超音波治療装置1は、対象物を任意の位置・姿勢で支持可能なロボットアーム2と、ロボットアーム2の先端部に設けられた超音波ヘッド装置10と、超音波ヘッド装置10の先端部に設けられ容積を調整可能に構成された液体貯留部12と、制御装置40からの制御指令に基づき液体貯留部12に媒介液を流通させる流体回路部25が設けられた筐体20と、を備えている。
【0015】
ロボットアーム2は、例えば、垂直多関節ロボットから構成されたものであり、ロボットアーム2は、アーム台座4を介して床面上に設置されている。ロボットアーム2は、超音波ヘッド装置10を任意の位置に移動させると共に、任意の姿勢状態で保持可能に構成されている。ロボットアーム2は、例えば、超音波ヘッド装置10が患者に当接する位置で保持することも、患者から離間した位置で保持することも可能である。また、ロボットアーム2は、例えば、超音波ヘッド装置10の中心軸Lが鉛直方向に延びた姿勢でも、鉛直方向から傾いた姿勢でも超音波ヘッド装置10を保持することも可能である。以下、中心軸Lに沿った方向を適宜「軸方向」等と呼ぶ。
【0016】
超音波ヘッド装置10は、患者Kの患部に超音波を照射し、治療を行う。患部は、例えば、肝臓癌などの癌細胞や、結石などである。超音波に基づく治療対象物は、人間だけでなく動物に適用してもよい。超音波ヘッド装置10は、治療対象物に対して、治療用の超音波である強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:以下、HIFUと呼
ぶ)を照射する機器と、HIFUとは異なる超音波である診断用超音波を照射・受信する機器を備える。
【0017】
図2から図4Cに示されるように、超音波ヘッド装置10は、例えば、本体部11の内側の下端部に治療対象物の患部に超音波を照射する照射部11Aを備えている。照射部11Aは、例えば、治療用のHIFUを発生する第1照射部11Bと、診断用の超音波を発生する診断プローブにより構成された第2照射部11Cとが設けられている。
【0018】
第1照射部11Bは、例えば、焦点Xを生成するようHIFUを照射するHIFUトランスデューサにより構成されている。第1照射部11Bの下面側には、ドーム状に形成された照射面11B1が備えられ、照射面11B1の内面には、圧電素子等からなる複数の超音波振動子(不図示)が整列して配置されている。複数の超音波振動子は、発振される複数の超音波の包絡線が1つ又は複数の焦点Xで集束する様に配置されている。本実施形態では、焦点Xは中心軸Lと直交する平面上に中心軸Lを中心として等間隔の位置に6箇所生成される。ここで、生成される焦点Xは1箇所であっても良い。その場合、焦点Xは中心軸L上に生成される。第1照射部11Bは、例えば、中心軸Lを中心に回転可能に配置されていてもよい。
【0019】
第2照射部11Cは、治療対象物に超音波を走査して断面画像を生成する。第2照射部11Cは、例えば、先端部において診断用超音波を患者Kに照射し、患者Kの患部等の対象物に反射した診断用超音波を受信する。第2照射部11Cは、第1照射部11Bの照射面11B1から下方に突出している。第2照射部11Cは、上下方向に沿った中心軸Lに対して所定角度範囲に向けて診断用超音波を照射し、その反射波を受信する。第2照射部11Cは、中心軸Lに沿って回転可能に設けられている。第2照射部11Cは、中心軸Lに沿った方向に移動自在に設けられている。
【0020】
液体貯留部12は、水袋14を有する。水袋14は、下方に膨出する半球状に形成されている。水袋14の内部空間には、後述のように超音波を伝達する媒介液が充填される。水袋14は、第1照射部11Bの照射面11B1及び照射面11B1から突出した第2照射部11Cを覆っている。照射面11B1及び第2照射部11Cは、水袋14の内部空間に充填された媒介液に浸漬される。水袋14の底部の外側は、診断時及び治療時に患者の体表面と当接する。第2照射部11Cは、媒介液が充填された内部空間において回転自在及び上下方向に沿って移動自在に構成される。第2照射部11Cの先端部は、例えば、診断時において水袋14の底部の内側に当接する。これにより、第2照射部11Cは、水袋14を介して患者Kの体表面に当接し、患者Kの身体の内部を診断する。
【0021】
液体貯留部12は、例えば、中心軸L方向に昇降自在な移動機構13と、水袋14と、移動機構13の下部に設けられた水袋14を取り付ける取付部Tにより構成されている。液体貯留部12は、移動機構13により媒介液を充填する内部空間の容積を調整可能に構成されている。液体貯留部12は、例えば、水袋14と、移動機構13と第1照射部11Bとにより内部空間が形成されている。液体貯留部12の内部空間には、媒介液が充填される。水袋14は、後述の様に移動機構13から着脱して交換可能に構成されている。
【0022】
移動機構13は、例えば、本体部11に固定されたベース部11Kに設けられている。本体部11は、ベース部11Kを介してロボットアーム2に支持されている。移動機構13は、水袋14を中心軸L方向に沿って昇降自在とすることで、内部空間の容積を増減可能に構成されている。移動機構13は、例えば、ベース部11K側に設けられた第1筒状部13Aを備えている。移動機構13は、下側に水袋14を取り付ける取付部Tを有する第2筒状部13Bを備えている。第2筒状部13Bは、中心軸L方向に移動可能に保持されている。移動機構13は、第2筒状部13Bを第1筒状部13Aに対して中心軸L方向に沿って移動させる移動駆動部を備えている。移動駆動部は、後述の第3筒状部13Cと第1駆動部Cとにより構成されている。
【0023】
第1筒状部13Aは、例えば、中心軸Lを中心とする円筒状に形成されている。第1筒状部13Aの外周面13A1には、複数の第1溝部13A2が形成されている。第1溝部13A2は、中心軸L方向に沿った直線状の溝状に形成されている。第1溝部13A2は、例えば、外周面13A1の周方向に沿って3箇所に均等に形成されている。第1溝部13A2は、例えば、第1筒状部13Aの上側の端部から所定の長さの直線状の溝状に形成されている。第1溝部13A2は、外周面13A1側から所定の深さを有する溝状に形成されている。外周面13A1において第1溝部13A2の下端から下方における領域は、後述のシール部材S1が摺動する摺動領域13A3である。第1筒状部13Aは、第2筒状部13Bに挿入され、第1筒状部13Aの外周面A1と後述する第2筒状部13Bの内周面13B2が相対している。
【0024】
第2筒状部13Bは、例えば、中心軸Lを中心とする円筒状に形成されている。第2筒状部13Bは、外周面13B1から内周面13B2に貫通した1つ以上の貫通孔13BHが形成されている。貫通孔13BHは、第1筒状部13Aの第1溝部13A2と対応した位置に設けられ、例えば、中心軸Lを中心に3箇所に均等に形成されている。3個の貫通孔13BHには、係合部材13BPがそれぞれ挿入されている。係合部材13BPは、円柱状のピン部材に形成されている。係合部材13BPは、内周面13B2側から中心軸に向かって径方向に突出するように設けられている。係合部材13BPは、第1筒状部13Aを第2筒状部13Bに挿入した際、第1溝部13A2に係合するように形成されている。係合部材13BPの先端部は、第1溝部13A2に案内され、第1溝部13A2を摺動する。第1筒状部13Aまたは第2筒状部13Bのいずれか一方には、中心軸方向に沿って1つ以上の第1溝部13A2が形成される。第1筒状部13Aまたは第2筒状部13Bのいずれか他方は、径方向に沿って突出し、第1溝部13A2に係合するように形成された1つ以上の係合部材13BPを備えている。係合部材13BPの先端部には、第1溝部13A2に沿って走行するローラ(不図示)が設けられていてもよい。本実施形態では、3個の係合部材13BPにより、係合部が構成される。係合部材13BPが第1溝部13A2に案内されることにより、第2筒状部13Bは、第1筒状部13Aに対して中心軸L方向に沿って移動自在に設けられている。第2筒状部13Bは、例えば、後述の第3筒状部13Cの回転に基づいて軸方向に沿って所定の移動量の範囲において移動する。第3筒状部13Cは、第1駆動部Cにより回転駆動される。
【0025】
第2筒状部13Bの内周面13B2の下部には、シール部材S1が嵌め込まれるシール溝部13BMが形成されている。シール溝部13BMは、例えば、内周面13B2の下方に中心軸Lを中心に周方向に沿って設けられている。シール溝部13BMは、内周面13B2の周方向に沿って延在して設けられている。シール溝部13BMは、第1筒状部13Aの外周面13A1における摺動領域13A3との間の隙間をシールする環状に形成されたシール部材S1が嵌め込まれる。シール溝部13BM、シール部材S1は、軸方向に沿って1つ以上設けられていてもよい。シール溝部13BMとシール部材S1により、シール部が構成される。シール部は、中心軸Lを中心にした周方向に沿って形成され、第2筒状部13Bの内周面13B2と、第1筒状部13Aの外周面13A1における摺動領域13A3との間の隙間をシールし、水密性を確保する。
【0026】
第2筒状部13Bの外周面13B1には、水袋14を着脱自在とする取付部T(図2参照)が設けられる。取付部Tは、例えば、外周面13B1の周方向に沿って均等に設けられた複数のバックル(不図示)と、複数のバックルにより固定される環状部材T1とを備えている。バックルは、例えば、レバー操作に基づいて環状部材T1の着脱を行えるように形成されている。環状部材T1は、例えば、不図示のヒンジ構造を介して第2筒状部13Bに対して開閉自在に設けられている。
【0027】
第2筒状部13Bの下端部の端面13BTは、所定の幅を有する円環状に形成されている。端面13BTには、水袋14の上端に設けられた後述のフランジ部14Cが当接する。環状部材T2をフランジ部14Cにセットし、バックルを操作して取付部Tを閉状態にすると、環状部材T2がフランジ部14Cに係合すると共に、第2筒状部13Bの下端部の端面13BTと協働してフランジ部14Cを挟持する。
【0028】
上記構成により、環状部材T2は、取付部と協働して水袋14を着脱自在とすると共に、第2筒状部13Bの下端部の端面13BTに水袋14のフランジ部14Cを密着させ、第2筒状部13Bと水袋14との間の水密性を確保する。
【0029】
移動駆動部は、第3筒状部13Cと、第3筒状部13Cを回転駆動させる後述の第1駆動部Cを備える。第3筒状部13Cは、中心軸Lを中心として回転自在に保持されており、第3筒状部13Cの一部は、第2筒状部13Bの内周面13B2と第1筒状部13Aの外周面13A1との間の隙間に挿入されている。第3筒状部13Cは、例えば、円環状に形成された円環部材13C1と、円環部材13C1から下方に垂下して形成された筒状部13C2とを備えている。円環部材13C1の上端には、中心軸Lを中心に径方向に突出したフランジ部13CFが延在して形成されている。フランジ部13CFは、第1筒状部13Aの上端に当接する。
【0030】
筒状部13C2は、第2筒状部13Bの内周面13B2と第1筒状部13Aの外周面13A1との間に生じている隙間に挿入される。各筒状部13C2には、中心軸に対する周方向において、中心軸方向に沿って傾斜した第2溝部13CMが貫通して形成されている。第2溝部13CMは、例えば、中心軸Lを中心に所定方向周りの所定のピッチ間隔を有する螺旋軌道の1周囲以下の長さにより形成されている。各第2溝部13CMには、それぞれ、第2筒状部13Bに設けられた係合部材13BP(係合部)が貫通する。第2溝部13CMの上端側は、例えば、第2溝部13CMの始点である。第2溝部13CMの下端側は、例えば、第2溝部13CMの終点である。
【0031】
図4C(B)には、作業者が治療のため、超音波治療システムSを操作する前の超音波ヘッド装置10の初期状態(又は待機状態)が示されている。係合部材13BPは第1溝部13A2、第2溝部13CMの中間付近に位置している。ここで、初期状態から図4C(A)の様に第3筒状部13Cが図の右方向に回転した場合(平面視して反時計回り)、第2溝部13CMの右方向への移動に伴い、第1溝部13A2に倣って係合部材13BPが上昇する。係合部材13BPが上昇するに伴い、第2筒状部13Bも上昇する。この動作により、水袋14が照射面11B1へと近づき、液体貯留部12の内部空間の容積が減少する。ここで、初期状態から図4C(C)の様に第3筒状部13Cが図の左方向に回転した場合(平面視して時計回り)、第2溝部13CMの左方向への移動に伴い、第1溝部13A2に倣って係合部材13BPが下降する。係合部材13BPが下降するに伴い、第2筒状部13Bも下降する。この動作により、水袋14が照射面11B1から離れ、液体貯留部12の内部空間の容積が増加する。
【0032】
上記構成により、第2筒状部13Bは、係合部材13BPが第2溝部13CM及び第1溝部13A2により案内される範囲内において軸方向に沿って任意の移動量にて移動可能である。また、中心軸Lと直交する平面と第2溝部13CMとの傾斜角を緩やかにすることによって、後述の第1駆動部Cが第3筒状部13Cを回転させるために必要な力を小さくすることができる。これにより、第1駆動部Cに使用する駆動源を小さくすることが可能となり、装置構成を小型化することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、初期状態では、係合部材が第2溝部の中間付近に位置するとしたが、例えば、初期状態において、係合部材が第2溝部の始点(上端)又は終点(下端)に位置していてもよい。
【0034】
即ち、第3筒状部13Cは、後述の第1駆動部Cにより第1筒状部13A及び第2筒状部13Bに対して中心軸Lを中心に周方向に沿って回転駆動されることにより、係合部材13BPを第2溝部13CM及び第1溝部13A2に沿って移動させ、回転方向に基づいて第2筒状部を第1筒状部に対して中心軸Lの軸方向に沿って任意の移動量において移動させることができる。
【0035】
水袋14は、例えば、下方に膨出する碗状に形成されている。水袋14は、生体適合性があり、音響インピーダンスが生体に近い材料で形成されている。水袋14は、例えば、シリコンゴム等の可撓性を有する材料により形成されている。水袋14は、治療毎に交換可能に形成されている。水袋14の下面側には、患者Kの身体に接触する接触部14Aが形成されている。接触部14Aは、半球形の盆状に形成されている。接触部14Aの周囲には、下部が接触部に連続し接触部の周囲の上方を囲むように延在して筒状の周壁部14Bが形成されている。周壁部14Bは、例えば、上方に向かうほど径が拡大する円錐台状に形成されている。周壁部14Bは、超音波ヘッド装置10の装着対象部分(不図示)に装着される。周壁部14Bの上端には、装着対象部分に係合するフランジ部14Cが形成されている。フランジ部14Cは、水平方向において外方に突出した円環状に形成されている。
【0036】
周壁部14Bには、流体回路部25により媒介液を水袋に流通させる給排水部14Rが設けられている。給排水部14Rは、流体回路部25から媒介液が流入する流入接続部14RAと、水袋14から媒介液が排出する排出接続部14RBとを備えている。周壁部14Bの第1位置には、流入接続部14RAが設けられている。流入接続部14RAは、流体回路部25の流路と接続される。平面視して周壁部14Bの第1位置と異なる第2位置には、排出接続部14RBが設けられている。第2位置は、例えば、平面視して第1位置に対して接触部14Aの中心から90度の位置である。排出接続部14RBは、流体回路部25の流路と接続される。
【0037】
図5には、超音波ヘッド装置10の本体部11の内部構造が示されている。第3筒状部13Cは、第1駆動部Cにより中心軸Lを中心に回転駆動される。第1駆動部Cは、例えば、駆動源C1となる第1モータと、第1モータにより回転駆動される第1ギヤ(不図示)と、第1ギヤに噛合する第2ギヤC3とにより構成されている。第1モータと第1ギヤとの間には第1モータの回転数を減少させると共に回転出力のトルクを増加させる減速機C5が設けられている。第1モータに十分なトルクがあれば、減速機C5は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0038】
第1モータは、中心軸Lに沿った回転軸(不図示)を有し、回転軸の下方には第1ギヤが設けられている。第1ギヤは、例えば、ピニオンギヤである。第1モータは、第1筒状部13A側を固定するベース部11Kに固定部材C6を介して固定されている。第1モータは、第1ギヤを介して回転動力を第2ギヤC3に伝達する。第2ギヤC3は、例えば、第1筒状部13Aの外径と同径の外径を有する内歯車(ラックギア)に形成されている。第2ギヤC3は、内歯車の一部が中心軸Lを中心とした所定角度範囲に切り出されて形成されている。第2ギヤC3は、上述した係合部材13BPが第2溝部13CMの終端から始端まで相対的に第2溝部13CMに沿って移動可能な所定角度範囲に形成されている。第2ギヤC3は、例えば、ベース部11Kを介して第3筒状部13Cの上端にネジ止めされている。
【0039】
上記構成により、出力部C2となる第1ギヤが第1モータにより回転駆動されると、第2ギヤC3に駆動力が伝達され、第2ギヤC3を介して第3筒状部13Cが中心軸Lを中心に回転駆動される。第1モータにより第3筒状部13Cが回転駆動されることにより、第2筒状部13Bが第1筒状部13Aに対して軸方向に沿って所定の範囲内において任意の移動量を移動する。以上のように、水袋14は下方に膨出する碗状に形成されており、移動機構13は、第1筒状部13Aに対して第2筒状部13B及び第2筒状部13Bの下方に取り付けられた水袋14を移動させるように構成されている。そのため、水袋14が蛇腹状の伸縮構造を有している場合と比較して、水袋14の交換後に液体貯留部12の内部空間に媒介液を充填する際に気泡の混入を防止することができる。
【0040】
図6に示されるように、第2照射部11C(図4B参照)は、中心軸Lを中心に第2駆動部Dにより回転駆動される。第2駆動部Dは、例えば、駆動源となる第2モータD1と、第2モータD1により回転駆動される第1プーリD2と、第1プーリD2の回転動力を伝達する第1ベルトD3と、第1ベルトD3により回転駆動される第2プーリD4とにより構成されている。第2モータD1と第1プーリD2の間には第2モータD1の回転数を減少させると共に回転出力のトルクを増加させる減速機D5が設けられている。第2モータD1のトルクが十分に確保されていれば、減速機D5は必ずしも設けられていなくてもよい。第2モータD1は、中心軸Lに沿った回転軸(不図示)を有し、回転軸の下方には第1プーリD2が設けられている。
【0041】
第1プーリD2には、例えば、第1ベルトD3が掛けられている。第2プーリD4は、第1プーリD2の径に比して大きい径に形成されている。第2プーリD4には、第1ベルトD3が掛けられている。第2プーリD4には、第2照射部11C(図2参照)に連結されたシャフト11Sが同心に接続されている。シャフト11Sは、第2照射部11Cの上方に延在している。シャフト11Sの下端部には、第2照射部11Cが設けられている。シャフト11Sは、ベース部11Kにより中心軸L回りに回転可能に支持されると共に、中心軸L方向に沿って移動可能に支持されている。
【0042】
第2プーリD4は、第1プーリD2の回転出力のトルクを増加してシャフト11Sを介して第2照射部11Cを回転駆動する。第2モータD1は、支持部材D6を介して固定されている。支持部材D6は、中心軸Lを中心とした第2モータD1の周方向の動きを規制する。支持部材D6は、後述のように中心軸L方向に沿って移動する。上記構成により、第2モータD1により第1プーリD2が回転駆動されると、第1ベルトD3を介して第2プーリD4が回転し、シャフト11Sを介して第2照射部11Cが回転駆動される。
【0043】
図7に示されるように、第1照射部11B(図4B参照)は、第3駆動部Eにより、シャフト11Sを介して中心軸L方向に沿って移動可能に構成されている。第3駆動部Eは、例えば、駆動源となる第3モータE1と、第3モータE1を支持する支持部E8と、第3モータE1により回転駆動されるボールネジE2と、ボールネジE2に螺合するスライドナットE3と、スライドナットE3を支持する台座E4と、台座E4と第2モータD1を支持する支持部材D6とを連結する連結部材E5とにより構成されている。
【0044】
第3モータE1は、支持部E8によりベース部11Kに固定されている。支持部E8は、例えば、第3モータE1を固定する固定部材E8Aを備えている。固定部材E8Aは、2本の支柱E8Bにより、ベース部11Kに固定されている。第3モータE1は、中心軸Lに沿った回転軸(不図示)を有し、回転軸の下方にはボールネジE2が連結されている。ボールネジE2には、ネジ溝が形成されている。ボールネジE2の下端側は、ベース部11Kに軸受EBを介して回転可能に支持されている。
【0045】
ボールネジE2には、スライドナットE3が螺合している。スライドナットE3には、ボールネジE2のネジ溝が螺合する雌ネジ(不図示)が形成されている。スライドナットE3は、台座E4により支持されている。台座E4は、連結部材E5を介して支持部材D6に固定されている。台座E4は、支持部材D6及びシャフト11Sを介して位置決めされている。台座E4は、支持部材D6及びシャフト11SによりボールネジE2の回転軸回りの回転が規制される。上記構成により、第3モータE1を駆動すると、ボールネジE2が回転駆動される。
【0046】
ボールネジE2が回転軸周りの所定方向に回転すると、例えば、スライドナットE3が下方に移動する。スライドナットE3が下方に移動すると、台座E4、連結部材E5、支持部材D6を介してシャフト11Sが下方に移動する。これにより、第2照射部11Cが下方に移動する。ボールネジE2が回転軸周りの所定方向と反対方向に回転すると、例えば、スライドナットE3が上方に移動する。スライドナットE3が上方に移動すると、台座E4、連結部材E5、支持部材D6を介してシャフト11Sが上方に移動する。これにより、第2照射部11Cが上方に移動する。
【0047】
図8には、第1照射部11B(図3図4B参照)を中心軸L回りに回転駆動する第4駆動部Fが示されている。第1照射部11Bは、第4駆動部Fにより、中心軸L回りに回転可能に構成されている。第4駆動部Fは、例えば、駆動源となる第4モータF1と、第4モータF1により回転駆動される第3プーリF2と、第3プーリF2との回転動力を伝達する第2ベルトF3と、第2ベルトF3により回転駆動される第4プーリF4とにより構成されている。第4モータF1と第3プーリF2との間には第4モータF1の回転数を減少させると共に回転出力のトルクを増加させる減速機F5が設けられている。第4モータF1のトルクが十分に確保されていれば、減速機F5は必ずしも設けられていなくてもよい。第4モータF1は、中心軸Lに沿った回転軸(不図示)を有し、回転軸の下方には第3プーリF2が設けられている。
【0048】
第3プーリF2には、例えば、第2ベルトF3が掛けられている。第4プーリF4は、第3プーリF2の径に比して大きい径に形成されている。第4プーリF4には、第2ベルトF3が掛けられている。第4プーリF4の中心には、貫通孔F4Hが設けられ、貫通孔F4Hにはシャフト11Sが貫通している。第4プーリF4の下面側には第1照射部11Bが中心軸L方向を中心に回転可能に設けられている。第4モータF1は、減速機F5に固定されている。減速機F5は、支持部F8によりベース部11K側に固定されている。第4プーリF4は、第3プーリF2の回転出力のトルクを増加して第1照射部11Bを回転駆動する。上記構成により、第4モータF1により第3プーリF2が回転駆動されると、第2ベルトF3を介して第4プーリF4が回転し、第1照射部11Bが回転駆動される。第1照射部11Bは、n個の焦点Xを有する場合(図3参照)、回転可能範囲は、少なくとも360°/n(一方向に360°/n、又は双方向に180°/n)あれば良い。第1照射部11Bの焦点Xが1つの場合、第1照射部11Bは、回転駆動されなくてもよい。第1照射部11Bが中心軸Lと直交する平面上に焦点Xを複数生成する場合、第2照射部11Cは位置・姿勢を決める際に回転する為、第1照射部11Bの焦点Xと第2照射部11Cの撮像面とが一致しない場合がある。超音波による治療は局所的な為、焦点Xが撮像面と一致していない場合、治療状況を正確に撮像することができず、治療精度が低下する恐れがある。その為、複数の焦点Xの何れかと撮像面を一致させる必要がある。一致する焦点はどの焦点でも問題ないため、第1照射部11Bの回転可能範囲は上記の様な範囲で良い。
【0049】
図9に示されるように、患者Kの身体の内部に患部KDが存在している。第2照射部11Cは、水袋14の内壁に当接し、水袋14を介して患者Kの体表面に当接している。第1照射部11Bの照射面11B1により生成される超音波の焦点Xが患部KDに比して上方に位置する場合(図9(A)参照)、第2照射部11Cを上昇させ、作業者がロボットアーム2を操作して超音波ヘッド装置10を下方へと移動させる。これにより、焦点Xの位置を患部KDの位置に一致させることができる(図9(B)参照)。このとき、液体貯留部12に充填された媒介液の水圧が規定の値よりも高くなる虞がある。そこで、流体回路部25が水袋14内の媒介液を排出し、移動機構13において第3筒状部13Cを回転させ、第2筒状部13Bを第1筒状部13Aに対して上昇させる。これにより、液体貯留部12内の媒介液の水量及び水圧を適切に保った状態で水袋14を患者Kの体表面に当接させることが可能となる。その結果、治療に用いられる超音波を超音波ヘッド装置10から媒介液を介して患部に対して適切に伝達することができる。
【0050】
図10に示されるように、患者Kの身体の内部に患部KDが存在している。第2照射部11Cは、水袋14の内壁に当接し、水袋14を介して患者Kの体表面に当接している。第1照射部11Bにより生成される超音波の焦点Xが患部KDに比して下方に位置する場合(図10(A)参照)、作業者がロボットアーム2を操作して超音波ヘッド装置10を上方へ移動させる。その後、第2照射部11Cを下降させ、水袋14を介して患者Kの体表面に当接させる。これにより、焦点Xの位置を患部KDの位置に一致させることができる(図10(B)参照)。このとき、液体貯留部12に充填された媒介液の量が十分でない場合、水袋14が適切な水圧を保つことができず、水袋14と患者Kの体表面間に空気が入って隙間ができる虞がある。また、水袋14と患者Kの接触面積が十分に確保できず、超音波が適切に伝達しない虞がある。そこで、流体回路部25が水袋14内に媒介液を供給し、移動機構13において第3筒状部13Cを回転させ、第2筒状部13Bを第1筒状部13Aに対して下降させる。これにより、液体貯留部12内の媒介液の水量及び水圧を適切に保った状態で水袋14を患者Kの体表面に当接させることが可能となり、患部KDに適切に超音波を伝達させることが可能となる。これにより、超音波が適切に伝達されないことによる意図しない箇所への焼灼を防止する。
【0051】
上述のように、患部KDの患者体表面からの位置に応じて、超音波ヘッド装置10は、照射面11B1からの水袋14の距離と、水袋14内に充填する媒介液の水量を調節することができる。これにより、水袋14内の水圧と、水袋14と患者体表面との接触面を適切な状態に保つことが可能となる。その結果、治療に用いられる超音波を超音波ヘッド装置10から媒介液を介して患部に対して適切に伝達することができる。ここで、流体回路部25による媒介液の供給・排出は移動機構13の移動動作の前または後に行ってもよいし、移動動作と同時に行ってもよい。
【0052】
図11には、超音波治療システムSの構成がブロック図により示されている。制御装置40は、ロボットアーム2、超音波ヘッド装置10、及び流体回路部25を含む超音波治療装置1を制御する。制御装置40は、例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末装置により構成されている。制御装置40は、超音波治療装置1と通信可能に接続されている。制御装置40は、直接的に超音波治療装置1と接続されているものの他、ネットワークに接続され、超音波治療装置1と通信可能に接続されたサーバーであってもよい。
【0053】
制御装置40は、超音波治療装置1を制御する制御部42を備えている。制御装置40は、制御に必要なデータが記憶された記憶部46と、超音波治療装置1と通信する通信部47と、制御に必要な情報を表示する表示部48と、制御に必要な操作を受け付ける入力部49とを備えている。
【0054】
記憶部46は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶媒体により構成されるデータのストレージ装置である。記憶部46は、制御装置40に内蔵されていてもよいし、外部記憶装置として外部に接続されていてもよい。通信部47は、超音波治療装置1と制御信号の送受信を行う通信インターフェースである。通信部47は、制御を要求する指令信号や超音波治療装置1から検出された検出信号等を受信すると共に、超音波治療装置1を制御するための制御信号を送信する。
【0055】
表示部48は、液晶ディスプレイや有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置により構成されている。入力部49は、キーボード等のタッチパッド等の情報入力装置である。入力部49は、表示部48がタッチ操作可能に構成されている場合、表示部48と一体に構成されていてもよい。表示部48は、超音波治療装置1の制御に関する情報を含む表示画像を表示する。表示部48は、第2照射部11Cにより検出された検出値に基づいて生成された患者Kの身体の診断画像を表示する。
【0056】
制御部42は、超音波治療装置1を個別に制御するために以下の複数の制御部を備えている。制御部42は、例えば、入力部49から入力された情報に基づいて超音波治療装置1の制御を統合的に制御する主制御部42Aを備えている。制御部42は、例えば、入力部49から入力された指令に基づいてロボットアーム2を制御するロボットアーム制御部42Bを備えている。制御部42は、例えば、入力部49から入力された指令に基づいて超音波ヘッド装置10を制御する超音波ヘッド制御部42Cを備えている。制御部42は、例えば、入力部49から入力された指令に基づいて流体回路部25を制御する送液制御部42Dを備えている。
【0057】
主制御部42Aは、例えば、入力部49から入力された情報に基づいて超音波治療装置1を制御するための指令信号を生成する。主制御部42Aは、超音波治療装置1が協働して動作するように下記の各制御部と協働して統合的な制御を行う。主制御部42Aは、例えば、制御装置40に設けられている中央演算装置により構成されている。
【0058】
ロボットアーム制御部42Bは、ロボットアーム2に設けられた駆動部3Aを制御する。ロボットアーム制御部42Bは、例えば、ロボットアーム2側に設けられていてもよいし、制御装置40の制御部42に統合されていてもよい。ロボットアーム制御部42Bは、例えば、ロボットアーム2が有する複数の関節に設けられた複数の駆動モータを個別に制御する。ロボットアーム制御部42Bは、ロボットアーム2に所定の動作を要求する指令信号を取得し、指令信号の内容に基づいて複数の駆動モータの個別の制御量を演算し、制御信号を生成する。ロボットアーム制御部42Bは、駆動部3Aに設けられ、各駆動モータの回転角、トルク等を検出する検出部3Bから検出データを取得する。ロボットアーム制御部42Bは、検出部3Bから取得したデータに基づいて複数のアーム部材3-nの姿勢及び加える作用力の大きさと方向とに応じた制御信号を生成し、ロボットアーム2を制御する。また、ロボットアーム2は協働ロボットであってもよい。その場合、作業者がロボットアーム2の姿勢を変更する様に力を加えた際、ロボットアーム制御部42Bは、作業者の操作にならって超音波ヘッド装置10の位置・姿勢を変更する様に複数の駆動モータを個別に制御する。
【0059】
ロボットアーム制御部42Bは、通信部47を介して制御信号をロボットアーム2に送信し、ロボットアーム2に所定の動作を行うように制御する。ロボットアーム制御部42Bは、通信部47を介してロボットアーム2の各関節の駆動量のデータを取得し、ロボットアーム2の動作を調整する。
【0060】
ロボットアーム制御部42Bは、例えば、治療時においてロボットアーム2を制御して、ロボットアーム2に設けられた超音波ヘッド装置10の第1照射部11Bの焦点Xが患者Kの患部KDの位置に配置されるように位置決めし、所定の姿勢に保持する。ロボットアーム制御部42Bは、例えば、治療が終了した後の治療準備時において後述の様にロボットアーム2を制御して、超音波ヘッド装置10の液体貯留部12から媒介液を排出し易いように超音波ヘッド装置10を所定の第1姿勢に保持する。ロボットアーム制御部42Bは、例えば、治療開始前の治療準備時において、後述の様にロボットアーム2を制御して、超音波ヘッド装置10の液体貯留部12に媒介液を供給し易いように超音波ヘッド装置10を所定の第2姿勢に保持する。
【0061】
超音波ヘッド制御部42Cは、治療時において超音波ヘッド装置10が所定位置に位置決めされた後、取得した指令信号に基づいて超音波ヘッド装置10を制御して必要な動作をさせる。超音波ヘッド制御部42Cは、例えば、超音波ヘッド装置10側に設けられていてもよいし、制御装置40の制御部42に統合されていてもよい。超音波ヘッド制御部42Cは、超音波ヘッド装置10に所定の動作を要求する指令信号を取得し、指令信号の内容に基づいて複数の照射部の個別の制御量を演算し、制御信号を生成する。超音波ヘッド制御部42Cは、通信部47を介して制御信号を超音波ヘッド装置10に送信し、超音波ヘッド装置10に必要な動作を行うように制御する。超音波ヘッド制御部42Cは、例えば、第1駆動部Cを制御して、第3筒状部13Cを回転させ、第2筒状部13Bの軸方向に沿った移動量を調整し、照射面11B1からの水袋14の位置を制御する。
【0062】
また、超音波ヘッド制御部42Cは、第4駆動部Fを制御して第1照射部11Bを中心軸L周りに回転させ、治療用の超音波の複数の焦点Xの何れかと第2照射部11Cの走査面を一致させる。超音波ヘッド制御部42Cは、第3駆動部Eを制御して、シャフト11Sの移動量を調整し、第2照射部11Cを水袋14の内壁に当接させる。超音波ヘッド制御部42Cは、第2駆動部Dを制御して、第2照射部11Cを中心軸L周りに回転させ、患部KDに対する診断用超音波の走査方向を調整する。
【0063】
送液制御部42Dは、流体回路部25に設けられるポンプ部26及びバルブ部27により構成された複数の回路制御機器を制御して流体回路部25に媒介液を流通させる。流体回路部25は、水袋14に媒介液を供給すると共に、水袋14から媒介液を排出させる給排水機構に構成されている。送液制御部42Dは、水袋14内に媒介液を供給する場合、ポンプ部26及びバルブ部27を制御して流体回路部25から水袋14に流入接続部14RAを介して媒介液を流入させる。送液制御部42Dは、水袋14内から媒介液を排出させる場合、ポンプ部26及びバルブ部27を制御して排出接続部14RBを介して水袋14から流体回路部25に媒介液を排出させる。
【0064】
送液制御部42Dは、超音波ヘッド制御部42Cと連動して流体回路部25を制御する。送液制御部42Dは、超音波ヘッド制御部42Cが移動機構を制御して水袋を移動させる際に、給排水機構を制御して移動に応じて変化する水袋14の内部空間に媒介液を充填させる。送液制御部42Dは、筐体20側に設けられていてもよいし、制御装置40の制御部42に統合されていてもよい。送液制御部42Dは、複数の回路制御機器に所定の動作を要求する指令信号を取得し、指令信号の内容に基づいて複数の回路制御機器の個別の制御量を演算し、制御信号を生成する。送液制御部42Dは、通信部47を介して制御信号を複数の回路制御機器に送信し、複数の回路制御機器に必要な動作を行うように制御する。
【0065】
送液制御部42Dは、治療時において、流体回路部25を制御して、液体貯留部12に貯留される媒介液の貯留量を調整する。送液制御部42Dは、治療が終了した後の治療準備時において超音波ヘッド装置10が所定の第1姿勢に保持された場合、流体回路部25を制御して液体貯留部12から媒介液を排出させる共に、流体回路部25から媒介液を排出する。送液制御部42Dは、治療開始前の治療準備時において、超音波ヘッド装置10が所定の第2姿勢に保持された場合、流体回路部25を制御して流体回路部25へ新たな媒介液を供給すると共に、液体貯留部12に媒介液を供給させる。上記構成により、制御装置40は、入力された操作内容に基づいて超音波治療装置1を統合的に動作させることができる。
【0066】
上述した制御部42を構成する、主制御部42A、ロボットアーム制御部42B、超音波ヘッド制御部42C、送液制御部42Dを含むこれらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア
)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-ProgrammableGate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウ
ェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard
Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装
置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。上記制御部42において実行される処理は、クラウドコンピューティングによりサーバー上のコンピュータで処理が行われてもよい。上記制御部42において実行される処理は、分散型の複数のコンピュータにおいて分散して機能が実行されてもよい。
【0067】
図12には、超音波治療システムSにおいて実行される制御方法の処理の流れが示されている。制御装置40においてロボットアーム制御部42Bは、ロボットアーム2を制御してロボットアーム2に支持された超音波ヘッド装置10を待機位置から移動し(移動工程)、第1照射部11Bの照射面11B1の焦点Xの位置と治療対象物の患部の位置とを一致させる(位置合わせ工程)(ステップS100)。超音波ヘッド制御部42Cは、第1照射部11Bの照射面11B1と治療対象物の体表面との距離に応じて、超音波ヘッド装置10に設けられた移動機構13を制御して照射面11B1の中心軸方向に沿って媒介液を収容する水袋14を照射面11B1に対して移動させる(第一の移動工程)(ステップS102)。
【0068】
送液制御部42Dは、給排水機構を制御して、媒介液を水袋に流通させて水袋内に媒介液を供給する(供給工程)(ステップS104)。超音波ヘッド制御部42Cは、超音波ヘッド装置を制御して第1照射部11Bの照射面11B1から超音波を患部の位置に照射する(照射工程)(ステップS106)。制御部42は、給排水機構を制御して水袋14の内部空間から媒介液を排出し(排出工程)、第1駆動部を制御して水袋14を移動させて初期状態へと戻し(第二の移動工程)、ロボットアーム2を制御して超音波ヘッド装置10を待機位置へと移動させる(ステップS108)。また、制御部42は、ロボットアーム2を制御して超音波ヘッド装置10を待機位置へと移動させた後、給排水機構を制御して水袋14の内部空間から媒介液を排出し、第1駆動部を制御して水袋14を移動させて初期状態へと戻してもよい。上記各ステップは、適宜入れ替えられてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0069】
上述したように超音波治療装置1によれば、ロボットアーム2を操作し超音波ヘッド装置10の位置・姿勢を操作することにより、第1照射部11Bが照射するHIFUの焦点Xの位置を患部KDの位置に調整することができる。超音波ヘッド装置10によれば、移動機構13によって水袋14を軸方向に移動可能にすることにより、第1照射部11Bの照射面11B1と患者Kの体表面との距離に応じて、液体貯留部12の容積・水圧を適切な値に設定することができる。その結果、治療に用いられる超音波を超音波ヘッド装置10から媒介液を介して患部に対して適切に伝達することができる。
【0070】
移動機構13は、第1筒状部13Aに対して第2筒状部13Bが移動するように構成され、水袋14が下方に膨出する碗状に形成されることにより、水袋14の内部に媒介液を充填する際に媒介液に気泡が混入することを防止することができる。超音波ヘッド装置10によれば、第3筒状部13Cに形成された第2溝部13CMと中心軸Lと直交する平面との角度を緩やかにすることにより、第2筒状部13Bを回転駆動させるために必要な力を小さくすることができ、ひいては、第1駆動部Cの小型化及び装置構成を小型化することができる。
【0071】
[変形例]
以下、移動機構13の変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明は適宜省略する。
【0072】
図13に示されるように、移動機構13は、超音波ヘッド装置10の外周方向に張り出す様に形成されたベース部11Kに設けられた第1駆動部Cにより駆動されてもよい。第1駆動部Cは、例えば、電動シリンダ、エアシリンダ等の直動駆動装置により構成されている。第1駆動部Cは、駆動源C1となるシリンダ本体と出力部C2となるロッドを有する。第1駆動部Cは、シリンダ本体がベース部11Kに固定されて設けられており、平面視において第2筒状部13Bの外周面13B1よりも外側に、後述するロッドと第2筒状部フランジ13BFの固定部が位置する。ロッドは軸方向に延設されており、その下端部は、第2筒状部13Bに設けられた第2筒状部フランジ13BFに固定されている。ロッドを軸方向に伸縮させることで第1筒状部13Aに対して第2筒状部13Bを移動させることができる。この時、第2筒状部13Bは、第1筒状部13Aに対して軸方向に沿って所定の移動量の範囲において移動するように構成されている。また、変形例においても、上記実施形態と同様に、第1筒状部13Aの中心軸方向に沿って第1溝部13A2を第1筒状部13Aの外周面13A1上に1つ以上形成し、第2筒状部13Bには、径方向内側に沿って突出し、第1溝部13A2と係合するように形成された1つ以上の係合部材13BPを設けてよく、第2筒状部13Bの中心軸方向に沿って第1溝部(図示なし)を第2筒状部13Bの内周面13B2上に1つ以上形成し、第1筒状部13Aには、径方向外側に沿って突出し、第1溝部(図示なし)と係合するように形成された1つ以上の係合部材(図示なし)を設けてもよい。この場合の変形例に係る移動機構13においては、第3筒状部13Cは無くてもよい。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
2 ロボットアーム
3A 駆動部
10 超音波ヘッド装置
11A 照射部
11B 第1照射部
11B1 照射面
11C 第2照射部
11K ベース部
13 移動機構
13A 第1筒状部
13A1 外周面
13A2 第1溝部
13A3 摺動領域
13B 第2筒状部
13B1 外周面
13BP 係合部材
13C 第3筒状部
13C2 筒状部
13CF フランジ部
13CM 第2溝部
14 水袋
14C フランジ部
14R 給排水部
40 制御装置
C 第1駆動部
C1 駆動源
C2 出力部
D 第2駆動部
E 第3駆動部
F 第4駆動部
KD 患部
L 中心軸
S 超音波治療システム
T 取付部
X 焦点
【要約】
ロボットアーム(2)に支持されたベース部(11K)と、ベース部(11K)に設けられ、超音波を照射する半球状の照射面(11B1)を有する照射部(11A)と、超音波を伝達する媒介液を収容し、照射面(11B1)を覆う水袋(14)と、媒介液を水袋(14)に流通させる給排水部(14R)と、ベース部(11K)に設けられ、照射面(11B1)の中心軸(L)方向に沿って水袋(14)を照射面(11B1)に対して移動自在に支持する移動機構と、を有し、移動機構は、ベース部(11K)側に設けられた第1筒状部(13A)と、第1筒状部(13A)に対して中心軸(L)方向に沿って移動自在に設けられた第2筒状部(13B)と、第2筒状部(13B)を中心軸(L)方向に沿って移動させる第1駆動部(C)と、を備え、第2筒状部(13B)は、中心軸(L)方向に沿ってベース部(11K)と異なる側に水袋(14)が固定される、超音波ヘッド装置(10)である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13