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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】輻射光検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240313BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20240313BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20240313BHJP
   G01J 5/48 20220101ALN20240313BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
G01J1/04 D
G01J3/45
G01J5/48 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019210564
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081362
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 伊知郎
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-325755(JP,A)
【文献】特開平03-028728(JP,A)
【文献】特開2015-172537(JP,A)
【文献】特開平02-035322(JP,A)
【文献】特開2015-014581(JP,A)
【文献】特開2017-020792(JP,A)
【文献】特開昭64-010130(JP,A)
【文献】特開平03-087619(JP,A)
【文献】特開2001-023890(JP,A)
【文献】特開2003-344162(JP,A)
【文献】特開2016-142522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部を有する筐体と、
前記筐体内に配置された、前記窓部から入射する測定対象物からの輻射光を検出する輻射光検出器と、
前記窓部から前記輻射光検出器に至る輻射光の光路及び前記輻射光検出器を、前記測定対象物の温度よりも低い所定の温度に冷却する冷却手段と
を備え、
前記輻射光の光路及び前記輻射光検出器の温度が、前記測定対象物の温度よりも低くなった状態で、該測定対象物からの輻射光を検出する、輻射光検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輻射光検出装置において、
前記冷却手段が、前記光路を取り囲むように前記筐体内に設けられた熱伝導性シートを有する、輻射光検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の輻射光検出装置において、
前記熱伝導性シートが、前記輻射光検出器又は測定対象物に接触される接触部を有している、輻射光検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の輻射光検出装置において、
前記冷却手段が、前記筐体を冷却する、輻射光検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の輻射光検出装置において、
前記冷却手段が、さらに、
前記光路内の温度を検出する光路内温度検出器と、
前記光路内の温度を設定するための光路内温度設定部と、
前記光路内温度設定部により設定された温度になるように前記冷却手段を制御する制御部と
を有する、輻射光検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の輻射光検出装置において、さらに、
測定対象物を加熱するための加熱手段を備える、輻射光検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の輻射光検出装置において、
前記加熱手段が、前記窓部を取り囲むように前記筐体内に設けられた超音波振動子を有する、輻射光検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の輻射光検出装置において、
前記加熱手段が、さらに、前記超音波振動子が発する超音波振動の周波数及び/又は振幅を設定する超音波振動設定部を有する、輻射光検出装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の輻射光検出装置において、さらに、
前記測定対象物の温度を検出する対象物温度検出器と、
前記測定対象物の温度を設定するための対象物温度設定部と、
前記対象物温度設定部により設定された温度になるように前記加熱手段を制御する制御部と
を備える、輻射光検出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の輻射光検出装置において、
前記輻射光検出器が、受光面を有し、該受光面上の光の強度分布を検出するように構成され、
前記窓部と前記輻射光検出器との間の光路上に配置された、測定対象物に設けられた測定点からの輻射光を平行光束にする平行光束化部、前記平行光束を第1光束と第2光束に分割し該第1光束と該第2光束の間に光路長差を付与しつつ出射する位相シフタ、前記第1光束と前記第2光束が少なくとも一部において互いに重なるように前記輻射光検出器の受光面に入射させる干渉光学系と、
前記第1光束と前記第2光束が重なった部分の前記受光面の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を有する、輻射光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての物体は熱輻射により光(電磁波)を放射しており、プランクの法則より知られているように、放射する光の波長成分(スペクトル)は物体の温度によって決まる。例えば室温程度の物体からはピーク波長が10μm近傍の中赤外光が放射されている。このように熱輻射により物体から放射される光(輻射光ともいう)をマイクロボロメータにより検出し、熱分布画像として表示する装置が赤外線サーモグラフィである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-94537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロボロメータには物体からの輻射光と、該マイクロボロメータが収容されている筐体や該筐体内の種々の部品(以下「筐体等」という)からの輻射光が入射する。そこで、一般的な赤外線サーモグラフィでは、筐体内のマイクロボロメータの前段にシャッターを設け、シャッターを閉じた状態でマイクロボロメータが受光した光量を測定しこれを筐体等からの輻射光量として記憶するようにしている。そして、シャッターを開けた状態で測定した光量から筐体等の輻射光量を減算することにより、物体からの輻射光量を求めている(特許文献1)。ところが、筐体内にシャッターを設けたり、筐体内又は筐体外にシャッターの開閉機構を設置したりすると、その分装置が大形化してしまう。
【0005】
また、マイクロボロメータが受光する物体からの輻射光量は、物体の温度の4乗とマイクロボロメータの温度の4乗によって決定される。つまり、物体から放射される輻射光は、該物体の温度の4乗とマイクロボロメータの温度の4乗の差(勾配)に応じて物体からマイクロボロメータに伝搬してくる。
【0006】
従って、同じ物体からの輻射光量を測定する場合であっても、外気温が変動することによってサーモグラフィの筐体やマイクロボロメータの温度が変動すると、マイクロボロメータが受光する輻射光量が変動する。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、装置を大形化することなく、外気温の影響を小さく抑えた輻射光検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る輻射光検出装置は、
窓部を有する筐体と、
前記筐体内に配置された、前記窓部から入射する測定対象物からの輻射光を検出する輻射光検出器と、
前記窓部から前記輻射光検出器に至る輻射光の光路を所定の温度に調整するための温調部材と
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成の輻射光検出装置では、窓部から入射した測定対象物からの輻射光は、輻射光検出器によって検出される。このとき、外気温の変動に関係なく、窓部から輻射光検出器に至る輻射光の光路が温調手段によって所定の温度に調整されているため、測定対象物からの輻射光の測定結果に及ぼす外気温の影響を小さく抑えることができる。
【0010】
上記構成の輻射光検出装置において、好ましくは、前記温調手段が、前記光路を取り囲むように前記筐体内に設けられた熱伝導性シートを有する。
上記構成によれば、光路内で発生した熱が熱伝導性シートを通して放散されるため、光路内を低い温度に調整することができる。また、熱伝導性シートが光路を取り囲むように設けられているため、光路内全体の温度をほぼ一定に保持することができる。前記熱伝導性シートとしては、グラファイトシートが挙げられる。
【0011】
上記構成においては、前記熱伝導性シートが、前記輻射光検出器又は測定対象物に接触される接触部を有することが好ましい。
【0012】
上記の輻射光検出装置では、接触部を通して輻射光検出器の熱又は測定対象物の熱が熱伝導性シートに伝導する。したがって、光路内の温度を輻射光検出器又は測定対象物の温度とほぼ同じ温度に調整することができる。特に、熱伝導性シートが、測定対象物に接触される接触部を備える構成は、輻射光検出装置の温度が測定対象物の温度よりも高い場合に有用である。このような場合は、まずは接触部を該測定対象物に接触させて光路内の温度を測定対象物の温度に近付ける。このように、光路内の温度を測定対象物の温度に近付けることで、比較的短時間で測定対象物よりも光路内の温度を低くして輻射熱の測定を開始するまでの時間を短くすることができる。測定対象物よりも光路内の温度を低くする方法としては、例えば熱伝導性シートの接触部を測定対象物よりも温度の低い物体に接触させたり、冷却装置を使って筐体や輻射光検出器を冷却したりする方法が挙げられる。
【0013】
そこで、上記の輻射光検出装置においては、
前記温調手段が、前記筐体及び前記輻射光検出器の少なくとも一方を冷却するための冷却手段を有することが好ましい。
【0014】
上記構成においては、好ましくは前記温調手段が、前記光路内の温度を検出する光路内温度検出器と、前記光路内の温度を設定するための光路内温度設定部と、前記光路内温度設定部により設定された温度になるように前記冷却手段を制御する制御部とを有する。
【0015】
上記構成によれば、光路内の温度を光路内温度設定部によって設定された任意の温度に調整することができる。
【0016】
また、上記の輻射光検出装置は、さらに測定対象物を加熱するための加熱手段を備えると良い。
【0017】
上記構成においては、測定対象物を加熱することによって光路内の温度が相対的に低くなり、測定対象物から光路内に伝搬する輻射光量を増加させることができる。
【0018】
上記構成において、前記加熱手段は、前記窓部を取り囲むように前記筐体内に設けられた超音波振動子を有する構成とすることができる。この場合、前記加熱手段は、さらに、前記超音波振動子が発する超音波振動の周波数及び/又は振幅を設定する超音波振動設定部を有するようにしても良い。
【0019】
上記構成によれば、超音波振動子の発する超音波振動が測定対象物に付与されることで該測定対象物を超音波加熱することができる。この場合、測定対象物に付与される超音波振動の周波数及び/又は振幅の値によって、測定対象物内に定在波が形成されることがある。定在波では節にエネルギーが集中するため、節の部分はその他の部分よりも強く加熱される。したがって、測定点付近に節が位置するような超音波振動の定在波が形成されると、測定点から発せられる光(輻射光(赤外線))はその他の箇所から発せられる光よりも強くなる。測定点付近に節が位置するような超音波振動の定在波を形成するためには、測定対象物の大きさや形状等に応じて、超音波振動子の発する超音波振動の周波数及び/又は振幅を調節する必要がある。加熱手段が超音波振動設定部を備える構成では、超音波振動子の発する超音波振動の周波数及び/又は振幅を適宜の値に設定することができる。
【0020】
前記加熱手段を備える構成においては、さらに、
前記測定対象物の温度を検出する対象物温度検出器と、
前記測定対象物の温度を設定するための対象物温度設定部と、
前記対象物温度設定部により設定された温度になるように前記加熱手段を制御する制御部と
を備えることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、測定対象物を対象物温度設定部によって設定された任意幅温度に調整することができる。
【0022】
さらに、上記の輻射光検出装置においては、
前記輻射光検出器が、受光面を有し、該受光面上の光の強度分布を検出するように構成され、
前記窓部と前記輻射光検出器との間の光路上に配置された、測定対象物からの輻射光を平行光束にする平行光束化部、前記平行光束を第1光束と第2光束に分割し該第1光束と該第2光束の間に光路長差を付与しつつ出射する位相シフタ、前記第1光束と前記第2光束が少なくとも一部において互いに重なるように前記輻射光検出器の受光面に入射させる干渉光学系と、
前記第1光束と前記第2光束が重なった部分の前記受光面の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えると良い。
【0023】
上記構成によれば、測定対象物から放射される輻射光の分光特性を測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、輻射光検出装置を大形化することなく、外気温の影響を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態である分光測定装置の第1実施例を示す上面図(a)、側面図(b)。
図2】分光測定装置の一部を省略して示す斜視図。
図3】位相シフタの上面図(a)、側面図(b)、反射面側から見た図(c)。
図4】分光測定装置の動作説明図。
図5】変形例の分光測定装置の側面図。
図6】本発明の実施形態である分光測定装置の第2実施例を示す概略構成図。
図7】透過型光学素子の構成を示す図(a)~(d)、透過型光学素子を通過した光が検出器の受光面に入射する様子を示す図(e)。
図8】本発明の実施形態である分光測定装置の第3実施例を示す概略構成図。
図9】本発明の実施形態である分光測定装置の第4実施例を示す概略構成図。
図10】本発明の実施形態である分光測定ユニットの第5実施例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る輻射光検出装置について具体的な実施例を挙げて説明する。
【0027】
[実施例1]
本発明に係る輻射光検出装置の実施形態である分光測定装置の第1実施例について図面を参照して説明する。
図1および図2は本実施例の分光測定装置1の全体構成を示している。なお、図1(a)および図2では、分光測定装置の内部構造が見えるように、筐体の一部を省略している。
【0028】
[分光測定装置の構成]
分光測定装置100は、筐体10と、その内部に収容された位相シフタ20、対物レンズ31、結像レンズ32、及び輻射光検出器としての検出器40を備えている。筐体10は、大小2個の矩形箱状の筐体101及び筐体102から構成されている。以下、大きい方を第1筐体101、小さい方を第2筐体102と呼ぶ。位相シフタ20、対物レンズ31及び結像レンズ32は第1筐体101に、検出器40は第2筐体102にそれぞれ収容されている。
【0029】
第1筐体101は、矩形板状のベースプレート11と4個の側壁部12~15と蓋16とから構成されている。側壁部12~15同士、側壁部12~15とベースプレート11、側壁部12~15と蓋16はそれぞれねじ(図示せず)により取り外し可能に連結されている。
【0030】
対物レンズ31は、そのレンズ面が側壁部12と平行になるように、ベースプレート11上に配置されている。また、結像レンズ32は、そのレンズ面が側壁部13と平行になるようにベースプレート11上に配置されている。対物レンズ31と結像レンズ32は、ベースプレート11の上面に立設されたレンズホルダー33とベースプレート11との間に保持されている。レンズホルダー33は上面視L字状の部材と、一対の脚部とからなり、一対の脚部の下端部がベースプレート11の上面に固定されている。ベースプレート11の上面のうち位相シフタ20、対物レンズ31、結像レンズ32、及びレンズホルダー33の配置に対応する適宜の箇所には、それぞれ凹部が形成されている。脚部の下端部が挿入される凹部が形成されている。これら凹部に対物レンズ31の下端部、結像レンズ32の下端部、及びレンズホルダー33の脚部の下端部を挿入することで、対物レンズ31及び結像レンズ32が位置決めされる。1個のレンズホルダー33で対物レンズ31および結像レンズ32の両方を保持する構成により、対物レンズ31と結像レンズ32を近接させることができる。
【0031】
側壁部12のうち対物レンズ31と対向する箇所には測定対象物からの輻射光を筐体10内に導入するための導入口70(本発明の窓部に相当)が設けられている。導入口70は、側壁部12の外方に突出する円筒状部71と、円筒状部71の内部に嵌め込まれた集光レンズ72と、集光レンズ72と対物レンズ31の間であって該対物レンズ31の共役面に配置された共役面格子73とを有している。共役面格子73は、ベースプレート11の上面に立設された格子ホルダー74に保持されている。
【0032】
側壁部13のうち結像レンズ32と対向する箇所には、結像レンズ32を通過した輻射光(反射光)の導出口80が設けられており、該導出口80が形成された部分の側壁部13の外面に第2筐体102が取り付けられている。第2筐体102内には、検出器40が、その受光面が導出口80と対向し、且つ結像レンズ32の結像面上に受光面が位置するように配置されている。検出器40は、受光面上に2次元配置された複数の受光素子を有する2次元アレイセンサから構成されている。
【0033】
位相シフタ20は、固定反射部材21と、可動反射部材22と、該可動反射部材22を駆動する駆動機構23とを備えている。固定反射部材21は立方体状の金属ブロックから成り、その一面を鏡面加工することにより反射面21a(以下、固定反射面21aともいう)が形成されている。固定反射部材21は、その反射面21aが対物レンズ31及び結像レンズ32の各光軸に対して45°傾くようにベースプレート11の上面に固定されている。
【0034】
固定反射部材21の上面21cには駆動機構23が固定されている。駆動機構23は例えばインパクト駆動アクチュエータから成り、該駆動機構23の上部に配置された移動体24を水平方向に移動させる。移動体24は、取付板部24aと、その端部から下方に折曲する取付端部24bとを有する断面L字状の部材からなり、取付板部24aによって駆動機構23の上部に取り付けられている。駆動機構23は、移動体24の移動方向が固定反射面21aの法線方向と一致するように、固定反射部材21の取付面21cに固定されている。
【0035】
可動反射部材22は移動体24の取付端部24bに固定されている。可動反射部材22は、立方体状の金属ブロックから成り、その一面を鏡面加工して成る反射面22a(以下、可動反射面22aともいう)と、該反射面22aと反対側の面(背面)に形成された嵌合凹部22bとを有しており、該嵌合凹部22bが取付端部24bに嵌合されている。可動反射部材22の反射面22aは固定反射部材21の反射面21aと略同じ大きさを有している。
【0036】
図1(a)に示すように第1筐体101の側壁部の内面、蓋16の内面、及び第2筐体102(底板、側壁部及び天板)の内面には、温調手段を構成する熱伝導性シートであるグラファイトシート90がそれぞれ貼り付けられている。なお、図2では、グラファイトシート90の図示を省略している。
【0037】
グラファイトシート90は、金属の中でも熱伝導率が高い銅やアルミニウムよりも優れた熱伝導性を有することが知られており、カネカ株式会社(商品名:グラフィニティTM)、パナソニック株式会社(商品名:PGSグラファイトシート)等から販売されている。本実施例では、これら一般に販売されているグラファイトシートを購入して使用することができる。
【0038】
また、筐体10の下面には2個のペルチェ素子95、96が取り付けられている。一方のペルチェ素子95は第1筐体101の下面に取り付けられており、他方のペルチェ素子96は、その大部分が第2筐体102の下面に位置するように、第1筐体101及び第2筐体102の下面に跨って取り付けられている。ペルチェ素子95、96はいずれもその吸熱側(冷却側)が筐体10の下面と接している。ペルチェ素子95、96は本発明の冷却手段に相当する
【0039】
第1筐体101の内部には、検出器40及びペルチェ素子95、96を制御する制御装置50が収容されている。詳細な説明及び図示は省略するが、制御装置50は、検出器40の検出信号からインターフェログラムを求め、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換して輻射光の波長毎の相対強度である分光特性(スペクトル)を求める演算部、演算部の演算結果を画像化する処理部、処理部の処理結果を出力するディスプレイやプリンタ等を備えている。
【0040】
[輻射光の分光特性の測定]
上記構成の分光測定装置100を用いた測定対象物から発せられる輻射光の分光特性の測定動作について図4を参照して説明する。分光測定装置100を用いた分光特性の測定方法は結像型2次元フーリエ分光法と呼ばれる。
【0041】
まず、測定対象物Sの輻射光の分光特性の測定を開始するに先立ち、ペルチェ素子95、96に電流を供給する。これにより、ペルチェ素子95、96の吸熱側に位置する第1筐体101及び第2筐体102が冷却され、さらに第1筐体101及び第2筐体102の内面に貼り付けられたグラファイトシート90を通してこれら筐体101、102内に配置された部品が冷却される。このとき、測定対象物の温度よりも分光測定装置100の温度の方が所定の温度だけ低くなるように、ペルチェ素子95、96には予め設定された時間、電流が供給される。
【0042】
次に、分光測定装置100の位相シフタ20の駆動機構23を駆動し、可動反射部材22を、図8に矢印Aで示す方向に往復移動させる。より具体的には、可動反射部材22を、可動反射面22aと固定反射面21aが同一面上にある基準位置と、可動反射面22aが固定反射面21aよりも後方にある変動位置との間を一定の速度で往復移動させる。駆動機構23の駆動は、制御装置50によって制御される。
【0043】
続いて、分光測定装置100の導入口70が測定対象物Sを向くように該分光測定装置100を設置する。これにより、熱輻射により測定対象物Sから放射された輻射光110が導入口70から第1筐体101内に入射する。第1筐体101に入射した輻射光110は、集光レンズ72、対物レンズ31を通過した後、平行光となって位相シフタ20に到達する。位相シフタ20に到達した輻射光110は、固定反射面21aと可動反射面22aの両方に跨るように両反射面に入射し、各反射面によって反射される。
【0044】
固定反射面21aで反射された光(固定反射光)と、可動反射面22aで反射された光(可動反射光)は、それぞれ結像レンズ32を通過したのち導出口80から第2筐体102に入射し、検出器40の受光面上に集光して干渉光を形成する。検出器40の受光面には複数の受光素子が配置されており、各受光素子は、測定対象物Sから発せられた輻射光110の干渉光の強度に応じた検出信号を発生する。各受光素子の検出信号は検出器40から制御装置50に出力され、処理される。
【0045】
可動反射面22aを移動させて固定反射光と可動反射光の光路長差を変化させることにより、干渉光の強度が変化する。測定対象物Sからはその温度に応じた所定の波長範囲の輻射光110が放射されるため、制御装置50において検出器40からの検出信号が処理されることにより、干渉光の強度変化を示すインターフェログラムが取得され、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより、輻射光110の分光特性(スペクトル)が取得される。本実施例に係る分光測定装置100では、検出器40の受光面に複数の受光素子が二次元配置されているため、測定対象物Sから発せられる輻射光110の分光特性を二次元測定することができる。
【0046】
また、本実施例では、筐体10を冷却するためのペルチェ素子95、96を設けるとともに筐体10内にグラファイトシート90を設け、筐体10の入射した輻射光110が検出器40に至るまでの光路をグラファイトシート90が取り囲むようにした。そして、測定対象物Sの温度よりも筐体10内の温度が低くなった状態で、測定対象物Sからの輻射光110の分光特性を測定するようにした。従って、外気温に関係なく測定対象物Sからの輻射光110を安定的に測定することができる。
【0047】
特に、本実施例では、筐体10内にグラファイトシート90を設け、筐体10の入射した輻射光110が検出器40に至るまでの光路をグラファイトシート90が取り囲むようにした。このため、筐体10内に入射した輻射光110が検出器40に至るまでの光路の全体を効率よく、また均一に冷却することができる。
【0048】
本願発明者の実験によると、グラファイトシート90を設けない状態でペルチェ素子95、96により筐体10を冷却した場合は、筐体10内の部品の温度を均一に冷却することが難しいか、あるいは均一になるまでに時間がかかったが、グラファイトシート90を設けることにより、短時間で筐体10内の部品の温度を均一に冷却することができた。
【0049】
なお、本実施例においては、筐体10内の温度を検出する温度センサを設けて、該温度センサの結果に基づいてペルチェ素子95、96を動作させるようにしても良い。また、筐体100内の温度を検出する温度センサ及び外気温を検出する外気温センサを設け、温度センサ及び外気温センサの検出結果からペルチェ素子95、96を動作させるようにしても良い。さらに、温度センサ及び外気温センサに加えて湿度センサを設け、筐体10及び筐体10内の部品に結露が生じない程度の温度まで筐体10を冷却するようにしても良い。さらにまた、筐体10内の温度を検出する温度センサ、及び筐体10の温度を設定するための温度設定部を設けて、該温度設定部により設定された温度になるようにペルチェ素子95、96を動作させるようにしても良い。これらの構成によれば、測定対象物Sからの輻射熱の分光特性を精度良く、正確に測定することができる。
【0050】
また、図5に示すように、ペルチェ素子95、96の下部(放熱側)にヒートシンク97を配置し、該ヒートシンク97の下部にファン98を配置してもよい。この構成によれば、筐体10をより短時間で冷却することができる。上記の構成では、ペルチェ素子95、96、ヒートシンク97、ファン98から冷却手段が構成される。
【0051】
[実施例2]
図6は、本発明の実施形態である分光測定装置の第2実施例を示している。
[分光測定装置の構成]
この分光測定装置200は、円筒状の筐体201とその内部に収容された透過型光学素子210及び検出器220(輻射光検出器に相当)と、超音波加熱装置250とを備えている。
【0052】
筐体201の一端部には、測定対象物Sからの輻射光を筐体201内に導入するための円形状の窓部202が設けられている。窓部202には、中赤外光の透過性に優れた材質から成る窓材が嵌め込まれている。また、筐体201の内周面には温調手段としての断熱性シート290が貼り付けられている。
【0053】
検出器220は、その受光面221が窓部202と対向するように筐体201の他端側の内部に配置されている。検出器220は複数の画素が二次元配置された赤外線CCDカメラ等の二次元エリアセンサから成る。検出器220は、処理装置230と信号線を介して接続されており、検出信号を処理装置230に出力する。
【0054】
透過型光学素子210は光入射面211とその裏側の光出射面212を有しており、光入射面211が窓部202側に、光出射面212が検出器220の受光面221側を向くように、窓部202と検出器220の間に配置されている。
【0055】
図7(a)は透過型光学素子210をその光出射面12側から見た図、図7(b)は同図(a)のb-b'線に沿う断面図、図7(c)は同図(a)のc-c'線に沿う断面を紙面の上側から見た図、図7(d)は同図(a)のd-d'線に沿う断面を紙面の下側から見た図、図7(e)は透過型光学素子210の光出射面212から出射した光が検出器220の受光面221に入射する様子を示す図である。ここでは、図7(a)における上下左右を、透過型光学素子10の上下左右とする。
【0056】
透過型光学素子210は、光入射面211側(又は光出射面212側)から見て円形状の光学素子から成り、光入射面211は、外側に凸となる略球面状に構成されている。一方、光出射面212は、並んで配置された平面状の第1光出射面212Aと第2光出射面212Bから構成されており、それぞれ、光出射面212の上下方向中央の中心線CLから下方及び上方に向かって光入射面211側に傾斜している。
【0057】
また、第1光出射面212Aは、図7(a)のc-c'方向(つまり左右方向)に傾いていないのに対して、第2光出射面212Bは、図7(a)の符号cから符号c'に向かって光入射面211側に所定の角度だけ傾いている。つまり、第2光出射面212Bは、中心線CLから上方に向かって光入射面211側に傾斜しているとともに、右側から左側に向かって光入射面211側に傾斜している。このため、第1光出射面212Aと第2光出射面212Bは、中心線CLを挟んで対称な構成ではない。
【0058】
超音波加熱装置250は、筐体201内に配置された超音波振動子251と、筐体201の外部に設けられた反射板としての板材252と、超音波振動子251を駆動する駆動装置253を備えている。超音波振動子251は円環状を有しており、窓部202を取り囲むように筐体201の内面に固定されている。板材252は、超音波振動子251と所定の間隔を置いて対向している。
【0059】
[分光測定装置の使用方法]
上記分光測定装置200の使用方法を説明する。ここでは、耳たぶのように厚みの小さい物体を測定対象物Sとすることとする。
まず、測定対象物Sを挟んで該測定対象物Sの両側に分光測定装置200の筐体201と板材252を配置する。そして、窓部202及び板材252をそれぞれ測定対象物Sの表面に当接させる。
【0060】
この状態で、駆動装置253を動作させて超音波振動子251に交流電力を供給すると、測定対象物Sのうち板材252と窓部202の間の領域(測定領域)に超音波振動が発生し、該測定領域が超音波加熱される。これにより、測定領域から赤外線(輻射光)が放射され、この赤外線が窓部202を通して筐体201内の透過型光学素子210の光入射面211に入射する。透過型光学素子210に入射した赤外線のうち、該透過型光学素子210の合焦点である測定点SPから発せられた赤外線は平行光束となって光出射面212に向かい、光出射面212から第1光束と第2光束に分かれて出射する。そして、光出射面212から出射した第1光束と第2光束は一部が重なった状態で検出器220の受光面221に入射し、第1光束と第2光束の干渉像を形成する。つまり、透過型光学素子210のうち光入射面211が平行光束化部、光出射面212が位相シフタ及び干渉光学系として機能する。したがって、検出器220で前記干渉像の光強度分布を測定することにより測定点SPから放射された赤外線のインターフェログラムが得られ、このインターフェログラムを処理装置230でフーリエ変換することにより測定点SPの分光特性を取得することができる。
【0061】
このように本実施例では、超音波加熱装置250によって測定対象物を加熱するようにしたため、測定対象物と筐体との間に温度差を生じさせることができる。また、筐体201の内面に断熱性シート290を貼り付けたため、筐体201内の温度を均一に且つ、外気温よりも低い温度に保持することができる。このため、外気温に関係なく測定対象物Sからの輻射光を安定的に測定することができる。
【0062】
[実施例3]
図8は本発明の実施形態である分光測定装置の第3実施例を示している。この分光測定装置200Aは、超音波加熱装置250の駆動装置253が超音波振動子251に供給する交流電力の周波数や超音波振動子251が発生する超音波振動の振幅を調整する振動調整部255と、使用者によって操作される操作部256を備えている点が第2実施例と異なる。振動調整部255及び操作部256は本発明の超音波振動設定部に相当する。
【0063】
また、分光測定装置200Aは、分光測定装置200(筐体201)と板材252を測定対象物Sに装着するための装着部材260を備えている。装着部材260は、例えばクリップからなり、クリップの両端部に板材252及び筐体201がそれぞれ取り付けられている。
【0064】
装着部材260で測定対象物Sを挟持すると、板材252と窓材202が測定対象物Sを挟んで対向するように、板材252及び筐体201が測定対象物Sに固定される。上記した以外の分光測定装置200Aの構成は第2実施例の分光測定装置200と同じであるため、同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
上記分光測定装置200Aの使用方法を説明する。ここでも、耳たぶのように厚みの小さい物体を測定対象物Sとすることとする。
まず、装着部材260で測定対象物Sを挟み、該該測定対象物Sの両側に筐体201と板材252を固定する。
【0066】
この状態で、駆動装置253を動作させて超音波振動子251に交流電力を供給すると測定対象物Sのうち板材252と窓部202の間の測定領域に超音波振動が発生し、該測定領域が超音波加熱される。このとき、操作部256を操作して超音波振動子251に供給する交流電力の周波数や超音波振動子251が発生する超音波振動の振幅を適宜調整し、板材252に垂直で、測定点SPに節が位置する定在波を測定領域に形成する。
【0067】
図8に、測定対象物Sの内部に定在波Swが形成されている様子を模式的に示す。定在波Swでは節の部分にエネルギーが集中するため、節の部分が、その他の部分よりも強く加熱され、高エネルギーの赤外線を放射する。測定点SPから発せられた高エネルギーの赤外線は窓部202を通して筐体201内の透過型光学素子210に入射する。透過型光学素子210に入射した測定点SPからの赤外線は平行光束となって光出射面212に向かい、光出射面212から第1光束と第2光束に分かれて出射する。光出射面212から出射した第1光束と第2光束は一部が重なった状態で検出器220の受光面221に入射し、第1光束と第2光束の干渉像を形成する。したがって、検出器220で前記干渉像の光強度分布を測定することにより測定点SPのインターフェログラムが得られ、このインターフェログラムを処理装置230でフーリエ変換することにより測定点SPの分光特性を取得することができる。
【0068】
また、本実施例では、測定点SPに位置するような超音波振動の定在波Swを形成し、測定点SPから高エネルギーの赤外線を発生させることができる。このため、検出器220の受光面221における干渉像の形成に寄与しない、測定点SP以外の箇所から放射される赤外線を小さく抑えることができるため、SN比を高めることができる。
【0069】
なお、本実施例及び第2実施例では、筐体201の内面に断熱性シート290を貼り付けたが、これに代えて熱伝導性シート(グラファイトシート)を貼り付けても良い。グラファイトシートを貼り付けた場合は、光路内の熱を筐体201側に放出して該光路内を冷却することができる。
【0070】
[実施例4]
図9に示す分光測定装置300は、円筒状の筐体301と、該筐体301内に収容された位相シフタ320、対物レンズ331、結像レンズ332、検出器340、及びペルチェ素子395を備えている。本実施例では、筐体301の一方の端部から他方の端部に向かって対物レンズ331、位相シフタ320、結像レンズ332、検出器340、及びペルチェ素子395がこの順に一列に並べられている。
【0071】
筐体301の一方の端部は、該筐体301の中心軸に対して傾斜する面で切断したような形状を有しており、その部分に赤外光の透過性に優れた材質から成る窓部302が嵌め込まれている。また、筐体301の他方の端部には蓋303が装着されており、該蓋303の内面にペルチェ素子395が取り付けられている。ペルチェ素子395は、その吸熱(冷却)側が検出器340と接しており、発熱側が蓋303に接している。蓋303は、熱伝導性に優れた材質から形成されており、ペルチェ素子395の発熱側で生じた熱を外部に放出し易い構成になっている。
【0072】
また、筐体301の内面には、グラファイトシート390が貼り付けられている。グラファイトシート390一部は筐体301の一端部(窓部302と筐体301の間)から該筐体301の外部まで延びており、筐体301の一端部の外周面に貼り付けられている。グラファイトシート390のうち筐体301の一端部に貼り付けられた部分を以下では接触部391と呼ぶ。また、グラファイトシート390の他端側は検出器340に接触している。この接触している部分は、本発明の接触部として機能する。
【0073】
位相シフタ320は、半円状の透過型光学部材である第1透過部321と第2透過部322からなり、全体としてほぼ円板状の構成を有している。第1透過部321は、入射面及び出射面が平行な厚さ一定の光学部材から成る。一方、第2透過部322は、第1透過部321の入射面に対して傾斜する入射面と、第1透過部3211の出射面と同一面上にある出射面を有するくさび形の光学部材から成る。本実施例では、第2透過部322は、その厚さが一方側から他方側に向かって徐々に小さくなっており、これにより入射面が、一方側から他方側に向かって結像レンズ332側に傾斜している。
【0074】
結像レンズ332は平凸面シリンドリカルレンズから成る。結像レンズ332は、位相シフタ320側の面が該位相シフタ320に向かって突出する円筒状の凸面から成り、検出器340側の面が位相シフタ320の出射面と平行な平面から成る。
【0075】
検出器340は、例えば複数の画素が2次元配置された赤外線CCDカメラから構成さ
れている。図示は省略するが、筐体301の内部には、検出器340及びペルチェ素子395を制御する制御装置が収容されている。制御装置は、検出器340の検出信号からインターフェログラムを求め、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換して輻射光の波長毎の相対強度である分光特性(スペクトル)を求める演算部、演算部の演算結果を記憶する記憶部を備えている。分光測定装置300にはパーソナルコンピュータ等の外部端末が接続可能になっており、記憶部に記憶された演算結果を外部端末に取り込み、そこで、画像化したり、外部端末が備えるディスプレイやプリンタ等に出力したりすることができる。
【0076】
上記構成の分光測定装置300を用いて、測定対象物Sから発せられる輻射光の分光特性を測定する際は、筐体301の一端部を測定対象物Sに接触させる。これにより接触部391が測定対象物Sに接触し、該測定対象物Sの熱がグラファイトシート390に伝達される。その結果、時間の経過とともに筐体301内の温度が測定対象物Sの温度とほぼ等しくなる。この状態で、ペルチェ素子395を所定時間動作させる。これにより、検出器340が冷却され、測定対象物Sよりも低温になる。本実施例では、筐体301内の温度と測定対象物Sの温度をほぼ等しい状態にしてから検出器340を冷却するため、予め設定された時間ペルチェ素子395を動作させることにより、測定対象物Sと検出器340の温度差をほぼ一定にすることができる。また、グラファイトシート390の他端部が検出器340と接触しているため、筐体301内の全体を検出器340とほぼ同じ温度に保つことができる。
【0077】
一方、測定対象物Sから放射された輻射光は、窓材302を通して筐体301内に入射する。そして、対物レンズ331を通過した後、位相シフタ320に入射し、該位相シフタ320によって2つに分割され、第1測定光と第2測定光として結像レンズ332に入射する。結像レンズ332に入射した第1測定光と第2測定光は検出器340の受光面に集光されて干渉光を形成する。受光面には多数の画素が配置されているため、これら画素によって干渉光の強度が検出される。制御装置は、筐体301内が所定の温度まで冷却された後、検出器340の検出信号を取り込み、所定の演算処理を行う。これにより、測定対象物Sのインターフェログラムが求められ、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトル(分光特性)が得られる。
【0078】
[実施例5]
図10は、本発明の第5実施例である分光測定ユニットの概略構成図である。この分光測定ユニットは、分光測定装置300Aと収容装置400とを備えている。分光測定装置300Aは、第4実施例の分光測定装置300と異なり、ペルチェ素子395を有していない。また、グラファイトシート390は筐体301内にのみ貼り付けられており、筐体301の外部にまで延びていない。それ以外の構成は第4実施例の分光測定装置300とほぼ同じであるため、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
収容装置400は、測定対象物が収容される容器401と、容器401の底面に取り付けられたペルチェ素子402と、容器401の温度を検出する温度センサ403と、温度センサ403の検出結果に基づいてペルチェ素子402を制御する制御部404とを有している。容器401は上面が開口しており、この開口から測定対象物Sが収容される。また、ペルチェ素子402は発熱側が容器401の底面に接するように該容器401に取り付けられている。
【0080】
上記の分光測定ユニットでは、例えば液体状の測定対象物Sを容器401に収容し、ペルチェ素子402で容器401を所定の温度まで加熱する。これにより容器401内の測定対象物Sに含まれる揮発成分(水分)は蒸発し、不揮発成分が容器401内に残る。この状態で、容器401の開口と分光測定装置300の筐体301の開口を突き合わせる。すると、容器401内に残った不揮発成分から放射された輻射熱は、容器401の開口及び筐体301の開口を通じて筐体301に入射する。この結果、第4実施例で説明したように、輻射光の分光特性が求められる。
【0081】
なお、上記実施例では、何れも本発明を分光測定装置に適用した実施例について説明したが、本発明は、測定対象物の熱分布を測定する赤外線サーモグラフィ、測定対象物から放射された輻射光の強度を測定する輻射光強度測定装置等にも適用できる。
また、上記実施例では、筐体内に熱伝導性シート又は断熱性シートを設けたが、筐体又は輻射光検出器を冷却するための冷却手段を設ける場合は、熱伝導性シート及び断熱性シートを省略しても良い。
【符号の説明】
【0082】
1、100、200、200A、300、300A…分光測定装置
10、101、201、301…筐体
202…窓部
250…超音波加熱装置
251…超音波振動子
255、256…超音波振動設定部
290…断熱性シート
40、220、340…検出器
70…導入口
90、390…グラファイトシート
95、96、395、402…ベルチェ素子
391…接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10