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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】吸着保持装置及び対象物表面加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240313BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 21/203 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05H1/46 A
H01L21/203 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019218992
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021089948
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】593115792
【氏名又は名称】筑波精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傅 寶▲莱▼
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 博章
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-050156(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208439(WO,A1)
【文献】特開2014-216503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05H 1/46
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄物対象物と、
前記薄物対象物の表面外周部のうち、少なくとも一部の表面外周部を押さえるリブ部を有するリング状押さえ部材と、
前記リング状押さえ部材を吸着保持する吸着力発生部材と、を備え、
前記吸着力発生部材を用いて前記リング状押さえ部材を吸着することで、前記薄物対象物を前記リブ部と前記吸着力発生部材との間に挟み込んで保持し、
前記吸着力発生部材を、電気絶縁層の内部に電極要素群を埋設させ、静電界を用いて吸着力を発生する部材とし、
前記吸着力発生部材に有する前記電極要素群に対して接続/切り離し可能な吸着力制御部を設け、
前記吸着力制御部は、前記リング状押さえ部材を吸着するときに前記吸着力発生部材へ接続し、前記リング状押さえ部材を吸着した後、前記吸着力発生部材から切り離すコードレス方式とする
ことを特徴とする吸着保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載された吸着保持装置において、
前記吸着力発生部材は、対象物保持領域に外側拡大領域を加えた領域を吸着力発生領域として設定し、
前記外側拡大領域に前記リング状押さえ部材を吸着保持すると共に、前記対象物保持領域に前記薄物対象物の吸着面を吸着保持する
ことを特徴とする吸着保持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された吸着保持装置において、
前記薄物対象物を、厚みが0.5mm以下の薄板状対象物とする
ことを特徴とする吸着保持装置。
【請求項4】
薄物対象物と、
前記薄物対象物の表面外周部のうち、少なくとも一部の表面外周部を押さえるリブ部を有するリング状押さえ部材と、
前記リング状押さえ部材を吸着保持する吸着力発生部材と、を備え、
前記吸着力発生部材を用いて前記リング状押さえ部材を吸着することで、前記薄物対象物を前記リブ部と前記吸着力発生部材との間に挟み込んで保持し、
前記吸着力発生部材を、磁界を用いて吸着力を発生する部材とし、
前記リング状押さえ部材を、磁性体材料による部材とする
ことを特徴とする吸着保持装置。
【請求項5】
薄物対象物をリング状押さえ部材のリブ部と吸着力発生部材との間に挟持した吸着保持装置を用いる対象物表面加工方法であって、
前記薄物対象物と前記リング状押さえ部材と前記吸着力発生部材により構成される薄物対象物保持ユニットを表面加工装置へ移送し、
前記表面加工装置の内部処理位置に前記薄物対象物保持ユニットをセットすると、前記薄物対象物の表面のうち、前記リブ部を除いた領域を加工面として表面加工を施し、
前記表面加工が完了すると、表面加工済みの前記薄物対象物を保持したままで前記表面加工装置の内部処理位置から前記薄物対象物保持ユニットを外し、前記表面加工装置の外部へ移送する
ことを特徴とする対象物表面加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載された対象物表面加工方法において、
前記表面加工装置は、表面成膜を実現する膜付け装置である
ことを特徴とする対象物表面加工方法。
【請求項7】
請求項5に記載された対象物表面加工方法において、
前記表面加工装置は、表面エッチング加工を実現するプラズマエッチング装置である
ことを特徴とする対象物表面加工方法。
【請求項8】
請求項5に記載された対象物表面加工方法において、
前記表面加工装置は、イオン注入加工を実現するイオン注入装置である
ことを特徴とする対象物表面加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄物対象物を吸着保持する吸着保持装置及び吸着保持状態の対象物表面に加工を施す対象物表面加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リングフレーム内にマウントされたウエハを真空吸着により固定する吸着テーブルに対して剥離テープの貼り付け方向の前後位置に、ダイシングテープとリングフレームの表面を覆うマスク板を上下に揺動自在となるよう配置し、剥離テープの供給部と巻き取り部の間に、剥離テープを表面保護テープに接着させた後、この保護テープをウエハの表面から剥がすための剥離ユニットを設ける。この剥離ユニットで剥離テープの保護テープ剥がし角度を鋭角にしながら、ウエハの表面保護テープを剥離するウエハ表面保護テープの剥離装置が知られている。真空吸着により固定されたウエハを表面保護テープにより覆うことで、工程間を移動するときに作用する振動や外力に対して薄いウエハが補強され、亀裂やマイクロクラックの発生が防止される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ウエハを保持する保持手段として、クーロン力を利用する静電チャックが知られている。静電チャックの場合は、ウエハ全体を一体に吸着保持することで静電チャックがウエハにとってサポート機能を発揮し、工程間を移動するときや加工工程において作用する振動や外力に対して補強され、亀裂やマイクロクラックの発生が防止される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-319906号公報
【文献】特開2006-269826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された先行技術にあっては、薄物対象物の吸着面と表面のうち、吸着面のみに吸着力が作用する構成である。このため、例えば、薄物対象物を静電チャックにて吸着する場合、ピーリング現象によって周辺に剥離が発生し、発生した剥離が拡大して反りになると、薄物対象物の反りを矯正することができない。さらに、薄物対象物に成膜加工を施すことで2つの異なる素材の熱膨張係数の差により反りが発生すると、その反りを矯正することができない、という課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、薄物対象物を吸着力発生部材に吸着させる際、薄物対象物の外周部を吸着力によって挟持することで、薄物対象物の吸着状態における平面度の向上を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の吸着保持装置は、薄物対象物と、薄物対象物の表面外周部のうち、少なくとも一部の表面外周部を押さえるリブ部を有するリング状押さえ部材と、リング状押さえ部材を吸着保持する吸着力発生部材と、を備える。
そして、吸着力発生部材を用いてリング状押さえ部材を吸着することで、薄物対象物をリブ部と吸着力発生部材との間に挟み込んで保持する。
吸着力発生部材を、電気絶縁層の内部に電極要素群を埋設させ、静電界を用いて吸着力を発生する部材とする。
吸着力発生部材に有する電極要素群に対して接続/切り離し可能な吸着力制御部を設ける。
吸着力制御部は、リング状押さえ部材を吸着するときに吸着力発生部材へ接続し、リング状押さえ部材を吸着した後、吸着力発生部材から切り離すコードレス方式とする。
【発明の効果】
【0008】
上記課題解決手段を採用したため、薄物対象物を吸着力発生部材に吸着させる際、薄物対象物の外周部を吸着力によって挟持することで、薄物対象物の吸着状態における平面度の向上を達成することができる。加えて、薄物対象物とリング状押さえ部材と吸着力発生部材により構成される独立した薄物対象物保持ユニットになり、表面加工装置への移送や取り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の吸着保持装置A1を示す平面図である。
図2】実施例1の吸着保持装置A1を示す縦断面図である。
図3】実施例1の吸着保持装置A1の拡大構成と吸着力制御部を示す詳細図である。
図4】静電チャックによる静電吸着力の発生原理を示す説明図である。
図5】電極への電圧印加により静電吸着力が発生し電極からの電圧オフにより元状態に戻る作用を示す作用説明図である。
図6】実施例1の薄物対象物保持ユニットU1を用いた表面加工の一例である表面成膜加工例を示す対象物表面加工方法説明図である。
図7】先行例において反りを有する薄物対象物の吸着作用を示す作用説明図である。
図8】実施例1において反りを有する薄物対象物の吸着作用を示す作用説明図である。
図9】実施例2の吸着保持装置A2を示す平面図である。
図10】実施例2の吸着保持装置A2を示す縦断面図である。
図11】実施例3の吸着保持装置A3を示す平面図である。
図12】実施例3の吸着保持装置A3を示す縦断面図である。
図13】実施例4の吸着保持装置A4を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による吸着保持装置及び対象物表面加工方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1~実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1における吸着保持装置及び対象物表面加工方法は、ICチップ(半導体集積回路)の材料となるウエハを薄物対象物とし、吸着状態での対象物表面に微細な配線や素子等の回路パターンを様々な表面加工により施し、半導体チップ単体(ダイ)を製造する半導体製造装置群に適用されるものである。以下、「吸着保持装置A1の構成」、「対象物表面加工方法」について説明する。
【0012】
[吸着保持装置A1の構成(図1図4)]
吸着保持装置A1は、図1図3に示すように、薄物対象物10と、リング状押さえ部材20と、吸着力発生部材30と、吸着力制御部40と、を備えている。
【0013】
薄物対象物10は、厚みが0.5mm以下の円形薄板状対象物であり、半導体物質の結晶でできた円形の薄い板による「ウエハ」を代表的な対象物とする。ここで、「ウエハ」としては、最も一般的なシリコンウエハ以外に、シリコンカーバイトウエハやサファイアウエハや化合物半導体ウエハ(リン化ガリウムウエハ、ヒ化ガリウムウエハ、リン化インジウムウエハ、窒化ガリウムウエハ等)が含まれる。さらに、「ウエハ」には、サポート基板として用いられるガラスウエハも含まれる。
【0014】
リング状押さえ部材20は、図3に示すように、円環状吸着部201とリブ部202を一体に有する。円環状吸着部201は、円環状平面による吸着下面20aが吸着力発生部材30に対して静電吸着力により吸着固定される。リブ部202は、円環状吸着部201の内面上部の全周部分から内径方向に突出して形成され、円環状平面による押さえ下面20bが薄物対象物10の表面10aの外周部全体を押さえる。リブ部202の内側突出端面20cは、薄物対象物10の外径より少し小さい外径による円形端面であり、図1に示すように、薄物対象物10の表面領域のうち、内側突出端面20cより内側の円形領域(押さえ下面20bを除いた領域)が薄物対象物10に対する加工面MS1(ハッチング領域)となる。
【0015】
ここで、吸着下面20aの吸着幅は、例えば、5mm~10mm程度の幅に形成され、押さえ下面20bの押さえ幅は、例えば、1mm~2mm程度の幅に形成される。また、円環状吸着部201とリブ部202との段差面20dの段差幅は、薄物対象物10の厚みに応じ、厚みとほぼ一致する幅に形成される。なお、リング状押さえ部材20の素材は、吸着力発生部材30が、静電界を用いて吸着力を発生する部材としているため、導体~半導体~絶縁体の何れの素材を用いることも許容されるという特長を有し、例えば、所定の剛性を有する素材であれば、強化プラスチック素材等の絶縁素材を用いることもできる。
【0016】
吸着力発生部材30は、静電界を用いて吸着力を発生し、薄物対象物10及びリング状押さえ部材20を共に吸着保持する吸着力の発生機能を発揮する。この吸着力発生部材30は、図3に示すように、薄物対象物10及びリング状押さえ部材20を静電吸着する電気絶縁層301と、電気絶縁層301の内部に埋設させ、プラス電極とマイナス電極を交互に配置した電極要素群302,303と、電極要素群302,303に対して電気絶縁層301とは反対の面に有するベース板304と、を備える構成としている。
【0017】
ここで、吸着力発生部材30は、薄物対象物10の外径よりも大きな外径を有し、図3に示すように、薄物対象物10の大きさに一致する対象物保持領域に外側拡大領域を加えた領域を、静電吸着力Fa,Fbの発生領域として設定している。そして、吸着力発生部材30の外側拡大領域に対してリング状押さえ部材20を静電吸着力Faにより保持することで、図3に示すように、薄物対象物10の全外周部を、リング状押さえ部材20のリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟み込んで保持する。同時に、吸着力発生部材30の対象物保持領域に対して薄物対象物10の吸着面10bの全体を静電吸着力Fbにより吸着保持する。なお、電気絶縁層301の対象側平面301aの全面が、対象物保持領域に外側拡大領域を加えた領域による静電吸着力発生面である。
【0018】
吸着力制御部40は、図3に示すように、吸着力発生部材30に有する電極要素群302,303に対して接続/切り離しが可能に設けられる。この吸着力制御部40は、電極要素群302,303に接続して静電吸着力Fa,Fbの発生/消滅を制御すると共に、静電吸着力を発生させると電極要素群302,303から切り離しても、吸着力発生部材30に蓄積された電荷により静電吸着力Fa,Fbの発生を維持する。即ち、吸着力制御部40は、電極要素群302,303に対してリード線等により常時接続しているコード方式ではなく、吸着力発生部材30に電荷を蓄積すると、吸着力発生部材30から切り離されるコードレス方式としている。
【0019】
ここで、コードレス方式の場合、薄物対象物10及びリング状押さえ部材20を吸着するときに吸着力発生部材30に吸着力制御部40を接続し、電極要素群302,303への電圧印加により薄物対象物10及びリング状押さえ部材20を静電吸着する。そして、静電吸着力Fa,Fbの発生が確認されると、その後、吸着力発生部材30から吸着力制御部40を切り離し、吸着力発生部材30に蓄積された電荷により静電吸着力Fa,Fbの発生を維持する使い方をする。
【0020】
吸着力制御部40は、図3に示すように、電極要素群302とアースとの導通制御を行う第1スイッチSW1と、電極要素群302への電圧印加制御を行う第2スイッチSW2と、第2スイッチSW2により印加される電圧と逆極性の電圧印加制御を行う第3スイッチSW3と、電極要素群303とアースとの導通制御を行う第4スイッチSW4と、電極要素群303への電圧印加制御を行う第5スイッチSW5と、第5スイッチSW5により印加される電圧と逆極性の電圧印加制御を行う第6スイッチSW6と、を備えている。
【0021】
この吸着力制御部40は、初期状態において、全スイッチSW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6がオフとされる。静電吸着力を発生させるときは、吸着力発生部材30に吸着力制御部40を接続し、各スイッチのオン/オフ制御を実行することにより静電吸着力を発生させた後、吸着力発生部材30から吸着力制御部40が切り離される。その後、静電吸着力を解除させるときは、再度、吸着力発生部材30に吸着力制御部40を接続し、各スイッチのオン/オフ制御を実行することにより静電吸着力を解除する。
【0022】
次に、吸着力発生部材30での静電吸着力Fa,Fbの発生原理を、図4及び図5に基づいて説明する。実施例1で用いた吸着力発生部材30は、クーロン力により対象物を静電吸着する「静電チャック」の一例である。この「静電チャック」による静電吸着力の発生原理は、図4に示すように、電極に電圧を印加すると、対象物の表面に表面分極を誘起する。ここで、プラス電圧を印加した電極部分に対向する対象物の表面部分にはマイナスの表面分極を誘起する。また、マイナス電圧を印加した電極部分に対向する対象物の表面部分にはプラスの表面分極を誘起する。そして、電極面と対象物表面間には、プラス電極から対象物の表面を経過しマイナス電極への円弧状流れによる静電界が形成され、この静電界により対象物を絶縁層の表面に吸着する静電吸着力が生じる。
【0023】
そして、静電吸着力を解除するときは、図5に示すように、電極への印加電圧を遮断する操作を行うと、対象物は元状態(静電チャックと対象物が分離している状態)に戻り、しかも対象物に電荷を供与しない。なお、電極への印加電圧の遮断により対象物に電荷を供与しない理由は、印加電圧により対象物の表面分極で静電吸引力を誘起しているため、電極への印加電圧を遮断すると対象物の表面分極も無くなることによる。
【0024】
[対象物表面加工方法(図6)]
上記のように、吸着力発生部材30は、吸着力制御部40を吸着力発生部材30から切り離すコードレス方式としていることで、吸着保持装置A1は、薄物対象物10を吸着したままで独立に移送可能なユニット状態で表面加工装置へ投入することができる。この表面加工装置へ投入により実行されるのが対象物表面加工方法である。以下、薄物対象物保持ユニットU1を用いた表面加工の一例である真空成膜加工例を、図6に基づいて説明する。
【0025】
薄物対象物10をリング状押さえ部材20のリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟持した吸着保持装置A1を用いる対象物表面加工方法であって、加工装置移送ステップと、成膜加工ステップと、装置外部移送ステップと、を備えている。
【0026】
加工装置移送ステップは、図6(a)に示すように、薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される薄物対象物保持ユニットU1を、表面成膜を実現する膜付け装置50(表面加工装置)の内部へ移送する。
【0027】
ここで、膜付け装置50とは、例えば、真空容器51内を真空状態とし、真空容器51の内部下部位置に蒸発源52を設置し、蒸発源52の上部対向位置に対象物を設置する蒸着法による成膜装置をいう。
【0028】
成膜加工ステップは、図6(b)に示すように、膜付け装置50の内部処理位置に薄物対象物保持ユニットU1をセットすると、薄物対象物10の表面10aのうち、リブ部202を除いた領域を加工面MS1(図1を参照)として成膜加工を施す。
【0029】
ここで、成膜加工とは、例えば、真空容器51内の蒸発源52において膜材を真空中で加熱・溶解・蒸発させ、蒸発した微粒子による膜材を薄物対象物10の表面に付着させることをいう。
【0030】
装置外部移送ステップは、図6(c)に示すように、成膜加工が完了すると、成膜加工済みの薄物対象物10を保持したままで膜付け装置50の内部処理位置から薄物対象物保持ユニットU1を外し、膜付け装置50の外部へ移送する。
【0031】
ここで、膜付け装置50の外部へ移送した後、薄物対象物保持ユニットU1から成膜加工済みの薄物対象物10を吸着力発生部材30から分離して取り出す場合は、外部移送先にて吸着力制御部40を接続し、静電吸着力Fa,Fbを解除する。一方、成膜加工が連続表面加工処理の一部の加工処理である場合は、薄物対象物保持ユニットU1のままで、膜付け装置50の外部に設置されている次の表面加工装置へ移送する。また、次の表面加工装置が成膜加工面と反対の面である場合は、静電吸着力Fa,Fbを解除し、薄物対象物10の表裏を反転させた後、再び、静電吸着力Fa,Fbを発生させて薄物対象物10を静電吸着し、薄物対象物10の裏面に成膜加工を施す。
【0032】
このように、対象物表面加工方法は、薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される薄物対象物保持ユニットU1を用いることで、平面度が確保された薄物対象物10に対して表面加工を施すことを目指すものである。よって、表面加工装置としては、表面成膜を実現する膜付け装置50に限られるものではなく、表面加工装置には、半導体素子の製造工程に設置される表面エッチング加工を実現するプラズマエッチング装置、イオン注入加工を実現するイオン注入装置、等も勿論含まれる。
【0033】
ここで、「プラズマエッチング装置」とは、薄物対象物10へ半導体集積回路等の微細回路を作製するエッチング加工を低温ガスプラズマ中で行う装置をいう。「イオン注入装置」とは、半導体中へのドーパント注入のように、物質のイオンを固体である薄物対象物10へ注入する加工装置をいう。これらのエッチング加工やイオン注入加工の場合であっても、真空成膜加工と同様に、加工装置移送ステップと、成膜加工ステップと、装置外部移送ステップと、を備えた対象物表面加工方法とされる。
【0034】
次に、「背景技術と課題解決方策」について説明する。そして、実施例1における「吸着保持装置A1の特徴作用」を説明する。
【0035】
[背景技術と課題解決方策(図7図8)]
例えば、薄物対象物を静電チャックにて吸着する場合、直線状に配置される電極に沿ったラインより外側の外周辺部にピーリング現象によって剥離が発生し、発生した剥離が拡大して反りになる。また、薄物対象物に成膜加工を施すと、2つの異なる素材の熱膨張係数の差により静電チャックへの吸着状態で反りが発生する。さらに、例えば、成膜済みのガラスウエハを薄物対象物とすると、静電チャックにて吸着する前に予め反っている対象物になる。これらの薄物対象物の反りを矯正しようとしても、反り力に対抗できる強い力が必要であり、図7に示すように、静電チャックによる静電吸着力によっても静電吸着力<反り力という力関係となる外周部領域には反りが残ってしまい、薄物対象物の反りを矯正することは難しい、という課題があった。
【0036】
特に、近年では「移動通信システム」が3Gから4G、そして4Gから5G(なお、5Gは5世代移動通信システム「5th Generation」の略称である)という形で通信速度やそれに対応するデバイスが進化している。また、インバータにおいてもスイッチング素子として用いられる絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が小型化に向けて進化している。これらの進化に伴い精密プロセスを必要とする対象物の薄化が進み、大きな反りを有する薄物対象物(例えば、厚み200μmで反り20mm)の反り矯正が必要不可欠になっている。つまり、薄物対象物の反りを矯正できる有効な解決策が要求されている。
【0037】
本発明者等は、上記課題や要求に対する解決策の検証に基づいて、静電チャックに対して薄物対象物を吸着する吸着エリアの外側エリアに着目し、外側エリアを利用し、押さえ部材を静電吸着させる実験を行った。この実験により、押さえ部材に対して必要十分な静電吸着力を発生させることができ、十分な剛性を持つ押さえ部材のリブ部で薄物対象物の辺部を押さえれば、薄物対象物のピーリング(剥離)を防止できることを確認できた。
【0038】
上記実験による知見に基づいて、本開示の吸着保持装置A1は、薄物対象物10と、薄物対象物10の表面外周部のうち、少なくとも一部の表面外周部を押さえるリブ部202を有するリング状押さえ部材20と、リング状押さえ部材20を吸着保持する吸着力発生部材30と、を備える。そして、吸着力発生部材30を用いてリング状押さえ部材20を吸着することで、薄物対象物10をリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟み込んで保持する、という解決手段を採用した。
【0039】
例えば、予め反っている薄物対象物10の場合には、図8に示すように、リング状押さえ部材20のリブ部202に反っている薄物対象物10の反り端部を係合させ、リング状押さえ部材20を押し込んで吸着力発生部材30に吸着させる。これによって、リング状押さえ部材20に吸着力として静電吸着力Faが発生し、図2に示すように、薄物対象物10がリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟み込み状態で保持される。
【0040】
このため、予め反っている薄物対象物10の場合は、リング状押さえ部材20を吸着力発生部材30に吸着させるときに薄物対象物10の外周端部を挟み込むことで、薄物対象物10に発生している反りが吸着力(静電吸着力Fa)により矯正されることになる。また、吸着力発生部材30へ吸着させている薄物対象物10の外周辺部から反りが発生しようとしても、吸着力(静電吸着力Fa)が発生しているリング状押さえ部材20により、薄物対象物10の辺部挟み込み保持が維持されることで、反りの発生そのものが防止されることになる。
【0041】
この結果、薄物対象物10を吸着力発生部材30に吸着させる際、薄物対象物10の外周部を吸着力(静電吸着力Fa)によって挟持することで、薄物対象物10の吸着状態における平面度の向上を達成することができる。加えて、薄物対象物10の反りを矯正して平面度を上げることによって、真空成膜の膜厚精度を高くすることができることになる。さらに、薄物対象物10をリング状押さえ部材20により挟み保持することによって、成膜や他熱加工工程の高温プロセス下の熱変形に伴う薄物対象物10の亀裂や割れを防止することができることになる。
【0042】
[吸着保持装置A1の特徴作用(図1図3)]
実施例1の吸着力発生部材30は、対象物保持領域に外側拡大領域を加えた領域を吸着力発生領域として設定している。そして、外側拡大領域にリング状押さえ部材20を吸着保持すると共に、対象物保持領域に薄物対象物10の吸着面を吸着保持している。
【0043】
即ち、図3に示すように、吸着力(静電吸着力Fa)によってリング状押さえ部材20が吸着力発生部材30の外側拡大領域に吸着保持される。同時に、吸着力(静電吸着力Fb)によって薄物対象物10の吸着面10bが吸着力発生部材30の対象物保持領域に吸着保持される。このため、薄物対象物10をリング状押さえ部材20で挟み込むことで反りの矯正が可能であるが、同時に薄物対象物10も吸着(静電吸着)することで、大きな反りを有する薄物対象物10の反り矯正ができるようになる。そして、薄物対象物10を吸着(静電吸着)すると、薄物対象物10をリング状押さえ部材20で挟み込むだけよりも薄物対象物10の平面度をさらに上げることができ、真空成膜の膜厚精度をよりも改善することができる。
【0044】
実施例1では、薄物対象物10を、厚みが0.5mm以下の薄板状対象物としている。これにより、精密プロセスを必要とする対象物の薄化が進むことに伴って反り矯正が必要不可欠になっているシリコンウエハやガラスウエハ等のウエハを、薄物対象物10に含めることができる。
【0045】
実施例1では、吸着力発生部材30を、電気絶縁層301の内部に電極要素群302,303を埋設させ、静電界を用いて吸着力を発生する部材としている。
【0046】
即ち、真空成膜や他熱加工工程の高温プロセスで利用されている薄物対象物10は、シリコンウエハやガラスウエハ等の非磁性体材料である。このため、後述する磁界を用いた吸着保持装置A4では、薄物対象物10を吸着することができない。これに対し、吸着力発生部材30を、静電界を用いて吸着力を発生する部材とすると、薄物対象物10やリング状押さえ部材20の素材を何にするかは全く問わない。このため、静電界を用いた吸着保持装置A1では薄物対象物10とリング状押さえ部材20を共に吸着でき、後述する磁界を用いた吸着保持装置A4よりも薄物対象物10の平面度を向上させることができる。
【0047】
実施例1では、吸着力発生部材30に有する電極要素群302,303に対して接続/切り離し可能な吸着力制御部40を設ける。そして、吸着力制御部40は、リング状押さえ部材20を吸着するときに吸着力発生部材30へ接続し、リング状押さえ部材20を吸着した後、吸着力発生部材30から切り離すコードレス方式としている。
【0048】
即ち、吸着力発生部材に有する電極要素群に対して吸着力制御部を常時接続しているコード方式にすると、表面加工装置へ移送するときも表面加工装置へ設置するときも電圧の印加を継続する複雑な構成とする必要があるし、高温耐久性も要求される。これに対し、吸着力制御部40を吸着力発生部材30から切り離すコードレス方式にすると、薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される独立した薄物対象物保持ユニットU1になり、表面加工装置への移送や取り付けを容易に行うことができる。
【0049】
以上述べたように、実施例1の吸着保持装置A1及び対象物表面加工方法にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0050】
(1) 薄物対象物10と、
薄物対象物10の表面外周部のうち、少なくとも一部の表面外周部を押さえるリブ部202を有するリング状押さえ部材20と、
リング状押さえ部材20を吸着保持する吸着力発生部材30と、を備え、
吸着力発生部材30を用いてリング状押さえ部材20を吸着することで、薄物対象物10をリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟み込んで保持する。
このため、薄物対象物10を吸着力発生部材30に吸着させる際、薄物対象物10の外周部を吸着力によって挟持することで、薄物対象物10の吸着状態における平面度の向上を達成することができる。加えて、薄物対象物10の平面度向上に伴い、例えば、真空成膜の膜厚精度を高くすることができるし、成膜や他熱加工工程の高温プロセス下の熱変形に伴う薄物対象物10の亀裂や割れを防止することができる。
【0051】
(2) 吸着力発生部材30は、対象物保持領域に外側拡大領域を加えた領域を吸着力発生領域として設定し、
外側拡大領域にリング状押さえ部材20を吸着保持すると共に、対象物保持領域に薄物対象物10の吸着面10bを吸着保持する。
このため、大きな反りを有する薄物対象物10の反り矯正ができると共に、薄物対象物10をリング状押さえ部材20で挟み込むだけよりも薄物対象物10の平面度をさらに上げることができる。そして、薄物対象物10の平面度をさらに上げることで、例えば、真空成膜の膜厚精度を、薄物対象物10をリング状押さえ部材20で挟み込むだけよりも改善できる。
【0052】
(3) 薄物対象物10を、厚みが0.5mm以下の薄板状対象物とする。
このため、精密プロセスを必要とする対象物の薄化が進むことに伴って反り矯正が必要不可欠になっているシリコンウエハやガラスウエハ等のウエハを、薄物対象物10に含めることができる。
【0053】
(4) 吸着力発生部材30を、電気絶縁層301の内部に電極要素群302,303を埋設させ、静電界を用いて吸着力を発生する部材とする。
このため、静電界を用いた吸着保持装置A1では薄物対象物10とリング状押さえ部材20を共に吸着でき、後述する磁界を用いた吸着保持装置A4よりも薄物対象物10の平面度を向上させることができる。
【0054】
(5) 吸着力発生部材30に有する電極要素群302,303に対して接続/切り離し可能な吸着力制御部40を設け、
吸着力制御部40は、リング状押さえ部材20を吸着するときに吸着力発生部材30へ接続し、リング状押さえ部材20を吸着した後、吸着力発生部材30から切り離すコードレス方式とする。
このため、薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される独立した薄物対象物保持ユニットU1になり、表面加工装置への移送や取り付けを容易に行うことができる。
【0055】
(6) 薄物対象物10をリング状押さえ部材20のリブ部202と吸着力発生部材30との間に挟持した吸着保持装置A1を用いる対象物表面加工方法であって、
薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される薄物対象物保持ユニットU1を表面加工装置(膜付け装置50)へ移送し、
表面加工装置の内部処理位置に薄物対象物保持ユニットU1をセットすると、薄物対象物10の表面10aのうち、リブ部202を除いた領域を加工面MS1として表面加工(成膜加工)を施し、
表面加工が完了すると、表面加工済みの薄物対象物10を保持したままで表面加工装置の内部処理位置から薄物対象物保持ユニットU1を外し、表面加工装置の外部へ移送する。
このため、薄物対象物10とリング状押さえ部材20と吸着力発生部材30により構成される独立の薄物対象物保持ユニットU1を用い、平面度が確保された薄物対象物10の加工面MS1に必要な表面加工を精度よく施すことができる。
【0056】
(7) 表面加工装置は、表面成膜を実現する膜付け装置50である。
このため、薄物対象物保持ユニットU1を用い、平面度が確保された薄物対象物10の加工面MS1に高い膜厚精度で表面成膜を実現することができる。
【0057】
(8) 表面加工装置は、表面エッチング加工を実現するプラズマエッチング装置である。
このため、薄物対象物保持ユニットU1を用い、平面度が確保された薄物対象物10の加工面MS1に高精度で精密な表面エッチング加工を実現することができる。
【0058】
(9) 表面加工装置は、イオン注入加工を実現するイオン注入装置である。
このため、薄物対象物保持ユニットU1を用い、平面度が確保された薄物対象物10の加工面MS1に高い注入位置精度でのイオン注入加工を実現することができる。
【実施例2】
【0059】
実施例2は、リング状押さえ部材20を、薄物対象物10の表面外周部のうち、一部分の表面外周部を押さえるリブ部202’を有する吸着保持装置A2とした例である。
【0060】
実施例2のリング状押さえ部材20は、図9及び図10に示すように、円環状吸着部201の上面から90度等角配置の4箇所位置で内径方向に突出して形成される4個のリブ部202’を有する。この4個のリブ部202’により、図9に示すように、薄物対象物10の表面領域のうち、4個のリブ部202’を除いた領域が薄物対象物10に対する加工面MS2(ハッチング領域)となる。なお、他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0061】
よって、実施例2の吸着保持装置A2は、外周辺部の反りを部分的な挟み込みにより矯正することが可能な薄物対象物10であり、加工面MS2を実施例1の加工面MS1よりも拡大したい要求のある薄物対象物10に対する適用に有用である。
【0062】
なお、実施例2では、等角の4箇所位置で内径方向に突出して形成される4個のリブ部202’の例を示した。しかし、リブ部202’としては、例えば、2箇所位置以上の複数位置で内径方向に突出して形成されるものであれば、4箇所位置に形成したものに限られるものではない。
【実施例3】
【0063】
実施例3は、薄物対象物を方形状の薄物対象物10’とし、薄物対象物10’の形状に合わせて実施例1,2とは異ならせた形状のリング状押さえ部材20’を用いた吸着保持装置A3とした例である。
【0064】
薄物対象物10’は、それぞれが長方形状であって、リング状押さえ部材20’による円形領域の内部に合計6個配置されている。つまり、図11の縦方向に3個配置した薄物対象物10’を、図11の横方向に2列配置することより合計6個としている。
【0065】
リング状押さえ部材20’は、図11及び図12に示すように、方形窓付き吸着部203と方形リブ部204を一体に有する。方形窓付き吸着部203は、薄物対象物10’に対応する6箇所に方形開口窓203aを形成したもので、方形開口窓203aを除いた円盤状吸着下面20eが吸着力発生部材30に対して静電吸着力により吸着固定される。方形リブ部204は、方形開口窓203aそれぞれの内面上部の全周部分から内径方向に突出して形成され、方形リブ部204が薄物対象物10’の表面の外周部全体を押さえる。そして、図11に示すように、薄物対象物10’の表面領域のうち、方形リブ部204を除いた領域が薄物対象物10’に対する加工面MS3(ハッチング領域)となる。なお、他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0066】
よって、実施例3の吸着保持装置A3は、真空成膜や高温プロセス装置で許容される吸着力発生部材30のサイズが薄物対象物10’のサイズよりも大きい場合の適用に有用である。そして、吸着保持装置A3では、リング状押さえ部材20’を静電吸着する吸着面積を、実施例1,2より遥かに広い面積に確保することができるため、リング状押さえ部材20’により薄物対象物10’の大きな反りを矯正することができる。
【0067】
なお、薄物対象物10’の大きな反りを矯正するとき、薄物対象物10’の形状(例えば、図11及び図12に示す長方形状)と薄物対象物10’の数量(例えば、図11及び図12に示す6個)」に制限されることがない。このため、薄物対象物10’の形状としては、長方形状に限定されることはなく円形状としても多角形状としても良い。また、薄物対象物10’の数量としては、6個に限定されることはなく、2個以上の数量であれば何個であっても良い。
【実施例4】
【0068】
実施例4は、吸着力発生部材30’として、磁界を用いて吸着力を発生する部材を用いた吸着保持装置A4とした例である。
【0069】
吸着力発生部材30’は、図13に示すように、磁界を用いて吸着力を発生する永久磁石や電磁石としている。そして、リング状押さえ部材20を、磁性体材料による部材としている。なお、他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0070】
よって、実施例4の吸着保持装置A4では、吸着力発生部材30’とリング状押さえ部材20との間で発生する磁界を用いてリング状押さえ部材20を磁力Fcにより吸着することで、薄物対象物10の反りが矯正されることになる。
【0071】
上記のように、実施例4の吸着保持装置A4にあっては、実施例1の(1)~(3)の効果に加え、下記の効果を奏する。
【0072】
(10) 吸着力発生部材30’を、磁界を用いて吸着力を発生する部材とし、
リング状押さえ部材20を、磁性体材料による部材とする。
このため、磁界を用いてリング状押さえ部材20を磁力吸着することで、薄物対象物10の反りを矯正することで、薄物対象物10の平面度を確保することができる。なお、吸着保持装置A4では、実施例1の対象物表面加工方法による(6)~(9)の効果を得ることも可能である。
【0073】
以上、本発明の吸着保持装置及び対象物表面加工方法を、実施例1~実施例4に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や構成の追加等は許容される。
【0074】
実施例1~4では、薄物対象物10,10’として、ICチップ(半導体集積回路)の材料となるウエハを用いる例を示した。しかし、薄物対象物としては、ウエハに限られることはなく、例えば、反りが問題になるフィルムの例であっても良いし、さらに、反りが問題になるウエハやフィルム以外の薄物対象物であっても良い。
【符号の説明】
【0075】
A1,A2,A3,A4 吸着保持装置
10,10’ 薄物対象物
10b 吸着面
20,20’ リング状押さえ部材
202,202’ リブ部
30,30’ 吸着力発生部材
40 吸着力制御部
50 膜付け装置(表面加工装置)
U1 薄物対象物保持ユニット
MS1,MS2,MS3 薄物対象物10の加工面
Fa,Fb 静電吸着力
Fc 磁力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13