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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/04 20060101AFI20240313BHJP
   G01G 23/01 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01G11/04
G01G23/01 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020051128
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148718
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122929(JP,A)
【文献】特開2011-085556(JP,A)
【文献】特開2008-296201(JP,A)
【文献】特開2013-101061(JP,A)
【文献】特開2006-322751(JP,A)
【文献】特開2008-145122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 11/00-11/20,23/01
B07C 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送可能な搬送部と、
前記搬送部に加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、
前記原信号に対しデジタルフィルタを適用して計量信号を生成し、前記計量信号に基づいて計量処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記搬送部の動作中に前記搬送部上に前記物品が位置していない場合、前記計量信号に基づいて計量精度を評価するための第1精度情報を生成し、生成した前記第1精度情報に基づいて前記計量部の異常を検知し、
複数のデジタルフィルタを予め記憶しており、
前記異常を検知した場合、前記第1精度情報の生成に適用した前記デジタルフィルタとは異なる前記デジタルフィルタを適用して、当該異なる前記デジタルフィルタでの前記計量精度を評価するための第3精度情報を生成し、
前記第1精度情報と前記第3精度情報との比較結果に基づいて、当該異なる前記デジタルフィルタ又は所定のデフォルトの前記デジタルフィルタの何れかを選択して前記計量処理を行う、計量装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1精度情報の生成後、前記計量精度の経時的変化を評価するための第2精度情報を更に生成し、前記第1精度情報と前記第2精度情報との比較結果に基づいて前記異常を検知する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記異常が検知された場合、前記異常の発生を報知する報知部を更に備える、請求項1又は2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記第1精度情報を生成した日時、前記第1精度情報の生成に適用した前記デジタルフィルタの種類、又は、前記異常の検知結果に関する検知結果情報を少なくとも含む処理情報を記憶する記憶部と、
前記処理情報を表示する表示部と、を更に備える、請求項1~の何れか一項に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を搬送可能な搬送部と、搬送部に加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、原信号に対しデジタルフィルタを適用して計量信号を生成し、計量信号に基づいて計量処理を行う処理部と、を備える計量装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-141670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような計量装置においては、設置場所に設置された際、例えば検査の開始前に零点の取得が行われる。零点の取得後、設置場所に設置されてから計量装置及びその周囲の状況(例えば、計量部の異常、計量装置自体の振動、及び外部から計量装置に伝達される振動等)が経時的に変化することによって、当初取得した零点に対して一定以上のずれ又はばらつきの悪化などの計量部の異常が生じることがある。このような計量部の異常は、例えば計量装置が物品の生産ラインに適用される場合にあっては、物品の生産の歩留まり等に影響を与えることがある。このように、計量装置の計量精度が経時的に低下することを抑制することが望まれている。
【0005】
本開示は、計量精度の経時的な低下に起因する生産性低下の抑制を図ることが可能となる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る計量装置は、物品を搬送可能な搬送部と、搬送部に加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、原信号に対しデジタルフィルタを適用して計量信号を生成し、計量信号に基づいて計量処理を行う処理部と、を備え、処理部は、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置していない場合、計量信号に基づいて計量精度を評価するための第1精度情報を生成し、生成した第1精度情報に基づいて計量部の異常を検知する。
【0007】
この計量装置によれば、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置していない場合、計量信号に基づいて計量精度を評価するための第1精度情報が生成される。生成された第1精度情報に基づいて、計量部の異常が検知される。このように、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置していない場合の第1精度情報を基準として用いて、計量装置及びその周囲の状況の経時的な変化(例えば床の振動の増大)を基準に対する精度情報の変化として捉えることで、基準に基づく検知を行わない場合と比べて、計量部の異常を早期に検知することができる。その結果、早期に計量部の異常を解消させて計量処理を再開することが可能となることから、計量精度の経時的な低下に起因する生産性低下の抑制を図ることが可能となる。
【0008】
処理部は、第1精度情報の生成後、計量精度の経時的変化を評価するための第2精度情報を更に生成し、第1精度情報と第2精度情報との比較結果に基づいて異常を検知してもよい。この場合、第1精度情報を基準として第2精度情報の評価を行うことで、熟練者でなくとも容易に計量精度の経時的変化を評価することができる。
【0009】
処理部は、複数のデジタルフィルタを予め記憶しており、異常を検知した場合、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタを適用して、当該異なるデジタルフィルタでの計量精度を評価するための第3精度情報を生成し、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいて、当該異なるデジタルフィルタ又は所定のデフォルトのデジタルフィルタの何れかを選択して計量処理を行ってもよい。この場合、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいてデジタルフィルタを自動的に切り替えることで、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタを用いると計量精度の異常が検知される場合であっても、第3精度情報の生成に適用したデジタルフィルタを用いることで計量処理を再開することが可能となる。その結果、計量処理の中断時間の短縮化が可能となる。
【0010】
上記計量装置は、異常が検知された場合、異常の発生を報知する報知部を更に備えてもよい。この場合、計量装置の使用者に計量部の異常の発生を認識させることができる。その結果、計量装置の使用者に計量部の異常を解消させることが促され、計量処理の早期再開を図ることが可能となる。
【0011】
上記計量装置は、第1精度情報を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類、又は、異常の検知結果に関する検知結果情報を少なくとも含む処理情報を記憶する記憶部と、処理情報を表示する表示部と、を更に備えてもよい。この場合、計量装置の使用者が処理情報を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、計量精度の経時的な低下に起因する生産性低下の抑制を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
図2】制御部の機能的な構成を示す図である。
図3図1の計量装置の第1精度情報生成処理を示すフローチャートである。
図4図1の計量装置の異常検知処理を示すフローチャートである。
図5図1の計量装置のデジタルフィルタ切替処理を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、原信号に含まれる波形を示す図である。図6(b)は、図6(a)に示される波形をフィルタリング処理した後の波形を示す図である。
図7図7(a)は、異常検知処理における標準偏差の経時変化例である。図7(b)は、計測処理における標準偏差の経時変化例である。
図8】変形例に係る計量装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る計量装置の概略構成図である。図1に示される計量装置1は、図1中の矢印の方向(以下、単に「搬送方向」とする)に測定対象物を搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される装置である。測定対象物は、例えば搬送方向に沿って延在する物品Pである。計量装置1は、搬送部2と、架台3と、計量部4と、操作部6とを備える。
【0016】
搬送部2は、物品Pを搬送方向に沿って搬送可能な搬送装置であり、例えばコンベアである。搬送部2は、例えば操作部6を介して指定された搬送速度にて、物品Pを搬送する。搬送速度は、操作部6を介して指定される。搬送部2は、第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとを備える。第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとのそれぞれは、例えば、ローラ、モータ等の回転体、及び搬送ベルトなどを有する。第1コンベア部2a、第2コンベア部2b及び第3コンベア部2cは、搬送方向の上流側から順番に配置される。すなわち、第2コンベア部2bは、搬送方向において第1コンベア部2aと第3コンベア部2cとの間に位置する。第1コンベア部2aは、第2コンベア部2bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部2aは、例えば、図示しない金属検出機等を有してもよい。第2コンベア部2bは、第1コンベア部2aから搬送された物品Pを第3コンベア部2cに搬入するコンベアである。第3コンベア部2cは、第2コンベア部2bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部2cは、例えば、重量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)を有する。
【0017】
第2コンベア部2bには、計量部4が装着されている。このため、搬送部2にて搬送される物品Pは、第2コンベア部2b上にて計量される。また、第2コンベア部2bの上流側及び下流側のそれぞれには、物品Pの有無を検知するセンサが設けられてもよい。この場合、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているか否かを容易に判断できる。
【0018】
架台3は、計量部4を収容する部材であり、搬送部2の下方にて床Fに固定される。架台3は、計量部4を収容する本体3a、及び本体3aと床Fとの間に位置する複数の脚3bを有する。図1においては、本体3aは破線にて示される。
【0019】
計量部4は、第2コンベア部2b上に位置する物品Pの重量を計量する検出器であり、例えば搬送部2の中央部に位置する。計量部4は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体11と、第2コンベア部2b上に位置する物品Pを計量する計量セル12とを備える。起歪体11は、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部11aと、架台3に固定される固定剛体部11bとを有する。可動剛体部11aと固定剛体部11bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部11aの一端は第2コンベア部2bの上流側端部に接続され、可動剛体部11aの他端は計量セル12に接続される。固定剛体部11bの一端は計量セル12に接続され、固定剛体部11bの他端は架台3の本体3aに接続される。図示しないが、計量セル12では、起歪体11に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される。
【0020】
本実施形態では、計量部4は、起歪体11及び計量セル12に加えて、A/D変換部を有する。計量セル12は、起歪体11から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。この電気信号は、第2コンベア部2bに加わる力の計量成分に対応するアナログ原信号である。このアナログ原信号は、A/D変換部によってデジタル原信号に変換される。計量部4は、当該デジタル原信号を外部に出力する(以下、単に「原信号」と記す)。これにより、計量部4から操作部6へ出力するデータ量を低減できる。
【0021】
計量部4は、第2コンベア部2bに加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する。計量成分とは、第2コンベア部2bに加わる力(負荷)の鉛直下向き方向の成分である。搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合、計量装置1によって発生する振動による力、及び、計量装置1の周囲によって発生する振動による力が、第2コンベア部2bに加わる。計量装置1によって発生する振動には、搬送部2の動作に伴う振動、物品Pが搬送部2に搬送されるときに生じる振動等が含まれる計量装置1の周囲によって発生する振動には、例えば、計量装置1が載置される床面から伝達される振動(床振動)等が含まれる。床振動は、例えば、計量装置1を含む物品Pの製造ラインに設置される装置、当該製造ラインには含まれていない装置等に起因した振動である。搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置している場合、計量装置1によって発生する振動による力、及び、計量装置1の周囲によって発生する振動による力に加えて、物品Pに働く重力による力が、第2コンベア部2bに加わる。
【0022】
操作部6は、搬送部2及び計量部4を操作するための制御盤であり、例えば第2コンベア部2bの近傍に立設される。操作部6は、表示インターフェース7と、制御部8と、報知灯9と、スピーカ10と、を有する。
【0023】
表示インターフェース7は、制御部8から出力される各種情報を表示する部材(表示部)である。表示インターフェース7は、例えば、計量された物品Pの重量を示す計量値、物品Pの計量精度を示す精度情報、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの搬送頻度、物品Pの計量ピッチ等を表示する。制御部8から出力される各種情報には、計量信号に基づいて計量精度を評価するための第1精度情報(後述)を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類、及び、計量部4の異常の検知結果に関する検知結果情報といった処理情報が含まれる。検知結果情報には、計量部4の異常の検知結果が「計量部4の異常の検知あり」又は「計量部4の異常の検知なし」との情報を少なくとも含む。本実施形態では、表示インターフェース7は、外部入力部として機能するタッチパネル7aを有する。これにより、表示インターフェース7が作業者(使用者)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部8に出力される。入力情報は、例えば、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの種類、物品Pの搬送頻度等に関するデータである。物品Pの搬送頻度は、例えば計量装置1の上流に位置する生産機の能力に基づいて設定される。
【0024】
物品Pの計量値と、精度情報とのそれぞれは、計量部4から操作部6に出力される計量信号に基づいて得られるデータである。また、物品Pの計量ピッチは、搬送部2の搬送速度、物品Pの上記寸法、物品Pの搬送頻度に基づき、制御部8によって算出される。
【0025】
制御部8は、計量装置1に含まれる各部材を制御するコントローラであり、操作部6に内蔵される。制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部8は、例えば、表示インターフェース7を介して指定された搬送部2の搬送速度を制御する動作信号を、搬送部2へ出力する。また、例えば、第3コンベア部2cに振分機が設けられている場合であって、制御部8が物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断した場合、制御部8は、当該物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。制御部8は、計量装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する。制御部8による各種信号の演算の例として、物品Pの計量結果の導出が挙げられる。制御部8は、例えば、搬送部2に制御信号を出力するための駆動回路、計量部4にて生成される計量信号から物品Pの計量値を演算するための駆動回路、当該計量信号から上記精度情報を演算するための駆動回路、各信号及び各情報を記憶する記憶回路等を有する。すなわち、制御部8は、原信号に対しデジタルフィルタを適用して計量信号を生成し、計量信号に基づいて計量処理を行う処理部である。計量処理は、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合の物品Pの計量値を生成する処理を意味する。
【0026】
報知灯9は、計量装置1の運転状況等に応じて光を発するシグナルタワーである。報知灯9は、例えば、赤色、黄色及び緑色の光を発することができる。スピーカ10は、計量装置1の運転状況等に応じて音(例えばブザー音)を発する。表示インターフェース7及び報知灯9は、計量装置1の運転状況等に応じて、光を発する報知部として機能する。スピーカ10は、計量装置1の運転状況等に応じて、音を発する報知部として機能する。
【0027】
計量装置1の運転状況には、第1精度情報の生成後に生じた計量部4の異常が含まれる。計量部4の異常には、計量の基準となる重量値(いわゆる零点)の異常が含まれる。第1精度情報の生成は、計量装置1の設置場所(例えば計量装置1を含む物品Pの製造ライン等)に設置された際に、物品Pの製造及び計量の前(例えば重量検査の開始前)に行われる。計量部4の異常としては、例えば、生成した第1精度情報に対して所定のマージンを見込んだ許容範囲を超えて精度情報がばらつく状態であってもよい。計量部4の異常が生じると、計量装置1の計量精度が経時的に低下していることになる。
【0028】
図2は、制御部の機能的な構成を示す図である。図2に示されるように、制御部8は、受信部21と、フィルタ部22と、演算部23と、出力部24と、記憶部25と、を有する。
【0029】
受信部21は、例えば、計量部4から出力される計量信号と、表示インターフェース7から送信される入力情報とを受信する部分である。計量部4から受信部21への計量信号の出力と、表示インターフェース7から受信部21への入力情報の送信とのそれぞれは、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。受信部21は、計量信号及び入力情報以外のデータを受信してもよい。
【0030】
フィルタ部22は、予め記憶される複数のデジタルフィルタを用いて、原信号をフィルタリング処理する部分である。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、予め定められた周波数を超える周波数成分を減衰させるローパスフィルタ、搬送部2に含まれる回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)等から構成される。すなわち、複数のデジタルフィルタの少なくとも一部を選択した場合、フィルタ部22は、原信号に対して多段階のフィルタリング処理を実施できる。各デジタルフィルタには、一又は複数のローパスフィルタ、一又は複数のノッチフィルタが含まれ得る。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、互いに周波数帯の減衰量の異なるローパスフィルタを含んでもよいし、互いに異なる周波数帯を減衰させるノッチフィルタを含んでもよい。上記複数のローパスフィルタは、例えば特許5901126号等に記載される可変フィルタであってもよい。
【0031】
フィルタ部22は、計量処理として、搬送部2の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、複数のデジタルフィルタのうち事前に選択された一のデジタルフィルタを用いて、原信号をフィルタリング処理する。そして、フィルタ部22は、フィルタリング処理後の信号(計量信号)を生成する。得られた計量信号は、例えば図1に示される制御部8に含まれる演算部23、記憶部25等に出力される。計量信号は、物品Pの重量を演算する計量処理を行うために整えられた波形を有する。
【0032】
フィルタ部22は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないとき(以下、「搬送部2の空運転中」とも称する)に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する。換言すると、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用するフィルタリング処理を実施する。これにより、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果となる複数の計量信号を生成する。そして、フィルタ部22は、複数の計量信号を演算部23、記憶部25等に出力する。なお、搬送部2が空運転中か否かは、作業者によって判断されてもよいし、自動で判断されてもよい。例えば、搬送部2が動作中であって、計量装置1に設けられる物品検知用のセンサの非検知状態が所定時間以上継続しているとき等に、搬送部2が空運転中であると自動で判断されてもよい。
【0033】
本実施形態では、表示インターフェース7を介して指定された実施予定の搬送速度にて搬送部2を空運転したときに計量部4から出力される信号は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないときに得られる原信号に相当する。例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、上記原信号に対して、第1フィルタ~第3フィルタのそれぞれにてフィルタリング処理を実施する。これにより、第1フィルタが適用されることによって得られる第1計量信号と、第2フィルタが適用されることによって得られる第2計量信号と、第3フィルタが適用されることによって得られる第3計量信号とが得られる。
【0034】
演算部23は、入力された各種情報を演算処理する部分である。演算部23は、計量処理として、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合において、フィルタ部22から出力される計量信号に基づいて物品Pの重量を演算する計量処理を行う。これにより、演算部23は、物品Pの計量値を生成する。演算部23は、生成された計量値を出力部24に出力する。演算部23は、入力された搬送部2の搬送速度、物品Pの寸法及び搬送頻度によって物品Pの計量ピッチ(計量間隔)を演算する。演算部23は、上記計量値に基づいて、物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱しているか否かを判断する。この判断結果に応じて、演算部23は、例えば振分機に動作信号を出力する。
【0035】
演算部23は、計量装置1の設置場所に設置された際の物品Pの製造及び計量の前において、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないときに得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。本実施形態では、演算部23は、まず、計量装置1の設置場所に設置された際の物品Pの製造及び計量の前における搬送部2の空運転中に得られた複数の計量信号に基づく複数の精度情報を生成する。続いて、演算部23は、複数の精度情報を比較する。ここでは、複数の計量信号のうち最も適切な精度情報である第1精度情報は、計量信号に基づいて計量精度を評価するための精度情報である。演算部23は、最も適切な精度情報を第1精度情報として判定する。続いて、演算部23は、第1精度情報に対応するデジタルフィルタを選択する。
【0036】
精度情報は、例えば、計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出される。この算出結果は、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該標準偏差に基づくパラメータでもよい。ここでの第1精度情報は、計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差σである。演算部23は、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用して得られる波形毎の振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差が得られるデジタルフィルタを第1精度情報として選択する。例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、演算部23は、第1計量信号に含まれる波形の振幅の第1標準偏差と、第2計量信号に含まれる波形の振幅の第2標準偏差と、第3計量信号に含まれる波形の振幅の第3標準偏差とを算出する。続いて、演算部23は、第1標準偏差、第2標準偏差及び第3標準偏差のうち、最も小さい値である標準偏差σを第1精度情報として特定する。そして、演算部23は、第1精度情報を有する計量信号にて適用されたデジタルフィルタを選択する。そして、演算部23は、第1精度情報及び選択されたデジタルフィルタに関する情報として、第1精度情報を生成した日時、及び第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類を記憶部25に出力する。記憶部25は、第1精度情報を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類を記憶する。
【0037】
計量信号に含まれる波形は、計量装置1及びその周囲によって発生する振動を含む。当該振動は、物品Pの計量に対するノイズになる。このため、当該波形の振幅の標準偏差が小さいほど、物品Pの計量に対するノイズが小さいと判断できる。
【0038】
ここで、演算部23は、記憶された第1精度情報に基づいて、第1精度情報の生成後に生じた計量部4の異常を検知する異常検知処理を行う。異常検知処理に用いる計量信号は、物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間であってもよく、例えば、複数種類の物品Pの重量検査の合間の期間などが該当する。
【0039】
演算部23は、例えば、第1精度情報の生成後、計量精度の経時的変化を評価するための第2精度情報を更に生成する。第2精度情報は、第1精度情報を基準として用いて計量部4の異常を検知するための精度情報である。第2精度情報は、例えば、第1精度情報の生成後の計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出される。この算出結果は、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該標準偏差に基づくパラメータでもよい。第2精度情報は、第1精度情報の生成後の計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差σである。第2精度情報の標準偏差σは、第1精度情報の生成後の(例えば物品Pの生産開始後)、予め設定された一定の標準偏差取得期間における計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差とすることができる。一定の標準偏差取得期間は、第1精度情報の生成後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の連続的又は断続的な延べ期間に対応し、特に限定されないが、例えば延べ30分であってもよい。一例として、標準偏差σは、標準偏差取得期間に1分間当たり100回で計量信号に含まれる波形の振幅の値をサンプリングしたデータ(ここでは3000個)を用いて計算された標準偏差としてもよい。
【0040】
演算部23は、異常検知処理として、第1精度情報と第2精度情報との比較結果に基づいて、計量部4の異常を検知してもよい。演算部23は、例えば、第1精度情報の標準偏差σと第2精度情報の標準偏差σとを比較して、標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th1よりも標準偏差σが大きい場合、計量部4の異常を検知する。演算部23は、例えば、標準偏差σが閾値Th1以下である場合、計量部4の異常を検知しない。所定マージンとしては、例えば、1.5~3.0程度の所定の係数とすることができる。なお、出力部24は、演算部23が計量部4の異常を検知した場合、計量装置1を停止させてもよいし、必ずしも計量装置1を停止させなくてもよい。また、出力部24は、第2精度情報の標準偏差σをグラフ化してタッチパネル7aに表示させてもよい。この場合、出力部24は、第1精度情報の標準偏差σを更にタッチパネル7aに表示させてもよい。
【0041】
演算部23は、異常検知処理によって計量部4の異常を検知した場合、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタから計量部4の異常を検知しないようなデジタルフィルタに自動的に切り替えてもよい。演算部23は、例えば、異常検知処理によって計量部4の異常を検知した場合、計量部4の異常を検知後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号に基づいて、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタを適用して当該異なるデジタルフィルタでの計量精度を評価するための第3精度情報を生成する。この場合の原信号は、計量部4の異常を検知した時点よりも後の原信号であってもよい。
【0042】
演算部23は、例えば、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいて、当該異なるデジタルフィルタ又は所定のデフォルトのデジタルフィルタの何れかを選択して計量処理を行う。第3精度情報は、計量部4の異常の検知に伴って第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタでの計量精度を評価するための精度情報である。第3精度情報は、例えば、計量部4の異常を検知後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出される。この算出結果は、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該標準偏差に基づくパラメータでもよい。第3精度情報は、計量部4の異常を検知後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差σである。第3精度情報の標準偏差σは、例えば、計量部4の異常の検知後、上述の標準偏差σでの手法と同様にして、物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の標準偏差取得期間における計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差とすることができる。
【0043】
演算部23は、例えば、第1精度情報の標準偏差σと第3精度情報の標準偏差σとを比較して、標準偏差σが標準偏差σ以下である場合、第3精度情報の生成に適用したデジタルフィルタに切り替える。演算部23は、例えば、標準偏差σが標準偏差σよりも大きい場合、デフォルトのデジタルフィルタに切り替える。なお、デフォルトのデジタルフィルタは、複数のデジタルフィルタのうち、標準設定にて用いられるデジタルフィルタであり、特定条件での計量信号の収束性を優先させるというよりも、広範な条件で汎用的に使用可能な収束性を有するデジタルフィルタである。なお、上述した演算部23によるデジタルフィルタの切替処理は、自動的に行われてもよいし、作業者によるタッチパネル7a等への入力操作に応じて行われてもよい。入力操作に応じて行われる場合、出力部24は、例えば所定の文字及び/又は画像等をタッチパネル7aに表示させて、計量装置1の作業者に入力操作を行うように促してもよい。
【0044】
出力部24は、例えば、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号と、記憶部25に記憶される各種情報及び各種信号を外部に出力する。出力部24は、例えば、物品Pの計量値、精度情報、第1精度情報及び計量ピッチなどを表示情報として表示インターフェース7に出力する。出力部24は、例えば、第1精度情報を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類、又は、異常の検知結果に関する検知結果情報を少なくとも含む処理情報を表示情報として表示インターフェース7に出力する。出力部24は、搬送部2の搬送速度を制御するための動作信号を搬送部2に出力し、振分機に対する動作信号を当該振分機に出力する。出力部24から搬送部2への動作信号の出力等は、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。
【0045】
出力部24は、異常検知処理によって計量部4の異常が検知された場合、表示インターフェース7、報知灯9、及びスピーカ10の少なくとも1つに出力して計量部4の異常の発生を報知させてもよい。計量部4の異常の発生の報知としては、例えば、報知灯9の点灯、スピーカ10のブザー音、タッチパネル7aの画面表示、及び、遠隔端末への通知等で実施することができる。
【0046】
記憶部25は、表示インターフェース7を介して入力される入力情報と、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号とを記憶する。記憶部25は、複数のデジタルフィルタを予め記憶する。記憶部25は、例えば、第1精度情報を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類、又は、異常の検知結果に関する検知結果情報を少なくとも含む処理情報を記憶する。記憶部25は、例えば、第1精度情報の標準偏差σを記憶する。記憶部25は、第2精度情報の標準偏差σ及び第3精度情報の標準偏差σを記憶してもよい。
【0047】
次に、図3図5を参照しながら計量装置1の制御部8による各処理について説明する。図3は、計量装置1の第1精度情報生成処理を示すフローチャートである。図3の処理は、計量装置1の設置場所(例えば計量装置1を含む物品Pの製造ライン等)に設置された際に、物品Pの製造及び計量の前(例えば重量検査の開始前)に行われる。
【0048】
まず、搬送部2の搬送速度を決定する(ステップS01)。ステップS01では、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度が指定される。このとき、作業者は、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度自体を入力してもよいし、物品Pの搬送頻度を入力してもよい。
【0049】
物品Pが搬送されていない状態にて搬送部2を動作させたとき(搬送部2の空運転時)の原信号を取得する(ステップS02)。ステップS02では、例えば、計量部4は、物品Pを計量する前に指定された搬送速度にて搬送部2を約5秒間空運転させたときの原信号を取得する。取得された原信号は、制御部8に出力される。
【0050】
取得された原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する(ステップS03)。ステップS03では、フィルタ部22が、上記原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用してフィルタリング処理する。これにより、フィルタ部22は、複数の計量信号を取得する。
【0051】
フィルタリング処理後の波形毎の振幅の標準偏差を比較する(ステップS04)。ステップS04では、まず、演算部23は、複数の計量信号のそれぞれに含まれる波形の振幅の標準偏差を演算する。続いて、演算部23は、各標準偏差の大小を比較する。ここでは、演算部23は、複数の標準偏差の内、最も小さい標準偏差(第1精度情報の標準偏差σ)が得られる波形を決定する。
【0052】
複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する(ステップS05)。ステップS05では、演算部23は、最も小さい標準偏差が得られる波形を有する計量信号を生成するために用いたデジタルフィルタを選択する。その後、第1精度情報を記憶する(ステップS06)。ステップS06では、記憶部25は、標準偏差σを第1精度情報として記憶する。以上により、指定された搬送速度にて物品Pを計量するときに用いられるデジタルフィルタが自動で設定予約される。
【0053】
図4は、計量装置1の異常検知処理を示すフローチャートである。図4の処理は、第1精度情報の生成後、例えば、第1精度情報の生成後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中の期間に行われる。
【0054】
物品Pが搬送されていない状態にて搬送部2を動作させたときの原信号を取得する(ステップS11)。ステップS11では、例えば、計量部4は、上記指定された搬送速度にて搬送部2を約5秒間運転させたときかつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号を取得する。取得された原信号は、制御部8に出力される。
【0055】
原信号に対して、例えば第1精度情報の生成に用いたものと同一のデジタルフィルタを適用して第2精度情報を生成する(ステップS12)。ステップS12では、演算部23は、第1精度情報の生成後の物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号に基づいて、第1精度情報の生成に用いたものと同一のデジタルフィルタを適用して第2精度情報を生成する。
【0056】
第1標準偏差(第1精度情報の標準偏差σ)と第2標準偏差(第2精度情報の標準偏差σ)との比較を行う(ステップS13)。ステップS13では、演算部23は、例えば、標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th1と、標準偏差σとを比較する。
【0057】
第1標準偏差に所定マージンを乗算した閾値Th1よりも第2標準偏差が大きいか否かを判定する(ステップS14)。演算部23は、例えば、第1標準偏差に所定マージンを乗算した閾値Th1よりも第2標準偏差が大きい場合(ステップS14:YES)、異常を検知する(ステップS15)。一方、演算部23は、例えば、第2標準偏差が閾値Th1以下である場合(ステップS14:NO)、異常を検知することなく、そのまま図4の処理を終了する。
【0058】
ここでは、異常の検知に伴って自動的にデジタルフィルタの切替えを行う(ステップS16)。ステップS16では、具体的には図5に示されるデジタルフィルタ切替処理が行われる。
【0059】
図5は、計量装置1のデジタルフィルタ切替処理を示すフローチャートである。図5に示されるように、異常の検知後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号を取得する(ステップS21)。ステップS21では、例えば、計量部4は、上記指定された搬送速度にて搬送部2を約5秒間運転させたときかつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号を取得する。取得された原信号は、制御部8に出力される。
【0060】
原信号に対して第1精度情報の生成に用いたものと異なるデジタルフィルタを適用して第3精度情報を生成する(ステップS22)。ステップS22では、演算部23は、異常の検知後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間の原信号に基づいて、第1精度情報の生成に用いたものとは異なるデジタルフィルタを適用して第3精度情報を生成する。
【0061】
第1標準偏差(第1精度情報の標準偏差σ)と第3標準偏差(第3精度情報の標準偏差σ)との比較を行う(ステップS23)。ステップS23では、演算部23は、例えば、第1精度情報の標準偏差σと第3精度情報の標準偏差σとを比較する。
【0062】
第3標準偏差が第1標準偏差以下である否かを判定する(ステップS24)。演算部23は、例えば、第3標準偏差が第1標準偏差以下である場合(ステップS24:YES)、第3精度情報に適用されたデジタルフィルタに切り替える(ステップS25)。一方、演算部23は、例えば、第3標準偏差が第1標準偏差よりも大きい場合(ステップS24:NO)、デフォルトのデジタルフィルタに切り替える。
【0063】
図4に戻り、計量部4の異常の発生の報知を行う(ステップS17)。ステップS17では、出力部24は、例えば、表示インターフェース7、報知灯9、及びスピーカ10の少なくとも1つに出力して計量部4の異常の発生を報知させる。計量部4の異常の発生の報知として、例えば、報知灯9の点灯、スピーカ10のブザー音、タッチパネル7aの画面表示、及び、遠隔端末への通知等が実施される。
【0064】
次に、計量装置1の動作について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6(a)は、原信号に含まれる波形を示す図である。図6(b)は、図6(a)に示される波形をフィルタリング処理した後の波形を示す図である。
【0065】
図6(a)には、搬送部2を所定速度にて搬送したときに計量装置1の計量部4によって取得される物品Pの重量を算出するための原信号の波形51が示される。当該波形には、計量装置1及びその周囲に起因するノイズ等を含む。このため、通常、当該波形にフィルタリング処理を実施することによって、上記ノイズの除去を図る。
【0066】
図6(b)には、波形51を複数のデジタルフィルタでフィルタリング処理した後の波形52,53が示される。波形52は、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを適用して得られた波形である。波形53は、複数のデジタルフィルタのうち波形52に適用されたデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタを適用して得られた計量信号の波形である。図6(b)によれば、波形53のノイズは、波形52よりも除去されている傾向にある。よって、計量装置1が上記所定速度にて物品Pの重量を計量するとき、波形52に適用されたデジタルフィルタよりも波形53に適用されたデジタルフィルタの方が、図6の条件では適切であり、物品Pの重量のばらつきが小さく計量されると推定される。よって、波形53に適用されたデジタルフィルタが第1精度情報に対応するデジタルフィルタとして選択され、波形53の振幅の標準偏差が第1精度情報の標準偏差σとして記憶部25に記憶される。
【0067】
図7(a)は、異常検知処理における標準偏差の経時変化例である。図7(a)には、第1精度情報の標準偏差σと、標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th1と、第2精度情報の標準偏差σと、が示されている。時刻t1~t6は、それぞれ、第1精度情報の生成後であって物品Pの生産開始後に搬送部2の動作中かつ物品Pが第2コンベア部2b上に位置していない間の期間に含まれる時刻である。時刻t1~t6は、例えば、複数の重量検査の合間の空運転の期間における空運転が終了する時刻(物品検知用のセンサが検知状態となった時刻)であってもよい。
【0068】
図7(a)では、時刻t1~t5において、第2精度情報の標準偏差σが、標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th1以下となっている。そのため、時刻t1~t5においては計量部4の異常は検知されていない。しかし、設置場所に設置されてから計量装置1及びその周囲の状況(例えば、計量部4の異常、計量装置1自体の振動、及び外部から計量装置1に伝達される振動等)が経時的に増加することで、第2精度情報の標準偏差σが経時的に増加している。これにより、時刻t6において、零点からの精度情報のばらつきに相当する標準偏差σが、当初取得した標準偏差σから一定以上増加して閾値Th1を超えることとなる。すなわち、時刻t6において、第2精度情報の標準偏差σが、標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th1よりも大きくなった結果、時刻t6において計量部4の異常が検知される。
【0069】
ちなみに、搬送部2の空運転中に着目しての計量部4の異常の検知とは別に、制御部8は、計測処理において(つまり、搬送部2の動作中、且つ、物品Pの搬送中において)第1コンベア部2aから搬送される物品Pの第2コンベア部2bへの乗り継ぎノイズの増大異常(デジタルフィルタの設定が不適切との異常)、及び、物品重量ばらつきの異常(例えば、計量装置1の上流に位置する生産機の異常に起因する、物品Pの重量自体のばらつき増大異常)を検知してもよい。これらの異常は、例えば、搬送部2の動作中且つ物品Pの搬送中における原信号に基づいて生成された計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差が当初取得した標準偏差σから一定以上増大した場合に、検知されてもよい。
【0070】
図7(b)は、計測処理における標準偏差の経時変化例である。図7(b)には、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないとき(空運転中)における原信号に基づいて得られた第1精度情報の標準偏差σと、第1精度情報の標準偏差σに所定マージンを乗算した閾値Th2と、搬送部2の動作中且つ物品Pの搬送中における原信号に基づいて第1精度情報の取得後で得られた標準偏差σPbと、が示されている。
【0071】
図7(b)では、一例として、物品Pの搬送ごとに標準偏差σPbが算出されている。例えば、時刻t10,t12,t14,t16はそれぞれ物品検知用のセンサが検知状態となった時刻に相当し、時刻t11,t13,t15,t17はそれぞれ物品検知用のセンサが非検知状態となった時刻に相当する。すなわち、時刻t10~t11,t12~t13,t14~t15,t16~t17の各期間は、それぞれ物品Pが第2コンベア部2b上に位置している。なお、標準偏差σPbの算出タイミングは、これに限定されない。
【0072】
図7(b)では、時刻t11,t13,t15で算出された標準偏差σPbが、閾値Th2以下となっている。そのため、時刻t11,t13,t15においては乗り継ぎノイズの増大異常及び物品重量ばらつきの異常は検知されていない。しかし、第1コンベア部2aから搬送される物品Pの第2コンベア部2bへの乗り継ぎノイズ、及び/又は、計量装置1の上流に位置する生産機における物品Pの重量自体のばらつきが経時的に増加することで、標準偏差σPbが経時的に増加している。これにより、時刻t17において、標準偏差σPbが閾値Th2を超えることとなる。すなわち、時刻t17において物品計測異常が検知される。
【0073】
以上説明したように、計量装置1によれば、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合、計量信号に基づいて計量精度を評価するための第1精度情報が生成される。生成された第1精度情報に基づいて、計量部4の異常が検知される。このように、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合の第1精度情報を基準として用いて、計量装置1及びその周囲の状況の経時的な変化(例えば床の振動の増大)を基準に対する精度情報の変化として捉えることで、基準に基づく検知を行わない場合と比べて、計量部4の異常を早期に検知することができる。その結果、早期に計量部4の異常を解消させて計量処理を再開することが可能となることから、計量精度の経時的な低下に起因する生産性低下の抑制を図ることが可能となる。
【0074】
制御部8は、第1精度情報の生成後、計量精度の経時的変化を評価するための第2精度情報を更に生成し、第1精度情報と第2精度情報との比較結果に基づいて異常を検知するる。これにより、第1精度情報を基準として第2精度情報の評価を行うことで、熟練者でなくとも容易に計量精度の経時的変化を評価することができる。
【0075】
制御部8は、複数のデジタルフィルタを予め記憶しており、異常を検知した場合、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタとは異なるデジタルフィルタを適用して、当該異なるデジタルフィルタでの計量精度を評価するための第3精度情報を生成し、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいて、当該異なるデジタルフィルタ又は所定のデフォルトのデジタルフィルタの何れかを選択して計量処理を行う。これにより、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいてデジタルフィルタを自動的に切り替えることで、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタを用いると計量精度の異常が検知される場合であっても、第3精度情報の生成に適用したデジタルフィルタを用いることで計量処理を再開することが可能となる。その結果、計量処理の中断時間の短縮化が可能となる。
【0076】
計量装置1は、異常が検知された場合、異常の発生を報知する報知部として、報知灯9及びスピーカ10をを更に備えている。これにより、計量装置1の使用者に計量部4の異常の発生を認識させることができる。その結果、計量装置1の使用者に計量部4の異常を解消させることが促され、計量処理の早期再開を図ることが可能となる。
【0077】
計量装置1は、第1精度情報を生成した日時、第1精度情報の生成に適用したデジタルフィルタの種類、又は、異常の検知結果に関する検知結果情報を少なくとも含む処理情報を記憶する記憶部25と、処理情報を表示する表示インターフェース7のタッチパネル7aと、を更に備えている。これにより、計量装置1の使用者が処理情報を容易に確認することができる。
【0078】
以上、本開示に係る計量装置の実施形態及びその変形例について説明したが、本開示は、上記実施形態及び上記変形例に限定されない。例えば、計量装置1は、図8に示される計量装置1Aのように変形することができる。計量装置1Aの説明において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0079】
図8は、変形例に係る計量装置1Aの概略構成図である。図8に示されるように、計量装置1Aは、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を計量するための装置であり、第1計量部4A及び第2計量部5を有する。第1計量部4Aは、第2コンベア部2bの上流側に位置する。第2計量部5は、第2コンベア部2bの下流側に位置し、起歪体31と計量セル32とを有する。起歪体31は、起歪体11と同様に、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部31aと、架台3に固定される固定剛体部31bとを有する。
【0080】
搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品P1が搬送されていないとき、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とのそれぞれに対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、第1原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタと、第2原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタとは、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2による物品P1の搬送中、第1計量部4Aから出力される原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号と、第2計量部5から出力される原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号とを合算する。これにより得られた合算計量信号に基づいて第1精度情報の標準偏差σ、第2精度情報の標準偏差σ、及び第3精度情報の標準偏差σが算出され、上記実施形態と同様にして、第1精度情報生成処理、異常検知処理、及びデジタルフィルタ切替処理が行われる。また、制御部8の演算部23は、合算計量信号に基づいて、物品P1の計量値を生成する。
【0081】
もしくは、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号との合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、制御部8は、まず、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とを合算した合算原信号を生成する。そして、演算部23は、当該合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2による物品P1の搬送中、第1計量部4Aから出力される原信号と、第2計量部5から出力される原信号とを合算する。これに得られた合算原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号に基づいて、第1精度情報の標準偏差σ、第2精度情報の標準偏差σ、及び第3精度情報の標準偏差σが算出され、上記実施形態と同様にして、第1精度情報生成処理、異常検知処理、及びデジタルフィルタ切替処理が行われる。また、制御部8の演算部23は、合算原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号に基づいて、物品Pの計量値を生成する。
【0082】
このような計量装置1Aにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、計量装置1Aによれば、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を精度よく計量できる。
【0083】
上記実施形態及び上記変形例では、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出されるが、これに限られない。例えば、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の任意の点の値に基づいて算出されてもよい。また、例えば、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる計量信号に含まれる波形の零点(例えば計量信号の平均値)の偏りに基づいて算出されてもよいし、標準偏差及び偏りの双方に基づいて算出されてもよい。また、例えば、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の微分値の標準偏差自体でもよい。これらの場合、計量装置に物品を搬送するときに生じる振動の影響を小さくできる。したがって、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がよりされやすくなる。もしくは、精度情報は、原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の二次微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の二次微分値の標準偏差自体でもよい。あるいは、精度情報は、上記波形の振幅の最大値から当該振幅の最小値を減じることによって、算出されてもよい。この場合、精度情報を容易に算出できる。
【0084】
上記実施形態及び上記変形例では、計量部は、デジタル信号を原信号とし、外部に出力するが、これに限られない。計量部は、取得したアナログ信号を原信号として外部に出力してもよい。この場合、例えば制御部がアナログ信号をデジタル変換してもよい。
【0085】
上記実施形態及び上記変形例では、第1精度情報の生成に適用したものと同一のデジタルフィルタを原信号に適用して得られた計量信号について第2精度情報を生成し、第1精度情報と第2精度情報との比較結果に基づいて、異常を検知したが、これに限定されない。例えば、第2精度情報を生成する際、第1精度情報の生成に適用したものと異なるデジタルフィルタを原信号に適用してもよいし、デジタルフィルタを原信号に適用しなくてもよい。
【0086】
上記実施形態及び上記変形例では、第1精度情報の生成に適用したものとは異なるデジタルフィルタを原信号に適用して得られた計量信号について第3精度情報を生成し、第1精度情報と第3精度情報との比較結果に基づいて、デジタルフィルタ切替処理を行ったが、これに限定されない。例えば、必ずしも第3精度情報を生成しなくてもよい。この場合、自動的にデフォルトのデジタルフィルタに切り替えられてもよい。あるいは、デジタルフィルタ切替処理自体が省略されてもよい。この場合、図4のステップS16及び図5の処理は省略されてもよい。
【0087】
上記実施形態及び上記変形例では、計量装置1,1Aは報知部としてタッチパネル7a、報知灯9及びスピーカ10を備えていたが、これらの一部が省略されてもよい。また、これらが全て省略されてもよい。この場合、図4のステップS17は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1A…計量装置、2…搬送部、3…架台、4…計量部、4A…第1計量部(計量部)、5…第2計量部(計量部)、6…操作部、7…表示インターフェース(表示部)、8…制御部(処理部)、9…報知灯(報知部)、10…スピーカ(報知部)、11,31…起歪体、11a,31a…可動剛体部、11b,31b…固定剛体部、12,32…計量セル、21…受信部、22…フィルタ部(処理部)、23…演算部(処理部)、24…出力部、25…記憶部、P,P1…物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8