(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】オイルフィラーキャップの着脱工具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/50 20060101AFI20240313BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20240313BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B25B13/50 C
B60K15/05 A
F01M11/04 B
(21)【出願番号】P 2020075785
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】寺谷 大樹
【審査官】鈴木 崇文
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3071358(JP,U)
【文献】特開2016-198866(JP,A)
【文献】特開平11-257320(JP,A)
【文献】実開昭57-016009(JP,U)
【文献】特開2016-080087(JP,A)
【文献】特開昭59-106713(JP,A)
【文献】特開2018-188068(JP,A)
【文献】実開平05-080682(JP,U)
【文献】特開2019-043507(JP,A)
【文献】特開2004-276156(JP,A)
【文献】実開昭57-080609(JP,U)
【文献】実開昭55-028766(JP,U)
【文献】実開昭54-104351(JP,U)
【文献】実開昭48-111552(JP,U)
【文献】米国特許第08826780(US,B1)
【文献】英国特許出願公開第02541801(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/50
B60K 15/05
F01M 11/04
B65D 41/04
B67B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルの給油口に締結される締結部と、該締結部の回転軸方向と直交する方向に延びるつまみ部とを有するオイルフィラーキャップを着脱する、オイルフィラーキャップの着脱工具であって、
作業者が回転操作する操作部と、
前記操作部と一体に設けられ、前記オイルフィラーキャップの取り付け時及び取り外し時に前記つまみ部と係合する係合部と、
前記操作部に設けられ、前記給油口から取り外された前記オイルフィラーキャップが載置される載置部と、を備え
、
前記操作部は、筒軸方向の一端部に開口部が設けられた筒状をなし、
前記係合部は、前記操作部の前記筒軸方向の他端側に設けられ、
前記載置部は、前記開口部及び前記操作部における前記開口部の周縁部を含んで構成されているとともに、前記開口部内に前記オイルフィラーキャップの前記締結部が位置しかつ前記オイルフィラーキャップの一部が前記周縁部に載置した状態で前記オイルフィラーキャップが載置されるように構成されていることを特徴とするオイルフィラーキャップの着脱工具。
【請求項2】
請求項
1に記載のオイルフィラーキャップの着脱工具において、
前記係合部は、前記筒軸方向及び該筒軸方向と直交する第1所定方向にそれぞれ延びる一対の脚部で構成されており、
前記一対の脚部は、前記筒軸方向及び前記第1所定方向の両方に直交する第2所定方向に互いに離間していることを特徴とするオイルフィラーキャップの着脱工具。
【請求項3】
請求項
2に記載のオイルフィラーキャップの着脱工具において、
前記各脚部の前記第1所定方向の両側端部の一方には滑り止め部がそれぞれ形成されており、
前記滑り止め部は、前記筒軸方向から見て、該筒軸を中心に点対称となるように前記各脚部にそれぞれ形成されていることを特徴とするオイルフィラーキャップの着脱工具。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1つに記載のオイルフィラーキャップの着脱工具において、
前記操作部は、前記筒軸方向の前記他端側に底部が形成された有底筒状をなし、
前記操作部の底部には、別の回転工具を係合させて、該回転工具の回転により前記操作部を回転させるための係合孔が設けられていることを特徴とするオイルフィラーキャップの着脱工具。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1つに記載のオイルフィラーキャップの着脱工具において、
前記操作部は、前記筒軸方向から見た形状が五角以上の奇数の角部を有する多角形状をなすことを特徴とするオイルフィラーキャップの着脱工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、オイルフィラーキャップの着脱工具に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイルの給油口を塞ぐオイルフィラーキャップは、一般に、給油口に締結される締結部と、該締結部の回転軸方向と直交する方向に直線状に延びるつまみ部とを有する。オイルフィラーキャップを給油口から取り外すときには、つまみ部を摘まんでオイルフィラーキャップを回転させる。
【0003】
特許文献1には、燃料給油口に取り付けられるフィラーキャップの着脱工具(キャップアダプター)が開示されている。特許文献1に記載の着脱工具は、一方の端部にフィラーキャップが係合する係合凹部が形成され、給油口を塞いでいるフィラーキャップが係合凹部に係合した状態で凹部の外側に達する長さを有するアダプタ本体部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンオイルを交換するためにオイルフィラーキャップ(以下、単にキャップという)を取り外すときには、給油口から取り外したキャップを一時的に別の場所に置いておく必要がある。特許文献1のように燃料給油口のフィラーキャップの場合、基本的に、燃料の給油自体をガソリンスタンドのような特定の場所でしか行わないため、燃料給油口のフィラーキャップを置く場所が近くに設けられている。しかし、エンジンオイルの交換は、運転者自身が行うことも多く、特に場所が限定されない。このため、エンジンルームの外部にキャップを適当な場所に置いてしまうことが多い。キャップ自体は比較的小さな部品であるため、適当な場所に置いておくと、紛失するなどして、閉め忘れが生じてしまう。給油口にキャップが取り付けられていない状態では、大量のオイルが外部に漏れてしまう。
【0006】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オイルフィラーキャップの着脱が可能であるとともに、オイルフィラーキャップの閉め忘れを抑制することが可能な着脱工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術は、エンジンオイルの給油口に締結される締結部と、該締結部の回転軸方向と直交する方向に延びるつまみ部とを有するオイルフィラーキャップを着脱する、オイルフィラーキャップの着脱工具を対象として、作業者が回転操作する操作部と、前記操作部と一体に設けられ、前記オイルフィラーキャップの取り付け時及び取り外し時に前記つまみ部と係合する係合部と、前記操作部に設けられ、前記給油口から取り外された前記オイルフィラーキャップが載置される載置部とを備える、という構成とした。
【0008】
この構成によると、オイルフィラーキャップ自体を着脱工具に載置しておくことができ、オイルフィラーキャップと着脱工具とを常にセットの状態で存在させることができる。このため、作業者がオイルフィラーキャップの存在を認識しやすく、オイルフィラーキャップの閉め忘れを抑制することができる。
【0009】
前記オイルフィラーキャップの着脱工具の一実施形態において、前記操作部は、筒軸方向の一端部に開口部が設けられた筒状をなし、前記係合部は、前記操作部の前記筒軸方向の他端側に設けられ、前記載置部は、前記開口部を含んで構成されている。
【0010】
この構成によると、開口部内にオイルフィラーキャップの一部を収納させることができ、コンパクトな収納状態を実現することができる。また、係合部と反対側に設けられていることにより、作業者がオイルフィラーキャップの存在を認識しやすくなって、オイルフィラーキャップの閉め忘れをより効果的に抑制することができる。
【0011】
前記一実施形態において、前記係合部は、前記筒軸方向及び該筒軸方向と直交する第1所定方向にそれぞれ延びる一対の脚部で構成されており、前記一対の脚部は、前記筒軸方向及び前記第1所定方向の両方に直交する第2所定方向に互いに離間している、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、載置部を上にした状態で着脱工具を立たせることができる。これにより、着脱工具自体の置き場所の自由度を向上させることができる。また、載置部が上に位置するため、作業者がオイルフィラーキャップの存在をより認識しやすくなる。この結果、オイルフィラーキャップの閉め忘れをより効果的に抑制することができる。
【0013】
係合部が一対の脚部により構成された一実施形態において、前記各脚部の前記第1所定方向の両側端部の一方には滑り止め部がそれぞれ形成されており、前記滑り止め部は、前記筒軸方向から見て、該筒軸を中心に点対称となるように前記各脚部にそれぞれ形成されている、という構成でもよい。
【0014】
すなわち、オイルフィラーキャップを給油口から取り外すときには、つまみ部に適切に回転力を加える必要があるため、滑り止め部とつまみ部とを接触させる。滑り止め部が点対称に配置されているため、一対の脚部の各滑り止め部をつまみ部にそれぞれ接触させることができる。これにより、オイルフィラーキャップの取り外しを容易にすることができる。
【0015】
一方で、オイルフィラーキャップを給油口に取り付けるときには、締結部を給油口のねじ部に適切に螺合させる必要があるため、オイルフィラーキャップが適度に変位できるようにして、オイルフィラーキャップの位置を調整可能する方が望ましい。このため、オイルフィラーキャップを給油口に取り付けるときには、係合部における滑り止め部のない側とつまみ部とを接触させる。これにより、オイルフィラーキャップを給油口に適切に取り付けることができる。この結果、オイルフィラーキャップの閉め忘れをより効果的に抑制することができる。
【0016】
前記一実施形態において、前記操作部は、前記筒軸方向の前記他端側に底部が形成された有底筒状をなし、前記操作部の底部には、別の回転工具を係合させて、該回転工具の回転により前記操作部を回転させるための係合孔が設けられている、という構成でもよい。
【0017】
すなわち、オイルフィラーキャップの締結部と給油口との間には隙間があるため、この隙間に微量ながらエンジンオイルが入り込む。このエンジンオイルが固化すると、操作部を把持して回転力を加えるだけではトルクが不足して、オイルフィラーキャップの取り外しが困難になる。そこで、回転工具が係合可能な係合孔を設けて、回転工具により回転トルクを加えることができるようにすれば、エンジンオイルが固着していたとしても、オイルフィラーキャップの取り外しを容易にすることができる。また、狭くて作業者の手が入らずに、作業者が操作部を把持することができないときであっても、オイルフィラーキャップの取り外しを容易にすることができる。これにより、作業性を向上させることができる。
【0018】
前記一実施形態において、前記操作部は、前記筒軸方向から見た形状が五角以上の奇数の角部を有する多角形状をなす、という構成でもよい。
【0019】
すなわち、操作部が偶数個の角部を有する場合、操作部に指を5本とも掛けた場合、指が片側に寄り易い。一方で、操作部が奇数個の角部を有する場合、指を対称に掛けやすくなる。この結果、操作部に回転トルクを入力しやすくなって、作業性を向上させることができる。
【0020】
前記一実施形態において、前記載置部は、前記開口部内に前記オイルフィラーキャップの前記締結部が位置する状態で該オイルフィラーキャップが載置されるように構成されている、という構成でもよい。
【0021】
この構成によると、つまみ部が上側に位置する状態でオイルフィラーキャップを載置させることができ、作業者の手が汚れることを出来る限り抑制することができる。また、オイルフィラーキャップの載置部に対する載置状態を安定させることもできる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、オイルフィラーキャップの着脱が可能であるとともに、オイルフィラーキャップの閉め忘れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】例示的な実施形態に係る着脱工具の斜視図である。
【
図4】着脱工具を第1所定方向から見た側面図である。
【
図5】着脱工具を第2所定方向から見た側面図である。
【
図6】取り外し時において、着脱工具の脚部とオイルフィラーキャップのつまみ部とが係合した状態を示す断面図である。
【
図7】オイルフィラーキャップが載置された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線相当で切断した断面図である。
【
図9】着脱工具がシリンダヘッドカバー上に載置された状態を示す模式図である。
【
図10】取り付け時において、着脱工具の脚部とオイルフィラーキャップのつまみ部とが係合した状態を示す平面図である。
【
図11】操作部に指を掛けた状態を示す模式図である。
【
図12】操作部の外形が六角形状であった場合に指を掛けた状態を示す模式図である。
【
図13】係合孔に回転工具が挿入された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る着脱工具1を示す。この着脱工具1は、エンジンオイルの給油口に取り付けられるオイルフィラーキャップ100(
図6~
図9参照。以下、単にキャップ100という)の、給油口から取り外し及び給油口への取り付けを行うための着脱工具である。キャップ100は、
図7及び
図8に示すように、円板状をなし給油口を塞ぐキャップ本体101と、キャップ本体101と一体に設けられかつ給油口に締結される締結部102と、キャップ本体101における締結部102とは反対側の面に該キャップ本体101と一体に設けられたつまみ部103とを有する。つまみ部103は、締結部102の回転軸方向と直交する方向に延びている。キャップ100を、給油口から取り外す時及び給油口に取り付ける時には、つまみ部103にトルクを入力してキャップ100を回転させる。
【0026】
図1に示すように、着脱工具1は、作業者が着脱工具1を回転操作するための操作部10と、キャップ100の取り付け時及び取り外し時につまみ部103と係合する一対の脚部20とを備える。操作部10と脚部20とは一体になっている。着脱工具1は樹脂製であり、例えば、ポリプロピレンで構成されている。
【0027】
図1~
図3に示すように、操作部10は、外形が七角形状をなしかつ底部11を有する有底の角筒状をなしている。操作部10の7つの角部12の間にそれぞれある7つの面部13は、筒軸Xに向かって円弧状に凹んだ湾曲形状をそれぞれなしている。
図4及び
図5に示すように、各面部13の底部11に近い部分は、それぞれ、底部11に向かって操作部10の内断面積を小さくするように、筒軸Xに近づく方向に傾斜した縮小部14となっている。各面部13における縮小部14よりも筒軸方向の一側(底部11とは反対側)の部分は、筒軸Xに向かって凹んだ凹部13aとなっている。詳しくは後述するが、凹部13aは、作業者が操作部10を把持して操作する際に、作業者の指が配置される部分である。
【0028】
操作部10は、筒軸方向の前記一側の端に開口部15が形成されている。各角部12及び各面部13における筒軸方向の前記一側の端部は、開口部15の周縁部15aとなっている。詳しくは後述するが、開口部15及びその周縁部15aは、給油口から取り外されたキャップ100が載置される載置部16を構成する。
【0029】
図2、
図3、及び
図8に示すように、操作部10の底部11は、筒軸方向に貫通する貫通孔11aが形成されている。具体的には、底部11は、筒軸Xに向かって筒軸方向の一側に隆起する隆起部11bを有し、隆起部11bの中央に貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aは、筒軸方向から見て四角形状をなしている。貫通孔11aの孔軸は、操作部10の筒軸Xと同軸である。詳しくは後述するが、貫通孔11aは、作業者が回転工具Tを用いて操作部10を回転操作する際に、該回転工具Tが挿入される部分である。
【0030】
図3~
図5に示すように、一対の脚部20は、操作部10の筒軸方向の他側に、底部11と一体に設けられている。一対の脚部20は、筒軸方向及び該筒軸方向と直交する第1所定方向にそれぞれ延びている。一対の脚部20は、筒軸方向及び前記第1所定方向の両方に直交する第2所定方向に互いに離間している。
図3に示すように、一対の脚部20は、筒軸Xを中心に互いに点対称となるように形成されている。以下、前記第2所定方向の一側に位置する脚部20を第1脚部21、他側に位置する脚部を第2脚部22として、脚部20の構成を詳細に説明する。尚、脚部20はつまみ部103と係合する係合部を構成する。
【0031】
第1脚部21は、前記第1所定方向の一側の端部に、該一側に向かって第2脚部22から離れるように傾斜する第1傾斜部21aを有する。第1脚部21は、前記第1所定方向の他側の端部に、該他側に向かって第2脚部22から離れるように傾斜する第2傾斜部21bを有する。第1傾斜部21aは、キャップ100の取り外し時につまみ部103と係合する部分である一方、第2傾斜部21bは、キャップ100の取り付け時につまみ部103と係合する部分である。
【0032】
図3に示すように、第1傾斜部21aにおける前記第1所定方向の前記一側の端部には、前記第2所定方向の第2脚部22とは反対側に向かうように湾曲した湾曲部21cが形成されている。第1脚部21の第1傾斜部21a及びその近傍部分には、複数の溝からなる第1滑り止め部21dが形成されている。第1滑り止め部21dの筒軸方向の長さは、第1脚部21の筒軸方向の長さの半分程度である。
【0033】
前述したように、第2脚部22は、筒軸Xを中心に第1脚部21と点対称となるように形成されている。このため、第2脚部22は、前記第1所定方向の前記他側の端部に、第1脚部21の第1傾斜部21aに対応する第3傾斜部22aを有する。また、第2脚部22は、前記第1所定方向の前記一側の端部に、第1脚部21の第2傾斜部21bに対応する第4傾斜部22bを有する。第3傾斜部22aは、キャップ100の取り外し時につまみ部103と係合する部分である一方、第4傾斜部22bは、キャップ100の取り付け時につまみ部103と係合する部分である。
【0034】
第3傾斜部22aにおける前記第1所定方向の前記他側の端部には、前記第2所定方向の第1脚部21とは反対側に向かうように湾曲した湾曲部22cが形成されている。第2脚部22の第3傾斜部22a及びその近傍部分には、複数の溝からなる第2滑り止め部22dが形成されている。第2滑り止め部22dの筒軸方向の長さは、第1滑り止め部21dと同様に、第2脚部22の筒軸方向の長さの半分程度である。
【0035】
第1脚部21及び第2脚部22が前述のように構成されることにより、第1滑り止め部21dと第2滑り止め部22dは、筒軸方向から見て、該筒軸Xを中心に点対称となるように第1脚部21及び第2脚部22にそれぞれ形成されていることになる。
【0036】
次に、着脱工具1の使用例について
図6~
図13を参照しながら説明する。
【0037】
着脱工具1を用いて、キャップ100を給油口から取り外すときには、第1脚部21の第1滑り止め部21d及び第2脚部22の第2滑り止め部22dがつまみ部103に接触するように、各脚部21,22とつまみ部103とを係合させる。この状態から、作業者は操作部10を把持して、つまみ部103を
図6の矢印の方向(通常、反時計回り)に回転させる。操作部10を把持してキャップ100を回転させることで、つまみ部103を摘まんでキャップ100を回転させる場合と比較して大きな回転トルクをキャップ100に入力することができる。これにより、キャップ100を容易に取り外すことができる。また、第1傾斜部21a及び第3傾斜部22aにそれぞれ湾曲部21c、22cが形成されていることにより、第1傾斜部21a及び第3傾斜部22aは、つまみ部103からの反力を湾曲部21c、22cで受けることができる。これにより、第1傾斜部21a及び第3傾斜部22aは変形しにくくなるため、つまみ部103に適切に回転トルクを入力することができる。
【0038】
給油口からキャップ100を取り外した後は、キャップ100を一時的に別の場所に置いておく必要がある。本実施形態の着脱工具1では、操作部10にキャップ100を載置可能な載置部16が設けられている。
図7及び
図8に示すように、載置部16は、操作部10の開口部15と該開口部15の周縁部15aとで構成されている。載置部16は、開口部15内に、キャップ100の締結部102を収容可能である。載置部16の周縁部15aには、キャップ100のキャップ本体101が載置される。このように、載置部16は、開口部15内にキャップ100の締結部102が位置する状態で該キャップ100が載置されるように構成されている。操作部10は、締結部102を筒内に収容可能なように、筒軸方向の長さが締結部102の回転軸方向の長さよりも長くなるように設計されている。より具体的には、操作部10の開口部15から隆起部11bの前記筒軸方向の前記一側の端までの距離が、締結部102の回転軸方向の長さよりも長くなるように構成されている。
【0039】
着脱工具1は、
図9に示すように、キャップ100を載置した状態で、エンジンのシリンダヘッドカバーEの上に立てておくことができる。各脚部21,22が前記第1所定方向に延びているとともに、第1脚部21に第1及び第2傾斜部21a,21bが設けられ、第2脚部22に第3及び第4傾斜部22a,22bが設けられているため、安定した状態で着脱工具1を立てておくことができる。また、例えば、第1及び第2脚部21,22の間の領域を、ボンネットフックや配管等のエンジンルームの凸部に引っ掛けておくこともできる。エンジンルーム内は部品が密集しているため、エンジンルームの凸部に引っ掛けたときには、第1及び第2脚部21,22の側面や操作部10が近くの部品に引っ掛かる。これにより、着脱工具1を安定して配置することができる。また、作業者の近くにキャップ100を一時的に置くことができるため、作業者がキャップ100の存在を認識しやすくなり、キャップ100の閉め忘れを抑制することもできる。
【0040】
エンジンオイルの交換が完了した後、キャップ100を給油口に取り付けるときには、キャップ100の締結部102を給油口にあてがった状態で、第1及び第2脚部21,22をつまみ部103に係合させる。このとき、
図10に示すように、第1脚部21の第2傾斜部21b及び第2脚部22の第4傾斜部22bがつまみ部103に接触するように、各脚部21,22とつまみ部103とを係合させる。第2傾斜部21b及び第4傾斜部22bには滑り止め部が形成されていないため、キャップ100は、前記回転軸方向と交差する方向に、着脱工具1に対して相対変位しやすい。これにより、給油口のねじ部と締結部102との位置合わせが容易になる。すなわち、仮に、第2傾斜部21b及び第4傾斜部22bに滑り止め部が設けられていると、キャップ100が着脱工具1に対して相対変位しにくいため、キャップ100を給油口にあてがった時点で、給油口のねじ山と締結部102のねじ山とが合っていなければ、締結部102を適切に締結することができない。一方で、キャップ100が着脱工具1に対して相対変位できれば、給油口のねじ山と締結部102のねじ山とを合わせやすくなる。
【0041】
ここで、キャップ100の取り外し時及び取り付け時の両方において、操作部10を作業者が把持して操作するときには、各面部13の凹部13aに指を掛けた状態で操作部10を回転させる。このとき、操作部10の筒軸方向から見た形状が五角形以上の奇数角形であることから、より具体的には七角形であることから、作業者が指を掛けやすく回転トルクを操作部10に入力しやすい状態となっている。
【0042】
すなわち、
図11に示すように、操作部10の筒軸方向から見た形状が仮に六角形であるときには、作業者が全ての指Fを面部に掛けると、時計回り側又は反時計回り側に指の位置が偏ってしまう。このため、作業者が指を掛けにくくなる。
【0043】
一方で、
図12に示すように、操作部10の筒軸方向から見た形状が七角形であれば、作業者が全ての指Fを面部13に掛けたとしても、指Fの位置が時計回り側又は反時計回り側に偏ることがない。このため、作業者が指を掛けやすく回転トルクを操作部10に入力しやすい状態となる。
【0044】
キャップ100の取り外し時には、締結部102と給油口との間にエンジンオイルが固着して、キャップ100が回転しにくくなっていることがある。このときには、作業者が操作部10を把持して操作するだけではキャップ100が回転しないおそれがある。これに対して、本実施形態では、操作部10の筒軸Xと同軸の孔軸を有する貫通孔11aが設けられているため、
図13に示すように、貫通孔11aに別の回転工具Tを係合させることができる。これにより、回転工具Tを用いてより大きな回転トルクを操作部10に入力して、回転工具Tの回転により操作部10を回転させることで、キャップ100を回転させることができるようになる。また、狭くて作業者の手が入らずに、作業者が操作部10を把持することができないときであっても、キャップ100の取り外しを容易にすることができる。尚、
図13では、作業者が手動で回転させるT字状の回転工具Tを例示しているが、貫通孔11aと係合可能なものであれば回転工具Tは特に限定されない。例えば、電動式の回転工具を用いるようにしてもよい。
【0045】
したがって、本実施形態によると、着脱工具1は、作業者が回転操作する操作部10と、操作部10と一体に設けられ、キャップ100の取り付け時及び取り外し時につまみ部103と係合する脚部20と、操作部10に設けられ、給油口から取り外されたキャップ100が載置される載置部16とを備える。これにより、キャップ100と着脱工具1とを常にセットの状態で存在させることができるため、作業者がキャップ100の存在を認識しやすくなって、キャップ100の閉め忘れを抑制することができる。
【0046】
特に、脚部20は、操作部10の筒軸方向及び該筒軸方向と直交する第1所定方向にそれぞれ延びる第1脚部21及び第2脚部22で構成されており、第1及び第2脚部21,22は、筒軸方向及び前記第1所定方向の両方に直交する第2所定方向に互いに離間している。これにより、載置部16を上にした状態で着脱工具を立たせることができるため、作業者がキャップ100の存在をより認識しやすくなる。この結果、キャップ100の閉め忘れをより効果的に抑制することができる。また、着脱工具1自体の置き場所の自由度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態において、載置部16は、開口部15内にキャップ100の締結部102が位置する状態でキャップ100が載置されるように構成されている。これにより、つまみ部103が上側に位置する状態でキャップ100を載置させることができ、作業者の手が汚れることを出来る限り抑制することができる。また、キャップ100の載置部16に対する載置状態を安定させることもできる。
【0048】
また、第1及び第2脚部21,22の前記第1所定方向の両側端部の一方には第1及び第2滑り止め部21d,22dがそれぞれ形成されており、第1及び第2滑り止め部21d,22dは、前記筒軸方向から見て、該筒軸Xを中心に点対称となるように第1及び第2脚部21,22にそれぞれ形成されている。これにより、キャップ100を給油口から取り外すときには、第1及び第2滑り止め部21d、22dとつまみ部103とを接触させることで、キャップ100に適切な回転トルクを入力することができる。一方で、キャップ100を給油口に取り付けるときには、第1及び第2脚部21,22における第1及び第2滑り止め部21d、22dのない側とつまみ部103とを接触させることで、キャップ100が適度に変位できるようにして、キャップ100の給油口への取り付けを容易にすることができる。
【0049】
また、本実施形態において、操作部10の底部11には、別の回転工具Tを係合させて、該回転工具Tの回転により操作部10を回転させるための貫通孔11aが設けられている。これにより、締結部102と給油口との間にエンジンオイルが固着して、キャップ100を取り外すために大きな回転トルクが必要な場合であっても、キャップ100の取り外しを容易にすることができる。
【0050】
ここに開示された技術は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、操作部10の筒軸方向から見た形状は七角形であった。これに限らず、五角形や九角形であってもよい。ただし、角部の数が少なくなると作業者が指を掛けにくくなり、角部の数が多くなると円筒形状に近くなって操作部10に回転トルクを入力しにくくなるため、七角形状が最も好ましい。
【0052】
また、前述の実施形態では、操作部10を筒状にして、操作部10の開口部15及び開口部15の周縁部15aを載置部16として構成した。これに限らず、操作部10を角柱状にして、上面部分にキャップ100の締結部102の一部を収容する凹みを設けることで載置部16を構成してもよい。
【0053】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の技術の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
ここに開示された技術は、エンジンオイルの給油口に締結される締結部と、該締結部の回転軸方向と直交する方向に延びるつまみ部とを有するオイルフィラーキャップを着脱する、オイルフィラーキャップの着脱工具として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 着脱工具
10 操作部
11 底部
11a 貫通孔
11b 隆起部
15 開口部
16 載置部
20 脚部
21d 滑り止め部
22d 滑り止め部
100 オイルフィラーキャップ
102 締結部
103 つまみ部