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  • 特許-車両用シート装置 図1
  • 特許-車両用シート装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20240313BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60N2/14
A47C3/18 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020098888
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191665
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】393011692
【氏名又は名称】和光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069992
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 政義
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢二
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3004868(JP,U)
【文献】実開昭59-093939(JP,U)
【文献】特開平2-31950(JP,A)
【文献】実開昭60-60949(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室床面2a側に配備されるベース部材と、
このベース部材3に回転軸部5により回転可能にシートを配備する回転部材4が支持され、
前記回転部材4を回転自在に支持する回転軸部5は、
円形リング状のインナーリング6と、
このインナーリング6の外周部6aに対向する内周部7aを有して配備される
円形リング状のアウターリング7とによって構成され、
前記インナーリング6は、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔8を複数所に備え、この取付けネジ孔8に対応して前記ベース部材3は、その取付け孔9を上面板3aの複数所に具え、
前記ベース部材3の上面板3aの取付け孔9に、その下面側から下側固着ボルト13aを挿通し、この下側固着ボルト13aのネジ部13a1からインナーリング6の取付けネジ孔8に羅合固着し、下側固着ボルト13aの頭部とで締め付け固着し、前記ベース部材3とインナーリング6は一体化し、
前記アウターリング7は、前記インナーリング6と同様に、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔10を複数所に備え、この取付けネジ孔10に対応して前記回転部材4は、その取付け孔11を下面板4aに複数所を備え、前記回転部材4の下面板4aの取付け孔11に、その上面側から上側固着ボルト13bを挿通し、この上側固着ボルト13bのネジ部13b1がアウターリング7の取付けネジ孔10に羅合固着し、上側固着ボルト13bの頭部とで締め付け固着し、前記回転部材4とアウターリング7は一体化し、
前記インナーリング6の外周部6aと前記アウターリング7の内周部7aには向かい合ったU形またはV形の環状溝6a1、7a1が形周成され、それらに複数のボール12が収容されて回転自在になるように構成され、
前記ベース部材3の回転軸中心相当位置にタップ孔14を設け、前記回転部材4の回転軸中心相当位置に取付け孔15を設け、
前記取付け孔15と同芯となるように回転部材4上に回転用スラストベアリング16を配備し、この回転用スラストベアリング16の内径部16aに上方よりスラスト締付けボルト17を挿通し、前記ベース部材3に設けられたタップ孔14にスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aを捻じ込むことによって前記回転用スラストベアリングと前記ベース部材の間に回転軸部5が定間隔に挟み込まれてなる、
車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートへの乗降を楽にするためにシートを車両前向きと横向きとに転向する機能を備えた車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両側に固定されるベース部材と、このベース部材に回転可能に支持された回転部材を有するように構成され、車両前向きと横向きに転向可能にしている。
【0003】
前記回転部材を回転可能に支持するための回転軸部は、円形リング状のインナーリングと、このインナーリングの外周部に設けられた円形リング状のアウターリングとによって構成されている。そして、前記インナーリングの外径面と前記アウターリングの内径面にはU形環状溝またはV形環状溝が設けられ、この向かい合った環状溝内に複数のボールが挿入されて回転自在になるように構成されている。
【0004】
しかしながら、このような回転軸構造では、リングに設けられたU形またはV形の環状溝と挿入されるボールの間に一定以上の隙間が発生すると、走行時にガタ音が発生し、乗り心地が悪くなるといった不具合を招いてしまう欠点がある。
【0005】
このため、前記インナーリングとアウターリングに設けられたU形またはV形の環状溝の寸法を非常に高精度で製作・管理する必要がある。また、回転軸部を取付ける相手は、前記ベース部材と前記回転部材であるが、こちらも、前記インナーリングとアウターリングの取付け面を一定の平坦度で管理する必要があり、前述の内容と併せて加工コストがかかる要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-213322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、ガタを発生しないようにしつつ、製造コストの低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両の車室床面側に配備されるベース部材と、このベース部材に回転軸部により回転可能にシートを配備する回転部材が支持され、前記回転部材を回転自在に支持する回転軸部は、円形リング状のインナーリングと、このインナーリングの外周部に対向する内周部を有して配備される円形リング状のアウターリング7とによって構成され、前記インナーリングは、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔を複数所に備え、この取付けネジ孔に対応して前記ベース部材は、その取付け孔を上面板の複数所に具え、前記ベース部材の上面板の取付け孔に、その下面側から下側固着ボルトを挿通し、この下側固着ボルトのネジ部からインナーリングの取付けネジ孔に羅合固着し、下側固着ボルトの頭部とで締め付け固着し、前記ベース部材とインナーリングは一体化し、前記アウターリングは、前記インナーリングと同様に、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔を複数所に備え、この取付けネジ孔に対応して前記回転部材は、その取付け孔を下面板に複数所を備え、前記回転部材の下面板の取付け孔に、その上面側から上側固着ボルトを挿通し、この上側固着ボルトのネジ部がアウターリングの取付けネジ孔に羅合固着し、上側固着ボルトの頭部とで締め付け固着し、前記回転部材とアウターリングは一体化し、前記インナーリングの外周部と前記アウターリングの内周部には向かい合ったU形またはV形の環状溝が形周成され、それらに複数のボールが収容されて回転自在になるように構成され、前記ベース部材の回転軸中心相当位置にタップ孔を設け、前記回転部材の回転軸中心相当位置に取付け孔を設け、前記取付け孔と同芯となるように回転部材上に回転用スラストベアリングを配備し、この回転用スラストベアリングの内径部に上方よりスラスト締付けボルトを挿通し、前記ベース部材に設けられたタップ孔にスラスト締付けボルトの先端ネジ部を捻じ込むことによって前記回転用スラストベアリングと前記ベース部材の間に回転軸部が定間隔に挟み込まれてなる車両用シート装置にある。
【0009】
前記スラスト締付けボルトの先端ネジ部のベース部材より下方への突出部に螺合するナットがダブルナットとしてもよいものである。
【0010】
前記スラスト締付けボルトの先端ネジ部の突出部と締め込むナットには緩み止めのためネジロック材が塗布されてなるものとしてもよいものである。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、ボルトまたはナットの締め込みによりガタを抑えることができるため、前述したインナーリングとアウターリングのU形またはV形の環状溝の精度やベース部材と回転部材のリング取付け面平坦度も厳しくする必要がなくなり要求寸法公差の拡大ができるため、生産性画向上すると共に部品の合格率も上昇するため、コストを低く抑えることができる。
【0012】
このスラスト締付けボルトの締め込みにより発生する力で前記インナーリングとアウターリングのU形またはV形の環状溝とボールの隙間が無くなるように押し付けられるためガタが無くなる。
【0013】
前記回転部材上に回転用スラストベアリングを配備しているから、スラスト締付けボルトにより回転用スラストベアリングとベース部材の間に回転部材を挟み込み定間隔に保持し、スラスト締付けボルトの先端ネジ部がベース部材のタップ孔に螺合した状態でベース部材と一体的に固定され、またはスラスト締付けボルトの先端ネジ部がベース部材のタップ孔に螺合し、ベース部材の下面下の突出部にナットが螺合されてベース部材と一体的に固定された状態においても、スラスト締付けボルトの頭部に回転用スラストベアリングの上半部が接して固定されても、回転用スラストベアリングの下半部が回転部材と共にベース部材に対して円滑に回転することができるものである。
【0014】
前記スラスト締付けボルトのベース部材の下面下の突出部に螺合されるナットには、ロック用のナットが螺合されるか、ロック用塗料が塗布されるなどのロック止めがなされるから、スラスト締付けボルトの頭部下面とナットの締め付け面との間隔が一定に保持されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の車両用シート装置を構成するベース部材と回転部材とに分解し、それらを回転自在に結合するインナーリングとアウターリングの配置状態を示す全体斜視図である。
図2】同じく、本発明の車両用シート装置の要部となる回転軸部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車両用シート装置1は、車両2の車室床面2a側に配備されるベース部材3と、このベース部材3に回転可能に支持された回転部材4を有するように構成され、車両前向きと横向きに転向可能にしている。
【0017】
前記回転部材4を回転可能に支持するための回転軸部5は、円形リング状のインナーリング6と、このインナーリング6の外周部6aに対向して配備される円形リング状のアウターリング7とによって構成されている。そして、前記インナーリング6の外周部6aと前記アウターリング7の内周部7aにはこの向かい合ったU形またはV形の環状溝6a1、7a1に複数のボール12が収容されて回転自在になるように構成されている。
【0018】
ベース部材3の回転軸中心相当位置にタップ孔14を設け、回転部材4の回転軸中心相当位置に取付け孔15を設ける。この取付け孔15と同芯になるように回転部材4上にスラストベアリング16を配備する。
【0019】
前記スラストベアリング16の内径部16aに上方よりスラスト締付けボルト17を通し、前記ベース部材3に設けられたタップ孔14にスラスト締め付けボルト17の先端ネジ部17aを捻じ込むものである。
【0020】
前記スラストベアリング16と前記ベース部材3の間に前記回転部材4と前記回転軸部5が挟み込まれる。
【0021】
このスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aをタップ孔14に螺合締め込みにより発生する力で前記回転部材4のU形またはV形の環状溝6a1、7a1とボール12の隙間が無くなるように押し付けられるためガタが無くなる。
【0022】
ベース部材3の回転軸中心相当位置に設ける孔は前記タップ孔14でなくても良く、取付け孔14aにしてスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aを挿通してもよく、挿通した後、下方に突出する先端ネジ部17aにナット18で絞め込んでも良いものである。
【0023】
緩み止めのためにナット18をダブルナットの構成にしても、また、ネジロック材19を塗布してもよいものである。
【実施例
【0024】
以下、本発明に係る車両用シート装置を一例である実施例の車両用シート装置1を示す図面により説明すると、図1および図2に示すように、車両用シート装置1は、車両2の車室床面2a側に配備されるベース部材3と、このベース部材3に回転軸部5により回転可能に回転部材4が支持され、車両前向きと横向きに転向可能に構成される。ここで、車両前方とは、図1に示す記号「A←」の方向をいい、車両後方とは、図1に示す記号「→B」の方向をいうものである。
【0025】
前記ベース部材3の車両側固定装置は、前後にスライド自在であるとあるとともに任意の位置で固定もできるものである。
【0026】
前記回転部材4を回転可能に支持するための回転軸部5は、円形リング状のインナーリング6と、このインナーリング6の外周部6aに対向する内周部7aを有して配備される円形リング状のアウターリング7とによって構成されている。
【0027】
前記インナーリング6は、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔8を、例えば、図示の実施例では4ケ所に備え、この取付けネジ孔8に対応して前記ベース部材3は、その取付け孔9を上面板3aの4ケ所に具えている。そして、前記ベース部材3の上面板3aの取付け孔9に、その下面側から下側固着ボルト13aを挿通し、この下側固着ボルト13aのネジ部13a1からインナーリング6の取付けネジ孔8に羅合固着し、下側固着ボルト13aの頭部とで締め付け固着をするものである。よって、ベース部材3とインナーリング6は一体化するものである。
【0028】
前記アウターリング7は、前記インナーリング6と同様に、等角度または所要角度に離隔されて上下に貫通する取付けネジ孔10を、例えば、図示の実施例では4ケ所に備え、この取付けネジ孔10に対応して前記回転部材4は、その取付け孔11を下面板4aの4ケ所に具えている。そして、前記回転部材4の下面板4aの取付け孔11に、その上面側から上側固着ボルト13bを挿通し、この上固着ボルト13bのネジ部13b1がアウターリング7の取付けネジ孔10に羅合固着し、上側固着ボルト13bの頭部とで締め付け固着をするものである。よって、前記回転部材4とアウターリング7は一体化するものである。
【0029】
前記インナーリング6の取付けネジ孔8と前記アウターリング7の取付けネジ孔10が同径である実施例では、下側固着ボルト13aと上側固着ボルト13bを同径のものを使用することができる。また、インナーリング6の下側固着ボルト13aとアウターリング7の上側固着ボルト13bによる締め付け取付け位置を交互に設定できる。締め付け取付け位置の間隔数は、実施例では、4ケ所であるが、3ケ所または5ケ所とすることもできる。
【0030】
前記インナーリング6の外周部6aと前記アウターリング7の内周部7aには向かい合ったU形またはV形の環状溝6a1、7a1が形周成され、それらに複数のボール12が収容されて回転自在になるように構成されている。
【0031】
前記ベース部材3の回転軸中心相当位置にタップ孔14を設け、前記回転部材4の回転軸中心相当位置に取付け孔15を設ける。
【0032】
前記取付け孔15と同芯となるように回転部材4上にスラストベアリング16を配備し、このスラストベアリング16の内径部16aに上方よりスラスト締付けボルト17を挿通し、前記ベース部材3に設けられたタップ孔14にスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aを捻じ込むことによって回転軸部5が設けられる。
【0033】
この回転軸部5は、前記ベース部材3と前記回転部材4の間を挟み込む構成となる。
【0034】
前記スラスト締付けボルト17の締め込みにより発生する力で前記回転軸部5のインナーリング6とアウターリング7のU形又はV形の環状溝6a1、7a1と複数のボール12の隙間が無くなるように押し付けられるためガタが無くなる。
【0035】
ベース部材3の回転軸中心相当位置に設けるタップ孔14は取付け孔14aでもよいものである。
【0036】
ベース部材3の回転軸中心相当位置に設ける孔が取付け孔14aである場合は、ベース部材3の下面から外方に突出するスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aにナット18を螺合し絞め込んでもよいものである。
【0037】
スラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aに螺合するナット18は、緩み止めのためダブルナットにしてもよいものである。
【0038】
ナット18の緩み止めのためにネジロック材19をナット18とスラスト締付けボルト17の先端ネジ部17aとに渡って一体に塗布してもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の車両用シート装置1は、回転部材4に回転ガタが発生しないようになり、その製造コストの低減を図ることができ、車両用シート装置の普及に寄与するものである。
【符号の説明】
【0040】
1 本発明の実施例の車両用シート装置
2 車両
2a 車室床面
3 ベース部材
3a 上面板
4 回転部材
4a 下面板
5 回転軸部
6 インナーリング
6a 外周部
6a1 U形またはV形の環状溝
7 アウターリング
7a 内周部
7a1 U形またはV形の環状溝
8 取付けネジ孔
9 取付け孔
10 取付けネジ孔
11 取付け孔
12 ボール
13a 下側固着ボルト
13a1 ネジ部
13b 上側固着ボルト
13b1 ネジ部
14 タップ孔
14a 取付け孔
15 取付け孔
16 回転用スラストベアリング
16a 内径部
17 スラスト締付けボルト
17a 先端ネジ部
18 ナット
19 ネジロック材
図1
図2