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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】検体採取容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240313BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/04 J
G01N1/10 V
G01N1/04 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020128034
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025295
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391048500
【氏名又は名称】大扇産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】合田 昭男
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-093030(JP,A)
【文献】米国特許第04346613(US,A)
【文献】特開2006-069636(JP,A)
【文献】特開2005-022706(JP,A)
【文献】特開2017-194324(JP,A)
【文献】特開2019-164002(JP,A)
【文献】特開2014-213894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の保存液を収容した収容体と、上端を開口部とすると共に内部を中空とし、破断自在とした底板を有した中栓体と、破断部材を垂設した蓋体とを備え、
前記収容体に前記中栓体を収容して、この収容体の開口部に前記蓋体をねじ込めるようにして、これらを一体に組み合わせたものとし、
前記中栓体と前記蓋体との間にスペーサを介在させて、前記収容体の開口部に前記蓋体をねじ込んだときは、前記蓋体の破断部材の下端が前記中栓体の底板に近接するまでしかねじ込めないようにし、
前記中栓体と前記蓋体との間にスペーサを介在させないで、前記収容体の開口部に前記蓋体をねじ込んだときは、前記蓋体の破断部材の下端が前記中栓体の底板を破断するまでねじ込めるようにし
前記中栓体の底板は、周囲を薄肉部を介して側壁の下端に連設されており、破断した後も薄肉部の一部が連結されたままになるようにしていることを特徴とする検体採取容器。
【請求項2】
前記中栓体の開口部を広口としたものとし、前記収容体の開口部に外ネジ部を形成すると共に前記蓋体の側壁に内ネジ部を形成し、前記収容体の開口部を外向きに折り返して、この開口部を広げ、前記蓋体の内ネジ部を前記収容体の外ネジ部にねじ込むようにしていることを特徴とする請求項1に記載の検体採取容器。
【請求項3】
前記中栓体の側壁の外周面に外向フランジを設けると共に、前記蓋体の側壁の内周面にリブを設け、前記蓋体と前記中栓体との間にスペーサを介在させて、前記収容体の開口部に前記蓋体をねじ込んだときは、前記蓋体のリブが前記中栓体2の外向フランジの上方に位置し、前記蓋体と前記中栓体との間にスペーサを介在させないで、前記収容体の開口部に前記蓋体をねじ込んだときは、前記中栓体の外向フランジが前記蓋体のリブを乗り越え、このリブに引っ掛かるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の検体採取容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液や便などの検体を採取して保存しておくための検体採取容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の検体採取容器としては、例えば図20、21に示したように、唾液を採取するときに使用する唾液採取用容器11と、漏斗12と、唾液の保存液を収容した保存液収容容器13からなるものが存在する(特許文献1)。
【0003】
前記検体採取容器を使用するには、図20に示したように、唾液採取用容器11に取り付けられた漏斗12から被検者の唾液を唾液採取用容器11に採取する。次に、唾液採取用容器11から漏斗12を外して、この漏斗12に代えて図21に示したように、保存液収容容器13を唾液採取用容器11の上端のネジ部14にねじ込んで取り付ける。
【0004】
このようにすると、保存液収容容器13の下面から唾液採取用容器11の開口端11aが差し込まれ、保存液収容容器13の下面が圧壊して、この保存液収容容器13内の保存液が唾液採取用容器11内に流入する。そして、この保存液が唾液採取用容器11内の唾液と混合し、唾液と保存液が気密状態で保存されるとしている。
【0005】
さらに、この種の検体採取容器としては、例えば図22に示したように、便を採取するための採便部材21と、上面側に入口部22aを有し、便を収容可能な容器本体22と、容器本体22の入口部22a に取り付け可能な蓋体23からなり、蓋体23の内部には保存液が充填されているものが存在する(特許文献2)。
【0006】
前記検体採取容器を使用するには、容器本体22内から採便部材21を取り出し、この採便部材21の手持部21a を持って、採便部21bのカップ部21cに便を採取する。次に、採便部材21の採便部21bを容器本体22の入口部22aから挿入し、手持部21aの嵌め込み部21dを容器本体22の入口部22aの内側に嵌め込む。続いて、蓋体23を容器本体22の入口部22aの下方のネジ部22bにねじ込んで取り付ける。
【0007】
このようにすると、採便部材21の孔開け部24が蓋体23の下面(図示せず)に当接し、この孔開け部24が下面を圧壊し、その下面に孔が開き、これにより保存液が落下し、容器本体22の内部に流れ込み溜まるので、採便部21bのカップ部21c先端の便が保存液の中に溶け出し、容器本体22内に気密状態で保存されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-194324号公報
【文献】特開2019-164002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に記載された検体採取容器では、唾液採取用容器11と保存液収容容器13とが組み合わされた状態ではなく、別々に分離した状態となっており、嵩張ったりするので、保管や輸送するのに不便である。
【0010】
さらに、前記特許文献1に記載された検体採取容器では、使用する前は唾液を採取する漏斗12が唾液採取用容器11内には収納されずに露出しているので、保管中や輸送中に粉塵や雑菌などで汚染されることがある。また、汚染されないようにするには、個包装などする必要がある。
【0011】
しかも、前記特許文献1に記載された検体採取容器では、使用するときには唾液採取用容器11に取り付けられた漏斗12を、この唾液採取用容器11から取り外さなければならない。そのため、採取した唾液を分析機関等に郵送するまでに、唾液で汚染された漏斗12をその場で処理しなければならず、接触感染や廃棄汚染の問題が生ずることがある。
【0012】
また、前記特許文献2に記載された検体採取容器では、容器本体22内から採便部材21を取り出し、この採便部材21の手持部21aを直接、手で持って便を採取するため、使用者の手が汚れたりしていたときには、採便部材21が雑菌などで汚染されることがある。そして、この汚染された採便部材21を再度、容器本体22内に収納すると、この容器本体22内も汚染されることがある。
【0013】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するものであり、前記特許文献1に記載された唾液採取用容器、漏斗、保存液収容容器に相当する構成部材を、別々に分離した状態ではなく組み合わされた状態にして、嵩張ったりせず、保管や輸送するのに便利であり、さらに前記特許文献1に記載された漏斗に相当する構成部材を個包装などしないでも、保管中や輸送中に粉塵や雑菌などで汚染されることがなく、また前記特許文献2に記載された採便部材に相当する構成部材を直接、手で持つことなく使用できるものとして、使用中に汚染されることがなく、しかも採取時の誤操作を防止し、また採取時やその後の感染や汚染がない安全性の高い検体採取容器を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の検体採取容器は、検体の保存液Lを収容した収容体1と、上端を開口部2aとすると共に内部を中空とし、破断自在とした底板2cを有した中栓体2と、破断部材6を垂設した蓋体3とを備えている。前記収容体1に前記中栓体2を収容して、この収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込めるようにして、これらを一体に組み合わせたものとしている。そして、前記中栓体2と前記蓋体3との間にスペーサSを介在させて、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記蓋体3の破断部材6の下端が前記中栓体2の底板2cに近接するまでしかねじ込めないようにしている。さらに、前記中栓体2と前記蓋体3との間にスペーサSを介在させないで、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記蓋体3の破断部材6の下端が前記中栓体2の底板2cを破断するまでねじ込めるようにしている。前記中栓体2の底板2cは、周囲を薄肉部を介して側壁の下端に連設されており、破断した後も薄肉部の一部が連結されたままになるようにしている。
【0015】
本発明の検体採取容器において、前記中栓体2の開口部2aを広口としたものとし、前記収容体1の開口部に外ネジ部4を形成すると共に前記蓋体3の側壁に内ネジ部5を形成し、前記収容体1の開口部を外向きに折り返して、この開口部を広げ、前記蓋体3の内ネジ部5を前記収容体1の外ネジ部4にねじ込むようにしている。
【0017】
本発明の検体採取容器において、前記中栓体2の側壁の外周面に外向フランジ2bを設けると共に、前記蓋体3の側壁の内周面にリブ3aを設け、前記蓋体3と前記中栓体2との間にスペーサSを介在させて、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記蓋体3のリブ3aが前記中栓体2の外向フランジ2bの上方に位置し、前記蓋体3と前記中栓体2との間にスペーサSを介在させないで、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記中栓体2の外向フランジ2bが前記蓋体3のリブ3aを乗り越え、このリブ3aに引っ掛かるようにしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検体採取容器は、収容体1に中栓体2を収容して、収容体1の開口部に蓋体3をねじ込んで、これらを一体に組み合わせたものとしているので、嵩張ったりせず、保管や輸送するのに便利なものとなる。
【0019】
さらに、本発明の検体採取容器は、使用前や使用後に収容体1に中栓体2や破断部材6が収納され、これら中栓体2や破断部材6が露出することがないので、保管中や輸送中に粉塵や雑菌などで汚染されることがないものとなる
また、本発明の検体採取容器は、医療資格のある従事者でなくとも被験者自身で採取できるので医療従事者への二次感染を避けられる。
【0020】
また、本発明の検体採取容器は、一体に組み合わせられており、被験者が使用方法に迷うことなく誤操作を生じない。
【0021】
また、本発明の検体採取容器は、使用するときにも破断部材6を直接、手で触ることがないので、この破断部材6が雑菌などで汚染されることがない。
【0022】
また、本発明の検体採取容器は、採取検体が付着した部材に触れることなく採取検体を収納し、分析機関などに送ることができるので二次感染を生じず安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の検体採取容器の第一実施形態を示す断面図である。
図2図1中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面図である。
図3図1に示す検体採取容器の蓋体を外した状態の断面図である。
図4図3に示す検体採取容器の平面図である。
図5図3に示す検体採取容器に再び蓋体を被せた状態の断面図である。
図6図5中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面図である。
図7図5に示す検体採取容器の蓋体を再び外した状態の断面図である。
図8図7中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面である。
図9】本発明の検体採取容器の第二実施形態を示す断面図である。
図10図9中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面図である。
図11図9に示す検体採取容器の蓋体を外した状態の断面図である。
図12図11に示す検体採取容器に再び蓋体を被せた状態の断面図である。
図13図12中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面図である。
図14図12に示す検体採取容器の蓋体を再び外した状態の断面図である。
図15図14中の四角枠で囲んだ部分の拡大断面である。
図16】本発明の検体採取容器の第三実施形態を示す断面図である。
図17図16に示す検体採取容器の蓋体を外した状態の断面図である。
図18図17に示す検体採取容器に再び蓋体を被せるときの断面説明図である。
図19図17に示す検体採取容器に再び蓋体を被せた状態の断面図である。
図20】従来の検体採取容器の一例を示しており、唾液採取用容器と保存液収容容器が別々に分離された状態の斜視図である。
図21図20に示した保存液収容容器を唾液採取用容器に取り付けるときの斜視図である。
図22】従来の検体採取容器の他の例を示しており、採便部材と容器本体と蓋体とに分解した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の検体採取容器を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明の検体採取容器は、収容体1と中栓体2と蓋体3とスペーサSとを備え、収容体1に中栓体2を収容して、中栓体2と蓋体3との間にスペーサSを介在させるか、または介在させないで、収容体1の開口部に蓋体3をねじ込めるようにして、これらを一体に組み合わせたものとしている。
【0026】
前記収容体1は、図1に示したように、合成樹脂で作成された略円筒管1aの内部に、中空部を介して有底の内管1bを連設したものとしており、この内管1b内に検体の保存液Lを収容している。また、この収容体1は、図9、16に示したように、合成樹脂で作成された有底の略円筒管1a内に検体の保存液Lを直接、収容したものとしている。さらに、この収容体1は、開口部に外ネジ部4を形成し、後に述べる蓋体3の側壁に形成した内ネジ部5をねじ込めるようにしている。なお、前記内管1bは、上端部に傾斜壁Gを有したものとし、この傾斜壁Gを介して前記略円筒管1aに連設したものとしている。
【0027】
前記中栓体2は、合成樹脂で作成されており、上端を開口部2aとし、側壁の外周面に外向フランジ2bを設けると共に、内部を中空とし、破断自在とした底板2cを有したものとしており、図1、9、16に示したように、前記収容体1に収容して、この収容体1の側壁の上端内面と中栓体2の側壁の外面とを密着させたものとしている。すなわち、前記中栓体2は、図1に示したものでは、短い略円筒形状としており、その側壁の外面を前記収容体1の側壁の上端内面に密着させたものとしており、図9に示したものでは、略ロート形状としており、その側壁の外面を前記収容体1の側壁の上端内面に密着させたものとしており、さらに図16に示したものでは、長い略円筒形状としており、その側壁の上端外面を前記収容体1の側壁の上端内面に密着させたものとしている。また、前記外向フランジ2bは、図1、9に示したものでは、上周端をアール状に丸めており、下周端を直角状に角張らせており、後に述べる蓋体3の側壁の内周面に設けた外面アール状のリブ3aの下方に位置していたり、このリブ3aを乗り越え、そのリブ3aに引っ掛かるようにしている。
【0028】
さらに、前記中栓体2は、図1に示したものでは、開口部2aを広口としたものとし、図9に示したものでは、開口部2aを斜めに切り落として楕円形としたものとして、検体を唾液などとした場合、その開口部2aから唾液を入れ易くし、中空部に一旦、溜めておけるようにしている。
【0029】
前記検体としては、図1、9に示したような中栓体2とした場合には唾液とするのが好ましく、図16に示したような中栓体2とした場合には便とするのが好ましいが、喀痰、耳鼻咽喉ぬぐい液、血液、尿などの各種の検体も用いることができる。
【0030】
前記保存液Lとしては、ウイルス不活性化、RNA抽出、RNA安定保存の溶液、またはDNA抽出、DNA安定保存の溶液としたり、さらに目的とする検体を殺菌、または不活性化して、測定物質を安定保存する溶液など、幅広いものを用いることができる。
【0031】
前記中栓体2の底板2cは、後に述べる蓋体3の破断部材6の下端によって押圧されることにより破断するものとしており、底板2c周囲を薄肉部を介するなどして側壁の下端に連設されており、破断した後も、図5図19などに示したように、薄肉部の一部が連結されたままとなるようにして、この底板2cが前記収容体1内に落下しないようにすることができる。また、前記底板2cは、フィルム溶着や蜜栓などとすることもできる。
【0032】
前記蓋体3は、合成樹脂で作成されており、破断部材6を天板3bから垂設した円筒体としており、先に述べたように側壁に形成した内ネジ部5を収容体1の開口部に形成した外ネジ部4にねじ込めるようにしている。さらに、前記蓋体3の側壁の内周面には、外面アール状の前記リブ3aが設けられており、後に述べるようにこの蓋体3と前記中栓体2との間にスペーサSを介在させて、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記リブ3aが前記中栓体2の外向フランジ2bの上方に位置しているが、前記蓋体3と前記中栓体2との間にスペーサSを介在させないで、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記中栓体2の外向フランジ2bが前記リブ3aを乗り越え、このリブ3aに引っ掛かるようにしている。なお、図1に示したように、前記中栓体2の開口部2aを広口とした場合には、前記収容体1の開口部を外向きに折り返して、この開口部を広げることにより、前記蓋体3の側壁に形成した内ネジ部5を、その収容体1の開口部に形成した外ネジ部4にねじ込むようにしている。
【0033】
前記破断部材6は、図1、9に示したものでは、円筒体としており、図16に示したものでは、先端に採取部6aを形成した棒状体を円筒体に嵌め込んだものとしている。前記採取部6aは、検体が便である場合には、図示したようなスプーン状とするのが好ましいが、検体が耳鼻咽喉ぬぐい液などである場合には、その検体に応じた形状とすることができる。なお、前記破断部材6の下端は、後に述べるように前記中栓体2の底板2cを破断し易くなるように尖らせたものとするのが好ましい。
【0034】
そして、本発明の検体採取容器は、図1、9、16に示したように、前記中栓体2と前記蓋体3との間にスペーサSを介在させて、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記蓋体3の破断部材6の下端が前記中栓体2の底板2cに近接するまでしかねじ込めないようにしている。
【0035】
さらに、本発明の検体採取容器は、図5、12、19に示したように、前記中栓体2と前記蓋体3との間にスペーサSを介在させないで、前記収容体1の開口部に前記蓋体3をねじ込んだときは、前記蓋体3の破断部材6の下端が前記中栓体2の底板2cを破断するまでねじ込めるようにしている。
【0036】
前記スペーサSは、合成樹脂で作成された略円筒の短管としており、その短管の上端が前記蓋体3の天板3bに当接し、短管の下端が前記中栓体2に当接するようにしている。この短管の下端は、図1、9に示したものでは、前記中栓体2の開口部内に、放射状に複数突設した係止リブ8に当接するようにしており、図16に示したものでは、前記中栓体2の側壁の外周面に設けた外向フランジ2bに当接するようにしている。なお、前記スペーサSは、図1に示したもののように、短管の内壁に内フランジ部Saを形成したものとすれば、この内フランジ部7aが破断部材6に接触することにより、安定した状態で前記中栓体2と前記蓋体3との間に介在させておくことができる。
【0037】
本発明の検体採取容器は、以上に述べたように構成されているので、次のようにして使用される。
【0038】
先ず、本発明の検体採取容器は、図1、9に示したものでは、この図1、9の状態から図3、11に示したように、収容体1から蓋体3を取り外し、蓋体3からスペーサSを取り除き、このスペーサSを廃棄する。この場合、未だ検体の採取前なので、前記スペーサSは汚染されておらず、そのまま廃棄しても廃棄汚染の問題は生じない。
【0039】
次に、図3、11に示した蓋体3を取り外した収容体1の中栓体2内に、その開口部2aから唾液を入れ、図5、12に示したように、収容体1に再び蓋体3を取り付ける。この場合、蓋体3を徐々にねじ込んでいくと、蓋体3に垂設した破断部材6が徐々に下がっていき、中栓体2の底板2cに当接し、この底板2cを破断する。すると、中栓体2内に入っていた唾液が収容体1内に流れ落ち、収容体1内の保存液と混合する。また、この場合、図6、13に示したように、前記中栓体2の外向フランジ2bが前記蓋体3のリブ3aを乗り越え、中栓体2は蓋体3の天板3bの近くまで押し上げられる。
【0040】
なお、図1に示した本発明の検体採取容器は、図5に示した状態で、前記収容体1を振とうさせたり傾斜させたりすると、唾液と保存液との混合液が逆流して、内管1bの上端部の傾斜壁Gを通って底板2cの破断部から中栓体2内に入り込むので、中栓体2の側壁などに付着していた唾液が、この混合液で洗い流され、中栓体2内に唾液がほとんど残らないものとなる。
【0041】
そして、本発明の検体採取容器は、蓋体3が収容体1に取り付けられた状態で、唾液と保存液の混合液は気密状態で保管されたり、輸送される。この場合、中栓体2の底板2cは、図1に示したものでは、図5に示したように薄肉部の一部と連結されたままになっているので収容体1内に落下することがない。したがって、後に述べるように収容体1内の唾液と保存液の混合液をシリンジ9などで取り出す場合に、底板2cが邪魔になるようなことはない。
【0042】
前記検体採取容器は、分析機関などで図7、14に示したように、収容体1から蓋体3を取り外され、収容体1内の唾液と保存液の混合液がシリンジ9などで取り出され、分析に供される。この場合、前記中栓体2は、図6、13に示したような蓋体3の天板3bの近くまで押し上げられた状態から自重で下がるが、図8、15に示したように、蓋体3の側壁の内周面に設けたリブ3aに中栓体2の外向フランジ2bの下端が係止され、取り外した蓋体3から中栓体2が落下することなく、その蓋体3を廃棄することができるので、唾液で汚染された中栓体2には触れることがない。
【0043】
また、本発明の検体採取容器は、図16に示したものでも、前記したものと同様に図16の状態から図17に示したように、収容体1から蓋体3を取り外し、蓋体3からスペーサSを取り除き、このスペーサSを廃棄する。この場合も、未だ検体の採取前なので、前記スペーサSは汚染されておらず、そのまま廃棄しても廃棄汚染の問題は生じない。
【0044】
次に、図17に示した蓋体3を手にもって、破断部材6の先端に形成した採取部6aで便などの検体を採取し、図18に示したように、この採取部6aを収容体1の中栓体2内に入れ、図19に示したように、収容体1に再び蓋体3を取り付ける。この場合、蓋体3を徐々にねじ込んでいくと、蓋体3に垂設した破断部材6の採取部6aが徐々に下がっていき、中栓体2の底板2cに当接し、この底板2cを破断する。すると、採取部6aの便などの検体が収容体1内の保存液に浸かり、収容体1内の保存液と混合する。
【0045】
そして、本発明の検体採取容器は、蓋体3が収容体1に取り付けられた状態で、便などの検体と保存液の混合液は気密状態で保管されたり、輸送される。この場合、中栓体2の底板2cは、薄肉部の一部が連結されたままとなっているので、収容体1内に落下することがない。したがって、前記したものと同様に収容体1内の便と保存液の混合液をシリンジ9などで取り出す場合に、底板2cが邪魔になるようなことはない。
【0046】
本発明の検体採取容器は、以上に述べたように構成されているので、保管や輸送するのに便利なものとなる共に、保管中や輸送中に粉塵や雑菌などで汚染されることがないものとなる。
【0047】
また、本発明の検体採取容器は、被験者自身で採取できるので医療従事者への二次感染を避けられる。
【0048】
また、本発明の検体採取容器は、一体に組み合わせられており、被験者が使用方法に迷うことなく誤操作を生じない。
【0049】
また、本発明の検体採取容器は、使用するときにも破断部材を直接、手で触ることがないので、この破断部材が雑菌などで汚染されることがない。
【0050】
また、本発明の検体採取容器は、採取検体が付着した部材に触れることなく採取検体を収納し、分析機関などに送ることができるので二次感染を生じず安全性が高い。
【符号の説明】
【0051】
1 収容体
2 中栓体
2a 開口部
2b 外向フランジ
2c 底板
3 蓋体
3a リブ
4 外ネジ部
5 内ネジ部
6 破断部材
S スペーサ
L 保存液
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