(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】エキソソーム及びその調製プロセス及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20240313BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240313BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240313BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240313BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240313BHJP
A61K 35/57 20150101ALI20240313BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240313BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240313BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61P17/00 ZNA
A61P17/02
A61P17/14
A61P29/00
A61K35/57
A61K8/98
A61Q19/00
A61Q7/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022114981
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2023-02-21
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522288762
【氏名又は名称】陞醫生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100230156
【氏名又は名称】松尾 心
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 儒生
(72)【発明者】
【氏名】金 玉堂
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113699103(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112190536(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111228569(CN,A)
【文献】国際公開第2011/034106(WO,A1)
【文献】特開2022-020814(JP,A)
【文献】Journal of Dental Sciences,2021年,Vol.16,pp.586-598
【文献】International Endodontic Journal,2018年,Vol.51,pp.1159-1170
【文献】BioMed Research International,Hindawi Publishing Corporation,2013年,Volume 2013, Article ID 626258,pp.1-8
【文献】Drug Delivery System,2021年,Vol.36-2,pp.90-99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,4′,5-テトラヒドロキシスチルベン-2-O-β-D-グルコシド(THSG)を含有する培養培地で鳥類の胚性間葉系幹細胞(AMSCs)を培養してAMSCsの細胞培養物を得ることと、
該AMSCsの細胞培養物を分離処理にかけてエキソソームを得ることと、を含む、エキソソームを製造する方法。
【請求項2】
該培養培地は、0.1μM~50μMの範囲の濃度のTHSGを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該AMSCsの培養は、24時間~96時間の範囲の期間で実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該分離処理は、サイズ選択分離及び密度選択分離からなる群より選択された、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該サイズ選択分離は、限外ろ過、タンジェンシャルフローろ過(TFF)、透析ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びそれらの組み合わせからなる群より選択された、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該サイズ選択分離は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により製造されたエキソソーム。
【請求項8】
50nm~200nmの範囲の粒度を有する、請求項7に記載のエキソソーム。
【請求項9】
50nm~100nmの範囲の平均粒度を有する、請求項7に記載のエキソソーム。
【請求項10】
請求項7に記載のエキソソームを含
む、皮膚状態を改善する
ための組成物。
【請求項11】
該皮膚状態は、傷、肌の老化、脱毛、皮膚の炎症及びそれらの組み合わせからなる群より選択された、請求項10に記載の
組成物。
【請求項12】
医薬組成物または機能性化粧品組成物として配合される、請求項10に記載の
組成物。
【請求項13】
経口投与
または非経口投
与で投与される、請求項12に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エキソソームを製造する方法及び該方法で調製されたエキソソームに関する。本開示は、該エキソソームを使用して皮膚状態を改善することにも関する。
【背景技術】
【0002】
エキソソームは、細胞から分泌されるナノサイズのベシクルであり、且つ細胞外小胞(EVs)に属する。エキソソームは、さまざまな生体液に存在し(例えば羊水、尿液、血液など)、且つタンパク質、脂質、mRNAs及びmiRNAsを多く含む。
【0003】
エキソソームの生物学的活性を研究する場合、サイズ選択分離(例えば、ろ過、透析及びクロマトグラフィー)及び密度選択分離(例えば、遠心分離)が、幹細胞培養物からエキソソームを分離することによく用いられる。
【0004】
異なる種類の幹細胞により製造したエキソソームは、異なる生物学的活性を有することが先行研究で実証されている。例えば、Wang Y. et al. (2017), Stem cell Res. Ther., 8:189において、ヒトの胚性幹細胞誘導間葉系幹細胞(ESC-MSCs)由来のエキソソームは、軟骨細胞の細胞外基質(ECM)の合成及び分解のバランスを取ることにより、変形性関節症に有益な治療効果を発揮することが報告されている。更に、Kim Y.J. et al. (2017), Biochem. Biophys. Res. Commun., 493:1102-1108において、ヒト臍帯血からの間葉系幹細胞(UCB-MSCs)由来のエキソソームは、人の皮膚に吸収されて皮膚でI型コラーゲン及びエラスチンの合成を促進することができ、故に肌の若返りに不可欠であることが開示されている。
【0005】
上記のような報告があるが、今はエクソソームに対する市場からの高い需要により、エキソソームの量産に役立つ新たな方策を立てる必要がまだある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本開示は、先行技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができる、エキソソームを製造する方法を提供する。
【0007】
該方法は、2,3,4′,5-テトラヒドロキシスチルベン-2-O-β-D-グルコシド(THSG)を含有する培養培地で鳥類の胚性間葉系幹細胞(AMSCs)を培養してAMSCsの細胞培養物を得ることと、該AMSCsの細胞培養物を分離処理にかけてエキソソームを得ることとを含む。
【0008】
第2の態様において、本開示は、先行技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができ且つ上記の方法で製造されたエキソソームを提供する。
【0009】
第3の態様において、本開示は、皮膚状態を改善する方法を提供し、該方法は、先行技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができ且つそれを必要とする対象に上記のエキソソームを含む組成物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
【
図1】後述の実施例2の各グループにおけるエキソソーマルタンパク質含有量を示す図であり、記号“*”はp<0.05(対照群との比較)を表す。
【
図2】後述の実施例2の各グループにおけるエキソソーマルRNA含有量を示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図3】後述の実施例4の各グループにおけるCOL1A1遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図4】後述の実施例4の各グループにおけるCOL3A1遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図5】後述の実施例4の各グループにおけるELN遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図6】後述の実施例5の各グループにおける細胞生存比率を示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図7】後述の実施例6の各グループにおける創傷治癒の観察から得られた結果を示す図である。
【
図8】後述の実施例7の各グループにおける細胞生存比率を示す図であり、記号“***”はp<0.001(対照群との比較)を表す。
【
図9】後述の実施例8の各グループにおけるIL-6遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(正常対照群との比較)を表し且つ記号“###”はp<0.001(病態対照群との比較)を表す。
【
図10】後述の実施例8の各グループにおけるIL-1β遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(正常対照群との比較)を表し且つ記号“###”はp<0.001(病態対照群との比較)を表す。
【
図11】後述の実施例8の各グループにおけるTNF-α遺伝子の相対的な発現レベルを示す図であり、記号“***”はp<0.001(正常対照群との比較)を表し且つ記号“###”はp<0.001(病態対照群との比較)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、何らかの先行技術文献が本明細書において引用されても、台湾またはいかなる国におい
【0012】
ても、該先行技術文献の内容が本発明の属する分野における一般知識であることを示すものではないことを理解されたい。
【0013】
また、「含む」という用語は「含むが、これに限定されない」ことを意味し、「含める」という用語もこれに対応する意味を有することも理解されたい。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者であれば、本開示の実施において、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識し、利用することができる。実際、本開示は記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0015】
本開示は、エキソソームを製造する方法を提供し、
該方法は、2,3,4′,5-テトラヒドロキシスチルベン-2-O-β-D-グルコシド(THSG)を含有する培養培地で鳥類の胚性間葉系幹細胞(AMSCs)を培養してAMSCsの細胞培養物を得ることと、
該AMSCsの細胞培養物を分離処理にかけてエキソソームを得ることとを含む。
【0016】
本開示によれば、該エキソソームは、1×108particles/mg以上の量で取得することができる。一部の実施形態において、該エキソソームは、1×109particles/mg~1×1010particles/mgの範囲の量で取得できる。例示的な実施形態において、該エキソソームの量は、5.08×109particles/mgである。
【0017】
本開示によれば、該AMSCsは、8.3×107細胞~8.3×109細胞の範囲の量で存在する。一部の実施形態において、該AMSCsの量は、1×108細胞である。
【0018】
本開示によれば、該培養培地は、0.1μM~50μMの範囲の濃度のTHSGを含有することができる。一部の実施形態において、該培養培地は、25μMのTHSGを含有する。
【0019】
本開示によれば、THSGは、当業者の周知技術を用いて植物性材料、例えばツルドクダミ、から分離されたものであることができる。この点について、当業者は、学術論文、例えば、Tsai P.W.et al.(2018),Molecules,23(3):571を参照することができる。
【0020】
一部の実施形態において、本開示で使用することに適切なTHSGは、市販品として入手することができ、例えば成都バイオピュリファイファイトケミカルス社(Chengdu Biopurify Phytochemicals Ltd.)から購入したスチルベン配糖体(カタログ番号BP0039)であり得る。
【0021】
本明細書で使用される「培養する」という用語は、他の用語、例えば「培養」、「栽培」などと互換可能に使うことができる。
【0022】
該AMSCsを培養するための手順と作用条件は、実際の要求に応じて調整することができる。この点について、当業者は、学術論文、例えば、Gao Y.et al.(2013),Biomed.Res.Int.,doi:10.1155/2013/626258を参照することができる。
【0023】
本開示によれば、該AMSCsを培養することに適切な培養培地は、AMSCsの成長を促進するために様々な栄養素を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含むことができるが、それに限らない。更に、該培養培地は、添加物、例えばウマ、子ウシまたはウシ胎仔血清など、を添加することができる。
【0024】
本開示によれば、該AMSCsの培養は、36℃~37℃の範囲の温度で実行することができる。一部の実施形態において、該AMSCsの培養は、37℃の温度で実行する。
【0025】
本開示によれば、該AMSCsの培養は、24時間~96時間の範囲の期間で実行することができる。一部の実施形態において、該AMSCsの培養は、36時間の期間で実行する。
【0026】
本開示によれば、該分離処理の手順及び作動条件は、実際の要求に応じて調整することができる。この点について、当業者は、学術論文、例えば、上記のWang Y.et al.(2017)を参照することができる。
【0027】
本開示によれば、該分離処理は、サイズ選択分離及び密度選択分離からなる群から選択することができる。
【0028】
本開示によれば、該サイズ選択分離は、ろ過(例えば限外ろ過及びタンジェンシャルフローろ過(TFF)など)、透析(例えば透析ろ過など)、クロマトグラフィー(例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)など)及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。一部の実施形態において、該サイズ選択分離は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の組み合わせである。
【0029】
本開示によれば、TFFは、100kDa~500kDaの範囲の分画分子量(MWCO)値を有するろ過膜を使用して実行することができる。一部の実施形態において、TFFは、500kDaの分画分子量(MWCO)値を有するろ過膜を使用して実行する。
【0030】
本開示によれば、TFFは、流量が50mL/min~200mL/minの範囲で実行することができる。一部の実施形態において、TFFは、流量が80mL/min~120mL/minの範囲で実行する。
【0031】
本開示によれば、SECは、15℃~25℃の範囲のカラム温度で実行することができる。一部の実施形態において、SECは、25℃のカラム温度で実行する。
【0032】
本開示によれば、該密度選択分離は、超遠心分離法及び密度勾配遠心分離法からなる群から選択される遠心分離処理であることができる。
【0033】
本開示は、上記の方法で調製されたエキソソームも提供する。
【0034】
本開示によれば、該エキソソームは、50nm~200nmの範囲の粒度を有することができる。一部の実施形態において、該エキソソームは、50nm~150nmの範囲の粒度を有する。
【0035】
本開示によれば、該エキソソームは、50nm~100nmの範囲の平均粒度を有することができる。一部の実施形態において、該エキソソームは、72nmの平均粒度を有する。
【0036】
本開示によれば、該エキソソームは、粉体状の製品を得るように、当業者の周知技術を用いて乾燥処理にかけることができる。乾燥処理の例は、凍結乾燥処理、噴霧乾燥処理、真空乾燥処理及び流動層乾燥を含むことができるが、それらに限らない。一部の実施形態において、該エキソソームは、凍結乾燥処理にかけられる。
【0037】
更に、本開示は、皮膚状態を改善する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に上記のエキソソームを含む組成物を投与することを含む。
【0038】
本明細書で使用される「投与」または「投与する」という用語は、「意図された機能を果たすために、任意の適切な経路で予め決められた活性成分を対象に導入、提供または送達する」ことを意味する。
【0039】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなど、関心のあるあらゆる動物を指す。一部の実施形態において、該対象はヒトである。
【0040】
本開示によれば、該皮膚状態は、傷、肌の老化、脱毛、皮膚の炎症及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0041】
本明細書で使用される「肌の老化」という用語は、自然に起こる内因性皮膚老化と、環境要因(紫外線など)に起因する外因性皮膚老化が含まれることを意図している。肌の老化の例は、毛細血管拡張症、表皮が薄くなること、皮膚萎縮、コラーゲン線維及び弾性線維の減少、弾性線維症、皮膚弾力性の低下、粗い肌のキメ、乾燥、シワの形成、色素変化(例えば黒子、そばかす、低色素沈着または高色素沈着など)を含むことができるが、それらに限らない。
【0042】
本開示によれば、該組成物は、機能性化粧品組成物として配合されることができる。該機能性化粧品組成物は、前記の薬学的に許容される担体や、美容的に許容されるアジュバントを更に含み、且つ、当業者の周知技術を用いてスキンケアまたは化粧品用に適切な外用剤にすることができる。
【0043】
該美容的に許容されるアジュバントの例は、溶剤、ゲル化剤、活性剤、酸化防止剤、スクリーニング剤、界面活性剤、着色剤、増粘剤、充填剤、香料及び臭気吸収剤を含むことができるが、それらに限らない。該美容的に許容されるアジュバントの選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0044】
スキンケアまたは化粧品用に適切な該外用剤の例は、水溶液、水-アルコール溶液または油性溶液、水中油型、油中水型または複合エマルション、ゲル、軟膏、クリーム、マスク、パッチ、パック、包帯、塗布剤、パウダー、エアゾール、スプレー、ローション、セラム、ペースト、フォーム、分散液、懸濁液、ドロップ、ムース、硬膏、日焼け止め、トニックウォーター、ファンデーション、アイシャドウなどを含むことができるが、それらに限らない。
【0045】
本開示によれば、組成物は、当業者の周知技術を用いて、例えば非経口または経口投与に適切な剤形の医薬組成物に調製することができる。
【0046】
非経口投与の場合、本開示の該医薬組成物は、注射液、例えば無菌水溶液または分散液に配合されることができる。
【0047】
本開示の該医薬組成物は、腹腔内注射、筋肉内注射、表皮内注射、皮下注射、皮内注射、病巣内注射の非経口経路の1つを介して投与することができる。
【0048】
本開示によれば、経口投与の適切な剤形は、無菌粉末、タブレット、トローチ、ロゼンジ、ペレット、カプセル、分散性粉末または顆粒、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル剤、スラリーなどを含むことができるが、それらに限らない。
【0049】
本開示によれば、該医薬組成物は、製薬の技術に広く使用されている薬学的に許容される担体を更に含むことができる。例えば、該薬学的に許容される担体は、溶剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁化剤、分解剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、保存剤、湿潤剤、潤滑剤、吸収遅延剤、リポソームなどの剤から1種又は複数種以上を含むことができる。上記の剤の選択及び量は、当業者の専門知識及び習慣的な技能の範囲内である。
【0050】
上記の医薬組成物の用量及び頻度は、治療する病気や疾患の深刻さ、投与経路、治療する対象の年齢、健康状態、反応などの要因によって変えることができる。一般的に、該医薬組成物は、単回投与又は数回に分けて投与することができる。
【0051】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0052】
一般実験材料
1.以下の実験に使用した2,3,4′,5-テトラヒドロキシスチルベン-2-O-β-D-グルコシド(THSG)は、上記のTsai P.W.et al.(2018)に記載されている手順で調製した。
【0053】
2.鳥類の胚性間葉系幹細胞(AMSCs)及びヒト歯髄幹細胞(DPSCs)のそれぞれは、上記のGao Y.et al.(2013)及びLin C.Y.et al.(2019),J.Endod.,45:435-441に記載されている手順で調製した。
【0054】
3. ヒト皮膚線維芽細胞(HSFs)
以下の実験で使用した該HSFsは、台湾の財団法人食品工業発展研究所(FIRDI)のバイオソース収集・研究センター(BCRC)(No.331,Shih-Pin Rd.,Hsinchu City 300,Taiwan)から購入したものである。該HSFsは、10%のウシ胎仔血清(FBS)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンが添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Corning(商標)、カタログ番号10-017-CM)を含有する75Tフラスコで培養された。該HSFsは、37℃及び5%CO2に設定した培養条件で培養器で培養された。2~3日ごとに培地交換を実行した。培養された細胞がコンフルエントの80%~90%に達したときに細胞通過を実行した。
【0055】
4. ヒト毛乳頭細胞(HFDPCs)
以下の実験で使用した該HFDPCsは、PromoCell GmbH社(ドイツ、ハイデルベルク市)(カタログ番号C-12071)から購入したものである。該HFDPCsは、1%の成長培地サプリメントミックス(PromoCell GmbH社、カタログ番号C-39625)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンが添加された毛乳頭細胞増殖培地(FDPCGM)(PromoCell GmbH社、カタログ番号C-26501)を含有する75Tフラスコで培養された。該HFDPCsは、37℃及び5%CO2に設定した培養条件で培養器で培養された。2~3日ごとに培地交換を実行した。培養された細胞がコンフルエントの80%~90%に達したときに細胞通過を実行した。
【0056】
基本手順
1. 統計分析
以下に説明する実験はすべて3回繰り返し行った。すべての試験グループの実験データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)で表される。統計分析は、IBM(商標) SPSS(商標) Statistics version 19.0(米SPSS Inc.社、米国イリノイ州)を用いて行った。すべてのデータは、グループ間の差異を評価するために、両側スチューデントのt検定を用いて分析された。統計的な有意性はp<0.05で示される。
【0057】
[実施例1]AMSCsからのエキソソームの製造に対してTHSGの効果の評価
「一般実験材料」のセクション2に調製されたAMSCsは、1つの対照群及び1つの実験群を含む2つのグループに分けられた。各グループのAMSCsは、5×106cells/wellで、2.5%のFBSが添加された5mLのDMEMを含有する10-cmのペトリ皿で培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で48時間培養された。各グループの得られた細胞培養物は、1×108の細胞数を有する。次に、該実験群の細胞培養物は、25μMのTHSGを含有する新鮮なDMEM培地に置き換えられ、該対照群の細胞培養物は、THSGを含有しない新鮮なDMEM培地に置き換えられた。各グループは、培養器(37℃、5%CO2)で36時間培養された。
【0058】
その後、各グループの液体の細胞培養物を、1000gで10分間の遠心分離処理にかけて、沈殿物を除去した。該遠心分離処理を2回繰り返した。得られた上澄みを、収集し、そして、フィルター(メッシュ:0.22μm)を使用してろ過することにより、第1のろ液を得た。
【0059】
各グループの該第1のろ液をタンジェンシャルフローろ過(TFF)にかけることにより、第2のろ液を得た。TFFは、ポンプ(回転速度:80-120mL/min)と500kDaの変性ポリエーテルスルホン(mPES)を用いる中空糸ろ過モジュールとを備えるミニタンジェンシャルフローろ過システムを使用することにより実行された。
【0060】
各グループの該第2のろ液を、フィルター(メッシュ:0.22 μm)を使用してろ過することにより、第3のろ液を得た。各グループの該第3のろ液を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用してろ過することにより、エキソソーム含有の溶出液を得た。SEC分析は、SEC qEVカラム(カラム温度:25℃)を使用し且つリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を溶離液として使用することにより実行された。
【0061】
各グループの溶出液を、凍結乾燥処理にかけることにより、実験群の乾燥エキソソーム粉末及び対照群の乾燥エキソソーム粉末を得た。
【0062】
[実施例2]エキソソーム成分の分析
A. エキソソーマルタンパク質含有量の測定
実施例1で調製した2つの乾燥エキソソーム粉末のそれぞれの1つを100mgでRIPA溶解バッファーと混合し、続いて、メーカーの指示に従ってPierce(商標)BCAタンパク質測定キット(米Thermo Fisher Scientific Inc.社、カタログ番号23225)を使用して、エキソソーマルタンパク質含有量を測定した。
【0063】
更に、ウシ血清アルブミン(BSA)をコントロールスタンダード(0、1.953、3.90625、7.8125、15.625、31.25、62.5、125及び250μg/mLの濃度で提供された)として使用し、且つ、同じ分析にかけた。
【0064】
図1を参照すると、実験群における測定されたエキソソーマルタンパク質含有量は、対照群における測定されたものより著しく高い。
【0065】
B. エキソソーマルRNA含有量の測定
実施例1で調製した2つの乾燥エキソソーム粉末のそれぞれの1つを100mgで、メーカーの指示に従ってqEV RNA抽出キット(IZON社、カタログ番号RXT01)を使用して、エキソソーマルRNA含有量を測定した。
【0066】
図2を参照すると、実験群で測定されたエキソソーマルRNA含有量は、対照群で測定されたものより著しく高い。
【0067】
[実施例3]異なる幹細胞からのエキソソームの製造に対してTHSGの効果の評価
「一般実験材料」のセクション2で調製されたDPSCsを、同じ実施例1に記載されたTHSG処理、エキソソーム分離及び凍結乾燥処理にかけることにより、(比較群として)DPSCsからの乾燥エキソソーム粉末を得た。
【0068】
実施例1で調製した実験群の乾燥エキソソーム粉末及び比較群の乾燥エキソソーム粉末のそれぞれの1つを18mgで、蒸留水と混合し、続いて、含有量及び粒度の測定を、調整可能な抵抗脈波検出(tRPS)技術に基づいてqNanoシステム(ニュージーランドIzon Science Ltd.社)を使用して行った。
【0069】
下記の表1に示されるように、実験群で測定されたエキソソーム含有量は、比較群で測定されたものより著しく高い。更に、実験群のエキソソーム含有量は、53nm~245nmの範囲の粒度及び72nmの平均粒度を有する。
【0070】
【0071】
これらの結果から、本開示の方法は、高含有量のエキソソームを製造でき、且つそれにより得られたエキソソームが比較的に小さい粒度を有することを示した。
【0072】
[実施例4]本開示によるエキソソームの抗しわ効果の評価
材料:
1.エキソソーム懸濁液の調製
実施例1で調製した実験群の乾燥エキソソーム粉末の適切な量を無菌超純水に懸濁させることにより、エキソソーム懸濁液を得た。
【0073】
方法:
「一般実験材料」のセクション3で調製されたHSFsは、1つの対照群及び3つの実験群(即ち、実験群1~3)を含む4つのグループに分けられた。各グループのHSFsは、1×105cells/wellで、10%のFBSが添加された2mLのDMEMを含有する6ウェル培養プレートの各ウェルに培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。
【0074】
その後、3つの実験群及び対照群の各細胞培養物は、0.25%のチャコール処理ウシ胎児血清(CS-FBS)(カタログ番号12676029、米Thermo Fisher Scientific Inc.社)を含有する新鮮な2mLのDMEM培地に置き換えられた。次に、該3つの実験群の細胞培養物は、各細胞培養物が表2に示される最終濃度を有するように、この実施例の「材料」のセクション1で調製されたエキソソーム懸濁液の適切な量で処理された。更に、対照群の細胞培養物は、処理を受けていない。
【0075】
【0076】
各グループは、培養器(37℃、5%CO2)で48時間培養された。5分間5000rpmの遠心分離の後、得られた細胞ペレットを収集し、そして、メーカーの指示に従ってGENEzol(商標)TriRNA純粋キット (台湾Geneaid社、カタログ番号GZXD200)を使用してトータルRNA抽出にかけた。得られたそれぞれのグループのRNAは、メーカーの指示に従ってRevertAid H Minus First Strand cDNA合成キット(米Thermo Fisher Scientific Inc.社、カタログ番号K1631)を使用して逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりcDNAを合成するためのテンプレートとした。
【0077】
そのように得られたcDNAを、DNAテンプレートとして、SYBR-Green I fluorescenceに基づいて定量的なリアルタイムPCRにかけ、それは、表3に示されるCOL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子、ELN遺伝子に対して特異的に設計されたプライマー対及び表4に示される反応条件を使用してCFX Connect(商標)リアルタイムPCR解析システム(米Bio-Rad Laboratories, Inc.社)で実行した。18SrRNA遺伝子は、リアルタイムPCRの定量分析の内在性コントロールとして使用されて、遺伝子発現データを正常化する。
【0078】
【0079】
【0080】
得られたPCR産物を蛍光強度測定にかけ、続いて、各COL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子及びELN遺伝子のサイクル閾(Ct)値を計算した。定量リアルタイムPCRデータは、比較Ct方法を使用して分析された。簡潔に言うと、各グループにおける各COL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子及びELN遺伝子のCt値は、18S rRNA遺伝子のもので正常化され、且つ、各COL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子及びELN遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、以下の式(I)を使用して更に計算された。
【0081】
A=B/C (I)
式中、A=COL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子、またはELN遺伝子の相対的なmRNA発現レベル
B=それぞれのグループにおけるCOL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子、またはELN遺伝子の正常化されたCt値
C=対照群におけるCOL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子、またはELN遺伝子の正常化されたCt値
【0082】
こうして得られたデータは、「基本手順」のセクション1に記載された方法に従って解析された。
【0083】
結果:
図3~5を参照すると、実験群1~3における測定されたCOL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子及びELN遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、対照群における測定されたものより高い。更に、実験群3における測定されたCOL1A1遺伝子、COL3A1遺伝子及びELN遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、実験群1における測定されたものより著しく高い。
【0084】
これらの結果から、本開示の方法で製造されたエキソソームは、皮膚線維芽細胞からのコラーゲン及びエラスチンの分泌を用量依存的に促進でき、それにより抗しわ効果を達成することを示した。
【0085】
[実施例5]本開示によるエキソソームの皮膚再生促進効果の評価
方法:
「一般実験材料」のセクション3で調製されたHSFsは、1つの対照群及び1つの実験群を含む2つのグループに分けられた。各グループのHSFsは、それぞれが5×103cells/wellで、10%のFBSが添加された100μLのDMEMを含有する96ウェル培養プレートのウェルで培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。
【0086】
その後、実験群及び対照群の各細胞培養物は、0.25%のCS-FBSを含有する新鮮な100μLのDMEM培地に置き換えられた。次に、実験群の細胞培養物は、各細胞培養物が70μg/mLの最終濃度を有するように、実施例4の「材料」のセクション1で調製されたエキソソーム懸濁液の適切な量で処理された。更に、対照群の細胞培養物は、処理を受けていない。
【0087】
各グループは、培養器(37℃、5%CO2)で72時間培養された。次に、実験群及び対照群の各細胞培養物は、20%MTS溶液(CellTiter 96(商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay Kit)(米Promega Corporation社、カタログ番号G3581)を含有する成長培地に置き換えられ、続いて、培養器(37℃、5%CO2)で2時間培養された。
【0088】
得られた細胞培養物のそれぞれを、VersaMax ELISA reader(米Molecular Devices社)により490nm波長における吸収(OD490)の測定を行った。細胞生存比率(%)は、以下の式(II)を使用して計算された。
【0089】
D=(E/F)×100 (II)
式中、D=細胞生存比率(%)
E=それぞれのグループのOD490値
F=対照群のグループのOD490値
【0090】
こうして得られたデータは、「基本手順」のセクション1に記載された方法に従って解析された。
【0091】
結果:
図6を参照すると、実験群における測定された細胞生存比率は、対照群における測定されたものより著しく高い。これらの結果から、本開示の方法により製造されたエキソソームは、皮膚線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚再生を改善することができることを示した。
【0092】
実施例6.本開示によるエキソソームの傷の治癒の促進効果の評価
方法:
「一般実験材料」のセクション3で調製されたHSFsは、1つの対照群及び1つの実験群を含む2つのグループに分けられた。各グループのHSFsは、それぞれが2.5×105cells/wellで、10%のFBSが添加された500μLのDMEMを含有する24ウェル培養プレートのウェルで培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。
【0093】
その後、実験群及び対照群の各細胞培養物は、新鮮な100μLのDMEM培地に置き換えられ、続いて、培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。次に、無菌鉗子を使用して約500μmの無細胞傷エリアを作り出すように、各グループの細胞培養物を対応のウェルの直径に沿ってこすり落とした。その後、実験群及び対照群の各細胞培養物は、0.25%のCS-FBSを含有する新鮮な500μLのDMEM培地に置き換えられた。実験群の細胞培養物は、細胞培養物が70μg/mLの最終エキソソーム濃度を有するように、実施例4の「材料」のセクション3で調製されたエキソソーム懸濁液の適切な量で処理された。更に、対照群の細胞培養物は、処理を受けていない。
【0094】
その後、各グループの細胞培養物は、培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。培養を実行する前及び培養開始から第24時間に、各グループの傷エリアを、40×の倍率で倒立顕微鏡(メーカー:オリンパス、型番:CKX53)で観測し、そして、デジタルカメラ(メーカー:オリンパス、型番:EP50)を使用して撮影した。
【0095】
結果:
図7を参照すると、対照群との比較において、傷の治癒は、培養開始から第24時間の実験群で明瞭に観測された。この結果から、本開示の方法により製造されたエキソソームは、線維芽細胞媒介の傷の塞ぎを有効に改善することができることを示し、故に、傷の治癒の促進に優れた効果があることを示した。
【0096】
実施例7.本開示によるエキソソームの脱毛改善効果の評価
方法:
「一般実験材料」のセクション4で調製されたHFDPCsは、1つの対照群及び1つの実験群を含む2つのグループに分けられた。HFDPCsの各グループは、それぞれが5×103cells/wellで、1%の成長培地サプリメントミックスが添加された100μLのFDPCGMを含有する96ウェル培養プレートのウェルで培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。
【0097】
その後、実験群及び対照群の各細胞培養物は、新鮮な100μLのFDPCGMに置き換えられた。その後、実験群の細胞培養物は、細胞培養物が70μg/mLの最終エキソソーム濃度を有するように、実施例4の「材料」のセクション1で調製されたエキソソーム懸濁液の適切な量で処理された。更に、対照群の細胞培養物は、処理を受けていない。
【0098】
各グループは、培養器(37℃、5%CO2)で96時間培養された。次に、該実験群及び対照群の各細胞培養物は、20%MTS溶液(CellTiter 96(商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay Kit)(米Promega Corporation社、カタログ番号G3581)を含有する成長培地に置き換えられ、続いて、培養器(37℃、5%CO2)で2時間培養された。得られた細胞培養物のそれぞれに対し、VersaMax ELISA reader(米Molecular Devices社)により490nm波長における吸収(OD490)の測定を行った。細胞生存比率(%)は、上記の式(II)を使用して計算された。
【0099】
こうして得られたデータは、「基本手順」のセクション1に記載された方法に従って解析された。
【0100】
結果:
図8を参照すると、実験群における測定された細胞生存比率は、対照群における測定されたものより著しく高い。これらの結果から、本開示の方法により製造されたエキソソームは、毛嚢の再生を有効的に促進し、故に、脱毛を改善することに優れた効果があることを示した。
【0101】
実施例8.本開示によるエキソソームの抗炎症効果の評価
方法:
「一般実験材料」のセクション3で調製されたHSFsは、1つの正常対照群、1つの実験群及び1つの病態対照群を含む3つのグループに分けられた。各グループのHSFsは、それぞれが1×105cells/wellで、10%のFBSが添加された2mLのDMEMを含有する6ウェル培養プレートのウェルで培養され、続いて培養器(37℃、5%CO2)で24時間培養された。
【0102】
その後、実験群の細胞培養物は、0.25%のCS-FBS及び1μg/mLのリポ多糖体(LPS)(大腸菌血清型 O111:B4(Sigma)から得られた)が添加された新鮮な1mLのDMEM培地に置き換えられ、病態対照群の細胞培養物は、1μg/mLのLPSが添加された新鮮な1mLのDMEM培地に置き換えられ、且つ正常対照群の細胞培養物は、新鮮な1mLのDMEM培地に置き換えられた。その後、実験群の細胞培養物は、細胞培養物が0.07μg/mLの最終エキソソーム濃度を有するように、実施例4の「材料」のセクション1で調製されたエキソソーム懸濁液の適切な量で処理された。更に、正常対照群及び病態対照群の細胞培養物は、処理を受けていない。
【0103】
各グループは、培養器(37℃、5%CO2)で6時間培養された。5分間5000rpmの遠心分離の後、得られた細胞ペレットを収集し、そして、実施例4に記載されている手順に従ってトータルRNA抽出及びRT-PCRを行った。
【0104】
そのように得られたcDNAを、DNAテンプレートとして、表5に示されるIL-6遺伝子、IL-1β遺伝子、TNF-α遺伝子に対して特異的に設計されたプライマー対及び表4に示される反応条件を使用して、実施例4に記載されている手順に従って定量的なリアルタイムPCRにかけた。18SrRNA遺伝子は、リアルタイムPCRの定量分析の内在性コントロールとして使用されて、遺伝子発現データを正常化する。
【0105】
【0106】
得られたPCR産物を蛍光強度測定にかけ、続いて、各IL-6遺伝子、IL-1β遺伝子及びTNF-α遺伝子のサイクル閾(Ct)値を計算した。定量リアルタイムPCRデータは、実施例4に記載されている比較Ct方法を使用して分析され、且つ、各IL-6遺伝子、IL-1β遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、以下の式(III)を使用して更に計算された。
【0107】
G=H/I (III)
式中、G=IL-6遺伝子、IL-1β遺伝子、またはTNF-α遺伝子の相対的なmRNA発現レベル
H=それぞれのグループにおけるIL-6遺伝子、IL-1β遺伝子、またはTNF-α遺伝子の正常化されたCt値
I=正常対照群におけるIL-6遺伝子、IL-1β遺伝子、またはTNF-α遺伝子の正常化されたCt値
【0108】
こうして得られたデータは、「基本手順」のセクション1に記載された方法に従って解析された。
【0109】
結果:
図9~11を参照すると、病態対照群における測定されたIL-6遺伝子、IL-1β遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、正常対照群における測定されたものより著しく高く、HSFsにおいてLPSが炎症の誘発に成功したことを示した。更に、実験群における測定されたIL-6遺伝子、IL-1β遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的なmRNA発現レベルは、病態対照群における測定されたものより低い。
【0110】
これらの結果から、本開示の方法で製造されたエキソソームは、炎症誘発性のサイトカインの表現を有効的に抑止でき、故に優れた抗炎症効果を示した。
【0111】
上記試験結果をまとめと、本開示の方法は、AMSCsが大量のエキソソームを含有する高濃度のタンパク質及びRNAを製造することを促進できる。更に、本開示の方法により製造されたエキソソームは、皮膚再生及び傷の治癒、しわの低減及び皮膚の炎症、脱毛の改善を促進する能力がある。その結果、本開示の方法により製造されたエキソソームは、皮膚状態及びスキンケア製品に関する医薬品として開発される可能性が高いと考えられる。
【0112】
以上、本開示の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
[配列表]
<110> ASCENSION MEDICAL BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
<120> EXOSOME AND PREPARATION PROCESS AND USE THEREOF
<130> PE-66132-JA
<160> 14
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 16
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Forward primer COL1A1-F of COL1A1 gene for quantitative real-time PCR
<400> 1
gtcagatggg cccccg 16
<210> 2
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Reverse primer COL1A1-R of COL1A1 gene for quantitative real-time PCR
<400> 2
caccatcatt tccacgagca 20
<210> 3
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Forward primer COL3A1-F of COL3A1 gene for quantitative real-time PCR
<400> 3
gaggatggtt gcacgaaaca c 21
<210> 4
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Reverse primer COL3A1-R of COL3A1 gene for quantitative real-time PCR
<400> 4
cagccttgcg tgttcgatat t 21
<210> 5
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Forward primer ELN-F of ELN gene for quantitative real-time PCR
<400> 5
caggtgcggt ggttcctc 18
<210> 6
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Reverse primer ELN-R of ELN gene for quantitative real-time PCR
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<211> 20
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<220>
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gtaacccgtt gaaccccatt 20
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<220>
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<400> 9
acccccagga gaagattcca 20
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gatgccgtcg aggatgtacc 20
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gcagccatgg cagaagtacc 20
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<223> Reverse primer IL-1β-R of IL-1β gene for quantitative real-time PCR
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<223> Forward primer TNF-α-F of TNF-α gene for quantitative real-time PCR
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<223> Reverse primer TNF-α-R of TNF-α gene for quantitative real-time PCR
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【配列表】