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特許7453709キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240313BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/51
A61K31/704
A61K48/00
A61P35/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022162857
(22)【出願日】2022-10-10
(65)【公開番号】P2024002868
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】202210731610.3
(32)【優先日】2022-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515223167
【氏名又は名称】中国海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【弁理士】
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】常 菁
(72)【発明者】
【氏名】韓 宝芹
(72)【発明者】
【氏名】孫 楽
(72)【発明者】
【氏名】谷 志洋
(72)【発明者】
【氏名】王 立▲とう▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 麗々
(72)【発明者】
【氏名】李 文雅
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第110124044(CN,B)
【文献】米国特許出願公開第2019/0321477(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104758940(CN,A)
【文献】Redox-responsive nanocarriers for drug and gene co-delivery basedon chitosan derivatives modified mesoporous silica nanoparticles,Colloids and Surfaces B: Biointerfaces,2017年,155,pp.41-50,http://dx.doi.org/10.1016/j.colsurfb.2017.04.002
【文献】Cationic nanoparticles self-assembled from amphiphilic chitosan derivatives containing poly(amidoamine) dendrons and deoxycholic acid as a vector for co-delivery of doxorubicin and gene,Carbohydrate Polymers,2021年,258,pp.1-9,https://doi.org/10.1016/j.carbpol.2021.117706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61K 48/00
A61P 35/00-35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリアであって、
前記ナノキャリアはキトサンを主体とし、キトサンのアミノ基はそれぞれビタミンEコハク酸エステル(VES)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)、ヒスチジン(His)と結合され、
上記両親媒性は、親水性と疎水性を含み、
前記のキトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア(VCPH)は、疎水性薬物と負に帯電する遺伝子とを共担持し、前記疎水性薬物は、ドキソルビシン(DOX)であり、前記負に帯電する遺伝子は、pGPU6/GFP/Neo STAT3-shRNA(pDNA)であり、
DOX/VCPHの質量比は3:5であり、DOX/VCPHの封入率は84.21±7.77%であり、薬物担持量は最高31.58±2.91%であり、
前記ナノキャリアの表面ゼータ電位は+32.8±7.3mVであり、DOXとpDNAとを共担持した後のDOX/VCPH/pDNAの表面ゼータ電位は+15.1±0.21mVである
ことを特徴とするキトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア。
【請求項2】
前記ナノキャリアは球状又は楕円球状であり、平均粒径は147.6±40.4nmで、PDI=0.38±0.029であり、その中、ビタミンEコハク酸エステルの置換度は4.13%で、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの置換度は22.6%で、ヒスチジンの置換度は17.39%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア。
【請求項3】
前記ナノキャリアは、形態が球状又は楕円球状であり、粒径サイズが比較的に均一であり、分散性がよく、ナノ粒子の間には比較的に強い静電作用があり、良好な生物学的安全性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア。
【請求項4】
キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリアの製造方法であって、
前記ナノキャリアはキトサンを主体とし、キトサンのアミノ基はそれぞれビタミンEコハク酸エステル(VES)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)、ヒスチジン(His)と結合され、
上記両親媒性は、親水性と疎水性を含み、
前記のキトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア(VCPH)は、疎水性薬物と負に帯電する遺伝子とを共担持し、前記疎水性薬物は、ドキソルビシン(DOX)であり、前記負に帯電する電子遺伝子は、pGPU6/GFP/Neo STAT3-shRNA(pDNA)であり、
DOX/VCPHの質量比は3:5であり、DOX/VCPHの封入率は84.21±7.77%であり、薬物担持量は最高31.58±2.91%であり、
前記ナノキャリアの表面ゼータ電位は+32.8±7.3mVであり、DOXとpDNAとを共担持した後のDOX/VCPH/pDNAの表面ゼータ電位は+15.1±0.21mVであり、
前記製造方法は、
(1)キトサン(CS)を希酸溶液に溶解するステップと、
(2)ビタミンEコハク酸エステル(VES)溶液を製造し、活性化剤を添加するステップと、
(3)ステップ(1)で得られたキトサン液をステップ(2)VES溶液に滴下し、反応させるステップと、
(4)ステップ(3)で反応の完了した混合液に対してエタノール沈殿、透析及び凍結乾燥を行って、スポンジ状のビタミンEコハク酸エステル-キトサン(VC)を得るステップと、
(5)ステップ(4)で得られたVCを酸性溶液に溶解し、次に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)溶液を製造して活性化し、続いて、VC溶液をmPEG溶液に滴下して反応させるステップと、
(6)ステップ(5)の反応が完了した後、透析及び凍結乾燥を行って、ビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(VCP)を得るステップと、
(7)ステップ(6)で得られたVCPを酸性溶液に溶解し、次に、ヒスチジン(His)溶液を製造して活性化し、続いて、VCP溶液をHis溶液に滴下して反応させるステップと、
(8)ステップ(7)の反応が完了した後、透析及び凍結乾燥を行って、最終の生成物であるビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル-ヒスチジン(VCPH)を得るステップとを含む、
ことを特徴とする多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリアの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサン(chitosan)が改質されたナノ材料に関する。具体的には、キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア及びその製造方法に関し、海洋生物材料を製造する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
キトサンは、D-グルコサミンとN-アセチルグルコサミンユニットにより構成される。キトサンの脱アセチル化度が約50%に達すると、酸性水溶液に溶解し、キトサンが酸性環境において溶解すると、アミノ基が陽イオンに変化し、キトサンが唯一の陽イオン海洋多糖になる。キトサンは無毒で副作用がなく、良好な保湿や吸着性を持つ。しかしながら、水やほとんどの有機溶媒に溶解しないデメリットを持つため、さまざまな分野における応用が限られている。キトサンのより大きな役割を果たすために、キトサンの活性を有する官能基に対して化学修飾を行うことにより、キトサンの誘導体を得ることができる。化学改質は、キトサンの独自の特性を保留することができるだけではなく、キトサンの物理的及び化学的特性を改善して、キトサン誘導体の応用の範囲を拡大することができる。
【0003】
キトサンを薬物/遺伝子キャリアとして使用することは、現在の研究の焦点であり、幅広い応用の見込みがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリアを提供することである。本発明の他の目的は、このナノキャリアの製造方法を提供することであり、また、このナノキャリアが腫瘍の薬物/遺伝子共同治療における応用について研究する。
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明が採用する具体的な技術的な解決手段は次の通りである。
【0006】
キトサンを基にした多機能及び両親媒性の自己組織化ナノキャリア(VCPH)であって、前記ナノキャリアはキトサンを主体とし、キトサンのアミノ基はそれぞれビタミンEコハク酸エステル(VES)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)、ヒスチジン(His)と結合される。
【0007】
さらに、前記VCPHは球状又は楕円球状であり、平均粒径は147.6±40.4nmで、PDI=0.38±0.029であり、その中、VESの置換度は4.13%で、mPEGの置換度は22.6%で、Hisの置換度は17.39%である。
【0008】
さらに、前記VCPHの表面ゼータ電位は+32.8±7.3mVである。
【0009】
前記VCPHは、形態が球状又は楕円球状であり、粒径サイズは比較的に均一であり、分散性は良好であり、ナノ粒子の間には比較的に強い静電相互作用があり、ナノミセルの安定性を維持することに有利であり、良好な生物学的安全性を有する。
【0010】
上記ナノキャリアの製造方法は、
(1)キトサンを希酸溶液に溶解するステップと、
(2)VES溶液を製造し、活性化剤を添加するステップと、
(3)ステップ(1)で得られたキトサン液をステップ(2)VES溶液に滴下し、反応させるステップと、
(4)ステップ(3)で反応完了した混合液をエタノール沈殿、透析及び凍結乾燥を行って、スポンジ状のビタミンEコハク酸エステル-キトサン(VC)を得るステップと、
(5)ステップ(4)で得られたVCを酸性溶液に溶解し、mPEG溶液を製造して活性化し、続いて、VC溶液をmPEG溶液に滴下して反応させるステップと、
(6)ステップ(5)の反応が完了した後、透析及び凍結乾燥を行って、生成物であるビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(VCP)(Vitamin E Succinate-Chitosan-Polyethylene Glycol Monomethyl Ether)を得るステップと、
(7)前記VCPを酸性溶液に溶解し、His溶液を製造して活性化してから、VCP溶液をHis溶液に滴下して反応させるステップと、
(8)ステップ(7)の反応が完了した後、透析及び凍結乾燥を行って、最終の生成物であるビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル-ヒスチジン(VCPH)を得るステップとを含む。
【0011】
また、本発明は、前記VCPHの共担持疎水性薬物と負に帯電する電子遺伝子キャリアの製造における応用を提供する。
【0012】
さらに、疎水性薬物をジメチルスルホキシドに分散させ、前記VCPHを水に溶解し、両者を均一に混合し、透析処理を行い、次に、封入されなかった疎水性薬物を除去し、凍結乾燥を行う。
【0013】
さらに、負電荷電子遺伝子を水に溶解し、疎水性薬物が封入されたナノ粒子溶液を遺伝子水溶液に滴下し、両者を均一に混合し、静置する。
【0014】
さらに、前記疎水性薬物は疎水性ドキソルビシンであり、負電荷電子遺伝子はすでに構築されたpGPU6/GFP/Neo STAT3-shRNA(pDNA)である。
【0015】
VCPHを基にして製造されたDOX/VCPHの封入率は84.21%であり、薬物担持量は最高31.58%であり、表面ゼータ電位は+28.1±1.3mVである。また、前記DOX/VCPHナノ粒子はπ-π共役作用を有し、一定のpH感度を持つ。
【0016】
VCPHを基にして製造されたDOX/VCPH/pDNAの平均粒径は267.9±8.9nmで、PDI=0.219±0.007であり、表面ゼータ(Zeta)電位は+15.1±0.21mVである。その形態は球状又は楕円球状であり、分散は均一で安定である。体内及び体外機能実験で良好な抗腫瘍効果を示しており、体外腫瘍抑制率は62.40%で、体内腫瘍抑制率は40.12%である。
【0017】
本発明のメリット及び技術的な効果は以下の通りである。
本発明により製造されたVCPHは、分散性が良く、安定性が高く、良好な生物学的安全性を有する。製造された薬物担持ナノ粒子は、安定性が強く、封入率及び薬物担持量が高い。VCPHが薬物キャリアとして効果的に使用できることを実際に検証した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】CS、VC、VCP及びVCPHの赤外線スペクトル画像である。
図2】VCPHのHNRM図である。
図3】VCPHナノ粒子の粒径分布図である。
図4】VCPHナノ粒子の表面ゼータ電位図である。
図5】VCPHナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図6】異なる濃度のVCPHナノ粒子でL929細胞を処理時、24時間及び48時間における増殖状態の観察図である。
図7】異なる濃度のVCPHナノ粒子で処理後、L929細胞の相対増殖率の結果図である。
図8】DOX/VCPHの粒径分布図である。
図9】DOX/VCPHの表面ゼータ電位図である。
図10】DOX/VCPHの走査型電子顕微鏡像である。
図11】DOX・HCl及びDOX/VCPHのUV吸収スペクトル画像である。
図12】DOX/VCPHのpH=5.7及びpH7.4のPBS緩衝液における放出曲線である。
図13】DOX/VCPH/pDNAの粒径分布図である。
図14】DOX/VCPH/pDNAの表面ゼータ電位図である。
図15】DOX/VCPH/pDNAナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図16】DOX・HCl、DOX/VCPH及びDOX/VCPH/pDNAのIC50結果図である。
図17】異なるナノ粒子でA549細胞トランスフェクション後の細胞の相対抑制率の結果図である。
図18】異なるナノコンポジット粒子でA549細胞トランスフェクション後のレーザー共焦点走査型顕微鏡の観察図である。
図19】異なるナノコンポジット粒子でA549細胞トランスフェクション後のGFP陽性率をフローサイトメトリーで検出した結果図である。
図20】異なるナノ粒子群におけるヌードマウスの相対体重の変化図である(生理食塩水群と比較して、*P<0.05)。
図21】異なるナノ粒子群におけるヌードマウスの相対腫瘍直径の変化図である。(生理食塩水群と比較して、*P<0.05、**P<0.01)。
図22】異なる群におけるヌードマウスの主要臓器の臓器指数である。(生理食塩水群と比較して、*P<0.05)。
図23】異なる群におけるヌードマウスの腫瘍切除後の固形腫瘍図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施例を基づき、添付の図面と結合して、本発明を更に解釈及び説明する。
【実施例1】
【0020】
0.24gのキトサンを秤量し、60mLの0.5%酢酸溶液に溶解し、1.59gのVESを40mLのDMFに溶解し、三口フラスコに入れる。次に、1.15gのEDCと0.68gのNHSを秤量し、上記の溶液に添加し、2時間磁気撹拌し、キトサン溶液を定圧滴定漏斗により三口フラスコに滴下し、室温で48時間撹拌する。反応後の混合液を5倍体積の無水エタノールに注ぎ入れて沈殿させ、8時間撹拌した後、12000rpmで室温で20分間遠心分離する。次に、無水エタノールで4~5回洗浄して沈殿させ、200mLの蒸留水で溶解して沈殿させ、透析バッグ(阻止率8000-14000k)に入れ、3日間透析し、凍結乾燥を行って、スポンジ状のビタミンEコハク酸エステル-キトサン(VC)を得る。
【0021】
0.24gのVCを秤量し、60mLの0.5%酢酸溶液に溶解し、後で使用する。0.2gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)を秤量し、60mLの0.5%酢酸溶液に溶解し、0.57gのEDCと0.34gのNHSを添加し、2時間磁気攪拌した後、上記VC溶液をゆっくりと混合液に滴下し、室温で36時間機械撹拌する。反応が完了した後、混合液を透析バッグ(阻止率3500k)に入れ、3日間透析し、凍結乾燥の方法によりビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(VCP)を得る。
【0022】
0.4gのVCPを秤量し、80mLの0.5%酢酸溶液に溶解し、後で使用する。0.193gのヒスチジン(His)を秤量し、脱イオン水に溶解し、0.286gのEDCと0.476gのNHSを添加し、2時間磁気攪拌した後、上記VCP溶液をゆっくりと混合液に滴下し、室温で24時間機械撹拌する。反応が完了した後、混合液を透析バッグ(阻止率8000~14000k)に入れ、3日間透析し、凍結乾燥を行って、最終生成物であるビタミンEコハク酸エステル-キトサン-ポリエチレングリコールモノメチルエーテル-ヒスチジン(VCPH)を得る。
【0023】
赤外線分光スペクトルとNMR(核磁気共鳴)水素スペクトル特性付けを採用して合成された最終生成物であるVCPHの結果を図1図2に示す。赤外線及びNMRの結果を組み合わせると、ビタミンEコハク酸エステル、mPEG及びHisがキトサンへのグラフトに成功したことを判断できる。レーザー粒径電位アナライザーを採用してVCPHナノ粒子の粒径、表面ゼータ電位及び多分散指数(PDI)を測定し、その結果を図3及び図4に示す。VCPHナノ粒子の平均粒径は147.6±40.4nmで、PDI=0.38±0.029で、表面ゼータ電位は+32.8±7.3mVである。
【0024】
上記の結果は、VCPHナノ粒子の粒径サイズが分散して均一であり、ナノ粒子の間に比較的に強い静電相互作用があり、ナノミセルの安定性を維持するために有利であることを示す。走査型電子顕微鏡でVCPHナノ粒子の形態を観察し、その結果を図5に示す。この図から、VCPHナノ粒子は球状又は楕円球状であり、粒径サイズは約100~200nmであり、均一に分散され、明らかな凝集現象がないことが観察できる。
【実施例2】
【0025】
L929細胞が対数増殖期にある時、パンクレアチンを添加して消化した後、培地で消化を停止し、遠心分離し、細胞ペレットを収集し、細胞を再懸濁した後、細胞懸濁液の濃度を2×10個/mLに調整し、1ウェルあたり200μLで96ウェルプレートに播種する。24時間培養した後、ウェルプレート内の古い培地を吸引して廃棄し、200μLの異なる濃度のVCPH溶液を含む培地を添加し、濃度勾配を10、50、100及び200μg/mLに設定し、通常の培地で培養された細胞播種ウェル及び通常の培地のみを含むが細胞が播種されていないウェルをそれぞれ対照群及びブランク対照群として設定し、各群に6セットの重複ウェルを設定する。穏やかに混ぜた後、ウェルプレートを24時間及び48時間インキュベートした後、それぞれ異なる時点で取り出し、倒立顕微鏡下で細胞の形態を観察し、写真を撮る。次に、各ウェルに20μLの製造されたMTT溶液を添加し、37℃のインキュベーターで4時間インキュベートし、上清液を吸引して廃棄し、150μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加し、マイクロプレートリーダーで37°Cで10分間振とうしながらインキュベートした後、492nmの波長で各ウェルの吸光度値(OD値)を測定する。次の公式に従って、細胞の相対増殖率(RGR)は算出する。
【0026】
細胞の相対増殖率(RGR%)=(実験群の平均吸光度値-ブランク群の平均吸光度値)/(対照群の平均吸光度値-ブランク群の平均吸光度値)×100%
【0027】
細胞毒性の評価基準は表1の通りである。
【表1】
表1は細胞毒性の評価表である。
備考:グレード0又は1は適格と見なされ、グレード2は細胞の形態と組み合わせて評価する必要があり、グレード3~5は不適格と見なされる。
【0028】
図6は、異なる濃度のVCPHナノ粒子とL929細胞を24時間及び48時間共培養した細胞の形態図である。この図から、L929細胞は24時間及び48時間の培養後にいずれも正常に成長及び増殖でき、細胞の形態が良好で、正常な紡錘形又は扁平状の細胞の形態を呈し、対照群の細胞と比較して細胞数に明らかな差はなく、細胞の変形、収縮、又は細胞間のお互いの分離等の明らかなアポトーシスが見られないことがわかる。
【0029】
図7は、異なる濃度のVCPHナノ粒子がL929細胞に対する細胞の相対増殖率をMTT法(MTTアッセイプロトコル)で検出した図である。この図から、VCPHとL929を24時間共培養したか又は48時間共培養したかにかかわらず、その細胞の相対増殖率はいずれも80%を超えていることがわかる。細胞毒性の評価によると、各ナノ粒子群の細胞毒性はグレード0又は1であることがわかる。これは、VCPHナノ粒子は細胞毒性がなく、良好な細胞適合性を持つことを示す。
【実施例3】
【0030】
1mg/mLのVCPH水溶液を製造し、一定量のドキソルビシン(DOX)を1mLのDMSOに溶解し、VCPH水溶液に滴下し、この溶液を透析バッグ(分子量カットオフは8000~14000kである)に移し、4Cで光を避けて12時間透析し、2時間ごとに水を交換し、有機溶媒とナノ粒子に未封入されたドキソルビシンを取り除き、DOX/VCPH溶液を得る。
【0031】
上記により、異なる薬物質量比(DOX:VCPH薬物質量比はそれぞれ2:5、3:5、4:5である)のDOX/VCPHナノ粒子溶液を製造する。25mLの茶色のメスフラスコに1mLのDOX/VCPH溶液を添加し、ジメチルスルホキシドで目盛線まで補足添加する。超音波処理後、蛍光マイクロプレートリーダーでDOXの相対蛍光強度を測定する。公式に従って、薬物質量比が異なるDOX/VCPHの封入率と薬物担持量を算出する。
封入率(EE%)=(ナノ粒子に封入された薬物の質量)/(投与質量)×100%
薬物担持量(LC%)=(ナノ粒子に封入された薬物の質量)/(薬物担持ナノ粒子の総質量)×100%
封入率と薬物担持量に対するDOX/VCPH薬物質量比の影響を表2に示す。
【0032】
【表2】
表2は封入率と薬物担持量に対する異なる薬物質量比の影響を示したものである。
【0033】
表2から、DOX/VCPHの薬物担持量は薬物質量比と正の関係であり、封入率は薬物質量比と負の関係があることがわかる。薬物質量比を上げると、VCPHナノ粒子の疎水性層に封入される薬物の量が増加されるが、より多くの比率のDOXが未封入され、損失が発生されるため、3:5の薬物質量比を選択してDOX/VCPHを製造する。
【0034】
レーザー粒径電位アナライザーでDOX/VCPHナノ粒子の粒径、表面ゼータ電位及びPDIを測定し、その結果を図8及び9に示す。DOX/VCPHの平均粒径は283.2±31.7nmで、PDI=0.27±0.011で、表面ゼータ電位は+28.1±1.3mVである。これは、DOX/VCPHの粒径サイズが比較的均一で、分散性が良好であることを示す。走査型電子顕微鏡でDOX/VCPHの形態を観察し、その結果を図10に示す。DOX/VCPHの粒径は約200~300nmで、球状又は楕円球状であり、VCPHナノ粒子と比較してよりふっくらし、明らかな凝集現象がない。
【実施例4】
【0035】
1mg/mLのDOX・HCl水溶液とDOX/VCPH溶液をそれぞれ製造し、一定の倍数に希釈した後、それぞれ紫外線分光光度計に入れて250~650nmの全波長吸収スペクトルを測定し、紫外線吸収スペクトル曲線を描く。
【0036】
DOX/VCPH溶液を製造し、pH=7.4及び5.7のPBS緩衝液にそれぞれ1mLのDOX/VCPH溶液を含む透析バッグ(阻止率は8000~14000kである)を浸し、37°Cで100rpmで48時間インキュベートする。設定した時点で、それぞれ200μLのPBSを吸引してDOXの蛍光強度を測定し、同時に、200μLの新しいPBSを補足添加する。DOXの標準曲線によってDOXの累積放出量を算出し、DOX/VCPHの薬物放出曲線を描く。
【0037】
DOX・HCl及びDOX/VCPHのUV吸収スペクトルの結果を図11に示す。DOX・HClの最大吸収ピークは485nmであるが、DOX/VCPHの最大吸収ピークは496nmである。DOX/VCPHはDOX・HClと比較して転移が発生される。これは、VCPHによるDOXの封入過程中にπ‐π共役力が発生され、DOX/VCPH共役体系がより安定することを示す。DOX/VCPHのpH=7.4及びpH=5.7条件下における薬物放出行為の結果を図12に示す。0~0.5時間でDOXの放出は比較的に速いが、0.5~48時間でDOX/VCPHの放出は遅い。48時間で、DOX/VCPHのpH=7.4及び5.7の環境下におけるDOXの累積放出はそれぞれ15.53%及び28.72%である。これは、DOX/VCPHナノ粒子が一定のpH感度を持つことを示す。
【実施例5】
【0038】
DOX/VCPH溶液を製造し、55のN/Pで4μgの希釈後のSTAT3-shRNA組換えプラスミド(pDNA)を含む溶液に等体積のDOX/VCPH溶液を入れ、完全に混合し、37°Cで30分間静置し、静電相互作用を利用してshRNAを安定して担持したDOX/VCPH/pDNAナノコンポジット粒子を製造する。上記の方法に従って、樹枝状の水溶性ポリマーポリエチレンイミン(PEI、1mg/mL)と組換えプラスミドとを10:1のN/P比で配合し、PEI/pDNA複合粒子を製造する。
【0039】
DOX/VCPH/pDNAナノコンポジット粒子の粒径、表面ゼータ電位及びPDIの結果を図13及び図14に示す。DOX/VCPH/pDNAナノ粒子の平均粒径は267.9±8.9nmで、PDI=0.219±0.007で、表面ゼータ電位+15.1±0.21mVである。粒径サイズは比較的均一で、分散性が良好である。DOX/VCPH/pDNAナノコンポジット粒子の走査型電子顕微鏡下における観察結果を図15に示す。サイズは約200~300nmで、球状又は楕円球状であり、均一に分散され、凝集現象がない。
【実施例6】
【0040】
対数増殖期にあるA549細胞をパンクレアチンで消化し、F-12k培地で消化を終了させ、遠心分離して再懸濁し、2×10個/mLの密度で96ウェルプレートに播種し、24時間培養した後、元の培地を吸引して廃棄する。次に、DOX・HCl、DOX/VCPH及びDOX/VCPH/pDNAを含む培地を添加する(培地におけるDOXの最終濃度は0.1~100μg/mLの範囲に設定する)。F-12k培地で正常培養した細胞を対照群とし、細胞を含まない正常培地をブランク群とする。24時間培養した後、倒立顕微鏡で細胞の形態を観察し、各ウェルに20μLのMTT溶液を添加し、37°Cで4時間インキュベートし、上清液を吸引して廃棄し、150μLのジメチルスルホキシドを添加し、マイクロプレートリーダーで37°Cで10分間振とうしながらインキュベートした後、492nmの波長で各ウェルの吸光度値を測定し、各群の細胞の相対増殖率を算出する。
【0041】
図16から、A549細胞に対するDOX・HCl、DOX/VCPH及びDOX/VCPH/pDNAの24時間におけるIC50は、それぞれ1.39μg/mL、12.50μg/mL及び6.95μg/mLであることがわかる。
【実施例7】
【0042】
対数増殖期にあるA549細胞をパンクレアチンで消化し、遠心分離して再懸濁し、細胞密度を2×10細胞/mLに調整して96ウェルプレートに播種し、24時間培養した後、製造されたDOX・HCl、PEI/pDNA、DOX/VCPH、VCPH/pDNA及びDOX/VCPH/pDNAを添加する。ここで、DOXの最終濃度はそれぞれ1、5、10、15及び20μg/mLである。F-12k培地で正常培養した細胞を対照群とし、細胞を含まない正常培地をブランク群とする。24時間培養した後、倒立顕微鏡で細胞の形態を観察し、各ウェルに20μLのMTT溶液を添加し、37°Cで4時間インキュベートし、上清液を廃棄し、150μLのジメチルスルホキシドを添加し、マイクロプレートリーダーで各ウェルの吸光度値を測定し、各群の細胞の相対抑制率を算出する。
【0043】
図17から、DOX薬物濃度の増加に伴い、A549細胞の増殖に対するDOX・HCl、DOX/VCPH、DOX/VCPH/pDNA、PEI/pDNA及びVCPH/pDNAの抑制は有意に向上され、DOX濃度が20μg/mLの場合、DOX・HClの細胞増殖抑制率は71.81%で、DOX/VCPHの細胞増殖抑制率は57.93%で、VCPH/pDNAの細胞増殖抑制率は41.85%で、PEI/pDNAの細胞増殖抑制率は68.56%で、二重負荷ナノ粒子DOX/VCPH/pDNAの細胞増殖抑制率は62.40%であることがわかる。
【実施例8】
【0044】
対数増殖期にあるA549細胞をパンクレアチンで消化し、遠心分離して再懸濁し、細胞密度を10個/mLに調整して6ウェルプレートに播種し、24時間培養した後、製造された裸のpDNA(naked pDNA)、VCPH/pDNA、DOX/VCPH/pDNA及びPEI/pDNAを添加する。培地中のDOXの最終濃度は20μg/mLである。48時間培養した後、ウェルプレート内の培地を吸引して廃棄し、光を避けてPBSで洗浄した後、レーザー共焦点顕微鏡で蛍光観察を行う。トランスフェクションに成功した細胞は、GFP緑色蛍光タンパク質(励起波長488nmで、発光波長507nmである)を発現できる。実験では、裸のpDNA群とPEI/pDNA群をそれぞれ陰性対照群と陽性対照群として使用する。
【0045】
上記のように、裸のpDNA、VCPH/pDNA、DOX/VCPH/pDNA及びPEI/pDNAをA549細胞にトランスフェクトし、48時間培養した後、光を避けた条件下で、PBSで洗浄した後、パンクレアチンを添加して消化し、新鮮な培地で消化を終了させた後、遠心分離し、ウェルプレート内の細胞をPBSで再懸濁し、細胞濾過器でフローサイトメトリー検出を行う。
【0046】
図18から、陰性対照の裸のpDNA群では蛍光シグナル発現はないが、異なるナノ粒子を含む群が示されるトランスフェクション効率は不一致であり、VCPH/pDNA群、DOX/VCPH/pDNA群及びPEI/pDNA群はいずれも比較的に強い蛍光発現強度と数量を示しており、その中、VCPH/pDNA群は陽性対照のPEI/pDNA群と比較して発現数量と強度がいずれも比較的に弱いが、DOX/VCPH/pDNA群の緑色蛍光の発現量と強度が最高であることがわかる。図19から、DOX/VCPH/pDNA群のトランスフェクション率は98.2%で、VCPH/pDNA群のトランスフェクション率は15.1%で、PEI/pDNA群のトランスフェクション効率は21%であることがわかる。
【実施例9】
【0047】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(励起波長490nm)は、イソチオシアネートによって炭素-窒素二重結合を開き、VCPHのアミノ基と反応してVCPHを標識する。0.1gのVCPHを秤量し、10mLの0.5%酢酸に溶解し、0.1MのNaOH溶液でpHを9.0に調整し、10mLのメタノールを添加し、攪拌して均一に混合させ、12mLの濃度が2mg/mLであるFITCメタノール溶液を滴下し、4℃で光を避けて24時間反応させ、反応溶液を95%エタノールで繰り返し洗浄した後、透析バッグ(阻止率は3500kである)に入れ、3日間透析し、凍結乾燥後、FITC-VCPHを得る。2mgのCy5を秤量し、800μLのジメチルスルホキシドに溶解し、1mLの等体積のジメチルスルホキシドに溶解した濃度が0.5μg/μLであるpDNAを添加し、光を避けて攪拌しながら12時間反応させた後、遠心分離し、得られた上清がCy5-pDNAである。
【0048】
対数増殖期にあるA549細胞をパンクレアチンで消化し、遠心分離して再懸濁し、8×10個/mLに希釈して6ウェルプレートに播種し、24時間培養し、元の培地を吸引して廃棄し、製造されたDOX・HCl、DOX/FITC-VCPH、DOX/FITC-VCPH/Cy5-pDNA、FITC-VCPH/Cy5-pDNAを添加する。培地中のDOXの最終濃度は20μg/mLである。異なるナノ粒子を添加してから1時間、3時間及び5時間後に、それぞれ1mLのHoechst33258染色液を添加し、37°Cで15分間インキュベートし、PBSで洗浄した後、1mLのPBSを添加して細胞を浸漬し、レーザー共焦点顕微鏡で細胞内における標識材料の分布を観察する。
細胞核はHoechst33258で染色された後青色を呈し、VCPHはFITCで標識された後緑色を呈し、Cy5で標識されたpDNAとDOXは赤色を呈す。トランスフェクションの1時間後、すべての群の青色蛍光、赤色蛍光及び緑色蛍光の強度はいずれも明らかではなく、この時点で複合粒子は既に細胞に入っている。トランスフェクションの3時間後、DOX・HCl群は細胞核で比較的に強い赤色蛍光を示したが、DOX/VCPH群は細胞質で赤色蛍光が比較的に強く、DOX/VCPH/pDNA群とVCPH/pDNA群は細胞質と細胞核ですべて赤色蛍光を示した。トランスフェクションの5時間後、各群の青色蛍光、赤色蛍光及び緑色蛍光は基本的に重複する。これは、VCPHに封入されたDOXとpDNAがいずれも細胞核に送達されたことを示す。
【実施例10】
【0049】
F-12k培地でA549細胞を培養し、3回継代した後、パンクレアチンで消化し、遠心分離して再懸濁し、0.9%生理食塩水で細胞密度を1×10個/mLに調整する。A549細胞を1匹あたり0.1mLの接種量でBALB/c-nu雌マウスの右側の脇下に接種する。正常に1週間給餌した後、ヌードマウスの接種部位から約80~100mmの腫瘍が成長したら、ヌードマウス腫瘍モデルが成功に確立される。
【0050】
腫瘍状態の良好な30匹の担癌マウスをランダムに6つの群に分ける。即ち、生理食塩水群、DOX・HCl群、DOX/VCPH群、DOX/VCPH/pDNA群、VCPH/pDNA群及びPEI/pDNA群である。ヌードマウスの体重に従い、1回の注射あたり5mg/kgの用量で、3日に1回、4回連続してヌードマウスの尾静脈に注射し、3日ごとにヌードマウスの体重、腫瘍の長さ(L)及び短径(W)を記録する。ヌードマウスの治療が完了した後、それらの首を切断して殺し、ヌードマウスの脇下の腫瘍体及び心臓、肝臓、脾臓、肺及び腎臓の臓器組織を剥がして収集し、各群の腫瘍体と臓器組織の重量を正確に計量して記録し、各群の腫瘍抑制率と臓器指数を算出する。次の公式に従って、腫瘍体積のサイズを算出する。
【数1】
【0051】
投与の初日を0日目として標記する。図20から、生理食塩水群のヌードマウスの体重は常に増加しており、DOX・HCl群の体重は投与2回目以降明らかな下降傾向があり、投与12日目以降体重が上昇の変化を呈しており、DOX/VCPH群でも投与後に体重減少の状況があったが、減少の程度は比較的に低く、その後徐々に上昇しており、DOX/VCPH/pDNA群、VCPH/pDNA群及びPEI/pDNA群の体重は常に上昇傾向を呈していることがわかる。投与24日後、DOX・HCl群は生理食塩水群と比較して顕著な差があり、他の4つの群には顕著な差がなく、VCPHは薬物/遺伝子キャリアとして化学療法薬物の毒性と副作用を効果的に減少できることを示す。治療の24日後、図21から、治療開始以来、生理食塩水群のヌードマウスの腫瘍体積は常に上昇傾向を呈し、治療24日後、生理食塩水群の腫瘍体積は初期体積の6.36倍に増加し、DOX・HCl群は初期体積の3.89倍に増加し、DOX/VCPH群は5.18倍に増加し、DOX/VCPH/pDNA群は初期体積の4.37倍に増加し、VCPH/pDNA群は初期体積の4.69倍に増加し、PEI/pDNA群は初期体積の4.06倍に増加していることがわかる。治療の24日後、DOX・HCl群は生理食塩水群と比較して非常に顕著な差があり、DOX/VCPH/pDNA群及びPEI/pDNA群は生理食塩水群と比較して顕著な差があるが、他の2つの群は顕著な差がない。ヌードマウスの腫瘍体積の相対的な変化から、DOX/VCPH/pDNA群の腫瘍体積変化はDOX/VCPH群及びVCPH/pDNA群よりも明らかな利点があることがわかる。これは、DOX/VCPH/pDNAは比較的に良好な腫瘍抑制効果を持つことを示す。
【0052】
臓器指数は、臓器に対する薬物又は材料の影響を初歩的に反映することができる。図22から、DOX/VCPH群、VCPH/DNA群及びDOX/VCPH/DNA群の各組織の臓器指数は生理食塩水群と比較して顕著な差がないが、DOX・HCl群の脾臓及びPEI/pDNA群の肝臓は生理食塩水群と比較して顕著な差があることがわかる。これは、DOXとPEIはヌードマウスの正常な臓器組織に一定の毒性作用を有することを示す。
【0053】
治療完了後、ヌードマウスを殺した後、各群の腫瘍体を剥がし、写真を撮って記録する。図23から、固形腫瘍の写真は治療期間中のヌードマウスの相対腫瘍体積の変化傾向と比較的に一致することがわかる。ヌードマウス体内の腫瘍抑制率の公式に従って計算すると、DOX・HCl群の腫瘍抑制率は50.60%で、PEI/pDNA群の腫瘍抑制率は43.71%で、DOX/VCPH群の腫瘍抑制率は36.72%で、VCPH/pDNA群の腫瘍抑制率は29.49%で、DOX/VCPH/pDNA群の腫瘍抑制率は40.12%である(表3を参照)。これから、DOX/VCPH/pDNAはDOX/VCPH及びVCPH/pDNAと比較して比較的に優れた体内抗腫瘍効果を示すことがわかる。
【0054】
【表3】
表3はヌードマウス体内における異なる群の腫瘍抑制率を示したものである。
【0055】
本発明の親水性及び疎水性のブロックの改質で自己組織化して製造された多機能の新型ナノミセルVCPHは、両親媒性、受動的ターゲティング、pH感度及び遺伝子トランスフェクション効率の向上などの特徴を有し、多機能のインテリジェント薬物キャリア及び遺伝子キャリアである。
図1
図2
図3
図4
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図10
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