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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】表面電位測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01R29/12 A
G01R29/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023171212
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】最上 智史
(72)【発明者】
【氏名】峯村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】稲川 剛幸
(72)【発明者】
【氏名】池畑 隆
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-116377(JP,A)
【文献】特開平07-083960(JP,A)
【文献】実開昭51-019222(JP,U)
【文献】特開2007-212209(JP,A)
【文献】特開2003-21656(JP,A)
【文献】特開2018-56115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが存在する真空下に設置され、
測定対象に対向した検出窓を開口させるとともに、接地された金属製のケースと、
上記ケース内に配置され、
上記検出窓に対応する位置に設けられた検出電極と、
上記検出電極が接続された検出回路と、
上記検出電極及び検出回路を支持する電気絶縁性の基板と
を備えた表面電位測定装置であって、
上記ケースは、
永久磁石を備え、上記検出窓上を磁力線が通過する構成にされ、
上記プラズマ中の上記検出窓近傍の電子が上記磁力線によって当該磁力線の周囲を旋回して上記ケースに衝突し、上記ケースを介してアースへ流れる構成にし
表面電位測定装置。
【請求項2】
上記ケースは、
非磁性金属で形成され、
その外表面に上記検出窓を挟む上記永久磁石を備えた
請求項1に記載の表面電位測定装置。
【請求項3】
上記ケースが磁性金属で形成された
請求項1に記載の表面電位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面電位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の表面電位を非接触で測定する表面電位測定装置が知られている。
この種の測定装置は、例えば、図6に示すように、検出窓2を有する金属製のケース1内に、圧電素子3を付設した振動子4、検出電極5、信号の検出回路及び振動子4の駆動回路などを備えた電気絶縁性の基板6が設けられている。
上記振動子4は検出窓2と検出電極5との間に位置し、その振動によって、検出電極5に対向する検出窓2を開閉する。そして、この振動子4が、検出窓2に正対させた帯電した測定対象である帯電物体Wの表面から検出電極へ向かう電気力線をチョッピングして、上記電気力線を交流電圧として検出回路が検出する。この交流電圧から、測定対象の表面電位を検出するものである(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-212209号公報
【文献】特開2003-021656号公報
【文献】特開2018-056115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような測定装置は、帯電物体を除電した際に、その除電効果を確認するために用いられることがあり、表面電位測定装置が除電工程の近傍に設けられることがある。
一方、真空下での帯電物体を除電する際には、プラズマを利用することがある。真空中では、コロナ放電などを利用した除電器を用いることができないためである。
上記プラズマを用いた除電装置では、真空チャンバ内に供給されたプラズマが、帯電物体の表面と真空チャンバ壁などの接地体との間を連結する導体として機能し、帯電物体の表面電荷を接地へ流して除電することができる(特許文献3参照)。
【0005】
上記のような真空下で、除電及び表面電位の測定を行なうため、帯電電位測定装置のケース1は、予め真空チャンバ内に設置しておく。
なお、上記真空下とは例えば、1×10-3〔Pa〕程度である。
このような真空下で、除電のためにプラズマを供給すると、プラズマは短時間で拡散する。特にプラズマ中の電子は広がりやすい。そのため、帯電物体Wの近傍に供給されたプラズマ中の電子は、検出窓2からケース1内に入り込んでしまいやすい。
【0006】
ケース1内には、上記したように電気絶縁性の基板6が設けられている。図6のように、検出窓2からケース1に電子eが入り込めば、基板6は入り込んだ電子eによって帯電してしまう。
ケース1内で、基板6が帯電すると、検出電極5は、測定対象である帯電物体Wの表面電位とともに上記基板6の表面電位も検出してしまう。特に、基板6は、測定対象である帯電物体Wよりも、検出電極5に近いため、基板6の表面電位の影響は大きい。つまり、プラズマ除電を必要とするような環境下で、正確な表面電位測定をすることはできなかった。
【0007】
この発明の目的は、プラズマを用いた除電が必要な真空下でも、正確な測定ができる表面電位測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、プラズマが存在する真空下に設置され、測定対象に対向した検出窓を開口させるとともに、接地された金属製のケースと、上記ケース内に配置され、上記検出窓に対応する位置に設けられた検出電極と、上記検出電極が接続された検出回路と、上記検出電極及び検出回路を支持する電気絶縁性の基板とを備えた表面電位測定装置であって、上記ケースが永久磁石を備え、上記検出窓上を磁力線が通過する構成にされ、上記プラズマ中の上記検出窓近傍の電子が上記磁力線によって当該磁力線の周囲を旋回して上記ケースに衝突し、上記ケースを介してアースへ流れる構成にしている。
【0009】
第2の発明は、上記ケースが非磁性金属で形成され、その外表面に上記検出窓を挟む上記永久磁石を備えている。
【0010】
第3の発明は、上記ケースが磁性金属で形成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、検出窓に接近したプラズマ中の電子が、永久磁石の磁力によって磁力線の周りを旋回してケースに衝突するので、ケース内に進入することがない。また、ケース内に電子が進入したとしても、電子はケース内でも磁力線の周りを旋回してケースの内壁に衝突する。したがって、ケース内の基板が、検出窓から入り込んだ電子で帯電することはない。さらに、金属製のケースは接地されているので、ケースに衝突した電子は接地へ流れ、ケースを帯電させることもない。
そのため、検出電極は、測定対象の表面電位を正確に測定することができる。
【0012】
第2の発明によれば、磁力線の方向がケースの形状に影響されにくいので、検出窓から電子が入り込み難い磁界を永久磁石の位置だけで設定できる。
【0013】
第3の発明によれば、磁性金属製のケースによって、ケース外の磁界の広がりを抑えて、検出窓近傍に磁力線を集中させることができる。また、外部の電子機器への磁界の影響を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態の外観斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の断面図である。
図3図3は、第1実形態の検出窓付近の磁場を示した図である。
図4図4は、従来装置、第1実施形態との表面電位測定結果を示すグラフである。
図5図5は、第2実施形態の断面図である。
図6図6は、従来の表面電位測定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
図1~3を用いて第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の外観斜視図、図2図1の断面図、図3は磁場を示した図である。外形が四角柱の非磁性金属製のケース1の対向する一対の外側面(外表面)に、永久磁石M1,M2を取り付けた表面電位測定装置である。
上記永久磁石M1,M2以外は、図6に示す従来の測定装置を同じで、ケース1内には、圧電素子3、振動子4,検出電極5及び基板6が設けられている。
また、ケース1は接地されている。
【0016】
永久磁石M1,M2は、略平板形状をなしている。永久磁石M1,M2は、非磁性の金属板をコの字状に曲げ加工したカバー7の内側面に取り付けられ、カバー7を介してケース1に取り付けられている。これにより、永久磁石M1,M2は、検出窓2を挟んで同一平面に位置するように配置されている。カバー7には、検出窓2を露出させる開口7aが形成されている。
一対の永久磁石M1,M2は、図2,3に示すように、一方の永久磁石M1のS極と他方の永久磁石M2のN極とが、検出窓2を挟んで対向するように配置されている。したがって、永久磁石M1,M2は、検出窓2の開口面を、細線の矢印で示した磁力線Bが横切る、すなわち検出窓2上を磁力線Bが通過するように表面電位測定装置において構成されている。
【0017】
[作用・効果等]
上記のような表面電位測定装置を真空チャンバ内に設置した状態で、検出窓2に対向配置された測定対象である帯電物体を、プラズマによって除電する場合について説明する。なお、真空チャンバの壁面は接地されている。
除電用に供給されたプラズマは、真空チャンバ内で広がり、帯電物体W表面と接地された真空チャンバの壁面や、ケース1との間を連携する導体として機能し、帯電物体Wの表面の電荷を除電することができる。
【0018】
このように、除電に寄与したプラズマ中の電子やイオンのほとんどは、直ちに、図示していない真空チャンバの壁面などの接地体と接触してアースへ流れてしまうが、中には、検出窓2に向かう電子eもある(図6参照)。
このような電子eが、ケース1の検出窓2からケース1内に入り込めば、基板6が帯電してしまう。
【0019】
ところが、この第1実施形態では、検出窓2の近傍に検出窓2の開口を横切る磁力線Bがある。そのため、検出窓2に接近した電子は、この磁力線Bの周囲を図3に示す太線の矢印のように旋回しながら移動する。この旋回過程で、電子eはケース1に衝突して、アースへ流れるため、磁力線Bと交差してケース1内に入り込むことはない。したがって、電子eがケース1内で、基板6を帯電させることはない。
【0020】
そのため、帯電物体Wを除電処理した後に、その表面電位を測定する際に、基板6の帯電電位が、帯電物体Wの表面電位の測定に影響を与えることはない。つまり、正確な測定結果が得られる。
【0021】
[確認実験]
第1実施形態の表面電位測定装置と、従来の表面電位測定装置とを比較する実験を行なった。
従来の表面電位測定装置は、永久磁石M1,M2を備えていない以外は、第1実施形態の表面電位測定装置と同じ構成である。
これらの表面電位測定装置それぞれを用いて、真空チャンバ内で、予め表面電位をゼロにし、接地されている金属板の表面電位を測定した。なお、測定時に、真空チャンバ内に、除電用のプラズマを供給した。
【0022】
測定結果は、図4に示すとおりである。
図中、破線のグラフ(1)が、従来の表面電位測定装置での測定結果、実線のグラフ(2)が第1実施形態の表面電位測定装置によるものである。
図4に示すように、従来の表面電位測定装置では、プラズマの供給に伴なって、絶対値が大きくなるマイナスの電位が測定された。
上記金属板は接地されているため、検出電極5が検出した電位は、ケース1内に入り込んだ電子で帯電した基板6の電位の影響を受けたものである。
【0023】
一方、第1実施形態の表面電位測定装置での測定結果は、ゼロ電位を維持している。
このことから、永久磁石M1,M2によって、電子がケース1内に入り込むことを防止できることを確認できた。
【0024】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態のケース11の断面図である。ケース11は磁性金属で形成され、検出窓12を備えている。
ケース11は、材質以外は第1実施形態のケース1と同様の構成であり、第1実施形態と同じ構成要素には、図1と符号を用いている。
【0025】
また、第2実施形態では、永久磁石M3を、ケース11において検出窓12が形成された面と対向する側の底面11aに固定している。永久磁石M3は、その両端のN極とS極とを、それぞれ、上記底面11aの縁から起立する側面11b,11c側に位置させている。
このように配置された永久磁石M3の磁力線Bは、ケース11内を通り、検出窓12上を矢印で示すように通過する。
【0026】
[作用・効果等]
この第2実施形態においても、検出窓12に接近した電子は、磁力線Bの周囲を旋回し、ケース11に衝突してアースへ流れる。したがって、例えば、除電用のプラズマが供給されたとしても、電子がケース11内に入り込んで基板6を帯電させるようなことはない。そのため、正確な表面電位測定ができる。
そして、第2実施形態では、ケース11が磁力線を閉じ込めるため、外部への磁場の影響を小さくできる。
【0027】
なお、上記実施形態では、ケース1,11の外形を四角柱にしているが、ケースの外形はどのようなものでもかまわない。
また、検出窓2、12上を磁力線が通過して、電子のケース内への進入を阻止できれば、永久磁石M1,M2,M3の配置は上記に限らない。
【0028】
なお、ケースを磁性体で形成した場合には、磁力線を閉じ込めるため、外部への磁場の影響を抑えることができるが、磁力線の方向がケースの形状の影響を受けることがある。
一方、ケースが非磁性体の場合には、磁力線の方向や地場の強さを永久磁石の配置のみで制御できるメリットがある。ケースの材質、永久磁石の形状および配置、磁力の強さなどは、設置場所や測定対象などを考慮して、適宜設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
プラズマの供給を必要とするような環境下での、表面電位測定に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1,11 ケース
2,12 検出窓
5 検出電極
6 基板
M1,M2,M3 永久磁石
B 磁力線
【要約】
【課題】 プラズマを用いた除電が必要な真空下でも、正確な測定ができる表面電位測定装置を提供すること。
【解決手段】 検出窓2を開口させ、接地された金属製のケース1と、上記ケース1内に配置され、上記検出窓2に対応する位置に設けられた検出電極5と、上記検出電極5が接続された検出回路と、上記検出電極及び検出回路を支持する電気絶縁性の基板6とを備えた表面電位測定装置であって、上記ケース1が永久磁石M1,M2を備え、上記検出窓2上を磁力線Bが通過する構成にした。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6