(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】排気構造体
(51)【国際特許分類】
F01N 1/24 20060101AFI20240313BHJP
F01N 13/16 20100101ALI20240313BHJP
F01N 1/22 20060101ALI20240313BHJP
B60K 13/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F01N1/24 A
F01N13/16
F01N1/22
B60K13/06 B
(21)【出願番号】P 2021010714
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 正純
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第0337877(EP,A1)
【文献】特表2010-513772(JP,A)
【文献】実開平1-80581(JP,U)
【文献】特開2010-241367(JP,A)
【文献】特開2015-47883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/24
F01N 13/16
F01N 1/22
B60K 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下スペースに取り付けられる排気構造体であって、
排気マフラーと少なくとも1種のエアロパーツが同一の合成樹脂で一体的に形成され
、
前記排気マフラーと前記エアロパーツであるアンダーパネルが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、
前記排気マフラーが、前記アンダーパネルの下側に配置され且つ前記アンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在されていることを特徴とする排気構造体。
【請求項2】
車両の床下スペースに取り付けられる排気構造体であって、
排気マフラーと少なくとも1種のエアロパーツが同一の合成樹脂で一体的に形成され、
前記排気マフラーと前記エアロパーツであるディフューザーが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、
前記排気マフラーが、前記ディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在されていることを特徴とする排気構造体。
【請求項3】
車両の床下スペースに取り付けられる排気構造体であって、
排気マフラーと少なくとも1種のエアロパーツが同一の合成樹脂で一体的に形成され、
前記排気マフラーと前記エアロパーツであるアンダーパネル及びディフューザーが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、
前記アンダーパネルの後側に前記ディフューザーが連設され、
前記排気マフラーが、前記アンダーパネルの下側に配置され且つ前記アンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在されると共に、前記ディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在され、
全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする排気構造体。
【請求項4】
前記排気マフラーが略水平に広がる扁平形状で形成されていると共に、
全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の排気構造体。
【請求項5】
前記合成樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1~
4の何れかに記載の排気構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床下スペースに取り付けられる排気マフラーを備える排気構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床下スペースに取り付けられ、自動車の内燃機関で発生する排気を外部に排出する排気マフラーは、流通する排気が高温であるため、ステンレス鋼のような耐熱性の金属で形成されるのが一般的であるが、特許文献1のように耐熱性樹脂で排気マフラーを形成することも可能である。特許文献1の排気マフラーは、耐熱性樹脂又は耐熱性樹脂と無機物質との混合物で形成されるマフラー本体の内側面に耐熱材の層状構成物を付設して構成されている。
【0003】
更に、特許文献1には、排気マフラーに用いられる耐熱性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂及び熱硬化型ポリカルボジイミド樹脂中から選択された少なくとも1種の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性フッ素樹脂、ポリスルフォン樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂の中から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂、が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、空気抵抗を減らして自動車の燃費向上を図る観点から、例えばアンダーパネルやディフューザーのような空気の流れを制御するエアロパーツ(空力部品)が車両の床下スペースに設置されている。このようなエアロパーツは、車両の重量増加を抑制するため、通常は樹脂製の部品になっている。そして、同じく車両の床下スペースに取り付けられる排気マフラーは、高温の排気流通で高温化するため、排気マフラーとエアロパーツとの間に熱を遮蔽するインシュレータ(熱遮蔽板)が設置されたり、排気マフラーとエアロパーツとの間に隙間を確保する配置がなされている。
【0006】
しかしながら、排気マフラーとエアロパーツとの間に別途にインシュレータを設置する構造では、部品点数が多くなり、部品取付作業の効率の低下や製造コストの増加を招いてしまう。また、排気マフラーとエアロパーツとの間に隙間を確保して配置する構造では、余分なスペースが必要になり、車両の床下レイアウトの自由度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、車両の床下に設置される部品点数を削減し、部品取付作業の効率の向上や製造コストの低減を図ることができると共に、車両の床下レイアウトに無駄なスペースが生ずることを抑制し、車両の床下レイアウトの自由度を向上することができる排気構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排気構造体は、車両の床下スペースに取り付けられる排気構造体であって、排気マフラーと少なくとも1種のエアロパーツが同一の合成樹脂で一体的に形成されていることを特徴とする。前記合成樹脂は耐熱性樹脂とすると好適である。
これによれば、排気マフラーとエアロパーツとの間に設置するインシュレータ(熱遮蔽板)を削減することができ、車両の床下に設置される部品点数を削減することができる。更に、排気マフラーと一体化したエアロパーツを別々に取り付ける必要が無くなり、同一の取付工程で取り付けることができる。従って、部品取付作業の効率の向上や製造コストの低減を図ることができる。また、排気マフラーとエアロパーツを一体化することにより、これらが別部材である場合に比べて床下スペースにおける高さ方向等の凹凸を抑制することができ、凹凸の抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減を促進し、空力特性を改善することができる。従って、自動車の燃費向上や走行安定性の向上を図ることができる。また、排気マフラーとエアロパーツとの間に確保する隙間を削減することができることから、車両の床下レイアウトに無駄なスペースが生ずることを抑制し、車両の床下レイアウトの自由度を向上することができる。また、同一の合成樹脂で一体的に形成された排気構造体とすることにより、排気マフラーと一体化されるエアロパーツの重量、車両の重量を軽量化し、自動車の燃費性能をより一層高めることができる。
【0009】
本発明の排気構造体は、前記排気マフラーが略水平に広がる扁平形状で形成されていると共に、全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、全体が略水平に広がる扁平形状の排気構造体とすることにより、床下スペースにおける高さ方向の凹凸を大幅に抑制することができ、凹凸の大幅な抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減をより促進し、空力特性を飛躍的に改善することができる。
【0010】
本発明の排気構造体は、前記排気マフラーと前記エアロパーツであるアンダーパネルが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、前記排気マフラーが、前記アンダーパネルの下側に配置され且つ前記アンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在されていることを特徴とする。
これによれば、排気マフラーとアンダーパネルとの間に設置するインシュレータを削減することができ、車両の床下に設置される部品点数を削減することができる。更に、排気マフラーとアンダーパネルを別々に取り付ける必要が無くなり、同一の取付工程で取り付けることができる。また、排気マフラーとアンダーパネルを一体化することにより、これらが別部材である場合に比べて床下スペースにおける高さ方向等の凹凸を抑制することができ、凹凸の抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減を促進し、空力特性を改善することができる。更に、排気構造体の排気マフラーをアンダーパネルの下側に配置し且つアンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在することにより、車両の左右でバランスとの取れた床下を流れる空気のより望ましい制御が可能となり、自動車の走行安定性や操作性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の排気構造体は、前記排気マフラーと前記エアロパーツであるディフューザーが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、前記排気マフラーが、前記ディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在されていることを特徴とする。
これによれば、排気マフラーとディフューザーとの間に設置するインシュレータを削減することができ、車両の床下に設置される部品点数を削減することができる。更に、排気マフラーとディフューザーを別々に取り付ける必要が無くなり、同一の取付工程で取り付けることができる。また、排気マフラーとディフューザーを一体化することにより、これらが別部材である場合に比べて床下スペースにおける高さ方向等の凹凸を抑制することができ、凹凸の抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減を促進し、空力特性を改善することができる。更に、排気構造体の排気マフラーをディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在することにより、車両の左右でバランスとの取れた床下を流れる空気のより望ましい制御が可能となり、自動車の走行安定性や操作性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の排気構造体は、前記排気マフラーと前記エアロパーツであるアンダーパネル及びディフューザーが同一の前記合成樹脂で一体的に形成され、前記アンダーパネルの後側に前記ディフューザーが連設され、前記排気マフラーが、前記アンダーパネルの下側に配置され且つ前記アンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在されると共に、前記ディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在され、全体が略水平に広がる扁平形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、排気マフラーとアンダーパネルとの間や排気マフラーとディフューザーとの間に設置するインシュレータを削減することができ、車両の床下に設置される部品点数を削減することができる。更に、排気マフラーとアンダーパネルとディフューザーを別々に取り付ける必要が無くなり、これら3個の部品を同一の取付工程で取り付けることができる。また、排気マフラーとアンダーパネルとディフューザーを一体化すると共に、全体が略水平に広がる扁平形状の排気構造体とすることにより、床下スペースにおける高さ方向等の凹凸をより一層抑制することができ、凹凸の抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減をより一層促進し、空力特性を飛躍的に改善することができる。更に、排気構造体の排気マフラーを、アンダーパネルの下側に配置し且つアンダーパネルの幅方向の略中央に位置して前後に延在すると共に、ディフューザーを構成する左右一対のディフューザー部の間で前後に延在することにより、車両の左右でバランスとの取れた床下を流れる空気のより望ましい制御が可能となり、自動車の走行安定性や操作性の向上を図ることができる。更には、アンダーパネルからディフューザーに流れる空気の整流化、好ましい拡散性を促進することができ、ダウンフォースを大きくしてグリップ力を高めることができる。
【0013】
本発明の排気構造体は、前記合成樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする。
これによれば、汎用プラスチックのポリプロピレンを用いることで排気構造体の製造コストの低減を図ることができる。また、耐酸性・耐アルカリ性で吸水しにくい排気構造体とすることができ、凝縮水等の影響を受けにくい排気構造体を得ることができる。また、ポリプロピレンは割れにくいため、合成樹脂の排気構造体の破損防止効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排気構造体によれば、車両の床下に設置される部品点数を削減し、部品取付作業の効率の向上や製造コストの低減を図ることができると共に、車両の床下レイアウトに無駄なスペースが生ずることを抑制し、車両の床下レイアウトの自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による実施形態の排気構造体を下側から視た斜視図。
【
図2】実施形態の排気構造体を上側から視た斜視図。
【
図3】(a)実施形態の排気構造体におけるサブサイレンサーの部分の横断説明図、(b)は実施形態の排気構造体におけるメインサイレンサーの部分の横断説明図。
【
図4】実施形態の排気構造体が取り付けられた車両の底面図。
【
図5】実施形態の排気構造体の被接続部材への取り付けを説明する斜視説明図。
【
図6】実施形態の排気構造体が取り付けられた車両と既存の排気マフラーとの関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態の排気構造体〕
本発明による実施形態の排気構造体1は、車両100の底部101に固定して床下スペースに配置され、取り付けられるものであり、
図1及び
図2に示すように、排気マフラー2と、エアロパーツであるアンダーパネル3と、エアロパーツであるディフューザー4が同一の合成樹脂で一体的に形成されて構成され、全体が略水平に広がる扁平形状で形成されている。
【0017】
排気構造体1を構成する合成樹脂には適用可能な範囲で適宜ものを用いることが可能であるが、耐熱性樹脂を用いると好適である。また、合成樹脂の具体的な材料としてはポリプロピレンとすると好適である。排気構造体1は、例えばポリプロピレン等の同一材料の耐熱性合成樹脂で全体を射出成形等で一体的に形成するか、或いはポリプロピレン等の同一材料の耐熱性合成樹脂で所要の構成部材を射出成形等で一体形成すると共にその他の構成部材を溶着して形成すると良好である。
【0018】
排気マフラー2は、略水平に広がる扁平形状で形成されており、上流端に位置するフランジ21と、フランジ21近傍で円筒状に形成され、それ以降の下流側で扁平筒状に形成されている上流に位置する排気管22と、排気管22の下流側に設けられた扁平形状のサブサイレンサー23と、サブサイレンサー23の下流側に設けられた扁平筒状の排気管24と、排気管24の下流側に設けられテールエンドとしての機能を兼ね備える扁平形状のメインサイレンサー25とから構成される。扁平形状のサブサイレンサー23、メインサイレンサー25は、扁平筒状の排気管22、24よりも幅広で形成されている。
【0019】
サブサイレンサー23は、上流側の排気管22と下流側の排気管24よりも両側方に突出するように幅広に形成されていると共に、上流側の排気管22及び下流側の排気管24と略同一高さで形成されている。サブサイレンサー23の内部には、
図3(a)に示すように、排気管22、24の両側の側壁と略対応する位置に内部空間を区画する内部隔壁231・231が形成され、それぞれの内部隔壁231には排気を膨張させる貫通孔群232が形成されている。
【0020】
メインサイレンサー25は、上流側の排気管24よりも両側方に突出するように幅広に形成されている。メインサイレンサー25の内部には、
図3(b)に示すように、排気を迂回して流通させる内部隔壁251、252、253が形成されており、内部隔壁251、252、253で迂回して流通する排気はメインサイレンサー25の内部で膨張と干渉を繰り返して消音され、メインサイレンサー25から外部に排出される。尚、図示例では、メインサイレンサー25に内部空間と隔絶されるように複数の取付孔が形成され、それぞれの取付孔にネジ、ボルト或いはクリップ等の留め具254が挿通され、留め具254の先端部を車両底部101の被取付部材に埋め込むように固定して、排気マフラー2が車両底部101に取り付けられる(
図4参照)。
【0021】
アンダーパネル3は、平面視矩形の略平板状に形成された保護部品としての機能を兼ね備えるものであり、排気マフラー2は、アンダーパネル3の下側に配置され且つアンダーパネル3の幅方向の略中央に位置して前後に延在するように設けられている。図示例のアンダーパネル3には、整流効果を高める整流突条31が車両前後方向に延びるように下方に突出して形成されており、整流突条31は、アンダーパネル3の幅方向に間隔を開けて配設され、且つ排気マフラー2の両側に配置されている。
【0022】
アンダーパネル3の所定箇所には複数の取付孔が形成されており、それぞれの取付孔にネジ、ボルト或いはクリップ等の留め具32が挿通され、留め具32の先端部を車両底部101の被取付部材に埋め込むように固定して、アンダーパネル3及び排気マフラー2が車両底部101に取り付けられる(
図4参照)。アンダーパネル3が留め具32で固定される被取付部材は、車両100の底部101に配置される適宜の部材とすることが可能である。
【0023】
ディフューザー4は、アンダーパネル3の後側に連設され、略平面視矩形で左右一対のディフューザー部4a、4bで構成されており、排気マフラー2は、ディフューザー部4a、4bの間で前後に延在するように設けられている。図示例のディフューザー部4a、4bの前部には、それぞれ整流効果を高める整流板41が車両前後方向に延びるように下方に突出して形成されており、整流板41は、ディフューザー部4a、4bにそれぞれ幅方向に間隔を開けて配設されている。また、図示例のディフューザー部4a、4bの後部には、後方に向かって漸次上方に傾斜する傾斜板42が設けられ、後方に向かって上方に傾斜する車両底部101の後端部に取り付けやすくなっている。傾斜板42の下側には対向するように水平板43が設けられ、水平板43で整流化された気流をスムーズに後方に導くようになっている。
【0024】
ディフューザー部4a、4bの所定箇所には複数の取付孔が形成されており、それぞれの取付孔にネジ、ボルト或いはクリップ等の留め具44が挿通され、留め具44の先端部を車両底部101の被取付部材に埋め込むように固定して、ディフューザー部4a、4b或いはディフューザー4及び排気マフラー2が車両底部101に取り付けられる(
図4参照)。ディフューザー部4a、4bが留め具44で固定される被取付部材は、車両100の底部101に配置される適宜の部材とすることが可能である。尚、図示例では、ディフューザー部4a、4bのそれぞれの外側方に突出する取付板部に取付孔及び留め具44が設けられるようになっている。
【0025】
排気構造体1における排気マフラー2の上流端のフランジ21には、周方向に間隔を開けて挿通穴211が形成されている。また、排気マフラー2に接続される略管状の被接続部材200の後端部にもフランジ201が設けられ、フランジ201にも周方向に間隔を開けて挿通穴202が形成されている。排気マフラー2と被接続部材200は、挿通穴211と挿通穴202の位置を合わせてフランジ21とフランジ201を当接し、連通する挿通穴202と挿通穴211にボルト301の雄ねじ部を挿通し、この雄ねじ部にナット302を螺合することにより、固定して接続される(
図5参照)。
【0026】
排気マフラー2に接続する被接続部材200は、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば排気冷却装置若しくはこれの下流側に固定接続された下流管、又は排気冷却装置若しくはこれの下流側に固定接続された下流管、又は触媒コンバータ若しくはこれの下流側に固定接続された下流管等とすることが可能である。冷却水との熱交換を行う熱交換器等の排気冷却装置の下流側に排気構造体1や排気マフラー2を設置し、温度を低下させた排気を流通させると、耐熱性樹脂等の合成樹脂で排気構造体1や排気マフラー2を形成しやすくなって好適である。また、排気マフラー2を被接続部材200に固定して接続する構成は、上記ボルト301とナット302の締結以外にも適宜であり、接着等で固着することも可能であるが、被接続部材200がステンレス鋼等の金属材で形成されている場合には、ボルト301とナット302の締結、タッピングネジ等によるネジ止めなど、留め具を用いて固定、接続する構成とすると良好である。
【0027】
本実施形態の排気構造体1によれば、排気マフラー2とアンダーパネル3との間や排気マフラー2とディフューザー4との間に設置するインシュレータ(熱遮蔽板)を削減することができ、車両100の床下に設置される部品点数を削減することができる。更に、排気マフラー2とアンダーパネル3とディフューザー4を別々に取り付ける必要が無くなり、これら3個の部品を同一の取付工程で取り付けることができる。従って、部品取付作業の効率の向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、排気マフラー2とエアロパーツであるアンダーパネル3との間に確保する隙間や、排気マフラー2とエアロパーツであるディフューザー部4a、4bとの間に確保する隙間を削減することができることから、車両100の床下レイアウトに無駄なスペースが生ずることを抑制し、車両100の床下レイアウトの自由度を向上することができる。また、同一の合成樹脂で一体的に形成された排気構造体1とすることにより、排気マフラー2と一体化されるエアロパーツの重量、車両100の重量を軽量化し、自動車の燃費性能を非常に高めることができる。
【0029】
また、排気マフラー2とアンダーパネル3とディフューザー4を一体化すると共に、全体が略水平に広がる扁平形状の排気構造体1とすることにより、床下スペースにおける高さ方向等の凹凸をより一層抑制することができ、凹凸の抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減をより一層促進し、空力特性を飛躍的に改善することができる。更に、排気構造体1の排気マフラー2を、アンダーパネル3の下側に配置し且つアンダーパネル3の幅方向の略中央に位置して前後に延在すると共に、ディフューザー4を構成する左右一対のディフューザー部4a、4bの間で前後に延在することにより、車両100の左右でバランスとの取れた床下を流れる空気のより望ましい制御が可能となり、自動車の走行安定性や操作性の向上を図ることができる。更には、アンダーパネル3からディフューザー4に流れる空気の整流化、好ましい拡散性を促進することができ、ダウンフォースを大きくしてグリップ力を高めることができる。
【0030】
また、全体が略水平に広がる扁平形状の排気構造体1とし、この排気構造体1を車両100の床下スペースに配置、取り付けることにより、
図6に示すように、既存の排気マフラー500を車両100の床下スペースに配置、取り付ける場合に比べて、床下スペースにおける高さ方向の凹凸を大幅に抑制することができ、凹凸の大幅な抑制で床下を流れる空気の望ましい制御や空気抵抗の低減をより促進し、空力特性を飛躍的に改善することができる。
【0031】
また、排気構造体1を構成する同一の合成樹脂をポリプロピレンとする場合には、汎用プラスチックのポリプロピレンを用いることで排気構造体1の製造コストの低減を図ることができる。また、耐酸性・耐アルカリ性で吸水しにくい排気構造体1とすることができ、凝縮水等の影響を受けにくい排気構造体1を得ることができる。また、ポリプロピレンは割れにくいため、合成樹脂の排気構造体1の破損防止効果を高めることができる。
【0032】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0033】
例えば本発明の排気構造体における排気マフラー、アンダーパネル、ディフューザーの構成は、上記実施形態の排気マフラー2、アンダーパネル3、ディフューザー4に限定されず、本発明の趣旨の範囲内でそれぞれ適宜である。また、本発明の排気構造体には、排気マフラーと少なくとも1種のエアロパーツが同一の耐熱性樹脂等の合成樹脂で一体的に形成されている適宜の構成が含まれ、例えば排気マフラー2に加えてアンダーパネル3若しくはディフューザー4若しくはこれら以外のエアロパーツだけを同一の合成樹脂で一体的に形成したもの、又は、排気マフラー2とアンダーパネル3に加えてディフューザー4以外のエアロパーツを同一の合成樹脂で一体的に形成したもの、又は、排気マフラー2とディフューザー4に加えてアンダーパネル3以外のエアロパーツを同一の合成樹脂で一体的に形成したものも本発明に含まれる。
【0034】
また、本発明の排気構造体は、全体が略水平に広がる扁平形状で形成された排気構造体とすると空力特性改善等の観点から好適であるが、全体が略水平に広がる扁平形状以外の形状をなす構成とすることも可能であり、例えば排気マフラーの一部が局所的に下方に突出する形状の排気構造体とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、自動車の内燃機関の排気を排出する排気構造体として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…排気構造体 2…排気マフラー 21…フランジ 211…挿通穴 22…排気管 23…サブサイレンサー 231…内部隔壁 232…貫通孔群 24…排気管 25…メインサイレンサー 251、252、253…内部隔壁 254…留め具 3…アンダーパネル 31…整流突条 32…留め具 4…ディフューザー 4a、4b…ディフューザー部 41…整流板 42…傾斜板 43…水平板 44…留め具 100…車両 101…底部 200…被接続部材 201…フランジ 202…挿通穴 301…ボルト 302…ナット 500…既存の排気マフラー