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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】床版撤去装置及び床版撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20240313BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019079341
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020176443
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】太田 恒明
【審判官】▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218865(JP,A)
【文献】特開昭57-58707(JP,A)
【文献】実開昭60-135313(JP,U)
【文献】特開平2-292404(JP,A)
【文献】特開2013-194495(JP,A)
【文献】特開2000-110114(JP,A)
【文献】特開2000-87316(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁上に配置された既設床版の橋軸直角方向一方の床版端部を吊りながら切断して撤去する床版撤去装置において、
前記既設床版上に配置され、橋軸方向に移動可能な装置本体と、
前記床版端部を昇降可能に吊り下げる吊り下げ部と、
装置本体に床版端部除去位置の上方まで延出するように設けられ、吊り下げ部を橋軸直角方向に移動可能に支持する支持レールとを備え、
切断された床版端部を吊り下げ部によって吊り上げるとともに、吊り下げ部を支持レールに沿って橋軸直角方向他方に向かって移動し、吊り下げ部によって床版端部を装置本体の手前の既設床版上に吊り降ろすように構成するとともに、
吊り下げ部によって床版端部を吊り下げていない状態の装置本体を橋軸方向に移動するように構成した
ことを特徴とする床版撤去装置。
【請求項2】
前記吊り下げ部を互いに橋軸直角方向に間隔をおいて複数設けた
ことを特徴とする請求項1記載の床版撤去装置。
【請求項3】
前記吊り下げ部を支持する支持レールを互いに橋軸方向に間隔をおいて複数設けた
ことを特徴とする請求項1または2記載の床版撤去装置。
【請求項4】
前記装置本体の橋軸直角方向他端側に、橋軸直角方向一端側に吊り下げられた床版端部との重量バランスをとる錘を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項5】
前記装置本体を既設床版上に設置した軌条に沿って橋軸方向に移動可能に設けた
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項6】
前記軌条を互いに橋軸方向に連結された複数の走行レールによって形成し、
各走行レールを装置本体が通過した後の位置から装置本体が通過する前の位置に移動可能に構成した
ことを特徴とする請求項5記載の床版撤去装置。
【請求項7】
前記吊り下げ部に吊り下げられた床版端部を装置本体の下端側と床版端部除去位置との間の既設床版上に吊り降ろすように構成した
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項8】
前記支持レールの橋軸直角方向他端側の上方への移動を規制する移動規制部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項9】
前記支持レールを橋軸方向に対して傾動可能に設けた
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項10】
前記支持レールを橋軸直角方向に対して傾動可能に設けた
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項記載の床版撤去装置。
【請求項11】
桁上に配置された既設床版の橋軸直角方向一方の床版端部を吊りながら切断して撤去する床版撤去方法において、
前記既設床版上に配置され、橋軸方向に移動可能な装置本体と、前記床版端部を昇降可能に吊り下げる吊り下げ部と、装置本体に床版端部除去位置の上方まで延出するように設けられ、吊り下げ部を橋軸直角方向に移動可能に支持する支持レールとを備えた床版撤去装置を用い、
切断された床版端部を吊り下げ部によって吊り上げるとともに、
吊り下げ部を支持レールに沿って橋軸直角方向他方に向かって移動し、
吊り下げ部によって床版端部を装置本体の手前の既設床版上に吊り降ろすとともに、
吊り降ろした床版端部を既設床版上に残し、吊り下げ部によって床版端部を吊り下げていない状態の装置本体を橋軸方向に移動して次の床版端部の撤去を行う
ことを特徴とする床版撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設床版から橋軸直角方向一方の床版端部を撤去するための床版撤去装置及び床版撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般道や高速道路等の橋梁において、床版が老朽化した場合は、既設床版を主桁上から撤去して新たな床版を架設する床版取替施工が行われる。この場合、既設床版の撤去は、撤去する既設床版を橋軸直角方向に切断するとともに、橋軸直角方向複数の切断位置で橋軸方向に切断し、切断されたブロック状のコンクリートをクレーン車で吊り上げて撤去するようにしている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-292404号公報
【文献】特開2013-194495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記既設床版の撤去工事においては、クレーン車で既設床版からコンクリートを吊り上げる際、クレーン車のワイヤロープが長いため荷振れが生じやすい。しかしながら、既設床版の橋軸直角方向一方の床版端部(主桁よりも外側に張り出した部分)を撤去する際、その側方に他の道路橋が近接している場合は、クレーン車で吊り上げたコンクリートが荷振れにより他の道路橋の高欄等に接触するおそれがあった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クレーン車を用いる場合に比べ、吊り上げた床版端部の荷振れを大幅に低減することのできる床版撤去装置及び床版撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、桁上に配置された既設床版の橋軸直角方向一方の床版端部を吊りながら切断して撤去する床版撤去装置において、前記既設床版上に配置され、橋軸方向に移動可能な装置本体と、前記床版端部を昇降可能に吊り下げる吊り下げ部と、装置本体に床版端部除去位置の上方まで延出するように設けられ、吊り下げ部を橋軸直角方向に移動可能に支持する支持レールとを備え、切断された床版端部を吊り下げ部によって吊り上げるとともに、吊り下げ部を支持レールに沿って橋軸直角方向他方に向かって移動し、吊り下げ部によって床版端部を装置本体の手前の既設床版上に吊り降ろすように構成するとともに、吊り下げ部によって床版端部を吊り下げていない状態の装置本体を橋軸方向に移動するように構成している。また、本発明は、前記床版撤去装置を用いた床版撤去方法において、切断された床版端部を吊り下げ部によって吊り上げるとともに、吊り下げ部を支持レールに沿って橋軸直角方向他方に向かって移動し、吊り下げ部によって床版端部を装置本体の手前の既設床版上に吊り降ろすとともに、吊り降ろした床版端部を既設床版上に残し、吊り下げ部によって床版端部を吊り下げていない状態の装置本体を橋軸方向に移動して次の床版端部の撤去を行うようにしている。
【0007】
これにより、切断された床版端部が吊り下げ部によって吊り上げられるとともに、吊り下げ部が支持レールに沿って橋軸直角方向他方に向かって移動され、吊り下げ部によって床版端部が装置本体の手前の既設床版上に吊り降ろされることから、クレーン車を用いる場合に比べ、吊り上げた床版端部の荷振れが大幅に低減される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クレーン車を用いる場合に比べ、吊り上げた床版端部の荷振れを大幅に低減することができるので、例えば既設床版の橋軸直角方向一方側に他の既存の道路橋が近接している場合でも、吊り上げた床版端部を他の道路橋に接触させることなく撤去することができ、現場周辺の障害物に影響されることなく床版撤去作業を行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す床版撤去装置の正面図
図2】床版撤去装置の平面図
図3】床版撤去装置の側面図
図4】床版撤去装置の要部正面図
図5】床版撤去装置の要部側面図
図6】床版撤去装置の動作を示す要部側面図
図7】床版撤去装置の動作を示す正面図
図8】床版撤去装置の動作を示す正面図
図9】床版撤去装置の動作を示す正面図
図10】床版撤去装置の動作を示す正面図
図11】床版撤去装置の動作を示す側面図
図12】床版撤去装置の動作を示す側面図
図13】本発明の他の実施形態を示す床版撤去装置の正面図
図14】床版撤去装置の動作を示す要部正面図
図15】床版撤去装置の動作を示す要部正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図12は本発明の一実施形態を示すもので、既設床版の橋軸直角方向一方の床版端部を吊りながら切断して撤去するための床版撤去装置を示す。
【0011】
同図に示す既設床版1は、複数の主桁2上に架設されたコンクリート製の床版からなり、その橋軸直角方向両端部には壁高欄・地覆1aが設けられている。尚、本実施形態では、地覆上に壁高欄を有するものを示すが、地覆のみの場合であってもよい。
【0012】
本実施形態の床版撤去装置は、既設床版1上に配置される装置本体10と、既設床版1から切り離された床版端部を昇降可能に吊り下げる複数の吊り下げ部20と、各吊り下げ部を橋軸直角方向に移動可能に支持する一対の支持レール30とを備え、装置本体10は軌条40に沿って橋軸方向に移動するようになっている。
【0013】
装置本体10は、装置本体10の橋軸直角方向中央に配置される一対の第1のフレーム11と、装置本体10の上部に配置される一対の第2のフレーム12と、装置本体10下部に配置される一対の第3のフレーム13と、軌条40に係合して走行する複数の自走式の走行ユニット14とから構成されている。
【0014】
各第1のフレーム11は、上下方向に延びる鋼材からなり、互いに橋軸方向に間隔をおいて配置されている。また、各第1のフレーム11は、互いに交差するように斜めに延びる一対の斜材11aによって連結されている。
【0015】
各第2のフレーム12は、各第1のフレーム11の上端から橋軸直角方向一方(図中右側)に向かって延びる鋼材からなり、互いに橋軸方向に間隔をおいて配置されている。また、各第2のフレーム12は、互いに橋軸方向に平行に延びる一対の横梁12aと、互いに交差するように斜めに延びる一対の斜材12bによって連結されている。この場合、各横梁12aは各第2のフレーム12の一端側と他端側にそれぞれ配置され、各斜材12bは各横梁12a間に配置されている。更に、各第2のフレーム12の橋軸直角方向一端側は下方に向かって斜めに延びる一対の斜材12cによって各第1のフレーム11の下端側に連結され、各第2のフレーム12の橋軸直角方向他端側は各第1のフレーム11の上端に連結されている。
【0016】
各第3のフレーム13は、各第1のフレーム11の下端から橋軸直角方向他方(図中左側)に向かって延びる鋼材からなり、互いに橋軸方向に間隔をおいて配置されている。また、各第3のフレーム13は、互いに橋軸方向に平行に延びる一対の横梁13aと、互いに交差するように斜めに延びる一対の斜材13bによって連結されている。この場合、各横梁13aは各第3のフレーム13の一端側と他端側にそれぞれ配置され、各斜材13bは各横梁13a間に配置されている。更に、各第3のフレーム13の橋軸直角方向一端側は各第1のフレーム11の下端に連結され、各第3のフレーム13の橋軸直角方向他端側は上方に向かって斜めに延びる一対の斜材13cによって各第1のフレーム11の上端側に連結されている。また、各第3のフレーム13は橋軸直角方向他端側の横梁13aよりも橋軸直角方向に延出しており、この延出部分には橋軸方向に長く形成された錘15が載置されている。
【0017】
各走行ユニット14は前後一対の車輪14aを有し、各車輪14aは図示しないモータによって駆動されるようになっている。各走行ユニット14は各第3のフレーム13の下端に取り付けられ、各第3のフレーム13の橋軸直角方向一端側と他端側の4箇所にそれぞれ配置されている。
【0018】
各吊り下げ部20は、それぞれ周知のトロリ式チェーンブロック等からなり、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて配置されている。各吊り下げ部20は、チェーン21の下端に取り付けられたフック22を手動または電動で昇降させるとともに、支持レール30に係合する車輪23を手動または電動で駆動することにより支持レール30に沿って橋軸方向に走行するようになっている。また、各吊り下げ部20は互いにトロリ部分を連結されており、一方の吊り下げ部20を支持レール30に沿って移動させると、他方の吊り下げ部20が一方の吊り下げ部20と所定間隔を保ちながら一方の吊り下げ部20と共に移動するようになっている。
【0019】
各支持レール30は、橋軸直角方向に直線状に延びるH型鋼等からなり、互いに橋軸方向に間隔をおいて配置されている。各支持レール30は各第2のフレーム12の各横梁12aの下方に配置され、各第2のフレーム12よりも橋軸直角方向一端側に延出するように形成されている。各支持レール30は、橋軸直角方向一端側と他端側をそれぞれ各第2のフレーム12の各横梁12aに複数の第1の連結部31を介して連結されている。各第1の連結部31は、図4乃至図6に示すように、支持レール30の上面側に固定された対向一対の第1の連結片31aと、横梁12aの下面側に固定された第2の連結片31bとからなり、第1及び第2の連結片31a,31bは橋軸直角方向に延びる支軸31cを介して互いに回動自在に連結されている。これにより、各支持レール30は各第1の連結部31の支軸31cを中心に橋軸方向に対して傾動自在に支持されている。
【0020】
また、各支持レール30の橋軸直角方向他端側は移動規制部としての第2の連結部32を介して各第1のフレーム11の各斜材11aにそれぞれ連結されている。各第2の連結部32は、図4乃至図6に示すように、支持レール30の下面側に固定された第1の連結片32aと、斜材11a側に固定された対向一対の第2の連結片32bとからなり、第1及び第2の連結片32a,32bは橋軸直角方向に延びる支軸32cを介して連結されている。この場合、第2の連結片32bは互いに第1の連結片32aの厚さ寸法よりも大きい間隔をおいて配置され、第1の連結片32aが支軸32cに軸方向に移動自在に連結されている。これにより、第2の連結部32は、各支持レール30の橋軸方向への回動を許容するとともに、各支持レール30の上方への移動を規制するようになっている。
【0021】
軌条40は、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて配置される所定長さの左右一対の走行レール41からなり、複数(例えば3つ)の走行レール41を橋軸方向に連結することにより構成される。各走行レール41は、H型鋼からなる左右一対の固定部材42の上面に固定されており、各固定部材42は橋軸直角方向に延びる連結部材43によって互いに連結されている。また、各走行レール41は互いに互いに着脱可能に連結されている。
【0022】
次に、本実施形態の床版撤去装置を用いた床版撤去工程について、図1図7乃至図12を参照して説明する。ここでは、既設床版1の橋軸直角方向一方の床版端部1bを前記床版撤去装置によって撤去する工程を示す。
【0023】
まず、図1に示すように床版撤去装置を既設床版1上に設置する。その際、床版撤去装置は、装置本体10の下端側が床版端部除去位置を含まない既設床版1上に配置されるとともに、床版撤去装置の各支持レール30の橋軸直角方向一端側が床版端部1bの除去位置全体を含んだ上方に配置されるように設置される。
【0024】
次に、図7に示すように各吊り下げ部20のフック22を除去位置の床版端部1bに連結する。その際、各吊り下げ部20は各支持レール30に2つずつ間隔をおいて設けられているため、床版端部1bには橋軸直角方向及び橋軸方向のそれぞれ2箇所ずつ計4箇所に各吊り下げ部20が連結される。
【0025】
続いて、床版端部1bの切断位置Cを橋軸方向に切断し、壁高欄・地覆1aを含む床版端部1bを橋軸直角方向に切断する。その際、床版端部1bは各吊り下げ部20に連結されているため、既設床版1が他の部分から切り離されても荷振れを生ずることなく装置本体10によって吊り下げられる。また、床版端部1bの荷重は装置本体10の下端側よりも橋軸直角方向一方に延出した各支持レール30に加わるが、装置本体10の橋軸直角方向他方には錘15が設けられているため、床版端部1bの荷重で装置本体10の橋軸直角方向他端側が浮き上がることはない。その際、床版端部1bの荷重が各支持レール30の橋軸直角方向一端側に加わると、橋軸直角方向一端側の第1の連結部31を支点に各支持レール30に回転モーメントが生じ、各支持レール30の橋軸直角方向他端側に上方への反力が加わるが、各支持レール30の橋軸直角方向他端側は第2の連結部32によって上方への移動を規制されることから、各支持レール30の橋軸直角方向他端側における上方への反力によって橋軸直角方向他端側の第1の連結部31に上方への無用な圧力が生ずることはない。
【0026】
次に、図8に示すように既設床版1から切り離された床版端部1bを各吊り下げ部20によって既設床版1の上面よりも高い位置まで吊り上げた後、図9に示すように各支持レール30に沿って各吊り下げ部20を橋軸直角方向他方に向かって装置本体10の手前に移動し、図10及び図11に示すように既設床版1上(装置本体10の下端側と床版端部除去位置との間)に吊り降ろす。その際、図11に示すように装置本体10を軌条40に沿って橋軸方向に微少な所定距離Lだけ移動させて床版端部1bを既設床版1上に吊り降ろすことにより、床版端部1bが隣接する床版端部1bと接触することなく吊り降ろされる。
【0027】
この後、既設床版1上に吊り降ろした床版端部1bと各吊り下げ部20との連結を解除し、図12に示すように装置本体10を軌条40に沿って次の床版端部撤去位置に移動する。その際、軌条40における装置本体10が通過した後の位置に配置されている走行レール41を装置本体10が通過する前の位置に移動して他の走行レール41に連結する。
【0028】
前述のように既設床版1の橋軸直角方向一方の床版端部1bを吊りながら切断して撤去する撤去工程を軌条40に沿って装置本体10を移動させながら繰り返し行うことにより、橋軸方向複数箇所の床版端部撤去作業が順次行われる。また、既設床版1上に吊り降ろされた床版端部1bは別途クレーン車等により現場から搬出される。
【0029】
また、既設床版1に橋軸方向の勾配がある場合など、既設床版1に設置した装置本体10が図6に示すように橋軸方向に対して傾斜角θだけ傾いて設置された場合でも、各支持レール30は各第1の連結部31の支軸31cを中心に橋軸方向に対して傾動自在に支持されていることから、各支持レール30が自重により装置本体10に対して傾動し、各支持レール30の向きが常に水平に保たれる。
【0030】
このように、本実施形態の床版撤去装置は、既設床版1上に配置される装置本体10と、床版端部1bを昇降可能に吊り下げる吊り下げ部20と、装置本体10に床版端部除去位置の上方まで延出するように設けられ、吊り下げ部20を橋軸直角方向に移動可能に支持する支持レール30とを備え、切断された床版端部1bを吊り下げ部20によって吊り上げるとともに、吊り下げ部20を支持レール30に沿って橋軸直角方向他方に向かって移動し、吊り下げ部20によって床版端部1bを装置本体10の手前の既設床版1上に吊り降ろすようにしているので、クレーン車を用いる場合に比べ、吊り上げた床版端部1bの荷振れを大幅に低減することができる。これにより、例えば既設床版1の橋軸直角方向一方側に他の既存の道路橋が近接している場合でも、吊り上げた床版端部1bを他の道路橋に接触させることなく撤去することができ、現場周辺の障害物に影響されることなく床版撤去作業を行うことができるという利点がある。
【0031】
また、吊り下げ部20を互いに橋軸直角方向に間隔をおいて複数設けているので、各吊り下げ部20によって床版端部1bを橋軸直角方向複数箇所で安定して吊り上げることができ、荷振れの低減効果を高めることができる。
【0032】
更に、吊り下げ部20を支持する支持レール30を互いに橋軸方向に間隔をおいて複数設けたので、各吊り下げ部20によって床版端部1bを橋軸方向複数箇所で安定して吊り上げることができ、荷振れの低減効果をより高めることができる。
【0033】
また、装置本体10の橋軸直角方向他端側に、橋軸直角方向一端側に吊り下げられた床版端部1bとの重量バランスをとる錘15を設けたので、床版端部1bの荷重で装置本体10の橋軸直角方向他端側が浮き上がることがなく、装置本体10を橋軸直角方向に小型化することができる。
【0034】
更に、装置本体10を既設床版1上に設置した軌条40に沿って橋軸方向に移動可能に設けたので、装置本体10を橋軸方向に移動させながら橋軸方向複数箇所の床版端部を効率よく撤去することができ、床版全体の撤去工程の効率化を図ることができる。
【0035】
この場合、軌条40を互いに橋軸方向に連結された複数の走行レール41によって形成し、各走行レール41を装置本体10が通過した後の位置から装置本体10が通過する前の位置に移動させるようにしたので、軌条40を最小限の本数の走行レール41によって構成することができ、軌条40の設備コストを低減することができる。
【0036】
また、吊り下げ部20に吊り下げられた床版端部1bを装置本体10の下端側と床版端部除去位置との間の既設床版1上に吊り降ろすようにしたので、床版端部1bを既設床版1上に吊り降ろした後、速やかに次の床版端部1bの吊り上げ作業に移行することができ、橋軸方向複数箇所の床版端部撤去作業を効率よく行うことができる。
【0037】
更に、第2の連結部32によって支持レール30の橋軸直角方向他端側の上方への移動を規制するようにしたので、橋軸直角方向一端側に吊り下げられた床版端部1bの荷重により、橋軸直角方向他端側の第1の連結部31に上方への無用な圧力が生ずることがなく、第1の連結部31への負荷を軽減することができる。
【0038】
また、支持レール30を橋軸方向に対して傾動可能に設けたので、既設床版1に橋軸方向の勾配がある場合など、既設床版1に設置した装置本体10が橋軸方向に対して傾いて設置された場合でも、支持レール30が自重により装置本体10に対して傾動し、支持レール30における吊り下げ部20の車輪23の走行面の向きを橋軸方向に対して水平に保つことができ、吊り下げ部20の走行を常に円滑に行うことができる。
【0039】
図13乃至図15は本発明の他の実施形態を示すもので、支持レール30を橋軸方向に対して傾動可能に設けたものである。尚、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0040】
本実施形態では、装置本体10の各第2のフレーム12の橋軸直角方向他端側の横梁12aに、支持レール30を橋軸方向に対して傾動させる傾動機構50が設けられている。
【0041】
この傾動機構50は、横梁12aの下方に配置された第1の支持板51と、横梁12aの上方に配置された第2の支持板52と、第1の支持板51と第2の支持板52とを上下方向に連結する複数の連結ロッド53と、第2の支持板52と横梁12aとの間に配置されたジャッキ54とからなり、第1の支持板51の下面には第1の連結部31の第2の連結片31bが固定されている。即ち、ジャッキ54によって第2の支持板52を昇降させることにより、第2の支持板52に固定された橋軸直角方向他端側の第1の連結部31が上下方向に移動し、支持レール30が橋軸直角方向一端側の第1の連結部31を中心に橋軸直角方向に対して傾動するようになっている。
【0042】
本実施形態によれば、既設床版1に橋軸直角方向の勾配がある場合など、図14に示すように既設床版1に設置した装置本体10が橋軸直角方向に対して傾いて設置された場合でも、図15に示すように傾動機構50によって支持レール30を傾動させることにより、支持レール30における吊り下げ部20の車輪23の走行面の向きを橋軸直角方向に対して水平に保つことができ、吊り下げ部20の走行を常に円滑に行うことができる。
【0043】
尚、前記各実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記各実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1…既設床版、1b…床版端部、2…主桁、10…装置本体、14…走行ユニット、15…錘、20…吊り下げ部、30…支持レール、40…軌条、41…走行レール、50…傾動機構。
図1
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図15