(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システムおよび基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240313BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648A
(21)【出願番号】P 2019138092
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164036(JP,A)
【文献】特開2004-055641(JP,A)
【文献】特開2012-212751(JP,A)
【文献】特開2008-177454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、
前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、
鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部と
を備え、
前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、
前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、
前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、
前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高
く、
前記第2当接面の上側部分の水平面に対する傾斜角は、前記第1当接面の上側部分の水平面に対する傾斜角よりも小さい、基板処理装置。
【請求項2】
第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、
前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、
鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部と
を備え、
前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、
前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、
前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、
前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、
前記チャック駆動機構は、前記第1チャックピンが前記第2種類の基板を保持しない状態で前記第2チャックピンにより前記第2種類の基板を保持した後に、前記第1チャックピンに前記第2種類の基板を保持させ、前記第2チャックピンによる保持を解除する、基板処理装置。
【請求項3】
第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、
前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、
鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部と
を備え、
前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、
前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、
前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、
前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、
前記第1チャックピンの上端の高さ位置は、前記第1チャックピンによって保持された前記第1種類の基板の上面と同じまたは高い、基板処理装置。
【請求項4】
第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、
前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、
鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部と
を備え、
前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、
前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、
前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、
前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、
平面視において、前記第1チャックピンは前記第2チャックピンの近傍に設けられ、
前記チャック駆動機構は、前記第2チャックピンにより前記第2種類の基板を保持した後に、前記第1チャックピンに前記第2種類の基板を保持させ、前記第2チャックピンによる保持を解除する、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一つに記載の基板処理装置と、基板を搬入する搬入部と、基板を前記搬入部から受け取り、前記基板処理装置に受け渡す基板受渡し部とを含む、基板処理システム。
【請求項6】
互いに異なる形状を有する複数の第1チャックピンおよび複数の第2チャックピンを含む基板保持部のうち前記第1チャックピンが第1種類の基板の周縁を保持する第1工程と、
前記第1種類の基板を保持する前記基板保持部を回転させながら、前記第1種類の基板に処理液を供給する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第1種類の基板を前記基板保持部から取り出す第3工程と、
前記第2チャックピンが第2種類の基板の周縁を保持する第4工程と、
前記第2種類の基板を保持する前記基板保持部を回転させながら、前記第2種類の基板に処理液を供給する第5工程と、
前記第5工程の後に、前記第2種類の基板を前記基板保持部から取り出す第6工程と
を備え、
前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、
前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、
前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、
前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高い、基板処理方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の基板処理方法であって、
前記第4工程と前記第5工程との間に実行され、前記第2種類の基板を保持するチャックピンを前記第2チャックピンから前記第1チャックピンに切り替える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置、基板処理システムおよび基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に処理液を供給して基板に対する処理を行う基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、基板を保持するスピンチャックと、基板に処理液を供給するノズルとを含む。
【0003】
特許文献1の基板処理装置においては、スピンチャックは、複数の第1挟持部材と、複数の第2挟持部材と、第1動作変換機構と、第2動作変換機構とを含む。第1挟持部材および第2挟持部材は基板の周縁に沿って交互に配列される。複数の第1挟持部材は基板の周縁を保持することができ、複数の第2挟持部材も基板の周縁を保持することができる。第1動作変換機構は第1挟持部材を駆動し、第1挟持部材による基板の保持および解除を切り替える。第2動作変換機構は第2挟持部材を駆動し、第2挟持部材による基板の保持および解除を切り替える。
【0004】
スピンチャックは、第1挟持部材または第2挟持部材により基板を保持しつつ、当該基板を回転させることができる。基板の回転中にノズルが処理液を基板の主面に供給することにより、処理液は遠心力により基板の主面上を広がって外側に飛散する。これにより、基板の表面に対して、処理液に基づく処理を行うことができる。
【0005】
特許文献1では、この処理液の供給中に、基板を保持する挟持部材を第1挟持部材と第2挟持部材との間で交互に切り替えている。これにより、各挟持部材と基板との当接位置における処理不良を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、基板処理装置は一種類の基板に対して処理を行っており、複数種類の基板に対して処理を行う技術については記載されていない。
【0008】
例えば基板の一方側の主面にのみデバイス用のパターンが形成される場合、当該パターンの残留応力によって基板に反りが生じ得る。具体的には、基板の周縁部がその中央部に対して一方側に反り得る。
【0009】
このように反りが生じた基板と、反りが生じていない平坦な基板とが混在して、順次に基板処理装置に搬入されると、基板処理装置のチャックピンは適切に基板を保持することができない。
【0010】
そこで、本願は、反り状態の異なる複数の基板が順次に搬送されても、当該基板を一枚ずつ適切に保持して当該基板に対して処理を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板処理装置の第1の態様は、第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、前記第2当接面の上側部分の水平面に対する傾斜角は、前記第1当接面の上側部分の水平面に対する傾斜角よりも小さい。
【0013】
基板処理装置の第2の態様は、第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、前記チャック駆動機構は、前記第1チャックピンが前記第2種類の基板を保持しない状態で前記第2チャックピンにより前記第2種類の基板を保持した後に、前記第1チャックピンに前記第2種類の基板を保持させ、前記第2チャックピンによる保持を解除する。
基板処理装置の第3の態様は、第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、前記第1チャックピンの上端の高さ位置は、前記第1チャックピンによって保持された前記第1種類の基板の上面と同じまたは高い。
【0014】
基板処理装置の第4の態様は、第1種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第1種類の基板の周縁を保持する複数の第1チャックピンと、前記第1種類とは異なる第2種類の基板の周縁に沿って設けられ、前記第2種類の基板の周縁を保持する、前記第1チャックピンとは異なる形状を有する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンによる基板の保持および解除を互いに独立に切り替えるチャック駆動機構と、鉛直方向に沿う回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させて、前記基板保持部によって保持された基板を回転させる回転機構と、前記基板保持部によって保持された基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高く、平面視において、前記第1チャックピンは前記第2チャックピンの近傍に設けられ、前記チャック駆動機構は、前記第2チャックピンにより前記第2種類の基板を保持した後に、前記第1チャックピンに前記第2種類の基板を保持させ、前記第2チャックピンによる保持を解除する。
【0015】
基板処理システムの態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置と、基板を搬入する搬入部と、基板を前記搬入部から受け取り、前記基板処理装置に受け渡す基板受渡し部とを含む。
【0016】
基板処理方法の第1の態様は、互いに異なる形状を有する複数の第1チャックピンおよび複数の第2チャックピンを含む基板保持部のうち前記第1チャックピンが第1種類の基板の周縁を保持する第1工程と、前記第1種類の基板を保持する前記基板保持部を回転させながら、前記第1種類の基板に処理液を供給する第2工程と、前記第2工程の後に、前記第1種類の基板を前記基板保持部から取り出す第3工程と、前記第2チャックピンが第2種類の基板の周縁を保持する第4工程と、前記第2種類の基板を保持する前記基板保持部を回転させながら、前記第2種類の基板に処理液を供給する第5工程と、前記第5工程の後に、前記第2種類の基板を前記基板保持部から取り出す第6工程とを備え、前記第2種類の基板は、前記第1種類の基板よりも反っている反り基板であり、前記第1チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第1当接面を有し、前記第2チャックピンの各々は、基板の周縁を鉛直方向に挟むV字状の第2当接面を有し、前記第2当接面の上端は前記第1当接面の上端よりも高く、前記第2チャックピンの上端は前記第1チャックピンの上端よりも高い。
【0017】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記第4工程と前記第5工程との間に実行され、前記第2種類の基板を保持するチャックピンを前記第2チャックピンから前記第1チャックピンに切り替える。
【発明の効果】
【0018】
基板処理装置の第1および第2の態様、基板処理システムの態様および基板処理方法の第1の態様によれば、第2種類の基板よりも平坦な第1種類の基板は、第1当接面の上端が低い第1チャックピンによって保持される。基板の上面に供給された処理液は基板の回転に伴う遠心力を受けて基板の周縁に流れる。この処理液の一部は第1チャックピンに衝突する。しかるに、第1チャックピンは低いので、処理液は第1チャックピンを超えやすく、第1チャックピンでの処理液の跳ね返りを抑制することができる。よって、処理液の基板への再付着を抑制できる。
【0019】
一方で、第1種類よりも反っている第2種類の基板の周縁は、部分的に第1チャックピンの第1当接面の上端よりも高くなり得る。このような基板は第1チャックピンで適切に保持できない。そこで、第2当接面の上端が第1当接面の上端よりも高い第2チャックピンが当該基板を保持する。これにより、第2種類の基板を保持することができる。つまり、第2チャックピンでの処理液の跳ね返りが多少生じるものの、第2種類の基板を適切に保持することができる。
【0020】
基板処理装置の第1の態様によれば、第2種類の基板の周縁が第2当接面の上側部分に沿って容易に移動できる。言い換えれば、当該上側部分の案内機能を向上できる。
【0021】
基板処理装置の第2の態様および基板処理方法の第2の態様によれば、第2チャックピンの保持により第2種類の基板の反り量を低減した後に、第1チャックピンにより第2種類の基板を保持する。よって、第2種類の基板に対しても、処理液の基板への再付着を抑制しつつ、基板に対して処理を行うことができる。
【0022】
基板処理装置の第4の態様によれば、第2チャックピンの保持により、特にその第2チャックピンの近傍で第2種類の基板の反り量が低減する。第1チャックピンが第2チャックピンの近傍で第2種類の基板を保持するので、第2種類の基板の反り量を低減した位置の近傍で第1チャックピンが第2種類の基板を保持できる。
【0023】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】第1基板の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図3】第2基板の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図4】ロードポートLPの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図5】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図6】基板保持部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図7】リフトピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図8】リフトピンの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図9】第1チャックピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図10】第2チャックピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図11】チャックピンの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図12】第2チャックピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図13】第2チャックピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図14】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図15】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図16】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図17】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図18】基板処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図19】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図20】基板保持部の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0026】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0027】
第1の実施の形態.
<基板処理システムの概略構成>
図1は、基板洗浄装置として機能する基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図1で示されるように、基板処理システム100は、例えば、基板の一例としての半導体基板(ウエハ)9の表面に付着した有機系のゴミを除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。有機系のゴミとしては、例えば、基板9の表面に不純物を注入するイオン注入処理等の後において基板9の表面に残っている不要になったレジスト、あるいは基板9の表面のうちの外周部の近傍に付着しているレジスト等に由来する有機系のゴミ等、が含まれる。
【0028】
基板処理システム100は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持機構としてのロードポートLPと、基板9を処理する複数(この実施の形態では、12台)の処理ユニット110とを含む。具体的には、例えば、平面的に配置されている4台の処理ユニット110でそれぞれ構成されている3組の処理ユニット110が、鉛直方向に積層するように配置されている。
【0029】
基板処理システム100は、さらに、例えば、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部6とを含む。インデクサロボットIRは、例えば、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板9を搬送することができる。センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRと各処理ユニット110との間で基板9を搬送することができる。制御部6は、例えば、基板処理システム100に備えられた各部の動作およびバルブの開閉等を制御することができる。
【0030】
ここでは、
図1で示されるように、ロードポートLPと各処理ユニット110とは、水平方向に間隔を空けて配置されている。ロードポートLPにおいて、複数枚の基板9を収容する複数のキャリアCは、平面視したときに水平な配列方向Dに沿って配列されている。ロードポートLPは、基板9を搬入する搬入部として機能する。ここで、インデクサロボットIRは、例えば、キャリアCから基板載置部PASSに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、基板載置部PASSからキャリアCに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。基板載置部PASSは、基板9を載置する載置台を含む。
【0031】
センターロボットCRは、例えば、基板載置部PASSから各処理ユニット110に複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、各処理ユニット110から基板載置部PASSに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット110の間において基板9を搬送することができる。インデクサロボットIR、基板載置部PASSおよびセンターロボットCRは、基板9を搬入部(ロードポートLP)から受け取り、処理ユニット110に受け渡す基板受渡し部として機能する。
【0032】
図1の例では、インデクサロボットIRは、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、インデクサロボットIRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。インデクサロボットIRはハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。インデクサロボットIRは、受渡位置(
図1でインデクサロボットIRが描かれている位置)を通る経路において配列方向Dに沿って移動する。受渡位置は、平面視したときにインデクサロボットIRと基板載置部PASSとが配列方向Dに直交する方向において対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよび基板載置部PASSにそれぞれハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、インデクサロボットIRはハンドHを移動させることにより、キャリアCに基板9を搬入する搬入動作と、キャリアCから基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、インデクサロボットIRは受渡位置においてハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板9を搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0033】
図1の例では、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、センターロボットCRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。センターロボットCRは各ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、センターロボットCRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。センターロボットCRは、平面視したときに、複数台の処理ユニット110に取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット110および基板載置部PASSのいずれかにハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、各処理ユニット110に基板9を搬入する搬入動作と、各処理ユニット110から基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板9を搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0034】
未処理の基板9はキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PASSを経由してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板9を処理ユニット110に搬入する。処理ユニット110は基板9に対して処理を行う。処理済みの基板9はセンターロボットCRによって処理ユニット110から取り出され、必要に応じて他の処理ユニット110を経由したうえで、基板載置部PASSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板9をキャリアCに搬入する。以上により、基板9に対する処理が行われる。
【0035】
本実施の形態では、ロードポートLPに搬入される複数の基板9には、複数種類の基板9が混在する。例えば、第1基板9aと、第1基板9aと異なる形状を有する第2基板9bとが混在する。
図2は、第1基板9aの一例を概略的に示す斜視図であり、
図3は、第2基板9bの一例を概略的に示す斜視図である。
図2に例示するように、第1基板9aは略円板形状を有しており、その第1主面91および第2主面92はおよそ平面である。第1主面91には、製造途上のデバイスのパターンが形成される。つまり、第1主面91はデバイス形成面である。また、ここでは、第2主面92は、デバイスが形成されないデバイス非形成面である。
【0036】
図3の例では、第2基板9bは第1基板9aよりも反っており、略円板形状を湾曲して得られる形状を有している。第2基板9bが湾曲する理由は例えば次のとおりである。即ち、第2基板9bの第1主面91はデバイス形成面であり、その第1主面91にパターンが形成されることにより、当該パターンに起因した応力によって第2基板9bに反りが生じ、第2基板9bが湾曲する。
図3の例では、第2基板9bの周縁部がその中央部に対して同じ方向(
図3では下方)に反り返っている。つまり、第2基板9bの断面形状は弧状となる。なお、ここでは、第2基板9bの第2主面92はデバイス非形成面である。
【0037】
図3の例では、第2基板9bは等方的に反り返っていない。言い換えれば、第2基板9bの周縁部の一部が主として反り返り、周縁部の他の部分はあまり反り返っていない。例えば、湾曲前の平面状の第2基板9bの第2主面92上に互いに直交する仮想的なX軸およびY軸を設定する。X軸およびY軸の交点は第2基板9bの中心である。
図3の例では、Y軸に沿って見た第2基板9bの両端の反り返り量d1は、X軸に沿って見た第2基板9bの両端の反り返り量d2よりも大きい。なお、ここでいう反り量とは、第2基板9bの周縁上の各位置とXY平面との間の距離である。
【0038】
基板9に反りが生じるか否かは、基板9の第1主面91に形成されたパターンの状態、基板9の厚みおよび基板9の材質等の諸要因に起因する。以下では、第1基板9aを通常基板とも呼び、第2基板9bを反り基板とも呼ぶ。
【0039】
制御部6は、ロードポートLPに搬入された各基板9の種類を示す基板情報(例えばロット情報)を受け取る。制御部6は、例えば、基板処理システム100よりも上流側の装置などの外部装置から、基板情報を受信してもよい。この基板情報は、基板9の種類を識別する情報を含んでいればよく、例えば当該情報として基板9のロット番号が採用されてもよい。ロット番号ごとの基板9の反り状態は予め分かっているので、例えば作業者の入力により、基板9の反り状態とロット番号とを対応付けたテーブルが記憶媒体に記憶されていてもよい。制御部6はロット番号とテーブルにより、基板9の反り状態を特定でき、基板9の種類(通常基板か反り基板か)を判別できる。
【0040】
あるいは、ロードポートLPには、基板9の形状を測定する形状センサが設けられてもよい。
図4は、ロードポートLPの構成の一例を概略的に示す図である。
図4の例では、ロードポートLPには、キャリアCを載置する基板載置台130が設けられており、そのインデクサロボットIR側の隔壁132には開口133が形成されており、キャリアC内の基板9はこの開口133からインデクサロボットIRに受け渡される。開口133は通常は閉止部材134により閉止されている。閉止部材134は開閉部材135により隔壁132から離隔する方向および隔壁132に接近する方向に進退可能とされている。開口133を開放する際にはまずキャリアCを隔壁132に密接させる。その上で、キャリアCの蓋部材C4を閉止部材134に保持させる。次に、開閉部材135は閉止部材134を隔壁132から遠ざける方向に移動させたうえで、当該閉止部材134を下降させる。
【0041】
閉止部材134の上面には、形状センサ7の一例であるカメラが取り付けられている。形状センサ7は閉止部材134が下方向に移動する際にキャリアCの内部を撮影し、キャリアCの内部における各基板9の保持位置および各基板9の形状を取得する。制御部6は、カメラによって取得された画像に対して画像処理を行って、各基板9の種類(通常基板か反り基板か)を判別することができる。
【0042】
あるいは、形状センサ7として、キャリアC内の複数の基板9の配列方向(鉛直方向)に走査する光学式センサ(例えばマッピングセンサ)が採用されてもよい。当該光学式センサは例えば、赤外線などの光を、キャリアC内の基板9に向かって照射する光源と、基板9で反射した当該光を受光する受光部とを含む。制御部6は光学式センサによって測定された測定値に基づいて、各基板9の種類(通常基板か反り基板か)を判別する。
【0043】
また、形状センサ7は必ずしもロードポートLPに設けられている必要はない。例えば、基板載置部PASSに設けられてもよく、あるいは、処理ユニット110の内部に設けられてもよい。
【0044】
<基板処理装置>
図5は、上記処理ユニット110の一つに相当する基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1は、基板9を一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、例えば、デバイスのパターンが形成されていない第2主面92を上方に向けて基板9を保持し、第2主面92に対して処理液による処理を行う。よって、ここでは、基板9の第2主面92が基板9の上面に相当する。基板処理装置1は後に詳述するように、第1基板9aに対しても処理を行うことができ、第2基板9bに対しても処理を行うことができる。
【0045】
基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構3と、処理液供給部4とを含む。基板保持部2および基板回転機構3は、箱状のチャンバ(図示省略)内に収容される。当該チャンバは、およそ密閉された内部空間を形成する。
【0046】
基板保持部2は、互いに異なる種類の基板9を選択的に保持することができる。例えば第1基板9aが搬入されたときには基板保持部2は第1基板9aを保持し、また、第2基板9bが搬入されたときには基板保持部2は第2基板9bを保持する。
図6は、基板保持部2の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図5および
図6に示すように、基板保持部2は、リフト部22と、チャック部23とを含んでいる。
【0047】
チャック部23は、複数(
図6の例では3つ)の第1チャックピン231aと、複数(
図6の例では3つ)の第2チャックピン231bとを含む。第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは、互いに異なる種類の基板9を水平姿勢で保持することができる。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が鉛直方向に沿う状態をいう。
【0048】
例えば3つの第1チャックピン231aは第1基板9aの周縁を保持できる。よって、第1基板9aが搬入されたときには、第1チャックピン231aが第1基板9aを保持する。一方で、3つの第2チャックピン231bは第2基板9bの周縁を保持できる。よって、第2基板9bが搬入されたときには、第2チャックピン231bが第2基板9bを保持する。第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは互いに異なる形状を有している。より具体的には、第1チャックピン231aは、第1基板9aの保持に適した形状を有しており、第2チャックピン231bは、第2基板9bの保持に適した形状を有している。第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bの形状の一例については後に詳述する。
【0049】
リフト部22は、複数(
図6の例では6つ)のリフトピン221を含む。リフトピン221は、チャック部23によって保持された基板9の第1主面91と鉛直方向において対向する位置に設けられる。
図6の例では、リフトピン221は基板9の周縁に沿って並んで設けられている。また、リフトピン221はチャック部23に対して昇降可能に設けられる。リフトピン221が上昇することにより、リフトピン221が基板9を支持することができる。リフトピン221は第1基板9aおよび第2基板9bのいずれも支持することができる。リフトピン221についても後に詳述する。
【0050】
基板回転機構3は回転軸J1のまわりで基板保持部2を回転させる。回転軸J1は、基板保持部2によって保持された基板9の中央部を通り、鉛直方向に沿って延在する軸である。
図5の例では、基板回転機構3は、シャフト部31と、モータ32とを含んでいる。シャフト部31は、回転軸J1を中心とする略円筒状の形状を有しており、その上端が基板保持部2の下面(具体的には、後述の対向板部21の下面212)の中央部に固定される。モータ32はシャフト部31を回転させることにより、基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9も回転軸J1のまわりで回転する。
【0051】
基板回転機構3は、回転軸J1を中心とする周方向において基板保持部2を所定の角度位置(以下、「回転停止位置」という。)で停止させることが可能である。例えばモータ32がシャフト部31を所定の回転停止位置で停止させることにより、基板保持部2を所定の回転停止位置で停止させることができる。
【0052】
処理液供給部4は、基板保持部2によって保持された基板9の第2主面92に処理液を供給する。
図5の例では、処理液供給部4は、液ノズル41と、処理液供給源42とを含んでいる。液ノズル41はチャンバ内においてノズルアーム411により支持される。ノズルアーム411は図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構は液ノズル41を、基板9の第2主面92の中央部に対向する吐出位置と、鉛直方向に垂直な方向において基板9から離れた待機位置との間で移動させる。液ノズル41は弁を介して処理液供給源42に接続される。処理液供給源42から液ノズル41に処理液が供給されることにより、液ノズル41から第2主面92の中央部に向けて当該処理液が吐出される。
図5の処理液供給源42は、薬液、有機溶剤または純水(脱イオン水(DIW))等の処理液を順次切り替えて液ノズル41に供給可能である。薬液として、オゾン含有フッ酸溶液、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)またはSC1(NH
4OHおよびH
2O
2を含む液)等が例示される。有機溶剤として、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。
【0053】
図5の例では、基板処理装置1には、不活性ガス供給部5が設けられている。不活性ガス供給部5は基板9の第1主面91へと不活性ガスを供給する。
図5の例では、不活性ガス供給部5は、ガスノズル51と、不活性ガス供給源52とを含む。
図5の例では、基板保持部2およびシャフト部31には、鉛直方向に延びる中空部が回転軸J1上に設けられており、ガスノズル51が当該中空部内に配置される。ガスノズル51は鉛直方向に延びており、ガスノズル51の上端面は基板9の第1主面91の中央部に直接的に対向する。
【0054】
ガスノズル51は弁を介して不活性ガス供給源52に接続される。不活性ガス供給源52からガスノズル51に不活性ガスが供給されることにより、ガスノズル51から第1主面91と基板保持部2(具体的には、後述の対向板部21)との間の空間に向けて、不活性ガスが噴出される。不活性ガスは、典型的には窒素ガスである。不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガスまたは低湿度の清浄空気等であってもよい。
【0055】
次に、基板保持部2の構成の詳細な一例について説明する。
図5および
図6の例では、基板保持部2は対向板部21を含んでいる。対向板部21は、回転軸J1を中心とする略円板形状を有する。基板保持部2は対向板部21よりも上方において基板9を保持しており、対向板部21の上方を向く面は、基板9の下方を向く第1主面91に対向する対向面211である。対向面211は回転軸J1に垂直な方向に広がる。対向面211の外周縁は基板9よりも外側に位置している。言い換えれば、対向面211の外径は基板9の径よりも大きい。
【0056】
図5および
図6の例では、チャック部23は、複数の第1チャックピン231aと、複数の第2チャックピン231bと、チャック駆動機構25とを含んでいる。複数の第1チャックピン231aは第1チャックピン群を構成し、複数の第2チャックピン231bは第2チャックピン群を構成する。なお、以下において、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bを区別しない場合には、これらをチャックピン231と総称する。
【0057】
複数の第1チャックピン231aおよび複数の第2チャックピン231bは、基板9の周縁部94に沿って並んで配列される。
図6の例では、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは、基板9よりも僅かに大きな径を有する基準円C1に沿って略等間隔で配列されている。つまり、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは略同心状に配列される。より具体的には、
図6の例では、第1チャックピン群に含まれる3つの第1チャックピン231aが周方向に120度間隔で配列されており、第2チャックピン群に含まれる3つの第2チャックピン231bが周方向に120度間隔で配列されている。第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは周方向に60度間隔で交互に配列されている。チャック駆動機構25は第1チャックピン群および第2チャックピン群を互いに独立して駆動する。
【0058】
図6に例示するように、対向板部21の対向面211において、複数のリフトピン221が周方向に等間隔で配列される。複数のリフトピン221は、回転軸J1を中心とした円に沿って並んで配列される。
図6の例では、リフトピン221は、チャックピン231と同様に、基準円C1に沿って並んで配列される。より具体的には、6つのリフトピン221および6つのチャックピン231が基準円C1において30度間隔で交互に配列されている。
【0059】
対向面211には、複数の穴部213および複数の穴部215が設けられる。鉛直方向に垂直な穴部213および穴部215の断面形状は、略円形である。複数のリフトピン221は複数の穴部215にそれぞれ挿入され、複数のチャックピン231は複数の穴部213にそれぞれ挿入される。リフトピン221の穴部215における断面形状も略円形であり、チャックピン231の穴部213における断面形状も略円形である。
図6の例では、リフトピン221の直径はチャックピン231の直径よりも小さい。各穴部215の直径はリフトピン221に合わせた値をとり、各穴部213の直径はチャックピン231に合わせた値をとる。
【0060】
各リフトピン221は穴部215において鉛直方向に移動可能に支持される。
図5の対向板部21の内部には、回転軸J1を中心とする環状空間が設けられており、複数のリフトピン221を互いに連結する環状部材が当該環状空間に配置される。当該環状部材は、複数のチャックピン231を避けた形状を有しており、複数のチャックピン231と干渉することはない。
【0061】
図5に示すように、リフト部22はピン昇降機構24をさらに含む。ピン昇降機構24は対向板部21よりも下方に設けられ、例えば、対向板部21が回転停止位置で停止した状態において、一つの穴部215に対向した位置に配置される。ピン昇降機構24は例えばエアシリンダを有し、ピストンロッド241を上昇させて、当該一つの穴部215内に位置するリフトピン221を押し上げる。これにより、複数のリフトピン221が、
図7中に二点鎖線で示す上位置まで上昇する。ピン昇降機構24がピストンロッド241を下降させると、複数のリフトピン221が、
図7中に実線で示す下位置まで下降する。リフトピン221の下位置は上位置よりも下側の位置である。リフトピン221が下位置で停止した状態において、リフトピン221の一部(後述の突出部220)は対向面211よりも上方に突出する。基板保持部2の一例では、ピストンロッド241が上昇していない状態において、リフトピン221が下位置で停止するように、リフトピン221がばね等の付勢部材により押圧されている。ピン昇降機構24は、モータ等を用いてリフトピン221を押し上げる機構(例えばボールねじ機構)であってもよい。
【0062】
図7は、回転軸J1についての周方向に沿って見たリフトピン221の構成の一例を概略的に示す図であり、
図8は、リフトピン221の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図7および
図8の例では、各リフトピン221は、支持体2211と、突出部220とを含む。支持体2211の鉛直方向に垂直な断面形状は例えば略円形である。支持体2211の上面には、上方に突出する突出部220が設けられる。例えば、突出部220は、回転軸J1を含むとともに径方向に沿う面F1(
図8中に一点鎖線で示す。)に関して対称形状を有する。突出部220は、リフト支持面222と、リフト案内面224と、リフト補助案内面226とを有する。
【0063】
リフト支持面222は、およそ上方を向く面であり、回転軸J1側(
図7および
図8の右側)に向かうにしたがって対向面211に近づく。すなわち、リフト支持面222は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。また、リフト支持面222は、面F1から周方向(
図8のおよそ上下方向)の両側に向かって下方に傾斜する2つの面2221を有する。2つの面2221は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト支持面222は、2つの面2221が交差する角部223を有する。角部223は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。後述するように、複数のリフトピン221が基板9を支持する際には、典型的には、各リフトピン221の角部223が基板9の周縁部94の下面側部分とほぼ点接触する。
【0064】
リフト案内面224は、およそ回転軸J1側を向く面であり、リフト支持面222に対して回転軸J1とは反対側に連続する。リフト案内面224も回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト案内面224は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2241を有する。2つの面2241は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト案内面224は、2つの面2241が交差する角部225を有する。角部225は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト案内面224の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ2(
図7中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト案内面224の勾配はリフト支持面222よりも大きい。面F1上において、リフト案内面224の下端と回転軸J1との間の距離は基板9の半径よりも僅かに大きい。
【0065】
リフト補助案内面226は、回転軸J1側かつ上方を向く面であり、リフト案内面224に対して回転軸J1とは反対側に連続する。リフト補助案内面226も回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト補助案内面226は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2261を有する。2つの面2261は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト補助案内面226は、2つの面2261が交差する角部227を有する。角部227は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト補助案内面226の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ3(
図7中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト案内面224の当該傾斜角θ2よりも小さく、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト補助案内面226はリフト案内面224よりも勾配が小さく、リフト支持面222よりも勾配が大きい。
【0066】
リフトピン221が下位置で停止した状態において、リフトピン221の支持体2211の上面が、対向面211と同じ高さ、または、対向面211よりも僅かに上方に位置する。したがって、後述する処理液による処理の際に、リフトピン221の支持体2211の上面の上に処理液はほとんど溜まらない。また、リフト支持面222におけるリフト案内面224の近傍には、2つの排液溝228が形成される。2つの排液溝228はリフト支持面222の角部223に対して周方向の両側に配置される。各排液溝228は角部223の近傍から面2221の縁まで周方向に連続する。排液溝228の底面は角部223から離れるにしたがって下方に傾斜する。処理液による処理の際に、基板9とリフト支持面222との間に入り込んだ処理液が排液溝228により適切に排出される。
【0067】
リフトピン221は既述のように、ピン昇降機構24によって押し上げられて、上位置まで上昇する(
図7中の二点鎖線)。また、リフトピン221はピン昇降機構24の下降に伴って下降して、下位置まで下降する(
図7中の実線)。
【0068】
リフトピン221が上位置まで上昇した状態で、センターロボットCRから基板9がリフトピン221の上に載置される。そして、リフトピン221が下位置まで下降することにより、基板9が下降する。この状態で、基板9は第1チャックピン231aまたは第2チャックピン231bによって保持される。
【0069】
図5に示すように、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは、対向板部21に設けられた穴部213に挿入される。穴部213にはベアリング214が設けられており、穴部213の回動軸J2を中心として、チャックピン231がベアリング214によって回動可能に支持される。以下の説明では、回動軸J2を「チャック回動軸J2」という。基板保持部2の一例では、穴部213に設けられる図示省略の係止部材により、チャックピン231が回動可能な範囲が、所定の角度範囲(後述の保持位置と開放位置とを含む角度範囲)に制限されている。
【0070】
図9は、回転軸J1についての周方向に沿って見た第1チャックピン231aの構成の一例を概略的に示す図であり、
図10は、回転軸J1についての周方向に沿って見た第2チャックピン231bの構成の一例を示す図である。
図11は、チャックピン231の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図9から
図11では、角度位置が保持位置となるチャックピン231を示している。
【0071】
以下では、まず、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bに共通の内容について説明し、次に、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bにおいて互いに相違する内容について説明する。
【0072】
図9から
図11の例示では、各チャックピン231は、支持体2311と、突出部230とを含んでいる。支持体2311は穴部213の内部においてベアリング214に連結される。支持体2311の上面には、上方に突出する突出部230が設けられている。
図11の例では、2つの突出部230が設けられる。2つの突出部230はチャック回動軸J2から、回転軸J1についての周方向にずれた位置に配置される。また、2つの突出部230は回転軸J1についての周方向において互いに離れている。このように、2つの突出部230の間に隙間が設けられることにより、後述する基板9の処理の際に、第2主面92に供給された処理液が当該隙間を介して第2主面92から排出される。周方向に沿って見た場合に、2つの突出部230はほぼ同じ外形を有する。
【0073】
各突出部230はチャック当接面232を有する。チャック当接面232は、突出部230の回転軸J1側(
図9および
図10の右側)を向く側面である。既述のように、突出部230はチャック回動軸J2から周方向にずれた位置に配置されており、チャックピン231の回動により、チャック当接面232は水平方向に移動可能である。
図9および
図10の例では、チャック当接面232は、上側当接面233と、湾曲当接面234と、下側当接面235とを有する。保持位置で停止したチャックピン231において、上側当接面233は、回転軸J1側かつ下方を向く平面であり、上方に向かうにしたがって回転軸J1に近づく。すなわち、上側当接面233は回転軸J1側に向かって上方に傾斜する。例えば、回転軸J1を含むとともに径方向に沿う面F2(
図11中に一点鎖線で示す。)に対して、上側当接面233は直交する。上側当接面233の上端は突出部230の上端面に連続する。
図9および
図10では、一方の突出部230に対してのみ面F2を示しているが、他方の突出部230についても同様の面が設定可能である。
【0074】
下側当接面235は、回転軸J1側かつ上方を向く平面であり、上側当接面233よりも下方に配置される。下側当接面235は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。例えば、上記面F2に対して、下側当接面235は直交する。面F2上において、下側当接面235の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ4(
図9および
図10参照)は、上側当接面233と対向面211(水平面)とがなす角度とほぼ同じである。また、下側当接面235の傾斜角θ4は、後述のリフト支持面222の傾斜角θ1(
図7参照)よりも大きい。すなわち、下側当接面235の勾配は、リフト支持面222よりも大きい。傾斜角θ4は例えば50度程度に設定される。
【0075】
湾曲当接面234は、回転軸J1側を向く曲面であり、上側当接面233と下側当接面235との間に配置される。湾曲当接面234は上側当接面233と下側当接面235とに直接的に連続する。このようなチャック当接面232は略V字状の形状を有している。例えば、上記面F2に対して、湾曲当接面234は直交する。面F2上における湾曲当接面234の形状は、基板9の端面93の形状にほぼ一致する。チャック当接面232では、鉛直方向における湾曲当接面234の中央が、回転軸J1から最も離れた位置となる。
図9および
図10の例では、保持位置で停止したチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と回転軸J1との間の距離は、基板9の半径にほぼ一致する。したがって、
図9および
図10の例では、複数のチャックピン231がそれぞれの保持位置で停止した状態において、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の端面93に当接する。実際には、基板9の端面93の上側近傍および下側近傍(後述の上側接続部および下側接続部)もチャック当接面232に当接し、基板9の周縁部94が回転軸J1に向けて押されるとともに、上方および下方にも押される。これにより、チャック部23は基板9を強固に保持することが可能である。
【0076】
ここで、基板9の周縁部94は、端面93と第2主面92とを接続する上側接続部、端面93と第1主面91とを接続する下側接続部、並びに、当該端面93を含むベベル部である。基板9の直径が300mmである場合、基板9の周縁部94は、例えば端面93から回転軸J1側に向かって2mmの幅の環状領域を含む。
【0077】
既述のように各チャック当接面232は、チャック回動軸J2からずれた位置に配置されており、
図11中に二点鎖線で示すように、開放位置で停止したチャックピン231の各突出部230では、チャック当接面232と回転軸J1との間の距離が、保持位置で停止した状態での当該距離よりも大きくなる。すなわち、開放位置で停止したチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と回転軸J1との間の距離が、基板9の半径よりも大きくなる。したがって、複数のチャックピン231がそれぞれの開放位置で停止した状態では、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の端面93から離れ、基板9の保持が解除される。
【0078】
チャック駆動機構25は、チャックピン231をチャック回動軸J2のまわりで回動させることにより、突出部230を保持位置と開放位置との間で移動させる。チャック駆動機構25が全てのチャックピン231の突出部30をそれぞれの保持位置に移動させることにより、複数のチャックピン231が基板9を保持する。チャック駆動機構25が全てのチャックピン231の突出部30をそれぞれの開放位置に移動させることにより、複数のチャックピン231による基板9の保持が解除される。
【0079】
次に、第1チャックピン231aと第2チャックピン231bとの間の形状的な相違を、第1基板9aおよび第2基板9bの形状に関連付けて述べる。この形状の相違は、保持対象となる基板9の種類に起因する。つまり、第1チャックピン231aは第1基板9aを保持するので、第1基板9aの保持に適した形状を有しており、第2チャックピン231bは第2基板9bを保持するので、第2基板9bの保持に適した形状を有している。
【0080】
さて、チャックピン231による保持直前において、基板9は、下位置で停止したリフトピン221によって支持される。
【0081】
第1基板9aは
図2に示すように略平坦であるので、第1基板9aがリフトピン221によって支持された状態において、第1基板9aの周縁部94の高さ位置は周方向において略一定である。第1基板9aが、下位置で停止するリフトピン221によって支持された状態では、3つの第1チャックピン231aの下側当接面235が第1基板9aの周縁部94と水平方向において向かい合う。
【0082】
一方で、
図3に示すように、第2基板9bには反りが生じている。よって、第2基板9bがリフトピン221によって支持された状態では、第2基板9bの周縁部94の各周方向位置における高さ位置はばらつく。よって、3つの第2チャックピン231bは第2基板9bの周縁部94と、互いに略等しい高さ位置で向かい合う。
【0083】
ここで、3つの第2チャックピン231bを第2チャックピン231bA、第2チャックピン231bBおよび第2チャックピン231bCと呼ぶ。
図12および
図13は、第2基板9bを保持する直前の第2チャックピン231bの構成の一例を概略的に示す図である。
図12の例では、第2チャックピン231bAの下側当接面235が水平方向において第2基板9bの周縁部94と対向しており、
図13の例では、第2チャックピン231bBの上側当接面233および第2チャックピン231bCの上側当接面233が、水平方向において第2基板9bの周縁部94に対向している。
【0084】
以上のように、保持直前において、第1基板9aの周縁部94の高さ位置は周方向において略一定であるのに対して、第2基板9bの周縁部94の高さ位置は周方向において変動する。この第2基板9bの周縁部94の高さ位置は部分的に第1チャックピン231aよりも高くなり得る。このような第2基板9bは第1チャックピン231aによって適切に保持できない。
【0085】
そこで、
図9および
図10に示すように、第2チャックピン231bの略V字状のチャック当接面232の上端UP2bは、第1チャックピン231aの略V字状のチャック当接面232の上端UP2aよりも高い位置に設定される。つまり、3つの第2チャックピン231bのチャック当接面232が、高さ位置のばらつく第2基板9bの周縁部94と水平方向において向かい合うことができるように、第2チャックピン231bの上端UP2bを高く設定している。言い換えれば、第2チャックピン231bの上端UP2bの高さ位置は、第2基板9bの周縁部94の高さ位置の最大値以上に設定される。第2基板9bの反り量は予め実験またはシミュレーション等により知ることができるので、その反り量に応じて、第2基板9bの周縁部94の高さ位置の最大値を求めることがきる。
【0086】
次に、第2チャックピン231bによる第2基板9bの保持動作について説明する。第2基板9bは、下位置で停止したリフトピン221によって支持される。このとき、第2基板9bの周縁部94はその反りに応じて、第2チャックピン231bの各々の上側当接面233、湾曲当接面234および下側当接面235のいずれかと向かい合う。
図12の例では、第2チャックピン231bAの下側当接面235が第2基板9bの周縁部94と向かい合い、
図13の例では、第2チャックピン231bBの上側当接面233および第2チャックピン231bCの上側当接面233が、第2基板9bの周縁部94と向かい合う。
【0087】
この状態で、第2チャックピン231bは開放位置から保持位置に向かって回転する。これにより、第2基板9bの周縁部94は、それぞれ、第2チャックピン231bAの下側当接面235、第2チャックピン231bBの上側当接面233および第2チャックピン231bCの上側当接面233に当接する。そして、各第2チャックピン231bのさらなる回転に伴って、第2基板9bの周縁部94は、第2チャックピン231bAの下側当接面235、第2チャックピン231bBの上側当接面233および第2チャックピン231bCの上側当接面233によってそれぞれ案内されて、各第2チャックピン231bの湾曲当接面234に当接する(
図10参照)。
【0088】
3つの第2チャックピン231bの湾曲当接面234の高さ位置は互いにほぼ等しいので、第2基板9bの反りを第2チャックピン231bによって部分的に低減しつつ、第2基板9bが各第2チャックピン231bによって保持される。つまり、第2チャックピン231bと第2基板9bとの接触箇所の各々において、第2基板9bの反り量を低減することができる。
【0089】
以上のように、第2チャックピン231bは第2基板9bを適切に保持することができる。
【0090】
次に、第1チャックピン231aによる第1基板9aの保持動作について説明する。第1基板9aも、下位置で停止したリフトピン221によって支持される。この状態では、第1基板9aの周縁部94は、3つの第1チャックピン231aの下側当接面235と水平方向において向かい合う。この状態で、第1チャックピン231aは開放位置から保持位置に向かって回転する。このとき、第1基板9aの周縁部94は、まず、3つの第1チャックピン231aの下側当接面235に当接する。
【0091】
そして、各第1チャックピン231aのさらなる回転に伴って、第1基板9aの周縁部94は第1チャックピン231aの下側当接面235でそれぞれ案内されて持ち上がり、各第1チャックピン231aの湾曲当接面234に当接する(
図9参照)。
【0092】
以上のように、第1チャックピン231aは第1基板9aを適切に保持することができる。
【0093】
そして、第1チャックピン231aの上端UP2aは第2チャックピン231bの上端UP2bよりも低いので、第1チャックピン231a自体の上端UP1a(突出部230の上端面)も、第2チャックピン231b自体の上端UP1b(突出部230の上端面)よりも低い。これによれば、後述の第1基板9aに対する処理において、第1基板9aの第2主面92を周縁部94に向かって流れる処理液は、第1チャックピン231aを容易に乗り超えて外側に流れる。言い換えれば、処理液は第1チャックピン231aによって跳ね返りにくく、処理液が第1基板9aの第2主面92に再付着することを抑制できる。
【0094】
なお、
図9の例では、第1チャックピン231aの上端UP1aは第1基板9aの第2主面92よりも僅かに高いものの、第1基板9aの第2主面92と同じ高さ位置であってもよく、あるいは、第1基板9aの第2主面92よりも低くてもよい。
【0095】
また、
図9および
図10の例では、第2チャックピン231bの上側当接面233が対向面211(水平面)に対してなす傾斜角θ5bは、第1チャックピン231aの上側当接面233が対向面211(水平面)に対してなす傾斜角θ5aよりも小さい。例えば、第1チャックピン231aの傾斜角θ5aは70度程度に設定され、第2チャックピン231bの傾斜角θ5bは50度程度に設定される。これによれば、第2チャックピン231bの上側当接面233の傾斜角θ5bが小さく設定されるので、第2基板9bの周縁部94が上側当接面233に当接したときに、第2基板9bの周縁部94は上側当接面233に沿って容易に移動することができる。つまり、上側当接面233による案内機能の性能を向上できる。
【0096】
一方、第1チャックピン231aの上側当接面233の傾斜角θ5aは大きく設定されるので、第1チャックピン231aと第1基板9aとの間の隙間は、上方かつ回転軸J1側(
図9の右側)により広く開口する。よって、後述の第1基板9aに対する処理において、処理液が当該隙間を流れやすく、第1基板9aの周縁部94を適切に処理することができる。
【0097】
次に、第2チャックピン231bの形状についてさらに説明する。上述のように、第2チャックピン231bのチャック当接面232は、回転軸J1についての周方向に沿って見て、略V字状の形状を有しており、その上側の傾斜面である上側当接面233は、反り基板である第2基板9bの周縁部を鉛直上側から押さえる。
【0098】
ここでは、一例として、第2チャックピン231bの形状を第2基板9bとの対比で説明する。図示の例では、第2基板9bの第1主面91と第2主面92とを連結する端面93は湾曲している。一例として、端面93は略半円状に膨らんでいる。なお、第2基板9bは反り基板であるので、第1主面91および第2主面92も湾曲し得るものの、端面93の曲率半径は第1主面91および第2主面92の曲率半径よりも小さい。
【0099】
第2チャックピン231bの上側当接面233は、第2チャックピン231bが第2基板9bを保持した状態で、第2基板9bの第2主面92と鉛直方向において対向する。これにより、第2チャックピン231bの上側当接面233の上端UP2bは、第1チャックピン231aの上側当接面233の上端UP2aよりも回転軸J1の近くに位置する(
図9,10参照)。このように第2チャックピン231bの上側当接面233が回転軸J1側に長く延在することにより、この上側当接面233は、第2チャックピン231bが開放位置から保持位置に移動する際に、第2基板9bの周縁部に適切に当接することができる(
図13参照)。これにより、第2チャックピン231bの上側当接面233は第2基板9bの周縁部を適切に湾曲当接面234に案内することができる。よって、第2チャックピン231bは第2基板9bを適切に保持することができる。
【0100】
また、第2チャックピン231bの傾斜角θ5bは、第2チャックピン231bの傾斜角θ4以下であってもよい。これによれば、第2基板9bを保持したときに第2基板9bが浮く場合があるが、第2基板9bを適正な位置で保持することができる。
【0101】
下側当接面235は、第2チャックピン231bが開放位置から保持位置へ移動する際に、第2基板9bを持ち上げるために傾斜している。傾斜角θ4が比較的に大きく設定されることで、この開放位置から保持位置の移動により、第2基板9bを十分に持ち上げることができる。
【0102】
一方で、傾斜角θ5bを傾斜角θ4以下に設定している。これによれば、傾斜角θ5bが大きい場合に比べて、上側当接面233がより回転軸J1の近くまで延在する。よって、第2チャックピン231bが開放位置から保持位置へ移動する際に、上側当接面233が適切に第2基板9bの周縁部を押さえて湾曲当接面234に案内することができる。
【0103】
また、傾斜角θ5bは例えば30度以上かつ60度以下であるとよい。これによれば、上側当接面233は第2基板9bの周縁部を容易に湾曲当接面234に案内することができる。
【0104】
また、
図10を参照して、第2チャックピン231bの上側当接面233の上端UP2bと、湾曲当接面234の中心との間の、鉛直方向に沿う距離D1は、第2基板9bの厚みT1以上に設定されてもよい。これによれば、上側当接面233のうち、第2基板9bと鉛直方向において向かい合う部分の面積も大きくすることができる。
【0105】
また、
図10の例では、第2チャックピン231bの上側当接面233の上端UP2bは、第2チャックピン231bの下側当接面235の下端に対して、回転軸J1とは反対側に位置している。また、上側当接面233の上端UP2は、第2チャックピン231bの下側当接面235の下端と、湾曲当接面234の中心との間の、平面視における中点P1に対して、回転軸J1側に位置していてもよい。これにより、上側当接面233は第2基板9bの周縁部に適切に当接することができる。
【0106】
次に、チャック駆動機構25の具体的な一例について述べる。
図14は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図である。
図5および
図14に示すように、チャック駆動機構25は、複数の第1回動磁石251aと、複数の第2回動磁石251bと、複数の第1閉塞磁石252aと、複数の第2閉塞磁石252bとを含んでいる。第1回動磁石251a、第2回動磁石251b、第1閉塞磁石252aおよび第2閉塞磁石252bは、いずれも例えば永久磁石である。
【0107】
複数の第1チャックピン231aおよび複数の第2チャックピン231bの下端部は、対向板部21の下面212よりも下方に突出しており、第1回動磁石251aは複数の第1チャックピン231aの下端部にそれぞれ取り付けられ、第2回動磁石251bは複数の第2チャックピン231bの下端部にそれぞれ取り付けられる。第1回動磁石251aおよび第2回動磁石251bの磁極の向き(磁化方向)は、例えば、回転軸J1およびチャック回動軸J2に垂直である。
【0108】
対向板部21の下面212において、複数の第1閉塞磁石252aは複数の第1回動磁石251aの近傍にそれぞれ固定される。後述の第1開放磁石253aが第1回動磁石251aの近傍に位置しない状態では、第1回動磁石251aと第1閉塞磁石252aとの間の磁気的吸引力により、例えば第1回動磁石251aのN極が回転軸J1とは反対側に位置し、S極が回転軸J1側に位置する。これにより、第1回動磁石251aが取り付けられた第1チャックピン231aでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図14に示す保持位置となる。
図14では、各磁石のN極側の部位にハッチングを付している(後述の
図15、
図16および
図17において同様)。本実施の形態では、磁石間の磁気的吸引力が利用されるが、もちろん、磁気的反発力が利用されてもよい。
【0109】
また、下面212において、複数の第2閉塞磁石252bは複数の第2回動磁石251bの近傍にそれぞれ固定される。後述の第2開放磁石253bが第2回動磁石251bの近傍に位置しない状態では、第2回動磁石251bと第2閉塞磁石252bとの間の磁気的吸引力により、例えば第2回動磁石251bのS極が回転軸J1とは反対側に位置し、N極が回転軸J1側に位置する。これにより、第2回動磁石251bが取り付けられた第2チャックピン231bでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図14に示す保持位置となる。
【0110】
チャック駆動機構25は、複数の第1開放磁石253aと、複数の第2開放磁石253bと、第1磁石昇降機構254aと、第2磁石昇降機構254bとをさらに含む。第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは、いずれも例えば永久磁石である。第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは、対向板部21よりも下方において、対向板部21とは独立して設けられる。
図14の例では、鉛直方向に沿って見た場合に、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bは、回転軸J1を中心とする同一の円周上に配列される。第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bの各々は、当該円周に沿って延びる形状を有する。第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは、当該円周上において一定の隙間を空けて交互に配置される。
【0111】
各第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bの磁極の向き(磁化方向)は、回転軸J1を中心とする径方向に沿う。例えば、第1開放磁石253aのN極が回転軸J1側に配置され、S極が回転軸J1とは反対側に配置される(後述の
図15参照)。また、第2開放磁石253bのS極が回転軸J1側に配置され、N極が回転軸J1とは反対側に配置される。複数の第1開放磁石253aは図示省略の環状部材により互いに連結され、複数の第2開放磁石253bも図示省略の環状部材により互いに連結される。
【0112】
回転停止位置で停止した対向板部21を鉛直方向に沿って見た場合に(
図14参照)、複数の第1開放磁石253aは複数の第1回動磁石251aの回転軸J1側近傍に配置され、複数の第2開放磁石253bは複数の第2回動磁石251bの回転軸J1側近傍に配置される。
【0113】
第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bは対向板部21よりも下方に設けられる。第1磁石昇降機構254aは例えばエアシリンダを有し、エアシリンダのピストンロッドの先端に複数の第1開放磁石253aが取り付けられる。第1磁石昇降機構254aがピストンロッドを上昇させることにより、
図5中に二点鎖線で示すように、複数の第1開放磁石253aが対向板部21の下面212に近接した位置(以下、「近接位置」という。)まで上昇する。これにより、対向板部21が回転停止位置で停止している場合、
図15に示すように、複数の第1開放磁石253aが複数の第1回動磁石251aの回転軸J1側近傍に位置する。
【0114】
第1磁石昇降機構254aがピストンロッドを下降させることにより、複数の第1開放磁石253aは、対向板部21の下面212から十分に離れた位置(以下、「離間位置」という。)まで下降する(
図5中の実線参照)。なお、第1磁石昇降機構254aは、モータ等を用いて第1回動磁石251aを昇降する機構であってもよい(第2磁石昇降機構254bにおいて同様)。
【0115】
第2磁石昇降機構254bも例えばエアシリンダを有し、エアシリンダのピストンロッドの先端に複数の第2開放磁石253bが取り付けられる。第2磁石昇降機構254bがピストンロッドを上昇させることにより、複数の第2開放磁石253bが近接位置まで上昇する(
図5中の実線参照)。これにより、対向板部21が回転停止位置で停止している場合、
図15に示すように、複数の第2開放磁石253bが複数の第2回動磁石251bの回転軸J1側近傍に位置する。また、第2磁石昇降機構254bがピストンロッドを下降させることにより、複数の第2開放磁石253bは離間位置まで下降する(
図5中の二点鎖線参照)。
【0116】
離間位置で停止した第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは、第1回動磁石251aおよび第2回動磁石251bに対して磁気的な影響をほとんど与えない。
【0117】
図15は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図であり、第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bが近接位置で停止した状態を示している。
図15の状態では、第1回動磁石251aと第1開放磁石253aとの間の磁気的吸引力が、第1回動磁石251aと第1閉塞磁石252aとの間の磁気的吸引力よりも大きくなり、第1回動磁石251aのN極が回転軸J1側に位置し、S極が回転軸J1とは反対側に位置する。これにより、第1回動磁石251aが取り付けられた第1チャックピン231aでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図15に示す開放位置となる。
【0118】
第1磁石昇降機構254aがピストンロッドを下降させると、第1開放磁石253aが第1回動磁石251aから下方に離れ、第1チャックピン231aにおける角度位置が保持位置に戻される。
【0119】
図15の状態では、第2回動磁石251bと第2開放磁石253bとの間の磁気的吸引力が、第2回動磁石251bと第2閉塞磁石252bとの間の磁気的吸引力よりも大きくなり、第2回動磁石251bのS極が回転軸J1側に位置し、N極が回転軸J1とは反対側に位置する。これにより、第2回動磁石251bが取り付けられた第2チャックピン231bでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図15に示す開放位置となる。第2磁石昇降機構254bがピストンロッドを下降させると、第2開放磁石253bが第2回動磁石251bから下方に離れ、第2チャックピン231bにおける角度位置が保持位置に戻される。
【0120】
図16は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図であり、複数の第1開放磁石253aが近接位置で停止し、かつ、複数の第2開放磁石253bが離間位置で停止した状態を示している。
図16に示す状態では、複数の第1チャックピン231aが開放位置で停止し、複数の第2チャックピン231bが保持位置で停止する。
【0121】
基板回転機構3により対向板部21が回転軸J1を中心として回転する際には、第1回動磁石251a、第2回動磁石251b、第1閉塞磁石252aおよび第2閉塞磁石252bは、対向板部21と共に回転するが、ここでは、第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは回転しない。このとき、後述の液処理回転速度での対向板部21の回転により、近接位置で周方向に並ぶ複数の第1開放磁石253aは、回転軸J1を中心とする各第1回動磁石251aの角度位置に依存せず、当該第1回動磁石251aに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、複数の第1チャックピン231aでは、対向板部21の回転中において開放位置が維持される。また、複数の第2チャックピン231bでは、保持位置が維持され、第2チャックピン231bにより第2基板9bが保持される。
【0122】
図17は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図であり、複数の第2開放磁石253bが近接位置で停止し、かつ、複数の第1開放磁石253aが離間位置で停止した状態を示している。
図17に示す状態では、複数の第2チャックピン231bが開放位置で停止し、複数の第1チャックピン231aが保持位置で停止する。
【0123】
また、基板回転機構3により対向板部21が液処理回転速度で回転する際には、近接位置で周方向に並ぶ複数の第2開放磁石253bは、回転軸J1を中心とする各第2回動磁石251bの角度位置に依存せず、当該第2回動磁石251bに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、複数の第2チャックピン231bでは、対向板部21の回転中において開放位置が維持される。また、複数の第1チャックピン231aでは、保持位置が維持され、第1チャックピン231aにより第1基板9aが保持される。
【0124】
なお、上述の例では、チャック駆動機構25は非回転であるものの、チャック駆動機構25が基板保持部2と一体で回転してもよい。例えば第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bがシャフト部31に連結されていてもよい。
【0125】
また、上述の例では、チャック駆動機構25は磁石を利用して第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bを駆動しているものの、必ずしもこれに限らない。例えばチャック駆動機構25はモータおよびリンク機構により、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bを互いに独立に駆動してもよい。
【0126】
制御部6は基板処理装置1の各部の動作を制御することができる。具体的には、制御部6は、基板回転機構3のモータ32、処理液供給部4の弁、不活性ガス供給部5の弁、ノズル移動機構、ピン昇降機構24、チャック駆動機構25の第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bを制御することができる。
【0127】
制御部6は電子回路であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部6が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部6が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部6が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0128】
図18は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数の第1チャックピン231aおよび複数の第2チャックピン231bの角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例に即して説明すれば、第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bは初期的には第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bをそれぞれ近接位置で停止させている。また、ピン昇降機構24は、初期的には、リフトピン221を下位置で停止させている。
【0129】
まず、基板9が基板処理装置1内に搬入される(ステップS1)。具体的には、まずピン昇降機構24がリフトピン221を上位置まで上昇させる。次に、センターロボットCRは、第1主面91が下方を向き第2主面92が上方を向いた状態で基板9をハンドHの上に載置し、当該ハンドHを基板保持部2の上方に移動させる。次に、センターロボットCRはハンドHを下降させることにより、基板9がハンドHからリフトピン221の上に受け渡される(
図7中の二点鎖線も参照)。これにより、基板9はリフトピン221によって支持される。具体的には、基板9の周縁部94がリフトピン221のリフト支持面222により下方から支持される。典型的には、リフトピン221は基板9の周縁部94とのみ接触する。好ましくは、各リフト支持面222の角部223が周縁部94とほぼ点接触する。
【0130】
なお、第2基板9bが搬入された場合には、第2基板9bの反り形状に起因して、いくつかのリフトピン221は第2基板9bに当接できなくてもよい。
【0131】
ハンドHからリフトピン221に基板9を受け渡す際に、仮に、ハンドH上の基板9の中心が回転軸J1からずれている場合でも、基板9の端面93がリフトピン221のリフト案内面224と当接することにより、基板9の中心が回転軸J1に近づけられる。すなわち、基板9の偏心が調整される。このとき、端面93は、例えば、リフト案内面224の角部225と接触する。ここでは、回転軸J1に対して、基板9の中心が回転軸J1に垂直ないずれの方向にずれている場合でも、周方向に等間隔で配列された6つのリフトピン221により、基板9の中心を回転軸J1に精度よく近づけることが可能である。センターロボットCRは基板9をリフトピン221に受け渡した後に、ハンドHを基板処理装置1から退避させる。
【0132】
次に、ピン昇降機構24はリフトピン221を下位置まで下降させる。これにより、リフトピン221によって支持された基板9も下降する。
【0133】
次に、制御部6は基板9の種類を判別する(ステップS2)。つまり、制御部6は基板9が第1基板9aであるのか、第2基板9bであるのかを判別し、基板9を保持すべきチャックピン231を設定する。基板9が第1基板9aであると制御部6が判別したときには、3つの第1チャックピン231aが第1基板9aを保持する(ステップS3)。つまり、チャック駆動機構25は第1チャックピン231aを開放位置から保持位置に回転させる。上述の例に即していえば、第1磁石昇降機構254aが第1開放磁石253aを近接位置から離間位置に下降させる。
【0134】
一方、基板9が第2基板9bであると制御部6が判別したときには、3つの第2チャックピン231bが第2基板9bを保持する(ステップS4)。つまり、チャック駆動機構25は第2チャックピン231bを開放位置から保持位置に回転させる。上述の例に即していえば、第2磁石昇降機構254bが第2開放磁石253bを近接位置から離間位置に下降させる。
【0135】
ステップS3またはステップS4の後に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う。具体的には、不活性ガス供給部5により、基板9と対向面211との間の空間への不活性ガスの供給が開始される(ステップS5)。また、基板回転機構3により、液処理回転速度(回転数)での基板9の回転が開始される(ステップS6)。基板9は回転軸J1のまわりを基板保持部2と共に回転する。液処理回転速度は例えば300~1500rpmである。
【0136】
続いて、処理液供給部4による基板9の第2主面92への処理液の供給が開始される(ステップS7)。第2主面92では、基板9の回転による遠心力により処理液が基板9の周縁部94に向かって広がり、第2主面92の全体に処理液が供給される。基板9に処理液を供給している間も、第1主面91側への不活性ガスの供給は継続される。処理液供給部4では、例えば、所定の薬液が第2主面92に供給され、その後、純水が供給される(洗浄処理)。なお、この処理において、処理液に加えて、ブラシ等を用いた処理が行われてもよい。また、処理液供給部4では、薬液および純水が異なる液ノズルから吐出されてもよい。
【0137】
処理液の供給が停止されると、基板回転機構3が基板9の回転速度を液処理回転速度よりも高くすることにより、基板9の乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS8)。基板9の回転および不活性ガスの供給が停止されると、基板9が搬出される(ステップS9)。具体的には、チャック駆動機構25は、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bのうち基板9を保持していたチャックピン231を駆動して、基板9の保持を解除する。次に、ピン昇降機構24がリフトピン221を上昇させることにより、リフトピン221が基板9をチャック部23から受け取って、基板9を持ち上げる。次に、センターロボットCRがリフトピン221から基板9を取り出す。
【0138】
以上のように、本実施の形態では、平坦な第1基板9aに対しては第1チャックピン231aが利用される。つまり、第1チャックピン231aが第1基板9aを保持した状態で、第1基板9aに対する処理が行われる。この第1チャックピン231aの上端UP1aは低いので、処理液は第1基板9aの第2主面92から第1チャックピン231aを容易に乗り越えることができる。言い換えれば、処理液が第1チャックピン231aで跳ね返ることを抑制でき、第1基板9aの第2主面92に再付着することを抑制できる。
【0139】
一方で、第1チャックピン231aによる保持が困難な第2基板9bに対しては、第2チャックピン231bが利用される。つまり、第2チャックピン231bが第2基板9bを保持した状態で、第2基板9bに対する処理が行われる。この第2基板9bに対する処理では、処理液の跳ね返りが多少生じ得るものの、第2基板9bを適切に保持して処理を行うことができる。したがって、一つの基板処理装置1によって、第1基板9aのみならず、第1基板9aとは異なる種類の第2基板9bに対しても処理を行うことができる。
【0140】
しかも上述の例では、第1チャックピン231aの上側当接面233の傾斜角θ5aは大きいので、処理液が第1チャックピン231aと第1基板9aとの間の隙間に進入しやすく、当該隙間において基板9の周縁部94を処理できる。したがって、より高品質に第1基板9aに対して処理を行うことができる。
【0141】
一方で、第2チャックピン231bの上側当接面233の傾斜角θ5bは小さいので、第2チャックピン231bの保持動作において、第2基板9bの周縁部94が上側当接面233の上を容易に移動することができる。つまり、第2チャックピン231bの上側当接面233の案内機能を向上できる。
【0142】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる基板処理装置1の構成は第1の実施の形態と同様である。ただし、基板処理装置1の動作が相違する。
【0143】
図19は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数の第1チャックピン231aおよび複数の第2チャックピン231bの角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例に即して説明すれば、第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bは初期的には第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bをそれぞれ近接位置で停止させている。また、ピン昇降機構24は、初期的には、リフトピン221を下位置で停止させている。
【0144】
まず、ステップS1と同様に、基板9が基板処理装置1内に搬入される(ステップS11)。次に、ステップS2と同様に、制御部6は基板9の種類を判別する(ステップS12)。基板9が第1基板9aであると制御部6が判別したときには、ステップS3と同様に、3つの第1チャックピン231aが第1基板9aを保持する(ステップS13)。
【0145】
一方で、基板9が第2基板9bであると制御部6が判別したときには、ステップS4と同様に、3つの第2チャックピン231bが第2基板9bを保持する(ステップS14)。これにより、第2基板9bの反り量は第2チャックピン231bによって低減される。
【0146】
そこで、次に、第2基板9bを保持するチャックピン231を第2チャックピン231bから第1チャックピン231aへと切り替える(ステップS15)。具体的には、チャック駆動機構25はまず第1チャックピン231aを開放位置から保持位置へと回転させる。これにより、第2基板9bが3つの第1チャックピン231aおよび3つの第2チャックピン231bの両方によって保持される。次に、チャック駆動機構25は第2チャックピン231bを保持位置から開放位置へと回転させる。これにより、3つの第1チャックピン231aのみが第2基板9bを保持する。
【0147】
ステップS13またはステップS15の後に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う。具体的には、ステップS5と同様に、不活性ガス供給部5により、基板9と対向面211との間の空間への不活性ガスの供給を開始し(ステップS16)、ステップS6と同様に、基板回転機構3により、液処理回転速度(回転数)での基板9の回転を開始する(ステップS17)。続いて、ステップS7と同様に、処理液供給部4による基板9の第2主面92への処理液の供給を開始する(ステップS18)。これにより、処理液を用いた処理を基板9に対して行うことができる。
【0148】
処理液の供給が停止されると、ステップS8と同様に、基板9の乾燥処理(スピンドライ)を行う(ステップS19)。基板9の回転および不活性ガスの供給が停止されると、ステップS9と同様に、基板9が搬出される(ステップS20)。
【0149】
以上のように、第2の実施の形態では、第2チャックピン231bが第2基板9bを一旦保持することにより、第2基板9bの反り量を低減し(ステップS14)、その状態で、第1チャックピン231aが第2基板9bを保持する。そして、第2チャックピン231bが第2基板9bの保持を解除する(ステップS15)。よって、第2基板9bも第1チャックピン231aによって保持された状態で、処理液を用いた処理を受ける(ステップS18)。したがって、第2基板9bの第2主面92を周縁部94に向かって流れる処理液は第1チャックピン231aを容易に乗り越えることができ、処理液の第2基板9bの第2主面92への再付着を抑制できる。
【0150】
ところで、第2チャックピン231bが第2基板9bを保持した状態では、第2チャックピン231bと第2基板9bとの接触箇所の各々において、第2基板9bの反り量が大きく低減する。一方で、第2基板9bの周縁のうち当該接触箇所とは離れた位置では、第2基板9bの反り量の低減の程度は比較的に小さい。
【0151】
したがって、第1チャックピン231aは第2チャックピン231bの近傍に設けられることが望ましい。
図20は、基板保持部2の他の一例である基板保持部2Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。基板保持部2Aは第1チャックピン231aと第2チャックピン231bとの相対位置という点を除いて、基板保持部2と同一である。
【0152】
図20の例では、各第1チャックピン231aは、回転軸J1についての周方向の一方側の第2チャックピン231bよりも、他方側の第2チャックピン231bに近い位置に設けられている。より具体的には、
図20の例では、各第1チャックピン231aは、自身よりも反時計回り側の第2チャックピン231bよりも、時計回り側の第2チャックピン231bの近くに設けられている。
【0153】
これによれば、120度間隔で配列された3つの第1チャックピン231aの各々は、第2チャックピン231bにより近い位置で、基板9の周縁部94を保持することができる。したがって、第1チャックピン231aは、第2基板9bの反り量がより低減された位置で第2基板9bの周縁部94を保持することができる。したがって、第1チャックピン231aはより適切に第2基板9bを保持することができる。
【0154】
第3の実施の形態.
第1および第2の実施の形態において、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bは着脱可能に基板保持部2(対向板部21)に取り付けられてもよい。これによれば、例えば第1チャックピン231aのみを基板保持部2に取り付けることで、第1基板9a専用の基板処理装置1を実現できる。同様に、第2チャックピン231bのみを基板保持部2に取り付けることで、第2基板9b専用の基板処理装置1を実現できる。つまり、チャックピン231の交換により、基板処理装置1の処理対象を切り替えることができる。
【0155】
また、基板処理システム100において、第1基板9a専用の基板処理装置1(処理ユニット110)と、第2基板9b専用の基板処理装置1(処理ユニット110)とが混在していてもよい。つまり、第2チャックピン231bを含まず第1チャックピン231aを含む第1基板9a専用の基板処理装置1と、第1チャックピン231aを含まず第2チャックピン231bを含む第2基板9b専用の基板処理装置1とが混在していてもよい。この場合、センターロボットCRは、第1基板9aを第1基板9a専用の基板処理装置1に搬送し、第2基板9bを第2基板9b専用の基板処理装置1に搬送する。
【0156】
以上、実施の形態が説明されたが、この基板処理装置1はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0157】
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。例えば上記実施の形態では、6つのリフトピン221が設けられるが、基板9の外周縁を下方から支持するという観点では、リフトピン221の個数は3以上であればよい。また、既述のように、複数のリフトピン221のリフト案内面224により、外部の搬送機構との間における基板9の受け渡しの際に、基板9の中心が回転軸J1に近づけられる。この場合に、回転軸J1に垂直な様々な方向に関して、基板9の中心を精度よく回転軸J1に近づけるという観点では、リフト部22が、周方向に等間隔に配置される4つ以上のリフトピン221を含むことが好ましい。
【0158】
また、上記実施の形態では、基板9の第1主面91がデバイス形成面であるので、リフトピン221と第1主面91上のパターンとの接触を避けるべく、基板9の外周縁を支持している。しかるに、第1主面91がデバイス非形成面である場合には、リフトピン221は、より回転軸J1に近い位置で基板9の第1主面91を支持してもよい。この場合、リフトピン221は、上方に向かうにつれて細くなる先細形状となる形状を有していてもよい。
【0159】
第1チャックピン231aにより第1基板9aを保持する状態と、第2チャックピン231bにより第2基板9bを保持する状態とを切り替えるチャック駆動機構25は、他の構成により実現されてもよい。また、第1チャックピン231aおよび第2チャックピン231bの個数は3に限らず、4以上であってもよい。
【0160】
図7および
図8に示すリフト支持面222およびリフト案内面224の形状、並びに、
図9から
図13に示すチャック当接面232の形状は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。
【0161】
また、上述の例では、ステップS2はステップS1の後の実行されているものの、ステップS1の実行中にステップS2を実行してもよく、あるいは、ステップS1の前にステップS2を実行してもよい。要するに、制御部6はステップS3およびステップS4の前に、基板9の種類に応じて使用するチャックピン231を設定すればよい。
【符号の説明】
【0162】
1 基板処理装置
2 基板保持部
3 回転機構(基板回転機構)
4 処理液供給部
25 チャック駆動機構
231a 第1チャックピン
231b 第2チャックピン
232 第1当接面、第2当接面(チャック当接面)
UP1a 第1チャックピンの上端
UP1b 第2チャックピンの上端
UP2a 第1当接面の上端(第1チャックピンのチャック当接面の上端)
UP2b 第2当接面の上端(第2チャックピンのチャック当接面の上端)
233 第1当接面の上側部分、第2当接面の上側部分(上側当接面)
θ5a,θ5b 傾斜角