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特許7453781製造装置用ガス供給装置、アトマイズ装置、3D積層造形装置、及び積層造形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】製造装置用ガス供給装置、アトマイズ装置、3D積層造形装置、及び積層造形システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240313BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240313BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240313BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240313BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240313BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20240313BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20240313BHJP
   B22F 10/32 20210101ALI20240313BHJP
   B22F 10/77 20210101ALI20240313BHJP
   B22F 12/70 20210101ALI20240313BHJP
   C01B 13/00 20060101ALN20240313BHJP
   C01B 23/00 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
B01J19/00 A
B33Y30/00
B33Y80/00
B22F3/105
B22F3/16
B22F9/08 A
B29C64/371
B22F10/32
B22F10/77
B22F12/70
C01B13/00
C01B23/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019225669
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094503
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 泰之
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅之
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0207147(US,A1)
【文献】特開2009-035770(JP,A)
【文献】特開2015-000997(JP,A)
【文献】特開2004-183049(JP,A)
【文献】特開2019-209647(JP,A)
【文献】特開2014-034493(JP,A)
【文献】特開2008-137875(JP,A)
【文献】特開2003-328007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
B29C 64/00-64/40、
67/00-67/08、
67/24-69/02、
73/00-73/34
B29D 1/00-29/10、
33/00、99/00
B33Y 10/00-99/00
B22F 1/00-12/90
C22C 1/04- 1/059、
33/02
C01B 13/00-13/36
B01D 53/02-53/18
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスを供給する不活性ガス供給源と、
該不活性ガス供給源に接続されている供給ラインと、
該供給ライン上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる窒素の少なくとも一部を除去する窒素除去部と、
前記供給ライン上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる酸素の少なくとも一部を除去する酸素除去部と、
前記供給ラインの下流側の端部と、前記不活性ガス供給源の下流側であって前記窒素除 去部及び前記酸素除去部よりも上流側の位置とを接続する循環ラインと、
前記供給ライン上に設けられ、前記窒素除去部及び前記酸素除去部を通過した前記不活性ガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出する検出部と、
前記供給ライン上における前記循環ラインとの接続部よりも前記不活性ガス供給源側に設けられた第一弁装置と、
前記供給ライン上における前記循環ラインとの接続部よりも下流側に設けられた第二弁装置と、
前記検出部の検出結果に基づいてこれら第一弁装置、及び第二弁装置を開閉する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記検出部によって検出された前記不活性ガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、前記第一弁装置を開放するとともに前記第二弁装置を閉止し、前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が前記閾値以下となった状態では、前記第一弁装置を閉止するとともに前記第二弁装置を開放するように構成されている製造装置用ガス供給装置。
【請求項2】
前記循環ライン上に設けられた循環圧縮機と、
をさらに備える請求項1に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項3】
前記循環ライン上に設けられ、前記不活性ガスを貯留するタンクをさらに備える請求項2に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記検出部によって検出された前記不活性ガスの前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、前記第一弁装置を開放し、前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が前記閾値以下となった状態では、前記第一弁装置を閉止するように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項5】
前記窒素除去部、及び前記酸素除去部と前記不活性ガス供給源との間に設けられ、前記不活性ガス供給源から前記供給ラインに供給された前記不活性ガスを加熱する加熱部をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項6】
前記酸素除去部では、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を酸素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線を定め、該直線が通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの酸素分圧の目標値として定める請求項1から5のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項7】
前記窒素除去部では、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を窒素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線を定め、該直線が通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの窒素分圧の目標値として定める請求項1から6のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置と、
該製造装置用ガス供給装置から供給された前記不活性ガスを溶融した金属に噴射することで金属粉末を形成するアトマイザと、
を備えるアトマイズ装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造装置用ガス供給装置と、
該製造装置用ガス供給装置から供給された前記不活性ガスの雰囲気下で金属粉末を溶融・積層させることで造形を行う造形装置本体と、
を備える3D積層造形装置。
【請求項10】
請求項8に記載のアトマイズ装置と、
請求項9に記載の3D積層造形装置と、
を備える積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造装置用ガス供給装置、アトマイズ装置、3D積層造形装置、及び積層造形システに関する。
【背景技術】
【0002】
3D積層造形法を用いて部品を製造する例が近年増えている。特に、金属粉末を用いた造形方法の一例として、パウダーベッド式と呼ばれる方法が広く用いられている。この方法では、ベッド上に金属粉末を敷き詰め、熱源となるレーザーや電子ビームを、造形対象の部分に照射することで金属粉末を溶融・凝固させる。このような処理を繰り返すことで造形物を得ることができる。
【0003】
ところで、上記のような金属粉末は、その表面積が大きいことから、表面に酸化物層が形成されやすく、最終的な造形物の酸素含有量が大きくなる傾向にある。また、レーザーや電子ビームによる高温環境下で溶融・凝固を繰り返すことから、作業雰囲気中の酸素が造形物に取り込まれてしまう虞がある。このように酸素含有量が大きい場合、例えばニッケル合金を基材とする造形物では、クリープ強度が低下する。この他、銅合金を基材とする造形物では、水素脆化が生じやすくなる。そこで、下記特許文献1に記載されているように、脱酸素ポンプを用いることで、作業雰囲気中の酸素分圧を極小さくすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-178627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように酸素分圧を下げた場合であっても、雰囲気中の窒素が造形物に含まれてしまう虞がある。この場合、酸素含有量が大きい場合と同様に、窒化による製品品質の低下が生じてしまう。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに高い品質を実現することが可能な製造装置用ガス供給装置、アトマイズ装置、3D積層造形装置、及び積層造形システを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る製造装置用ガス供給装置は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源と、該不活性ガス供給源に接続されている供給ラインと、該供給ライン上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる窒素の少なくとも一部を除去する窒素除去部と、前記供給ライン上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる酸素の少なくとも一部を除去する酸素除去部と、前記供給ラインの下流側の端部と、前記不活性ガス供給源の下流側であって前記窒素除 去部及び前記酸素除去部よりも上流側の位置とを接続する循環ラインと、前記供給ライン上に設けられ、前記窒素除去部及び前記酸素除去部を通過した前記不活性ガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出する検出部と、前記供給ライン上における前記循環ラインとの接続部よりも前記不活性ガス供給源側に設けられた第一弁装置と、前記供給ライン上における前記循環ラインとの接続部よりも下流側に設けられた第二弁装置と、前記検出部の検出結果に基づいてこれら第一弁装置、及び第二弁装置を開閉する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出部によって検出された前記不活性ガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、前記第一弁装置を開放するとともに前記第二弁装置を閉止し、前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が前記閾値以下となった状態では、前記第一弁装置を閉止するとともに前記第二弁装置を開放するように構成されている。
本開示に係るアトマイズ装置は、上記の製造装置用ガス供給装置と、該製造装置用ガス供給装置から供給された前記不活性ガスを溶融した金属に噴射することで金属粉末を形成するアトマイザと、を備える。
本開示に係る3D積層造形装置は、上記の製造装置用ガス供給装置と、該製造装置用ガス供給装置から供給された前記不活性ガスの雰囲気下で金属粉末を溶融・積層させることで造形を行う造形装置本体と、を備える。
本開示に係る積層造形システムは、上記のアトマイズ装置と、上記の3D積層造形装置と、を備える
【発明の効果】
【0008】
本開示の製造装置用ガス供給装置、アトマイズ装置、3D積層造形装置、及び積層造形システによれば、さらに高い品質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る積層造形システムの構成を示す系統図である。
図2】本開示の実施形態に係るアトマイズ装置の構成を示す系統図である
図3】本開示の実施形態に係る3D積層造形装置の構成を示す系統図である。
図4】本開示の実施形態に係る第一制御装置のハードウェア構成図である。
図5】本開示の実施形態に係る第一制御装置の機能ブロック図である。
図6】本開示の実施形態に係る第一制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
図7】本開示の実施形態に係る第二制御装置のハードウェア構成図である。
図8】本開示の実施形態に係る第二制御装置の機能ブロック図である。
図9】本開示の実施形態に係る第二制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
図10】酸素分圧と金属の酸化還元平衡状態をとの関係を示すエリンガム図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(積層造形システムの構成)
以下、本開示の実施形態に係る積層造形システム100について、図1から図7を参照して説明する。本実施形態に係る積層造形システム100は、例えば金属粉末を溶融・積層させることで、立体の造形物を製造するための装置である。図1に示すように、この積層造形システム100は、アトマイズ装置1と、3D積層造形装置2と、を備えている。
【0011】
アトマイズ装置1は、溶融させた金属を粒子状に凝固させることで、微細な金属粉末を生成するために用いられる。アトマイズ装置1の構成については後述する。3D積層造形装置2は、アトマイズ装置1で生成された金属粉末に例えばレーザー光を照射することで、当該レーザー光上にある金属粉末を溶融・凝固させる。このような処理を繰り返して複数の層を積み重ねることにより、立体の造形物を製造する。3D積層造形装置2の構成についても後述する。これらアトマイズ装置1、及び3D積層造形装置2には、後述する製造装置用ガス供給装置SGの一部である不活性ガス供給源Gが接続されている。不活性ガス供給源Gは、例えばアルゴンを主成分とする不活性ガスを貯留・供給する容器である。一般的に、市場で流通している不活性ガスには、わずかながら酸素や窒素が含まれている。つまり、上記の不活性ガス供給源Gには、主成分としてのアルゴンに加えて、酸素や窒素等の他の化学種が混在した状態で貯留されている。
【0012】
(アトマイズ装置の構成)
次に、図2を参照して、アトマイズ装置1の構成について説明する。同図に示すように、アトマイズ装置1は、製造装置用ガス供給装置SGと、アトマイザ13と、を有している。
【0013】
製造装置用ガス供給装置SGは、上述の不活性ガス供給源Gに含まれる酸素や窒素の少なくとも一部を除去して、後続のアトマイザ13に供給するための装置である。具体的には、この製造装置用ガス供給装置SGは、上記の不活性ガス供給源Gと、当該不活性ガス供給装置SGに接続された供給ラインL11と、窒素除去部11と、酸素除去部12と、検出部D1と、循環ラインL12と、循環圧縮機P1と、第一弁装置V11と、第二弁装置V12と、タンク14と、第一制御装置90Aと、を有している。
【0014】
窒素除去部11は、不活性ガスに含まれる窒素成分の少なくとも一部を除去することで、中間ガスを生成する。窒素除去部11の例として、公知の窒素除去フィルターが好適に用いられる。このフィルターは、チタン製のフィルター部材と、当該フィルター部材を1000℃程度に加熱するヒータ(加熱部H1)と、を有している。加熱されたフィルター部材に、供給ラインL11上を流通する不活性ガスを通過させることで、窒素成分がフィルター部材によって吸収される。
【0015】
酸素除去部12は、供給ラインL11上であって、上記の窒素除去部11の下流側に直列に配置されている。酸素除去部12は、窒素除去部11から排出された中間ガスから、酸素成分の少なくとも一部を除去する。酸素除去部12の例として、公知の酸素ポンプを利用した装置が好適に用いられる。詳しくは図示しないが、この種の装置では、イットリア安定化ジルコニア等の固体電解質で形成された管路内に対象となるガスを流通させた状態で、当該管路に電圧を印加する。すると、ガス中の酸素イオンが電離して、管路の壁面を通過して外部に取り出される。これにより、ガス中の酸素成分を除去することが可能とされている。また、この酸素除去部12も、上記の窒素除去部11と同様に、不活性ガスを加熱するヒータ(加熱部H2)を有している。このヒータによって、不活性ガスは一例として600℃程度まで昇温される。酸素除去部12を通過した中間ガスは、酸素を含まないか、又はごくわずかな量の酸素を含んだ状態となって(処理済みガスとなって)、下流側のアトマイザ13に送られる。なお、アトマイザ13に送られる際の不活性ガスの温度は、上記の加熱部H1,H2による加熱後の温度よりも低い状態(一例として室温)となっている。
【0016】
ここで、本実施形態では、図7に模式的に示すエリンガム図に基づいて、金属種ごとに適正な酸素分圧が決定される。エリンガム図とは、各金属種がある温度、酸素分圧下に保持された際に、酸化反応、還元反応のどちらが進行するかを示した図である。同図では、適正酸素分圧の求め方を金属種として鉄(Fe)を例に示している。まず図中左上の原点(0点)から融点Mを通る直線Lを引き、直線Lとグラフ右縦軸(酸素分圧)との交点Pgを決定する。この交点Pg以下の値が目標酸素分圧となる。融点において、酸素分圧がPgであれば酸化・還元反応が生じない平衡状態になるが、Pg以下となれば、還元反応が進行し、金属中の酸素濃度は低下する。なお、上述の窒素除去部11でも、同様のエリンガム図に基づく最適な窒素分圧の決定が行われる。
【0017】
アトマイザ13は、供給ラインL11の下流側の端部に接続され、該供給ラインL11から供給された上記の処理済みガスを溶融した金属に噴射することで金属粉末を形成する。
【0018】
供給ラインL11における酸素除去部12の下流側には、検出部D1が設けられている。検出部D1は、供給ラインL11を流通する処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出し、電気信号として後述の第一制御装置90Aに送信する。
【0019】
供給ラインL11上であって、上記検出部D1とアトマイザ13との間には、循環ラインL12の一端が接続されている。この循環ラインL12は、当該一端から不活性ガス供給部Gと窒素除去部11との間の部分に延びている。つまり、循環ラインL12は、検出部D1を通過した処理済みガスを、供給ラインL11における窒素除去部11の上流側に還流させることが可能である。
【0020】
供給ラインL11、及び循環ラインL12上には、それぞれ弁装置が設けられている。具体的には、供給ラインL11上における不活性ガス供給部Gと窒素除去部11との間には第一弁装置V11が設けられている。さらに、供給ラインL11上であって、検出部D1とアトマイザ13との間には第二弁装置V12が設けられている。これら第一弁装置V11、及び第二弁装置v12は、外部から入力された電気信号によってその開度、及び開閉状態を変化させることが可能な電磁弁であり、後述する第一制御装置90Aに対して不図示の信号線によって電気的に接続されている。
【0021】
循環ラインL12上には、上流側(上記の一端側)から下流側にかけて、タンク14と、循環圧縮機P1とがこの順で設けられている。タンク14は、循環ラインL12上を流通するガスの一部を貯留するための容器である。循環圧縮機P1は、循環ラインL12が開通状態にある場合に、当該循環ラインL12上のガスを圧送する。
【0022】
アトマイズ装置1の動作(つまり、第一弁装置V11、及び第二弁装置V12の開閉状態)は、第一制御装置90Aによって制御される。第一制御装置90Aは、図4に示すように、CPU91A(Central Processing Unit)、ROM92A(Read Only Memory)、RAM93A(Random Access Memory)、HDD94A(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール95A(I/O:Input/Output)を備えるコンピュータである。信号受信モジュール95Aは、検出部D1からの信号を受信するとともに、第一弁装置V11及び第二弁装置V12に駆動用電気信号を送信する。信号受信モジュール95Aは、例えばチャージアンプ等を介して増幅された信号を受信してもよい。
【0023】
図5に示すように、第一制御装置90AのCPU91Aは予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部81A、記憶部82A、判定部83A、弁駆動部84Aを有する。制御部81Aは第一制御装置90Aに備わる他の機能部を制御する。記憶部82Aは、上述の方法によって決定された処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧の各目標値(閾値)を予め記憶している。この目標値は、上述したようにエリンガム図を用いて決定される。判定部83Aは、検出部D1から受信した処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧の実測値と、上記閾値とを比較して大小関係を判定する。弁駆動部84Aは、判定部83Aにおける判定結果に基づいて、上述の第一弁装置V11、及び第二弁装置V12の開閉状態(又は開度)を調節する。
【0024】
具体的には図6に示すように、第一制御装置90Aによる処理フローは、検出ステップS11と、判定ステップS12と、第一操作ステップS13と、第二操作ステップS14と、アトマイズステップS15と、を含む。検出ステップS11では、上述の検出部D1によって、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出する。判定ステップS12では、この検出結果と閾値(上述)とを比較する。判定ステップS12で、検出結果が閾値よりも大きいと判定された場合、第一操作ステップS13を実行する。第一操作ステップS13では、第一弁装置V11を開放し、第二弁装置V12を閉止する。これにより、処理済ガスは上述の循環ラインL12を通じて窒素除去部11の上流側に還流する。このような還流が継続することによって、処理済みガスは窒素除去部11、及び酸素除去部12を複数回通過する。この還流を経て酸素分圧、及び窒素分圧が低下し、判定ステップS12で、検出結果が閾値以下となったと判定された場合、第二操作ステップS14を実行する。第二操作ステップS14では、第一弁装置V11を閉止し、第二弁装置V12を開放する。これにより、供給ラインL11からアトマイザ13に処理済みガスが供給される。アトマイザ13は、この処理済みガスを用いて、金属粉末を生成する(アトマイズステップS15)。
【0025】
次いで、図3を参照して、3D積層造形装置2の構成について説明する。同図に示すように、3D積層造形装置2は、上述の製造装置用ガス供給装置SGと、造形装置本体23と、を有している。
【0026】
製造装置用ガス供給装置SGは、上述したように、不活性ガス供給源Gに含まれる酸素や窒素の少なくとも一部を除去して、後続の造形装置本体23に供給するための装置である。3D積層造形装置2に用いられる製造装置用ガス供給装置SGは、上記の不活性ガス供給源Gと、当該不活性ガス供給装置SGに接続された供給ラインL11と、窒素除去部11と、酸素除去部12と、検出部D2と、循環ラインL22と、循環圧縮機P2と、第一弁装置V11と、タンク24と、第二制御装置90Bと、を有している。供給ラインL11の下流側の端部には、循環ラインL22の一端が接続されている。循環ラインL22の他端は、供給ラインL11における不活性ガス供給部Gと窒素除去部11との間に接続されている。
【0027】
循環ラインL22上には、一端側から他端側に向かって、造形装置本体23と、タンク24と、循環圧縮機P2とがこの順で配置されている。造形装置本体23は、循環ラインL22から供給された処理済みガスの雰囲気下で金属粉末を溶融・積層させることで目標とする造形物の造形を行う。タンク24は、循環ラインL22上を流通するガスの一部を貯留するための容器である。循環圧縮機P2は、循環ラインL22が開通状態にある場合に、当該循環ラインL22上のガスを圧送する。
【0028】
供給ラインL11における酸素除去部12の下流側には、検出部D2が設けられている。検出部D2は、供給ラインL11を流通する処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出し、電気信号として後述の第二制御装置90Bに送信する。
【0029】
供給ラインL11上における不活性ガス供給部Gと窒素除去部11との間には第一弁装置V11が設けられている。第一弁装置V11は、外部から入力された電気信号によってその開度、及び開閉状態を変化させることが可能な電磁弁であり、後述する第二制御装置90Bに対して不図示の信号線によって電気的に接続されている。
【0030】
3D積層造形装置2の動作(つまり、第一弁装置V11の開閉状態)は、第二制御装置90Bによって制御される。第二制御装置90Bは、図7に示すように、CPU91B(Central Processing Unit)、ROM92B(Read Only Memory)、RAM93B(Random Access Memory)、HDD94B(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール95B(I/O:Input/Output)を備えるコンピュータである。信号受信モジュール95Bは、検出部D2からの信号を受信するとともに、第一弁装置V11に駆動用電気信号を送信する。信号受信モジュール95Bは、例えばチャージアンプ等を介して増幅された信号を受信してもよい。
【0031】
図8に示すように、第二制御装置90BのCPU91Bは予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部81B、記憶部82B、判定部83B、弁駆動部84Bを有する。制御部81Bは第二制御装置90Bに備わる他の機能部を制御する。記憶部82Bは、上述の方法によって決定された処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧の各目標値(閾値)を予め記憶している。この目標値は、上述したようにエリンガム図を用いて決定される。判定部83Bは、検出部D2から受信した処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧の実測値と、上記閾値とを比較して大小関係を判定する。弁駆動部84Bは、判定部83Bにおける判定結果に基づいて、上述の第一弁装置V11の開閉状態(又は開度)を調節する。
【0032】
具体的には図9に示すように、第二制御装置90Bによる処理フローは、検出ステップS21と、判定ステップS22と、第一操作ステップS23と、第二操作ステップS24と、造形ステップS25と、を含む。検出ステップS21では、上述の検出部D2によって、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出する。判定ステップS22では、この検出結果と閾値(上述)とを比較する。判定ステップS22で、検出結果が閾値よりも大きいと判定された場合、第一操作ステップS23を実行する。第一操作ステップS13では、第一弁装置V11を開放状態とする。これにより、処理済ガスは上述の循環ラインL22を通じて窒素除去部11の上流側に還流する。このような還流が継続することによって、処理済みガスは窒素除去部11、及び酸素除去部12を複数回通過する。この還流を経て酸素分圧、及び窒素分圧が低下し、判定ステップS22で、検出結果が閾値以下となったと判定された場合、第二操作ステップS24を実行する。第二操作ステップS24では、第一弁装置V11を閉止状態とする。これにより、供給ラインL11から造形装置本体23に処理済みガスが供給される。造形装置本体23は、この処理済みガスを用いて、造形物を製造する(造形ステップS25)。
【0033】
(作用効果)
上述のように、アトマイズ装置1は、溶融させた金属にガスを噴射することで当該金属を粒子状に凝固させて、微細な金属粉末を生成する。この時、吹き付けられるガスの酸素分圧、及び窒素分圧が過度に高いと、生成される金属粉末の酸素含有量、及び窒素含有量が大きくなってしまう。その結果、後続の3D積層造形装置2による造形物に、クリープ破壊や水素脆化を含む品質低下を生じる可能性が高まってしまう。
【0034】
そこで、本実施形態に係るアトマイズ装置1は、上述の製造装置用ガス供給装置SGを備えている。この構成によれば、不活性ガスに含まれている窒素、及び酸素を、それぞれ窒素除去部11、及び酸素除去部12によって除去することができる。これにより、例えば処理済みガスをアトマイズ装置1や3D積層造形装置2に用いた際、酸素含有量が大きい場合や窒素含有量が大きい場合に生じる製品の品質低下を抑制することができる。
【0035】
また、上記構成によれば、供給ラインL11に加えて、当該供給ラインL11に接続された循環ラインL12が設けられていることによって、不活性ガスを循環させる中途で、酸素分圧、及び窒素分圧をさらに下げることができる。これにより、不活性ガスの純度をさらに高めることができる。
【0036】
さらに、上記構成によれば、純度が高められた(即ち、窒素分圧、及び酸素分圧が低減された)不活性ガスが一時的にタンク14に貯留される。当該タンク14から適宜不活性ガスを取り出すことで、例えばアトマイズ装置1や3D積層造形装置2で即時に当該不活性ガスを使用することができる。
【0037】
加えて、上記構成では、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出部D1が検出する。第一制御装置90Aは、この検出結果に基づいて、第一弁装置V11、及び第二弁装置V12を開閉する。具体的には、処理済みガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、第一弁装置V11を開放するとともに第二弁装置V12を閉止する。これにより、処理済みガスを、供給ラインL11、及び循環ラインL12を循環させ、酸素除去部12と窒素除去部11とを順次繰り返して通過させることができる。これにより、処理済みガスに含まれる酸素分圧、窒素分圧は小さくなる。これら酸素分圧、窒素分圧が閾値以下となったことが検出部D1によって検出された場合には、第一制御装置90Aは、第一弁装置V11を閉止し、第二弁装置V12を開放する。これにより、処理済みガスは供給ラインL11の下流側からアトマイザ13へ導かれる。つまり、酸素分圧、及び窒素分圧が閾値よりも小さくなったことが確認された上で、処理済みガスをアトマイザ13で利用することができる。アトマイザ13中で溶融した金属に噴射される処理済みガスは、酸素分圧や窒素分圧が極めて小さくなっているため、アトマイザ13によって形成される金属粉末の酸素含有量、窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0038】
一方で、3D積層造形装置2は、アトマイズ装置1で生成された金属粉末に例えばレーザー光を照射することで、当該レーザー光上にある金属粉末を溶融・凝固させる。このような処理を繰り返して複数の層を積み重ねることにより、立体の造形物を製造する。この時、加工の雰囲気に用いられるガスの酸素分圧、及び窒素分圧が過度に高いと、生成される造形物の酸素含有量、及び窒素含有量が大きくなってしまう。その結果、造形物に、クリープ破壊や水素脆化を含む品質低下を生じる可能性が高まってしまう。
【0039】
そこで、本実施形態に係る3D積層造形装置2は、上述の製造装置用ガス供給装置SGを備えている。この構成によれば、不活性ガスに含まれている窒素、及び酸素を、それぞれ窒素除去部11、及び酸素除去部12によって除去することができる。これにより、処理済みガスを3D積層造形装置2に用いた際、酸素含有量が大きい場合や窒素含有量が大きい場合に生じる製品の品質低下を抑制することができる。
【0040】
さらに、上記構成では、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出部D1が検出する。第二制御装置90Bは、この検出結果に基づいて、第一弁装置V11を開閉する。具体的には、処理済みガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、第一弁装置V11を開放する。これにより、処理済みガスを、供給ラインL11、及び循環ラインL22を循環させ、酸素除去部12と窒素除去部11とを順次繰り返して通過させることができる。これにより、処理済みガスに含まれる酸素分圧、窒素分圧は小さくなる。これら酸素分圧、窒素分圧が閾値以下となったことが検出部D2によって検出された場合には、第二制御装置90Bは、第一弁装置V11を閉止する。これにより、処理済みガスは循環ラインL22を経て造形装置本体23へ導かれる。つまり、酸素分圧、及び窒素分圧が閾値よりも小さくなったことが確認された上で、処理済みガスを造形装置本体23で利用することができる。金属粉末を溶融させる際に用いられる処理済みガスの酸素分圧や窒素分圧が極めて小さくなっているため、造形装置本体23による造形を行う際に、造形物の酸素含有量、及び窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0041】
また、上記構成によれば、窒素除去部11、及び酸素除去部12への供給に先立って、不活性ガスが加熱部H1,H2によって昇温される。具体的には、窒素除去部11への供給に先立って、加熱部H1は不活性ガスを1000℃程度まで加熱する。また、加熱部H2は不活性ガスを600℃程度まで加熱する。すると、不活性ガスの窒素分圧、又は酸素分圧は、アトマイザ13や造形装置本体23に送られる際に生じる温度低下に伴って、さらに低くなる。より詳細には、これら装置の雰囲気中に含まれる水素と、不活性ガス中に含まれる酸素との反応が温度低下に伴って促進し、雰囲気中に水として析出する。このように、使用環境への供給に先立って不活性ガスを加熱して、その後冷却された状態で使用することで、不活性ガスの酸素分圧をさらに低い状態とすることができる。
【0042】
さらに、上記方法によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに窒素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された窒素分圧以下の環境下では窒化は生じない。これにより、金属種の窒化が進行しない環境下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【0043】
同様に、上記方法によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに酸素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された酸素分圧の環境下では、還元反応が進行し、金属中の酸素濃度が低下する。これにより、金属種の還元が進行する環境下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記実施形態では、鉄を例としてエリンガム図に基づく酸素分圧の決定の方法を説明した。しかしながら、アトマイズ装置1、及び3D積層造形装置2で用いられる金属種は鉄に限られず、その他の金属種に対しても当該決定方法を好適に用いることができる。
さらに、上記実施形態では、供給ラインL11上で、窒素除去部11の下流側に酸素除去部12が設けられている例について説明した。しかしながら、これとは反対に、酸素除去部12を上流側に設け、その下流側に窒素除去部11を設けることも可能である。
加えて、上記実施形態とは異なり、循環ラインL12,L22が、窒素除去部11及び酸素除去部12ごとにそれぞれ1つずつ設けられている構成を採ることも可能である。この構成によれば、窒素分圧、及び酸素分圧をそれぞれ独立して精緻に調節することが可能となる。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載の製造装置用ガス供給装置SG、アトマイザ1、3D積層造形装置2、積層造形システム100、造形物、及び製造装置用ガス供給方法は、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGは、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源Gと、該不活性ガス供給源Gに接続されている供給ラインL11と、該供給ラインL11上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる窒素の少なくとも一部を除去する窒素除去部11と、前記供給ラインL11上に設けられて、前記不活性ガス中に含まれる酸素の少なくとも一部を除去する酸素除去部12と、を備える。
【0047】
上記構成によれば、不活性ガスに含まれている窒素、及び酸素を、それぞれ窒素除去部11、及び酸素除去部12によって除去することができる。これにより、例えば処理済みガスをアトマイズ装置1や3D積層造形装置2に用いた際、酸素含有量が大きい場合や窒素含有量が大きい場合に生じる製品の品質低下を抑制することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGは、前記供給ラインL11の下流側の端部と、前記不活性ガス供給源Gの下流側であって前記窒素除去部11及び前記酸素除去部12よりも上流側の位置とを接続する循環ラインL12と、該循環ラインL12上に設けられた循環圧縮機P1と、をさらに備える。
【0049】
上記構成によれば、供給ラインL11に加えて、当該供給ラインL11に接続された循環ラインL12が設けられていることによって、不活性ガスを循環させる中途で、酸素分圧、及び窒素分圧をさらに下げることができる。これにより、不活性ガスの純度をさらに高めることができる。
【0050】
(3)第3の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGは、前記循環ライン上に設けられ、前記不活性ガスを貯留するタンクをさらに備える。
【0051】
上記構成によれば、純度が高められた(即ち、窒素分圧、及び酸素分圧が低減された)不活性ガスが一時的にタンクに貯留される。当該タンクから適宜不活性ガスを取り出すことで、例えばアトマイズ装置1や3D積層造形装置2で即時に当該不活性ガスを使用することができる。
【0052】
(4)第4の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGは、前記供給ラインL11上に設けられ、前記窒素除去部11及び前記酸素除去部12を通過した前記不活性ガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出する検出部D1と、前記供給ラインL11上における前記循環ラインL12との接続部よりも前記不活性ガス供給源G側に設けられた第一弁装置V11と、前記供給ラインL11上における前記循環ラインL12との接続部よりも下流側に設けられた第二弁装置V12と、前記検出部D1の検出結果に基づいてこれら第一弁装置V11、及び第二弁装置V12を開閉する制御装置(第一制御装置90A)と、を備え、前記制御装置は、前記検出部D1によって検出された前記不活性ガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、前記第一弁装置V11を開放するとともに前記第二弁装置V12を閉止し、前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が前記閾値以下となった状態では、前記第一弁装置V11を閉止するとともに前記第二弁装置V12を開放するように構成されている。
【0053】
上記構成では、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出部D1が検出する。制御装置は、この検出結果に基づいて、第一弁装置V11、及び第二弁装置V12を開閉する。具体的には、処理済みガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、第一弁装置V11を開放するとともに第二弁装置V12を閉止する。これにより、処理済みガスを、供給ラインL11、及び循環ラインL12を循環させ、酸素除去部12と窒素除去部11とを順次繰り返して通過させることができる。これにより、処理済みガスに含まれる酸素分圧、窒素分圧は小さくなる。これら酸素分圧、窒素分圧が閾値以下となったことが検出部D1によって検出された場合には、制御装置は、第一弁装置V11を閉止し、第二弁装置V12を開放する。これにより、処理済みガスは供給ラインL11の下流側から例えばアトマイザ13へ導かれる。つまり、酸素分圧、及び窒素分圧が閾値よりも小さくなったことが確認された上で、不活性ガスをアトマイザ13で利用することができる。アトマイザ13中で溶融した金属に噴射される処理済みガスは、酸素分圧や窒素分圧が極めて小さくなっているため、アトマイザ13によって形成される金属粉末の酸素含有量、窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0054】
(5)第5の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGでは、前記制御装置(第二制御装置90B)は、前記検出部D2によって検出された前記不活性ガスの前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、前記第一弁装置V11を開放し、前記窒素分圧、及び前記酸素分圧が前記閾値以下となった状態では、前記第一弁装置V11を閉止するように構成されている。
【0055】
上記構成では、処理済みガスの酸素分圧、及び窒素分圧を検出部D2が検出する。制御装置は、この検出結果に基づいて、第一弁装置V11を開閉する。具体的には、処理済みガスの窒素分圧、及び酸素分圧が予め定められた閾値よりも高い状態では、第一弁装置V11を開放する。これにより、処理済みガスを、供給ラインL11、及び循環ラインL22を循環させ、酸素除去部12と窒素除去部11とを順次繰り返して通過させることができる。これにより、処理済みガスに含まれる酸素分圧、窒素分圧は小さくなる。これら酸素分圧、窒素分圧が閾値以下となったことが検出部D2によって検出された場合には、制御装置は、第一弁装置V11を閉止する。これにより、処理済みガスは循環ラインを経て、例えば3D積層造形を行う造形装置本体23へ導かれる。つまり、酸素分圧、及び窒素分圧が閾値よりも小さくなったことが確認された上で、処理済みガスを造形装置本体23で利用することができる。金属粉末を溶融させる際に用いられる処理済みガスの酸素分圧や窒素分圧が極めて小さくなっているため、造形装置本体23による造形を行う際に、造形物の酸素含有量、及び窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0056】
(6)第6の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGは、前記窒素除去部11、及び前記酸素除去部12と前記不活性ガス供給源Gとの間に設けられ、前記不活性ガス供給源Gから前記供給ラインL11に供給された前記不活性ガスを加熱する加熱部H1,H2をさらに備える。
【0057】
上記構成によれば、窒素除去部11、及び酸素除去部12への供給に先立って、不活性ガスが加熱部H1,H2によって昇温される。具体的には、加熱部H1,H2は不活性ガスを600℃程度まで加熱する。すると、不活性ガスの窒素分圧、又は酸素分圧は、アトマイザや造形装置に送られる際に生じる温度低下に伴って、さらに低くなる。より詳細には、これら装置の雰囲気中に含まれる水素と、不活性ガス中に含まれる酸素との反応が温度低下に伴って促進し、雰囲気中に水として析出する。このように、使用環境への供給に先立って不活性ガスを加熱して、その後冷却された状態で使用することで、不活性ガスの酸素分圧をさらに低い状態とすることができる。
【0058】
(7)第7の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGにおいて、前記酸素除去部12では、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を酸素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線Lを定め、該直線Lが通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの酸素分圧の目標値Pgとして定める。
【0059】
上記構成によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに酸素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された酸素分圧以下の環境下では、当該金属の還元反応が生じる。これにより、金属中酸素濃度が減少する還元雰囲気環境下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【0060】
(8)第8の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGにおいて、前記窒素除去部11では、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を窒素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線を定め、該直線Lが通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの窒素分圧の目標値として定める。
【0061】
上記構成によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに窒素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された窒素分圧以下の環境下では、当該金属種の窒化は生じない。これにより、金属種の窒化が進行しない環境下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【0062】
(9)第9の態様に係るアトマイズ装置1は、上記いずれか一の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGと、該製造装置用ガス供給装置SGから供給された前記不活性ガスを溶融した金属に噴射することで金属粉末を形成するアトマイザ13と、を備える。
【0063】
上記構成によれば、アトマイズ装置1によって形成される金属粉末の酸素含有量、窒素含有量が小さく抑えることができる。
【0064】
(10)第10の態様に係る3D積層造形装置2は、上記いずれか一の態様に係る製造装置用ガス供給装置SGと、該製造装置用ガス供給装置SGから供給された前記不活性ガスの雰囲気下で金属粉末を溶融・積層させることで造形を行う造形装置本体23と、を備える。
【0065】
上記構成によれば、3D積層造形装置2による造形の際の雰囲気に含まれる酸素、窒素の量を小さく抑えることができる。その結果、造形物の酸素含有量、及び窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0066】
(11)第11の態様に係る積層造形システム100は、上記第9の態様に係るアトマイズ装置1と、上記第10の態様に係る3D積層造形装置2と、を備える。
【0067】
上記構成によれば、アトマイズ装置1によって形成される金属粉末の酸素含有量、窒素含有量が小さく抑えられていることに加えて、3D積層造形装置2による造形の際の雰囲気に含まれる酸素、窒素の量も小さく抑えられている。その結果、造形物の酸素含有量、及び窒素含有量をより一層小さくすることができる。
【0068】
(12)第12の態様に係る造形物は、上記第11の態様に係る積層造形システムによって製造されている。
【0069】
上記構成によれば、酸素含有量、及び窒素含有量がより一層小さい造形物を提供することができる。
【0070】
(13)第13の態様に係る製造装置用ガス供給方法は、不活性ガス中に含まれる窒素の少なくとも一部を除去する窒素除去ステップと、前記不活性ガス中に含まれる酸素の少なくとも一部を除去する酸素除去ステップと、を含む。
【0071】
上記方法によれば、不活性ガスに含まれている窒素、及び酸素を、それぞれ窒素除去ステップ、及び酸素除去ステップによって除去することができる。これにより、例えば処理済みガスをアトマイズ装置1や3D積層造形装置2に用いた際、酸素含有量が大きい場合や窒素含有量が大きい場合に生じる製品の品質低下を抑制することができる。
【0072】
(14)第14の態様に係る製造装置用ガス供給方法は、前記窒素除去ステップ及び前記酸素除去ステップの後で、再び前記窒素除去ステップ及び前記酸素除去ステップを繰り返す循環ステップをさらに含む。
【0073】
上記方法によれば、循環ステップで不活性ガスに対して再度窒素除去ステップと酸素除去ステップとが施される。これにより、不活性ガスを循環させる中途で、酸素分圧、及び窒素分圧をさらに下げることができる。つまり、不活性ガスの純度をさらに高めることができる。
【0074】
(15)第15の態様に係る製造装置用ガス供給方法において、前記酸素除去ステップでは、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を酸素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線を定め、該直線が通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの酸素分圧の目標値として定める。
【0075】
上記方法によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに窒素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された窒素分圧以下の環境下では、当該金属種の窒化が生じない状態が維持される。これにより、金属種の窒化が生じない環境下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【0076】
(16)第16の態様に係る製造装置用ガス供給方法において、前記窒素除去ステップでは、左縦軸を標準反応ギブスエネルギーとし、右縦軸を窒素分圧としたエリンガム図上における予め選択された金属種の融点と、該エリンガム図における前記左縦軸の原点とを通る直線を定め、該直線が通る前記右縦軸上の値以下の値を、前記不活性ガスの窒素分圧の目標値として定める。
【0077】
上記方法によれば、エリンガム図に基づいて、金属種ごとに酸素分圧の目標値を容易に求めることができる。また、このように決定された酸素分圧以下の環境下では、当該金属の還元反応が生じる。これにより、金属中酸素濃度が減少する還元雰囲気下で、例えばアトマイズや3D積層造形を進めることができる。
【符号の説明】
【0078】
100 積層造形システム
1 アトマイズ装置
2 3D積層造形装置
11 窒素除去部
12 酸素除去部
13 アトマイザ
14 タンク
23 造形装置本体
24 タンク
81A,81B 制御部
82A,82B 記憶部
83A,83B 判定部
84A,84B 弁駆動部
90A 第一制御装置
90B 第二制御装置
91A,91B CPU
92A,92B ROM
93A,93B RAM
94A,94B HDD
95A,95B I/O
D1,D2 検出部
G 不活性ガス供給源
H1,H2 加熱部
L11 供給ライン
L12,L22 循環ライン
P1,P2 循環圧縮機
SG 製造装置用ガス供給装置
V11 第一弁装置
V12 第二弁装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10