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特許7453791現像装置、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】現像装置、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240313BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240313BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240313BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G03G15/08 221
G03G9/08
G03G9/097 372
C08G18/08 004
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020005262
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113853
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】都留 誠司
(72)【発明者】
【氏名】小松 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】照井 雄平
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185041(JP,A)
【文献】特開2019-191581(JP,A)
【文献】特開2015-232701(JP,A)
【文献】特開2019-211774(JP,A)
【文献】特開2019-211768(JP,A)
【文献】特開2019-056897(JP,A)
【文献】特開2017-134252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 9/08
G03G 9/097
C08G 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとトナー供給ローラを有する現像装置であり、
該トナー供給ローラが、
軸体と、該軸体の外周の架橋ウレタン樹脂を含む導電層を有し、
該架橋ウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤と、ポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物であり、
該トナーは、個数平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下であり、トナー母粒子及び該トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を含み、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
R-SiO3/2 (1)
(Rは炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基を示す。)
該有機ケイ素重合体は、該トナー粒子の外表面に凸部を構成し、
該有機ケイ素重合体の該トナー母粒子への固着率が80%以上であり、
走査型電子顕微鏡(STEM)によって得た該トナー粒子の断面画像について、該トナー母粒子の輪郭線を直線に展開して該断面画像の展開画像を得たとき、該展開画像において、該直線の長さをLとし、該直線上における、該凸部と該トナー母粒子との境界を構成している線分の長さを幅wとしたとき、該Lに対する、該幅wの総和Σwの割合(Σw/L)が、0.30以上0.95以下である、
ことを特徴とする電子写真用現像装置。
【請求項2】
前記架橋ウレタン樹脂は、前記反応物のポリウレタンと、アニオンと、を含み、
該ポリウレタンは、下記構造式(1)~(6)から選択される少なくとも1つのカチオン性の構造を分子内に有する樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用現像装置:
【化1】

[構造式(1)中、R1は、水素原子、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。Z1~Z3は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z1~Z3の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択される
いずれかの構造である。];
【化2】

[構造式(2)中、R2およびR3は、各々独立に、構造式(2)中の2つの窒素原子と共に含窒素複素芳香族5員環を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表し、Z4およびZ5は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z6は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z4~Z6の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構
造であり、d1は0または1の整数を表す。];
【化3】

[構造式(3)中、R4およびR5は、各々独立に、構造式(3)中の2つの窒素原子と共に含窒素複素芳香族6員環を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表し、Z7は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表し、およびZ8は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z7およびZ8の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造であり、d2は0~2の整数を表し、d2が2であるとき、Z8はそれぞれ同一であっても異なっ
ていてもよい];
【化4】

[構造式(4)中、R6およびR7は、各々独立に構造式(4)中の2つの窒素原子と共に含窒素複素脂環式基を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表し、Z9~Z11は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z12は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z9~Z12の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造であり、d3は0~2の整数を表し、d3が2であるとき、Z12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。];
【化5】

[構造式(5)中、R8は、結合する窒素原子と共に含窒素芳香族環を形成するのに必要な炭化水素基を表し、Z13は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z14は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z13およびZ14の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造であり、d4は0または1の整数を表す。];
【化6】

[構造式(6)中、R9は、結合する窒素原子と共に含窒素脂環式基を形成するのに必要な炭化水素基を表し、Z15およびZ16は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z17は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表し、Z15~Z17の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造であり、d5は0または1の整数を表す。];
【化7】

[R101、R102、およびR103は、各々独立に直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。記号「*」は、構造式(1)中の窒素原子との結合部または構造式(2)~(6)中の含窒素複素環中の窒素原子若しくは含窒素複素環中の炭素原子との結合部を表し、記号「**」は、前記カチオン性の構造を有する樹脂を構成するポリマー鎖中の炭素原子との結合部を表す。]
【請求項3】
前記アニオンは、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、フルオロアルキルスルホネートアニオン、フルオロスルホネートアニオン、フルオロアルキルカルボン酸アニオン、フルオロアルキルメチドアニオン、フルオロホウ酸アニオン、フルオロリン酸アニオン、ジシアナミドアニオンおよびチオシアネートアニオンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の電子写真用現像装置。
【請求項4】
前記カチオン性の構造が、下記構造式(10)で示される構造である、請求項2または3に記載の電子写真用現像装置:
【化8】

[構造式(10)中、Z4、Z5、Z6、およびd1は、前記構造式(2)と同様の意味を示す]。
【請求項5】
前記カチオン性の構造が、下記構造式(11)で示される構造である、請求項2または3に記載の電子写真用現像装置:
【化9】

[構造式(11)中、Z9、Z10、Z11、Z12、およびd3は、前記構造式(4)と同様の意味を示す。]。
【請求項6】
前記カチオン性の構造が、下記構造式(12)で示される構造である、請求項2または3に記載の電子写真用現像装置:
【化10】

[構造式(12)中、Z13、Z14、およびd4は、前記構造式(5)と同様の意味を示す。]。
【請求項7】
前記カチオン性の構造が、下記構造式(13)で示される構造である、請求項2または3に記載の電子写真用現像装置:
【化11】

[構造式(13)中、Z15、Z16、Z17、およびd5は、前記構造式(6)と同様の意味を示す。]。
【請求項8】
前記展開画像において、前記凸部の幅wの法線方向において前記凸部の最大長を凸部の径Dとし、前記径Dを形成する線分における前記凸部の頂点から前記直線までの長さを凸部の高さHとしたとき、
前記凸部は、該高さHが、40nm以上300nm以下である「特定高さ凸部」を含み、
該特定高さ凸部のうち、前記幅wに対する前記径Dの比(D/w)が、0.33以上0.80以下である特定高さ凸部の個数割合P(D/w)が、50個数%以上である請求項1~7のいずれか一項に記載の電子写真用現像装置。
【請求項9】
電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであっ
て、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用現像装置を具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用現像装置を具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真画像形成装置に用いられる電子写真用現像装置、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置においては、トナーを安定的に帯電し、かつ、トナー担持体ローラに供給するためのトナー供給ローラが用いられている。特許文献1には、反応性官能基を介してイオン導電剤をウレタン発泡層に化学結合させたトナー供給ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-134252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子写真画像形成装置には、苛酷な環境下においても安定して優れた電子写真画像を形成できることが求められている。本発明者らの検討によれば、特許文献1に係るトナー供給ローラを用いた現像装置は、長期に亘る使用の結果、電子写真画像にカブリを生じさせる場合があった。
【0005】
本開示の一態様は、長期に亘る使用によっても電子写真画像にカブリを生じさせにくい電子写真用現像装置の提供に向けたものである。また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像の安定的な出力に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。さらに、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して出力することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る第1の態様によれば、
トナーとトナー供給ローラを有する現像装置であり、
該トナー供給ローラが、
軸体と、該軸体の外周の架橋ウレタン樹脂を含む導電層を有し、
該架橋ウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤と、ポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物であり、
該トナーは、個数平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下であり、トナー母粒子及び該トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を含み、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
R-SiO3/2 (1)
(Rは炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基を示す。)
該有機ケイ素重合体は、該トナー粒子の外表面に凸部を構成し、
該有機ケイ素重合体の該トナー母粒子への固着率が80%以上であり、
走査型電子顕微鏡(STEM)によって得た該トナー粒子の断面画像について、該トナー母粒子の輪郭線を直線に展開して該断面画像の展開画像を得たとき、該展開画像において、該直線の長さをLとし、該直線上における、該凸部と該トナー母粒子との境界を構成している線分の長さを幅wとしたとき、該Lに対する、該幅wの総和Σwの割合(Σw/L)が、0.30以上0.95以下である、
電子写真用現像装置が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、上記の電子写真用現像装置を具備するプロセスカートリッジが提供される。
加えて、本発明のさらに別の態様によれば、上記の電子写真用現像装置を具備する電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、長期に亘る使用によっても電子写真画像にカブリを生じさせにくい電子写真用現像装置が提供される。
本開示の別の態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な出力に資するプロセスカートリッジが提供される。
本開示の更に別の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して出力することができる電子写真画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】トナー供給ローラの概略断面図(a)、概略斜視図(b)及び電子写真用現像装置の概略断面図(c)である。
図2】プロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図3】電子写真画像形成装置の概略断面図である。
図4】トナーのSTEMによる断面観察の模式図である。
図5】凸形状の計測の仕方を表した模式図である。
図6】凸形状の計測の仕方を表した模式図である。
図7】凸形状の計測の仕方を表した模式図である。
図8】トナー供給ローラの形成装置及び製造工程の一例を示す模式断面図であり、(a)はウレタン樹脂材料の注型開始時、(b)は架橋ウレタン樹脂の発泡(材料面上昇)時、(c)は架橋ウレタン樹脂の硬化時(導電層の成形完了時)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、特定のトナーとトナー供給ローラを組み合わせた電子写真用現像装置により、画像上のカブリを良化できることを見出した。
本発明者らは、その理由を以下のように推察している。特許文献1では、反応性官能基を介してイオン導電剤をウレタン発泡層に化学結合させたトナー供給ローラを画像形成装置に用いている。しかしながら、前述の通り、従来トナーでは長寿命カートリッジで使用することにより外添剤が埋没して流動性が低下する。その結果、トナーの帯電量が不均一となり、電子写真画像にカブリが発生すると考えられる。
【0010】
一方、本発明者らは、トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子は、長期に亘る電子写真画像の形成に供した場合においても外添剤がトナー母粒子に埋没しにくく、流動性の経時的な変化が抑制され、その結果、トナーの帯電量の経時的な変化を抑えられることを見出した。
また、トナー粒子の外表面に有機ケイ素重合体からなる凸部を有することにより、トナー供給ローラ表面にトナー粒子の該凸部がくい込み、トナー供給ローラ表面でとトナー粒子が滑らずにトナーが転動する。それにより、トナー粒子の表面が満遍なくトナー供給ローラの表面と接触し、トナー粒子の表面の各位置のトナー供給ローラとの接触機会が均一となり、トナー粒子の表面の帯電量が平衡に達して均一な帯電となる。各トナー粒子の帯電量が平衡に達して均一となる事により、現像される全てのトナーの帯電量が均一になり、カブリが抑制されることを見出した。
また、本発明者らは、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤と、ポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物である架橋ウレタン樹脂を含む導電層を有するトナー供給ローラを、上記のトナーと組み合わせることで、トナーの帯電量をより長期に亘り均一に維持することができることを見出した。
これは、上記したトナー供給ローラは、該トナー供給ローラに直接、又はトナー担持体ローラを介して高電圧による電界が印加されても、トナー供給ローラの導電層の導電性が変化しにくく、長期に亘り安定してトナーに電荷を付与し得るためであると考えられる。
また、前記有機ケイ素重合体からなる凸部を有するトナー粒子は、最表面が特定の有機ケイ素重合体が存在するので、最表面が炭化水素のみからなるトナー粒子に比較して帯電量が小さい傾向があった。ところが驚くべきことに、前記有機ケイ素重合体からなる凸部を有すトナー粒子であっても、前記架橋ウレタン樹脂を含む導電層を有するトナー供給ローラを組み合わせて使用することにより、予想外に良好に帯電することを見出した。この理由については定かではないが、有機ケイ素重合体とウレタン樹脂に固定されたイオン導電剤の窒素カチオン中心との間の摩擦帯電性が帯電に最適な関係にあるのではないかと考えている。窒素のカチオン中心を持つイオン性の基が架橋ウレタン樹脂に固定されていない場合には、摩擦や通電によりトナー供給ローラの最表面におけるイオン性の基の量が低下してしまい、トナーの帯電量が減少すると考えられる。それに対して、本発明の現像装置に用いるトナー供給ローラにおいては、カチオン性の基が架橋ウレタン樹脂に固定されているので、長期間の使用後にもトナーの帯電量が減りにくく、カブリを抑制することが出来ると推測している。
【0011】
[電子写真用現像装置]
現像装置は、トナー11とトナー供給ローラ1を有する。図1は、現像装置10の概略断面図(c)と、トナー供給ローラ1の軸体方向に垂直な断面を示す概略図(a)と斜視図(b)を示す。現像装置10は、現像手段であるトナー担持体ローラ12と現像ブレード13とを備える。現像装置10は、さらにトナー容器14を含み、トナー容器14内には、本発明に係るトナー11が充填されている。トナー容器14内のトナー11は、トナー供給ローラ1によってトナー担持体ローラ12の表面に供給され、現像ブレード13によって、トナー担持体ローラ12の表面に所定の厚みのトナー11の層が形成される。
【0012】
<トナー供給ローラ>
トナー供給ローラは、導電性の軸体と、該軸体上の架橋ウレタン樹脂を含む導電層と、を有する。
図1(a)及び(b)に示すトナー供給ローラ1は、導電性の軸体2と、その外周に設けられた架橋ウレタン樹脂を含む導電層3とを備える。
なお、トナー供給ローラ1の層構成は、導電層3がトナー供給ローラ1の最表面に存在するものに限定されるものではない。トナー供給ローラ1としては、軸体2とその外周に設けられた導電層3の上にさらに表面層を有するものや、軸体2と導電層3との間にさらに弾性層を有するものも挙げられる。
【0013】
以下、本開示の一態様に係るトナー供給ローラの構成を詳細に説明する。
<軸体>
軸体2は、トナー供給ローラの支持部材、および電極として機能する。軸体2は、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロムまたはニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。軸体2は、中実円柱状または中空円筒状である。
【0014】
<導電層>
導電層3は、後述する架橋ウレタン樹脂を含む。導電層3は、トナー供給ローラとしてトナー担持体ローラ表面に均一にトナー粒子を供給するために、トナー粒子を層内に貯留できる空隙があることが好ましい。
空隙の例としては、多数の貫通、非貫通の穴が挙げられる。また空隙の別の例としては、互いに連結した泡(連泡)状態の多孔質でもよい。架橋ウレタン樹脂を含む導電層は、空隙の大きい連泡状態であることが好ましい。
このような空隙を有する導電層(発泡層ともいう)の表面の平均セル径、セル数、通気量、層全体の密度等の特性が重要となる。導電層3(発泡層)の物性値は特に限定されるものではないが、例えば、次のような数値範囲の中にある値を有することが好ましい。
表面の平均セル径:100μm以上500μm以下;
セル数:50個/inch以上300個/inch以下;
通気量:0.5L/min以上3.0L/min以下;
密度:0.05g/cm以上0.20g/cm以下。
【0015】
<架橋ウレタン樹脂>
架橋ウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤と、ポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物である。
イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤としては、反応性官能基として水酸基、アミノ基、グリシジル基由来の基を少なくとも1個含むカチオンを有するイオン化合物が好ましい。この場合、得られる架橋ウレタン樹脂はカチオン性の構造を有する。架橋ウレタン樹脂中の該カチオン性の構造の割合は、架橋ウレタン樹脂の原料仕込み量全体に対して反応性官能基を有するイオン導電剤の量が0.1~30質量%、好ましくは0.2から10質量%となる量である。
また、架橋ウレタン樹脂は、上記反応で得られるポリウレタンと、該イオン化合物由来のアニオンと、を含む。したがって、架橋ウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネートと、イオン化合物とを反応させることにより得られる。
【0016】
<カチオン構造>
該ポリウレタンが分子内に有するカチオン性の構造は、構造式(1)~(6)で示される構造からなる群より選択される少なくとも1つのカチオン構造であることが好ましい。以下、構造式(1)~(6)で示される各カチオン構造について説明する。
【0017】
【化1】
【0018】
構造式(1)中、R1は、水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。Z1~Z3は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造または炭素数1~12の炭化水素基を表し、Z1~Z3の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
構造式(1)で示される構造は、水酸基、アミノ基、またはグリシジル基由来の基を少なくとも1個有するアンモニウムカチオンである。構造式(1)で示される構造が、水酸基由来の基を少なくとも1個有するアンモニウムカチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(1)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有するアンモニウムカチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(1)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有するアンモニウムカチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物と水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)で示される構造を1個有する構造が得られる。
【0019】
構造式(1)で示される構造を提供し得るイオン化合物のアンモニウムカチオンの例として、水酸基を有するアンモニウムカチオンを以下に挙げる。
2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、4-ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムカチオン、4-ヒドロキシブチル-トリ-n-ブチルアンモニウムカチオン、8-ヒドロキシオクチルトリメチルアンモニウムカチオン、8-ヒドロキシオクチル-トリ-n-ブチルアンモニウムカチオン;
ビス(ヒドロキシメチル)ジメチルアンモニウムカチオン、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムカチオン、ビス(3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニウムカチオン、ビス(4-ヒドロキシブチル)ジメチルアンモニウムカチオン、ビス(8-ヒドロキオクチル)ジメチルアンモニウムカチオン、ビス(8-ヒドロキオクチル)-ジ-n-ブチルアンモニウムカチオン;
トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウムカチオン、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムカチオン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムカチオン、トリス(4-ヒドロキシブチル)メチルアンモニウムカチオン、トリス(8-ヒドロキシオクチル)メチルアンモニウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個有するアンモニウムカチオンは、上記アンモニウムカチオンの水酸基の一部又は全部を、アミノ基、グリシジル基(又はエポキシ基)で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
構造式(2)中、R2およびR3は、各々が結合する窒素原子と共に含窒素複素芳香族5員環を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表す。具体的には、R2とR3の一方は炭素数1であり、他方は炭素数の2の2価の炭化水素基であり、あるいは、R2とR3の一方は単結合であり、他方は炭素数の3の2価の炭化水素基であり、何れも芳香族性を示すようにπ電子が非局在化している。Z4およびZ5は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子、または炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。Z6は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。d1は0または1の整数を表し、Z4~Z6の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。
【0022】
構造式(2)で示される構造は、水酸基、アミノ基、またはグリシジル基由来の基を少なくとも1個有する窒素原子を2個含む含窒素複素芳香族5員環カチオンである。構造式(2)で示される構造が、水酸基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族5員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(2)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族5員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(2)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族5員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物をと水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)で示される構造を1個有する構造が得られる。
構造式(2)における含窒素複素芳香族5員環としては構造式(10)で示されるイミダゾリン環を有する構造が好ましい。なお、構造式(10)中、Z4、Z5、Z6、およびd1は、前記構造式(2)と同様の意味を示す。
【0023】
【化3】
【0024】
構造式(2)で示される構造を提供し得るイオン化合物のカチオンの例として、イミダゾリン環構造を有し、水酸基を有するカチオンを以下に挙げる。
1-メチル-3-ヒドロキシメチルイミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(3-ヒドロキシプロピル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(4-ヒドロキシブチル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(6-ヒドロキシヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(8-ヒドロキシオクチル)イミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1-n-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-(4-ヒドロキシブチル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン;
1,3-ビスヒドロキシメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、2-メチル-1,3-ビスヒドロキシメチルイミダゾリウムカチオン、2-メチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、4-メチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、2-エチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、4-エチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、2-n-ブチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、4-n-ブチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ビス(3-ヒドロキシプロピル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ビス(4-ヒドロキシブチル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ビス(6-ヒドロキシヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1,3-ビス(8-ヒドロキシオクチル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-2,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1-メチル-3,5-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン;
1,2,3-トリスヒドロキシメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリス(3-ヒドロキシプロピル)イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリス(4-ヒドロキシブチル)イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリス(6-ヒドロキシヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリス(8-ヒドロキシオクチル)イミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリス(3-ヒドロキシプロピル)イミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリス(4-ヒドロキシブチル)イミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリス(6-ヒドロキシヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリス(8-ヒドロキシオクチル)イミダゾリウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個有するカチオンは、上記カチオンの水酸基の一部又は全部を、アミノ基、グリシジル基(又はエポキシ基)で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】
構造式(3)中、R4およびR5は、各々が結合する窒素原子と共に含窒素複素芳香族6員環を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表す。具体的には、R4およびR5は、それぞれ独立に炭素数1~3の2価の炭化水素基から選択され、R4およびR5の合計炭素数が4となる。あるいは、R4およびR5の一方が単結合であり、他方が炭素数4の2価の炭化水素基である。芳香族性を示すようにπ電子が非局在化している。Z7は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。Z8は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。d2は0~2の整数を表し、Z7およびZ8の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。d2が2であるとき、Z8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
構造式(3)で示される構造は、水酸基、アミノ基、またはグリシジル基由来の基を少なくとも1個有する窒素原子を2個含む含窒素複素芳香族6員環カチオンを表す。構造式(3)で示される構造が、水酸基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族6員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(3)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族6員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(3)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素芳香族6員環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物と水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)で示される構造を1個有する構造が得られる。
構造式(3)における含窒素複素芳香族6員環としては、ピリミジン環、ピラジン環が挙げられる。
【0027】
構造式(3)で示される構造を提供し得るイオン化合物のカチオンの例として、ピリミジン環構造を有し、水酸基を有するカチオンを以下に挙げる。
1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリミジニウムカチオン、1,5-ビス(3-ヒドロキシプロピル)ピリミジニウムカチオン、1-(4-ヒドロキシブチル)-4-(2-ヒドロキシエチル)ピリミジニウムカチオン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルピリミジニウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個有するカチオンは、上記カチオンの水酸基の一部又は全部をアミノ基、グリシジル基(又はエポキシ基)で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0028】
【化5】
【0029】
構造式(4)中、R6およびR7は、各々が結合する窒素原子と共に含窒素複素脂環式基を形成するのに必要な炭化水素基または単結合を表す。具体的には、R6およびR7はそれぞれ独立に炭素数1~5の2価の炭化水素基から選択され、合計炭素数が3~6であることが好ましい。Z9~Z11は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。Z12は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。d3は0~2の整数を表し、Z9~Z12の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。d3が2であるとき、Z12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
構造式(4)で示される構造は、水酸基、アミノ基、またはグリシジル基由来の基を少なくとも1個有する窒素原子を2個含む含窒素複素脂環式カチオンを表す。構造式(4)で示される構造が、水酸基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物をとイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(4)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(4)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素複素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物と水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)を1個有する構造が得られる。
構造式(4)における含窒素複素脂環式基としては、ピペラジン基、イミダゾリン基、イミダゾリジン基、1,3-ジアゼパン基、1,4-ジアゼパン基が挙げられる。なかでも、ピペラジン基が好ましく、構造式(4)で示される構造は、好ましくは構造式(11)で示される構造である。なお、構造式(11)中、Z9、Z10、Z11、Z12、およびd3は、前記構造式(4)と同様である。
【0031】
【化6】
【0032】
構造式(4)で示される構造を提供し得るイオン化合物のカチオンの例として、ピペラジン基を有し、水酸基を有するカチオンを以下に挙げる。
1,1-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジニウムカチオン、1,1,4-トリス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジニウムカチオン、1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピル)-1-エチルピペラジニウムカチオン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジエチルピペラジニウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個有するカチオンとしては、上記カチオンの水酸基の一部又は全部をアミノ基、グリシジル基で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0033】
【化7】
【0034】
構造式(5)中、R8は、結合する窒素原子と共に含窒素芳香族環を形成するのに必要な炭化水素基を表す。具体的には、R8は炭素数4~6の2価の炭化水素基であり、芳香族性を示すようにπ電子が非局在化している。Z13は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。Z14は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。d4は0または1の整数を表し、Z13およびZ14の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。
【0035】
構造式(5)で示される構造は、水酸基、アミノ基、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する窒素原子を1個含む含窒素芳香族環カチオンを表す。構造式(5)で示される構造が、水酸基由来の基少なくとも1個有する含窒素芳香族環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(5)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有する含窒素芳香族環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(5)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素芳香族環カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物と水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)で示される構造を1個有する構造が得られる。
構造式(5)における含窒素芳香族環としては、ピロール環、ピリジン環、アゼピン環が挙げられる。なかでも、ピリジン環が好ましく、構造式(5)で示される構造は、好ましくは構造式(12)で示される構造である。なお、構造式(12)中、Z13、Z14、およびd4は、前記構造式(5)と同様の意味を示す。
【0036】
【化8】
【0037】
構造式(5)で示される構造を提供し得るイオン化合物のカチオンの例として、ピリジン環構造を有し、水酸基を有するカチオンを以下に挙げる。
1-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1-(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1-(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1-(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン、2-メチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、3-メチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、4-メチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、3-エチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、3-n-ブチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-メチル-2-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-メチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-メチル-4-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-メチル-2-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-メチル-3-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-メチル-4-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-エチル-3-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1-n-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、2-メチル-4-n-ブチル-1-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン;
1,2-ビスヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,3-ビスヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,4-ビスヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1,2-ビス(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1,3-ビス(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1,2-ビス(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1,3-ビス(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1,4-ビス(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1,2-ビス(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1,3-ビス(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1,4-ビス(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1,2-ビス(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン、1,3-ビス(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン、1,4-ビス(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン、2-メチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、2-エチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、5-メチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、5-エチル-1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン;
1,2,4-トリスヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,2,4-トリス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1,2,4-トリス(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1,2,4-トリス(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1,2,4-トリス(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1,2,4-トリス(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン、1,3,5-トリスヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムカチオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシブチル)ピリジニウムカチオン、1,3,5-トリス(6-ヒドロキシヘキシル)ピリジニウムカチオン、1,3,5-トリス(8-ヒドロキシオクチル)ピリジニウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個有するカチオンとしては、上記カチオンの水酸基の一部又は全部をアミノ基、グリシジル基(又はエポキシ基)で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0038】
【化9】
【0039】
構造式(6)中、R9は、結合する窒素原子と共に含窒素脂環式基を形成するのに必要な炭化水素基を表す。具体的には、R9は炭素数4~7の2価の炭化水素基である。前記炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。Z15およびZ16は、各々独立に構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、水素原子、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。Z17は、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造、または炭素数1~4の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。d5は0または1の整数を表し、Z15~Z17の少なくとも1つは、構造式(Z101)~(Z103)で示される構造からなる群より選択されるいずれかの構造である。
【0040】
構造式(6)で示される構造は、水酸基、アミノ基、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素脂環式カチオンを表す。構造式(6)で示される構造が、水酸基由来の基を少なくとも1個有する含窒素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z101)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(6)で示される構造が、アミノ基由来の基を少なくとも1個有する含窒素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物とイソシアネート基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z102)で示される構造を1個有する構造が得られる。構造式(6)で示される構造が、グリシジル基由来の基を少なくとも1個有する含窒素脂環式カチオンの場合、該カチオンに対応するイオン化合物と水酸基とを反応させることにより、少なくとも構造式(Z103)で示される構造を1個有する構造が得られる。
構造式(6)における含窒素脂環式基としては、ピロリジン基、ピロリン基、ピペリジン基、アゼパン基、アゾカン基が挙げられる。なかでも、ピロリジン基が好ましく、構造式(6)で示される構造は、好ましくは構造式(13)で示される構造である。なお、構造式(13)中、Z15、Z16、Z17、およびd5は、前記構造式(6)と同様である。
【0041】
【化10】
【0042】
構造式(6)で示される構造の例として、ピロリジン基を有し、水酸基を有するカチオンを以下に挙げる。
1-メチル-1,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピロリジニウムカチオン、1-エチル-1,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピロリジニウムカチオン、1-ブチル-1,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピロリジニウムカチオン、1-メチル-1,2-ビス(4-ヒドロキシブチル)ピロリジニウムカチオン;およびこれらの誘導体。
アミノ基、グリシジル基を少なくとも1個を有するカチオンとしては、これらの水酸基をアミノ基、グリシジル基で置換した構造のカチオンが挙げられる。
【0043】
【化11】
【0044】
構造式(Z101)~(Z103)中、R101、R102及びR103は、各々独立に直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。該2価の炭化水素基は、直鎖または分岐を有する炭素数1~8のアルキレン基であることが好ましい。
また、構造式(Z101)~(Z103)中、記号「*」は、構造式(1)中の窒素原子との結合部、または構造式(2)~(6)中の含窒素複素環中の窒素原子若しくは含窒素複素環中の炭素原子との結合部を表す。また、記号「**」は、前記樹脂を構成するポリマー鎖中の炭素原子との結合部を表す。
【0045】
構造式(Z101)で示される構造は、カチオンが有する構造式(Z111)で示される構造の水酸基と、イソシアネート基とが反応して形成される残基(ウレタン結合)である。
構造式(Z111)
-R101-OH
構造式(Z102)で示される構造は、カチオンが有する構造式(Z112)で示される構造のアミノ基と、イソシアネート基とが反応して形成される残基(尿素結合)である。
構造式(Z112)
-R102-NH
水酸基、アミノ基と反応するイソシアネート基は、架橋ウレタン樹脂を形成するオリゴマー又はプレポリマーが有するイソシアネート基であることが好ましい。
構造式(Z103)で示される構造は、カチオンが有する構造式(Z113)で示される構造のグリシジル基と、架橋ウレタン樹脂を形成するポリオール等の水酸基とが反応して形成される残基である。
【0046】
【化12】
【0047】
グリシジル基と反応する水酸基は、架橋ウレタン樹脂を形成するオリゴマー又はプレポリマーが有する水酸基であることが好ましい。
前記構造式(1)~(6)で示される構造の中でも、構造式(2)で示される構造を有する樹脂を含む場合、カチオンの化学構造に起因して、低温でもイオンキャリアの移動性に係るカチオンとアニオンに解離している割合(イオン化率)が高く、15℃程度の低温環境下における抵抗値がより上昇しにくくなるため、好ましい。
【0048】
<ポリオール>
本発明のトナー供給ローラの架橋ウレタン樹脂を形成するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、等が挙げられる。中でもポリエーテルポリオールは架橋ウレタン樹脂が柔軟性を有するので好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、以下のものが挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,4-ブタンジオール、ポリ1,5-ペンタンジオール、ポリネオペンチルグリコール、ポリ3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリ1,6-ヘキサンジオール、ポリ1,8-オクタンジオール、ポリ1,9-ノナンジオール。これらの中でも、硬度上昇抑制の観点から、ポリプロピレングリコール、ポリ1,4-ブタンジオール、ポリ1,5-ペンタンジオール、ポリネオペンチルグリコール、ポリ3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリ1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
また、ポリエステルポリオールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールの如きジオール成分、またはトリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸の如きジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオール。これらの中でも、硬度上昇抑制の観点から、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールの如きジオール成分と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸の如きジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが好ましい。
また、ポリカプロラクトンポリオールとしては、以下のものが挙げられる。ポリε-カプロラクトン、ポリγ-カプロラクトン。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールの如きジオール成分、ホスゲン、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネート、または、エチレンカーボネートの如き環状カーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオール。これらの中でも、硬度上昇抑制の観点から、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールの如きジオール成分、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
これらのポリオール成分は、必要に応じて、あらかじめ2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネート化合物により鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
【0049】
<イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネート;およびこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、そのブロック体を用いることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネートが好ましい。
ポリオール成分とイソシアネート化合物とは、ポリオール成分中の水酸基1.0に対して、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の比率(モル比)が1.0以上2.0以下の範囲となるように混合させることが好ましい。混合比が上記範囲内であれば、未反応成分の残存を抑制することが可能である。
【0050】
<アニオン>
本発明の架橋ウレタン樹脂に含まれるアニオンは、ウレタン樹脂が有するカチオン構造とイオン対を形成し、本発明のトナー供給ローラに導電性を付与できるアニオンであればよい。中でも、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、フルオロアルキルスルホネートアニオン、フルオロスルホネートアニオン、フルオロアルキルカルボン酸アニオン、フルオロアルキルメチドアニオン、フルオロホウ酸アニオン、フルオロリン酸アニオン、ジシアナミドアニオン((NC))およびチオシアネートアニオン(NCS)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。その理由は、上記アニオンは、その化学構造に起因して、ハロゲンのアニオンや硫酸アニオン、硝酸アニオンと比べて化学的に非常に安定であり、イオン化率が高いためである。具体的には、アニオンが分子内に強力な電子求引性基を有し、アニオンの負電荷を安定化させるため、広い温度域で高いイオン化率を示し、低温でも高い導電性の発現に寄与するためと考えられる。なお、アニオンとして、塩素イオンや過塩素酸アニオンを用いることもできる。
【0051】
フルオロアルキルスルホニルイミドアニオンとしては、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ドデカフルオロペンタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロヘキサンスルホニル)イミドアニオンの如き、炭素数1以上6以下のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、および、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミドの如き環状のフルオロアルキルスルホニルイミドアニオンが挙げられる。
フルオロスルホニルイミドアニオンとしては、具体的には、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンが挙げられる。
フルオロアルキルスルホネートアニオンとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロエタンスルホン酸アニオン、パーフルオロプロパンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、パーフルオロペンタンスルホン酸アニオン、パーフルオロヘキサンスルホン酸アニオン、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオンが挙げられる。
フルオロアルキルカルボン酸アニオンとしては、具体的には、トリフルオロ酢酸アニオン、パーフルオロプロピオン酸アニオン、パーフルオロ酪酸アニオン、パーフルオロ吉草酸アニオン、パーフルオロカプロン酸アニオンが挙げられる。
フルオロアルキルメチドアニオンとしては、具体的には、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロペンタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロヘキサンスルホニル)メチドアニオン、トリス(パーフルオロオクタンスルホニル)メチドアニオンが挙げられる。
フルオロホウ酸アニオンとしては、具体的には、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF )が挙げられる。
フルオロリン酸アニオンしては、具体的には、ヘキサフルオロリン酸アニオン(PF )が挙げられる。
これらのアニオンの中でも、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、フルオロホウ酸アニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオンを用いた場合には、低温環境下における導電性の低下がより抑制されるため、特に好ましい。
【0052】
<架橋剤>
本開示の架橋ウレタン樹脂を構成する成分として、架橋剤を含むことが好ましい。架橋構造としては、3官能以上のイソシアネート、3官能以上のポリオール、3官能以上のイオン導電剤を含む場合、これらが架橋剤としての機能を果たし、架橋構造を形成することができる。又、これらとは別に、ウレタン樹脂に最適な公知の架橋剤を使用してもよい。例えば、エチレンジアミン等のアミン系架橋剤、カルボジイミド等のイミド系架橋剤などが挙げられる。
【0053】
<導電層中のその他の成分>
導電層は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、導電性充填剤を含有してもよい。導電性充填剤としては、カーボンブラック;アルミニウム、銅の如き導電性金属を用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックは、比較的容易に入手でき、導電付与性と補強性が高いため、特に好ましく用いられる。
導電層には、必要に応じて触媒、発泡剤、整泡剤、その他助剤を用いることができる。
【0054】
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から、適宜選択して使用することができる。例えば、アミン系触媒(トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5、1,2-ジメチルイミダゾール、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリン等)、有機金属系触媒(オクチル酸錫、オレイン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン等)、前記アミン系触媒および有機金属系触媒の初期活性を低下させた酸塩触媒(カルボン酸塩や蟻酸塩、オクチル酸塩、ホウ酸塩等)が用いられる。触媒は一種用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
発泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種発泡剤の中から、適宜選択して使用することができる。特に、水は、ポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することから、発泡剤として好適に使用される。また、その他の発泡剤と水とを併用しても、本発明の主旨を損なうものではない。
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から、適宜選択して使用することができる。
その他助剤として、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、架橋助剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を用いてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない程度に、その他のイオン導電剤を併用してもよい。
【0055】
<トナー供給ローラの製造>
トナー供給ローラは、導電性の軸体の外周上に、導電性の架橋ウレタン樹脂層を設けることにより製造される。
【0056】
<架橋ウレタン樹脂を含む導電層の形成方法>
架橋ウレタン樹脂を含む導電層は、ポリオールと、イソシアネートと、カチオン構造中に、水酸基、アミノ基およびグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1つを含むイオン化合物とを含む組成物を反応硬化させることにより得られる。架橋ウレタン樹脂層は、発泡により形成された空隙があることが好ましい。発泡方法については、特に制限はない。発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法を用いることができる。なお、発泡倍率は、適宜定めればよく、特に制限はないが、2倍から50倍、より好ましくは3倍から30倍である。発泡倍率は、架橋ポリウレタン樹脂を含む導電層の空隙を含む体積と、架橋ポリウレタン樹脂の真比重との積を、導電層の質量で割ることにより求められる。
発泡方法としては、例えば以下の材料を混合し、発泡させながら反応させることにより、トナー供給ローラの架橋ウレタン樹脂を含む導電層が得られる。
1.ウレタン結合を形成する材料(バインダー樹脂とも言う)として、
・ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等
・ポリイソシアネート
2.カチオン構造中に、水酸基、アミノ基およびグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1つを含むイオン化合物
3.触媒、架橋剤
4.整泡剤
5.発泡剤
なお、上記導電層形成用材料中における、前記構造式(1)~(6)で示される構造からなる群より選択される少なくとも1つで示されるカチオン構造の含有量の総和は、次の範囲内にあることが好ましい。すなわち、導電性および通電による抵抗変動抑制の観点から、架橋ウレタン樹脂層において、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下の範囲内である。
混合する際の温度や時間については、特に制限はない。混合温度は、通常10℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下の範囲である。また、混合時間は、使用される混合ユニットの構造や、回転条件等にもよるが、通常1秒以上10分間以下、好ましくは3秒以上5分間以下である。
なお、これらの反応後の状態は、例えば、熱分解GC/MS、FT-IR、NMR、GPC等による公知の手段で分析することにより確認することができる。
【0057】
軸体と導電層の接合方法については特に制限はない。軸体を予めモールド(成形型)内部に配設しておき、上記のような原料混合物を注型硬化する方法や、原料混合物をあらかじめ導電層となる所定の形状に成形した後、軸体と接着する方法などを用いることができる。どちらの方法でも、必要に応じて軸体と導電層の間に接着層を設けることができる。この接着層としては、接着剤やホットメルトシートなどの公知の材料を用いることができる。
注型硬化する方法の場合、成形型内壁に離型剤を予め塗布してもよい。離型剤としては、従来公知の離型剤を用いることができる。例えば、ワックス成分およびシリコーンオイルを含有する水系の離型剤や、フッ素樹脂をフッ素系溶剤に溶解させた離型剤が挙げられる。
トナー供給ローラとしての架橋ウレタン樹脂を含む導電層の形状形成方法としては特に制限はない。例えば前述した所定の形状のモールドに注型する方法等のほかに、次のような方法等を用いることができる。ブロック状態のポリウレタンフォームから、切削加工により所定の寸法に切り出す方法、研磨処理により所定の寸法にする方法、或いはこれらの方法を適宜組み合せる方法。
注型硬化する方法における材料の注型方法としては、軸体をセットした金型の片側の駒に穴を開けてその穴から注型して硬化する方法や、軸体をセットした金型に直接材料を注型した後、片側の駒で金型を閉じて硬化する方法等がある。
【0058】
直接注型してから金型を閉じて硬化する方法は、材料の無駄が生じないという利点がある。以下に図8を参照して、直接注型してから金型を閉じて硬化する方法を説明する。
図8(a)に示す通り、成形型51は下駒52を嵌合させて、軸体53は下駒53の軸体挿入孔54に設置させる。成形型51と下駒52の成形面には離型剤を予め塗布してもよい。離型剤としては、従来公知の離型剤を用いることができる。例えば、ワックス成分およびシリコーンオイルを含有する水系の離型剤や、フッ素樹脂をフッ素系溶剤に溶解させた離型剤が挙げられる。
成形型と下駒に塗布する離型剤の例としては、以下のものが挙げられる。
商品名:フリリース351、商品名:フリリース352、商品名:フリリース640、商品名:フリリース650、商品名:フリリース345、商品名:フリリース430、商品名:フリリース450、商品名:FRX-AL9、(いずれも株式会社ネオス製)。
又、離型剤は材料に添加して内部離型剤として使用することもできる。
図8(a)に示すように、成形空間(キャビティ)内に架橋ウレタン樹脂の原料混合物55(発泡材料)を注入する。発泡材料55を混合する際の温度や時間については、特に制限はない。混合温度は、通常10℃以上90℃以下、好ましくは30℃以上40℃以下の範囲である。また、混合時間は、使用される混合ユニットの構造や、回転条件等にもよるが、通常1秒以上10分間以下、好ましくは3秒以上5分間以下である。
成形型51と下駒52と軸体53は予め所定の温度に予熱しておく。成形型51と下駒52と軸体53を予熱する温度は、発泡材料55が成形型51内で発泡上昇する際に硬化反応を起こさない範囲の温度で、好ましくは40℃以上60℃以下の範囲である。軸体53は上端位置で成形型51の中心位置から注入側と反対側にずらして斜めに傾けた状態にする。発泡材料55は成形型51の上部の注型機(不図示)から、成形型51の内面と傾斜した軸体53の間の位置に注入されて成形型51の底面である下駒52上に落下する。発泡材料55は成形型51のキャビティの容積に合わせた所定量の注入が完了された後に、軸体53を成形型51の中心軸位置に戻した状態とする。
【0059】
次に、図8(b)に示す通り、成形型51に上駒56が嵌合されて、成形型51の内面と軸体53、さらに下駒52と上駒56との閉鎖空間で構成されたキャビティが形成される。また、成形型51の側面にはヒーター57が設置された熱盤58が配置され、キャビティ内の発泡材料55が加熱されて上駒方向に材料面が上昇する。上駒56には、発泡材料の発泡に伴う気体の圧縮や発生するガス等を逃すためにエアベント(不図示)が設けられている。また、上駒には、成形型、下駒と同様に離型処理が施されていてもよい。ただし、ワックス系の離型剤はエアベント内に蓄積し、ガスの通りを悪くして、発泡材料の上昇に影響することがある。したがって、ワックス成分を含有しないか、または含有量が少ない離型剤の使用が好ましい。
ワックス成分を含有しないか、または含有量が少ない離型剤の例としては、以下のものが挙げられる。
商品名:フリリース20A、商品名:フリリース25、商品名:フリリース29、商品名:フリリース11FG、商品名:フリリース12G、商品名:フリリース70、商品名:フリリース75、商品名:フリリース310、商品名:フリリース420、(いずれも株式会社ネオス製)。
【0060】
成形型51を加熱する温度は発泡材料55の硬化反応が起きる温度で、好ましくは70℃以上80℃以下の範囲である。成形型51は予熱温度の40℃以上60℃以下の範囲から加熱温度の70℃以上80℃以下まで段階的に昇温されることで、発泡材料55の発泡上昇と硬化反応が最適に行われて、成形完了後のローラの長手方向の導電層の発泡材料充填ムラによる硬度ムラは抑制される。
【0061】
図8(c)に示す通り、導電層59は成形型51内で所定の時間を経過して硬化反応が終了する。成型型51から上駒56と下駒52を外した後に脱型されてトナー供給ローラが得られる。トナー供給ローラは成形型51と上駒56と下駒52が型組みされている状態での寸法が、最終的な製品寸法と等しくなっており、成形以降の工程でトナー供給ローラの両側端部の導電層59を突切り等の切断除去を行って最終的なトナー供給ローラの製品寸法に仕上げる工程は不要になる。
【0062】
<トナー>
本発明に係る現像装置では、上記のようにして製造されたトナー供給ローラに対して、特定のトナーを組み合わせることに特徴がある。本発明に係るトナーは以下に示すトナー粒子を主成分として含む。
【0063】
(トナー粒子)
トナー粒子の個数平均粒径は、4.0μm以上10.0μm以下である。個数平均粒径がこの範囲にあることによって、トナー供給ローラの表面によく転動して、均一に帯電することができるので、トナーの帯電量が均一になる。
4.0μmより小さいと、トナー粒子とトナー供給ローラの導電層(架橋ウレタン樹脂)が接近し、付着しやすくなり、転がりにくくなるため、迅速な帯電が起き難くなる。10.0μmより大きくなると、トナー1粒子で均一な帯電を持ち難くなり、トナーが電子写真感光体側へ移動し難くなる。
トナー粒子の個数平均粒径は、好ましくは5.0μm以上8.0μm以下である。
【0064】
トナー粒子は、トナー母粒子及び該トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体を有する。有機ケイ素重合体は下記式(1)で表される構造を有する。
R-SiO3/2 (1)
式中、Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基である。
式(1)で表される構造において、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。
炭素数が1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく例示できる。さらに好ましくは、Rはメチル基である。
【0065】
有機ケイ素重合体は、トナー粒子の外表面に凸部を形成しており、好ましくはトナー母粒子表面に面接触している。面接触することにより、有機ケイ素重合体による凸部の移動・脱離・埋没を抑制できる。これにより、長期間使用を通じて、帯電性、流動性の維持を高いレベルで達成できる。さらに現像装置を長期間使用した後であっても、トナー粒子の外表面に凸部が多く残っているため、トナーのトナー供給ローラに対する転動を持続させることができ、トナー供給ローラとトナーとの接触機会が確保される。
この有機ケイ素重合体がトナー供給ローラの架橋ウレタン樹脂と接触することによりトナーが帯電しやすくなる。
【0066】
また、有機ケイ素重合体のトナー母粒子に対する固着率は、80%以上である。固着率は後述する測定方法に示すように、有機ケイ素重合体のトナー母粒子からの脱落し難さを示している。
固着率が80%以上であれば、トナー母粒子表面から外れた有機ケイ素重合体の凸がトナー供給ローラの表面汚染をおこし、電荷付与能力が落ちる事を防止できる。また、耐久後トナー粒子表面に均一に凸部が残るので、トナー供給ローラに対する転動が維持され、トナー供給ローラとトナーとの接触機会が確保され、トナーの帯電量の低下を防止できる。
前記固着率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。一方、上限は100%であり、99%であってもよい。
【0067】
有機ケイ素重合体のトナー母粒子に対する被覆率は、以下のΣw/Lで表される。
走査透過型電子顕微鏡STEMによって得た前記トナー粒子の断面画像について、前記トナー母粒子の輪郭線を直線に展開して該断面画像の展開画像を得たとき、
該展開画像において、
該直線の長さをLとし、
該直線上における、前記凸部と該トナー母粒子との境界を構成している線分の長さを凸幅wとしたとき、該Lに対する、該凸幅wの総和Σwの割合(Σw/L)が求められる。
すなわち、Σw/Lは、トナー粒子表面を有機ケイ素重合体がどれだけ被覆しているかを表現した値である。Σw/Lが小さいと、有機ケイ素重合体による被覆が少なく、Σw/Lが大きいと、有機ケイ素重合体による被覆が多くなる。このΣw/Lは、0.30以上0.95以下であることが必要である。
Σw/Lが0.30未満であると、トナー供給ローラの表面へのトナー粒子表面の有機ケイ素重合体からなる凸部のくい込み量が不足し転動性が低下するため、トナーの帯電量にばらつきが発生しやすい。Σw/Lが0.95より大きいと、トナー粒子表面の凹凸の数が少なくなるために、スリップのような現象が起き、トナー供給ローラへのトナーの接触機会が不足し、トナーの帯電量が安定しない。
Σw/Lは、0.45以上0.80以下であることが好ましい。
これら固着率と、被覆率(Σw/L)は、後述する有機ケイ素重合体の製造方法、具体的には、加水分解温度、原料となるアルコキシシランの投入部数、加水分解及び重合時のpHなどによって制御できる。
【0068】
また、前記凸幅wの法線方向において前記凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から前記直線までの長さを凸高さHとしたとき、
前記凸部は、凸高さHが40nm以上300nm以下である「特定高さ凸部」を含み、該特定高さ凸部のうち、該凸幅wに対する該凸径Dの比D/wが、0.33以上0.80以下である特定高さ凸部の個数割合P(D/w)が50個数%以上であることが好ましい。個数割合Pが前記範囲にあることにより、トナー供給ローラ表面へのトナー粒子凸部のくい込み量が適切になり、トナーの転動性が増し、トナーとトナー供給ローラの接触機会が増え、トナーの帯電が安定する。
【0069】
トナー粒子表面と凸部を形成する有機ケイ素重合体との面接触の程度を表すために、トナーのSTEMによる断面観察を行う。図4~7にトナー粒子表面の該凸部の模式図を示す。
図4に示す41がSTEM像の領域であり、トナー粒子の約1/4程度が分かる像である。42はトナー母粒子、43はトナー母粒子表面、44が凸部(有機ケイ素重合体)である。また、図5~7には、トナー母粒子42の輪郭(トナー母粒子表面43)を直線に展開した際の一つの凸部44の関係を示しており、凸部の幅がw、凸部の径がD、凸部の高さがHである。
前述の通り、トナー粒子の断面画像を観察し、トナー母粒子の輪郭線を直線に展開して断面画像の展開画像を得る。前記展開画像において、前記直線の長さをLとする。該直線上における、前記凸部と前記トナー母粒子との境界を構成している線分の長さを凸部の幅wとする。また、凸部の幅wの法線方向において凸部の最大長を凸部の径Dとし、凸部の径Dを形成する線分における凸部の頂点から該直線(トナー母粒子表面43)までの長さを凸部の高さHとする。
図5及び図7においては径Dと高さHは同じであり、図6において凸部44はトナー母粒子42に一部埋設された球状粒子であり、径Dは高さHより大きくなる。
また、図7は、中空粒子を潰す・割るなどして得られた、半球粒子の中心部が凹んだ、ボウル形状の粒子に類する粒子の固着状態を模式的に表したものである。図7において、幅wはトナー母粒子表面と接している有機ケイ素化合物の長さの合計とする。すなわち、図7における幅wはW1とW2の合計となる。
【0070】
また、耐久安定性とトナーの転動回転をより良好にする観点から、前記高さHが40nm以上300nm以下である「特定高さ凸部」において、該高さHの累積分布をとり、該高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該高さをH80としたとき、該H80は65nm以上であることが好ましい。より好ましくは70nm以上であり、さらに好ましくは73nm以上である。
該H80の上限は特に制限されないが、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは90nm以下である。
走査型電子顕微鏡SEMによるトナーの観察において、有機ケイ素重合体による凸部の最大径を凸径Rとしたときに、該凸径Rの個数平均径が20nm以上80nm以下であることが好ましい。より好ましくは、35nm以上60nm以下である。
【0071】
有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0072】
【化13】
【0073】
(式(Z)中、R10は、炭素数1以上6以下の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
10は炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
11、R12及びR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成する。
加水分解性が室温で穏やかであり、トナー母粒子の表面への析出性の観点から、R11、R12及びR13は炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。
また、R11、R12及びR13の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR10を除く一分子中に3つの反応基(R11、R12及びR13)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0074】
上記式(Z)で表される化合物としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシランのような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
【0075】
また、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
【0076】
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
上記特定の凸形状をトナー粒子表面に形成する好ましい手法として、水系媒体にトナー母粒子を分散しトナー母粒子分散液を得たところへ、有機ケイ素化合物を添加し凸形状を形成させトナー粒子分散液を得る方法が挙げられる。
トナー母粒子分散液は固形分濃度を25質量%以上50質量%以下に調整することが好ましい。そして、トナー母粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、該トナー母粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは物質によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換膜や逆浸透膜(RO膜)などでイオン分を除去した脱イオン水40質量部以上500質量部以下が好ましく、100質量部以上400質量部以下がより好ましい。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2~7、温度が15~80℃、時間が30~600分である。
【0078】
得られた加水分解液とトナー母粒子分散液とを混合して、縮合に適したpH(好ましくは6~12、又は1~3、より好ましくは8~12)に調整する。加水分解液の量はトナー母粒子100質量部に対して有機ケイ素化合物5.0質量部以上30.0質量部以下に調整することで、凸形状を形成しやすくする。凸形状の形成と縮合の温度と時間は、35℃~99℃で60分~72時間保持して行うことが好ましい。
また、トナー粒子の表面の凸形状を制御するにあたって、pHを2段階に分けて調整することが好ましい。pHを調整する前の保持時間及び、二段階目にpH調整する前の保持時間を適宜調整し有機ケイ素化合物を縮合することで、トナー粒子表面における凸形状を制御できる。例えばpH4.0~6.0で0.5時間~1.5時間保持した後に、pH8.0~11.0で3.0時間~5.0時間保持することが好ましい。また、有機ケイ素化合物の縮合温度を35℃~80℃の範囲で調整することによっても凸形状が制御できる。
【0079】
例えば、幅wは、有機ケイ素化合物の添加量、反応温度及び一段階目の反応pHや反応時間などにより制御できる。例えば、一段階目の反応時間が長くなると凸部の幅wが大きくなる傾向がある。
また、径D及び高さHは、有機ケイ素化合物の加水分解時温度や、有機ケイ素重合体の添加量、反応温度及び二段階目のpHなどにより制御できる。例えば、加水分解温度が高いと、高さHが大きくなる傾向がある。また、二段階目の反応pHが高いと径D及び高さHが大きくなる傾向がある。
【0080】
以下、トナーの具体的な製造方法について説明するが、これらに限定されるわけではない。
トナー母粒子を水系媒体中で製造し、トナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を形成することが好ましい。
トナー母粒子の製造方法として、懸濁重合法・溶解懸濁法・乳化凝集法が好ましく、中でも懸濁重合法がより好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー母粒子の表面に均一に析出し易く、有機ケイ素重合体の接着性に優れ、環境安定性、帯電量反転成分抑制効果、及びそれらの耐久持続性が良好になる。以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
懸濁重合法は、トナー母粒子を構成する結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて着色剤などの添加剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、該重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体を重合することにより、トナー母粒子を得る方法である。
重合性単量体組成物には、必要に応じて離型剤、その他の樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、公知の方法で、生成した粒子を洗浄、濾過により回収することができる。なお、上記重合工程の後半に昇温してもよい。さらに未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
このようにして得られたトナー母粒子を用い、上記方法により有機ケイ素重合体の凸部を形成させることが好ましい。
離型剤としては、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその酸アミド、エステル、又はケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。離型剤は単独で用いてもよいし複数を混合し使用してもよい。
離型剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100質量部に対して2.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0081】
その他の樹脂として、例えば、以下の樹脂を用いることができる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合し用いてもよい。
【0082】
重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
これらのビニル単量体の中でも、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体が好ましい。
【0083】
また、重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビス-(2,4-ジバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部~30.0質量部の添加が好ましく、単独で用いても複数を併用してもよい。
【0084】
また、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対し0.001質量部~15.000質量部である。
【0085】
一方、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。例えば、以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。
これら架橋剤の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部~15.000質量部である。
【0086】
上記懸濁重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として以下のものを使用することができる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
【0087】
トナーには着色剤を用いてもよく、特に限定されず公知のものを使用することができる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。
トナー製造時に荷電制御剤を用いることができ、公知のものが使用できる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部~10.00質量部であることが好ましい。
【0088】
トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよいし、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添してもよい。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
【0089】
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
【0090】
トナーの流動性の改良及びトナーの帯電均一化のために有機又は無機微粉体の表面処理を行ってもよい。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で用いてもよいし複数を併用してもよい。
【0091】
トナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
<走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナーの断面の観察方法>
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、トナーの断面の作製手順を説明する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(内径Φ1.5mm×外径Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、図4のようにトナー1粒子中の断面の周のうち4分の1から2分の1程度収まるように画像取得を行う。
【0092】
得られた画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部を計測する。画像解析はSTEM画像30枚について行う。
まず、ライン描画ツール(StraightタブのSegmented lineを選択)にてトナー母粒子の周に沿った線を描く。有機ケイ素重合体の凸部がトナー母粒子に埋没しているような部分は、その埋没はないものとして滑らかに線をつなぐ。
その線を直線へ変換(EditタブのSelection選択し、propertiesにてline widthを500pixelに変更後、EditタブのSelectionを選択しStraightenerを行う)する。
これにより、トナー母粒子の輪郭線を直線に展開した展開画像が得られる。該展開画像において、有機ケイ素重合体を含む凸部一箇所ずつの、幅w、径D及び高さHを測定する。
該展開画像において、該直線の長さをLとする。Lが、STEM画像中のトナー母粒子表面の長さに相当する。該直線上における、該凸部と該トナー母粒子との境界を構成している線分の長さを凸幅wとする。また、幅wの法線方向において凸部の最大長を径Dとし、径Dを形成する線分における凸部の頂点から該直線までの長さを高さHとする。
画像解析に用いた展開画像に存在する高さHが40nm以上300nm以下となる「特定高さ凸部」の幅wの合計値をΣwとする。一枚の画像からΣw/Lを算出し、STEM画像30枚の相加平均値を採用する。
【0093】
また、STEM画像30枚測定した結果から、P(D/w)を算出する。凸高さHの累積分布をとり、H80を算出する。
詳細な凸部の計測に関しては、前述の説明や図5~7のとおりである。
計測はImage Jにて、画像上のスケールをStraightタブのStraight Lineで重ね、AnalyzeタブのSet Scaleにて、画像上のスケールの長さを設定したのち行う。幅wまたは高さHに相当する線分をStraightタブのStraight Lineで描き、AnalyzeタブのMeasureにて計測ができる。
【0094】
<走査型電子顕微鏡(SEM)における凸部の平均粒径(凸径R)の算出方法>
SEM観察の方法は、以下の通り。日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影される画像を用いて行う。S-4800の画像撮影条件は以下の通りである。
【0095】
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペースト(TED PELLA,Inc、Product No.16053,PELCO Colloidal Graphite,Isopropanol base)を薄く塗り、その上にトナーを吹き付ける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去した後、15mAで15秒間白金蒸着する。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを30mmに調節する。
【0096】
(2)S-4800観察条件設定
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[2.0kV]、エミッション電流を[10μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[下(L)]を選択し、反射電子像を観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[8.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0097】
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。観察粒子の最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。
【0098】
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。
得られたSEM画像から、トナー粒子表面に存在する、20nm以上の該凸部500箇所の個数平均径(D1)の計算を画像処理ソフト(イメージJ)により行う。測定方法は以下の通りである。
・有機ケイ素重合体の凸部の個数平均径の測定
粒子解析により、画像中の凸部とトナー母粒子を二値化により、色分けする。次に、計測コマンドの中から、選択された形状の最大長さを選択し、凸部1箇所の凸径R(最大径)を計測する。この操作を複数行い、500箇所の相加平均値を求めることで、凸径Rの個数平均径を算出する。
【0099】
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定する。水洗後のトナーと初期のトナーの測定対象の元素量比から固着率(%)を計算する。
【0100】
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナー又は初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の定量方法としては、例えばケイ素量は以下のようにして求める。トナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。上記方法により算出した初期のトナーのケイ素量に対して、水洗後のトナーのケイ素量の比率を求め固着率(%)とする。
【0101】
<トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0102】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0103】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%、グラフ/体積%とそれぞれ設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」がそれぞれ個数平均粒径(D1)、重量平均粒径(D4)である。
【0104】
<現像装置のその他の構成要素>
本発明に係る現像装置は、上記特定のトナー供給ローラとトナーとの組み合わせである限り、特に限定されず、その他の構成要素、例えば、図1(c)に示したトナー担持体ローラ12、現像ブレード13、トナー容器14などは、従来公知のものが使用できる。
【0105】
<プロセスカートリッジ>
本発明の他の態様に係るプロセスカートリッジは、前記トナー供給ローラ1とトナー11とを有する現像装置10を具備する。
図2は、本発明の他の態様に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略断面図である。プロセスカートリッジ20は、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。また、プロセスカートリッジ20は、現像装置10、電子写真感光体21、クリーニング手段であるクリーニングブレード24、廃トナー収容容器23、および帯電手段である帯電ローラ22が一体化されたものである。ここで、現像装置10は図1(c)に示したものであり、詳細な説明を省略するが、本発明に係るトナー供給ローラとトナーとの組み合わせを有する。
【0106】
<電子写真画像形成装置>
本発明の他の態様に係る電子写真画像形成装置は、前記トナー供給ローラ1とトナー11とを有する現像装置10を具備する。
図3は、一成分トナーを用いた接触型現像装置に搭載した電子写真画像形成装置の一例を示す概略断面図である。ここでは、図2に示すプロセスカートリッジ20が、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用意されており、各現像装置10には各色トナー11が充填されて、カラー印刷を可能としている。
【0107】
以下、電子写真画像形成装置のプリント動作を説明する。電子写真感光体21は矢印方向に回転し、電子写真感光体21を帯電処理するための帯電ローラ22によって一様に帯電される。次いで、露光手段であるレーザー光25により、電子写真感光体21の表面に静電潜像が形成される。該静電潜像は、現像装置10によって、電子写真感光体21に対して接触配置されるトナー担持体ローラ12からトナー11が付与されることにより、トナー像として可視化される(現像)。現像は、露光部にトナー像を形成する、いわゆる反転現像である。電子写真感光体21上に形成されたトナー像は、転写部材である転写ローラ29によって記録媒体である紙34に転写される。紙34は、給紙ローラ35および吸着ローラ36を経て装置内に給紙され、エンドレスベルト状の転写搬送ベルト32によって、電子写真感光体21と転写ローラ29の間に搬送される。転写搬送ベルト32は、従動ローラ33、駆動ローラ28、テンションローラ31により稼働している。トナー担持体ローラ12、現像ブレード13、トナー供給ローラ1および吸着ローラ36には、バイアス電源30から電圧が印加されている。トナー像が転写された紙34は、定着装置27により定着処理された後、装置外に排紙されて、プリント動作が終了する。一方、転写されずに電子写真感光体18上に残存した転写残トナーは、感光体表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード26により掻き取られ、廃トナー収容容器25に収納される。クリーニングされた電子写真感光体18は、以上のプリント動作を繰り返し行う。
【実施例
【0108】
<イオン化合物の合成>
<イオン化合物I-1>
ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業社製)15.0gをイオン交換水40.0gに溶解させた。次に、イオン交換水60gに溶解させたアニオン交換試薬(以下、「アニオン原料」と称す):リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(キシダ化学社製)37.7gを30分かけて滴下し、30℃で2時間攪拌した。得られた反応溶液に対し、酢酸エチル100.0gを用いて2回抽出操作を行った。続いて、分液した酢酸エチル層を、イオン交換水60gを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下で酢酸エチルを留去し、アニオンがビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオンであるイオン化合物I-1を得た。イオン化合物I-1は、下記式で表される化合物である。
【0109】
【化14】
【0110】
<イオン化合物I-2~I-6>
アニオン原料およびその配合量を表1に記載の通りに変更した以外は、イオン化合物I-1の合成と同様にして、イオン化合物I-2~I-6を得た。
【0111】
【表1】
【0112】
<イオン化合物I-7>
トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド50%水溶液(東京化成工業社製)30.0gをイオン交換水50.0gに溶解させた。次に、イオン交換水30gに溶解させたアニオン原料:ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(商品名KFBS;三菱マテリアル電子化成社製)30.8gを30分かけて滴下し、30℃で6時間攪拌した。得られた反応溶液に対し、酢酸エチル100.0gを用いて2回抽出操作を行った。続いて、分液した酢酸エチル層を、イオン交換水80gを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下で酢酸エチルを留去し、イオン化合物I-7を得た。イオン化合物I-7は、下記式で表される化合物である。
【0113】
【化15】
<イオン化合物I-8~I-11>
アニオン原料およびその配合量を表2に記載の通りに変更した以外は、イオン化合物I-7の合成と同様にして、イオン化合物I-8~I-11を得た。
【0114】
【表2】
【0115】
<イオン化合物I-12>
ジエチレントリアミン(東京化成工業社製)15.0gを、テトラヒドロフラン35.0gに溶解させた。次に、反応系を窒素雰囲気下とし、氷冷した。続いて、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させたヨウ化メチル(東京化成工業社製)45.5gを30分かけて滴下した。反応溶液を12時間加熱還流した後、水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール100mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を純水160mlに溶解し、アニオン原料として、ヘプタフルオロ酪酸ナトリウム(和光純薬工業社製)37.7gを加え、室温下で1時間撹拌した。得られた反応溶液に対し、酢酸エチル100.0gを用いて2回抽出操作を行った。次に、分液した酢酸エチル層を、イオン交換水60gを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下で酢酸エチルを留去し、イオン化合物I-12を得た。イオン化合物I-12は、下記式で表される化合物である。
【0116】
【化16】
【0117】
<イオン化合物I-13>
アニオン原料を19.5gの過塩素酸ナトリウム(無水、関東化学社製)に変更した以外は、イオン化合物I-12の合成と同様にして、イオン化合物I-13を得た。
【0118】
<イオン化合物I-14>
2-(2-Methyl-1H-imidazol-1-yl)ethanol(シグマ・アルドリッチ社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)9.2gをテトラヒドロフラン80.0gに溶解させた。そこへ、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させた臭化エチル(昭和化学社製)14.5gを室温で30分かけて滴下し、85℃で12時間加熱還流した。次に、反応溶液に水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール200mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を、純水100mlに溶解し、アニオン原料として、リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)38.2gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル100mlを加え、有機層を、イオン交換水80gを用いて3回洗浄した。次に、減圧下で酢酸エチルを留去して、イオン化合物I-14を得た。イオン化合物I-14は、下記式で表される化合物である。
【0119】
【化17】
【0120】
<イオン化合物I-15>
窒素雰囲気下、イミダゾール(日本合成化学社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)9.2gを、テトラヒドロフラン60.0gに溶解させた。そこへ、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させた2-ブロモエタノール(東京化成工業社製)60.7gを室温で30分かけて滴下した後、85℃で12時間加熱還流した。次いで、反応溶液に水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール200mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を純水200mlに溶解し、アニオン原料として、リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)69.6gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル200mlを加え、有機層を、イオン交換水120gを用いて3回洗浄した。次に、減圧下で酢酸エチルを留去して、イオン化合物I-15を得た。イオン化合物I-15は、下記式で表される化合物である。
【0121】
【化18】
【0122】
<イオン化合物I-16~I-19、I-27、I-28>
アニオン原料およびその配合量を表3に記載の通りに変更した以外は、イオン化合物I-15の合成と同様にして、イオン化合物I-16~I-19、I-27及びI-28を得た。
【0123】
【表3】
【0124】
<イオン化合物I-20>
窒素雰囲気下、(1H-Imidazol-2-yl)ethanol(シグマ・アルドリッチ社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)9.2gをテトラヒドロフラン60.0gに溶解させた。そこへ、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させた2-ブロモエタノール(東京化成工業社製)42.1gを室温で30分かけて滴下し、85℃で12時間加熱還流した。次いで、反応溶液に水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール200mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を純水200mlに溶解し、アニオン原料として、リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)48.3gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル200mlを加え、有機層を、イオン交換水120gを用いて3回洗浄した。次に、減圧下で酢酸エチルを留去して、イオン化合物I-20を得た。イオン化合物I-20は、下記式で表される化合物である。
【0125】
【化19】
【0126】
<イオン化合物I-21>
カチオン原料として、イミダゾール(東京化成工業社製)15.0gをジクロロメタン50.0gに溶解させ、ジクロロメタン50.0gに溶解させたエピクロロヒドリン(東京化成工業社製)44.9gを室温で30分かけて滴下し、6時間加熱還流した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、炭酸ナトリウム5質量%水溶液200mlを加えて30分撹拌した後、分液し、ジクロロメタン層を、イオン交換水120gを用いて2回洗浄した。次に、減圧下でジクロロメタンを留去して残留物を得た。
さらに、得られた残留物をアセトン50.0gに溶解させた後、イオン交換水150.0gに溶解させたアニオン原料:リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)69.6gを30分かけて滴下し、30℃で2時間攪拌した。得られた溶液を分液し、有機層を、イオン交換水50.0gを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下でアセトンを留去して、イオン化合物I-21を得た。イオン化合物I-21は、下記式で表される化合物である。
【0127】
【化20】
【0128】
<イオン化合物I-22>
(5-methylpyrazin-2-yl)methanol(シグマ・アルドリッチ社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)9.2gをテトラヒドロフラン80.0gに溶解させた。そこへ、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させたヨウ化メチル(東京化成工業社製)18.9gを室温で30分かけて滴下し、85℃で12時間加熱還流した。次に、反応溶液に水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール200mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を、純水100mlに溶解し、アニオン原料として、カリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(商品名:K-TFSM;セントラル硝子社製)59.8gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル100mlを加え、有機層を、イオン交換水80gを用いて3回洗浄した。次に、減圧下で酢酸エチルを留去して、イオン化合物I-22を得た。イオン化合物I-22は、下記式で表される化合物である。
【0129】
【化21】
【0130】
<イオン化合物I-23>
N,N’-BIS-(2-HYDROXYETHYL)-2,5-DIMETHYLPIPERAZINE(シグマ・アルドリッチ社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)9.2gをテトラヒドロフラン80.0gに溶解させた。そこへ、テトラヒドロフラン80.0gに溶解させたヨウ化メチル(東京化成工業社製)11.6gを室温で30分かけて滴下し、85℃で12時間加熱還流した。次に、反応溶液に水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール200mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を、純水100mlに溶解し、アニオン原料として、リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)23.4gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル100mlを加え、有機層を、イオン交換水80gを用いて3回洗浄した。次に、減圧下で酢酸エチルを留去して、イオン化合物I-23を得た。イオン化合物I-23は、下記式で表される化合物である。
【0131】
【化22】
【0132】
<イオン化合物I-24>
4-Pyridin-4-yl-butan-1-ol(シグマ・アルドリッチ社製)15.0gをアセトニトリル45.0gに溶解し、室温で4-ブロモ-1-ブタノール(東京化成工業社製)16.7gを30分かけて滴下した後、90℃で12時間加熱還流した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、減圧下でアセトニトリルを留去した。得られた濃縮物をジエチルエーテル30.0gにて洗浄し、上澄み液を分液により除去した。洗浄および分液操作を3回繰り返し、残留物を得た。さらに、得られた残留物をジクロロメタン110.0gに溶解させた後、イオン交換水40.0gに溶解させたアニオン原料:リチウム N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)31.4gを30分かけて滴下し、30℃で12時間攪拌した。得られた溶液を分液し、有機層を、イオン交換水80.0gを用いて3回洗浄した。続いて、減圧下でジクロロメタンを留去し、イオン化合物I-24を得た。イオン化合物I-24は、下記式で表される化合物である。
【0133】
【化23】
【0134】
<イオン化合物I-25>
2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルピロリジン(東京化成工業社製)15.0g、水素化ナトリウム60%流動パラフィン分散(東京化成工業社製)13.5gを、テトラヒドロフラン65.0gに溶解させた。次に、反応系を窒素雰囲気下とし、氷冷した。続いて、テトラヒドロフラン40.0gに溶解させた2-ブロモエタノール(東京化成工業社製)16.0gを30分かけて滴下した。反応溶液を12時間加熱還流した後、水100mlを加え、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール80mlを加え、室温で撹拌し、不溶物をセライトろ過により除いた後、再び減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物を、純水160mlに溶解し、アニオン原料として、リチウム N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)36.7gを加え、室温下で1時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム70mlを加え、炭酸ナトリウム5質量%水溶液40mlを加えて30分撹拌した後分液し、クロロホルム層に対して、イオン交換水50gを用いて3回洗浄操作を行った。次に、減圧下でクロロホルムを留去して、イオン化合物I-25を得た。イオン化合物I-25は、下記式で表される化合物である。
【0135】
【化24】
【0136】
<イオン化合物I-26>
アニオン原料を28.0gのカリウムN,N-ビス(フルオロスルホニル)イミド(商品名「K-FSI」;三菱マテリアル電子化成社製)に変更した以外は、イオン化合物I-25の合成と同様にして、イオン化合物I-26を得た。イオン化合物I-26は、下記式で表される化合物である。
【0137】
【化25】
【0138】
表4に、実施例で用いた各イオン化合物について、該イオン化合物が有する構造および各構造式中のR1~R9、Z1~Z17との関連を示す。
【0139】
【表4】
【0140】
<比較例用イオン化合物CI-1>
イオン化合物CI-1として、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学社製)をそのまま用いた。
<比較例用イオン化合物CI-2>
過塩素酸テトラブチルアンモニウム(東京化成工業社製)をそのまま用いた。
【0141】
<トナー供給ローラの作製>
図8に示す製造工程に沿って、トナー供給ローラを作製した。
軸体53は外径5mm、長さ272mmの鉄(材質名:SUM24)に無電解ニッケルメッキを施したものを用いた。成形型51はキャビティ内径13.35mm、キャビティ長220mmの円筒金型を用いた。成形型51と下駒52の離型処理にはフッ素系離型剤(商品名:フリリース650 株式会社ネオス製)を用いた。上駒56の離型処理にはフッ素系離型剤(商品名:フリリース310 株式会社ネオス製)を用いた。軸体53と成形型51と下駒52の予熱温度は50℃で行った。
下記材料(A)、(B)、(E)~(H)、(J)を配合し、液温30℃に調整し、注型機にて混合・撹拌して発泡材料を得た後、軸体を設置した下駒と型組みした成形型に所定量(2.6g)を注入した。
(A):イオン化合物I-1:1.0質量部
(B):ポリオールA(数平均分子量3100のポリエチレンプロピレンエーテルトリオール、商品名:アクトコールEP-550N;三井化学SKCポリウレタン社製:100.0質量部
(E):ポリイソシアネート混和物(NCO%=45、MDI=20%含有、商品名:コスモネートTM-20;三井化学SKCポリウレタン社製):23.9質量部
(F):シリコーン整泡剤(商品名:SRX274C、東レ・ダウコーニング社製):1.0質量部
(G):三級アミン触媒A(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルとジプロピレングリコールの混合物、商品名:TOYOCAT-ET、東ソー社製):0.3質量部
(H):アミン触媒B(商品名:TOYOCAT-L33、東ソー社製):0.2質量部
(J):発泡剤(水):1.4質量部
【0142】
上記発泡材料の注入は成形型内の軸体を上端位置で成形型の中心位置から注入側とは反対側に3mmずらして斜めに傾けた状態で行った。発泡材料を注入した後、成形型に上駒を嵌合させた状態にして、75℃で7分間加熱を行った後に上駒と下駒を外して脱型した。
以上の方法により、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン導電剤と、ポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、の反応物である架橋ウレタン樹脂を含む弾性層を備えたトナー供給ローラA-1を形成した。
【0143】
<架橋ウレタン樹脂の成分確認>
得られたA-1の架橋ウレタン樹脂中に、前記カチオン性の構造と、Z101からZ103のいずれかの構造とが存在するか否かを、固体13C-NMRを用いて確認した。
NMR測定の前に、架橋ウレタン樹脂をメチルエチルケトン(MEK)で洗浄し、MEKに溶解する低分子成分を除去した。MEKでの洗浄方法としては、架橋ウレタン樹脂を2.5g計量し、300gのMEKに22℃で70時間浸した後に、MEKを捨て、300gのMEKですすいだ後に、90℃で1時間乾燥した。
MEKで洗浄したトナー供給ローラA-1の架橋ウレタン樹脂を固体13C-NMRの測定にかけて、構造を調べた。固体13C-NMR測定は、超電導核磁気共鳴吸収装置(商品名:AvanceIII400、ブルカーバイオスピン社製)を用い、観測核13C、積算回数10000回、パルスシーケンスDD/MAS、試料回転数8kHzの条件で測定した。
トナー供給ローラA-1の架橋ウレタン樹脂中に、前記構造式(1)のカチオン性の構造と、前記構造式(Z101)の構造とを確認した。
【0144】
<トナー供給ローラA-2~A-54、比較用トナー供給ローラCA-1~CA-2>
材料(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)、(J)の配合量を、表5、6に記載の通りに変更した。
なお、材料(C)は、ポリオールB(平均官能基数3のポリオキシ-1,2-アルキレンポリオール、数平均分子量:6000、平均水酸基価:24mgKOH/g、商品名:アクトコールEP-950P;;三井化学SKCポリウレタン社製)である。
また、材料(D)は、ポリイソシアネート混和物(NCO%=40、MDI=50%含有、商品名:コスモネートTM-50;三井化学SKCポリウレタン社製)である。
【0145】
それ以外はトナー供給ローラA-1と同様にして、トナー供給ローラA-2~A-54、及び比較用トナー供給ローラCA-1~CA-2を作製した。また、各トナー供給ローラの架橋ウレタン樹脂中のカチオン構造の有無と、Z101~103の構造のうちのいずれかの構造の有無とを確認した。
表7に一覧を示す。
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
[トナーT-1の製造例]
(水系媒体1の調製工程)
撹拌機、温度計、還流管を具備した反応容器中にイオン交換水650.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0149】
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン :20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) :0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 :5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) :7.0部
以上を65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0150】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0151】
(重合・蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。
その後、反応容器の還流管を冷却管に付け替え、スラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行って未反応の重合性単量体を留去し、トナー母粒子分散液を得た。
【0152】
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
上記で得られたトナー母粒子分散液の温度を55℃に冷却したのち、有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま15分保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、60分間保持したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、更に240分保持してトナー粒子分散液を得た。
【0153】
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行い、トナー粒子1を得た。表7にトナー粒子1の製造の条件を示す。
【0154】
[トナー粒子2~8の製造方法]
表7に示す条件に変更した以外は、トナー粒子1と同様にしてトナー粒子2~8を得た。
【0155】
[比較用トナー粒子(トナー粒子C1)の製造方法]
有機ケイ素化合物の重合に関して、下記に示すように変更した以外はトナー粒子1と同様にして、比較用トナー粒子であるトナー粒子C1を得た。
(有機ケイ素化合物の重合)
ポリビニルアルコール1.0部をエタノール/水=1:1(質量比)の混合溶液20部に溶解した混合溶媒をトナー母粒子分散液に分散させて、次いで、ケイ素化合物として3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン20部を溶解させ、さらに5時間の攪拌を行って、トナー粒子内に3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランを膨潤させて内在させた。
次いで、温度を70℃にしたのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを9.5に調整した。10時間室温にて攪拌することによって、トナー粒子表面でゾルゲル反応を進行させて、トナー粒子C1を得た。
【0156】
[比較用トナー粒子(トナー粒子C2)の製造方法]
トナー粒子1の製造例で有機ケイ素化合物の重合を行わないことで、比較用トナー粒子であるトナー粒子C2を得た。
【0157】
トナー粒子1~トナー粒子8、トナー粒子C1はそのままトナーT-1~T-8、CT-1として評価に用いた。トナーCT-2及びトナーCT-3は比較用のトナー粒子C2を使用して以下のように製造し、トナーT-1と同様の方法で評価した。トナーの製造条件を表7に、トナーの物性を表8に示す。
【0158】
・トナーCT-2の作製
まず下記に示すように有機ケイ素微粒子Aを合成した。
反応容器にイオン交換水500gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.2gを添加して水溶液とした。この水溶液にメチルトリメトキシラン65g及びテトラエトキシラン50gを添加し、温度を13~15℃に保ちながら1時間加水分解反応を行い、更に20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2.5gを添加し、同温度で3時間加水分解反応を行った。約4時間でシラノール化合物を含有する透明な反応物を得た。
次いで、得られた反応物の温度を70℃に保持しながら5時間縮合反応を行って、有機ケイ素化合物からなる微粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液をメンブランフィルターを通じてろ過し、通過液状部を遠心分離機に供して白色微粒子を分離した。分離した白色微粒子を水洗し、150℃で5時間、熱風乾燥を行って有機ケイ素微粒子Aを得た。
有機ケイ素微粒子Aについて走査型電子顕微鏡による観察を行ったところ、この有機ケイ素微粒子Aは中空半球状体であり、画像解析を行い半球の長径及び短径の個数平均粒子径(μm)を算出すると、長径180nm及び短径80nmであった。
比較用のトナー粒子10の100部に、有機ケイ素微粒子Aを3.0部添加し、ヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速20m/sで混合し、そののち平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.5部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速20m/sで混合し、比較用のトナーCT-2を作製した。
【0159】
・トナーCT-3の作製
比較用のトナーCT-2の作製で有機ケイ素微粒子Aを用いたところを疎水性ゾルゲルシリカ(日本アエロジル社製:個数平均径80nm)を用い、ヘンシェルミキサー撹拌翼の周速20m/sを40m/sにした以外はトナーCT-2と同様にしてトナーCT-3を作製した。
【0160】
トナーT-1からトナーT-8、トナーCT-1からトナーCT-3までのトナーの製造条件を表7に、トナーの物性を表8に示す。
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
<実施例1>
レーザープリンター(商品名:LBP712Ci、キヤノン社製)用のシアントナープロセスカートリッジ(商品名:トナーカートリッジ040H(シアン)、キヤノン社製)のトナーを抜き取り、エアブローして内部を清掃した。次にトナーを抜き取り清掃したトナー容器に、実施例1で使用するトナーT-1を140g充填した。さらに前記プロセスカートリッジからトナー供給ローラを取り外して、代わりに実施例1のトナー供給ローラA-1を装填して実施例1で使用するプロセスカートリッジを得た。
【0164】
[現像装置としての性能評価]
現像装置の性能評価として、温度30℃、相対湿度80%の環境下における長時間稼働前後の画像カブリを評価した。長時間稼働によりトナー供給ローラとトナーとの連れ回り性が低下し、トナーの帯電量がばらつく。トナーの帯電量がばらつくと、帯電量の低すぎるトナーが生じ、画像上のカブリが増加する。
そして、本実施例1で使用するプロセスカートリッジを前記レーザープリンターに組み込み、温度32℃、相対湿度80%の環境中で1日放置してなじませた後、ベタ画像を1枚と、続いてベタ白評価画像を1枚出力し、ベタ白画像の出力中にプリンターを停止した。この時、感光体上に付着したトナーをテープ(商品名:CT18、ニチバン社製)ではがし取り、反射濃度計(商品名:TC-6DS/A、東京電色社製)にて反射率を測定した。テープの反射率を基準としたときの反射率の低下量(%)を測定し、これをカブリ値とした。
次に、シアン色で印字率0.5%の画像を80000枚連続して耐久印字テストとして出力した。その後、再度ベタ画像を1枚と、続いてベタ白評価画像を1枚出力し、再びベタ白画像の出力中にプリンターを停止した。そして再度感光体上のカブリ値を測定し、耐久後のカブリ値とした。
【0165】
<実施例2~54,比較例1,2>
表9、10に示すトナー供給ローラを用いた以外は実施例1と同様の操作をして、実施例2~54、比較例1と2に関して、現像装置としての評価を行った。結果を表9、10に示す。
【0166】
【表9】
【0167】
【表10】
【0168】
<実施例55~68、比較例3~8>
トナー供給ローラA-15と、トナー供給ローラA-9を使い、表11に示すようにトナーT-2~T-8、CT-1~CT-3を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例55~68、比較例3~8の評価を行った。
結果を表11に示す。
【0169】
【表11】
【0170】
表9、10より、トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を用いることで、長寿命カートリッジにおいても画像上のかぶりを良化することができることがわかった。
また、表9、10には各構造のイオンを固定したトナー供給ローラを使用した場合の耐久によるカブリの増加を記したが、イオンが固定されていると通電劣化が抑制され、耐久によるカブリの増加が抑制されていることがわかった。
【0171】
表11には様々なトナーとカチオン基を固定した架橋ウレタン樹脂の導電層を有するトナー供給ローラとを使用した場合の耐久によるカブリの増加を記した。個数平均粒径が4.0μm以上10.0μm以下であるトナーに所定の凸部が存在すると、耐久によるかぶりの増加が抑制されていることがわかった。すなわち、凸部となる有機ケイ素重合体の固着率が80%以上で、Lに対する、該凸部の幅wの総和Σwの割合(Σw/L)が、0.30以上0.95以下である、凸部を有するトナーを用いることにより、耐久によるカブリの増加が抑制されることがわかった。
【符号の説明】
【0172】
1 トナー供給ローラ
2 軸体
3 架橋ウレタン樹脂層
10 現像装置
11 トナー
12 トナー担持体ローラ
13 現像ブレード
14 トナー容器
20 プロセスカートリッジ
21 感光体(電子写真感光体)
42 トナー母粒子
43 トナー母粒子表面
44 凸部
w 凸部の幅
D 凸部の径
H 凸部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8