(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】固定具、固定方法、ケーブル組立体及び構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20240313BHJP
H01R 12/53 20110101ALI20240313BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20240313BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R12/53
H01R4/18 A
H01R43/00 Z
(21)【出願番号】P 2020005364
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】橋口 徹
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-139942(JP,A)
【文献】実開平03-118589(JP,U)
【文献】特表2001-510934(JP,A)
【文献】実公平07-049730(JP,Y2)
【文献】特開平11-204175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/50-12/58
H01R 24/38-24/50
H01R 9/05
H01R 4/18
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを基板に固定するための固定具であって、
前記ケーブルは、第1導体と第2導体とを有しており、
前記基板は、前記第1導体と前記第2導体とに夫々対応する第1基板固定部と第2基板固定部とを有しており、
前記固定具は、第1極部と、第2極部と、前記第1極部と前記第2極部とを連結する連結部とを有しており、
前記第1極部は、前記第1導体と前記第1基板固定部とを接続するものであり、前記第1導体に接続される第1接続部と、前記第1基板固定部に接続固定される第1固定部とを有しており、
前記第2極部は、前記第2導体と前記第2基板固定部とを接続するものであり、前記第2導体に接続される第2接続部と、前記第2基板固定部に接続固定される第2固定部とを有しており、
前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部の夫々は、前記基板を貫通する孔を有しており、
前記第1固定部及び前記第2固定部は、夫々、前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部の前記孔に挿入可能な形状であると共に、前記孔に挿入された後に変形させられて、前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に
半田付けを行うことなく接続固定され得る形状を有している
固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の固定具であって、
前記第1接続部及び前記第2接続部の夫々は、オープンバレル形状を有しており、
前記第1接続部及び前記第2接続部は、前記第1導体及び前記第2導体に夫々カシメられて接続され得るものである
固定具。
【請求項3】
請求項2に記載の固定具であって、
前記ケーブルは、中心導体と外部導体とを備える同軸ケーブルであり、
前記第1導体は、前記中心導体であり、
前記第2導体は、前記外部導体であり、
前記ケーブルは、前記第2導体を覆う外被をさらに備えており、
前記第2導体は、前記外被から部分的に露出する露出部を有しており、
前記第2接続部は、前記露出部と前記外被とにカシメられて接続され得るものである
固定具。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一つに記載の固定具であって、
前記連結部は、前記第1固定部と前記第2固定部とを連結している
固定具。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一つに記載の前記固定具を用いて前記ケーブルを前記基板に固定する固定方法であって、
前記第1導体及び前記第2導体に前記第1接続部及び前記第2接続部を夫々接続すると共に前記連結部を切断する工程と、
前記第1固定部及び前記第2固定部を前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に夫々接続固定する工程と、
を備えている固定方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の固定方法を実施している途中にできるケーブル組立体であって、
前記ケーブル組立体は、前記ケーブルと、前記第1極部と、前記第2極部とを備えており、
前記第1極部及び前記第2極部の夫々は、切断痕を有している
ケーブル組立体。
【請求項7】
請求項1から請求項
4までのいずれか一つに記載の前記固定具を用いて前記ケーブルを前記基板に固定する固定方法であって、
前記第1導体及び前記第2導体に前記第1接続部及び前記第2接続部を夫々接続する接続工程と、
前記第1固定部及び前記第2固定部を前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に夫々接続固定する固定工程と、
前記固定工程の後に、前記連結部を切断する切断工程と、
を備えている固定方法。
【請求項8】
請求項
5又は請求項
7に記載の方法により製造される構造体であって、
前記構造体は、前記ケーブルと、前記基板と、前記第1極部と、前記第2極部とを備えており、
前記第1極部及び前記第2極部の夫々は、切断痕を有している
構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関し、特にケーブルを基板に固定するための固定具に関する。また、本発明は、固定具を用いてケーブルを基板に固定する固定方法、その固定方法を実施する途中にできるケーブル組立体、及びその固定方法により製造される構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、同軸ケーブルを基板に固定するための固定具(同軸ケーブル用端子)を開示している。
【0003】
図11に示されるように、特許文献1に開示された固定具70は、同軸ケーブル(ケーブル)80の外部導体(第2導体)82に接続され、かつ基板90に接続固定される。同軸ケーブル80の中心導体(第1導体)84は、固定具70とは無関係に、基板90に接続固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された固定具70は、同軸ケーブル80の外部導体82と基板90との間を接続するためのものであり、中心導体84とは無関係である。そのため、この固定具70を用いて同軸ケーブル80を基板90に接続する場合、固定具70を基板90に接続固定する工程とは別に、中心導体84を加工する工程と、中心導体84を基板90に接続固定する工程とが必要である。このように、特許文献1の固定具70を用いる同軸ケーブル80を基板90に固定する方法は、その工程が複雑であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、ケーブルを基板に固定するための固定具であって、ケーブルを基板に固定する工程を簡略化することができる固定具を提供することを目的とする。また、本発明は、その固定具を用いてケーブルを基板に固定する固定方法を提供する。さらに、本発明は、その固定方法により製造されるケーブル組立体及び構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の固定具として、ケーブルを基板に固定するための固定具であって、
前記ケーブルは、第1導体と第2導体とを有しており、
前記基板は、前記第1導体と前記第2導体とに夫々対応する第1基板固定部と第2基板固定部とを有しており、
前記固定具は、第1極部と、第2極部と、前記第1極部と前記第2極部とを連結する連結部とを有しており、
前記第1極部は、前記第1導体と前記第1基板固定部とを接続するものであり、前記第1導体に接続される第1接続部と、前記第1基板固定部に接続固定される第1固定部とを有しており、
前記第2極部は、前記第2導体と前記第2基板固定部とを接続するものであり、前記第2導体に接続される第2接続部と、前記第2基板固定部に接続固定される第2固定部とを有している
固定具を提供する。
【0008】
また、本発明は、第2の固定具として、第1の固定具であって、
前記第1接続部及び前記第2接続部の夫々は、オープンバレル形状を有しており、
前記第1接続部及び前記第2接続部は、前記第1導体及び前記第2導体に夫々カシメられて接続され得るものである
固定具を提供する。
【0009】
また、本発明は、第3の固定具として、第2の固定具であって、
前記ケーブルは、中心導体と外部導体とを備える同軸ケーブルであり、
前記第1導体は、前記中心導体であり、
前記第2導体は、前記外部導体であり、
前記ケーブルは、前記第2導体を覆う外被をさらに備えており、
前記第2導体は、前記外被から部分的に露出する露出部を有しており、
前記第2接続部は、前記露出部と前記外被とにカシメられて接続され得るものである
固定具を提供する。
【0010】
また、本発明は、第4の固定具として、第1から第3の固定具のいずれかであって、
前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部の夫々は、前記基板を貫通する孔を有しており、
前記第1固定部及び前記第2固定部は、夫々、前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部の前記孔に挿入可能な形状であると共に、前記孔に挿入された後に変形させられて、前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に接続固定され得る形状を有している
固定具を提供する。
【0011】
また、本発明は、第5の固定具として、第1から第4の固定具のいずれかであって、
前記連結部は、前記第1固定部と前記第2固定部とを連結している
固定具を提供する。
【0012】
また、本発明は、第1の固定方法として、第1から第5の固定具のいずれかを用いて前記ケーブルを前記基板に固定する固定方法であって、
前記第1導体及び前記第2導体に前記第1接続部及び前記第2接続部を夫々接続すると共に前記連結部を切断する工程と、
前記第1固定部及び前記第2固定部を前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に夫々接続固定する工程と、
を備えている固定方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、ケーブル組立体として、第1の固定方法を実施している途中にできるケーブル組立体であって、
前記ケーブル組立体は、前記ケーブルと、前記第1極部と、前記第2極部とを備えており、
前記第1極部及び前記第2極部の夫々は、切断痕を有している
ケーブル組立体を提供する。
【0014】
また、本発明は、第2の固定方法として、第1から第5の固定具のいずれかを用いて前記ケーブルを前記基板に固定する固定方法であって、
前記第1導体及び前記第2導体に前記第1接続部及び前記第2接続部を夫々接続する接続工程と、
前記第1固定部及び前記第2固定部を前記第1基板固定部及び前記第2基板固定部に夫々接続固定する固定工程と、
前記固定工程の後に、前記連結部を切断する切断工程と、
を備えている固定方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、構造体として、第1又は第2の固定方法により製造される構造体であって、
前記構造体は、前記ケーブルと、前記基板と、前記第1極部と、前記第2極部とを備えており、
前記第1極部及び前記第2極部の夫々は、切断痕を有している
構造体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固定具において、第1極部と第2極部とは、連結部によって連結されている。この構成により、第1極部のケーブルへの取り付けと、第2極部のケーブルへの取り付けとを同一の工程で行うことができる。換言すると、第1極部の第1接続部をケーブルの第1導体へ接続する工程と、第2極部の第2接続部をケーブルの第2導体へ接続する工程とを、同時に行うことができる。
【0017】
また、本発明の固定具において、第1極部と第2極部とは、基板の第1基板固定部と第2基板固定部とに対応する第1固定部と第2固定部とを夫々有している。この第1固定部と第2固定部とを利用することで、第1極部の基板への接続固定と、第2極部の基板への接続固定とを同一の工程として行うことができる。したがって、第1極部と第2極部とがケーブルの第1導体と第2導体とに夫々接続されているならば、ケーブルの第1導体を基板へ接続固定する工程と、ケーブルの第2導体を基板へ接続固定する工程とを、同時に行うことができる。
【0018】
以上のように、本発明の固定具を用いることによって、ケーブルの第1導体の基板への固定と、ケーブルの第2導体の基板への固定とは、同一の工程により同時に行うことできる。これにより、ケーブルを基板に固定する工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態による構造体を示す上面斜視図である。
【
図4】
図3の構造体に含まれるケーブル組立体の組立工程を説明するための図であって、ケーブル及び固定具を示す上面斜視図である。固定具は、未だケーブルに取り付けられておらず、キャリアと一体のままである。
【
図5】
図4のケーブル及び固定具を示す下面斜視図である。
【
図6】
図4のケーブル及び固定具を示す別の上面斜視図である。ケーブルは固定具の上に載置されているが、未だ固定具に固定されていない。
【
図7】
図4の固定具を示す平面図である。キャリアは、固定具から切断除去されている。
【
図8】
図3の構造体の組立工程を説明するための上面斜視図である。ケーブル組立体は、基板と組み合わされている。座金は、ケーブル組立体と組み合わされていない。
【
図9】
図3の構造体の組立工程を説明するための下面斜視図である。ケーブル組立体は、基板と組み合わされている。座金は、ケーブル組立体と組み合わされていない。
【
図10】
図9に示される工程に続く工程を示す別の下面斜視図である。座金は、第1固定部及び第2固定部と組み合わされている。第1固定部及び第2固定部は、未だ変形加工されていない。
【
図11】特許文献1に記載された固定具(同軸ケーブル用端子)を用いて同軸ケーブルを基板に固定した状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3を参照すると、本発明の一実施の形態による構造体10は、ケーブル組立体20と、基板50と、座金60とを有している。
【0021】
図3から理解されるように、ケーブル組立体20は、ケーブル30と、第1極部42と、第2極部44とを有している。ケーブル30は、第1導体32と第2導体36とを有している。基板50は、第1導体32に対応する第1基板固定部52と、第2導体36に対応する二つの第2基板固定部54とを有している。第1極部42は、ケーブル30の第1導体32と基板50の第1基板固定部52とを接続するものである。また、第2極部44は、ケーブル30の第2導体36と基板50の第2基板固定部54とを接続するものである。
【0022】
図4及び
図5から理解されるように、本実施の形態において、ケーブル30は同軸ケーブルである。詳しくは、ケーブル30は、同心状に配置された、中心導体(第1導体)32と、絶縁体34と、外部導体(第2導体)36と、外被38とを備えている。但し、本発明はこれに限られない。ケーブル30は、二芯ケーブルでもよい。換言すると、ケーブル30は、第1導体32と第2導体36とを有していればよい。本実施の形態において、中心導体32は複数の導線からなる。絶縁体34は、中心導体32を構成する複数の導線の周囲を覆い、中心導体32と外部導体36との間を絶縁している。外部導体36は複数の導線からなり、絶縁体34の周囲を覆うように配置されている。外被38は、外部導体36を構成する複数の導体の周囲を覆っている。
【0023】
図4及び
図5に示されるように、ケーブル30の中心導体32は部分的に外部に露出している。詳しくは、中心導体32の先端部321は、外部に露出している。また、外部導体36も部分的に外被38から露出している。詳しくは、外部導体36の先端部(露出部)361は、前後方向において、中心導体32の先端部321よりも後方に位置し、外部に露出している。なお、本実施の形態において、前後方向はY方向である。-Y方向が前方であり、+Y方向が後方である。
【0024】
図4及び
図5から理解されるように、第1極部42及び第2極部44の夫々は、固定具40の一部である。固定具40は、単一の金属板からなるものであり、キャリア48と一体に形成される。
【0025】
図7を参照すると、固定具40は、第1極部42と、第2極部44と、二つの連結部46とを有している。連結部46の夫々は、第1極部42と第2極部44とを連結している。連結部46は、ケーブル組立体20の組立完了までに、又は構造体10の組立完了までに切断除去される。
図3から理解されるように、本実施の形態において、連結部46は、ケーブル組立体20の組立完了時までに切断除去される。連結部46が切断除去された結果、第1極部42及び第2極部44には、切断痕427及び切断痕447が夫々残されている。
【0026】
図7に示されるように、第1極部42は、第1接続部421と、第1固定部423と、第1連接部425とを有している。後述するように、第1接続部421は第1導体32(
図3参照)に接続され、第1固定部423は第1基板固定部52(
図3参照)に接続固定される。第1連接部425は、第1接続部421と第1固定部423とを接続している。また、第2極部44は、第2接続部441と、二つの第2固定部443と、第2連接部445とを有している。後述するように、第2接続部441は第2導体36(
図3参照)に接続され、第2固定部443は第2基板固定部54(
図3参照)に夫々接続固定される。第2連接部445は、第2接続部441と第2固定部443とを接続している。本実施の形態において、第2極部44は、二つの第2固定部443を有しているが、本発明はこれに限られない。第2固定部443の数は、一つでもよい。
【0027】
図4に示されるように、固定具40の第1極部42の第1接続部421は、オープンバレル形状を有している。また、固定具40の第2極部44の第2接続部441は、夫々オープンバレル形状の前部451と後部453とを有している。
図6から理解されるように、第1接続部421は、中心導体32の先端部321に対応している。また、第2接続部441の前部451は、外部導体36の先端部361に対応している。第2接続部441の後部453は、先端部361の近傍の外被38に対応している。
【0028】
図7に示されるように、本実施の形態において、固定具40の連結部46は、第2固定部443に夫々対応している。連結部46の夫々は、第1固定部423と、対応する第2固定部443とを連結している。但し、本発明はこれに限られない。連結部46は、第1極部42と第2極部44とを連結していればよく、第1極部42のどの部分を第2極部44のどの部分に連結していてもよい。また、連結部46の数は、一つでもよい。しかしながら、連結部46の数は二つの方が、組立工程中の予期せぬ外力による固定具40の変形を防止又は抑制する効果が大きい。
【0029】
図3から理解されるように、固定具40の第1接続部421は、ケーブル30の中心導体32の先端部321にカシメられ接続される。また、第2接続部441は、ケーブル30の外部導体36と外被38とにカシメられ接続される。詳しくは、第2接続部441の前部451は、ケーブル30の外部導体36の先端部361にカシメられ接続される。第2接続部441の後部453は、ケーブル30の外被38で覆われた部分にカシメられ固定される。
【0030】
図3に示されるように、基板50には、第1基板固定部52と、二つの第2基板固定部54とが設けられている。第1基板固定部52は、固定具40の第1固定部423に対応している。第2基板固定部54は、固定具40の第2固定部443に夫々対応している。第1基板固定部52は、基板50を上下方向に貫通する孔521と、接続パターン523とを有している。接続パターン523は、孔521を囲うように、基板50の表面にリング状に形成されている。接続パターン523には、基板50の表面上に形成された配線等(図示せず)が接続されている。同様に、第2基板固定部54の夫々は、基板50を上下方向に貫通する孔541と、接続パターン543とを有している。接続パターン543の夫々は、対応する孔541を囲うように基板50の表面にリング状に形成されている。接続パターン543の夫々には、基板50の表面上に形成された配線等(図示せず)が接続されている。なお、本実施の形態において、上下方向はZ方向である。
【0031】
図8及び
図9から理解されるように、固定具40の第1固定部423は、第1基板固定部52の孔521に少なくとも部分的に挿入可能な形状を有している。同様に、固定具40の第2固定部443は、第2基板固定部54の孔541に少なくとも部分的に挿入可能な形状を有している。また、
図10に加え
図1を参照すると、第1固定部423は、孔521に挿入された後に変形させられて、第1基板固定部52に接続固定され得る形状を有している。同様に、第2固定部443は、孔541に挿入された後に変形させられて、第2基板固定部54に接続固定され得る形状を有している。
【0032】
詳しくは、
図5から理解されるように、本実施の形態において、第1固定部423及び第2固定部443の夫々はハトメ形状を有している。より詳しくは、第1固定部423は、円筒形の胴部431と、胴部431の上端から外周方向へ延びるリング状の鍔部433とを有している。同様に、第2固定部443は、円筒形の胴部455と、胴部455の上端から外周方向へ延びるリング状の鍔部457とを有している。本実施の形態において、第1固定部423と第2固定部443とは同一のサイズを有している。しかしながら、第1固定部423及び第2固定部443は、互いに異なるサイズを有していてもよい。
【0033】
図3、
図8及び
図9から理解されるように、固定具40の第1固定部423の胴部431の外径は、第1基板固定部52の孔521の内径よりも僅かに小さい。また、第1固定部423の鍔部433の外径は、第1基板固定部52の孔521の内径よりも大きい。同様に、固定具40の第2固定部443の胴部455の外径は、第2基板固定部54の孔541の内径よりも僅かに小さく、鍔部457の外径は、第2基板固定部54の孔541の内径よりも大きい。したがって、第1固定部423の胴部431は、第1基板固定部52の孔521に挿入可能である。そして、第1固定部423の胴部431が第1基板固定部52の孔521に挿入されると、第1固定部423の鍔部433は、接続パターン523に接触可能である。同様に、第2固定部443の胴部455は、第2基板固定部54の孔541に挿入可能である。そして、第2固定部443の胴部455が第2基板固定部54の孔541に挿入されると、第2固定部443の鍔部457は、接続パターン543に接触可能である。
【0034】
図9及び
図10に示されるように、座金60は、リング形状を有している。座金60は、第1固定部423及び第2固定部443に夫々対応している。座金60の内径は、対応する第1固定部423の胴部431又は第2固定部443の胴部455の外径よりも僅かに大きい。これにより、
図10に示されるように、座金60に胴部431又は胴部455を挿入することが可能である。
【0035】
図2から理解されるように、第1固定部423の胴部431及び第2固定部443の胴部455の夫々は、対応する座金60に挿入された後、変形させられる。これにより、第1固定部423及び第2固定部443は、基板50に接続固定される。このとき、第1固定部423の鍔部433は、基板50の接続パターン523と接触接続される。また、第2固定部443の鍔部457は、基板50の接続パターン543に接触接続される。但し、本発明はこれに限られない。座金60を用いることなく、第1固定部423の胴部431及び第2固定部443の胴部455を変形させて基板50に接続固定するようにしてもよい。
【0036】
以下、固定具40(
図6参照)を用いてケーブル30(
図6参照)を基板50(
図3参照)に固定する固定方法について説明する。
【0037】
まず、ケーブル30(
図6参照)と固定具40(
図6参照)とを用意する。ケーブル30は、
図6に示されるように、その一端において中心導体32と外部導体36とを夫々所定長さだけ予め露出させおく。次に、
図6に示されるように、用意した固定具40に対して、ケーブル30を配置する。続いて、第1プレス装置(図示せず)を用いて、第1接続部421と第2接続部441とをカシメると同時に、連結部46を切断除去する。併せて、キャリア48から固定具40(第2極部44)を切り離す。これにより、固定具40の第1極部42と第2極部44とは、同一の工程により同時にケーブル30に取り付けられる。詳しくは、第1接続部421は中心導体32に接続され、第2接続部441の前部451は外部導体36に接続される。また、第2接続部441の後部453は、ケーブル30を外被38の上から把持する。さらに、第1極部42と第2極部44とは、互いに分離される。また、キャリア48から第2極部44が分離される。こうして、第1極部42が第1導体(中心導体)32に接続され、第2極部44が第2導体(外部導体)36に接続された、ケーブル組立体20(
図3参照)が完成する。
【0038】
次に、
図8及び
図9に示すように、第1固定部423の胴部431と第2固定部443の胴部455とを第1基板固定部52の孔521と第2基板固定部54の孔541とに夫々挿入する。
図9から理解されるように、第1固定部423の胴部431と第2固定部443の胴部455の夫々の上下方向におけるサイズは、基板50の上下方向におけるサイズ(厚み)よりも大きい。その結果、基板50の裏面において、第1固定部423の胴部431は、部分的に第1基板固定部52の孔521から突出し、第2固定部443の胴部455の夫々は、対応する第2基板固定部54の孔541から突出する。
【0039】
続いて、
図10に示されるように、基板50の裏面から突出した第1固定部423の胴部431と第2固定部443の胴部455とに座金60を装着する。
図10から理解されるように、第1固定部423の胴部431と第2固定部443の胴部455の夫々は、上下方向において、対応する座金60から部分的に突出する長さを有している。
【0040】
次に、
図10に加えて
図2から理解されるように、第2プレス装置(図示せず)を用いて、第1固定部423の胴部431と第2固定部443の胴部455とを部分的に変形させる。これにより、
図1及び
図2に示されるように、第1固定部423及び第2固定部443が第1基板固定部52及び第2基板固定部54に夫々接続固定される。こうして、ケーブル組立体20が基板50に接続固定された構造体10が完成する。
【0041】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態の固定具40は、ケーブル30を基板50に固定するために使用されるものである。本実施の形態によれば、固定具40をケーブル30に取り付ける工程により、ケーブル30の第1導体32と第2導体36とに夫々第1極部42と第2極部44とを同一の工程で同時に取り付けることができる。また、第1極部42と第2極部44とを基板50に取り付ける工程により、第1導体32と第2導体36とを夫々第1基板固定部52及び第2基板固定部54に同一の工程で同時に接続固定することができる。このように本実施の形態によれば、第1導体32の基板50への接続固定と、第2導体36の基板50への接続固定とを同一の工程で同時に行うことができる。こうして、本実施の形態の固定具40を用いることで、ケーブル30の基板50への取り付け工程を簡略化することができる。しかも、半田付けを行わずにケーブル30を基板50に接続固定することができるので、本発明は、耐熱性の低い材料からなる部分を含むケーブル30及び基板50に対して用いることができる。
【0042】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態において、連結部46の切断除去は、第1導体32及び第2導体36に第1接続部421及び第2接続部441を夫々接続する工程において行われている。しかしながら、連結部46の切断除去は、第1固定部423及び第2固定部443を第1基板固定部52及び第2基板固定部54に夫々接続固定する工程の後に行われてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態において、固定具40は、二つの極部、即ち第1極部42と第2極部44とを有している。しかしながら、固定具40は、ケーブル30の構成に応じて三つ以上の極部を有していてもよい。その場合、極部は、連結部46と同様の連結部により互いに接続される。この構成によれば、本発明の固定具40は、例えば、中心導体32として複数の心線を有する多心ケーブルにも適用することが可能である。
【0044】
また、上記実施の形態において、第1極部42及び第2極部44は、半田付けを行うことなく基板50に固定されている。しかしながら、ケーブル30及び基板50が耐熱性の高い材料で構成されているならば、第1固定部423及び第2固定部443は、第1基板固定部52及び第2基板固定部54に夫々半田付けされてもよい。その場合、第1固定部423、第2固定部443、第1基板固定部52及び第2基板固定部54の夫々の構成を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 構造体
20 ケーブル組立体
30 ケーブル(同軸ケーブル)
32 第1導体(中心導体)
321 先端部
34 絶縁体
36 第2導体(外部導体)
361 先端部(露出部)
38 外被
40 固定具
42 第1極部
421 第1接続部
423 第1固定部
425 第1連接部
427 切断痕
431 胴部
433 鍔部
44 第2極部
441 第2接続部
443 第2固定部
445 第2連接部
447 切断痕
451 前部
453 後部
455 胴部
457 鍔部
46 連結部
48 キャリア
50 基板
52 第1基板固定部
521 孔
523 接続パターン
54 第2基板固定部
541 孔
543 接続パターン
60 座金