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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】コンクリート打込み管理システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240313BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240313BHJP
   B28C 7/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E04G21/02 ESW
G06Q50/08
B28C7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020006299
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113432
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】村松 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】竹本 喜昭
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-046086(JP,A)
【文献】特開2011-143724(JP,A)
【文献】特開2010-285748(JP,A)
【文献】特開2003-341413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04G 21/00
G06Q 50/08
B28C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、
フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された発信手段と、前記コンクリートプラントから前記打込み現場内の前記コンクリート打込み機械または前記器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、前記各発信手段との間で無線通信を行う受信手段と、前記各発信手段と前記受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備え
前記時間情報は、プラント出発時刻、プラント帰着時刻、現場到着時刻、現場退場時刻、打込み開始時刻、打込み完了時刻を含み、
前記プラント出発時刻は、前記コンクリートプラントのミキサー付近に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信強度が低下あるいは通信が切断する時刻、または、前記コンクリートプラントの入場口に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が接続された時刻であり、
前記プラント帰着時刻は、前記運搬車が前記打込み現場から前記コンクリートプラントへ戻り、前記コンクリートプラントのミキサー付近または入場口に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が再度接続された時刻であり、
前記現場到着時刻は、前記打込み現場の入場口に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が接続された時刻であり、
前記現場退場時刻は、コンクリート排出後、前記運搬車が前記打込み現場の入場口を退場する際に、前記打込み現場の入場口に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が再度接続された時刻であり、
前記打込み開始時刻は、前記コンクリート打込み機械または前記器具に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が接続される時刻であり、
前記打込み完了時刻は、コンクリート排出後、前記運搬車が前記コンクリート打込み機械または前記器具から離れて、前記コンクリート打込み機械または前記器具に設置した前記発信手段と前記受信手段との通信が切断される時刻であることを特徴とするコンクリート打込み管理システム。
【請求項2】
コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、
フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された受信手段と、前記コンクリートプラントから前記打込み現場内の前記コンクリート打込み機械または前記器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、前記各受信手段との間で無線通信を行う発信手段と、前記発信手段と前記各受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備え
前記時間情報は、プラント出発時刻、プラント帰着時刻、現場到着時刻、現場退場時刻、打込み開始時刻、打込み完了時刻を含み、
前記プラント出発時刻は、前記コンクリートプラントのミキサー付近に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信強度が低下あるいは通信が切断する時刻、または、前記コンクリートプラントの入場口に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が接続された時刻であり、
前記プラント帰着時刻は、前記運搬車が前記打込み現場から前記コンクリートプラントへ戻り、前記コンクリートプラントのミキサー付近または入場口に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が再度接続された時刻であり、
前記現場到着時刻は、前記打込み現場の入場口に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が接続された時刻であり、
前記現場退場時刻は、コンクリート排出後、前記運搬車が前記打込み現場の入場口を退場する際に、前記打込み現場の入場口に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が再度接続された時刻であり、
前記打込み開始時刻は、前記コンクリート打込み機械または前記器具に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が接続される時刻であり、
前記打込み完了時刻は、コンクリート排出後、前記運搬車が前記コンクリート打込み機械または前記器具から離れて、前記コンクリート打込み機械または前記器具に設置した前記受信手段と前記発信手段との通信が切断される時刻であることを特徴とするコンクリート打込み管理システム。
【請求項3】
前記運搬車に設置される前記発信手段に作用する加速度を検出するための加速度検出手段をさらに備え、
前記記録手段は、前記発信手段と前記受信手段の間の通信状態と、前記加速度検出手段で検出された加速度に応じて、前記時間情報を記録することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート打込み管理システム。
【請求項4】
記録した前記時間情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のコンクリート打込み管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打込み管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの打込み作業に使用するコンクリートは、コンクリートプラントで練り混ぜられ、運搬車にて現場まで運搬される。運搬されたコンクリートは、コンクリートポンプ車やバケット等を使用して目的の箇所に打ち込まれる。フレッシュコンクリートの運搬時間は、JIS A 5308において、練混ぜを開始してから運搬車が荷下ろし地点に到着するまでの時間と定義されており、その時間は原則1.5時間以内と規定されている。また、JASS5や土木学会のコンクリート標準示方書では、練り混ぜてから打ち終わるまでの時間の限度が規定されている。
【0003】
コンクリート製造者は、現場へ納入するコンクリートに対して、運搬車1台ごとに納入書を発行し、施工者に提出する義務がある。コンクリートの運搬時間は納入書に記載される納入の発着時刻の差にて確認されている。さらに、打込みまでの時間は、現場係員が目視で確認し記録をとることで管理されている。このような管理方法では、全ての納入書の管理に多大な労力を要する。また、打込み完了の管理は目視によるため、記録の漏れが発生するおそれがある。
【0004】
こうした問題を解決するための従来のコンクリートの打込み管理方法として、作業端末を利用したコンクリート打設管理方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1は、コンクリートプラントの出荷作業端末、現場の到着作業端末、荷下ろし作業端末、打設作業端末といった複数の端末に対して、それぞれの担当者が各作業の時刻を入力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-35628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1は、これまでの納入書での管理を端末による管理に代替したものであり、各担当者の時刻データの入力手間を要する。このため、人による時刻データの入力手間を減らすことのできる技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、人による時刻データの入力手間を減らすことができるコンクリート打込み管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンクリート打込み管理システムは、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された発信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各発信手段との間で無線通信を行う受信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムは、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された受信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各受信手段との間で無線通信を行う発信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムは、上述した発明において、運搬車に設置される発信手段に作用する加速度を検出するための加速度検出手段をさらに備え、記録手段は、各発信手段と受信手段の間の通信状態と、加速度検出手段で検出された加速度に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムは、上述した発明において、記録した時間情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート打込み管理システムによれば、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された発信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各発信手段との間で無線通信を行う受信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えるので、人による時間情報の入力手間を減らすことができ、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができるという効果を奏する。また、全ての運搬車に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された受信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各受信手段との間で無線通信を行う発信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えるので、人による時間情報の入力手間を減らすことができ、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができるという効果を奏する。また、全ての運搬車に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、運搬車に設置される発信手段に作用する加速度を検出するための加速度検出手段をさらに備え、記録手段は、各発信手段と受信手段の間の通信状態と、加速度検出手段で検出された加速度に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録するので、打込みに移行する際の運搬車のドラムの回転変化を加速度で検出することで、打込みに関する時間情報を確実に記録することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、記録した時間情報を出力する出力手段をさらに備えるので、例えば現場係員の持つ端末などの出力手段で時間情報の記録を迅速かつ簡易に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係るコンクリート打込み管理システムの実施の形態1を示す概要図である。
図2図2は、現場係員の持つ端末での情報出力例を示す図である。
図3図3は、本発明に係るコンクリート打込み管理システムの実施の形態2を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るコンクリート打込み管理システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1を説明する。
図1に示すように、アジテータ車のような運搬車10によってコンクリートプラント12から打込み現場14にコンクリートを運搬した後、コンクリートポンプ車18を用いてポンプ圧送によりコンクリートを打込む場合を例にとり説明する。なお、図1の例では運搬車5台を使用しているが、本発明はこれに限るものではない。
【0019】
本実施の形態1に係るコンクリート打込み管理システム100は、コンクリートプラント12、打込み現場14の入場口16、打込み現場14内に配置されたコンクリートポンプ車18(コンクリート打込み機械または器具)の各所に設置したビーコン1~3(発信手段)と、コンクリートの各運搬車10に設置した端末20(受信手段。以下、運搬車端末という。)と、サーバー22(記録手段)と、現場係員が持つ端末24(以下、係員端末という。)を備える。
【0020】
ビーコン1~3は、近くの運搬車端末20との間で各種情報を無線通信するビーコンであり、例えば光ビーコン、電波ビーコンなどで構成される。ビーコン1は、コンクリートプラント12内で運搬車端末20との通信が接続できればどこに設置してもよく、例えばプラント12の入場口、ミキサー直下等のコンクリートを運搬車10に積み込む場所などに設置することができる。ビーコン2は、打込み現場14の入場口16のゲートに設置する。ビーコン3は、ポンプ車18のホッパーに設置する。なお、各ビーコン1~3の設置場所はこれらに限るものではない。
【0021】
運搬車端末20は、各ビーコン1~3およびサーバー22と無線通信可能なタブレット端末で構成される。運搬車端末20は、各ビーコン1~3およびサーバー22と接続できれば、運搬車10のどこに設置してもよい。
【0022】
係員端末24は、サーバー22と無線通信可能なタブレット端末で構成され、その表示画面が本発明の出力手段として機能する。係員端末24は、サーバー22と接続できればいかなる場所でもよい。サーバー22は、運搬車端末20と係員端末24から接続できれば、どこに設置してもよく、例えば現場事務所やクラウド上に設置してもよい。
【0023】
このコンクリート打込み管理システム100は、各ビーコン1~3と運搬車端末20との間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する。各時間情報は、運搬車端末20を介してサーバー22に記録される。次に、各ビーコン1~3と運搬車端末20の通信記録データから得られる時間情報の一例について説明する。
【0024】
(a)ビーコン1と運搬車端末20との通信記録:運搬車10のプラント出発時刻とプラント帰着時刻
ビーコン1をミキサー付近に設置する場合、コンクリートの練混ぜ中、運搬車10はミキサー直下にて待機しており、この間は常時通信が接続された状態となる。練混ぜ完了後、運搬車10にコンクリートが投入され、運搬車10が発車することでビーコン1と運搬車端末20の距離が離れ、通信強度が低下あるいは通信が切断する。プラント出発時刻は、この通信強度の低下あるいは通信切断のどちらの時刻を指定してもよい。プラント12の入場口にビーコン1を設置する場合は、運搬車端末20との通信が接続された時刻をプラント出発時刻として記録する。一方、運搬車10が打込み現場14からプラント12へ戻り、運搬車端末20とビーコン1との通信が再度接続された時刻をプラント帰着時刻として記録する。
【0025】
(b)ビーコン2と運搬車端末との通信記録:現場到着時刻と退場時刻
ビーコン2を打込み現場14の入場口16のゲートに設置する場合、ビーコン2と運搬車端末20との通信が接続された時刻を現場到着時刻として記録する。コンクリートの排出後、打込み現場14の入場口16を退場する際に運搬車端末20とビーコン2の通信が再度接続された時刻を現場退場時刻として記録する。
【0026】
(c)ビーコン3と運搬車端末との通信記録:コンクリートの打込み開始および完了時刻
ビーコン3をポンプ車18のホッパー付近に設置する場合、運搬車10がコンクリートをポンプ車18へ排出するために待機場所からポンプ車18に近接すると、ビーコン3と運搬車端末20の通信が接続される。この接続開始時刻をその運搬車10に積載されたコンクリートの打込み開始時刻として記録する。コンクリート排出後、運搬車10は即座に移動しポンプ車18から離れていくため通信が切断される。この通信切断時刻を打込み完了時刻として記録する。
【0027】
なお、待機場所がポンプ車18の位置からそれほど離れていない場合、待機場所においても通信が接続される可能性がある。その場合、打込み開始/完了時刻はビーコン3と運搬車端末20の通信強度によって判定できる。例えば、事前に、運搬車端末20とビーコン3の距離とその通信強度の関係を取得しておき、ポンプ車18と運搬車10が近接状態にあることを判定するための閾値を決定しておく。そして、ビーコン3と運搬車端末20の通信強度がその閾値以上になった時刻を打込み開始時刻として記録する。一方、運搬車10が移動してビーコン3と運搬車端末20の通信強度が低下し、閾値を下回った時刻を打込み完了時刻として記録する。
【0028】
ビーコン1~3と運搬車端末20の通信記録データは、運搬車端末20からサーバー22に蓄積される。サーバー22に蓄積された通信記録データは、現場係員の持つ係員端末24に出力することができる。係員端末24への出力例を図2に示す。
【0029】
係員端末24では、次の項目を演算処理して出力表示してもよい。例えば、運搬車番号(各運搬車10に割り振られた車番号(ナンバープレートでも可))、運搬車台数(打ち込み現場14に到着する運搬車10の台数)、現場到着予定時刻(予め作成した打設計画における、運搬車10の現場到着予定時刻)、プラント出発時刻、帰着時刻(上記の(a)を参照)、現場到着時刻、退場時刻(上記の(b)を参照)、打込み開始時刻、打込み完了時刻(上記の(c)を参照)、運搬時間(各運搬車10のプラント出発から現場到着までに要した時間)、打込み許容時刻(各運搬車10の打込み完了の許容時刻)、次回プラント出発可能時刻(プラント12へ帰着した運搬車10が、次にコンクリートを積載し、プラント12を出発できる時刻)、現場到着遅延時間(運搬車10の現場到着予定時刻と実際の現場到着時刻の差)などである。
【0030】
なお、プラント12から打込み現場14における運搬車10の位置情報の取得方法は、人工衛星からの測位用データを用いて位置情報を取得する周知の運行管理システムを活用することができる。
【0031】
本実施の形態1によれば、各ビーコン1~3と運搬車端末20との間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録するので、人による時間情報の入力手間を減らすことができる。したがって、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができる。また、全ての運搬車10に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。また、交通渋滞や現場でのトラブル等で打込みが遅れ、許容時間内での運搬や打込みが難しくなる場合にその情報を迅速かつ簡易に把握することができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。
本実施の形態2に係るコンクリート打込み管理システムは、上記の実施の形態1において、発信手段(ビーコン1~3)と受信手段(運転車端末20)を入れ替えたものに相当する。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態2に係るコンクリート打込み管理システム200は、コンクリートプラント12、打込み現場14の入場口16、打込み現場14内に配置されたコンクリートポンプ車18の各所に設置した受信用の端末1A~3A(受信手段。以下、受信端末という。)と、コンクリートの各運搬車10に設置した加速度センサー付きビーコン20A(発信手段。以下、単にビーコンということがある。)と、サーバー22と、現場係員が持つ係員端末24を備える。
【0034】
受信端末1A~3Aは、ビーコン20Aおよびサーバー22と無線通信可能なタブレット端末で構成される。受信端末1Aは、コンクリートプラント12内でビーコン20Aおよびサーバー22との通信が接続できればどこに設置してもよく、例えばプラント12の入場口、ミキサー直下等のコンクリートを運搬車10に積み込む場所などに設置することができる。受信端末2Aは、打込み現場14の入場口16のゲートに設置する。受信端末3Aは、ポンプ車18のホッパーに設置する。なお、各受信端末1A~3Aの設置場所はこれらに限るものではない。
【0035】
係員端末24は、サーバー22と無線通信可能なタブレット端末で構成され、その表示画面が本発明の出力手段として機能する。係員端末24は、サーバー22と接続できればいかなる場所でもよい。サーバー22は、受信端末1A~3Aと係員端末24から接続できれば、現場事務所でもクラウド上でも、どこに設置してもよい。
【0036】
ビーコン20Aは、近くの受信端末1A~3Aとの間で各種情報を無線通信するビーコンであり、例えば光ビーコン、電波ビーコンなどで構成され、加速度検出手段としての加速度センサーを有する。ビーコン20Aは、運搬車10に備わるドラムであればどこに設置してもよい。ドラムは、コンクリートを収容する回転式容器であり、コンクリートを外部に排出するまでは、ドラム内にコンクリートをとどめておく向きに常に回転させられている。コンクリートを排出する際には、回転方向を逆向きにする。このドラムに加速度センサー付きビーコン20Aを設置することで、ビーコン20Aに作用する加速度の方向の変化から、ドラムの回転速度や回転方向の情報を取得し、コンクリートの排出タイミングを確実に把握することが可能となる。
【0037】
このコンクリート打込み管理システム200は、各ビーコン20Aと各受信端末1A~3Aとの間の通信状態および各ビーコンに作用する加速度の変化に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する。各時間情報は、受信端末1A~3Aを介してサーバー22に記録される。次に、各受信端末1A~3Aとビーコン20Aの通信記録データから得られる時間情報の一例について説明する。
【0038】
(a)受信端末1Aとビーコン20Aとの通信記録:運搬車10のプラント出発時刻とプラント帰着時刻
受信端末1Aをミキサー付近に設置する場合、コンクリートの練混ぜ中、運搬車10はミキサー直下にて待機しており、この間は常時通信が接続された状態となる。練混ぜ完了後、運搬車10にコンクリートが投入され、運搬車10が発車することでビーコン20Aと受信端末1Aの距離が離れ、通信強度が低下あるいは通信が切断する。プラント出発時刻は、この通信強度の低下あるいは通信切断のどちらの時刻を指定してもよい。プラント12の入場口に受信端末1Aを設置する場合は、ビーコン20Aとの通信が接続された時刻をプラント出発時刻として記録する。一方、運搬車10が打込み現場14からプラント12へ戻り、ビーコン20Aと受信端末1Aとの通信が再度接続された時刻をプラント帰着時刻として記録する。
【0039】
(b)受信端末2Aとビーコン20Aとの通信記録:現場到着時刻と退場時刻
受信端末2Aを打込み現場14の入場口16のゲートに設置する場合、受信端末2Aとビーコン20Aとの通信が接続された時刻を現場到着時刻として記録する。コンクリートの排出後、打込み現場14の入場口16を退場する際にビーコン20Aと受信端末2Aの通信が再度接続された時刻を現場退場時刻として記録する。
【0040】
(c)受信端末3Aとビーコン20Aとの通信記録:コンクリートの打込み開始および完了時刻
受信端末3Aをポンプ車18のホッパー付近に設置する場合、運搬車10がコンクリートをポンプ車18へ排出するために待機場所からポンプ車18に近接すると、受信端末3Aとビーコン20Aの通信が接続される。上述したように、運搬車10のドラムは、コンクリートを排出するまでの間は、コンクリートをドラム内にとどめておくために常に一定の方向に回転している。当該方向でビーコン20Aが感知する加速度値を正の値と定義すると、コンクリートを排出する際はドラムの回転方向を逆転させるため、その際にビーコン20Aが感知する加速度値は負の値をとる。受信端末3Aとビーコン20Aの通信が接続された状態で、加速度センサーで検出される加速度値の正負が逆転する時刻をその運搬車10に積載されたコンクリートの打込み開始時刻として記録する。コンクリート排出後、運搬車10のドラムの回転方向を再度正方向に転じる。その際、ビーコン20Aの加速度値の正負が再度逆転する。この時刻を打込み完了時刻として記録する。なお、コンクリートの排出開始直前や完了後に高速回転を実施し、その際の、回転軸に対して垂直方向の加速度変化に基づいて打込み開始時刻や打込み完了時刻を記録してもよい。
【0041】
受信端末1A~3Aとビーコン20Aの通信記録データは、受信端末1A~3Aからサーバー22に蓄積される。サーバー22に蓄積された通信記録データは、現場係員の持つ係員端末24に出力することができる。係員端末24への出力例を図2に示す。
【0042】
係員端末24では、次の項目を演算処理して出力表示してもよい。例えば、運搬車番号(各運搬車10に割り振られた車番号(ナンバープレートでも可))、運搬車台数(打ち込み現場14に到着する運搬車10の台数)、現場到着予定時刻(予め作成した打設計画における、運搬車10の現場到着予定時刻)、プラント出発時刻、帰着時刻(上記の(a)を参照)、現場到着時刻、退場時刻(上記の(b)を参照)、打込み開始時刻、打込み完了時刻(上記の(c)を参照)、運搬時間(各運搬車10のプラント出発から現場到着までに要した時間)、打込み許容時刻(各運搬車10の打込み完了の許容時刻)、次回プラント出発可能時刻(プラント12へ帰着した運搬車10が、次にコンクリートを積載し、プラント12を出発できる時刻)、現場到着遅延時間(運搬車10の現場到着予定時刻と実際の現場到着時刻の差)などである。
【0043】
なお、プラント12から打込み現場14における運搬車10の位置情報の取得方法は、人工衛星からの測位用データを用いて位置情報を取得する周知の運行管理システムを活用することができる。
【0044】
本実施の形態2によれば、各受信端末1A~3Aとビーコン20Aとの間の通信状態と、ビーコン20Aに作用する加速度の変化に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録するので、人による時間情報の入力手間を減らすことができる。したがって、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができる。また、全ての運搬車10に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。また、交通渋滞や現場でのトラブル等で打込みが遅れ、許容時間内での運搬や打込みが難しくなる場合にその情報を迅速かつ簡易に把握することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート打込み管理システムによれば、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された発信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各発信手段との間で無線通信を行う受信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えるので、人による時間情報の入力手間を減らすことができ、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができる。また、全ての運搬車に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。
【0046】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、コンクリートの運搬と打込みを管理するためのシステムであって、フレッシュコンクリートを製造するコンクリートプラントと、コンクリートの打込み現場と、コンクリート打込み機械または器具のそれぞれの所定の場所に設置された受信手段と、コンクリートプラントから打込み現場内のコンクリート打込み機械または器具の近傍までコンクリートを運搬する運搬車に設置され、各受信手段との間で無線通信を行う発信手段と、各発信手段と受信手段の間の通信状態に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録する記録手段とを備えるので、人による時間情報の入力手間を減らすことができ、コンクリートの練混ぜ製造から打込みまでのコンクリート運搬と打込み作業の時間管理を大幅に省力化することができる。また、全ての運搬車に対してコンクリートの運搬および打込みに関する時間情報の記録を自動で確実に残せるため、記録漏れの発生を防ぐことができる。
【0047】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、運搬車に設置される発信手段に作用する加速度を検出するための加速度検出手段をさらに備え、記録手段は、各発信手段と受信手段の間の通信状態と、加速度検出手段で検出された加速度に応じて、コンクリートの運搬と打込みに関する時間情報を記録するので、打込みに移行する際の運搬車のドラムの回転変化を加速度で検出することで、打込みに関する時間情報を確実に記録することができる。
【0048】
また、本発明に係る他のコンクリート打込み管理システムによれば、記録した時間情報を出力する出力手段をさらに備えるので、例えば現場係員の持つ端末などの出力手段で時間情報の記録を迅速かつ簡易に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係るコンクリート打込み管理システムは、コンクリートの運搬と打込み作業の時間管理に有用であり、特に、時間管理を大幅に省力化するのに適している。
【符号の説明】
【0050】
1~3 ビーコン(発信手段)
1A~3A 受信端末(受信手段)
10 運搬車
12 コンクリートプラント
14 打込み現場
16 入場口
18 コンクリートポンプ車(コンクリート打込み機械または器具)
20 運搬車端末(受信手段)
20A ビーコン(発信手段)
22 サーバー(記録手段)
24 係員端末(出力手段)
100,200 コンクリート打込み管理システム
図1
図2
図3