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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】発泡性組成物および吐出製品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/30 20060101AFI20240313BHJP
   B65D 83/44 20060101ALI20240313BHJP
   B65D 83/66 20060101ALI20240313BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20240313BHJP
【FI】
C09K3/30 T
B65D83/44
B65D83/66 100
C09K23/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011071
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021115532
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 誠人
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206286(JP,A)
【文献】特開2016-033121(JP,A)
【文献】特表2022-527070(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/30
C09K 3/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K23/00-23/56
B65D83/00-83/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性原液と、液化ガスとを含む発泡性組成物であって、
前記水性原液は、水と、発泡剤と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを含み、
前記発泡性組成物の25℃における圧力は、0.05~0.3MPaであり、
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、水性原液中、1~50質量%であり、
前記液化ガスの含有量は、発泡性組成物中、1~25質量%である、
発泡性組成物。
【請求項2】
前記液化ガスの25℃における飽和蒸気圧は、0.35~0.6MPaである、請求項記載の発泡性組成物。
【請求項3】
水性原液と、液化ガスとを含む発泡性組成物が充填され、
前記水性原液が充填された容器本体と、
前記液化ガスが充填されたガス容器と、
前記ガス容器から前記容器本体内に、前記液化ガスの気化ガスを放出するための噴射装置とを備え、
前記水性原液は、水と、発泡剤と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを含み、
前記発泡性組成物の25℃における圧力は、0.05~0.3MPaであり、
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、水性原液中、1~50質量%であり、
前記噴射装置は、前記ガス容器を収容するホルダーと、前記気化ガスの放出量を調整するための調整弁とを備える、吐出製品。
【請求項4】
前記容器本体内の25℃における圧力は、0.05~0.3MPaである、請求項記載の吐出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性組成物および吐出製品に関する。より詳細には、本発明は、容器本体内が低圧で維持され、一定の圧力で吐出されやすく、かつ、吐出された際に発泡性が優れる発泡性組成物および吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性組成物を充填した吐出製品が開発されている。一般的な発泡性組成物は、水性原液と液化ガスとからなり、水性原液中に液化ガスが乳化した状態で外部に吐出され、液化ガスの気化によりその容積が膨張する性質を利用してキメ細かい泡を形成している。また、圧縮ガスにより発泡性組成物を吐出する吐出製品もある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-37362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水性原液と液化ガスとからなる従来の吐出製品において、液化石油ガスなどの液化ガスは、親油性であるため水性原液にほとんど溶解せず、容器内で水性原液と分離して液体状態で存在する。そのため、容器内の圧力は液化ガスの飽和蒸気圧に近くなり、0.4~0.5MPa(25℃)と高い。また、圧縮ガスで加圧して吐出する特許文献1の吐出製品は、使用し続けることにより、初期から終期まで容器内の圧力が変化しやすい。そのため、吐出製品は、安定な吐出物を形成できない。また、このような吐出製品において、最後まで内容物を吐出するためには、初期の圧力を0.8MPa(25℃)程度に高くする必要がある。そのため、従来の吐出製品は、耐圧性の高い容器本体が必要であり、軽量化や材料使用量に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、容器本体内が低圧で維持され、一定の圧力で吐出されやすく、かつ、吐出された際に発泡性が優れる発泡性組成物および吐出製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)水性原液と、液化ガスとを含む発泡性組成物であって、前記水性原液は、水と、発泡剤と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを含み、前記発泡性組成物の25℃における圧力は、0.05~0.3MPaである、発泡性組成物。
【0008】
このような構成によれば、発泡性組成物は、水性原液に液化ガスの気化ガスが多く溶解している。これにより、発泡性組成物は、吐出時にハイドロフルオロオレフィンの揮発が促進され、発泡しやすい。また、このような発泡性組成物は、容器本体に充填されて使用される場合において、容器本体内が低圧で維持されやすい。
【0009】
(2)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、水性原液中、1~50質量%である、(1)記載の発泡性組成物。
【0010】
このような構成によれば、発泡性組成物は、ハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、液化ガスの気化ガスの溶解量が多くなり、低圧に維持しやすい。また、発泡性組成物は、吐出時に溶解している気化ガスによりハイドロフルオロオレフィンの揮発がより促進されやすく、発泡しやすい。
【0011】
(3)前記液化ガスの含有量は、発泡性組成物中、1~25質量%である、(1)または(2)記載の発泡性組成物。
【0012】
このような構成によれば、発泡性組成物は、液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、ハイドロフルオロオレフィンに溶解しやすく、発泡しやすい。
【0013】
(4)前記液化ガスの25℃における飽和蒸気圧は、0.35~0.6MPaである、(1)~(3)のいずれかに記載の発泡性組成物。
【0014】
このような構成によれば、発泡性組成物は、液化ガスの飽和蒸気圧が上記範囲内であることにより、吐出時に発泡しやすい。
【0015】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の発泡性組成物が充填され、前記水性原液が充填された容器本体と、前記液化ガスが充填されたガス容器と、前記ガス容器から前記容器本体内に、前記液化ガスの気化ガスを放出するための噴射装置とを備え、前記噴射装置は、前記ガス容器を収容するホルダーと、前記気化ガスの放出量を調整するための調整弁とを備える、吐出製品。
【0016】
このような構成によれば、吐出製品は、噴射装置によって、容器本体内が所定の圧力になるまで、容器本体内に液化ガスの気化ガスが放出される。これにより、容器本体内の圧力は、一定に維持される。そのため、吐出製品は、初期の圧力を高圧に調整しなくても、終期まで一定の圧力が維持されやすい。また、水性原液に溶解する気化ガスの溶解量が一定に維持されやすく、吐出物は、安定した泡を形成しやすい。
【0017】
(6)前記容器本体の内圧は、0.05~0.3MPa(25℃)である、(5)記載の吐出製品。
【0018】
このような構成によれば、吐出製品は、低圧であり、安全性が高い。また、吐出製品は、より高い内圧に耐えうるような耐圧性の高い容器本体を採用する必要がないため、容器本体を軽量化することができ、材料の使用量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容器本体内が低圧で維持され、一定の圧力で吐出されやすく、かつ、吐出された際に発泡性が優れる発泡性組成物および吐出製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態の吐出製品の模式的な断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の吐出製品を吐出している状態を説明するための模式的な断面図である。
図3図3は、ガス容器をホルダーに収容する状態を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、バルブアッセンブリおよびカバーキャップを容器本体に取り付ける状態を説明するための模式的な断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態の吐出製品を使用して発泡性組成物が消費された状態を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<発泡性組成物>
本発明の一実施形態の発泡性組成物は、水性原液と、液化ガスとを含む。水性原液は、水と、発泡剤と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを含む。発泡性組成物の25℃における圧力は、0.05~0.3MPaである。本実施形態の発泡性組成物は、水性原液に液化ガスの気化ガスが多く溶解している。これにより、発泡性組成物は、吐出時にハイドロフルオロオレフィンの揮発が促進され、発泡しやすい。また、本実施形態の発泡性組成物は、容器本体に充填されて使用される場合において、容器本体内が低圧で維持されやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0022】
(水性原液)
水性原液は、水と、発泡剤と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを含む。
【0023】
・水
水は、溶媒として用いられる。水が含まれることにより、発泡性組成物は、吐出されるとフォームを形成することができる。
【0024】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0025】
水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、水性原液中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、水は、水性原液中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は、優れた発泡性を示し、かつ、後述するハイドロフルオロオレフィンを適切な量となるよう配合しやすい。
【0026】
・発泡剤
発泡剤は、水と沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとを乳化させ、外部に吐出されたときに発泡させるために配合される。
【0027】
発泡剤は特に限定されない。一例を挙げると、発泡剤は、高分子化合物、界面活性剤等である。
【0028】
高分子化合物は特に限定されない。一例を挙げると、高分子化合物は、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成水溶性高分子、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトルセルロース、結晶セルロースなどの天然水溶性高分子等である。高分子化合物は、併用されてもよい。これらの中でも、高分子化合物は、発泡性が優れている点から、ポリエーテルウレタンを含むことが好ましい。
【0029】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;脂肪酸石鹸、ラウリルリン酸などのアルキルリン酸やその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸やその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸やその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩;アミノ酸型アニオン性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;コカミドプロピルベタインなどのカルボキシベタイン型;アルキルイミダゾール型;アミノ酸型;アミンオキシド型などの両性界面活性剤等である。界面活性剤は併用されてもよい。
【0030】
発泡剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、発泡剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、発泡剤の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は泡を形成しやすく、充填しやすい粘度であり、べたつきにくく、使用感が優れる。
【0031】
・沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィン
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、液化ガスの気化ガスを多く溶解して発泡性組成物を発泡させるために配合される。
【0032】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)等である。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、併用されてもよい。
【0033】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、水性原液中、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、水性原液中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は、低圧でも発泡しやすい。
【0034】
・任意成分
水性原液は、上記水、発泡剤および沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンのほかに、適宜、用途等に応じて単糖類、アルコール類、油剤、パウダー、有効成分等の任意成分を含んでもよい。
【0035】
単糖類は、発泡性組成物の発泡性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0036】
単糖類は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類は、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、ガラクチトール、グルシトール、マルチトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコール;エリトリトール、D-エリトロース、D-トレオースなどのテトロース類;D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リキソース、D-リボース、D-キシルロース、L-キシルロース、D-リブロース、L-リブロースなどのペントース類;D-アルトロース、L-アルトロース、D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-グルコース、D-タロース、D-マンノース、L-ソルボース、D-タガトース、D-プシコース、D-フルクトース、D-マンノースなどのヘキソース類などである。単糖類は併用されてもよい。
【0037】
単糖類が配合される場合、単糖類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類の含有量は、水性原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、単糖類の含有量は、水性原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。単糖類の含有量が上記範囲内であることにより、単糖類を配合することによる効果が得られやすい。また、発泡性組成物は、安定した発泡性を形成しやすい。
【0038】
アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として配合されてもよい。また、アルコール類は、発泡性組成物の発泡性を調整する等の目的で配合されてもよい。
【0039】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトリールなどの4価アルコール、キシリトールなどの5価アルコール、ソルビトール、マンニトールなどの6価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリンなどの多価アルコールの重合体等である。アルコール類は併用されてもよい。
【0040】
アルコール類が配合される場合、アルコール類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、アルコール類の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。アルコール類の含有量が上記範囲内であることにより、アルコール類を配合することによる効果が得られやすい。また、発泡性組成物は、所望の発泡性を得られやすい。
【0041】
油剤は、得られるフォームの肌触りを良くしたり、指通りをよくする等の目的で好適に配合される。
【0042】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ジメチコン、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素油;ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルなどのエステル油;オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等である。油剤は併用されてもよい。
【0043】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、水性原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、油剤を配合することによる効果が得られやすい。また、発泡性組成物は、発泡性が低下しにくく、かつ、乾燥性が低下しにくく、べたつきを生じにくい。
【0044】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0045】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。パウダーは併用されてもよい。
【0046】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、水性原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、発泡性組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりを生じにくい。
【0047】
有効成分は、製品の目的に応じて配合され得る。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの紫外線散乱剤、塩化カルプロニウムやトウガラシチンキなどの血行促進剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、サリチル酸やレゾルシンなどの角質溶解剤、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ミントやメントールなどの清涼剤、塩化セチルピリジニウムやイソプロピルメチルフェノールなどの殺菌消毒剤、グリチルリチン酸ジカリウムやトラネキサム酸などの抗炎症剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、クエン酸や乳酸などのpH調整剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤などである。
【0048】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、水性原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性組成物は、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0049】
水性原液の調製方法は特に限定されない。水性原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、水性原液は、水、発泡剤、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィン、および、適宜配合される任意成分を、適宜の容器内で混合することにより調製することができる。
【0050】
(液化ガス)
液化ガスは、その気化ガスが容器内を加圧して水性原液を噴射するための噴射剤として用いられる。また、液化ガスの気化ガスは、水性原液中、特にハイドロフルオロオレフィンに溶解することにより、外部に吐出されたときにハイドロフルオロオレフィンの気化を促進し、発泡性組成物の発泡性を向上させる。
【0051】
液化ガスは、特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン等である。液化ガスは、併用されてもよい。液化ガスは、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンに溶解しやすい点から、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィンが好ましい。
【0052】
沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィンは、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze(E)、沸点-19℃)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf、沸点-29.4℃)等である。
【0053】
容器内を加圧するために、液化ガスの気化ガスの他に、圧縮ガスが併用されても良い。圧縮ガスは、特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。これらの中でも、圧縮ガスは、水性原液に溶解して微細な泡が形成されやすい点から、水に対する溶解性が低い窒素、空気、水素であることが好ましい。なお、容器本体内の圧力は、圧縮ガスにより0.2~0.5MPaに調整されることが好ましい。
【0054】
液化ガスの含有量は、発泡性組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、発泡性組成物中、25質量以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、液化ガスの気化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンに溶解して発泡性組成物の圧力を低くすることができ、さらに吐出された発泡性組成物が好適に発泡しやすい。
【0055】
発泡性組成物全体の説明に戻り、本実施形態の発泡性組成物は、25℃における圧力が0.05MPa以上であればよく、0.1MPa以上であることが好ましい。また、発泡性組成物は、25℃における圧力が0.3MPa以下であればよく、0.2MPa以下であることが好ましい。発泡性組成物の25℃における圧力が上記範囲内であることにより、本実施形態の発泡性組成物は、たとえば、後述する吐出製品として調製される場合において、初期の圧力を高圧に調整しなくても、終期まで一定の圧力が維持されやすい。そのため、得られる吐出製品は、低圧であり、安全性が高い。また、吐出製品は、より高い内圧に耐えうるような耐圧性の高い容器本体を採用する必要がないため、容器本体を軽量化することができ、材料の使用量を減らすことができる。
【0056】
また、液化ガスの飽和蒸気圧は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの飽和蒸気圧は、25℃において、0.35MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましい。また、液化ガスの飽和蒸気圧は、25℃において、0.6MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。液化ガスの飽和蒸気圧が上記範囲内にあることにより、発泡性組成物は、たとえば、後述する吐出製品として調製される場合において、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンに溶解して容器内の圧力が低圧に維持されつつ、外部に吐出されたときは発泡しやすい。
【0057】
本実施形態の発泡性組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、発泡性組成物は、上記水性原液を充填した容器に、液化ガスの気化ガスを加圧充填し、水性原液に気化ガスを溶解させることにより調製し得る。好適には、本実施形態の発泡性組成物は、後述する吐出製品の実施形態(図1参照)に示される吐出製品の容器本体に水性原液を充填し、ガス容器に充填された液化ガスの気化ガスを容器本体内に放出して、水性原液に溶解させることにより、調製し得る。
【0058】
以上、本実施形態の発泡性組成物は、水性原液に液化ガスの気化ガスが溶解している。これにより、発泡性組成物は、吐出時にハイドロフルオロオレフィンの揮発が促進され、発泡しやすい。また、このような発泡性組成物は、容器内が低圧であり、安全性が高い。また、このような発泡性組成物は、低圧で充填されてもよいため、容器本体は、より高い内圧に耐えうるような耐圧性の高い容器本体が採用される必要がなく、軽量化され得る。また、発泡性組成物を充填する容器本体は、材料の使用量を減らすことができる。
【0059】
<吐出製品>
本発明の一実施形態の吐出製品は、上記した発泡性組成物が充填された吐出製品である。図1は、本実施形態の吐出製品1の模式的な断面図である。図2は、本実施形態の吐出製品1を吐出している状態を説明するための模式的な断面図である。吐出製品1は、水性原液Cが充填された容器本体2と、液化ガスが充填されたガス容器3と、ガス容器3から容器本体2内に、液化ガスの気化ガスを放出するための噴射装置4とを備える。噴射装置4は、ガス容器3を収容するホルダー5と、気化ガスの放出量を調整するための調整弁6とを備える。以下、それぞれについて説明する。なお、本実施形態の吐出製品1は、上記した容器本体2、ガス容器3および噴射装置4を備える。そのため、以下に示されるその他の構成は、例示であり、適宜設計変更が可能である。
【0060】
(容器本体2)
容器本体2は、発泡性組成物が充填される耐圧容器である。容器本体2は、略有底筒状であり、上部のみ縮径された胴部21と、胴部21よりも小径であり胴部21の上部に一体的に設けられた筒状の首部22とからなる。首部22の上部には開口部が形成されている。開口部は、水性原液Cを充填するための充填口であり、後述するバルブアッセンブリ23によって閉止される。首部22の外周には、螺旋状にネジ部が形成されている。ネジ部に、後述するカバーキャップ7の大径部71の内周面に形成されたネジ部が螺合することにより、カバーキャップ7を着脱自在に装着することができる。これにより、容器本体2内の所定の位置にガス容器3が収容されるとともに、容器本体2にカバーキャップ7が位置決めされる。そのため、使用者は、適宜容器本体2からカバーキャップ7を取り外し、ガス容器3の交換や水性原液Cの詰め替えが可能である。
【0061】
容器本体2の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体2の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0062】
・バルブアッセンブリ23
バルブアッセンブリ23は、容器本体2の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブアッセンブリ23は、ハウジング23aと、容器本体2の内外を連通するステム孔23dが形成されたステム23bと、ステム孔23dの周囲に取り付けられ、ステム孔23dを閉止するためのステムラバー23cとを主に備える。
【0063】
なお、バルブアッセンブリ23は、カバーキャップ7によって覆われている。カバーキャップ7は、バルブアッセンブリ23を保護するとともに、バルブアッセンブリ23を容器本体2の開口部を閉止するよう位置決めする。
【0064】
カバーキャップ7は、略円筒状の大径部71と、大径部71の上端に接続されており、大径部71よりも小径である小径部72とを含む。大径部71の内周下部には、容器本体2のネジ部に螺合するネジ部が形成されている。大径部71の上端に形成された平坦部73は、後述するハウジング23aのフランジ部23eと当接している。
【0065】
小径部72の中央は、ステム23bの外径よりも径の大きな開口が形成されている。これにより、ステム23bは、上下動し得る。小径部72の上端に形成された平坦部は、ステムラバー23cおよびハウジング23aの上端と当接している。
【0066】
・ハウジング23a
ハウジング23aは、ステム23bとスプリング23jを収容する。ハウジング23aの下部は、略二重円筒状であり、外側円筒部23fと内側円筒部23gとを含む。外側円筒部23fには、外側方向に延びる周状のフランジ部23eが形成されている。フランジ部23eの下面は、周状のガスケットを介してホルダー5の上端と密着している。
【0067】
内側円筒部23gの下面は、平坦面であり、カバーキャップ7が容器本体2に取り付けられた状態において、ホルダー5に収容されたガス容器3の底面(本実施形態の吐出製品1は、図1に示されるように、ガス容器3が倒立状態でホルダー5に収容されるため、ガス容器3の底面は紙面の上側に位置する)を押圧し、ホルダー5内においてガス容器3を保持する。
【0068】
ハウジング23aの側壁には、貫通孔23hが形成されている。貫通孔23hは、後述するチューブ8を介して取り込まれた発泡性組成物を、ハウジング23a内に取り込むための孔である。ハウジング23a内に取り込まれた発泡性組成物は、ステム孔23d、ステム内通路23iを通過して、外部に吐出される。
【0069】
・ステム23b
ステム23bは、略円筒状の部位であり、吐出時にハウジング23a内に取り込まれた発泡性組成物が通過するステム内通路23iが形成されている。ステム内通路23iの下端近傍には、ハウジング23a内の空間とステム内通路23iとを連通するステム孔23dが形成されている。ステム23bの上端には、発泡性組成物を吐出するための吐出部材(図示せず)が取り付けられる。
【0070】
ステム23bの下端は、弾性部材であるスプリング23jが取り付けられている。スプリング23jは、ステム23bを上方に付勢する。これにより、ステム23bは、下方への押し下げが止められると、自動的に上方に復帰し、ステム孔23dがステムラバー23cによって再び閉止される。
【0071】
・ステムラバー23c
ステムラバー23cは、ステム孔23dの周囲に取り付けられ、ハウジング23aの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバー23cは、円盤状の部材であり、非吐出時において、内周面をステム23bのステム孔23dが形成された外周面と密着させて、ステム孔23dを閉止する。一方、ステムラバー23cは、ステム23bが下方に移動するに合わせて中心部が下方に撓み、ステム孔23dを開放する。これにより、外部と容器本体2内とが連通し、発泡性組成物が吐出される。図2に示されるように、吐出製品1は、図示しない吐出部材が押し下げられることによりステム23bが下方に移動すると、ステムラバー23cの中心部が下方に撓み、ステム孔23dが開放される。これにより、外部と容器本体2内とが連通し、発泡性組成物が吐出される。
【0072】
(ガス容器3)
ガス容器3は、液化ガスが充填されるガス容器本体31と、ガス容器本体31内から、液化ガスの気化ガスを放出するためのバルブアッセンブリ32とを含む。バルブアッセンブリ32は、外部に突出したステム32aを備える。ステム32aは、上端が外部に突出している。ステム32aは、下方(ガス容器3の内底面方向)に押圧されると、図示しないステムラバーが撓み、図示しないステム孔が解放される。これにより、ガス容器本体31内から、液化ガスの気化ガスが放出され、容器本体2内が加圧される。
【0073】
ガス容器3の材質は特に限定されない。一例を挙げると、ガス容器3の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0074】
ガス容器3の寸法は、ホルダー5内に収容される寸法であればよい。ホルダー5に対して収容および取り換えが容易である点から、ガス容器3の寸法(外径)は、ホルダー5の内径よりもいくらか小さいことが好ましい。
【0075】
図1に示されるように、本実施形態において、ガス容器3は、倒立状態でホルダー5に収容されている。ホルダー5に収容された状態において、ガス容器3のステム23bの上端は、調整弁6の上端に形成された嵌合凹部61に挿入されており、嵌合凹部61内の段部62と当接している。
【0076】
ガス容器本体31の底面は、カバーキャップ7が容器本体2に取り付けられた状態において、上記したハウジング23aの内側円筒部23gの下面と当接している。これにより、ホルダー5内においてガス容器3が保持され、位置決めされている。
【0077】
ガス容器3に充填された液化ガスの飽和蒸気圧は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの飽和蒸気圧は、25℃において0.35~0.6MPaの範囲が好ましく、0.4~0.5MPaの範囲がより好ましい。液化ガスの飽和蒸気圧が上記範囲内にあることにより、容器内の圧力が低圧に維持されつつ、外部に吐出されても発泡しやすい。
【0078】
(噴射装置4)
噴射装置4は、ガス容器3から容器本体2内に、液化ガスの気化ガスを放出するための機構である。噴射装置4は、ガス容器3を収容するホルダー5と、気化ガスの放出量を調整するための調整弁6とを備える。
【0079】
・ホルダー5
ホルダー5は、容器本体2内に収容される部材であり、内部にガス容器3および調整弁6を収容する。また、ホルダー5は、発泡性組成物を取り込むためのチューブ8が差し込まれる。
【0080】
ホルダー5は、ガス容器3が主に収容される上側円筒部51と、調整弁6が主に収容される下側円筒部52とからなる。下側円筒部52は、上側円筒部51よりも小径である。
【0081】
上側円筒部51は、側面にホルダー5内と容器本体2内とを連通する連通孔53が形成されている。連通孔53は、ガス容器3から放出された液化ガスの気化ガスが通過するための孔である。上側円筒部51の上端は、外方向に延設されたフランジ部54が形成されている。フランジ部54の下面は、ガスケットを介して容器本体2の首部22の上端と当接している。
【0082】
フランジ部54には、発泡性組成物を取り込むためのチューブ8が差し込まれるチューブ差し込み孔55が設けられている。チューブ差し込み孔55は、チューブ8の外径と同程度の内径を有する。チューブ差し込み孔55の底部には、貫通孔56が設けられている。貫通孔56は、取り込まれた発泡性組成物が通過するための孔である。チューブ8は、ホルダー5の上側円筒部51の外周に沿って延び、チューブ差し込み孔55に差し込まれる一端と、発泡性組成物C中に開口する他端とを有する。
【0083】
上側円筒部51と下側円筒部52とは、平坦部57によって接続されている。平坦部57には、内側方向に延びる被当接部58が形成されている。被当接部58は、ガス容器を収容していない状態では、後述する調整弁6の当接部63が当接し、調整弁6の抜け飛びを防止する。
【0084】
下側円筒部52は、調整弁6が主に収容される。調整弁6は、ホルダー5の下側円筒部52内を上下方向に摺動する部材である。調整弁6は、略円柱状の内部空間が形成された上側調整弁64と、上側調整弁64よりも大径であり、上側調整弁64の下方に形成された下側調整弁65とからなる。
【0085】
上側調整弁64の上端には、内部空間に連通する嵌合凹部61が形成されている。嵌合凹部61は、ガス容器3のステム32aが挿入される凹部であり、嵌合凹部61の内周面には、ステム32aが当接する段部62が形成されている。段部62は、ステム32aの一部のみと当接している。そのため、段部62は、ステム32aの先端に形成された吐出孔(図示せず)を閉止しない。また、嵌合凹部61の深さは、ガス容器3から液化ガスの気化ガスを放出するために要するステム32aの必要作動距離よりも長い(深い)。そのため、後述する下側円筒部52の下側空間に充填され、圧縮された空気によって調整弁6が上方に付勢されると、段部62に当接したステム32aが必要作動距離だけ押し下げられる。その結果、液化ガスの気化ガスは、適切にガス容器3から放出される。放出された液化ガスの気化ガスは、内部空間を満たすよう進行し、その後、ホルダー5の上側円筒部51を満たし、上側円筒部51の連通孔53を通って容器本体2内に放出される。
【0086】
上側調整弁64の外周面には、上記した被当接部58に当接する当接部63が設けられている。当接部63が被当接部58に当接することにより、調整弁6は、抜け飛びが防止される。
【0087】
下側調整弁65の外周面は、ガスケットを介してホルダー5の下側円筒部52の内周面と接触している。ガスケットは、下側円筒部52の内部空間を上下に区画する(上側空間S1および下側空間S2)。下側空間S2には、気化ガス(たとえば空気)が圧縮されている。これにより、調整弁6は、下側空間S2で圧縮された空気が膨張するための応力と、容器本体2の内圧とガス容器のステム作動荷重を合わせた力が平衡を保つよう上下動する。
【0088】
(吐出部材)
吐出部材(図示せず)は、バルブアッセンブリ23の開閉を操作して発泡性組成物を吐出するための部材であり、ステム23bの上端に取り付けられる。吐出部材は、ノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。ノズル部は、発泡性組成物が通過する吐出通路が形成されている。吐出通路の先端には開口(吐出孔)が形成されている。吐出孔からは、発泡性組成物が吐出される。吐出孔の数および形状は特に限定されない。吐出孔は、複数であってもよい。また、吐出孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0089】
<吐出製品の組み立て方法および内圧調整の機序の説明>
次に、本実施形態の吐出製品の組み立て方法について説明する。図3は、ガス容器3をホルダー5に収容する状態を説明するための模式的な断面図である。図4は、バルブアッセンブリ23およびカバーキャップ7を容器本体2に取り付ける状態を説明するための模式的な断面図である。
【0090】
図3に示されるように、容器本体2には、水性原液Cが充填されており、ホルダー5が収容されている。ホルダー5には、調整弁6が収容されている。ホルダー5の下側円筒部52の下側空間S2には、気化ガス(たとえば空気)が封入されている。この状態において、調整弁6は、下側空間S2で圧縮された空気の圧力によって上方向に付勢されており、当接部63がホルダー5の被当接部58と当接している。ガス容器3は、倒立状態で、ホルダー5に収容される。
【0091】
次いで、図4に示されるように、カバーキャップ7およびバルブアッセンブリ23が容器本体2に取り付けられる。これにより、図1に示される吐出製品1が組み立てられる。図1および図2に示されるように、カバーキャップ7およびバルブアッセンブリ23が容器本体2に取り付けられると、ホルダー5に収容されたガス容器3は、底面がハウジング23aの内側円筒部23gの下面によって押圧され、ホルダー5内において位置決めされる。
【0092】
図1に示される状態において、調整弁6は、ホルダー5に収容されたガス容器3によって、いくらか下方に押し下げられる。これにより、下側空間S2の容積が小さくなるため、下側空間S2に封入された空気は、圧縮される。その結果、調整弁6には、圧縮された空気による上方向への付勢力が加えられる。
【0093】
調整弁6に加えられた上方向への付勢力によって、ガス容器3のステム23bが押し下げられる。これにより、ガス容器3から、液化ガスの気化ガスが放出される。放出された液化ガスの気化ガスは、ホルダー5の上側円筒部51の連通孔53を通って容器本体2内に放出される。容器本体2内に放出された液化ガスの気化ガスは、容器本体2内の気相部分を構成するとともに、水性原液C中に溶解し、発泡性組成物となる。
【0094】
液化ガスの気化ガスが放出され続けると、気化ガスは、水性原液に溶解しながら容器本体2内の気相部分に充満し、容器本体2内が加圧状態となる。その後、放出された気化ガスによって加圧された容器本体2の内圧が大きくなり、圧縮された空気による上方向への付勢力を超えると、調整弁6を押し下げる。その結果、調整弁6は、いくらか下方に移動し、下側空間S2の空気をいくらか圧縮するとともに、ガス容器3のステム32aの押し下げが止められ、ガス容器3から液化ガスの気化ガスの放出が停止する。これにより、下側空間S2で圧縮された空気が膨張するための応力と、容器本体2の内圧およびガス容器のステム作動荷重を合わせた力とは、平衡状態となる。
【0095】
ここで、本実施形態の吐出製品1を使用されて発泡性組成物が吐出されると、容器本体2内の発泡性組成物が消費される。図5は、本実施形態の吐出製品1を使用して発泡性組成物が消費された状態を説明するための模式的な断面図である。図5に示されるように、容器本体2内の気相部分の容積が増えると、気相部分は液化ガスの気化ガスで充満しているため容器本体2の内圧が、使用前と比較して低下する。その結果、容器本体2の内圧よりも、下側空間S2で圧縮された空気が膨張するための応力の方が大きくなり、再び調整弁6が上方に付勢されて移動し、ガス容器3から液化ガスの気化ガスが放出される。矢印A1は、ガス容器3から放出された液化ガスの気化ガスの流れを示している。
【0096】
液化ガスの気化ガスは、容器本体2内の気相部分に補充されるとともに、水性原液C中へ溶解する。その結果、下側空間S2で圧縮された空気が膨張するための応力と、容器本体2の内圧とガス容器のステム作動荷重を合わせた力は、再び平衡状態となる。
【0097】
このように、本実施形態の吐出製品1は、使用により発泡性組成物が消費されると、ガス容器3から液化ガスの気化ガスが補充され、再び、容器本体2内が適切に加圧される。これにより、容器本体2内の圧力は、一定に維持される。そのため、吐出製品1は、初期の圧力を高圧に調整しなくても、終期まで吐出することができる。また、水性原液Cに溶解する気化ガスの溶解量が一定に維持されやすく、吐出物は、安定した泡を形成しやすい。
【0098】
より具体的には、本実施形態の吐出製品1の容器本体2の内圧は、25℃において、0.05MPa以上となるよう調整されていることが好ましく、0.1MPa以上となるよう調整されていることがより好ましい。また、容器本体2の内圧は、ガス容器に充填した液化ガスの飽和蒸気圧よりも低いことが好ましく、たとえば、25℃において、0.3MPa以下となるよう調整されていることが好ましく、0.2MPa以下となるよう調整されていることがより好ましい。本実施形態の吐出製品1は、上記のとおり、吐出製品の圧力(平衡圧)を液化ガスの飽和蒸気圧より低くなるように調整することで、容器本体内に導入された液化ガスの気化ガスは一部が原液に溶解し、残りが気相部に存在して、温度変化による圧力変化が小さく、安定した発泡物が得られる。そのため、吐出製品1は、低圧であり、安全性が高い。また、吐出製品1は、より高い内圧に耐えうるような耐圧性を高い容器本体2を採用する必要がないため、容器本体2を軽量化することができ、材料の使用量を減らすことができる。
【実施例
【0099】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0100】
(実施例1)
以下の表1に示される処方(単位:質量%)に従って、水性原液1を調製し、図1に示される合成樹脂製の容器本体に40g充填した。次いで、ホルダーおよび調整弁を備える噴射装置を容器本体に取り付け、液化ガスとしてトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze(E))を10g充填したアルミ製のガス容器を収容し、バルブアッセンブリを取り付けた。ガス容器から液化ガスの気化ガスが容器本体内に放出され、気化ガスは原液に溶解して平衡状態にすることで吐出製品を製造した。ホルダーの下側空間には、空気が封入されている。容器本体内の圧力と、下側空間の空気が膨張する圧力とが平衡状態となった際の、容器本体内の圧力(25℃)は、0.2MPaであった。なお、ガス容器から放出された気化ガスの量は1.4g(発泡性組成物中3.5質量%)であった。
【0101】
【表1】
【0102】
(実施例2~14)
水性原液および気化ガスの種類を表1および表2に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、発泡性組成物を調製し、吐出製品を製造した。
【0103】
(比較例1)
上記の表1に示される処方(単位:質量%)に従って、水性原液1を調製し、図1に示される合成樹脂製の容器本体に40g充填した。次いで、容器本体にバルブアッセンブリを取り付けた。バルブアッセンブリのステムから炭酸ガスを充填し、吐出製品を製造した。なお、容器本体内の圧力は0.5MPa(25℃)であった。
【0104】
(比較例2)
比較例1の炭酸ガスの代わりに窒素を充填した以外は同様の方法により、発泡性組成物を調製し、吐出製品を製造した。
【0105】
【表2】
【0106】
実施例1~14および比較例1~2において調製した吐出製品を用いて、以下の評価方法により、初期および終期の吐出状態を評価した。結果を表2に示す。
【0107】
<吐出状態>
吐出製品を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、発泡性組成物を25℃に調整した。恒温水槽から吐出製品を取り出し、手のひら上に1g吐出した。1回目(初期:発泡性組成物の残量100%)および80回目(終期:発泡性組成物の残量10%)における吐出時の発泡性組成物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はなく、非常に細かい泡を形成した。(泡密度:0.01~0.05g/mL)
○:発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はなく、細かい泡を形成した。(泡密度:0.06~0.09g/mL)
△1:発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はなく、非常に細かい泡を形成したものの塗り伸ばしにくかった。
△2:発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はないが、発泡性が弱く、やや粗い泡を形成した。(泡密度:0.1~0.2g/mL)
×:発泡性組成物は、初期はやや発泡したものの粗い泡であり、終期は泡を形成しなかった。
【0108】
表2に示されるように、実施例3~8、13~14の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、いずれも、初期と終期で発泡性に差はなく、非常に細かい泡を形成した。また、実施例3~8、13~14の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、塗り伸ばしやすかった。実施例1と2は初期と終期で発泡性に差はなく、細かい泡を形成した。また、実施例1~2の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、塗り伸ばしやすかった。実施例9と10の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はなく、非常に細かい泡を形成したものの塗り伸ばしにくかった。実施例11と12の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、初期と終期で発泡性に差はないが、発泡性が弱く、やや粗い泡を形成した。そのため、実施例1~14の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、容器内が低圧に維持され、一定の圧力で吐出されやすかった。一方、比較例1~2の吐出製品により吐出した発泡性組成物は、いずれも、初期はやや発泡したものの粗い泡であり、終期においては泡を形成することができなかった。
【符号の説明】
【0109】
1 吐出製品
2 容器本体
21 胴部
22 首部
23 バルブアッセンブリ
23a ハウジング
23b ステム
23c ステムラバー
23d ステム孔
23e フランジ部
23f 外側円筒部
23g 内側円筒部
23h 貫通孔
23i ステム内通路
23j スプリング
3 ガス容器
31 ガス容器本体
32 バルブアッセンブリ
32a ステム
4 噴射装置
5 ホルダー
51 上側円筒部
52 下側円筒部
53 連通孔
54 フランジ部
55 チューブ差し込み孔
56 貫通孔
57 平坦部
58 被当接部
6 調整弁
61 嵌合凹部
62 段部
63 当接部
64 上側調整弁
65 下側調整弁
7 カバーキャップ
71 大径部
72 小径部
73 平坦部
8 チューブ
A1 液化ガスの気化ガスの流れ
S1 上側空間
S2 下側空間
図1
図2
図3
図4
図5