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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】シリコーンゴム複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240313BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240313BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFH
F16J15/10 A
F16J15/10 Y
C09K3/10 G
C09K3/10 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020013775
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120426
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝志
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-156857(JP,A)
【文献】特開平08-174625(JP,A)
【文献】特開昭60-105519(JP,A)
【文献】特開昭58-002376(JP,A)
【文献】特開2017-90891(JP,A)
【文献】特開2018-168297(JP,A)
【文献】特開2013-203847(JP,A)
【文献】特開2007-9038(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104893304(CN,A)
【文献】Product Dataスポンジ成形用ミラブル型シリコーンゴム,日本,2000年10月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
67/20
C08J9/00-9/42
C09K3/10-3/12
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材間に介装されるシリコーンゴム複合体であって、
骨格部と該骨格部の外周に設けられた外周部とを有し、
前記骨格部が、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムからなり、前記シリコーンゴム複合体の軸方向に垂直な断面において、中央付近に前記断面の形状に沿って設けられており、かつ前記断面における占有面積が4%以上27%以下であり、
前記骨格部の硬度が、JIS-A硬度で30°Hs以上80°Hs以下であり、
前記外周部が、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムからなるシリコーンゴム複合体。
【請求項2】
骨格部と該骨格部の外周に設けられた外周部とを有し、2つの部材間に介装されるシリコーンゴム複合体を製造する方法であって、
前記骨格部が、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムからなり、前記シリコーンゴム複合体の軸方向に垂直な断面において、中央付近に断面の形状に沿って設けられており、かつ前記断面における占有面積が4%以上24%以下であり、
前記骨格部の硬度が、JIS-A硬度で30°Hs以上80°Hs以下であり、
前記外周部が、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムからなり、
前記シリコーンゴムを形成する第1組成物を排出する第1押出口と前記発泡シリコーンゴムを形成する第2組成物を排出する第2押出口とを隣接して有する押出成形機を用いて、前記第1組成物と前記第2組成物とを同時に押出す第1工程と、押出された前記第1組成物と前記第2組成物とを同時に加熱硬化させる第2工程とを有するシリコーンゴム複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器には、気密性保持、防水等を目的としてゴムパッキンが設けられる。一般に、このようなゴムパッキンは、部品との密着性や追従性等に優れた低硬度シリコーンゴムからなり、射出成形等で成形される。そして、ゴムパッキンは、部品の接合部分に形成された条溝内に嵌着することで取付けられる。
【0003】
このようなゴムパッキンとして、例えば、特許文献1には、低硬度ゴム部の間又は内部に高硬度の高硬度ゴム部を配した、高硬度ゴム部と低硬度ゴム部とからなるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-169780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、発泡シリコーンゴムを用いた場合、長時間の使用で発泡シリコーンゴムが歪み、損傷も大きくなる。また、成形体の体積が大きくなるに従い、均一に発泡させることが難しくなり、耐熱性及び耐久性の面で問題がある。さらに、発泡シリコーンゴムで様々な形状のパッキンに対応させようとすると、弾力性と強度との両立が難しくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、全体として低硬度のシリコーンゴムの弾力性は保持しながら、強度が向上したシリコーンゴム複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリコーンゴム複合体は、2つの部材間に介装されるシリコーンゴム複合体であって、骨格部と骨格部の外周に設けられた外周部とを有し、骨格部が、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムからなり、シリコーンゴム複合体の軸方向に垂直な断面において、中央付近に断面の形状に沿って設けられており、かつ断面における占有面積が4%以上27%以下であり、外周部が、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムからなるシリコーンゴム複合体である。
【0007】
本発明のシリコーンゴム複合体の製造方法は、骨格部と骨格部の外周に設けられた外周部とを有し、2つの部材間に介装されるシリコーンゴム複合体を製造する方法であって、骨格部が、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムからなり、シリコーンゴム複合体の軸方向に垂直な断面において、中央付近に断面の形状に沿って設けられており、かつ断面における占有面積が4%以上24%以下であり、外周部が、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムからなり、シリコーンゴムを形成する第1組成物を排出する第1押出口と発泡シリコーンゴムを形成する第2組成物を排出する第2押出口とを隣接して有する押出成形機を用いて、第1組成物と第2組成物とを同時に押出す第1工程と、押出された第1組成物と第2組成物とを同時に加熱硬化させる第2工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコーンゴム複合体の製造方法によれば、全体として低硬度のシリコーンゴムの弾力性は保持しながら、強度が向上したシリコーンゴム複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図2】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図3】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図4】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図5】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図6】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図7】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図8】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図9】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図10】本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体の断面図である。
図11】本発明のシリコーンゴム複合体の断面写真である。
図12】耐熱試験の評価方法を示す図である。
図13】耐熱試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0011】
[シリコーンゴム複合体]
図1に、本発明の一実施形態のシリコーンゴム複合体10の断面図を示す。
本発明のシリコーンゴム複合体10は、図1に示すように、不図示の2つの部材間に介装されるシリコーンゴム複合体10であって、骨格部11と骨格部11の外周に設けられた外周部12とを有するものである。
シリコーンゴム複合体10は、例えば、ゴムパッキン、ガスケット等である。
【0012】
シリコーンゴム複合体10全体としての引張強さは0.8N/mm以上であり、切断時伸びは200%以上であり、かつ引裂強さは3.5N/mm以上である。より好ましくは、引張強さが1N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが5N/mm以上である。
なお、引張強さ、破断時伸び及び引裂強さは、後述の実施例における測定方法で測定したものとする。
【0013】
(骨格部)
骨格部11は、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムからなる。より好ましくは、引張強さが8N/mm以上であり、切断時伸びが300%以上であり、かつ引裂強さが22N/mm以上である。
【0014】
骨格部11の硬度は、JIS-A硬度で30°Hs以上80°Hs以下であることが好ましく、35°Hs以上65°Hs以下であることがより好ましい。骨格部11の硬度が上記範囲であることにより、シリコーンゴム複合体10全体の弾力性及び断熱性を損なうことなく、強度に優れるシリコーンゴム複合体を得ることができる。
【0015】
骨格部11は、図1に示すように、シリコーンゴム複合体10の軸方向Yに垂直な断面において、中央付近に断面の形状である矩形状に沿って設けられている。
【0016】
ここで、「中央付近」とは、上記断面の少なくとも2つの部材で挟まれる2辺に対応する領域において、2つの部材で押圧されるZ方向における厚みT10の半分の位置tを中央として、Z方向の厚さT10に対し1~70%の領域を示す。なお、骨格部11は、本発明の効果が得られる範囲で、上記「中央付近」から外れる部分を有していてもよい。
また、「断面の形状に沿って」とは、骨格部11が、シリコーンゴム複合体10の断面形状と類似の形状であることを示し、断面の形状と全く同じ形状である必要はなく、上記「中央付近」から外れる部分に屈曲部を有していてもよい。また、骨格部11は、均一な厚さで形成されていてもよく、肉薄部又は肉厚部を有していてもよい。
【0017】
シリコーンゴム複合体10の軸方向Yに垂直な断面において、骨格部11の占有面積は、4%以上24%以下である。骨格部11の占有面積が上記範囲であることにより、シリコーンゴム複合体10全体としての弾力性及び断熱性を損なうことなく、強度に優れるシリコーンゴム複合体10を得ることができる。
【0018】
より具体的には、骨格部11は、以下のような範囲で形成されることが好ましい。図1に示すように、骨格部11は、軸方向Yに垂直な断面で見た場合、2つの部材によって辺10a及び10bが押圧される。骨格部11の辺10a及び10bに平行な方向の長さL11は、辺10a及び10bの長さL10に対して60%以上90%以下であることが好ましく、70%以上90%以下であることが好ましい。L11が60%以上であることにより、2つの部材で押圧される領域において全体的に強度を向上させることができるので、耐久性にムラが生じることがない。またL11が、90%以下であることにより、端部における弾力性を保持することができるので耐熱性の低下を防ぐことができる。
【0019】
骨格部11を構成するシリコーンゴムは、後述の第1組成物を加熱硬化することにより得られる。
【0020】
(外周部)
外周部12は、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムからなるものである。より好ましくは、外周部12の発泡シリコーンゴムの比重は、0.3以上0.65以下である。
外周部12を構成する発泡シリコーンゴムは、後述の第2組成物を加熱硬化することにより得られる。
【0021】
[シリコーンゴム複合体の製造方法]
本発明のシリコーンゴム複合体の製造方法は、上記骨格部11と骨格部11の外周に設けられた外周部12とを有するシリコーンゴム複合体10を製造する方法であり、以下の第1工程と第2工程とを有する。
【0022】
(第1工程)
第1工程は、シリコーンゴムを形成する第1組成物を排出する第1押出口と発泡シリコーンゴムを形成する第2組成物を排出する第2押出口とを隣接して有する押出成形機を用いて、第1組成物と第2組成物とを同時に押出す工程である。
具体的には、押出成形機としては、縦型押出成形機を用いることが好ましい。縦型押出成形機のクロスヘッドは、骨格部11の形状に作製された第1のダイと、発泡されて最終的に外周部12を形成するように作製された第2のダイとを有している。外周部12は、発泡シリコーンゴムであるため、加熱硬化後の外周部12の形状と第2のダイの形状は、必ずしも同じではない。
第1組成物と第2組成物とをそれぞれ別の原料供給口から投入し、ダイから第1組成物と第2組成物とを同時に排出する。以下に、第1組成物と第2組成物について説明する。
【0023】
-第1組成物-
骨格部11のシリコーンゴムを構成する第1組成物は、押出成形可能な、付加硬化性ミラブル型シリコーンゴム組成物が好ましい。
付加硬化性ミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン及び(B)充填材を含有するものであってよい。
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なってもよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0024】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0025】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0026】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0027】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0028】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0029】
(B)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0030】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0031】
付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物は、上記以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0032】
添加剤の具体例としては、(A)オルガノポリシロキサンより重合度の低いジメチルシロキサンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、ジフェニルシランジオール及びα,ω-ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封止低分子シロキサン、シラン等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱性向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。
【0033】
-第2組成物-
外周部12は、発泡シリコーンゴムであるので、第2組成物としては、上記付加硬化性ミラブル型シリコーンゴム組成物に発泡剤が添加された組成物を用いることができる。
発泡剤としては、従来、弾力性層の形成に用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0034】
(第2工程)
第2工程は、押出された第1組成物と第2組成物とを同時に加熱硬化させる工程である。
加熱炉としては、HAV炉、IR炉、熱風炉等が挙げられる。
第1組成物及び第2組成物を硬化させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。
【0035】
第2工程を実施することによって、第1組成物から、引張強さが7N/mm以上であり、切断時伸びが250%以上であり、かつ引裂強さが20N/mm以上であるシリコーンゴムが形成される。また、第2組成物から、比重0.65以下の発泡シリコーンゴムが形成される。
本発明のシリコーンゴム複合体の製造方法のように、一体押出成形とすることにより、第1組成物及び第2組成物を同時に加熱硬化するので、図11に示すように、外周部12と骨格部11との界面13において、互いに架橋し合うため、化学結合が良好に行われ、骨格部11と外周部12との密着性を向上させることができる。また、外周部12においては、発泡しない骨格部11を始点として架橋及び発泡が進むため、セル径及びセル壁の厚さが均一なシリコーンゴムを形成することができる。セル径及びセル壁の厚さが均一であることにより、強度及び熱伝導率にムラが生じにくく、耐久性及び耐熱性に優れるシリコーンゴム複合体を得ることができる。
【0036】
本発明のシリコーンゴム複合体の他の実施形態について説明する。
図2に示すシリコーンゴム複合体20は、骨格部21及び外周部22を有し、軸方向Yに垂直な断面において、断面が矩形状を有するものである。骨格部11は、その断面において、中心Oから4つの角に向かって放射状に伸びる形状である。
【0037】
図3に示すシリコーンゴム複合体30は、骨格部31及び外周部32を有し、軸方向Yに垂直な断面において、L字状に折れ曲がった形状である。骨格部31は、2つの部材で押圧される辺30a及び30bに対応する領域内に形成され、中央にその断面の形状に沿ってL字状に形成されている。
【0038】
図4に示すシリコーンゴム複合体40は、骨格部41及び外周部42を有し、軸方向Yに垂直な断面において、X方向に3箇所、球状部位A、B及びCを有する形状である。骨格部41は、2つの部材で押圧される面40a及び40bに対応する領域内で、中央にその断面の形状に沿って同形状で形成されている。
【0039】
図5から図10に、様々な形状のシリコーンゴム複合体及び骨格部を示す。
図5に示すシリコーンゴム複合体50は、骨格部51及び外周部52を有し、軸方向Yに垂直な断面において、直線部50aと両端に湾曲部50b及び50cを有する略S字状である。骨格部51は、中央付近にその断面の形状に沿って略S字状に形成されている。
なお、骨格部51は、図6に示すシリコーンゴム複合体50Aのように、湾曲部50b及び50cに肉厚部51aを有していてもよい。
さらに、骨格部51は、図7に示すシリコーンゴム複合体50Bのように、中央付近から一部外れる湾曲部51bを有し、全体としてS字状に形成されていてもよい。
またさらに、骨格部51は、図8に示すシリコーンゴム複合体50Cのように、中央付近から外れる屈曲部51cを有していてもよい。
【0040】
図9に示すシリコーンゴム複合体60は、骨格部61及び外周部62を有し、軸方向Yに垂直な断面において、湾曲部60aと垂直部60bと水平部60cとを有する。シリコーンゴム複合体60における骨格部61は、それぞれの部位の中央に形成されている。骨格部61は、図10に示すシリコーンゴム複合体60Aのように、湾曲部60aにおいて肉厚部61aを有していてもよい。
【実施例
【0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1~実施例4]
図1において、L11=L10の構成とし、骨格部のゴム硬度を60°Hsとし、表1に示すような外周部及び特性を有するシリコーンゴム複合体を作製した。
【0043】
[実施例5]
骨格部のゴム硬度を40°Hsとした以外は、実施例1と同様に作製した。
【0044】
[実施例6]
骨格部のゴム硬度を80°Hsとした以外は、実施例1と同様に作製した。
【0045】
[比較例1]
骨格部を作製しなかった以外は、実施例1と同様に作製した。
【0046】
[参考例1]
硬度60°Hsの骨格部のみを作製した。
【0047】
[参考例2]
硬度40°Hsの骨格部のみを作製した。
【0048】
[参考例3]
硬度80°Hsの骨格部のみを作製した。
【0049】
上記実施例及び比較例のシリコーンゴム複合体について、マイクロスコープを用いて、全体厚さ、骨格部厚さ、外周部厚さ、総断面積、骨格部断面積、骨格部断面積比率を求めた。
【0050】
また、上記実施例及び比較例のシリコーン複合体、参考例のシリコーンゴムについて、比重、全体硬度、引張強さ、破断時伸び、及び引裂強さを以下の方法で測定した。
【0051】
(比重)
比重は、比重計(商品名「MD-300S」、アルファーミラージュ株式会社製)を用いて測定した。
【0052】
(全体硬度)
硬度は、ゴム硬度計(商品名「GS-721N」、株式会社テクロック製)を用いて測定した。
【0053】
(引張強さ、破断時伸び)
引張強さ及び破断時伸びは、JIS K6251に準拠して、試験片をダンベル3号とし、速度500mm/min、チャック間60mm、線間20mmで測定した。
【0054】
(引裂強さ)
引裂強さは、JIS K6252に準拠して、試験片をアングル形(切込なし)とし、速度500mm/min、チャック間60mmで測定した。
【0055】
(断熱性評価)
さらに、実施例1~4、比較例1、及び参考例1について、ゴムシート表面の温度推移を評価した。図12に評価方法を示す。
実施例、比較例及び参考例について、サンプルシート72(50mm×50mm×12mm)を作成し、200℃に加熱したホットプレート71上に載置し、0分、5分後及び10分後のサンプルシート表面温度を、接触式温度計73(ハンディー温度計 TP-500KT)で測定した。
評価結果のデータを表2に示し、グラフを図13に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
発明のシリコーンゴム複合体は、骨格部を有しない場合は、比較例1に示すように、全体硬度が18であり、骨格部を有する場合には、実施例に示すように、20~27の範囲である。本発明のシリコーンゴム複合体は、全体が低硬度でありながら、引張強度、破断時伸び、及び引裂強度等の強度を向上できることがわかった。
また、本発明のシリコーンゴム複合体は、外周部の発泡シリコーンゴム表面の温度上昇は、発泡シリコーンゴムだけの場合(比較例1)と同等であり、骨格部を有していても発泡シリコーンゴムだけの場合と同等の断熱性を有することがわかった。
【符号の説明】
【0059】
10、20、30、40、50、60 シリコーンゴム複合体
10a、10b、30a、30b、40a、40b 辺
11、21、31、41、51、61 骨格部
12、22、32、42、52、62 外周部
13 界面
71 ホットプレート
72 サンプルシート
73 接触式温度計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13