(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】架橋されたゴム組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240313BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20240313BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240313BHJP
C08K 5/156 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/05
C08K5/101
C08K5/156
(21)【出願番号】P 2020039448
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598118776
【氏名又は名称】山本香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 亘
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 卓
(72)【発明者】
【氏名】大井 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤間 友章
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳邦
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-274040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されたゴム組成物であって、
ゴム組成物には、香料成分として
β-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含む香料が添加されており、
ゴム臭が感じられないゴム組成物。
【請求項2】
架橋されたゴム組成物であって、
ゴム組成物には、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを含む香料が添加されており、
ゴム臭が感じられないゴム組成物。
【請求項3】
架橋されたゴム組成物であって、
ゴム組成物には、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む香料が添加されており、
ゴム臭が感じられないゴム組成物。
【請求項4】
架橋されたゴム組成物であって、
ゴム組成物には、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む香料が添加されており、
ゴム臭が感じられないゴム組成物。
【請求項5】
ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
架橋がイオウ架橋である、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
架橋が有機過酸化物架橋である、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項6に記載のゴム組成物を製造する方法であって、
イオウを含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を架橋して、
架橋されたゴム組成物を得る、ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のゴム組成物を製造する方法であって、
有機過酸化物を含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を架橋して、架橋されたゴム組成物を得る、ゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のゴム組成物を含むマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋されたゴム組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架橋されたゴム組成物は、その柔軟性を利用して、ゴムシートやマット、シール部材、パッキング、ゴム製ダクト、ゴムチューブ、ゴムホース、管継手等、タイヤ、スポーツ用品等、多彩な用途に使用されている。
【0003】
架橋されたゴムは、いわゆるゴム臭とも呼ばれる臭気を有していることが多い。この臭気は異臭と認識され不快に感じることが多いため、ゴム臭を消臭する試みが行われている。
例えば、特許文献1には、タイヤ外表面領域に芳香性の香料を保持させて、加硫ゴムの臭いに起因する不快な雰囲気をなくし、好まれる芳香を発散しうる空気入りタイヤを提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される技術は、ゴム臭をより強い芳香により覆い隠して(いわゆるマスキング効果により)ゴム臭を感じにくくする技術であった。そのため、ゴム臭が強ければ、マスキングするための芳香もより強い芳香にせざるを得ず、追加した強い芳香が、かえって不快に感じられるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、過度に強い芳香を追加することなく、不快なゴム臭が感じられない架橋ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1に記載される技術では、快適と考えられる香料の香りが選択され、ゴム臭に追加される。発明者らが検討を行ったところ、従来技術では、かなり人工的な化合物の印象を有するゴム臭と、追加された香料の芳香とでは香りの相性が悪くなりやすく、ゴム臭と香料の芳香が単に混じりあうだけで、異臭として感じられるゴム臭がなかなか消えず、ゴム臭を感じてしまっているという問題が判明した。単純によい香りを追加したからといって、ゴム臭そのものを感じなくできるわけではない。こうした問題が、追加する芳香性香料の香りをより強くせざるを得ない原因の一つとなっている。
【0008】
発明者らは、架橋されたゴム組成物が発しやすいゴム臭特有のにおいがあることに着目した。
そして、発明者らは、この架橋されたゴムに特有のにおいに着目し、このにおいに特定の香料の香りを加えることにより、このにおいを他の香りとひとまとまりに感じさせることを着想した。発明者らはさらに鋭意検討した結果、特定の香り成分を含む香料の香りを追加することによって、架橋されたゴムに特有のにおいをひとまとまりの他の香りとして感じさせることができ、ゴム臭としては感じさせなくすることができることを発見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、架橋されたゴム組成物であって、ゴム組成物には、香料成分としてβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第1発明)。
【0010】
また、本発明は、架橋されたゴム組成物であって、ゴム組成物には、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第2発明)。
また、本発明は、架橋されたゴム組成物であって、ゴム組成物には、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第3発明)。
また、本発明は、架橋されたゴム組成物であって、ゴム組成物には、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む香料が添加されており、ゴム臭が感じられないゴム組成物である(第4発明)。
【0011】
また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む(第5発明)。
また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、架橋がイオウ架橋である(第6発明)。また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、架橋が有機過酸化物架橋である(第7発明)。
【0012】
また、本発明は、第6発明に記載のゴム組成物を製造する方法であって、イオウを含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を架橋して、架橋されたゴム組成物を得る、ゴム組成物の製造方法である(第8発明)。
また、本発明は、第7発明に記載のゴム組成物を製造する方法であって、有機過酸化物を含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を架橋して、架橋されたゴム組成物を得る、ゴム組成物の製造方法である(第9発明)。
また、本発明は、第1発明ないし第7発明のいずれかに記載のゴム組成物を含むマットである(第10発明)。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴム組成物(第1発明ないし第4発明)や本発明のゴム組成物の製造方法(第8発明、第9発明)、および、本発明のマット(第10発明)によれば、過度に強い芳香を追加することなく、架橋ゴムに由来する臭いが他の香りと一体となって不快なゴム臭が消え、ゴム臭が感じられない架橋ゴム組成物やマットが提供される。
【0014】
第1発明のように、ゴム組成物がβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含む場合には、ゴム組成物の香りを、フローラル系の香りへと方向付けできる。
第2発明のように、ゴム組成物が酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを含む場合には、ゴム組成物の香りを、グリーン系の香りへと方向付けできる。
第3発明のように、ゴム組成物が、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む場合には、ゴム組成物の香りを、すがすがしくみずみずしい印象の花の香りへと方向付けできる。
第4発明のように、ゴム組成物が、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含む場合には、ゴム組成物の香りを、みずみずしくフレッシュな印象のフルーツや花の香りに方向付けできる。
【0015】
さらに、第5発明ないし第7発明によれば、架橋ゴムに由来する臭いがより効果的に消えて、ゴム臭がより感じられなくなる。
【0016】
また、第8発明もしくは第9発明のゴム組成物の製造方法によれば、香料がゴム組成物全体に分散して配合されることになるので、ゴム組成物全体にわたって香料成分とゴム臭の原因物質の比率が一定にできる。そのため、空気中に放出される香料成分とゴム臭の原因物質の比率が変化しにくく、ゴム臭が消えた良好な芳香が安定的に維持されうる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0018】
本発明のゴム組成物は、架橋されたゴム組成物である。ゴム組成物は、用途に応じて所定の形状に成形された状態で架橋されている。ゴム組成物の用途としては、ゴムシートやマット、クッション材、シール部材、ウェザストリップ、緩衝材、パッキング、ゴム製ダクト、ゴムチューブ、ゴムホース、管継手、手袋、カバー、アクセサリ、スポーツ用品(例えば各種グリップやボール、ヨガマット、水中メガネ、シュノーケル、フェイスマスク、伸縮バンド等)等が例示できるが、これらに限定されない。
【0019】
ゴム組成物を構成するゴムポリマーとしては、イオウや有機過酸化物などの架橋剤により架橋可能なゴムポリマーが使用できる。ゴムポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(AR)、ブチルゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示されるが、これらに限定されない。これらゴムポリマーを単独で、もしくは適宜混合して使用してもよい。また、ゴムポリマーに各種官能基等が導入されていてもよい。
【0020】
ゴム組成物に含まれるゴムポリマーは、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーであってもよい。そのようなゴムポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが例示されるが、これらに限定されない。
【0021】
ゴム組成物は、架橋剤としてイオウが配合されて、イオウ架橋されたものであってもよい。ゴム組成物には、所定量のイオウの他、架橋促進剤や安定剤、耐老化剤、補強材、充填材などが配合されていてもよい。
【0022】
ゴム組成物は、架橋剤として有機過酸化物が配合されて、有機過酸化物架橋されたものであってもよい。ゴム組成物には、所定量の有機過酸化物の他、架橋助剤(例えばTAIC等)、架橋促進剤や安定剤、耐老化剤、補強材、充填材などが配合されていてもよい。
【0023】
ゴム組成物の硬度は特に限定されず、例えばJIS―K 6253に規定されるデュロA硬度で30度~95度、好ましくは40度~90度程度であってもよい。また、ゴム組成物は発泡したものであってもよい。
【0024】
本発明のゴム組成物には香料が添加されている。香料は、香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む。これら香料成分は、いずれかを単独で添加してもよいが、これら香料成分のうち複数を組み合わせて添加するようにしてもよい。また、香料は、他の香料成分を含んでもよい。なお、以下の記載において、香料成分の記載として、和名や英名、CAS番号等を記載するが、香料成分は、単一の化学物質の名称で示す場合もあれば、複数の化学物質が混合された組成物の名称や、汎用される香料名で示す場合もある。
【0025】
そして、本発明のゴム組成物では、添加された香料の香りによりゴム臭が感じられない。ここで、ゴム臭が感じられないとは、ゴム臭の原因成分が消滅したことを意味するのではなく、臭いをかいでも、ゴム臭がしていることがわからなくなること、即ち、ゴム臭が消えたように感じることを意味する。
【0026】
すなわち、香料が配合されていない場合には、架橋されたゴム組成物では、ゴム組成物に含有される物質に由来する架橋したゴムに特有のにおい、すなわちゴム臭が生ずるものであるが、本発明のゴム組成物では、特定の香り成分を含む香料の香りとゴム組成物に由来するゴム臭とが一体にまとまった香りとして感じられ、ゴム臭を独立したにおいとして感じなくなっている。
【0027】
ここで、ゴム組成物に由来するゴム臭としては、典型的には、新品のタイヤ(例えばイオウ架橋したタイヤ)の匂いや、新品のゴムマット(例えば有機過酸化物架橋したゴムマット)の匂いが、ゴム組成物に由来するゴム臭として例示される。
【0028】
ゴム臭の原因物質(臭気成分)の詳細は定かではないが、ゴム組成物に含まれる、ゴムポリマーを重合する際に残存した低分子量成分(特にモノマー成分等)や、架橋剤や架橋助剤等の残滓や生成化合物、不純物等がゴム臭の原因物質となっているものと推定される。
ゴム臭の原因物質となりうるゴムポリマーを重合する際に残存したモノマー成分としては、例えば、ジエン成分のモノマーが例示される。また、イオウが架橋剤として使用されると、ゴム組成物中に有機イオウ化合物が生成することがあり、こうしたイオウ化合物も、ゴム臭の原因物質となりうる。また、有機過酸化物により架橋が行われると、架橋剤や架橋助剤の分解により、アミン類やアルデヒド、ケトン類が生成することがあり、これらが、ゴム臭の原因物質となりうる。こうした臭いの原因物質が組み合わされた際のにおいを、人間はいわゆるゴム臭として感じていたものと推定される。
【0029】
上記ゴム組成物の製造方法は、公知のゴム組成物の製造方法に準じる方法によることができる。ゴム組成物に香料を添加する手段は特に限定されず、架橋されたゴム組成物に対し、香料を塗布するなどして含侵させるようにしてもよい。
好ましくは、未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、架橋を行って、香料が添加されたゴム組成物を製造することが好ましい。必須ではないが、香料の練りこみは、イオウや有機過酸化物の配合よりも後のタイミングもしくは同じタイミングで行われることが好ましい。香料の練りこみは、通常のゴムの練りこみと同じく、ニーダーや練りロール等により行うことができる。またゴムの架橋は、通常のゴムの架橋と同じく、架橋反応が開始・加速する所定の架橋温度以上に未架橋ゴム組成物を加熱することにより行うことができる。
【0030】
例えば、イオウを含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を成形・架橋して、香料が添加され架橋されたゴム組成物を得ることができる。あるいは、有機過酸化物を含む未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、ゴム組成物を成形・架橋して、香料が添加され架橋されたゴム組成物を得ることができる。
【0031】
未架橋のゴム組成物に香料を練り込んだ後に、架橋を行って、香料が添加されたゴム組成物を製造するようにすれば、香料がゴム組成物全体に分散して均一に配合されることになり、ゴム組成物全体にわたって、香料成分とゴム臭の原因物質の比率を一定にできる。そのため、ゴム組成物から空気中に放出される香料成分とゴム臭の原因物質の比率が長期間にわたって変化しにくく、ゴム臭が消えた良好な芳香が安定的に維持されやすくなる。
【0032】
以下、本発明のゴム組成物に添加される香料に含まれる香料成分の配合の実施形態について、より具体的かつ詳細に説明する。以下の説明において、香料成分の名称はなるべくchemical Bookに記載された名称で記載した。また、単一成分からなる合成香料等、明らかなものの一部について、各成分の英名やCAS番号をカッコ内に記載した。
【0033】
(香料配合の第1実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、本発明のゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、酢酸CIS-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate: CAS-No 3681-71-8)を含むことが好ましい。酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノール(cis-3-hexenol: CAS-No 928-96-1)が共に含まれる、すなわち併用されることが特に好ましい。香料成分酢酸CIS-3-ヘキセニルの添加により、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、草原や森、緑茶と言ったいわゆるグリーン系の香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。また、酢酸CIS-3-ヘキセニルとCIS-3-ヘキセノールを併用することにより、グリーン系への香りの方向付けがより顕著となる。
【0034】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを共に含ませることが特に好ましい。香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含むようにすれば、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、すがすがしくみずみずしい印象の花の香りへと方向付けられ、よりゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、これら4つの香料成分のうち3つないし4つを含ませることが特に好ましい。
【0035】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを共に含ませることが特に好ましい。香料成分として、ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかと、酢酸CIS-3-ヘキセニルと、を含むようにすれば、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしくフレッシュな印象のフルーツや花の香りに方向付けられ、よりゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、これら3つの香料成分のすべてを含ませることが特に好ましい。
【0036】
また、香料に、香料成分として酢酸CIS-3-ヘキセニルを含ませる場合には、他の香料成分として、
3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル(Citronellyl nitrile : CAS-No 51566-62-2)、
7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(Calone : CAS-No 28940-11-6)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸2-メチルブチル(2-methyl butyl acetate : CAS-No 624-41-9)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
ヘプタン酸アリル(Allyl heptanoate : CAS-No 142-19-8)、
酪酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(D.B.C-n-butyrat : CAS-No 10094-34-5)、
DL-2-メチル酪酸エチル(Ethyl 2-methyl butyrate : CAS-No 7452-79-1)、
アセト酢酸エチル(Ethyl acet acetate : CAS-No 141-97-9)、
酪酸エチル(Ethyl butyrate : CAS-No 105-54-4)、
イソ吉草酸エチル(Ethyl iso-valerate : CAS-No 108-64-5)、
γ-ノナノラクトン(Gamma nonalactone : CAS-No 104-61-0)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
ヘキサン酸ヘキシル(Hexyl caproate : CAS-No 6378-65-0)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
DL-2-メチル酪酸メチル(Methyl 2 methyl butyrate : CAS-No 868-57-5)、
2-メチルプロパン酸2-フェニルエチル(Phenyl ethyl iso butyrate : CAS-No 103-48-0)、
イソ酪酸2-フェノキシエチル(Phenoxy ethyl iso butyrate : CAS-No 103-60-6)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール(Ethyl linalool : CAS-No 10339-55-6)、
リンゴベース、
酢酸 3-メチル-2-ブテニル(Prenyl acetate : CAS-No 1191-16-8)、
2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(Fructone : CAS-No 6413-10-1)、
cis-3-ヘキセン-1-オール(Cis-3-hexenol : CAS-No 928-96-1)、
シクロヘキサンプロピオン酸アリル (Allyl cyclohexyl propionate : CAS-No 2705-87-5)、
プロピオン酸ブチル(Butyl propionate : CAS-No 590-01-2)、
酪酸ブチル(Butyl butyrate : CAS-No 109-21-7)、
プロピオン酸ベンジル(Benzyl propionate : CAS-No 122-63-4)
等を配合することが好ましい。これら香料成分が酢酸CIS-3-ヘキセニルと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがグリーン系の香りにまとまりやすい。
【0037】
また、上記香料成分に加え、さらに、
ヘキサン酸アリル(Allyl hexanoate : CAS-No 123-68-2)、
ベンズアルデヒド(Benzaldehyde : CAS-No 100-52-7)、
3-(4-イソプロピルフェニル)イソブチルアルデヒド(Cyclamen aldehyde : CAS-No 103-95-7)、
β-イオノン(Ionone beta : CAS-No 14901-07-6)、
酢酸1-フェニルエチル(Styrallyl acetate : CAS-No 93-92-5)、
1-ヘキサノール(CAS-No 111-27-3)、
n-オクタナール(CAS-No 124-13-0)、
ヘプタナール(CAS-No 111-71-7)、
ノナナール(CAS-No 124-19-6)、
クマリン(CAS-No 91-64-5)、
ダマスコンα(CAS-No 43052-87-5)、
2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(CAS-No 18479-58-8)、
1,3,4,6,7,8ヘキサヒドロ4,6,6,7,8,8ヘキサメチルシクロペンタγ2ベンゾピラン(CAS-No 1222-05-5)、
安息香酸ベンジル(CAS-No 120-51-4)、
ゲラニオール(CAS-No 106-24-1)、
オキサシクロヘキサデセン-2-オン(Oxacyclohexadec-12-en-2-one, (12E)-)(CAS-No 111879-80-2)、
インドール(CAS-No 120-72-9)、
1-メチル-3-(2,4,4-トリメチル-1-シクロヘキセン-3-イル)-2-プロペン-1-オン(CAS-No 6901-97-9)、
イロン(CAS-No 54992-91-5)、
(2S,5S)-α,α-ジメチル-5-メチル-5β-ビニルテトラヒドロフラン-2α-メタノール(CAS-No 1365-19-1)、
リナロール(CAS-No 78-70-6)、
p-メンタン-3-オン(CAS-No 10458-14-7)、
4-(1-プロペニル)-1,2-ジメトキシベンゼン(CAS-No 93-16-3)、
ネロール(CAS-No 106-25-2)、
ネロリドール (cis-, trans-混合物)(CAS-No 7212-44-4)、
2'-アセトナフトン(CAS-No 93-08-3)、
2-フェニルエチルアルコール(CAS-No 60-12-8)、
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(CAS-No 28219-60-5)、
rac-(R*)-α,α,4-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-メタノール(CAS-No 8000-41-7)、
ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド (CAS-No 27939-60-2)、
イソブチルメチルテトラヒドロピラノール(Florol : CAS-No 63500-71-0)、
ジヒドロジャスモン酸メチル (cis-, trans-混合物)(Methyl dihydro jasmonate : CAS-No 24851-98-7)、
ローズ・ジャスミンベース、
オレンジ油(Orange sweet oil : CAS-No 8008-57-9)、
エチレングリコールブラシラート(MUSK T : CAS-No 105-95-3)、
(-)-アンブロキシド(AMBROXAN : CAS-No 6790-58-5)、
サリチル酸 cis-3-ヘキセン-1-イル(Cis-3-hexenyl salicylate : CAS-No 65405-77-8)、
酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(DBCA : CAS-No 151-05-3)、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン-8-オールアセタート(Jasmacyclene : CAS-No 5413-60-5)、
酢酸3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル (酢酸ゲラニル)(Geranyl acetate : CAS-No 105-87-3)、
酢酸リナリル (酢酸3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル)(Linalyl acetate : CAS-No 115-95-7)、
ハバノライド(HABANOLIDE : CAS-No 34902-57-3, 111879-80-2)、
4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(Raspberry ketone : CAS-No 5471-51-2)、
α-ヘキシルシンナムアルデヒド(α-Hexyl cinnamic aldehyde : CAS-No 101-86-0)、
2-エチル-3-ヒドロキシ-4-ピロン(Ethyl maltol : CAS-No 4940-11-8)、
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよいグリーン系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0038】
(香料配合の第2実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、本発明のゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、β-シトロネロール(citronellol: CAS-No 106-22-9),酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル(4-tert-Butylcyclohexyl acetate: CAS-No 32210-23-4),ヘプタン酸アリル(Allyl heptanoate: CAS-No 142-19-8)のいずれかを含むことが好ましい。中でも、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを共に含むことが特に好ましい。香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを添加することにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、ユリやスズランといったいわゆるフローラル系のすがすがしい香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのうち2つ、もしくは3つを含むことが特に好ましい。香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを併用すると、特にフローラル系の香りへの方向付けが顕著なものとなる。
【0039】
また、香料に、香料成分として、β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル、ヘプタン酸アリルのいずれかを含ませる場合には、酢酸CIS-3-ヘキセニルを共に含ませることが特に好ましい。これにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしい花束のような香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。
【0040】
香料に、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルのいずれかを含ませる場合には、他の香料成分として、
2-フェニルエチルアルコール(phenethyl alcohol : CAS-No 60-12-8)、
ゲラニオール(geraniol : CAS-No 106-24-1)、
酢酸2-メチルブチル(2-methyl butyl acetate : CAS-No 624-41-9)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
cis-3-ヘキセン-1-オール(Cis-3-hexanol : CAS-No 928-96-1)、
酢酸cis-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate : CAS-No 3681-71-8)、
酪酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(D.B.C-n-butyrat : CAS-No 10094-34-5)、
DL-2-メチル酪酸エチル(Ethyl 2-methyl butyrate : CAS-No 7452-79-1)、
アセト酢酸エチル(Ethyl acet acetate : CAS-No 141-97-9)、
酪酸エチル(Ethyl butyrate : CAS-No 105-54-4)、
イソ吉草酸エチル(Ethyl iso-valerate : CAS-No 108-64-5)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)、
γ-ノナノラクトン(Gamma nonalactone : CAS-No 104-61-0)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
ヘキサン酸ヘキシル(Hexyl caproate : CAS-No 6378-65-0)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
DL-2-メチル酪酸メチル(Methyl 2 methyl butyrate : CAS-No 868-57-5)、
2-メチルプロパン酸2-フェニルエチル(Phenyl ethyl iso butyrate : CAS-No 103-48-0)、
イソ酪酸2-フェノキシエチル(Phenoxy ethyl iso butyrate : CAS-No 103-60-6)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール(Ethyl linalool : CAS-No 10339-55-6)、
リンゴベース、
酢酸 3-メチル-2-ブテニル(Prenyl acetate : CAS-No 1191-16-8)、
2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル(Fructone : CAS-No 6413-10-1)、
シクロヘキサンプロピオン酸アリル (Allyl cyclohexyl propionate : CAS-No 2705-87-5)、
プロピオン酸ブチル(Butyl propionate : CAS-No 590-01-2)、
酪酸ブチル(Butyl butyrate : CAS-No 109-21-7)、
プロピオン酸ベンジル(Benzyl propionate : CAS-No 122-63-4)
等を配合することがより好ましい。これら香料成分がβ-シトロネロールや酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリルと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがフローラル系の香りにまとまりやすい。
【0041】
また、上記香料成分に加え、さらに、
クマリン(coumarin : CAS-No 91-64-5)、
p-アニスアルデヒド(anisaldehyde : CAS-No 123-11-5)、
テトラヒドロリナロール(tetrahydrolinalool : CAS-No 78-69-3)、
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(santalinol : CAS-No 28219-60-5)、
2-アセチル-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン(Amber Fleur : CAS-No 54464-57-2)、
イソブチルメチルテトラヒドロピラノール(Florol : CAS-No 63500-71-0)、
ジヒドロジャスモン酸メチル (cis-, trans-混合物)(Methyl dihydro jasmonate : CAS-No 24851-98-7)、
ローズ・ジャスミンベース、
オレンジ油(Orange sweet oil : CAS-No 8008-57-9)、
エチレングリコールブラシラート(MUSK T : CAS-No 105-95-3)、
(-)-アンブロキシド(AMBROXAN : CAS-No 6790-58-5)、
サリチル酸 cis-3-ヘキセン-1-イル(Cis-3-hexenyl salicylate : CAS-No 65405-77-8)、
酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル(DBCA : CAS-No 151-05-3)、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン-8-オールアセタート(Jasmacyclene : CAS-No 5413-60-5)、
酢酸3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル (酢酸ゲラニル)(Geranyl acetate : CAS-No 105-87-3)、
酢酸リナリル (酢酸3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル)(Linalyl acetate : CAS-No 115-95-7)、
ハバノライド(HABANOLIDE : CAS-No 34902-57-3, 111879-80-2)、
4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(Raspberry ketone : CAS-No 5471-51-2)
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよくすがすがしいフローラル系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0042】
(香料配合の第3実施形態)
過度に強い香りを追加せずに、ゴム臭を特定の香りへと方向付けして感じなくさせるとの観点から、本発明のゴム組成物に添加される香料は、香料成分として、ヘキサン酸アリル(Allyl hexanoate: CAS-No 123-68-2),カローン(Calone: CAS-No 28940-11-6)のいずれかを含むことが好ましい。これら香料成分の添加により、ゴム臭を含むゴム組成物全体の香りが、パイナップルやモモといったいわゆるフルーツ系の甘酸っぱい香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。香料成分として、ヘキサン酸アリル,カローンの双方を含むことが特に好ましく、フルーツ系の香りへの方向付けがより顕著なものとなる。
【0043】
また、香料に、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませる場合には、酢酸CIS-3-ヘキセニルを共に含ませることが特に好ましい。これにより、ゴム臭成分を含むゴム組成物全体の香りが、みずみずしいフルーティーな香りへと方向付けられ、ゴム臭が感じられにくくなる。
【0044】
香料に、香料成分としてヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませる場合には、他の香料成分として、
cis-3-ヘキセン-1-オール(cis-3-hexenol : CAS-No 928-96-1)、
酢酸cis-3-ヘキセニル(cis-3-hexenyl acetate : CAS-No 3681-71-8)、
オクタン酸2-プロペニル(Aldehyde c-19 : CAS-No 4230-97-1)、
酪酸エチル(Ethyl n-butyrate : CAS-No 105-54-4)、
γ-ウンデカノラクトン(Gamma undecalactone : CAS-No 104-67-6)、
酢酸ヘキシル(Hexyl acetate : CAS-No 142-92-7)、
酢酸イソアミル(Iso-amyl acetate : CAS-No 123-92-2)、
酢酸2-(tert-ブチル)シクロヘキシル(OTBCHA : CAS-No 88-41-5)、
3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル(Citronellyl nitrile : CAS-No 51566-62-2)、
γ-デカノラクトン(Gamma decalactone : CAS-No 706-14-9)
等を配合することがより好ましい。これら香料成分がヘキサン酸アリルやカローンと共に配合されると、ゴム組成物全体の香りがフルーツ系の香りにまとまりやすい。
【0045】
また、上記香料成分に加え、さらに、
α-ヘキシルシンナムアルデヒド(α-Hexyl cinnamic aldehyde : CAS-No 101-86-0)、
2-エチル-3-ヒドロキシ-4-ピロン(Ethyl maltol : CAS-No 4940-11-8)、
1,3,4,6,7,8ヘキサヒドロ4,6,6,7,8,8ヘキサメチルシクロペンタγ2ベンゾピラン(Galaxolide : CAS-No 1222-05-5)、
ベンズアルデヒド(Benzaldehyde : CAS-No 100-52-7)、
3-(4-イソプロピルフェニル)イソブチルアルデヒド(Cyclamen aldehyde : CAS-No 103-95-7)、
β-イオノン(Ionone beta : CAS-No 14901-07-6)、
酢酸1-フェニルエチル(Styrallyl acetate : CAS-No 93-92-5)
などを配合してもよい。
これら香料を適宜追加して組み合わせることにより、ゴム臭を感じにくくしながら、まとまりよくフルーツ系の香りが全体の香りとして実現されうる。
【0046】
以上のように、ゴム組成物に香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含ませると、ゴム組成物のゴム臭が消える。すなわち、ゴム臭を感じなくすることができる。ゴム臭を感じなくなるメカニズムの詳細は不明であるが、ゴム臭の原因物質である、モノマー成分や有機イオウ化合物、アミン類などといった、ゴムに特有の臭気成分と、上記香料成分が、鼻で同時に感じられた際に、ゴム臭とは別のにおい/香りとして認識されやすくなって、ゴム臭が感じられなくなるものと推定される。
【0047】
このような、ゴム臭を他の香りに認識させて消す作用は、香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンやこれら香料成分の固有の組み合わせに特有の性質であることを発明者らは発見した。他の香料成分、例えば、クマリンやオイゲノールといった香料成分では、ゴム臭の臭気成分との相性が悪いのか、香料の香りがする一方で、ゴム臭はゴム臭として感じられ、香料のいい香りとゴム臭の不快な香りが混じった香りとして感じられてしまい、うまくゴム臭が消えない。
【0048】
なお、ゴムには多様な種類があり、それぞれのゴム臭は厳密には異なっているが、ゴム臭の主要な原因物質は、ゴム組成物に含まれるモノマー成分や、イオウ架橋により生ずる有機イオウ化合物や、過酸化物架橋の際に生ずるアミン類やアルデヒド、ケトン類であることが多く、これらは多様なゴムのゴム臭に共通する臭気成分となっている。従って、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含ませることにより、多様なゴム組成物のゴム臭を消すことができる。
【0049】
例えば、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む場合には、ジエンモノマーや関連する低分子量化合物が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。これらジエンモノマーはゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物が、ジエンをモノマー成分として含んで重合されたゴムポリマーを含む場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。
【0050】
例えば、ゴム組成物の架橋がイオウ架橋である場合には、イオウ架橋により生ずる有機イオウ化合物が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。有機イオウ化合物はゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物の架橋がイオウ架橋である場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。
【0051】
例えば、ゴム組成物の架橋が有機過酸化物架橋である場合には、有機過酸化物架橋により生ずるアミン類やアルデヒド、ケトン類が、架橋されたゴム組成物中に残存しやすい。これらアミン類やアルデヒド、ケトン類は、ゴム組成物のゴム臭の原因物質として典型的な臭気成分となる。後述する実施例の評価結果からも明らかなように、上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンは、ゴム組成物の架橋が有機過酸化物架橋である場合にも、効果的にゴム臭を消すことができる。
【0052】
上記香料成分β-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含むゴム組成物により各種ゴム製品を製造すれば、ゴム製品から不快なゴム臭ではなく好ましい香気を発するようにできる。例えば、マットを上記ゴム組成物により製造すれば、マットからゴム臭が消える一方で、いい香りが出るようになって、特に室内で使用するマットに適したマットになる。
【0053】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。上記実施形態の説明や下記実施例の説明では、特定の香り成分の組み合わせを具体的に例示して、ゴム臭を特定の香りにして消す例を示したが、ゴム臭が好ましい香りになって消えるのであれば、添加する香り成分やそれらの組み合わせは他の組み合わせであってもよい。
【0054】
得られた架橋ゴム組成物は、ゴム臭が他の香りになって消えている点を除けば、通常のイオウ架橋されたゴム組成物と同様に取り扱い、使用することができる。ゴム組成物の用途は、例えば、ゴムシートやマットレス、枕、クッション材、ゴム製ダクト、ゴムチューブ、ゴムホース、スポーツ用品、ゴムバンド、アクセサリ等、人間の生活空間に近い場所でゴム部材が使用される用途にも好ましく使用できる。ゴム組成物が利用される分野は特に制限されない。
【実施例】
【0055】
以下、添加する香料成分の具体的な配合例と、各配合例において、ゴム臭が香料の香りと一体化されてどのような香りになって、ゴム臭として感じられなくなったのかを例示する。
【0056】
(香料の調整)
以下のように、各実施例や比較例のゴム組成物に配合する香料を調製した。各香料の配合において、配合量は重量部で示しており、微量な香料成分は記載を表から省略し、代表的な微量香料成分を説明した。また、各香料には、溶剤としてジオクチルフタレートをそれぞれ適量配合し、粘度等を調整した。
【0057】
(香料1)
表1に示すような配合で香料1を調製した。この香料はβ-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを含んでおり、前記第2実施形態の香料配合に対応する。表1の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0058】
【0059】
(香料2)
表2に示すような配合で香料2を調製した。この香料はヘキサン酸アリルとカローンと酢酸CIS-3-ヘキセニルを含んでおり、前記第3実施形態もしくは第1実施形態の香料配合に対応する。表2の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0060】
【0061】
(香料3)
表3に示すような配合で香料3を調製した。この香料はCIS-3-ヘキセノールと酢酸CIS-3-ヘキセニルを含んでおり、前記第1実施形態の香料配合に対応する。
この香料は、表3の香料成分の他に、配合量が1重量部未満の微量な香料成分として、インドール、n-オクタナールなどを含んでいる。表3の香料成分の記載では、他の微量な香料成分の記載は省略した。
【0062】
【0063】
(香料4)
表4に示すような配合で香料4を調製した。この香料は酢酸CIS-3-ヘキセニルとヘプタン酸アリルを含んでおり、前記第1実施形態もしくは第2実施形態の香料配合に対応する。表4の香料成分の記載では、配合量が1重量部未満の微量な香料成分の記載は省略した。
【0064】
【0065】
(対比香料1)
表5に示すような配合で対比香料1を調製した。この対比香料はβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含まない。この香料は、特許文献1(特開平7-69003号)の表2に記載された従来技術の香料配合に対応する。
【0066】
【0067】
(対比香料2)
表6に示すような配合で対比香料2を調製した。この対比香料はβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンを含まない。具体的には、この香料は、前記香料1(表1)の香料配合から、β-シトロネロールと酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシルを除いたものに対応する対比香料である。
【0068】
【0069】
(ゴム組成物サンプルの調製)
表7、表8に示すようなゴムの種類(アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、架橋方法(イオウ架橋、有機過酸化物架橋)、香料の組み合わせで、各香料と未架橋ゴム組成物を練りロールにより混錬した。表中の数字は重量部である。
なお、イオウ架橋するゴム組成物には、加工助剤(ステアリン酸等)や架橋促進剤(ノクセラーDM-P等)等を添加している。また、有機過酸化物架橋の架橋剤はパーオキサイド(パーヘキサ等)や架橋促進剤(活性亜鉛華等)等を添加している。
【0070】
混錬した未架橋ゴム組成物を厚さ2mmのシート状にロール成形して、ギアオーブンにより加熱して架橋し、各実施例、比較例の架橋されたゴム組成物を得た。ゴムや香料の欄の数値は重量部である。また、比較例4、比較例5、比較例6は、香料を配合していないゴム組成物であり、これら比較例はゴム臭がする通常のゴム組成物の例として作成した。
【0071】
【0072】
【0073】
作成された各架橋ゴム組成物製のシートを、10cmx10cmの大きさに切り出して香り評価サンプルを作成し、香りの評価を行った。香りの評価はゴムの製造に関与する一般人3名(A,B,C)、および香気の鑑定や調香等、香りに関連する業務に携わる者3名の評価者(D,E,F)により行った。各評価者は、それぞれ、比較例4,5,6のゴム臭を確認したのちに、実施例やその他の比較例の評価サンプルのにおいを順不同に嗅いで、各評価サンプルの評価を付けた。
【0074】
各サンプルに対する香り評価試験の評価項目は「ゴム臭の有無(ゴム臭がわかるか/感じるか?)」と「香り/においの良さ」、「香り/においのつよさ」である。全般に評点の数字が大きいほど、人間の生活空間における香りとして適している。評点と評価レベルの対応を表9に示す。一般人の評価者は、においの印象や強さについてコメントした。また、調香師である評価者は、各評価サンプルが、どのような臭いに感じられるかについて、より具体的な言葉で表現し、コメントした。
【0075】
「ゴム臭の有無」
評価サンプルの匂いを嗅いだ際に、「新品のタイヤの匂い」等を連想させるようなゴム臭を感じたかどうかを、「1:ゴム臭そのものである/2:ゴム臭がするとわかる/3:気を付けるとゴム臭がわかる/4:集中しないとゴム臭がわからない/5:ゴム臭がわからない」の5段階評価で評点を付けた。評点4および評点5であると、一般の人にはゴム臭がほとんど感じられないレベルである。
【0076】
「香り/においの良さ」
評価サンプルの全体の香りの調子や調和度、違和感などを総合して、よい香りかどうかを、「1:嫌な臭い/2:変な臭い/3:普通の臭い/4:良い香り/5:とても良い香り」の5段階評価で評点を付けた。
【0077】
「香り/においの強さ」
評価サンプルの香りがどのくらい強く感じられたかを評価し、きついにおいに感じられた際には、評価時にその旨コメントするようにした。
【0078】
【0079】
各実施例、各比較例に対する評価結果を表10ないし表14に示す。表10、表11は、一般人の評価結果である。表10が実施例に対する一般人(A,B,C)の評価結果であり、表11が各比較例に対する一般人の評価結果である。
表12には、香りの評価に関する業務に携わる3人の評価者(D,E,F)の評点の平均値と評価コメントを示している。それぞれの評価者の評点は表13、表14に示している。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
これら表に示された評価結果によれば、実施例1ないし実施例6の評価サンプルでは、ゴム臭がほとんど消えて感じられなくなっている。また、これら実施例では、ゴム組成物の香りが好ましいものとなっている。特に、一般人の評価では、実施例ではほとんどゴム臭が感じられなくなっている。調香師による評価では、調香師の臭いを感知する能力が非常に高いため、一般人と比べると、評点が下がる傾向がみられるが、それでもなお、ほとんどゴム臭がわからないとの評価結果となった。
【0086】
また、これら実施例では、ゴム組成物の香りの強さ(全体的なレベル)はそれほど強くなく、はっきりとした香りやほのかな香りがする香りのレベルになっていた。すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されていれば、添加する香料の香りを極端に強くしなくても、ゴム臭を感じなくすることができる。
【0087】
一方、比較例1、比較例2では、各実施例と同じレベルで所定量の香料が添加されたにも関わらず、ゴム臭がわかりやすい。これら比較例では、調香師だけでなく、一般人にもゴム臭が感じられてしまう。その結果、香料の香りとゴム臭とが混じったような変な臭いがするようになってしまっている。そして、感じられるにおいのレベルもやや鼻につくレベルとなってしまっている。すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかが香料に含まれていないと、ゴム臭が消えにくいことがわかった。
【0088】
比較例3は、ゴム臭が感じられなくなることを意図し、香料の添加量を極端に多くした評価サンプルである。この評価サンプルでは、ゴムに添加できる限界の量をほぼ超える程度まで香料を加えている。この評価サンプルでは、加硫したゴムの表面に香料成分がブリードアウトしているようにべたつくようになっており、ゴム製品として実用的なレベルを外れてしまっている。しかしながら、この比較例3では、ややゴム臭がわかりにくくはなったものの、意図した香りでゴム臭を消すには至らず、「ゴム臭が消えていない」「全体の臭いがきつい」との評価が出た。ゴムに対する配合量を変化させた比較サンプルも試したが、対比香料1や対比香料2を用いた比較評価サンプルでは、「ゴム臭が感じられない」という評価が得られ、かつ実用的なサンプルは得られなかった。
すなわち、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかが香料に含まれないと、添加する香料の香りをあまり強くしなくてもゴム臭が感じられなくなるようにはできないことが、これら比較例によりわかった。
【0089】
また、実施例1、実施例5、実施例6の評価結果を比べると、いずれの評価サンプルも同様にゴム臭が感じられなくなり、適度なレベルの良い香りがするとの評価結果が得られている。これらのことから、香料成分としてβ-シトロネロール,酢酸4-TERT-ブチルシクロヘキシル,ヘプタン酸アリル,酢酸CIS-3-ヘキセニル,ヘキサン酸アリル,カローンのいずれかを含む香料が添加されていれば、ゴムの種類や架橋方法が変わっても、同様に、ゴム臭が消せることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のゴム組成物は例えばゴム製マットレスに使用でき、ゴムの異臭を抑制できて産業上の利用価値が高い。